(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115006
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】がんを診断する方法およびNK細胞活性の測定を使用した診断キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230808BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230808BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20230808BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230808BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20230808BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20230808BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
G01N33/53 P ZNA
G01N33/574 A
C12Q1/06
C07K19/00
C07K14/54
C12N15/24
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076634
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2021197948の分割
【原出願日】2012-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2011-0012983
(32)【優先日】2011-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513205259
【氏名又は名称】エヌケーマックス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NKMAX CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェ ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジュ チョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ソン
(57)【要約】
【課題】様々なタイプのがんを診断するための新しい方法に対する必要性が引き続き存在している。そのため、がんの診断および評価に使用できる方法、ならびに、かかる方法において有用なキットおよび試薬を提供することが本発明の目的である。
【解決手段】がんを診断するための方法、診断キットおよびNK細胞活性の測定に有用な組成物が提供される。がんの罹患は、血液中のNK細胞活性の測定を介したin vivo免疫系の変化をモニタリングすることにより診断され得る。したがって、がんの罹患は、本明細書に記載されるように、対象からの血液試料を用いて容易に予測することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NK細胞活性を測定する方法であって、
血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させること、および、
血液試料中のNK細胞分泌サイトカインの量を測定すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
血液試料が、全血、末梢血単核球(PBMCs)またはNK細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NK細胞の刺激が、血液試料を、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15およびインターロイキン18からなる群から選択される、少なくとも1つの刺激性サイトカインと共にインキュベートすることによって、または、血液試料を、リポ多糖(LPSs)または、ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリI:C)と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
NK細胞の刺激が、血液試料を、インターロイキン2と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
NK細胞の刺激が、血液試料を、インターロイキン2およびインターロイキン12と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
NK細胞の刺激が、血液試料を、インターロイキン12およびインターロイキン15と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NK細胞の刺激が、血液試料を、インターロイキン12およびインターロイキン18と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NK細胞分泌サイトカインが、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)およびマクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
NK細胞分泌サイトカインがインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
NK細胞分泌サイトカインが腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)が、NK細胞の活性化を正常者のものと比較するための対照群として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
NK細胞分泌サイトカインの量の測定が、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの刺激性サイトカインが、安定化ペプチドとの融合タンパク質の形態である、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
安定化ペプチドが、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
安定化ペプチドが、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115(配列番号22)、アミノ酸残基114~126(配列番号23)、アミノ酸残基119~140(配列番号24)およびアミノ酸残基130~140(配列番号25)、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134(配列番号27)、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)およびシノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させるステップが、担体タンパク質を含有する培地において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
がんの罹患または再発を検出するためのものである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
対象におけるNK細胞分泌サイトカインの量の、正常個体におけるレベルと比較した減少が、がんの罹患または再発の指標である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる作用物質を含む、
NK細胞活性を測定するためのキット。
【請求項20】
NK細胞分泌サイトカインがインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
NK細胞分泌サイトカインが腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)である、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
