IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲーの特許一覧

特開2023-114981床上の物体を検知するための機器およびシステム
<>
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図1
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図2
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図3
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図4
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図5
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図6
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図7
  • 特開-床上の物体を検知するための機器およびシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114981
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】床上の物体を検知するための機器およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/88 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G01S13/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005006
(22)【出願日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】10 2022 102 784.8
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501493037
【氏名又は名称】ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ロイ
(72)【発明者】
【氏名】オネディン イブロセヴィック
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ベリンククロット
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AE09
5J070AF01
5J070AF10
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】底側(52)と、底側の反対側の歩行可能な上側(54)とを有する床板(50)上の物体(80)を検知するための機器(10)。
【解決手段】機器は、床板(50)に、床板(50)の中に、または、床板(50)の下方に取り付けられるホルダ(12)と、レーダ信号を放射し、物体(80)から反射されたレーダエコーを検知し、かつ、レーダエコーに基づいてデータ信号を供給するよう構成された、レーダ装置(14)とを備えている。ホルダ(12)は、レーダ装置(14)を保持するよう構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底側(52)と、前記底側の反対側の歩行可能な上側(54)とを有する床板(50)上の物体(80)を検知するための機器(10)であって、
前記床板(50)の上、中または下に取り付けられるホルダ(12)と、
レーダ信号を放射し、前記物体(80)から反射されたレーダエコーを検知し、かつ、前記レーダエコーに基づいてデータ信号を供給するよう構成された、レーダ装置(14)とを備え、
前記ホルダ(12)は、前記レーダ装置(14)を保持するよう構成されている、機器(10)。
【請求項2】
前記ホルダ(12)は、前記床板(50)の前記底側(52)または前記床板(50)の前記上側(54)に取り付けられている、請求項1に記載の機器(10)。
【請求項3】
前記ホルダ(12)は、前記床板(50)の支持具(60)に、特に前記床板(50)に接続されている前記支持具(60)の側に取り付けられ、または、前記ホルダ(12)は、前記床板(50)の支持具(60)内へと取り付けられている、請求項1に記載の機器(10)。
【請求項4】
