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▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114964
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】印刷装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/18 20060101AFI20230810BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20230810BHJP
   B26D 5/30 20060101ALI20230810BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230810BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20230810BHJP
   B41J 11/06 20060101ALI20230810BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B41J19/18 Z
B26D5/00 F
B26D5/30 B
B41J2/01 305
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H7/14
B41J11/06
B41J11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107554
(22)【出願日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2022017082
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】今泉 清将
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
2C480
3C024
3F048
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB36
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC37
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA37
2C056HA38
2C058AB04
2C058AB10
2C058AC07
2C058AE04
2C058AE09
2C058AF23
2C058AF31
2C058AF51
2C058DA11
2C058LA04
2C058LB05
2C058LB37
2C480CA40
2C480CB31
2C480CB45
2C480EB10
3C024AA07
3F048AA05
3F048AB01
3F048BB02
3F048BB05
3F048BB09
3F048CC02
3F048CC05
3F048DA06
3F048DC14
3F048EB22
(57)【要約】
【課題】 メディアに既にマークや図形が形成されている場合でも、光学式センサによってメディアのエッジを検出可能とする。
【解決手段】 印刷装置は、第1、第2のピンチローラ17a、17bを検出する第1の光学式センサ82、84と、メディア200の端部を検出する第2の光学式センサ92、94を備えるキャリッジ26と、制御部74と、を有し、制御部74は、第1、第2のピンチローラ17a、17bの位置を検出する第1の動作と、第1の動作後に実施される、メディア200の端部を検出する第2の動作と、を含む制御を実施し、第2の動作では、第1の動作で検出された、走査方向における第1、第2のピンチローラ17a、17bの位置よりも外側の範囲において、第2の光学式センサ92、94による検出信号に基づくメディア200の端部位置の検出を実行する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象であるメディアに、回転可能に接触すると共に、前記メディアの搬送方向に直交する走査方向において所定距離を隔てて配置される第1、第2のピンチローラと、
前記走査方向に走査されて移動可能であると共に、前記第1、第2のピンチローラを検出する第1の光学式センサと、前記第1の光学式センサよりも、前記メディアの搬送方向における下流側の位置に設けられ、前記メディアの端部を検出する第2の光学式センサと、を備えるキャリッジと、
前記キャリッジ、及び前記第1、第2の光学センサの動作を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記キャリッジの走査による、前記第1、第2のピンチローラの位置を検出する第1の動作と、
前記第1の動作後に実施される、前記キャリッジの走査による、前記メディアの端部を検出する第2の動作と、
を含む制御を実施し、
前記第2の動作では、前記第1の動作で検出された、前記走査方向における前記第1、第2のピンチローラの位置よりも外側の範囲において、前記第2の光学式センサによる検出信号に基づく前記メディアの端部位置の検出を実行する、
印刷装置。
【請求項2】
前記キャリッジは、前記メディアを横切るように往復し、
往路で、前記第1の動作が実行され、
復路で、前記第2の動作が実行される、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記キャリッジは、印刷ヘッドが搭載されている印刷キャリッジとは別であり、かつ前記印刷キャリッジとは独立に移動することが可能なサブキャリッジである、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記印刷装置のメインボードに搭載されており、
前記第1、第2の各光学式センサの検出信号は、前記メインボードに設けられるI/Oポートに電気的に接続されるI/O通信線を経由して、前記メインボードに伝送される、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1の動作では、前記第1、第2のピンチローラの、外側の端部よりも内側の位置が検出される、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記メディアの端部に、前記メディアを押さえるメディアクランプがある場合には、前記第2の光学式センサによる検出信号に基づいて、前記メディアクランプの位置を検出し、その検出された位置を前記メディアの端部とする、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記メディアクランプには、認識用パターンが設けられており、
前記制御部は、
