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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000115
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ワーク検査装置およびワーク検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100747
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】上田 耕市
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA61
2G051AB20
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA04
2G051EA17
2G051EA23
2G051ED01
(57)【要約】
【課題】ワークの画像検査を高精度で行うのに有効なワーク検査技術を提供する。
【解決手段】ボックス部材1に装着用開口2を通じて装着されたワーク10を検査するワーク検査装置101は、ワーク10を撮影する撮影部20と、撮影部20で得られた撮影画像Iを処理する画像処理部41と、を備え、画像処理部41は、ワーク10の複数の露出面11,12のうちボックス部材1の装着用開口2に最も近い面をワーク10の上面11と定義したとき、撮影画像Iの中で明度が閾値を上回る高明度領域をワーク10の上面画像Iaとして抽出する抽出部43を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス部材に装着用開口を通じて装着されたワークを検査するワーク検査装置であって、
上記ワークは、複数の露出面を有し、上記複数の露出面が同色であり、
上記ワークを撮影する撮影部と、
上記撮影部で得られた撮影画像を処理する画像処理部と、
を備え、
上記画像処理部は、上記ワークの上記複数の露出面のうち上記ボックス部材の上記装着用開口に最も近い面を上記ワークの上面と定義したとき、上記撮影画像の中で明度が閾値を上回る高明度領域を上記ワークの上面画像として抽出する抽出部を有する、ワーク検査装置。
【請求項2】
上記画像処理部は、上記抽出部で抽出した上記上面画像を含む抽出画像と、複数の上記ワークが上記ボックス部材の正規位置に装着された状態のマスター画像と、に基づいて、上記上面画像に相当する上記ワークの配置状態を判定するワーク判定部を有する、請求項1に記載のワーク検査装置。
【請求項3】
上記ワークの上記上面の形状は4つの角がすべて等しい四角形であり、複数の上記ワークには、上記上面の第1エッジが第1配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第1ワークと、上記上面の上記第1エッジに直角な第2エッジが上記第1配列線と直交する第2配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第2ワークと、が含まれており、
上記画像処理部は、上記第1配列線と上記第2配列線が直角座標をなし、且つ上記直角座標が上記マスター画像の直角座標に重なるように上記抽出画像の座標系を補正する画像補正部を有し、
上記ワーク判定部は、上記画像補正部で得られた補正画像に含まれている上記上面画像の座標を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の座標と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定するように構成されている、請求項2に記載のワーク検査装置。
【請求項4】
上記画像処理部は、上記抽出画像の座標系における上記上面画像の位置ベクトルを演算するベクトル演算部を有し、
上記ワーク判定部は、上記ベクトル演算部で得られた上記位置ベクトルの単位ベクトル係数を上記マスター画像の座標系における上記上面画像について予め登録されている単位ベクトル係数と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定するように構成されている、請求項2に記載のワーク検査装置。
【請求項5】
上記ワーク判定部は、上記抽出画像の上記上面画像の色相および彩度を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の色相および彩度と比較することにより上記ワークの色が正しいか否かを判定するように構成されている、請求項3または4に記載のワーク検査装置。
【請求項6】
上記ボックス部材の上記装着用開口の開口平面に平行配置される照射面を有する照明部を備え、上記照明部は、上記照射面から上記ワークに向けて一方向に照明光を照射するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のワーク検査装置。
【請求項7】
ボックス部材に装着用開口を通じて装着されたワークを検査するワーク検査方法であって、
上記ワークは、複数の露出面を有し、上記複数の露出面が同色であり、
上記ワークを撮影部で撮影し、
上記ワークの上記複数の露出面のうち上記ボックス部材の上記装着用開口に最も近い面を上記ワークの上面と定義したとき、上記撮影部で得られた撮影画像の中で明度が閾値を上回る高明度領域を上記ワークの上面画像として抽出する、ワーク検査方法。
【請求項8】
抽出した上記上面画像を含む抽出画像と、複数の上記ワークが上記ボックス部材の正規位置に装着された状態のマスター画像と、に基づいて、上記上面画像に相当する上記ワークの配置状態を判定する、請求項7に記載のワーク検査方法。
【請求項9】
上記ワークの上記上面の形状は4つの角がすべて等しい四角形であり、複数の上記ワークには、上記上面の第1エッジが第1配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第1ワークと、上記上面の上記第1エッジに直角な第2エッジが上記第1配列線と直交する第2配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第2ワークと、が含まれており、
上記第1配列線と上記第2配列線が直角座標をなし、且つ上記直角座標が上記マスター画像の直角座標に重なるように上記抽出画像の座標系を補正し、その補正で得られた補正画像に含まれている上記上面画像の座標を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の座標と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定する、請求項8に記載のワーク検査方法。