前記ホルダ(12)は、キャリアフィルム、キャリアプレート、カップ形状の要素、漏斗形状の要素、および/または、トレイ形状の要素を備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載の機器(10)。
【請求項5】
前記ホルダ(12)は固定手段により取り付けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の機器(10)。
【請求項6】
前記レーダ装置(14)からの前記レーダ信号の一部を遮断するよう、かつ/または、向きを変えるよう構成された開口部(16)をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の機器(10)。
【請求項7】
前記ホルダ(12)は前記開口部(16)を含む、請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記床板(50)および/または支持具(60)をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の機器(10)。
【請求項9】
前記床板(50)および/または支持具(60)は、前記レーダ信号および前記レーダエコーに対して、少なくとも幾らかの区域で透過的にされている、請求項8に記載の機器(10)。
【請求項10】
前記床板(50)および/または支持具(60)は、高床システム(70)の一部とされており、前記高床システム(70)は、好ましくはDIN EN 12825に適合している、請求項8または9に記載の機器(10)。
【請求項11】
床板(50)上の物体(80)を検知するためのシステム(100)であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の機器(10)と、
データ処理装置(110)であって、前記レーダ装置(14)から前記データ信号を受信するよう構成され、かつ、(i)前記床板(50)および/または前記床板(50)の支持具(60)に関する前記物体(80)との距離、(ii)前記床板(50)および/または支持具(60)に対する前記物体(80)の方向、(iii)前記物体(80)の速さ、ならびに、(iv)前記物体(80)の種類の少なくとも1つを、前記データ信号から判定するよう構成されているデータ処理装置(110)とを備える、システム(100)。
【請求項12】
前記データ処理装置(110)は、前記物体(80)の種類を分類するよう、特に人間と無生物とを識別するよう構成されている、請求項11に記載のシステム(100)。
【請求項13】
前記データ処理装置(110)は、前記物体(80)の運動を追跡するよう構成されている、請求項11または12に記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記床板(50)の前記上側(54)に面する側に取り付けられるよう、かつ、前記レーダ装置(14)から前記レーダ信号を受信して、対応するレーダエコーを反射するよう構成されたレーダ反射器(112)をさらに備える、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム(110)。
【請求項15】
底側(52)と、前記底側(52)の反対側の歩行可能な上側(54)とを有する床板(50)上の物体(80)を検知するための方法であって、
ホルダ(12)を前記床板(50)に、前記床板(50)の中に、または、前記床板(50)の下に取り付けるステップと、
前記ホルダ(12)内に配置されたレーダ装置(14)を提供するステップであって、前記レーダ装置(14)は、レーダ信号を放射し、前記物体(80)から反射されたレーダエコーを検知し、かつ、前記レーダエコーに基づいてデータ信号を供給するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床板上の物体を検知するための機器およびシステム、ならびにそれらに対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造システムの継続的なデジタル化は、製造の柔軟性を高めることを可能にするだけでなく、人々がその中で、またはそれを用いて働く、ネットワーク化された知的な技術システムの使用にもつながる。特に、人間とロボットまたは機械との間の相互作用が増加していることにより、自動の安全な人間識別用のセンサシステムおよび測定方法がますます重要になってきている。この文脈で、人々にとっての良好な作業条件および安全性が、特にインダストリー4.0および「環境知能」において、ますます議論されるようになっている。作業工程において人と機械との間の安全な相互作用を保証するために、人体が確実に検知されることが常に保証されねばならない。