前記第2の光学式センサによる前記認識用パターンの検出信号に基づいて、前記メディアクランプの位置を検出する、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記メディアを載置するプラテン上に、前記メディアを押さえるメディアクランプがある場合には、前記第2の光学式センサによる検出信号に基づいて、前記メディアクランプの位置を検出し、前記メディアクランプの位置がプラテン上の適切な位置にあるか否かを判定し、
前記メディアクランプの位置がプラテン上の適切な位置にあると判断された場合には、検出されたメディアクランプの位置を前記メディアの端部とする、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記キャリッジは、前記メディアを切断可能なカット刃を保持するカットキャリッジであり、
前記制御部は、
前記カットキャリッジを、前記メディアを切断するように移動させる場合に、
前記印刷装置の電源を投入した際の前記カットキャリッジの待機位置と
前記第2の動作で検出された前記メディアの端部のうち、前記待機位置から遠い第1の端部からさらに所定距離だけ前記待機位置から遠ざかる方向に位置する第1位置との間で、前記カットキャリッジを移動させる、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1乃至9の何れか1項に記載の制御部として動作させるプログラム。
【請求項11】
印刷対象であるメディアに、回転可能に接触すると共に、走査方向において所定距離を隔てて配置される第1、第2のピンチローラと、
前記メディアと前記走査方向に相対移動可能であると共に、前記第1、第2のピンチローラを検出する第1の光学式センサと、前記第1の光学式センサよりも、前記走査方向と交差する方向における下流側の位置に設けられ、前記メディアの端部を検出する第2の光学式センサと、を備えるキャリッジと、
前記キャリッジ、及び前記第1、第2の光学センサの動作を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記キャリッジの走査による、前記第1、第2のピンチローラの位置を検出する第1の動作と、
前記第1の動作後に実施される、前記キャリッジの走査による、前記メディアの端部を検出する第2の動作と、
を含む制御を実施し、
前記第2の動作では、前記第1の動作で検出された、前記走査方向における前記第1、第2のピンチローラの位置よりも外側の範囲において、前記第2の光学式センサによる検出信号に基づく前記メディアの端部位置の検出を実行する、
印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及びプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャリッジに設けられたセンサで、ピンチローラの位置を検出することが記載されている(例えば、明細書の[0064])。
【0003】
特許文献2には、キャリッジに設けられた光学式センサで、メディアのエッジを検出することが記載されている(例えば、請求項1、明細書の[0074]~[0077])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-120393号公報
【特許文献2】特許第6095306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、キャリッジの走査の制御に関係して、印刷対象(言い換えれば、記録対象)であるメディア(媒体)の、走査方向における両端の位置情報が必要となる場合がある。
【0006】
上記特許文献1の技術では、ピンチローラの位置は検出できるが、キャリッジの走査方向におけるメディアの両端の位置は測定することができない。
【0007】
上記特許文献2の技術は、光学式センサでメディアの端部(エッジ)を検出するとき、メディアに既にマークや図形等が形成されていると、それらのマークや図形の位置を、メディアの端部(エッジ)として誤検出する可能性がある。
【0008】
なお、メディアに既に形成されているマークや図形としては、例えば、メディアの切断処理における位置合わせ、あるいは、多色印刷における位置合わせに用いられるクロップマークをあげることができる。
【0009】
本発明の1つの目的は、メディアに既にマークや図形が形成されている場合でも、光学式センサによってメディアのエッジを検出可能とすることである。本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0011】
本発明に従う態様において、印刷装置は、印刷対象であるメディアに、回転可能に接触すると共に、前記メディアの搬送方向に直交する走査方向において所定距離を隔てて配置される第1、第2のピンチローラと、前記走査方向に走査されて移動可能であると共に、前記第1、第2のピンチローラを検出する第1の光学式センサと、前記第1の光学式センサよりも、前記メディアの搬送方向における下流側の位置に設けられ、前記メディアの端部を検出する第2の光学式センサと、を備えるキャリッジと、前記キャリッジ、及び前記第1、第2の光学センサの動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記キャリッジの走査による、前記第1、第2のピンチローラの位置を検出する第1の動作と、前記第1の動作後に実施される、前記キャリッジの走査による、前記メディアの端部を検出する第2の動作と、を含む制御を実施し、前記第2の動作では、前記第1の動作で検出された、前記走査方向における前記第1、第2のピンチローラの位置よりも外側の範囲において、前記第2の光学式センサによる検出信号に基づく前記メディアの端部位置の検出を実行する。
【0012】
本態様では、メディアの端部(エッジ)の検出に先立ち、走査方向において所定間隔で配置されている第1、第2のピンチローラの位置を検出する。
【0013】
制御部は、第1、第2の各ピンチローラの間の範囲を、マークや図形が形成される可能性がある範囲として把握し、その範囲を不感帯とし、メディアの端部(エッジ)検出に際しては、その範囲においては、仮にマークや図形が形成されていても、それを無視する。
【0014】
言い換えれば、制御部は、第1、第2のピンチローラの位置よりも外側の範囲において、第2の光学式センサによる検出信号に基づく前記メディアの端部(エッジ)の位置を検出する。よって、誤検出が生じない。
【0015】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、印刷装置の一例(インクジェットプリンタ)の外観を示す斜視図である。
図2図2(A)は、メインキャリッジ(印刷キャリッジ)とサブキャリッジ(カットキャリッジ)とが連結部を介して連結されている状態を示す正面図、図2(B)は、サブキャリッジが、メインキャリッジから分離された状態を示す正面図である。
図3図3は、サブキャリッジ(カットキャリッジ)に搭載される、ピンチローラセンサ、メディアエッジセンサ、及びサブキャリッジボードの構成例、並びに、印刷装置本体に搭載されるプリンタのメインボードの構成例を示す図である。