血液試料中のNK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる作用物質が、少なくとも1つ刺激性サイトカイン、LPSまたはポリI:Cであり、前記少なくとも1つの刺激性サイトカインが、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15およびインターロイキン18からなる群から選択される、請求項19に記載のキット。
【請求項23】
抗INF-γ抗体、抗TNF-α抗体および抗MIP-1β抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体をさらに含む、請求項19に記載のキット。
【請求項24】
がんの罹患または再発を検出するためのものである、請求項19~23のいずれか一項に記載のキット。
【請求項25】
さらに、対象におけるNK細胞分泌サイトカインの量を正常個体におけるレベルと比較するための指示を含み、ここで、対象におけるNK細胞分泌サイトカインのレベルの低減は、がんの罹患または再発の指標である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したサイトカインを含む融合タンパク質であって、前記サイトカインが、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15およびインターロイキン18からなる群から選択される、前記融合タンパク質。
【請求項27】
サイトカインがインターロイキン2である、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
サイトカインがインターロイキン12である、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
サイトカインがインターロイキン15である、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
サイトカインがインターロイキン18である、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドが、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115(配列番号22)、アミノ酸残基114~126(配列番号23)、アミノ酸残基119~140(配列番号24)およびアミノ酸残基130~140(配列番号25)、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134(配列番号27)、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)、および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)から選択される、請求項26~30のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン2、
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン12、
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン15、および、
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン18
からなる群から選択される少なくとも1つの融合タンパク質を含む、NK細胞を活性化するための組成物。
【請求項33】
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドが、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115(配列番号22)、アミノ酸残基114~126(配列番号23)、アミノ酸残基119~140(配列番号24)およびアミノ酸残基130~140(配列番号25)、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134(配列番号27)、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)、および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン2、
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン12、
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン15、および、
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン18
からなる群から選択される少なくとも1つの融合タンパク質を含む、がん診断キット。
【請求項35】
シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドが、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115(配列番号22)、アミノ酸残基114~126(配列番号23)、アミノ酸残基119~140(配列番号24)およびアミノ酸残基130~140(配列番号25)、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134(配列番号27)、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)、および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)から選択される、請求項34に記載のがん診断キット。
【請求項36】
抗INF-γ抗体、抗TNF-α抗体および抗MIP-1β抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体をさらに含む、請求項34に記載のがん診断キット。
【請求項37】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項38】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項39】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項40】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または、配列番号10のアミノ酸配列からなる、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項41】
請求項37~40のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号9の核酸配列、または、それらの相補鎖と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、オリゴヌクレオチド。
【請求項43】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号9の核酸配列、または、それらの相補鎖と少なくとも90%の同一性を有する、請求項42に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項44】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号9の核酸配列、または、それらの相補鎖と少なくとも95%の同一性を有する、請求項42に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項45】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号9の核酸配列、または、それらの相補鎖からなる請求項42に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項46】
請求項41~45のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項47】
請求項46に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2011年2月14日に出願された韓国特許出願第2011-0012983号に対する優先権および同出願の利益を主張するものであり、当該出願の開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