【0003】
個々の機械およびロボットはしばしば、適切なセンサをすでに装備されている。しかし、複数の機械を使用してさまざまな作業工程が行われていて、例えば無人搬送手段(automated guided vehicle(AGV))も使用されている工場では、個々の機械が提供するであろうセンサ技術に加えて、より包括的な監視システムが求められる。包括的な監視システムは、実行中の処理すべてを可能な限り監視せねばならない。すなわち、広い区域を扱い、かつ、そこで働く人々を、先を見通す仕方で危害から保護するよう設計されていなければならない。問題は、異なる機械がしばしば、レーザまたはレーダシステムなどの互いに互換性がなくネットワーク化できない異なるセンサシステムを使用していることである。さらには、空間を移動する機械またはシステムの場合、そのような個々のセンサシステムによって十分な安全性を保証するのが困難なことである。
【0004】
製造自体の増大するデジタル化に加えて、空間に関する柔軟性を高めることが製造工程について求められることも見受けられる。工場の床上の場所は、今日は製品Aが製造されていて、翌日には別の製品Bのために使用されているかもしれない。このことが、これまでなされてきたように安全技術を将来において単一の機械に結び付けるべきでない別の理由であり、むしろ、安全技術は大規模に要求されるようになるであろうし、製造において柔軟に修正できる必要がある。これらの要求を満たすために、製造設備も柔軟性についての高まる需要を満たさねばならない。その結果、いっそう洗練されたインフラ構想が使用されている。例えば、増大するデジタル化に伴う大量のケーブルおよびワイヤが、工場の床上でもつれたケーブルとなってしまうことを防ぐために、それらをますます床板下の床内にしまい込むようになっている。それにより、ケーブルおよびワイヤは取り除けられ、かつ、必要であれば適切な床板を持ち上げることにより、依然として容易にアクセスできる。
【0005】
上記インフラシステムはすでに、製造工程を監視するために広く使用されている。例えば、物体(特に人々)の検知用の重量センサを床板に装備できることは公知である。しかし、ここで、重量センサが検知できるのが重量または重量の変化のみであるという問題が生じる。そのため、どのような種類の物体により重量または重量の変化が生じるかが不明のままである。ゆえに、床板上の重量の変化が、例えば、その上を駆動するパレットトラックなどにより、または、その上を歩く人間により生じたかを識別するのは不可能である。その結果として、公知のシステムでは、円滑な製造および/または物流管理処理を保証しつつ、機械により引き起こされる危害から人を確実に保護することができない。
【0006】
適切なソフトウェアを使用して、異なる種類の物体を原則として識別できる、カメラベースのシステムも公知であるが、これらのシステムは、作業工程において、特に安全関連の用途に関して、意義ある仕方で使用するのに十分なだけ確実に作動するにはほど遠い。実際、このようなカメラベースの監視システムは、望まれるほど確実には作動せず、または、意義ある仕方で使用するには高価過ぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この背景に照らして、本発明の目的は、床板上の物体の検知を可能にし、かつ、物体の種類を識別する(例えば、人間と機械とを識別する)ことが原則として可能な機器を提供することである。同時に、装置は費用がかからず、信頼でき、かつ、可能な限り容易に使用できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、底側と、前記底側の反対側の歩行可能な上側とを有する床板上の物体を検知するための機器であって、
前記床板の上、中または下に取り付けられるホルダと、
レーダ信号を放射し、前記物体から反射されたレーダエコーを検知し、かつ、前記レーダエコーに基づいてデータ信号を供給するよう構成された、レーダ装置とを備え、
前記ホルダは、前記レーダ装置を保持するよう構成されている、機器により解決される。
【0009】
ゆえに、本開示の構想は、既存のインフラシステムに容易に組み込むことができ、かつ、その信号により原則として異なる種類の物体を識別することを可能にする安価なセンサを提供するためのレーダ技術を使用する、物体を検知するための機器を提供することである。特に、人間識別を、上記機器を使用して行うことができる。