図4図4は、ピンチローラセンサ、及びメディアエッジセンサを有するサブキャリッジ(カットキャリッジ)の構造例を示す側面図である。
図5図5(A)は、サブキャリッジの走査(往路)による、ピンチローラの内側の位置の検出を示す上面図、図5(B)は、ピンチローラセンサの検出信号に基づくピンチローラセンサ位置の検出動作を示す図、図5(C)は、ピンチローラセンサから出力される検出信号の一例を示す波形図である。
図6図6(A)は、サブキャリッジの走査(復路)による、メディアの端部(エッジ)の検出を示す上面図、図6(B)は、メディアエッジセンサの検出信号に基づくメディアエッジの検出動作を示す図、図6(C)は、メディアエッジセンサから出力される検出信号の一例を示す波形図である。
図7図7(A)は、メディアクランプが有る場合における、サブキャリッジの走査(往路及び復路)による、メディアクランプ位置の検出を示す上面図、図7(B)は、メディアエッジセンサの検出信号に基づくメディアクランプの検出動作を示す図、図7(C)は、メディアエッジセンサから出力される検出信号の一例(メディアクランプ上の認識パターンの読み取り信号を含む)を示す波形図である。
図8図8(A)、図8(B)は、メディアクランプが適切な位置にあるか否かの判定動作の一例を示す図である。
図9図9(A)、図9(B)は、メディアクランプが適切な位置にあるか否かの判定動作の他の例を示す図である。
図10図10は、検出されたメディアの端部(エッジ)の位置に基づく、サブキャリッジの走査速度の制御例を示す図である。
図11図11は、制御部によるメディアのセットアップ処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0018】
(第1の実施形態)
図1を参照する。図1は、印刷装置の一例(インクジェットプリンタ)の外観を示す斜視図である。
【0019】
印刷及びカッティングの機能を有するインクジェットプリンタ10は、基台部材12に支持され、走査方向に延長して配設されたベース部材(エプロン:プリンタ本体の前方にてメディア200を支持する前垂れ形状の支持部材)14と、ベース部材14の左右両端でベース部材14に直交して配設された側方部材16L、16Rと、メディア200に、回転可能に接触すると共に、メディア200の搬送方向に直交する走査方向において所定距離を隔てて配置される第1、第2のピンチローラ17a、17bと、左右2つの側方部材16L、16Rを連結する中央壁18と、走査方向に配設された第1のガイドレール20と、ガイドレール20と平行に配設された第2のガイドレール22と、中央壁18の壁面に沿って走査方向に移動自在に配設された駆動ベルト24(図2(A)参照)と、駆動ベルト24を走査方向に走行させるサーボモータ58と、サーボモータ58により走行されるこの駆動ベルト24に固定されることで、第1のガイドレール20に沿って走査方向に移動可能である2つのキャリッジ26、28と、を有する。
但し、一例であり、これに限定されるものではない。キャリッジは、メディアと走査方向に相対移動可能であってもよい。言い換えれば、キャリッジは、メディアに対して相対的に移動可能であってもよい。例えば、メディアの搬送が無い場合には、キャリッジが、メディアに対して、走査方向と交差する方向(好ましくは直交する方向)に相対移動してもよい。
【0020】
キャリッジ26は、印刷ヘッド29が搭載される、メインキャリッジとしての印刷キャリッジである。
【0021】
キャリッジ28は、カッターを備えるサブキャリッジとしてのカットキャリッジである。カッターは2種類あり、1つは、メディアを図形の形状に切り抜くカッティング用のカッター(図1におけるカット刃36を保持するカッター32)である。もう1つは、シートカット用のカッター(図1では不図示、図2(A)の符号91)である。
【0022】
本実施形態では、このサブキャリッジとしてのカットキャリッジに、ピンチローラ17a、17bを検出するピンチローラセンサ(図2図3の符号80参照)、及びメディア200の端部(エッジ)を検出するメディアエッジセンサ(図2図3の符号90参照)が設けられている。また、このカットキャリッジ28は、印刷キャリッジ26と分離されて、独立に移動することも可能である。これらの点について後述する。
【0023】
なお、サブキャリッジは、印刷ヘッドが搭載されるキャリッジ(メインキャリッジ)とは別のキャリッジであり、カットキャリッジに限定されるものではない。
【0024】
また、印刷対象(記録対象)であるメディア200は、金属からなる平板状のプラテン(図1では不図示、図4の符号300)上に載置される。
【0025】
また、ピンチローラ17a、17bの下には、不図示の搬送ローラが存在する。この搬送ローラは、ステッピングモータ等のサーボモータにより駆動されて回転し、メディア200を、搬送方向の上流から下流へと搬送する。
【0026】
ピンチローラ17a、17bは、歯車機構などにより搬送ローラから動力を伝達されて回転する。ピンチローラ17a、17bは、第2のガイドレール22に取り付けられ、第2のガイドレール22に沿って走査方向に移動可能に構成されている。なお、第2のガイドレール22は、取り付けられたピンチローラ17a、17bがメディア200に当接させるように回転可能となっている。搬送ローラ及びピンチローラ17a、17bの表面には、ゴム等の弾性部材が設けられており、メディア200は、ピンチローラ17a、17bと搬送ローラとの間で、しっかりと保持される。
【0027】
次に、図2を参照する。図2(A)は、メインキャリッジ(印刷キャリッジ)とサブキャリッジ(カットキャリッジ)とが連結部を介して連結されている状態を示す正面図、図2(B)は、サブキャリッジが、メインキャリッジから分離された状態を示す正面図である。
【0028】
図2において、前掲の図と同様の箇所には同じ符号を付している。この点は、他の図面についても同様である。
【0029】
メインキャリッジである印刷キャリッジ26には、印刷ヘッド29が設けられている。また、サブキャリッジであるカットキャリッジ28には、ピンチローラ17a、17bを検出するピンチローラセンサ80、及びメディア200の端部(エッジ)を検出するメディアエッジセンサ90、及び、シートカット用のカッター91が設けられている。
【0030】
シートカット用のカッター91は、ソレノイド(不図示)によって昇降できるように構成されている。
また、メディアを図形の形状に切り抜くカッティング用のカッター32は、カットキャリッジ28に取り付けられており、カットキャリッジ28と一体的に移動する。このカッティング用のカッター32も、ソレノイド(不図示)によって昇降できるように構成されている。
なお、図2では、カッティング用のカッター32のカット刃36(図1参照)は、図示を省略している。
【0031】