1.発明の技術分野
本発明はがんを診断するための方法および、NK細胞活性の測定を利用する診断キットに関する。
【0003】
2.関連技術の考察
ナチュラルキラー(NK)細胞は、病原体およびがん細胞を排除する自然免疫に関与し、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)、および、適応免疫を調節する他の分子を分泌することが知られている。NK細胞が他の細胞に遭遇すると、NK細胞は、がん細胞のようにMHCクラス1が存在しない場合、または、ウイルス感染した細胞のようにMHCクラスの形状が異常な場合に、これらの異常な細胞をそれらの分子作用を通じて攻撃するよう、それらの主要組織適合性複合体(MHCs)が、NK細胞内にシグナルを送る機構を有する。しかしながら、NK細胞は様々な種類のがんにおいて、機能および分化能に障害を有すると報告されていることから、NK細胞活性はがん細胞の生存と密接に関連している。それゆえに、がんの免疫療法のためにNK細胞の数または活性を増大させる広範な研究が行われている。
【0004】
一方、がんを診断する方法は主に、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)またはX線を使用して得られたグラフィック画像から、がんの存在を発見することを含んでいる。しかしながら、これらの検査は通常、患者が痛みや不都合が原因で検査を受ける強い必要性があるときにのみ、そして特定の組織においてのみ行われるため、がんの存在が見落とされる可能性がある。血液検査を使用したがんのリスクを決定する方法は開発されているが、がんを診断する方法としてのその利用は限られている。これは、その方法が、例えば前立腺がん、結腸がん、卵巣がん、膵がんまたは肝がんに対する血液腫瘍マーカーを使用して行われるため、患者が、がんよりもむしろ対応する臓器に病因因子がある場合に、がんが陽性であるように見えることがあるためである。抗体を使用してがんを診断する試みもあるが、そのような試みは特定のタイプのがんに限られている。
【0005】
したがって、様々なタイプのがんを診断するための新しい方法に対する必要性が引き続き存在している。
【発明の概要】
【0006】
そのため、がんの診断および評価に使用できる方法、ならびに、かかる方法において有用なキットおよび試薬を提供することが本発明の目的である。
【0007】
本発明の一側面として、NK細胞活性を測定する方法であって、該方法が、血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させること、および、血液試料中のNK細胞分泌サイトカインの量を測定することを含む方法が提供される。
【0008】
特定の非限定的な態様において、血液試料は全血試料、末梢血単核球(PBMCs)または、NK細胞であってもよい。
【0009】
さらなる態様において、NK細胞の刺激は、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18またはそれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの刺激性サイトカインと共に血液試料をインキュベートすること、または、リポ多糖(LPSs)または、ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリI:C)と共に血液試料をインキュベートすることによって行ってもよい。
【0010】
特定の態様において、NK細胞分泌サイトカインは、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)またはマクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)を含み得る。
【0011】
本方法のさらなる非限定的な態様において、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)は、NK細胞の活性化を正常者のものと比較するためのコントロール群として使用できる。
【0012】
また、特定の態様において、本方法は、安定化ペプチドと融合した少なくとも1つの刺激性サイトカインを使用して実行してもよい。例えば、限定することを望まないが、安定化ペプチドはシヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドであってもよい。かかる態様において、安定化ペプチドは、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115(配列番号22)、アミノ酸残基114~126(配列番号23)、アミノ酸残基119~140(配列番号24)またはアミノ酸残基130~140(配列番号25)、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134(配列番号27)、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)、または、シノレチン(配列番号29)のC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127を含み得る。
【0013】
さらなる態様において、血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させるステップは、担体タンパク質、例えば血清アルブミンタンパク質を含有する培地において行われる。
【0014】
前記方法は、がんの罹患または再発を検出するのに特に有用である。かかる態様において、対象におけるNK細胞分泌サイトカインの量の、正常個体におけるレベルと比較した低減は、がんの罹患または再発の指標である。
【0015】
本発明のさらなる側面として、NK細胞活性を測定するためのキットが提供される。当該キットは、血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させるための作用物質を含む。また、当該キットは、がんの罹患または再発を検出するためのものを含む、上記の方法を実行するために有用たり得る。
【0016】
当該キットのさらなる非限定的な態様において、NK細胞分泌サイトカインはインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)または、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)であってもよい。
【0017】
さらなる態様において、血液試料中のNK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させるための作用物質は、少なくとも1つの刺激性サイトカイン、LPSまたはポリI:Cを含み得、前記少なくとも1つの刺激性サイトカインは、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18の1または2以上を含む。
【0018】
記載されたキットは、特定の態様において、以下の1または2以上をも含み得る:抗INF-γ抗体、抗TNF-α抗体および抗MIP-1β抗体。いかようにも限定的であることを望まないが、当該キットは、対象におけるNK細胞分泌サイトカインの量を正常個体におけるレベルと比較するための指示をさらに含んでもよく、ここで、対象におけるNK細胞分泌サイトカインのレベルの低減は、がんの罹患または再発の指標である。
【0019】
本発明のさらなる側面として、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したサイトカインを含む融合タンパク質が提供され、当該サイトカインは、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18のいずれかである。
【0020】
記載された融合タンパク質の特定の非限定的態様において、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドは、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115(配列番号22)、アミノ酸残基114~126(配列番号23)、アミノ酸残基119~140(配列番号24)または、アミノ酸残基130~140(配列番号25)、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134(配列番号27)、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)、または、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127(配列番号29)を含んでもよい。