【0010】
床板は、床の一部であっても、または、例えば工場の床を形成していてもよい。ホルダは床板の一方の側で外部に取り付けられていてもよく、または、ホルダは床板と一体化されていてもよい。例えば、床板が空洞を備えており、または、その下方に空洞を有しており、かつ、ホルダがレーダ装置と共に空洞内に配置されていることが考えられる。機器を利用するために、床板の構造は基本的にどのような設計であってもよい。特に、床板を、複数の層と床覆いとによって形成できる。層の材料は、規定のビーム伝搬が達成でき、その結果、最良の空間分解能が得られる仕方で選択できる。ホルダも、床板の下方に、特に床板の下方の物体に、取り付けることができる。
【0011】
特に、レーダ装置は、床板を通じて、かつ/または、床板から、レーダ信号を放射するよう構成されている。レーダ装置は、レーダビーム(またはレーダ信号)を放射でき、かつ、レーダビーム(またはレーダエコー)を受信できる、いずれの装置であってもよい。レーダ装置は例えば、PCB(プリント回路基板)上のレーダアンテナであってもよい。さらには、レーダ装置は集積回路(IC)であってもよい。レーダ装置により放射されるレーダコーンの開口角(aperture angle)は、90oまたはそれ以上であってもよい。原則として、開口角が大きくなるほど、物体を検知できる区域も広くなる。
【0012】
原則として、ホルダが複数のレーダ装置を収容できることが考えられる。さらに、複数の取り付け具およびレーダ装置が、床板の上、中もしくは下方に、または、床板の支持具の上もしくは中に取り付けられることが考えられる。一方で、このことにより、可能な限り大きな空間を、レーダを介して確実に検知することが保証される。第二に、このような構成により、床板の上方の空間の冗長な監視が可能となり、それによって、装置またはシステムの信頼性を高められる。冗長な設計により例えば、対象となる安全カテゴリおよび性能水準を高めることができる。
【0013】
ホルダと床板との間の距離および/またはレーダ装置と床板との間の距離は、事前設定できる。それにより、レーダ装置は、規定の経路およびやり方で、レーダビームを放射する。これにより、床板上方の監視されるべき空間の寸法を、規定のやり方で設定することができる。
【0014】
さらには、簡単なやり方で機器を既存のシステムに後付けできる。実際、行うべきなのは、ホルダおよびレーダ装置を既存の床システム(例えば高床システム)に追加することだけである。レーダ装置は、良好な仕方で部屋の中の物体を検知および認識することを可能にし、かつ、そのようにして、人々への危険を予測して適切な警告信号を発信し、または、それらを発信させることを可能にする。そのうえ、本機器は、いずれにせよ妨げとならないような仕方で設置できる。本機器は、既存のインフラを、より良く利用することを可能にする。このようにして、上述した目的は完全に解決される。
【0015】
一改良形態では、前記ホルダは、前記床板の前記底側または前記床板の前記上側に取り付けられている。床板の上側にホルダを取り付けることには、レーダ信号が、床板から放射されたときに床板と干渉しない、という利点がある。換言すれば、この場合、床板の材料を自由に選ぶことができる。特に、床板の材料も、レーダビームをわずかしか、または全く通過させない材料であってもよい。他方で、ホルダを、床板の上側と対照的に誰かが歩くことのない、床板の底側に取り付けることには、レーダ装置が、誰も踏み込めない保護された区域に取り付けられる、という利点がある。
【0016】
別の改良形態では、前記ホルダは、前記床板の支持具に、特に前記床板に接続されている前記支持具の側に取り付けられてもよく、または、前記ホルダは、前記床板の支持具内へと取り付けられてもよい。支持具は、床板の下方に配置されており、下から床板を支持している。ホルダは、支持具に取り付けることができ、または、支持具の上面に一体化することもでき、その際、支持具の上面は好ましくは、床板の上側表面と平行または同じ高さとされている。支持具はまた、レーダ装置を挿入できる空洞を備えていてもよい。
【0017】