【請求項10】
上記抽出画像の座標系における上記上面画像の位置ベクトルを演算し、その演算により得られた上記位置ベクトルの単位ベクトル係数を上記マスター画像の座標系における上記上面画像について予め登録されている単位ベクトル係数と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定する、請求項8に記載のワーク検査方法。
【請求項11】
上記抽出画像の上記上面画像の色相および彩度を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の色相および彩度と比較することにより上記ワークの色が正しいか否かを判定する、請求項9または10に記載のワーク検査方法。
【請求項12】
上記撮影部による上記ワークの撮影の際、上記ボックス部材の上記装着用開口の開口平面に平行配置された照射面から上記ワークに向けて一方向に照明光を照射する、請求項7~11のいずれか一項に記載のワーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電源ボックスと称されるボックス部材に装着された部品をカメラで画像検査する技術が記載されている。この画像検査では、カメラによるボックス部材の撮影画像においてワークを構成する画素領域内に検査領域を設定し、検査領域の各画素のRGB合計値の平均値と、検査領域の各画素のRGB合計値との双方から求めた値を、閾値と比較する画像解析処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-8578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の画像検査を用いる場合には、以下のような理由によって、ボックス部材を正しく識別することができず、検査領域を設定するのが難しい。このため、ボックス部材に装着されているワークの検査精度が低いという問題を抱えている。
【0005】
例えば、ボックス部材から同色のワイヤーハーネスが延びているときには、カメラによる撮影で得られた画像情報からボックス部材の外形輪郭を捉えるのが困難になり、ボックス部材に対するワークの相対位置を正確に検出するのが難しい。また、ボックス部材の下方にワイヤーハーネスの一部が潜り込みボックス部材が傾いた状態になると、ワークが斜め方向から撮影されるため、このワークの側面画像を別のワークの画像であると誤判定するという問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ワークの画像検査を高精度で行うのに有効なワーク検査技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
ボックス部材に装着用開口を通じて装着されたワークを検査するワーク検査装置であって、
上記ワークは、複数の露出面を有し、上記複数の露出面が同色であり、
上記ワークを撮影する撮影部と、
上記撮影部で得られた撮影画像を処理する画像処理部と、
を備え、
上記画像処理部は、上記ワークの上記複数の露出面のうち上記ボックス部材の上記装着用開口に最も近い面を上記ワークの上面と定義したとき、上記撮影画像の中で明度が閾値を上回る高明度領域を上記ワークの上面画像として抽出する抽出部を有する、ワーク検査装置、
にある。
【0008】
本発明の他の態様は、
ボックス部材に装着用開口を通じて装着されたワークを検査するワーク検査方法であって、
上記ワークは、複数の露出面を有し、上記複数の露出面が同色であり、
上記ワークを撮影部で撮影し、
上記ワークの上記複数の露出面のうち上記ボックス部材の上記装着用開口に最も近い面を上記ワークの上面と定義したとき、上記撮影部で得られた撮影画像の中で明度が閾値を上回る高明度領域を上記ワークの上面画像として抽出する、ワーク検査方法、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上述の各態様では、ボックス部材に装着されたワークは、検査のために撮影部によって撮影される。ワークは、ボックス部材に装着された状態において複数の露出面が同色であるため、複数の露出面の中で上面が上面以外の面に比べて明度が高くなる。そこで、ワークの上面の明度と上面以外の面の明度との間の明度差を利用すれば、撮影部で得られた撮影画像の中で明度が閾値を上回る高明度領域をワークの上面画像と判定することができる。
【0010】
これにより、ボックス部材が水平に置かれた状態でワークを水平姿勢で撮影する場合は勿論、ボックス部材が傾いて置かれた状態でワークを水平姿勢に対して傾いた姿勢で斜め方向から撮影する場合であっても、ワークの上面画像のみを上面以外の面の画像から切り離して抽出することができる。その結果、ワークの装着位置を、抽出した上面画像を利用して正確に検出することが可能になる。このとき、ワークの上面以外の面の画像が別のワークの上面画像であると判定するような誤判定を防ぐことで、ワークの画像検査における検査精度の低下を抑制できる。
【0011】
以上のごとく、上述の各態様によれば、ワークの画像検査を高精度で行うのに有効なワーク検査技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1のワーク検査装置の構成を模式的に示す図。
図2】実施形態1のワーク検査方法における画像処理のフローチャート。
図3】色相と彩度の分布をワークの上面および側面をあわせて示す図。
図4】色相と彩度の分布をワークの上面のみについて示す図。
図5】明度の分布をワークの上面と側面に分けて示す図。
図6図2のフローチャートの上面画像の抽出処理について説明するための図。
図7図2のフローチャートの画像回転処理について説明するための図。
図8図2のフローチャートの画像変形処理について説明するための図。
図9】画像変形処理後の補正画像を示す図。
図10】実施形態1にかかるマスター画像を座標値とともに示す図。
図11図10中のマスター画像のデータベースを示す図。
図12】実施形態2のワーク検査装置の構成を模式的に示す図。
図13】実施形態2のワーク検査方法における画像処理のフローチャート。
図14図13のフローチャートの位置ベクトルの演算処理について説明するための図。
図15】実施形態2にかかるマスター画像のデータベースを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上述の態様のワーク検査装置において、上記画像処理部は、上記抽出部で抽出した上記上面画像を含む抽出画像と、複数の上記ワークが上記ボックス部材の正規位置に装着された状態のマスター画像と、に基づいて、上記上面画像に相当する上記ワークの配置状態を判定するワーク判定部を有するのが好ましい。