【0021】
上記融合タンパク質を含む組成物もまた提供される。
【0022】
また、上記融合タンパク質または上記組成物のいずれかを含むがん診断キットもまた、ここで提供される。
【0023】
上記がん診断キットは、特定の非限定的な態様において、以下のうちの少なくとも1つの抗体をも含み得る:抗INF-γ抗体、抗TNF-α抗体および抗MIP-1β抗体。
【0024】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8または、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドもまたここで提供される。限定的であることは望まないが、ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8および、配列番号10の配列と、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を含む、より高いパーセントの同一性を有してもよい。
【0025】
上記融合タンパク質およびポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドもまた提供される。例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号9の核酸配列、または、それらの相補鎖と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含むオリゴヌクレオチドが提供される。かかるオリゴヌクレオチドは、限定なしに、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7または配列番号9の配列または、それらの相補配列と、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を含む、より高いパーセントの同一性を有してもよい。
【0026】
上記のオリゴヌクレオチドを含むベクターもまた提供され、かかるベクターまたはオリゴヌクレオチドを含む宿主細胞も同様に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、それらの例示的な態様を、図面を参照して詳細に記載することにより、当業者にとってより明らかになる。
【0028】
【
図1】
図1は、hIL2、hIL12、hIL15およびhIL18を含むサイトカインのN末端またはC末端のいずれかに融合されたSPペプチドの融合産物を示した概略図である。
【0029】
【
図2】
図2は、精製されたSP融合タンパク質の電気泳動結果を示した写真図である。
【0030】
【
図3】
図3は、正常者における人為的に活性化されたNK細胞活性を、単一のサイトカイン(
図3A)または組み合わされたサイトカイン(
図3B~3D)によってNK細胞が刺激されたときに生成されたインターフェロン-γの量の分析によって示した図である。
【0031】
【
図4】
図4は、活性化されたNK細胞から分泌されたサイトカインを、サンドイッチELISA法によって示したグラフである。
【0032】
【
図5】
図5は、SP IL-2とIL-2との間のタンパク質活性(A)および安定性(B)の比較を示した図である。
【0033】
【
図6】
図6は、SP IL-2(10ng/ml)(条件A)、および、SP IL-2(5ng/ml)+IL-12(5ng/ml)(条件B)で別々に処置された、正常者およびがん患者におけるNK細胞活性を示した図である。
【0034】
【
図7】
図7は、NK細胞がIL2の刺激に従い、T細胞、NK細胞、全血およびPBMCにおいてインターフェロン-γを分泌する能力を示したグラフである。
【0035】
【
図8】
図8は、LPSによって刺激した正常者のNK細胞から分泌されたインターフェロン-γの量の変化を示したグラフである。
【0036】
【
図9】
図9は、処置されたIL12およびIL15の濃度および培地の組成の違いによる、インターフェロン-γを分泌するNK細胞の能力の変化を示したグラフである。
【0037】
【
図10】
図10は、がんの進行段階に応じた、分泌インターフェロン-γの量の変化を示したグラフである。
【0038】
【
図11】
図11は、サイトカインにより刺激された正常者のNK細胞から生成されるインターフェロン-γの、ELISAプレートを使用した分析の結果を示した図である。
【0039】
【
図12】
図12は、サイトカインによって刺激された、正常者から提供された全血のフローサイトメトリーの結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明は、がんとNK細胞の相互作用を利用した、がん罹患を診断するための方法、キットおよび試薬に関する。
【0041】
本目的のために、NK細胞活性の測定方法であって、血液試料中のNK細胞を刺激し、それにより人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させること、および、血液試料中のNK細胞分泌サイトカインの量を測定することを含む方法が提供される。
【0042】
本発明者らは、がん患者においてNK細胞活性が減少するという観察に基づいて、NK細胞活性を測定することにより、がんの罹患を一次スクリーニングし得ることを見出した。本明細書に記載される方法は、NK細胞に対して人為的な刺激を与えることによりNK細胞が正常に機能するかどうかについて決定すること、および、血液試料中に存在するNK細胞分泌サイトカインの量の変化を検出することによりNK細胞の活性化レベルを測定することが可能であり、これは、単に元々血液試料中に存在しているNK細胞の数やサイトカインの量を測定する他の方法とは異なる。例えば、NK細胞の活性化レベルを測定する従来の方法においては、51Cr放出アッセイが標的特異的細胞毒性の測定方法として使用されている。しかしながら、NK細胞活性をこのやり方で測定する場合には、放射性同位体を使用する必要があり、測定および分析が難しく、複雑で費用がかかる。そのため、当該アッセイは、がんの罹患を簡単に診断できるがんの一次スクリーニング/検査方法への使用には適しない。一方で、本発明によると、NK細胞を刺激し、NK細胞分泌サイトカインを生成させ、生成されたNK細胞分泌サイトカインを定量化することによってNK細胞活性を測定することができるため、NK細胞活性が減少した対象を、がんを患っている、または、がんを患うリスクのある対象として、有利にスクリーニングすることができる。
【0043】
本発明によると、血液試料は、限定されずに、対象から採取された全血、末梢血単核球(PBMCs)および、NK細胞を含んでよい。PBMCsまたはNK細胞は、全血の代わりに無処置(intact)で使用され得るが、特定の態様においては、手順がより簡単であり、低コストであるため、全血の使用が有利な場合がある。
【0044】
なお、本発明において、用語「対象(subject)」はがんを患っている疑い、もしくは、がんの再発を有する疑いがある、または、がんの罹患または再発を決定することを望む哺乳動物をいう。
【0045】
血液試料中に存在するNK細胞は一般的に不活性状態で存在する。本発明によると、少なくとも1つのサイトカイン、リポ多糖(LPS)またはポリイノシン:ポリシチジン酸(ポリI:C)を、血液試料中の当該NK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる役目をする作用物質(本明細書中では、アゴニストまたはアクチベーターとも呼ばれる)として使用することができる。ここで、NK細胞を活性化するために使用されるサイトカインは、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15およびインターロイキン18、または、それらの組み合わせであってよい。インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18、LPSまたはポリI:Cは、NK細胞分泌サイトカインを生成するために刺激されることが当該技術分野において広く知られている。そのため、本発明の1つの例示的な態様によると、NK細胞の刺激は、血液試料を、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15および/またはインターロイキン18を含む、少なくとも1つのサイトカインと共にインキュベートすることにより、または、血液試料をLPSまたはポリI:Cと共にインキュベートすることにより行われてもよい。