図2(A)では、印刷キャリッジ26とカットキャリッジ28とは、連結部材40により連結されている。例えば、メディア200への印刷時には、印刷キャリッジ(メインキャリッジ)26とカットキャリッジ(サブキャリッジ)28とは、連結部40によって連結されて一体的に移動する。
【0032】
図2(B)では、印刷キャリッジ(メインキャリッジ)26は、移動可能範囲における最も右側の端部付近に位置する。この位置は、プリンタに電源が投入された時の印刷キャリッジ26の位置である。この位置にある印刷キャリッジ26に連結されたカットキャリッジ(サブキャリッジ)28の位置が、プリンタに電源が投入された時のカットキャリッジ28の位置(待機位置、以下ホームポジションとも称す)である。そして、印刷キャリッジ26に設けられている係止部材(係止爪)45と、プリンタ本体の外壁部に設けられる係合部47の係止部材(係止爪)49とが係合されて、印刷キャリッジ26の移動が阻止される。
【0033】
一方、カットキャリッジ(サブキャリッジ)28は、連結部40による連結が解除されて、印刷キャリッジ26から分離され、独立して移動可能な状態となる。
【0034】
メディア200を所定のサイズに切断したり、あるいは、メディア200に、メディア200を横断するミシン目を形成したりする場合には、図2(B)に示されるように、カットキャリッジ28のみが走査される。
【0035】
また、本実施形態では、印刷前のメディアセットアップ時においても、図2(B)のように、サブキャリッジ(カットキャリッジ)28のみが走査される。この走査時において、ピンチローラセンサ80やメディアエッジセンサ90を用いて、ピンチローラの位置や、メディアのエッジ位置が検出される。サブキャリッジのみを移動させることで、検出動作時に、インクヘッドが乾燥することを抑制できる。また、移動させるキャリッジの重量が軽くなるため、キャリッジ駆動力を削減できる。詳細は後述する。
【0036】
次に、図3を参照する。図3は、サブキャリッジ(カットキャリッジ)に搭載される、ピンチローラセンサ、メディアエッジセンサ、及びサブキャリッジボードの構成例、並びに、印刷装置本体に搭載されるプリンタのメインボードの構成例を示す図である。
【0037】
サブキャリッジ28は、サブキャリッジボード50を備え、このサブキャリッジボード50には、サブキャリッジコントローラ52が搭載されている。
【0038】
また、サブキャリッジボード50には、出力端子としてのI/Oポート(例えば、汎用のI/Oポート)N1が設けられている。なお、このサブキャリッジボード50には、プリンタのメインボード70に搭載されているシリアル通信モジュール76と同形式のシリアル通信モジュール(不図示)が設けられている。これらのシリアル通信モジュールを用いることで、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)通信が可能となる。
【0039】
ピンチローラセンサ80は、発光素子(LED等)の光源を有する発光部82と、物体からの反射光を受光して電気信号に変換する受光素子(フォトダイオード等)を有する受光部84と、を有する。受光部84から出力される検出信号(測定信号)は、サブキャリッジコントローラ52に供給される。
【0040】
メディアエッジセンサ90は、発光素子(LED等)の光源を有する発光部92と、物体からの反射光を受光して電気信号に変換する受光素子(フォトダイオード等)を有する受光部94と、を有する。受光部94から出力される検出信号(測定信号)は、サブキャリッジコントローラ52に供給される。
【0041】
プリンタのメインボード70は、位置検出部72と、印刷装置(プリンタ)の動作を統括的に制御する制御部(CPU、MPU等)74と、シリアル通信モジュール76と、入力端子としてのI/Oポート(例えば、汎用のI/Oポート)N2と、を有する。
【0042】
なお、位置検出部72は、キャリッジ駆動部53のエンコーダ60から送られてくるサーボモータ58の回転位置信号を受け、その回転位置信号に基づいて、移動中のサブキャリッジ28の位置を検出する機能を有する。
【0043】
また、キャリッジ駆動部53は、サーボコントローラ54と、サーボアンプ56と、サーボモータ58と、エンコーダ60と、サーボボード61と、を有する。サーボボード61は、エンコーダ60の出力信号あるいはその積算値を、プリンタのメインボード70に伝送する。
【0044】
次に、2つのセンサ80、90による検出信号(測定信号)を、サブキャリッジボード50からプリンタのメインボード70へと伝送する方式について説明する。伝送経路としては、I/OポートN1、I/O通信線(1ビットのデータ通信線)101、I/OポートN2を経由する伝送経路と、UART通信を用いる伝送経路(UART通信線103)とが存在する。
【0045】
但し、UART通信を使用した場合は、データの伝送に、例えば数十msを要するが、I/O通信線101を用いれば、伝送時間は、例えば数百μs程度で済む。UART通信は、伝送の遅延が大きすぎて、リアルタイム制御には不向きである。
【0046】
そこで、本実施形態では、1本のI/O通信線101を介して2つのセンサ80、90による検出信号(測定信号)を伝送する。
【0047】
ここで、ピンチローラセンサ80、メディアエッジセンサ90から出力される各データが、「H」又は「L」の1ビットデータであるとしても、合計で2ビットとなり、各データを同時に送信しようとすると、2本のI/O通信線が必要である。
【0048】
上記のとおり、使用できる通信線は、I/O通信線101のみである。そこで、本実施形態では、メインボード70からの指令信号に基づいて、I/O通信線101を通してサブキャリッジボード50からメインボード70に伝送する出力データを切り替える。メインボード70からの指令信号は、例えば、UART通信線103を通して事前にサブキャリッジボード50に伝送される。これにより、1本のI/O通信線101を用いて、2種類のデータを送信することが可能である。
【0049】
好ましくは、カットキャリッジ(サブキャリッジ)28を、メディア200を横切るようにして、走査方向に往復させ、往路の走査中において、ピンチローラについての検出データを、サブキャリッジボード50からメインボード70に送信し、復路の走査中において、メディアエッジについての検出データを、サブキャリッジボード50からメインボード70に送信するのがよい。これにより、効率的な検出が実現され、検出に要する時間も短縮される。詳細については、後述する。
【0050】
プリンタのメインボード70に搭載される制御部74は、受信した、各センサ80、90による検出データと、位置検出部72によって検出された、移動中のサブキャリッジ28の走査方向における位置情報と、を対応づけることで、ピンチローラの位置や、メディアエッジの位置を検出することができる。
【0051】
例えば、検出データが、「H」から「L」に転じたタイミングにおける、サブキャリッジの位置を検出することで、ピンチローラの位置や、メディアエッジの位置を特定することができる。
【0052】