【0015】
このワーク検査装置によれば、抽出した上面画像を含む抽出画像にマスター画像を適用することによって、ワークの配置状態を正確に判定することが可能になる。
【0016】
上述の態様のワーク検査装置において、上記ワークの上記上面の形状は4つの角がすべて等しい四角形であり、複数の上記ワークには、上記上面の第1エッジが第1配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第1ワークと、上記上面の上記第1エッジに直角な第2エッジが上記第1配列線と直交する第2配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第2ワークと、が含まれており、
上記画像処理部は、上記第1配列線と上記第2配列線が直角座標をなし、且つ上記直角座標が上記マスター画像の直角座標に重なるように上記抽出画像の座標系を補正する画像補正部を有し、
上記ワーク判定部は、上記画像補正部で得られた補正画像に含まれている上記上面画像の座標を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の座標と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定するように構成されているのが好ましい。
【0017】
このワーク検査装置によれば、上面の形状がいずれも長方形や正方形のような複数のワークをボックス部材に装着した状態で検査するとき、画像補正部は、複数の第1ワークの配置にかかる第1配列線と、複数の第2ワークの配置にかかる第2配列線と、に基づいて抽出画像の座標系を補正する。そして、ワーク判定部は、補正した補正画像に含まれている上面画像の座標をマスター画像の上面画像の座標と比較する。このとき、補正画像とマスター画像を上面画像の座標について互いに比較することによって、ワークの位置が正しいか否かを精度良く判定することが可能になる。
【0018】
上述の態様のワーク検査装置において、上記画像処理部は、上記抽出画像の座標系における上記上面画像の位置ベクトルを演算するベクトル演算部を有し、
上記ワーク判定部は、上記ベクトル演算部で得られた上記位置ベクトルの単位ベクトル係数を上記マスター画像の座標系における上記上面画像について予め登録されている単位ベクトル係数と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定するように構成されているのが好ましい。
【0019】
このワーク検査装置によれば、抽出画像の座標系における上面画像の位置ベクトルをベクトル演算部で演算して、この位置ベクトルの単位ベクトル係数をマスター画像の座標系における上面画像の単位ベクトル係数とワーク判定部で比較する。このとき、抽出画像とマスター画像を上面画像の単位ベクトル係数について互いに比較することによって、ワークの位置が正しいか否かを簡単な処理で且つ精度良く判定することが可能になる。
【0020】
上述の態様のワーク検査装置において、上記ワーク判定部は、上記抽出画像の上記上面画像の色相および彩度を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の色相および彩度と比較することにより上記ワークの色が正しいか否かを判定するように構成されているのが好ましい。
【0021】
このワーク検査装置によれば、抽出画像の上面画像の色相および彩度をマスター画像の上面画像の色相および彩度とワーク判定部で比較する。このとき、抽出画像とマスター画像を上面画像の色相および彩度について互いに比較することによって、ワークの色が正しいか否かを精度良く判定することが可能になる。
【0022】
上述の態様のワーク検査装置は、上記ボックス部材の上記装着用開口の開口平面に平行配置される照射面を有する照明部を備え、上記照明部は、上記照射面から上記ワークに向けて一方向に照明光を照射するように構成されているのが好ましい。
【0023】
このワーク検査装置によれば、照明部により照明光をワークに向けて一方向から照射することによって、照明光を多方向から照射する無影照明を使用する場合に比べて、ワークの上面の明度と上面以外の面の明度との間の明度差を大きくすることができる。これにより、撮影画像から上面画像を抽出するときの抽出精度を高めることが可能になる。
【0024】
上述の態様のワーク検査方法において、抽出した上記上面画像を含む抽出画像と、複数の上記ワークが上記ボックス部材の正規位置に装着された状態のマスター画像と、に基づいて、上記上面画像に相当する上記ワークの配置状態を判定するのが好ましい。
【0025】
このワーク検査方法によれば、抽出した上面画像を含む抽出画像にマスター画像を適用することによって、ワークの配置状態を正確に判定することが可能になる。
【0026】
上述の態様のワーク検査方法において、上記ワークの上記上面の形状は4つの角がすべて等しい四角形であり、複数の上記ワークには、上記上面の第1エッジが第1配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第1ワークと、上記上面の上記第1エッジに直角な第2エッジが上記第1配列線と直交する第2配列線に沿うように配置された状態で上記ボックス部材に装着される複数の第2ワークと、が含まれており、
上記第1配列線と上記第2配列線が直角座標をなし、且つ上記直角座標が上記マスター画像の直角座標に重なるように上記抽出画像の座標系を補正し、その補正で得られた補正画像に含まれている上記上面画像の座標を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の座標と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定するのが好ましい。
【0027】
このワーク検査方法によれば、上面の形状がいずれも長方形や正方形のような複数のワークをボックス部材に装着した状態で検査するとき、複数の第1ワークの配置にかかる第1配列線と、複数の第2ワークの配置にかかる第2配列線と、に基づいて抽出画像の座標系を補正する。そして、補正した補正画像に含まれている上面画像の座標をマスター画像の上面画像の座標と比較する。このとき、補正画像とマスター画像を上面画像の座標について互いに比較することによって、ワークの位置が正しいか否かを精度良く判定することが可能になる。
【0028】
上述の態様のワーク検査方法において、上記抽出画像の座標系における上記上面画像の位置ベクトルを演算し、その演算により得られた上記位置ベクトルの単位ベクトル係数を上記マスター画像の座標系における上記上面画像について予め登録されている単位ベクトル係数と比較することにより上記ワークの位置が正しいか否かを判定するのが好ましい。