さまざまな実施形態において、前記ホルダは、キャリアフィルム、キャリアプレート、カップ形状の要素、漏斗形状の要素、および/または、トレイ形状の要素であってもよい。例えば、ホルダは、導電性の銅箔の形態のレーダ装置を当てたキャリアフィルムであってもよい。キャリアフィルムは、床板に貼着できるように、接着層を備えていてもよい。キャリアフィルムが静電気を帯びていて(statically charged)、それにより床板に接続されていることも考えられる。しかしながら、ホルダはまた、レーダ装置が取り付けられる回路基板の形態のキャリアプレートであってもよい。しかし、マウントは同様に、レーダ装置を包囲および保持するよう構成された殻などの、より嵩高い本体を備えていてもよい。このことは、レーダ装置が、より強いレーダ信号の必要ゆえに大型になるときに、特に好適である。
【0018】
さらなる改良形態では、前記ホルダは固定手段により取り付けられていてもよい。特に、ホルダは、床板および/または支持具に、ねじ止め、釘止め、リベット止め、貼着もしくは締め付けすることができ、または、床板に印刷することができる。例えば、ホルダは、レーダ装置が配置され、かつ、ネジまたは釘で床板の底側に取り付けられる、バスケットまたはケージを含んでいてもよい。しかしながら、ホルダが、床板または支持具に磁気的に取り付けられるよう構成された磁性材料を備えることも考えられる。静電気接着または接着剤接着も可能である。さらに、ホルダは例えば、クランプ、フェルール、または、支持具に締め付けられてもよい、それに類するものを含んでいてもよい。くわえて、ホルダが(好ましくはレーダ装置と一緒に)床板に、直接印刷され、または、エンボス加工されることが考えられる。
【0019】
さらなる改良形態では、機器は、前記レーダ装置からの前記レーダ信号の一部を遮断するよう、かつ/または、向きを変えるよう構成された開口部をさらに備えている。換言すれば、機器は、レーダ装置のレーダビームを集中させるよう構成できる。例えば、開口部は金属製の外装を含んでいてもよく、金属製の外装は、レーダ装置に巻き付けられて、外装の方向に放射されるレーダ信号を遮断する。開口部とホルダとの間の距離は、調整可能であるのが好ましい。
【0020】
好ましい改良形態では、前記ホルダは前記開口部を含んでいる。例えば、開口部は、ポット形状のホルダの壁に一体化できる。しかし、開口部は、ホルダに取り付けられた板または箔として設計することもできる。
【0021】
さらなる改良形態では、機器は、前記床板および/または前記床板用の支持具をさらに備えている。この場合、ホルダは、好ましくは取り外し可能な仕方で、床板および/または支持具に接続されている。しかし、床板自体がホルダを形成することも考えられる。そのような場合、レーダ装置を、床板の中または上に直接配置することができる。特に、レーダ装置を、床板に(直接)印刷することができる。レーダ装置が床板の頂部に載置される場合、床板の材料を自由に選ぶことができる。床板用に考え得る材料には、金属(なかでも鋼)、プラスチック、ガラス、木材またはコンクリートが含まれる。
【0022】
機器が床板および/または支持具を含んでいる好ましい改良形態では、床板および/または支持具は、少なくとも幾らかの区域で、レーダ信号およびレーダエコーに対して透過性がある。換言すれば、床板および/または支持具は、少なくとも幾らかの区域で、最小の誘電率に等しい、または、最小の誘電率よりも大きい誘電率を有している。すなわち、床板または支持具は、レーダ装置からのレーダビームが完全に遮断されてしまわないように設計されている。最小の誘電率は材料に依存する。さらには、最小の誘電率は、レーダ信号の使用周波数に依存する。好ましくは、床板全体が、最小の誘電率に等しい、または、最小の誘電率よりも大きい誘電率を有している。最小の誘電率は、検知されることになる物体の距離、方向、速さまたは種類が依然として、受信されるレーダエコーから合理的に推定できるようでなければならない。
【0023】
さらなる改良形態では、前記床板および/または支持具は、高床システムの一部とされており、前記高床システムは、好ましくはDIN EN 12825に適合している。装置が高床システムを備えていることも考えられる。高床システムは一般に、所定の距離で(好ましくは平行な)部屋の床に面した少なくとも1つの床板を備えるシステムであると理解される。床板は(高床システムの)1つもしくはそれ以上の支持具により支持されており、または、床板は1つもしくはそれ以上の支持具の上で支持されている。原則として、複数の床板が平行にかつ間隔を空けた仕方で床に面する、床システムも考えられる。
【0024】
上記問題はさらに、床板上の物体を検知するためのシステムであって、
上述した機器と、
データ処理装置であって、前記レーダ装置から前記データ信号を受信するよう構成され、かつ、(i)前記床板および/または前記床板の支持具に対する前記物体の距離、(ii)前記床板および/または支持具に対する前記物体の方向、(iii)前記物体の速さ、ならびに、(iv)前記物体の種類の少なくとも1つを、前記データ信号から判定するよう構成されているデータ処理装置とを備える、システムによって解決される。