【0046】
1つの非限定的な態様において、NK細胞の刺激は血液試料をインターロイキン2と共にインキュベートすることによって行われてもよい。インターロイキン2はT細胞によって分泌されるサイトカインの1つであり、in vivoの適応免疫応答におけるT細胞によるNK細胞の活性化に関連することが知られている。また、インターロイキン2はin vitroでNK細胞を活性化するために一般的に広く使用されるサイトカインである。そのため、NK細胞の刺激は、血液試料をインターロイキン2と共にインキュベートすることによって行われてもよい。
【0047】
他の非限定的な態様において、NK細胞の刺激は、血液試料をインターロイキン2およびインターロイキン12と共にインキュベートすることによって行われてもよい。早期のがん患者の場合、NK細胞の活性が低くてもT細胞の活性が高いことがある。それに対して、末期のがん患者の場合、NK細胞だけでなく、T細胞の活性も低いことがある。インターロイキン12はNK細胞だけでなく、T細胞の活性化にも関与する。それゆえ、もしインターロイキン2と共にインターロイキン12で処置する場合、NK細胞から分泌されるサイトカインに、T細胞の刺激によって分泌されるサイトカインが加わる。そのため、NK細胞の抗がん免疫だけでなく、免疫の総合的なレベルを評価し、そして、このレベルをがんの進行の程度またはがん治療の予後を表すマーカーとして使用することが可能である。インターロイキン15およびインターロイキン18は、活性化した樹状細胞およびマクロファージにより分泌されるサイトカインであり、in vitroでの自然免疫応答の最中にNK細胞の活性化および増殖を誘導する。特に、インターロイキン12がインターロイキン15またはインターロイキン18と組み合わされた場合、比較的少量のインターロイキン12を、NK細胞におけるNK細胞分泌サイトカインの分泌を刺激するために使用することができる。そのため、NK細胞の刺激は、血液試料をインターロイキン12およびインターロイキン15、または、インターロイキン12およびインターロイキン18と共にインキュベートすることによって効果的に行うことができる。
【0048】
本発明によると、NK細胞分泌サイトカインの数値はNK細胞活性を評価する尺度として使用される。本発明において、「NK細胞分泌サイトカイン」はNK細胞から分泌されるサイトカイン、特に、人為的な刺激による活性化NK細胞からのサイトカインをいう。1つの態様において、NK細胞分泌サイトカインは、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)の群から選択される少なくとも1つのサイトカインである。インターフェロン-γはNK細胞、樹状細胞、Tc細胞、Th1細胞等から分泌され、がんの制御のための自然免疫および適応免疫において、重要な役割を果たすサイトカインとして知られる。また、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)はがん細胞を殺滅し、さらには、細菌などの外部侵入物の殺滅、T細胞の活性化の誘導に関与し、B細胞からの抗体生産のための補助的な因子としての役割を果たす。そのため、例えば、インターフェロン-γまたは腫瘍壊死因子-アルファの数値が正常者からのインターフェロン-γまたは腫瘍壊死因子-アルファの数値より小さい場合、このことは、がんの制御のためのNK細胞活性に問題があることを示す。そのため、人為的に活性化されたNK細胞から分泌されるインターフェロン-γまたは腫瘍壊死因子-アルファの量を、正常者からのインターフェロン-γまたは腫瘍壊死因子-アルファの量と比較することによって、NK細胞活性を決定することが可能である。
【0049】
一方、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)は、NK細胞の活性化を比較するための対照群として使用できる。以下の例において示すとおり、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)の数値は正常者およびがん患者の双方において同様に高い。それゆえ、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)は、正常者およびがん患者におけるNK細胞活性を分析するために使用でき、または、がん診断キットを用いた分析のための対照群として使用できる。
【0050】
NK細胞分泌サイトカインの定量化は、当該技術分野において知られるいかなる方法によって行われてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、インターフェロン-γの定量化は、インターフェロン-γ酵素結合免疫吸着アッセイ(インターフェロン-γ ELISA)を使用して行われてもよい。
【0051】
また、血液試料中のNK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる役目をする作用物質として使用される、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18を含む少なくとも1つのサイトカインは、安定化ペプチドとの融合タンパク質の形態であってよい。
【0052】
安定化ペプチドとの融合タンパク質の形態のインターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18は、野生型インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18の生物学的活性および保存安定性と比較して、同様の生物学的活性および高い保存安定性を提供することができる。例えば、サイトカインが当該安定化ペプチドと結合されると、当該サイトカインは、本来の活性を有する一方、凍結乾燥など環境の変化にも関わらず安定性を維持する。
【0053】
安定化ペプチドは、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18のNまたはC末端に結合していてもよく、当該融合タンパク質の調製は、融合タンパク質を調製する既知の方法を用いて行ってもよい。
【0054】
1つの例示的な態様によると、シヌクレインファミリーのC末端酸性テール(アルファ-シヌクレインの酸性テールアミノ酸配列、ATS)ドメインペプチドを、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18に結合できる安定化ペプチドとして使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。韓国特許第10-0506766号は、ATSペプチドが環境ストレスに対する抵抗性を融合パートナータンパク質に与えることを開示している。
【0055】
1つの例示的な態様によると、ここで使用され得る安定化ペプチドは、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115、アミノ酸残基114~126、アミノ酸残基119~140および、アミノ酸残基130~140、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127から選択される安定化ペプチドを含む。本発明において、ATSペプチドのアミノ酸配列、ATSペプチドおよび同ペプチドを含む融合タンパク質の調製方法は、韓国特許第10-0506766号に開示される方法を使用して行うことができる。以下の例を参照すると、ATSペプチドと融合されたインターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18は安定性が高く、サイトカインがTリンパ球により活性化された場合に野生型のものと同様の活性を表すことが示される。
【0056】
1つの態様において、血液試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させるステップは、担体タンパク質を含有する培地中で行うことができる。担体タンパク質は、血液試料中のNK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させ、それによってNK細胞がより多くのNK細胞分泌サイトカインを生産するのを誘導するための作用物質として使用される、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18などのサイトカインを安定化させるための役割を果たす。特定の態様において、担体タンパク質はウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0057】