【0029】
このワーク検査方法によれば、抽出画像の座標系における上面画像の位置ベクトルを演算して、この位置ベクトルの単位ベクトル係数をマスター画像の座標系における上面画像の単位ベクトル係数と比較する。このとき、抽出画像とマスター画像を上面画像の単位ベクトル係数について互いに比較することによって、ワークの位置が正しいか否かを簡単な処理で且つ精度良く判定することが可能になる。
【0030】
上述の態様のワーク検査方法において、上記抽出画像の上記上面画像の色相および彩度を上記マスター画像に予め登録されている上記上面画像の色相および彩度と比較することにより上記ワークの色が正しいか否かを判定するのが好ましい。
【0031】
このワーク検査方法によれば、抽出画像の上面画像の色相および彩度をマスター画像の上面画像の色相および彩度と比較する。このとき、抽出画像とマスター画像を上面画像の色相および彩度について互いに比較することによって、ワークの色が正しいか否かを精度良く判定することが可能になる。
【0032】
上述の態様のワーク検査方法において、上記撮影部による上記ワークの撮影の際、上記ボックス部材の上記装着用開口の開口平面に平行配置された照射面から上記ワークに向けて一方向に照明光を照射するのが好ましい。
【0033】
このワーク検査方法によれば、照明光をワークに向けて一方向から照射することによって、照明光を多方向から照射する無影照明を使用する場合に比べて、ワークの上面の明度と上面以外の面の明度との間の明度差を大きくすることができる。これにより、撮影画像から上面画像を抽出するときの抽出精度を高めることが可能になる。
【0034】
以下、ワークを検査するための検査技術を具現化するための実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
なお、実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、水平方向である第1方向を矢印Xで示し、水平方向であり且つ第1方向に直交する第2方向を矢印Yで示し、垂直方向である第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0036】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のワーク検査装置(以下、単に「検査装置」という。)101は、ワーク10の画像検査を自動で行うための装置である。
【0037】
ワーク10は、ボックス部材1に装着用開口2を通じて装着されている。また、このボックス部材1は、搬送用の通い箱Bに収容されている。ボックス部材1は、装着用開口2側からみたときの外形が略矩形である。本実施形態では、ワーク10は、通い箱Bに収容されたボックス部材1に装着されたままの状態で検査される。
【0038】
ワーク10は、車載用のリレーであり、ボックス部材1はリレーが装着されるリレーボックスである。リレーボックスとしてのボックス部材1から、外部との電気的接続のためのワイヤーハーネス3が延びている。
【0039】
リレーとしてのワーク10は、その外形がJIS規格やISO規格に対応した直方体である。このとき、ボックス部材1に装着された状態を装着用開口2側から見たときのワーク10の上面11の形状は4つの角がすべて等しい長方形(四角形)である。各ワーク10は、いずれも露出面である1つの上面11と4つの側面12を有し、これらの上面11及び側面12がともに同色とされている。また、ワーク10ごとに色が定められている。ここで、ワーク10の上面11は、複数の露出面のうちボックス部材1の装着用開口2に最も近い面として定義される。
【0040】
例えば、ボックス部材1が黒い樹脂製の部材であり、ワイヤーハーネス3も同色の黒色であるようなときには、カメラで得られた画像情報からボックス部材1の外形輪郭を正確に捉えるのが困難になる。また、ボックス部材1の下方にワイヤーハーネス3の一部が潜り込みボックス部材1が傾いた状態になると、ワーク10も水平姿勢に対して傾いた姿勢で斜め方向から撮影されることになる。ここでいう「水平姿勢」とは、ワーク10の上面11がボックス部材1の底面や装着用開口2の開口平面Aと概ね平行になる姿勢をいう。
【0041】
この場合には、撮影画像Iにワーク10の上面11に加えて側面12も含まれるため、側面12を別のワーク10の上面11であると誤判定するおそれがあり、ワーク10の位置を正しく検出するのが難しい。とりわけ、ボックス部材1を通い箱Bに収容した状態で画像検査する場合、通い箱Bの中でボックス部材1が傾いた状態になり易く、このような問題が顕在化する。そこで、このような問題を解消するためには、ボックス部材1を通い箱Bから一旦取出して検査台の上に水平にセットして画像検査した後に、再び通い箱Bに戻す作業が必要になり、検査工数が増えるという問題が生じ得る。
【0042】
そこで、実施形態1の検査装置101は、このような問題を解決するために設計されており、ワーク10が水平姿勢で撮影された場合は勿論、ワーク10が水平姿勢に対して傾いた姿勢で斜め方向から撮影された場合であっても、ワーク10の高精度の画像検査を可能とするものである。
【0043】
検査装置101は、撮影部20と、照明部30と、制御装置40と、を少なくとも備えている。制御装置40は、画像処理部41と照明制御部48を有する。制御装置40は、既知のCPU(Central Processing Unit)を主体に構成されている。
【0044】
撮影部20は、ワーク10をボックス部材1の装着用開口2から撮影するカメラであり、カメラ本体に内蔵された撮像素子21を有する。この撮影部20は、ワーク10の表面で反射した反射光を撮像素子21が受光することによって画像を撮像し、撮影部20で得られた撮影画像Iを制御装置40の画像処理部41に伝送するように構成されている。撮像素子21として、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーが採用される。
【0045】
照明部30は、ワーク10に照明光Lを照射するためのものであり制御装置40に電気的に接続されている。この照明部30は、撮影部20によるワーク10の撮影の際、制御装置40の照明制御部48から伝送される制御信号に応じて作動状態とされる。
【0046】
照明部30は、ボックス部材1の装着用開口2の開口平面Aに概ね平行配置される照射面31を有する。ここで、開口平面Aは、第3方向Zを法線方向とする平面として定義される。照明部30は、照射面31からワーク10に向けて一方向(第3方向Zに沿った方向)に照明光Lを照射するように構成されている。なお、この照明部30の種類は特に限定されないが、耐久性能や省エネ性能に優れたLED照明を採用するが好ましい。