【0025】
データ処理装置は、機器に一体化できる。例えば、データ処理装置をホルダもしくは支持具に一体化でき、または、それを床板に(好ましくは床板の下側に)取り付けてもよい。しかしながら、データ処理装置はまた、機器から遠く離して配置してもよい。データ処理装置は、ケーブルまたは無線で、レーダ装置に接続できる。
【0026】
システムの改良形態において、前記データ処理装置は、前記物体の種類を分類するよう、特に人間と無生物とを識別するよう構成されている。これによって、システムは、レーダ装置の区域内で人が危険な状態にあるかを検知でき、かつ、システムが警告信号を発すべきかを決定できる。
【0027】
システムの別の改良形態において、前記データ処理装置は、前記物体の運動を追跡するよう構成されている。例えば、複数の物体の運動の概要から、今後の運動を推定することにより、差し迫った危険を検知できる。運動の概要を物体について生成し、かつ、物体が再び検知されたときに、レーダ装置の区域内の何らかの差し迫った危険について結論を引き出すために、現在の運動の概要を前の運動の概要と比較することも考えられる。
【0028】
さらなる改良形態では、前記床板の前記上側に面する側に取り付けられるよう、かつ、前記レーダ装置から前記レーダ信号を受信して、対応するレーダエコーを反射するよう構成されたレーダ反射器をさらに備えていてもよい。レーダ反射器を、例えば、工場または展示会場などの部屋の天井に取り付けることもできる。レーダ反射器は、例えば三面鏡であってもよい。レーダ反射器の使用には、見えるところに物体がない場合に、規定のレーダエコーを提供するという利点がある。物体が存在する場合、この規定のエコーは一定の仕方で変更される。換言すれば、レーダ反射器は、規定の参照エコーを生成する。このことにより、より容易かつ正確に物体を検知することができる。換言すれば、機能的安全性の点で、レーダ反射器の使用により、システムが正確に作動していることが立証できる。特に、測定が行われるごとに、すなわち、レーダ信号が放射されてエコーが受信されるごとに、邪魔になる障害物がない場合であっても、システムが稼働しているという確証が得られる。
【0029】
最後に、上記問題は、底側と、前記底側の反対側の歩行可能な上側とを有する床板上の物体を検知するための方法であって、
ホルダを前記床板に、前記床板の中に、または、前記床板の下に取り付けるステップと、
前記ホルダ内にレーダ装置を設けるステップであって、前記レーダ装置は、レーダ信号を放射し、前記物体から反射されたレーダエコーを検知し、かつ、前記レーダエコーに基づいてデータ信号を供給するステップとを含む、方法によっても解決される。
【0030】
特に、ホルダは、床板の下の(床板の)支持具の上または中に取り付けられていてもよく、レーダ装置は、床板を通って、かつ/または、床板および/もしくは支持具から、レーダ信号を放射する。
【0031】
上記特徴および以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、各場合に示唆された組み合わせにおいてのみならず、他の組み合わせまたはそれら単独でも使用できることが理解される。
【0032】
発明の実施形態を図面に示し、かつ、以下の記述において、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この開示に係る機器の第1の実施形態の、簡略化された模式的な断面図である。
図2】この開示に係る機器の第2の実施形態の、模式的な断面図である。
図3】この開示に係る機器の第3の実施形態の、模式的な断面図である。
図4】この開示に係る機器の第4の実施形態の、模式的な断面図である。
図5】この開示に係る機器の第5の実施形態の、模式的な断面図である。
図6】この開示に係る機器の第6の実施形態の、簡略化された模式的な断面図である。
図7】この開示に係る機器の第7の実施形態の、斜視図である。
図8】この開示に係るシステムの第1の実施形態の、模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1では、この開示に係る機器の第1の実施形態全体を、参照番号10により示している。機器10は、ホルダ12と、ホルダ12内に配置されたレーダ装置14とを備えている。この実施形態では、ホルダ12はポット形状とされている。レーダ装置14は、ポットの底に取り付けられている。レーダ装置14は、床板50の方向に、床板50を通って、レーダ信号を放射するよう構成されている。ホルダ12はさらに、少なくとも2つの開口124aおよび124bを備えており、それらを通じホルダ12を、ネジまたは釘などの固定手段を使用して、床板50の底側50に固定することができる。