また、NK細胞活性を測定する方法は、がんの罹患または再発をスクリーニングすることに使用することができる。
【0058】
NK細胞活性は、人為的に活性化されたNK細胞から分泌されるNK細胞分泌サイトカインの量を、正常者からのNK細胞分泌サイトカインの量と比較することによって測定することができる。この場合、NK細胞分泌サイトカインの量が正常者からのNK細胞分泌サイトカインのものより小さい場合に、NK細胞活性は減少したとみなされる。そのため、がんのリスクまたはがんの再発を判定することが可能である。NK細胞活性が正常者と比較して減少した場合、対象は、がんを患っている疑いのある患者、あるいは、がんの再発を有する患者として一次的に分類され得る。また、がんの罹患または再発は、通常行われるがん診断のための、CT、MRIまたはポジトロン断層撮影(PET)などのさらなる診断方法を介して、または、最終的な組織検査を介して診断され得る。本発明による方法はがんを最終的に診断する方法ではないが、当該方法は、血液を使用してがんの罹患または再発を一次スクリーニングできるという優れた利点がある。
【0059】
また、本発明は、血液試料中のNK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる役目をするアゴニストまたはアクチベーターなどの作用物質を含む、NK細胞活性を測定するためのキットを提供する。NK細胞活性を測定するための当該キットは、上記NK細胞活性を測定する方法を容易に行うために使用することができる。
【0060】
NK細胞活性を測定するためのキットにおいて、NK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる役目をする作用物質は、少なくとも1つのサイトカイン、LPSまたはポリI:Cであり得、当該サイトカインは、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15およびインターロイキン18からなる群から選択され得る。
NK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化して、インターフェロン-γなどのNK細胞分泌サイトカインを生成させる役目をする作用物質に加えて、当該がん診断キットは、NK細胞活性測定のためのさらなる構成要素、例えば、NK細胞分泌サイトカインを定量化するための抗体および基材を含んでもよい。1つの態様において、本発明のキットは、抗INF-γ抗体、抗TNF-α抗体および抗MIP-1β抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体をさらに含む。
【0061】
本発明によるキットにおける抗体は、固体基材上に固定されていてもよい。抗体は、文献(Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow & Lane; Cold Spring Harbor, 1988)中に記載される様々な方法を使用して固定することができる。適した固体基材は、細胞培養プレート、ELISAプレート、チューブおよび高分子フィルムを含み得る。さらに、固体基材は、棒、合成ガラス、アガロースビーズ、カップ、平面パック、または、固体支持体によって支持された、または固体支持体に付着した、他のフィルムまたはコーティングを含む。
【0062】
また、本発明によるキットは、インターフェロン-γなどの、NK細胞分泌サイトカインを選択的に認識する抗体を用いた免疫学的分析のために使用される試薬を含み得る。免疫学的分析は、本発明による抗体への抗原の結合を測定できるすべての方法を含み得る。かかる方法は当該技術分野において知られており、例えば、免疫細胞化学および免疫組織化学、放射性免疫測定法、ELISA、免疫ブロット、Farrアッセイ、沈降素反応、比濁法、免疫拡散法、向流電気泳動法、一元放射免疫拡散法および、免疫蛍光法を含む。
【0063】
免疫学的分析のために使用される試薬は、適した担体、検出可能なシグナルを生成する能力のある標識、溶解剤、界面活性剤を含む。また、標識材料が酵素の場合、試薬は酵素活性を測定できる基質、および、反応停止剤を含み得る。
適した担体は、限定されずに、可溶性担体、例えば、当該技術分野において知られる、生理学的に利用可能なバッファー(例えば、PBS)の1つ、または、不溶性担体、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋性デキストラン、多糖およびラテックスの表面を金属で覆うことによって得られる磁性粒子などの高分子、および、他の紙、ガラス、金属、アガロースおよびそれらの組み合わせを含み得る。
【0064】
検出可能なシグナルを生成できる標識として、酵素、蛍光物質、発光物質および放射性物質が使用され得る。酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ブドウ糖酸化酵素、リンゴ酸脱水素酵素、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、インベルターゼ等を使用することができ、フルオレセインイソチオシアネートまたはフィコビリタンパク質は、蛍光物質として使用することができ、イソルミノールまたはルシゲニンは、発光物質として使用することができ、I131、C14または、H3は、放射性物質として使用することができる。しかしながら、例示的な材料に加えて、免疫学的分析のために使用できる任意の物質をここで使用することができる。
【0065】
さらに本発明は、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したサイトカインを含む融合タンパク質を提供する。ここで、サイトカインは、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18であってもよい。上述のとおり、当該融合タンパク質は、NK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成させる役目をする作用物質として使用することができ、凍結乾燥または長期保存などの環境の変化にも関わらず、野生型インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン15またはインターロイキン18と比較して高い安定性を提供する。
【0066】
1つの例示的な態様によると、融合タンパク質は、インターロイキン2がシヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合した融合タンパク質であってもよい。
【0067】
別の例示的な態様によると、融合タンパク質は、インターロイキン12がシヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合した融合タンパク質であってもよい。
【0068】
さらに別の例示的な態様によると、融合タンパク質は、インターロイキン15がシヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合した融合タンパク質であってもよい。
【0069】
さらにまた別の例示的な態様によると、融合タンパク質は、インターロイキン18がシヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合した融合タンパク質であってもよい。
【0070】
融合タンパク質において、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドはまた、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115、アミノ酸残基114~126、アミノ酸残基119~140およびアミノ酸残基130~140、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127から選択され得る。
【0071】
また、本発明はNK細胞を活性化するための融合タンパク質の使用を提供する。上述のように、当該融合タンパク質は、血液中のNK細胞を活性化し、NK細胞分泌サイトカインの分泌を促進するために使用することができる。