【0047】
画像処理部41は、撮影部20で得られた撮影画像Iを処理するためのものであり、変換部42と、抽出部43と、画像補正部44と、ワーク判定部45と、記憶部46と、出力部47と、を有する。画像処理部41は、画像処理のための既知のGPU(Graphics Processing Unit)と、記憶部46を構成するメモリと、を有する。
【0048】
変換部42は、撮影画像IのRGB値をHSV値に変換するように構成されている。抽出部43は、撮影画像Iから特定の領域を抽出するように構成されている。画像補正部44は、抽出部43で得られた抽出画像Icを補正して補正画像Id,Ieを得るように構成されている。
【0049】
ワーク判定部45は、抽出部43で得られた抽出画像Icとマスター画像Imとに基づいて、より具体的には、画像補正部44で得られた補正画像Ieをマスター画像Imと比較することにより、上面画像Iaに相当するワーク10の配置状態を判定するように構成されている。ここでいう「ワーク10の配置状態の判定」とは、ワーク10の位置が正しいか否かを判定することや、ワーク10が正しい色であるか否かを判定することをいう。
【0050】
記憶部46は、画像処理で使用するプログラムやデータをはじめ、マスター画像Imおよび閾値Thを予め記憶するとともに、画像処理前後の各種データを必要に応じて一時的に記憶するように構成されている。
【0051】
出力部47は、画像処理部41による画像処理時の情報や、記憶部46に記憶されている情報を、出力指示信号を受信することによってモニター等の出力手段に出力するように構成されている。
【0052】
次に、実施形態1のワーク検査方法(以下、単に「検査方法」という。)について説明する。この検査方法は、ボックス部材1に装着用開口2を通じて装着されたワーク10を検査する方法である。この方法は、上記構成の検査装置101を使用して実行されるのが好ましい。
【0053】
実施形態1の検査方法では、先ず、撮影部20及び照明部30の準備を整えた状態で、ボックス部材1を収容した通い箱Bを検査台にセットする。その後、照明部30からワーク10に向けて照明光Lを照射した状態で、ワーク10を撮影部20で撮影する。
【0054】
その後、画像処理部41は、撮影部20で得られた撮影画像Iに基づいて、図2に示される処理フローにしたがって画像処理のための複数のステップ(第1ステップS101から第6ステップS106までのステップ)を順次実行する。
【0055】
(変換処理)
第1ステップS101は、撮影部20で得られた撮影画像IのRGB値をHSV値に変換する処理を行うステップである。この処理は、画像処理部41の変換部42が実行する。ここで、RGB値とは、R値(赤)、G値(緑)、B値(青)の三つの成分からなる色空間を表す色指標である。これに対して、HSV値とは、H値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)の三つの成分からなる色空間を表す色指標である。この第1ステップS101によれば、記憶部46に予め記憶されている既知の変換処理プログラムを使用してRGB値がHSV値に変換される。
【0056】
この変換処理プログラムは特に限定されないが、一例として、下記の変換計算式を使用したものを用いることができる。
【0057】
<H値(色相)>
R値、G値、B値のうち、最も大きな値を「Max」とし、最も小さな値を「Min」としたとき、H値を、以下の4つの変換計算式を用いて演算することができる。
(1)H値(R値が最大値の場合)=60×((G値-B値)/(Max-Min))
(2)H値(G値が最大値の場合)=60×((B値-R値)/(Max-Min))+120
(3)H値(B値が最大値の場合)=60×((R値-G値)/(Max-Min))+240
(4)H値(R値、G値、B値が同じ値の場合)=0
【0058】
<S値(彩度)>
R値、G値、B値のうち、最も大きな値を「Max」とし、最も小さな値を「Min」としたとき、S値を、以下の変換計算式を用いて演算することができる。
(5)S値=(Max-Min)/Max
【0059】
<V値(明度)>
R値、G値、B値のうち、最も大きな値を「Max」としたとき、V値を、以下の変換計算式を用いて演算することができる。
(6)V値=Max
【0060】
第2ステップS102は、第1ステップS101の実施後に、撮影画像Iから予め登録された色(H値およびS値)の領域を抽出するステップである。この処理は、画像処理部41の変換部42または抽出部43が実行する。ここで、使用することが想定されているワーク10の色(H値およびS値)についての情報が記憶部46に予め登録されている。例えば、ワーク10として、黄色と水色と紫色の3色のリレーの使用を想定して、各色のH値とS値の組み合わせを予め登録しておく。
【0061】
この第2ステップS102によれば、撮影画像Iの中に、予め登録されたH値とS値の組み合わせパターンに該当する想定領域が存在するときに、この想定領域を撮影画像Iから抽出することができる。例えば、3色のリレーの使用を想定している場合には、H値とS値の3つの組み合わせパターンに該当する3つの想定領域のうちの少なくとも1つが撮影画像Iから抽出される。
【0062】
図3に示されるように、H値(色相)とS値(彩度)の分布をワーク10の上面11および側面12をあわせて状態でみたとき、例えば、水色の領域と紫色の領域との間に重なり領域が形成されることがある。このため、H値とS値の組み合わせパターンのみでは水色と紫色を識別するのができず、ワーク10の色を特定するのが難しい。
【0063】
これに対して、図4に示されるように、H値(色相)とS値(彩度)の分布をワーク10の上面11のみの状態でみたとき、例えば、水色の領域と紫色の領域との間に重なり領域が形成されることがなく、識別線を隔てて水色と紫色を明確に識別できることがわかる。これは、側面12は上面11に対して照明部30との角度が大きいため、側面12からの反射光はH値とS値のバラツキが大きいことによる。そこで、撮影画像Iの中からワーク10の上面11に相当する上面画像Iaを抽出することができれば、ワーク10の色を特定するのに有効である。
【0064】
そこで、本発明者は、V値(明度)に基づいて上面画像Iaを抽出することに着目した。図5に示されるように、例えば、露出面が紫色のワーク10の場合、上面11のV値と側面12のV値との間に明確な差があることがわかる。このため、撮影画像Iの中でV値が閾値Thを上回る高明度領域を上面画像(後述の上面画像Ia)であると判定することができる。一方で、撮影画像Iの中でV値が閾値Thを下回る低明度領域を側面画像(後述の側面画像Ib)であると判定することができる。
【0065】