次に、図4を参照する。図4は、ピンチローラセンサ、及びメディアエッジセンサを有するサブキャリッジ(カットキャリッジ)の構造例を示す側面図である。
【0053】
メディア200は、プラテン300上に載置されている。サブキャリッジ(カットキャリッジ)28の本体部27の下端部には、メディアエッジセンサ90を構成する発光部92及び受光部94が取り付けられている。
【0054】
発光部92は、斜め下方に光R1を照射し、受光部94は、メディア200(あるいはプラテン300)からの反射光R2を受光する。
【0055】
また、本体部27と第1のガイドレール20との間には、ピンチローラセンサ80の取り付け部97が設けられ、この取り付け部97の下端部に、ピンチローラセンサ80を構成する発光部82及び受光部84が取り付けられている。
【0056】
発光部82は、斜め下方に光R3を照射する。ピンチローラ17(第1、第2のピンチローラ17a、17b)の上側にはピンチローラを検出するための、有色の反射板(以下、ピンチローラ検出板と称する)220が設けられている。受光部84は、ピンチローラ検出板220からの反射光R4を受光する。ピンチローラ検出板220が有る場合には、検出出力はH(「1」)となり、無い場合には、L(「0」)となる。
【0057】
また、メディアエッジセンサ90は、ピンチローラセンサ80から、メディアの搬送方向において、所定距離Δyだけ下流側(終端側)に位置している。よって、例えば、メディアエッジセンサ90にて、メディア200のエッジを検出する際に、ピンチローラ検出板220を誤って検出する等の不都合が生じない。
【0058】
次に、図5を参照する。図5(A)は、サブキャリッジの走査(往路)による、ピンチローラの内側の位置の検出を示す上面図、図5(B)は、ピンチローラセンサの検出信号に基づくピンチローラセンサ位置の検出動作を示す図、図5(C)は、ピンチローラセンサから出力される検出信号の一例を示す波形図である。
【0059】
図5(A)において、第1、第2のピンチローラ17a、17bは、印刷対象(記録対象)であるメディア200に、回転可能に接触しており、かつ、メディア200の搬送方向に直交する走査方向において所定距離を隔てて配置されている。また、メディア200には、メディア200を仕上がりサイズに裁断するための位置を示すクロップマークCR1、CR2が設けられている。
【0060】
メディア200がプラテン300上にセットされると、制御部74は、所定のメディアセットアップ処理を実施する。このメディアセットアップ処理では、まず、ピンチローラ17a、17bの検出(第1の動作)が実施される。
【0061】
先に説明したように、カットキャリッジ(サブキャリッジ)28には、第1、第2のピンチローラ17a、17bを検出するピンチローラセンサ80(第1の光学式センサ)が設けられている。
【0062】
図5(A)では、セットされたメディア200の右側に位置するカットキャリッジ(サブキャリッジ)28が、走査方向に走査され、メディア200を横断するように移動する。この往路の移動中において、図5(B)に示されるように、ピンチローラセンサ80の検出データは、サブキャリッジコントローラ52、I/OピンN1、I/O通信線101、及びI/OピンN2を経由して、プリンタのメインボード70の制御部74へと伝送される。
【0063】
図5(C)に示されるように、時刻t1にサブキャリッジ28の走査が開始され、時刻t6に走査が終了する。時刻t1~t2において、第1のピンチローラ17aに対応する第1のパルス波形が得られ、時刻t4~t5において、第2のピンチローラ17bに対応する第2のパルス波形が得られる。
【0064】
図5(C)の検出信号では、パルス波形がピンチローラ17の個数分しかないため、各ピンチローラ17a、17bに対応する各パルス波形を特定しやすいが、外乱により検出信号にピンチローラ17に対応しないパルス波形が混在する場合がある。その場合は、例えば、検出信号に存在するパルス波形のうち、パルス幅と記憶部75に予め記憶された各ピンチローラ17a、17bの実際の幅との差分が所定の範囲内であるパルス波形を各ピンチローラ17a、17bと対応するパルス波形として検出すればよい。
【0065】
ここで、第1のパルス波形については、時刻t3における立下りエッジのタイミングに対応するサブキャリッジ28の位置が検出(特定)される。言い換えれば、図5(A)に示される、第1のピンチローラ17aの内側の位置P1が検出される。なお、「内側の位置」とは、メディア200を走査方向に2等分する仮想的な中央線を想定したとき、「第1のピンチローラ17aの、その中央線に近い側の端部の位置」である。
【0066】
第2のパルス波形については、時刻t4における立ち上がりエッジのタイミングに対応するサブキャリッジ28の位置が検出(特定)される。言い換えれば、図5(A)に示される、第2のピンチローラ17bの内側の位置P2が検出される。なお、「内側の位置」とは、メディア200を走査方向に2等分する仮想的な中央線を想定したとき、「第2のピンチローラ17bの、その中央線に近い側の端部の位置」である。
【0067】
ここで、各ピンチローラ17a、17bの内側の位置を検出するのは、例えば、各ピンチローラ17a、17bが、メディア200とプラテン300にまたがるように配置されていたとしても、内側の位置は、確実に、メディア200が存在する範囲にあるからである。ただし、各ピンチローラ17a、17bの検出する位置は、内側に限定されない。例えば、各ピンチローラ17a、17bの中心位置を検出してもよい。
【0068】
先に説明したように、メディアエッジ検出においては、各ピンチローラ17a、17bの間の範囲を、マークや図形を検出しない不感帯の範囲として設定する。仮に、各ピンチローラ17a、17bの「外側の位置」を検出した場合、その外側の位置が、メディア200の外であるときは、不感帯の範囲が、メディア200の走査方向の全域に設定されてしまい、これでは、メディア200のエッジ検出ができなくなる。各ピンチローラ17a、17bの「外側の位置」よりも内側の位置を検出することで、上記の不都合が生じない。
【0069】
図5では、各ピンチローラ17a、17bの内側の位置を第1のパルス波形と第2のパルス波形から直接検出したが、第1のパルス波形と第2のパルス波形から各ピンチローラ17a、17bの中心位置を算出し、中心位置から予め決められた所定の距離だけ内側にある位置を各ピンチローラ17a、17bの内側の位置として特定してもよい。ピンチローラセンサ80(第1の光学式センサ)の精度によっては、パルス波形の立ち上がりエッジにおけるサブキャリッジ28の位置と立下りエッジにおけるサブキャリッジ28の位置との間の幅が、ピンチローラ17の実際の幅よりも大きかったり、小さかったりする。パルス波形の立ち上がりエッジにおけるサブキャリッジ28の位置と立下りエッジにおけるサブキャリッジ28の位置との間の中心位置を算出し、中心位置から実際のピンチローラ17の幅の半分の長さだけ内側にある位置を各ピンチローラ17a、17bの内側の位置として特定してもよい。