【0072】
したがって、本発明はNK細胞を活性化するための組成物を提供する。ここで、組成物は、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン2、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン12、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン15およびシヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン18からなる群から選択される、少なくとも1つの融合タンパク質を含む。
【0073】
1つの例示的な態様によると、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドは、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115、アミノ酸残基114~126、アミノ酸残基119~140およびアミノ酸残基130~140、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127から選択され得る。
【0074】
また、NK細胞を活性化するための組成物は、安定化ペプチドと融合したサイトカインに加えて、融合タンパク質を維持および保存することが可能なバッファーを含み得る。
【0075】
さらに、本発明は、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン2、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン12、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン15および、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドに結合したインターロイキン18からなる群から選択される、少なくとも1つの融合タンパク質を含む、がん診断キットを提供する。上述のとおり、対象から採取された血液試料を融合タンパク質と共にインキュベートすると、血液試料中のNK細胞が活性化される。そのため、対象におけるNK細胞活性は、NK細胞の活性化により生成されたインターフェロン-γを定量化することにより測定することができ、それによって、正常者のNK細胞活性より低いNK細胞活性を有する対象を、がんを患っている、または、がんの再発を有するリスクのある患者として分類することにより、がんを一次診断することができる。
【0076】
1つの例示的な態様によると、シヌクレインファミリーのC末端酸性テールドメインペプチドは、α-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基103~115、アミノ酸残基114~126、アミノ酸残基119~140およびアミノ酸残基130~140、β-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基85~134、γ-シヌクレインのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127および、シノレチンのC末端酸性テールドメインのアミノ酸残基96~127から選択され得る。
【0077】
融合タンパク質に加えて、当該がん診断キットは、本発明による診断方法を行うために使用されるさらなる構成要素、例えばNK細胞分泌サイトカインを定量化するための抗体および基材を含み得る。これらの構成要素は、NK細胞活性を測定するためのキットに関連して上述されている。上述の方法におけるこれらの構成要素を使用するための説明書もまた、キットに含まれ得る。
【0078】
本発明の好ましい態様のこれらおよび他の特徴、側面および利点が、以下の例において、より十分に記載されることは明らかである。これらの例が、説明の目的のためだけに提供され、発明の範囲を限定することを意図しないこともまた理解されるべきである。当業者は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、他の均等物の作製および改良を行うことができることを理解する。
【実施例0079】
例
調製例1:安定化ペプチド-IL融合タンパク質を有する発現ベクターの構築
安定化ペプチドと融合したIL-2、IL-12、IL-15またはIL-18を調製するために、発現ベクターを構築した。α-シヌクレインのアミノ酸残基119~140を含有するペプチド(配列番号23、以下「SP」と称する)を安定化ペプチドとして使用した。IL2、IL12p35、IL12p40、IL15およびIL-18のcDNAを、全RNA抽出キット(Invitron Biotechnology)を使用してヒトリンパ球から全RNAを単離し、逆転写酵素(Invitrogen)を使用して全RNA逆転写することによって得た。得られたcDNAを鋳型として使用し、各cDNA遺伝子に特異的な以下のプライマーを使用して、PCRで増幅した。
【数1】
【0080】
図1は、IL2、IL12p35、IL12p40、IL15およびIL-18を含む、上記サイトカインとSPとの融合産物のコンストラクトを示す概略図である。同図に図解するとおり、SP-hIL2融合産物は、PCR増幅したhIL2およびα-シヌクレインのアミノ酸残基119~140をコードする遺伝子を、pRSETA発現ベクターに順次サブクローニングすることによって構築した。SP-hIL12p40融合産物は、PCR増幅したhIL12p40およびα-シヌクレインのアミノ酸残基119~140をコードする遺伝子を、pVL1393発現ベクターに順次サブクローニングすることによって構築した。SP-hIL12p35融合産物は、PCR増幅したSP-hIL12p35およびα-シヌクレインのアミノ酸残基119~140をコードする遺伝子を、pVL1393発現ベクターに順次サブクローニングすることによって構築した。hIL15-SP融合産物は、PCR増幅したhIL15およびα-シヌクレインのアミノ酸残基119~140をコードする遺伝子を、pRSETA発現ベクターに順次サブクローニングすることによって構築した。SP-hIL18融合産物は、PCR増幅したhIL18およびα-シヌクレインのアミノ酸残基119~140をコードする遺伝子を、pRSETA発現ベクターに順次サブクローニングすることによって構築した。すべてのコンストラクトの配列はDNAシークエンシングによって確認した。
【0081】
SP-hIL2融合産物の核酸およびアミノ酸配列は、配列番号1および2にそれぞれ記載されている。SP-hIL12p40融合産物の核酸およびアミノ酸配列は、配列番号3および4にそれぞれ記載されている。SP-hIL12p35融合産物の核酸およびアミノ酸配列は、配列番号5および6にそれぞれ記載されている。
図1に示すように、6×His-tag配列が、ウィルスによって発現されるSP-hIL12p40融合産物およびSP-hIL12p35融合産物の単離および精製の目的のために、各ベクターに含有される。hIL15-SP融合産物の核酸およびアミノ酸配列は、配列番号7および8にそれぞれ記載されている。また、SP-hIL18融合産物の核酸およびアミノ酸配列は、配列番号9および10にそれぞれ記載されている。
【0082】
調製例2:組換えSP融合タンパク質の発現および精製
組換えSP-hIL2タンパク質を発現するために構築した発現ベクターは、Escherichia coli BL21(DE3)RIPL(Invitrogen)に形質転換し、次いでインキュベートした。培養液を10,000rpmで10分間遠心分離し、細胞ペレットを得た。細胞ペレットはリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)に再懸濁し、その後、超音波処理によってホモジナイズした。E. coliにおいて不溶性の形態で発現されたSP融合タンパク質をリフォールディングの手順に供し、その後、イオン-交換樹脂を使用して精製した。
【0083】
組換えSP-hIL12タンパク質を発現するために構築した2つの発現ベクターは、昆虫細胞系であるsf21細胞にそれぞれトランスフェクトし、ウィルス培養液を製造した。得られた2つのウィルス培養液は、IL12p40がIL12p35に結合したヘテロ二量体IL12p70タンパク質を生産するために、同時に昆虫sf21細胞系にトランスフェクトし、これをその後、精製した。
【0084】