なお、閾値Thは、ボックス部材1に装着予定のワーク10の色、照明部30による照明光Lの照射条件、屋内の照明環境などに基づいて、適宜の値に設定されるのが好ましい。
【0066】
図6に示されるように、ワーク10が水平姿勢に対して傾いた姿勢で撮影された場合、撮影画像Iの中に、ワーク10の上面11に相当する上面画像Iaに加えて、ワーク10の側面12に相当する側面画像Ibが含まれる。また、上面画像Iaは、2組の向かい合う辺がそれぞれ平行であり且つ隣り合う2つの角の大きさが異なるような平行四辺形になる。
【0067】
(抽出処理)
図2中の第3ステップS103を第2ステップS102の実施後に実行する。この第3ステップS103は、撮影画像Iから上面画像Iaを抽出するステップである。この第3ステップS103は、画像処理部41の抽出部43が実行する。
【0068】
図6において、上面画像IaはV値が閾値Thを上回る高明度領域であり、側面画像IbはV値が閾値Thを下回る低明度領域であることを利用する。そして、撮影画像Iの中で高明度領域をワーク10の上面画像Iaと判定して、低明度領域である側面画像Ibを消去する処理を行う。この処理により上面画像Iaのみが残るため、結果的に上面画像Iaを含む抽出画像Ic(図7を参照)が得られる。
【0069】
また、第3ステップS103において、抽出部43は、上面画像Iaとともに、その上面画像IaのH値およびS値を検出して、記憶部46に一時的に記憶させる。このときの上面画像IaのH値およびS値は、後述の第6ステップS106において、ワーク10が正しい色であるか否かを判定する処理に使用される。
【0070】
図7に示されるように、複数のワーク10には、複数の第1ワーク10Aと、複数の第2ワーク10Bと、第3ワーク10Cが含まれている。
【0071】
複数の第1ワーク10Aは、その上面11の短辺である第1エッジ13が第1配列線M1に沿うように配置された状態でボックス部材1に装着されるものである。このため、抽出画像Icにおいて第1エッジ13に相当するエッジ線画像Ic1も第1配列線M1に沿うように形成される。
【0072】
複数の第2ワーク10Bは、その上面11の第1エッジ13に直角な長辺である第2エッジ14が第1配列線M1と直交する第2配列線M2に沿うように配置された状態でボックス部材1に装着されるものである。このため、抽出画像Icにおいて第2エッジ14に相当するエッジ線画像Ic2も第2配列線M2に沿うように形成される。なお、上面11の1つの頂点が第1配列線M1と第2配列線M2の交点Cに位置する第2ワーク10Bは第1ワーク10Aにも属している。
【0073】
第3ワーク10Cは、上面11の第1エッジ13が第1配列線M1から離れて配置され、且つ上面11の第2エッジ14が第2配列線M2から離れて配置された状態でボックス部材1に装着されるものである。すなわち、第3ワーク10Cは、第1ワーク10Aと第2ワーク10Bのいずれにも属さない。
【0074】
(画像回転処理)
図2中の第4ステップS104は、第3ステップS103で得られた抽出画像Icの画像回転処理を行うステップである。この第4ステップS104は、画像処理部41の画像補正部44が実行する。
【0075】
図7に示される抽出画像Icの座標系において、Y軸方向である第2方向Yに延びる第1基準線N1に対する第1配列線M1の傾斜角度αを求める。そして、抽出画像Icの全体を、第1配列線M1と第2配列線M2の交点Cを中心に第1配列線M1が第1基準線N1に重なるようにα度回転させる。この回転に伴って、第1基準線N1と第2配列線M2はともに交点Cを中心にα度回転する。第4ステップS104によれば、図8に示されるような第1補正画像Idが得られる。
【0076】
(画像変形処理)
図2中の第5ステップS105は、第4ステップS104で得られた第1補正画像Idの画像変形処理を行うステップである。この第5ステップS105は、画像処理部41の画像補正部44が実行する。
【0077】
図8に示される第1補正画像Idの座標系において、X軸方向である第1方向Xに延びる第2基準線N2に対する第2配列線M2の傾斜角度βを求める。そして、第1配列線M1は固定したままの状態で、交点Cを中心に第2配列線M1を第2基準線N2に重なるまでβ度回転させて、第1補正画像Idの全体を変形させる。このような画像変形処理は、一般的に「スキュー(せん断処理)」と称呼される。
【0078】
第5ステップS105によれば、抽出画像Icを第1配列線M1と第2配列線M2のなす角が直角になるように画像変形させることによって、図9に示されるような第2補正画像Ieが得られる。第1補正画像Idが第2補正画像Ieに圧縮されることによって、上面画像Iaの形状が平行四辺形(2組の向かい合う辺がそれぞれ平行であり且つ隣り合う2つの角の大きさが異なる平行四辺形)から長方形に変換される。したがって、ワーク10が傾いた姿勢で撮影されたのにもかかわらず、ワーク10が水平姿勢で撮影されたのと同様の形状の画像を得ることができる。
【0079】
上述のように、第4ステップS104から第5ステップS105までの処理は、概して、第1配列線M1と第2配列線M2が直角座標をなし、且つこの直角座標がマスター画像Imの直角座標に重なるように抽出画像Icの座標系を補正する処理である。
【0080】
(ワーク判定処理)
図2中の第6ステップS106は、第5ステップS105で得られた第2補正画像Ieを記憶部46に予め記憶されているマスター画像Imと比較することにより、上面画像Iaに相当するワーク10の配置状態を判定するステップである。この第6ステップS106は、画像処理部41のワーク判定部45が実行する。
【0081】
ここで、マスター画像Imについて説明する。
【0082】
図10に示されるように、マスター画像Imは、複数のワーク10がボックス部材1の正規位置(すなわち、装着が予定された位置)に装着された状態の画像である。このマスター画像Imは、位置1~位置7のうち位置2を除く全ての位置にワーク10が水平姿勢で装着されることを想定したものである。このため、マスター画像Imには各ワーク10の上面11に相当する上面画像Iaのみ配置されており、各上面画像Iaの形状が長方形になっている。
【0083】
なお、マスター画像Imは、検査装置101の撮影部20によってワーク10及びボックス部材1を実際に撮影することによって得られた撮影画像であってもよいし、或いは画像作成ソフトなどを利用してワーク10及びボックス部材1を模して作成された画像であってもよい。
【0084】
図11に示されるデータベースには、マスター画像Imの平面直角座標において基準点Dを原点としたときの各位置のXY座標と、各位置におけるワーク10の有無と、各位置におけるワーク10の正しい色が登録されている。例えば、位置1は、XY座標が(X1,Y1)であり、ボックス部材1におけるワーク10の装着予定位置であり、ボックス部材1に装着予定のワーク10の色が黄色である。また、位置2は、XY座標が(X1,Y2)であり、ボックス部材1におけるワーク10の未装着位置である。