【0070】
次に、図6を参照する。図6(A)は、サブキャリッジの走査(復路)による、メディアの端部(エッジ)の検出を示す上面図、図6(B)は、メディアエッジセンサの検出信号に基づくメディアエッジの検出動作を示す図、図6(C)は、メディアエッジセンサから出力される検出信号の一例を示す波形図である。
【0071】
図6(A)では、セットされたメディア200の左側に位置するカットキャリッジ(サブキャリッジ)28が、走査方向に走査され、メディア200を横断するように移動する。この復路の移動中において、メディア200の端部(エッジ)位置を検出する動作(第2の動作)が実施される。
【0072】
図6(B)に示されるように、メディアエッジセンサ(第2の光学式センサ)90の検出信号(検出データ)は、サブキャリッジコントローラ52、I/OピンN1、I/O通信線101、及びI/OピンN2を経由して、プリンタのメインボード70の制御部74へと伝送される。
【0073】
図6(A)において、制御部74は、往路の走査で検出された第1、第2のピンチローラ17a、17bの間の範囲zaを、マークや図形を検出しない不感帯の範囲とする。
【0074】
言い換えれば、制御部74は、走査方向における第1、第2のピンチローラ17a、17bの位置よりも外側の範囲zb、zcにおいて、メディアエッジセンサ(第2の光学式センサ)90の検出データに基づくメディア200の端部(エッジ)位置の検出を実行する。
【0075】
図6(A)では、走査方向における位置P4、P5にクロップマークCR1、CR2が存在するが、これらのクロップマークは検出されない。よって、誤検出が確実に防止される。
【0076】
図6(C)において、期間Tza、Tzb、Tzcは、図6(A)における、範囲za、zb、zcに対応する。時刻t11~t16の期間が、不感帯の期間Tzaとなる。時刻t10~t11の期間が期間Tzb、時刻t16~t17の期間が期間Tzcとなる。
【0077】
制御部74は、期間Tzb中の時刻t10において、検出信号の立下りエッジを検出し、この検出タイミングにおける位置P3を、メディア200の左端の端部(エッジ)位置とする。また、期間Tzc中の時刻t17において、検出信号の立ち上がりエッジを検出し、この検出タイミングにおける位置P6を、メディア200の右端の端部(エッジ)位置とする。
なお、時刻t11~t13、及び時刻t14~t15において、クロップマークCR1、CR2に対応して検出信号が変化するが、不感帯の期間Tzaの範囲内であるため、無視される。
【0078】
このように、メディア200の端部(エッジ)の検出に先立ち、走査方向において所定間隔で配置されている第1、第2のピンチローラ17a、17bの位置を検出しておき、制御部74は、第1、第2の各ピンチローラ17a、17bの間の範囲を、マークや図形等が形成される可能性がある範囲として把握し、その範囲を不感帯とし、メディア200の端部(エッジ)検出に際しては、その範囲においては、仮にマークや図形等が形成されていても、それを無視する。
【0079】
言い換えれば、制御部74は、第1、第2のピンチローラの位置よりも外側の範囲において、メディアエッジセンサ(第2の光学式センサ)90による検出信号に基づくメディア200の端部(エッジ)の位置を検出する。よって、誤検出が生じない。
【0080】
なお、第1、第2のピンチローラの位置よりも外側と、いう場合の「外方向」は、例えば、メディアを、キャリッジの走査方向(走査方向あるいは左右方向)に2等分して得られる中央の位置から遠ざかる方向ということができる。
【0081】
また、本実施形態では、先に図3を用いて説明したように、2つのセンサ(第1、第2の光学式センサ)の検出信号は、メインボードに設けられるI/Oポートに電気的に接続されるI/O通信線(I/Oデータ通信線)を経由して、サブキャリッジボード50からメインボード(及び制御部)へと伝送される。
【0082】
使用できる通信線が、1本のI/O通信線であったとしても、サブキャリッジボード50からメインボード70に伝送する出力データを切り替えて、各センサからの出力データを通信することで、1本のI/O通信線を用いて、2種類のデータを送信することが可能となる。
【0083】
また、図5図6に示したように、好ましくは、キャリッジを、メディアを横切るようにして往復させ、往路でピンチローラの検出(第1の動作)を実施し、復路でメディアエッジの検出(第2の動作)を実施する。これによって、1回の往復走査でピンチローラとメディアエッジの検出ができ、動作時間を短縮することができる。
【0084】
また、先に図5を用いて説明したように、ピンチローラの検出に際しては、ピンチローラの内側の位置を検出する。これによって、ピンチローラがメディアのエッジをまたぐ位置に配置されていた場合であっても、エッジ検出動作を実行する範囲を適切に設定することが可能である。
【0085】
また、先に図2(B)を用いて説明したように、ピンチローラセンサと光学センサは、インクヘッドが搭載されたキャリッジとは別のサブキャリッジに搭載されている。そして、サブキャリッジのみを移動させることで、その検出動作時に、インクヘッドが乾燥することを抑制できる。また、移動させるキャリッジの重量が軽くなるため、キャリッジ駆動力を削減できる。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、図7を参照する。図7(A)は、メディアクランプが有る場合における、サブキャリッジの走査(往路及び復路)による、メディアクランプ位置の検出を示す上面図、図7(B)は、メディアエッジセンサの検出信号に基づくメディアクランプの検出動作を示す図、図7(C)は、メディアエッジセンサから出力される検出信号の一例(メディアクランプ上の認識パターンの読み取り信号を含む)を示す波形図である。
メディアクランプ303は、第2のガイドレール22に取り付け可能に構成されており、第2のガイドレール22に沿って走査方向に移動可能となっている。また、プラテン300に設けられた溝に嵌めることで固定できるものであってもよい。また、メディアクランプ303を重りとして、単にメディア200の上に置いてもよい。
【0087】
図7(A)では、メディア200の右側の端部は、金属製のメディアクランプ303aによって押さえられており、左側の端部は、金属製のメディアクランプ303bによって押さえられている。
【0088】
メディア200は、メディアクランプ303a、303bの下に隠れているため、第1の実施形態のように、メディアとプラテンとの光の反射率の差を利用して、メディア200の端部(エッジ)を検出することはできない。
【0089】
そこで、本実施形態では、各メディアクランプ303a、303bに、認識パターン(制御部74に各メディアクランプを認識させるためのパターン305a及び305b、305c及び305d)を形成しておき、このパターンを検出することで、各メディアクランプ303a、303bの位置を検出する。