【0035】
レーダ装置14が放射するレーダ信号が、床板50の上側54に位置する物体(ここでは図示せず)により、レーダエコーとして反射されて、レーダエコーがレーダ装置14により捕捉されると、レーダエコーの形状、または、それに基づくデータ信号に基づいて、物体80について結論を引き出すことが可能となる。特に、レーダエコーの形状またはデータ信号を介して、物体80の形状がどのようなものか、かつ、それゆえに、物体80がどんな種類のものであり得るかを解明できる。
【0036】
図2は、この開示に係る機器10の第2の実施形態の、模式的な断面図である。詳しくは、図2は、第1の床板50aと、第1の床板50aの下方で所定の距離に配置された第2の床板50bとを備える、高床システム70を示している。第1および第2の床板50aおよび50bに加えて、高床システム70はさらに、床板の角が取り付けられる2つの支持具60を含んでいる。この実施形態では、2つの床板50aおよび50bならびに支持具60のいずれも、機器10の一部ではないが、これらの構成要素が機器の一部とされている実施形態も考えられる。
【0037】
床板50aの底側52に、機器10のホルダ12が取り付けられている。この実施形態では、ホルダ12は底側52に貼着されている。ホルダ12は、第2の床板50bの窪みを通過している。ホルダ12は漏斗形状をしており、レーダ装置14が配置される底側122を含んでいる。レーダ装置14は、床板50の方向に、円錐(コーン)の形態のレーダビームを放射する。漏斗形状のブラケット12の壁側が、開口部16として働き(または、開口部16を備え)、ホイールコーン(wheel cone)の開口角(opening angle)を制限する。開口部16の勾配に応じて、開口角(aperture angle)を低減または増加させることができ、それゆえに、より狭い、または、より広い空間を、レーダ装置14で観察することができる。
【0038】
図3は、この開示に係る機器10の第3の実施形態の、模式的な断面図を示している。この実施形態では、機器10は、ホルダ12と、その中に配置されたレーダ装置14と、開口部16と、床板50と、その縁で床板50を支持する支持具60とを備えている。床板50は高床システムの一部とされている。
【0039】
ホルダ12は、床板50の下方に、より詳しくは床板50の底側52に面する側に、配置されている。実際、支持具は床90上に立っている。開口部16は、ホルダ12の周りに配置されており、かつ、床90上に立ってもいる。この実施形態では、開口部16は複数の壁(そのうちの2つが図3に示されている)を備えており、それぞれがホルダ12の側の床90から床板50に向かって延びている。壁の材料は、レーダ装置14のレーダ信号を通過させない。本実施形態では、金属が壁の材料として選択された。
【0040】
開口部16の壁は、レーダ装置14が放射するレーダビーム(またはレーダ信号)の一部を遮断するように配置されており、それにより、レーダ装置14が放射するレーダコーンの開口角を低減する。本実施形態における開口部16の壁は、自由に調整でき、かつ、床90上で全方向に動かすことができるため、レーダコーンの開口角も調整可能であり、かつ、必要に応じて変更できる。レーダコーンの開口角を変化させることにより、複数のレーダ装置が隣接して配置されている場合に、床板50のすぐ上方でレーダコーンが規定の仕方で重なり合うことまたは重なり合わないことを実現する。重なり合いには、複数のレーダエコーが冗長な情報を含み得るという利点がある。このことにより、機器10の全体的な信頼性を高めることができ、より正確に物体を検知および認識できる。
【0041】
図4は、この開示に係る機器10の第4の実施形態の、模式的な断面図を示している。図3に示す第3の実施形態と対照的に、第4の実施形態では、開口部16は床板50の支持具60に一体化されている。より詳しくは、支持具60は、その中で開口部16を一体化する空洞を含んでいる。支持具の配置は一般に、床板50の寸法に合わせられるので、開口部16の可動性はこの実施形態において制限されている。他方、第4の実施形態に係る機器10は、開口部16が何ものの妨げにもならず、かつ、支持具中で滑ったり、または傾いたりできないという利点を有している。