【0085】
第6ステップS106において、図9の第2補正画像Ieに含まれている上面画像Iaの座標を、図10のマスター画像Imに予め登録されている上面画像Iaの座標と比較することにより、先ずは、各ワーク10の位置が正しいか否かが判定される(以下、「第1の判定処理」という。)。
【0086】
本実施形態の場合、マスター画像Imの上面画像Iaが位置1~位置7のうち位置2を除く全ての位置に配置されているのに対して、第2補正画像Ieに含まれている上面画像Iaもこれと同様に、位置1~位置7のうち位置2を除く全ての位置で検出されている。このため、第1の判定処理において、各ワーク10の位置が正しいと判定される。一方で、仮に、第2補正画像Ieの上面画像Iaが位置2で検出された場合には、この上面画像Iaに相当するワーク10の位置は正しくないと判定される。
【0087】
次に、第2補正画像Ieの各上面画像Iaに相当するワーク10の色が正しい色であるか否かが判定される(以下、「第2の判定処理」という。)。この第2の判定処理は、第3ステップS103で記憶した、抽出画像Icの上面画像IaのH値およびS値を記憶部46から読み出して、マスター画像Imに予め登録されている上面画像IaのH値およびS値と比較することにより行う。このとき、H値およびS値は、ワーク10の上面画像Iaについてのもの(撮影画像Iから側面画像Ibが消去されたもの)であるため、図4で説明したように、互いに色相が近い色(例えば、水色と紫色)であっても明確な識別が可能である。
【0088】
例えば、第2補正画像Ieの第1位置にある上面画像IaのH値とS値の相関が、マスター画像Imの第1位置にある上面画像IaのH値とS値の相関(図4の分布の黄色領域)に一致するときには、第1位置に実際に装着されているワーク10の色が黄色であり、正しい色であると判定される。これに対して、第2補正画像Ieの第1位置にある上面画像IaのH値とS値の相関が、マスター画像Imの第1位置にある上面画像IaのH値とS値の相関(図4の分布の黄色領域)と相違するときには、第1位置に実際に装着されているワーク10の色が黄色以外の色であり、正しい色でない(すなわち、第1位置に別の色のワーク10が装着されている)と判定される。
【0089】
第1の判定処理と第2の判定処理において、ともに正しいという判定結果の場合には、ワーク10の検査結果が「合格」となり、少なくとも一方が正しくないという判定結果の場合には、ワーク10の検査結果が「不合格」となる。このとき、画像処理部41のワーク判定部45は、ワーク10の検査結果を出力するための出力指示信号を出力部47に送信する。
【0090】
なお、第1の判定処理と第2の判定処理の順番は特に限定されるものではなく、第2の判定処理を第1の判定処理の前に行うようにしてもよい。
【0091】
次に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0092】
実施形態1では、ボックス部材1に装着されたワーク10は、検査のために撮影部20によって撮影される。ワーク10は、ボックス部材1に装着された状態において複数の露出面11,12が同色であるため、複数の露出面11,12の中で上面11が側面12に比べてV値(明度)が高くなる。そこで、ワーク10の上面11のV値と側面12のV値との間の明度差を利用すれば、撮影部20で得られた撮影画像Iの中でV値が閾値Thを上回る高明度領域をワーク10の上面画像Iaと判定することができる。
【0093】
これにより、ボックス部材1が水平に置かれた状態でワーク10を水平姿勢で撮影する場合は勿論、ボックス部材1が傾いて置かれた状態でワーク10を水平姿勢に対して傾いた姿勢で斜め方向から撮影する場合であっても、ワーク10の上面画像Iaのみを側面画像Ibから切り離して抽出することができる。その結果、ワーク10の装着位置を、抽出した上面画像Iaを利用して正確に検出することが可能になる。このとき、ワーク10の側面画像Ibが別のワーク10の上面画像Iaであると判定するような誤判定を防ぐことで、ワーク10の画像検査における検査精度の低下を抑制できる。
【0094】
したがって、実施形態1によれば、ワーク10の画像検査を高精度で行うのに有効なワーク検査技術を提供することができる。
【0095】
実施形態1によれば、抽出した上面画像Iaを含む抽出画像Icにマスター画像Imを適用することによって、ワーク10の配置状態を正確に判定することが可能になる。特に、複数の第1ワーク10Aの配置にかかる第1配列線M1と、複数の第2ワーク10Bの配置にかかる第2配列線M2と、に基づいて抽出画像Icの座標系を補正する。そして、第1補正画像Idを経て得られた第2補正画像Ieに含まれている上面画像Iaの座標をマスター画像Imの上面画像Iaの座標と比較する。このとき、第2補正画像Ieとマスター画像Imを上面画像iaの座標について互いに比較することによって、ワーク10の位置が正しいか否かを精度良く判定することが可能になる。
【0096】
実施形態1によれば、抽出画像Icとマスター画像Imを上面画像IaのH値およびS値について互いに比較することによって、ワーク10の色が正しいか否かを精度良く判定することが可能になる。
【0097】
実施形態1によれば、照明部30の照明光Lをワーク10に向けて一方向から照射することによって、照明光Lを多方向から照射する無影照明を使用する場合に比べて、ワーク10の上面11の明度と側面12の明度との間の明度差を大きくすることができる。これにより、撮影画像Iから上面画像Iaを抽出するときの抽出精度を高めることが可能になる。
【0098】
実施形態1は、以下の理由により、ワーク10が車載用のリレーであり、ボックス部材1がリレーを装着するリレーボックスである場合に特に有効である。即ち、リレーボックスがワイヤーハーネス3の影響によって通い箱Bの中で傾いた状態になり易いため、リレーを水平姿勢で画像検査するためにはリレーボックスを通い箱Bから取り出す作業と、画像検査後にリレーボックスを通い箱Bに戻す作業を要する。これに対して、実施形態1を採用すれば、リレーボックスを通い箱Bに収容したままの状態でリレーの画像検査を行うことが可能になる。その結果、リレーボックスの出し入れ工数を低減することができ、また、リレーの画像検査作業とリレーボックスの搬送作業について完全省人化を図るのに有効である。
【0099】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0100】
(実施形態2)