【0090】
例えば、その内側の位置(図7(A)における位置P8、P9)を、メディア200の端部(エッジ)の位置とする。よって、メディアクランプ303a、303bが存在しても、メディアの端部(エッジ)の位置を検出することができる。ただし、メディア200の端部(エッジ)の位置は、メディアクランプの内側の位置に限定されない。例えば、メディアクランプの中心位置をメディア200の端部(エッジ)の位置としてもよい。
【0091】
また、図7(A)に示されるように、認識用パターン305a及び305b、305c及び305dは、所定幅で縦長の2つの矩形を隣接配置して構成される。各矩形は、好ましくは、白(又は黒)のパターンである。但し、一例であり、パターンの色や形状等は、上記の例に限定されるものではない。
【0092】
特徴的な認識用パターンを読み取って、各メディアクランプの位置を検出(特定)することで、光学式センサによる、各メディアクランプの位置の検出を確実なものとすることができ、また、その検出精度を向上させることが可能である。
【0093】
なお、図7(A)の右上側に明示されるように、認識用パターン305a及び305b(305c及び305dも同様)の、メディアの搬送方向における上流側の位置Pbは、ピンチローラ17a(17b)の下流側の位置Paとは異なっており、2つの位置は、搬送方向において重なりを有さない。よって、認識用パターンが存在することが、ピンチローラの検出に悪影響を与えることはない。
【0094】
また、本実施形態においても、データの伝送には、プリンタのメインボード70に直結されるI/O通信線101が用いられる。この点は、前掲の実施形態と同じである。
【0095】
図7(C)に示されるように、特徴的な認識用パターン305c、305dを読み取ることで、時刻t20~t21、及び、時刻t22~t23に、2つのパルス波形が得られる。そして、その直後の時刻t24に現れる立下りエッジのタイミングに対応する、位置P8を、メディアクランプ303bの内側の位置とし、例えば、その位置を、メディア200の端部(エッジ)位置とすることができる。
【0096】
但し、メディアクランプによってメディアが押さえられている箇所の横幅(走査方向における幅)は、既知であるため、上記の位置P8に、その既知の幅を加算し、その算出結果の位置を、メディア200の位置とすることも可能である。このような変形は、適宜、なし得る。
また、図7(C)において、時刻t23~t24の期間の幅をD1とするとき、この幅D1は、所定の閾値Dth以下となっている。これが正常な状態である。メディアクランプが不適切な位置にあるときは、幅D1と閾値Dthとの関係に変化が生じる。よって、この点に着目して、メディアクランプの位置が不適切であることを検出することもできる。この点については、図9(A)を用いて後述する。
【0097】
次に、図8を参照する。図8(A)、図8(B)は、メディアクランプが適切な位置にあるか否かの判定動作の一例を示す図である。
【0098】
図8の例では、制御部74は、検出されたメディアクランプの位置と、メディアの既知の横幅とに基づいて、メディアクランプが適切な位置にあるか否かを判定する動作を実施する。
【0099】
図8(A)に示されるように、検出されたメディアクランプ303a、303bの内側の位置P8、P9間の距離はWaである。また、メディア200の横幅(走査方向における幅)はWbであり、この値は既知であるとする。例えば、ユーザがプリンタにメディア200の横幅の値を入力した場合や、メディアクランプ303a、303bを装着する前に、例えば光学センサでメディア200の横幅を検出した場合には、メディア200の横幅の値は既知である。
【0100】
そこで、制御部74は、図8(B)にも示されるように、下記の式(1)が満たされるか否かを判定する。
Wth1≦Wb-Wa≦Wth2・・・(1)
なお、式(1)において、Wth1、Wth2は、判定用の閾値である。
【0101】
上記式(1)が満たされる場合は、メディアクランプは適正な位置にあると判定され、そうでない場合は、不適切な位置にあると判定される。
【0102】
このようにして、メディアクランプが適切な位置にあるか否かも検出することができる。メディアクランプの位置が不適切であるとメディアの端部が浮く場合があり得る。この状態で印刷を実施すると、浮いたメディア端部が印刷キャリッジ26と接触することで、印刷キャリッジ26の動きを阻害する場合があり得る。
【0103】
図8の例によれば、メディアクランプが適切な位置にあるか否かを事前に判定することができるため、上記のような不都合は生じない。
【0104】
次に、図9を参照する。図9(A)、図9(B)は、メディアクランプが適切な位置にあるか否かの判定動作の他の例を示す図である。
図9(A)では、メディアクランプ303bの全体がプラテン300上にある。言い換えれば、メディアクランプ303bは、メディア200上には無く、メディアを押さえる役目を果たしていない。
この場合は、時刻t23~t24の幅(時間幅)D1が、所定の閾値Dthよりも大きくなる。言い換えれば、図7(C)に示した、D1≦Dthの関係が成立しない。
このように、メディアクランプ認識用パターンの検出が完了したタイミング(時刻t23)から、メディアエッジが検出されるタイミング(時刻t24)までの時間幅D1が、所定の閾値Dth以内であるか否かを検出することで、メディアクランプの位置が適正であるか、不適切であるかを検出することができる。
【0105】
また、図9(B)の場合は、メディアクランプ303bの全部がメディア200上にあり、かつ、メディアクランプ303bは、ピンチローラ17bの位置P2よりも内側に位置している。この場合は、メディアクランプが印刷範囲に進入していることになる。
この場合、時刻t27~t28において、メディアクランプ303bの左右のエッジに対応して、あるいは、メディアクランプ認識用パターン305c、305dに対応して、検出信号に変化が生じる。この変化の箇所は、図中、符号RLで示されている。
但し、その検出信号の変化は、不感帯の期間Tzaにおいて生じるため、無視される。よって、メディアクランプ303bの位置は検出されない。
この場合は、メディアクランプがピンチローラの位置よりも内側にある、もしくは、メディアクランプがそもそも装着されていない、と判定される。
【0106】
次に、図10を参照する。図10は、検出されたメディアの端部(エッジ)の位置に基づく、サブキャリッジの走査速度の制御例を示す図である。
【0107】
先に図2を用いて説明したように、サブキャリッジとしてのカットキャリッジ28を、メディアを横切るように移動させることで、メディア200を切断したり、メディア200にミシン目を入れたりすることができる。
【0108】
カットキャリッジ28は、メディア200が存在する範囲では一定速度で走査されるが、メディアが存在しない範囲(メディアの外の範囲)では、走査時間短縮のために加速され、また、走査を安定的に終了させるために減速される。
【0109】