【0042】
図5は、この開示に係る機器10の第5の実施形態の、模式的な断面図を示している。図5は、支持具60と、第1の床板50aと、第2の床板50bとを示しており、各床板50a、50bは支持具60に接続されている。床覆い19が第2の床板50bに当てられている。床板50a、50bのいずれも、ならびに床覆い19および支持具60も、この実施形態において機器10の一部ではない。実際、この実施形態における機器10は、ホルダ12およびレーダ装置14のみを備えており、ホルダ12はこの実施形態において支持具60に一体化されている。特に、図5は、支持具60の頂部の空洞に一体化されたホルダ12を示している。この文脈において、支持具60の上側は、床板50a、50bが取り付けられる、支持具60の側であると理解すべきである。この実施形態では、機器10はさらに、レーダ装置14用のカバー18を備えている。カバー18は、レーダビームに対して透過性のある、または、レーダビームが通過できる区域を含む材料で形成しなければならない。さらには、この材料は頑丈でなければならない。なぜなら、支持具60の上側は、重い設備を載せることができねばならず、かつ接近しやすくなければならないからである。例えば、カバー18は、硬質プラスチックのキャップを含んでいてもよい。
【0043】
図6は、この開示に係る機器10の第6の実施形態の、簡略化された模式的な断面図を示している。この実施形態では、機器10は、床板50と、第1のレーダ装置14aを保持する第1のホルダ12aと、第2のレーダ装置14bを保持する第2のホルダ12bと、第3のレーダ装置14cを保持する第3のホルダ12cと、床板50に当てられる床覆い19とを備えている。床覆い19は、少なくともレーダ装置14a、14bおよび14cの領域で、レーダビームに対して透過性のある材料を備えている。この実施形態では、レーダ装置14a、14bおよび14cが放射する信号は、異なる周波数および/または信号強度とされている。それにより、異なる種類の物体を、より正確に検知できる。図6に示す床板50は、高床システムの一部であってもよい。しかし、床板50はむしろ、床90に直接に、すなわち床90から間隔を空けずに配置してもよい。実際、床板50はまた、床90の一部であってもよく、または、床90を形成し、もしくは備えていてもよい。原則として、ホルダ12またはレーダ装置14は、床板50に直接印刷することもできる。
【0044】
図7は、この開示に係る機器10の第7の実施形態の、模式的な斜視図を示している。特に、図7は、複数の支持具60により支持された複数の床板50を備える高床システム70を示している。機器10は、床板50のうちの1つの上側54に示されており、ホルダ12およびレーダ装置14を含んでいる。ホルダ12は、レーダ装置14が印刷されるキャリアフィルムまたは箔を含んでいる。拡大図から理解できるように、レーダ装置14は、レーダ信号を送信するための複数の送信器Txと、レーダエコーを受信するための複数の受信器Rxとを含んでいる。
【0045】
図8は、この開示に係るシステム100の第1の実施形態の、模式的な側面図を示している。システム100は、それぞれがホルダ(12a、12b、12c)およびレーダ装置(14a、14bおよび14c)を備える、3つの機器10a、10bおよび10cと、3つの機器10a、10bおよび10cに接続されたデータ処理装置110とを含んでいる。さらに、システム100は、3つのレーダ反射器112a、112bおよび112cを含んでいる。これらは、(例えば工場の)天井120にある連結機構128に取り付けられており、かつ、機器10a、10bおよび10cが放射したレーダ信号を受信して、それぞれのレーダ信号に対応するレーダエコーを返すよう構成されている。連結機構128はまた、例えば点灯装置122aおよび122bを取り付けるために使用されてもよい。レーダ装置14a、14bおよび14cによるレーダエコーを受信して、レーダエコーに基づくデータ信号をデータ処理装置110に供給したのち、データ処理装置110は、レーダエコーまたはデータ信号から、グラウンドシート50上に配置された物体80aおよび80bの少なくとも速度および形状(または種類)を判定する。特に、データ処理装置110は、受信したエコーから、物体80aおよび80bが生物であるかを判定できる。このことから、データ処理装置110はさらに、人間が、例えば別の検知された動く物体により、危険にさらされているかを推測してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8