図12に示されるように、実施形態2の検査装置102は、実施形態1の画像処理部41とは異なる画像処理部41Aを備えている。画像処理部41Aは、実施形態1の画像補正部44に代わるベクトル演算部44Aと、実施形態1のワーク判定部45とは異なる処理を行うワーク判定部45Aと、を有する。
【0101】
ベクトル演算部44Aは、抽出画像Icの座標系における上面画像Iaの位置ベクトルを演算するように構成されている。ワーク判定部45Aは、ベクトル演算部44Aで得られた位置ベクトルの単位ベクトル係数をマスター画像Imの座標系における上面画像Iaについて予め登録されている単位ベクトル係数と比較することによりワーク10の位置が正しいか否かを判定するように構成されている。
【0102】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0103】
実施形態2の検査方法において、画像処理部41Aは、撮影部20で得られた撮影画像Iに基づいて、図13に示される処理フローにしたがって画像処理のための複数のステップ(第1ステップS201から第6ステップS206までのステップ)を順次実行する。
【0104】
なお、第1ステップS201から第2ステップS203までの処理は、実施形態1の第1ステップS101から第2ステップS103までの処理と同じであるため、その説明を省略する。
【0105】
(位置ベクトル演算処理)
図13中の第4ステップS204は、第3ステップS203で得られた抽出画像Icに含まれている上面画像Iaの位置ベクトルを演算するステップである。この第4ステップS204は、画像処理部41Aのベクトル演算部44Aが実行する。
【0106】
図14に示される抽出画像Icの座標系において、交点Cを原点として、単位ベクトルXが第2エッジ14に平行に第2配列線M2に沿って延び、単位ベクトルYが第1エッジ13に平行に第1配列線M1に沿って延びるとする。このとき、各上面画像Iaの重心位置での位置ベクトルPは、任意の係数mと単位ベクトルXとの積に、任意の係数nと単位ベクトルYとの積を加算する演算式によってあらわされる。したがって、この演算式を用いることにより、各上面画像Ia位置ベクトルPを演算することができる。
【0107】
(単位ベクトル係数抽出処理)
図13中の第5ステップS205は、第4ステップS204で演算した位置ベクトルPの単位ベクトル係数(m,n)を各上面画像Iaに紐付けて抽出するステップである。ここで、単位ベクトル係数mは、単位ベクトルXの係数であり、単位ベクトル係数nは、単位ベクトルYの係数である。この第5ステップS205は、画像処理部41Aのベクトル演算部44Aが実行する。この第5ステップS205によれば、上面画像Iaごとの単位ベクトル係数(m,n)を求めることができる。
【0108】
(ワーク判定処理)
図13中の第6ステップS206は、第5ステップS205で得られた単位ベクトル係数(m,n)を、図15に示されるマスター画像Imにおける上面画像Iaの単位ベクトル係数(m,n)と比較することによって、先ずは、各ワーク10の位置が正しいか否かが判定される(第1の判定処理)。その後、実施形態1の場合と同様に、各上面画像Iaに相当するワーク10の色が正しい色であるか否かが判定される(第2の判定処理)。
【0109】
その他の処理は、実施形態1と同様である。
【0110】
上述の実施形態2によれば、抽出画像Icの座標系における上面画像Iの位置ベクトルPを演算して、この位置ベクトルPの単位ベクトル係数(m,n)をマスター画像Imの座標系における上面画像Iaの単位ベクトル係数(m,n)と比較する。このとき、抽出画像Icとマスター画像Imを単位ベクトル係数(m,n)について互いに比較することによって、ワーク10の位置が正しいか否かを簡単な処理で且つ精度良く判定することが可能になる。
【0111】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0112】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、各実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0113】
上述の実施形態では、撮影画像Iの中からV値と閾値Thとに基づいて抽出した上面画像Iaをワーク10の配置状態を判定する場合について例示したが、これに代えて、上面画像Iaをワーク10の有無のみを判定するのに使用することもできる。
【0114】
上述の実施形態では、ワーク10の配置状態の判定として、ワーク10の位置が正しいか否かの判定(第1の判定処理)と、ワーク10の色が正しい色であるか否かの判定(第2の判定処理)の両方を行う場合について例示したが、必要に応じて、第1の判定処理と第2の判定処理のいずれか一方を省略することもできる。
【0115】
上述の実施形態では、照明部30の照射面31からワーク10に向けて一方向に照明光Lを照射する場合について例示したが、撮影画像Iの中から所望の上面画像Iaを精度良く抽出できることを条件に、これに代えて、ワーク10に向けて多方向から照明光Lを照射する構造や、屋内照明を利用するなどして照明部30自体を省略した構造などを採用してもよい。
【0116】
上述の実施形態では、ワーク10が車載用のリレーである場合について例示したが、複数の露出面を有するものであればリレー以外のワーク10を画像検査する技術に上述の実施形態を適用することができる。この場合、ワーク10の上面11の形状は長方形以外であってもよい。
【0117】
上述の実施形態では、ボックス部材1に装着されているワーク10をボックス部材1が通い箱Bに収容されたままの状態でワーク10の画像検査を行う場合について例示したが、これに代えて、通い箱Bを使用しないときには、ボックス部材1を検査台に直に置いた状態でワーク10の画像検査を行うことができることは勿論である。
【符号の説明】
【0118】
1 ボックス部材
2 装着用開口
10 ワーク
10A 第1ワーク(ワーク)
10B 第2ワーク(ワーク)
11 上面(露出面)
12 側面(露出面)
13 第1エッジ
14 第2エッジ
20 撮影部
30 照明部
31 照射面
41,41A 画像処理部
43 抽出部
44 画像補正部
44A ベクトル演算部
45,45A ワーク判定部
101,102 ワーク検査装置(検査装置)
A 開口平面
H値 色相
I 撮影画像
Ia 上面画像
Ic 抽出画像
Ie 第2補正画像(補正画像)
Im マスター画像
L 照明光
m,n 単位ベクトル係数
M1 第1配列線
M2 第2配列線
P 位置ベクトル
S値 彩度
V値 明度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15