メディア200の端部(エッジ)位置が事前に検出されていると、上記のサブキャリッジの加速、減速を適切に制御することができる。
【0110】
図10において、制御部74は、時刻t30までに、メディア200の第1の端部(カットキャリッジのホームポジションから遠い側の端部であり、例えば左端)からさらに所定距離だけホームポジションから遠い側に位置する第1の位置にカットキャリッジ(サブキャリッジ)28を移動させる。
【0111】
時刻t31において、カットキャリッジ28は、第1の位置からカットキャリッジ28の移動を開始する。ここで、制御部74は、カットキャリッジ28の移動速度(走査速度)を増大させる。言い換えれば、カットキャリッジ28は加速される。
【0112】
時刻t32~t33の期間では、カットキャリッジ28は、メディア200上にあるため、ここでは、カットキャリッジは一定速度で移動される。
【0113】
時刻t33において、カットキャリッジ28は、メディア200の、第1の端部(左端)とは反対側の第2の端部(右端)に到達する。ここで、制御部74は、カットキャリッジ28の移動速度(走査速度)を減少させる。言い換えれば、カットキャリッジ28は減速される。
【0114】
時刻t34以降、メディアを切断する際のような高速移動は必要ないため、カットキャリッジ28は低速で移動し、ホームポジションにて停止する。このように、事前に検出されたメディアのエッジ位置の情報を活用することで、カットキャリッジ28の適切な加減速の制御が実現される。
【0115】
図10の制御では、例えば、カットキャリッジ28の加速期間(時刻t31~t32)を、十分に短くする(好ましくは最小化する)ことができる。
【0116】
仮に、メディアのエッジ位置がわからない場合には、エッジ位置から、かなり離れた位置から、カットキャリッジを加速する必要がある。よって、無駄の多い加速となり、カットキャリッジの走査に必要な消費電力が増大してしまう。図10の例によれば、このような無駄は生じず、消費電力の増大を抑制することができる。また、エッジから余分に離れた位置からシートカットを実行すると余分なカット時間がかかる。しかし、シートカット時に必要な速度に到達するまで加速するのに必要な最小限の距離だけエッジから離れた位置を始点にシートカットを実行することで、カット時間を削減することができる。
【0117】
また、メディアのエッジ位置がわからない場合において、カットキャリッジ28を減速するときは、カットキャリッジ28が、メディア200を確実に通過した後に減速を開始する必要がある。この場合も、減速が遅れ、無駄な走行が生じ、消費電力が増大する。
【0118】
図10の例では、メディア200のエッジ位置が正確にわかっているため、カットキャリッジ28が、そのエッジ位置に到達した時点で減速を開始することができる。よって、無駄のない減速が可能となる。このことは、消費電力の削減に資する。また、印刷装置(プリンタ)の小型化にも寄与する。
【0119】
但し、時刻t33~t34の期間における減速は、必ずしも必要ではない。カット後はカットキャリッジをホームポジションに移動させる。時刻t33~t34の期間では減速せず、ホームポジションの手前からカットキャリッジを減速して停止させることも可能である。
【0120】
次に、図11を参照する。図11は、制御部によるメディアのセットアップ処理の手順を示すフローチャートである。
【0121】
まず、メディアがセット済みであるかが判定される(ステップS1)。Nの場合は、メディアのセットを待ち、Yの場合は、ステップS2に移行する。メディアがセット済みであるかは、例えば、ピンチローラをメディアに当接させたり、離間させたりするピンチローラの支持部材の移動から判定することができる。
【0122】
ステップS2では、キャリッジ(例えばカットキャリッジ)を走査し、ピンチローラの位置を検出する(第1の動作)。
【0123】
ステップS3では、メディアエッジの検出(第2の動作)を実施するべく、キャリッジの走査を開始する。
【0124】
ステップS4では、メディアクランプの有無を判定する。例えば、メディアクランプに付されている認識用パターンに対応する検出波形が現れるか否かにより、上記の判定が可能である。Nのときは、ステップS5に移行し、Yのときは、ステップS6に移行する。
【0125】
ステップS5では、2つのピンチローラの間の範囲を除いた領域にて、メディアのエッジを検出する。
【0126】
ステップS6では、メディアクランプの位置を検出する。
【0127】
必要に応じて、ステップS7が実施される。ステップS7では、メディアクランプが適切な位置にあるか否かを判定する。
【0128】
ステップS8では、メディアのエッジを検出する。例えば、メディアクランプの内側の
位置をエッジ位置とする等の処理を実施する。
【0129】
コンピュータプログラムを用いることで、プリンタのメインボードに搭載されるコンピュータを、上記のような制御動作を実施する制御部として機能させることが可能である。この場合は、コンピュータプログラムを、制御部の記憶装置にインストールするだけでよく、実現が容易である。
【0130】
以上説明したように、本発明によれば、メディアに既にマークや図形等が形成されている場合でも、光学式センサによってメディアのエッジを検出することができる。
【0131】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0132】
10・・・印刷装置(カット機能を有するインクジェットプリンタ)、12・・・基台部材、14・・・ベース部材(エプロン)、16L、16R・・・側方部材、17(17a、17b)・・・ピンチローラ(第1、第2のピンチローラ)、18・・・中央壁、20・・・第1のガイドレール、22・・・第2のガイドレール、24・・・駆動ベルト、26・・・メインキャリッジ(印刷キャリッジ)、28・・・サブキャリッジ(カットキャリッジ)、29・・・印刷ヘッド、32・・・カッター、36・・・カット刃、40・・・連結部、50・・・サブキャリッジボード、52・・・サブキャリッジコントローラ、54・・・サーボコントローラ、56・・・サーボアンプ、58・・・サーボモータ、60・・・エンコーダ、70・・・プリンタのメインボード、72・・・位置検出部、74・・・制御部、76・・・シリアル通信モジュール、80・・・ピンチローラセンサ、82、92・・・発光部、84、94・・・受光部、90・・・メディアエッジセンサ、101・・・I/O通信線、103・・・UART通信線、200・・・メディア(媒体、記録媒体、印刷対象)、300・・・プラテン、N1・・・出力ポートとしてのI/Oポート(汎用I/O端子等)、N2・・・入力ポートとしてのI/Oポート(汎用I/O端子等)、303(303a、303b)・・・メディアクランプ、305a及び305b、305c及び305d・・・メディアクランプ認識用パターン。
図1
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