組換えhIL15-SPタンパク質を発現するために構築した発現ベクターは、E. coli BL21(DE3)RIPL(Invitrogen)に形質転換し、次いでインキュベートした。培養液を10,000rpmで10分間遠心分離し、細胞ペレットを得た。細胞ペレットはPBS(pH7.4)に再懸濁し、その後、超音波処理によってホモジナイズした。E. coliにおいて可溶性の形態で発現されたSP融合タンパク質を、イオン-交換樹脂を使用して精製した。
【0085】
組換えSP-hIL18タンパク質を発現するために構築した発現ベクターは、E. coli BL21(DE3)RIPL(Invitrogen)に形質転換し、次いでインキュベートした。培養液を10,000rpmで10分間遠心分離し、細胞ペレットを得た。細胞ペレットはPBS(pH7.4)に再懸濁し、その後、超音波処理によってホモジナイズした。E. coliにおいて可溶性の形態で発現されたSP融合タンパク質を、イオン-交換樹脂を使用して精製した。
【0086】
精製したSP融合タンパク質(3μg)は、最終精製タンパク質を確認するために15%SDS-PAGE使用して電気泳動した(
図2:(a)SP-hIL2タンパク質(ATGen, Cat# ATGK04)、(b)IL15-SPタンパク質(ATGen, Cat# ATGK06)および(c)SP-IL18タンパク質(ATGen, Cat# ATGK07))。
【0087】
実験例1:全血においてNK細胞を活性化できるサイトカインの種類の確認
正常者からの全血1mlとRPMI1640培地1mlとを24ウェル細胞培養プレートに入れ、10ng/mlの各組換えヒトインターロイキンIL-2、IL-12、IL-15およびIL-18と混合し、その後24時間培養した。24時間の培養後、上清を採取し、上清中のインターフェロン-γの量をサンドイッチELISA法を使用して測定した(
図3A)。結果として、正常者の血液試料中のNK細胞によって分泌されたサイトカインは、微量であったため、検出されなかったが、血液試料をIL-2、IL-12、IL-15およびIL-18の少なくとも1つで処理すると、血液試料中のNK細胞から分泌されるサイトカインのレベルは上昇した。血液試料をNK細胞スティミュレーターのみで処理すると、血液試料中のインターフェロン-γのレベルが、特にIL-2で処理した群およびIL-12で処理した群において上昇することが分かった(
図3A)。
【0088】
また、正常者からの全血1mlとRPMI1640培地1mlとを24ウェル細胞培養プレートに入れ、
図3B(各10ng/ml)に示すように、組換えヒトインターロイキンの様々な組み合わせにより処理し、24時間培養した。24時間の培養後、上清を採取し、インターフェロン-γのレベルを上記と同じ方法で測定した。全血をNK細胞スティミュレーターの様々な組み合わせで処理すると、インターフェロン-γのレベルが、特にIL-2+IL-12の存在下において上昇することが分かった(
図3B)。
【0089】
さらに、IL-12およびIL-15の組み合わせでの処理の後のインターフェロン-γのレベルを測定するために、全血を
図3Cに示す濃度のNK細胞スティミュレーターで処理し、24時間培養した。24時間の培養後、上清を採取し、インターフェロン-γのレベルを上記と同じ方法で測定した。
【0090】
IL-12およびIL-18の組み合わせの処理の後のインターフェロン-γのレベルを測定するために、全血を
図3Dに示す濃度のNK細胞スティミュレーターでも処理し、24時間培養した。24時間の培養後、上清を採取し、インターフェロン-γのレベルを上記と同じ方法で測定した。
【0091】
実験例2:IL-2で人為的に活性化させたNK細胞から分泌されるサイトカインの種類の確認
全血試料を61人の正常者および50人のがん患者から取得した。全血1mlとRPMI1640培地1mlとを24ウェル細胞培養プレートに入れ、10ng/mlの組換えヒトインターロイキンSP IL-2で処理し、その後24時間培養した。24時間の培養後、上清を採取し、その後、サンドイッチELISA法を使用して、インターフェロン-γ、TNF-αおよびMIP-1βのレベルを測定した。結果として、
図4に示すように、インターフェロン-γおよびTNF-αが、がん患者のよりも少ない量で正常者の全血から分泌されたが、MIP-1βは、正常者およびがん患者の全血試料から分泌されたことが確認された。
【0092】
疾患検査に使用されるin vitro診断試薬の場合、様々な検証技術が使用されている。ここでは、一般的に、正常範囲とカットオフ分析を使用した。正常範囲は、各試料群の平均値および標準偏差を測定するために使用される参照範囲であり、カットオフ分析は、in vitro診断試薬の推定値を計算することによって臨床的感度および臨床的特異度を測定する方法である。臨床的感度は、患者が疾患を患っている場合に、診断検査の結果が陽性を示すことが実証される確率を意味し、臨床的特異度は、患者が疾患を患っていない場合に、診断検査の結果が陰性を示すことが実証される確率を意味する。
【0093】
カットオフ値が10%超および10%未満である場合、カットオフ値はそれぞれ、正および負の値に設定されていると仮定する。その場合、臨床的感度および臨床的特異度はカットオフ分析を使用して測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0094】
がん患者および正常者の群において、IFN-γは98.4%の感度および98%の特異度を有することが測定された。TNF-αは90.9%の感度および69%の特異度を有することが測定され、IFN-γのものより低かったが、最新の開発されたがん診断キットは高くても20~30%の特異度を有する。それゆえ、約70%またはそれを超える特異度を有するTNF-αもまた、NK細胞活性を測定するためのがん診断キット用のマーカーとして使用し得ることが予想される。
【0095】
実験例3:SP IL-2およびIL-2の安定性の比較
SP IL-2およびIL-2の安定性を比較するために、2人から全血試料を採取した。得られた全血試料のそれぞれ1mlとRPMI1640培地1mlとを、24ウェル細胞培養プレートに入れ、その後、SP IL-2およびIL-2を加え、完全に混合し、その後24時間培養した。24時間の培養後、上清を採取し、上清中のインターフェロン-γのレベルをサンドイッチELISA法を使用して測定した。IL-2およびSP IL-2の活性分析の結果から、2つのタンパク質の活性に違いがないことが分かった(
図5A)。しかしながら、それぞれ全血培養条件下において、IL-2ではなくSP IL-2で全血を処理した場合、NK細胞がSP IL-2によって活性化され、それによってインターフェロン-γのレベルが上昇したことが確認できた(
図5B)。このことは、2つのタンパク質の活性に違いはないが、SPを適用することでIL-2の安定性が増大することを示す。
【0096】
実験例4:NK細胞を刺激するための条件に応じた、正常者およびがん患者からのNK細胞活性の比較
20人の正常者および48人の末期(3~4段階)がん患者から採取した全血試料のそれぞれ1mlと、RPMI1640培地1mlとを、24ウェル細胞培養プレートに入れ、各試料を2つのサブグループに分け、サブグループをそれぞれ、SP IL-2(10ng/ml)(条件A)およびSP IL-2(5ng/ml)+IL-12(5ng/ml)(条件B)で処理し、その後24時間培養した。培養の後、上清を採取し、インターフェロン-γのレベルをサンドイッチELISA法を使用して測定した。
【0097】
結果として、条件Aの場合において、
図6に示すように、正常者の約90%が高いインターフェロン-γレベルを有したが、がん患者の大半は低いインターフェロン-γレベルを有したことが分かった。条件Bの場合においても、正常者は高いインターフェロン-γレベルを有したが、がん患者の大半は低いインターフェロン-γのレベルを有したことが分かった。しかしながら、条件Aの場合と比較して、条件Bの場合における、高いインターフェロン-γレベルはがん患者においてより高かった。SP IL-2のみで全血試料を処理する場合、NK細胞のみが特異的に活性化される(以下の実験例5および
図7参照)が、全血試料がSP IL-2およびIL-12の組み合わせで処理する場合、NK細胞はT細胞と共に活性化されるようである。それゆえ、インターフェロン-γのレベルがT細胞の活性化により上昇するようである。そのため、T細胞活性が残っているがん患者の一部において、高いインターフェロン-γレベルが観察される可能性があると考えられる。条件Bで処理された場合であっても、がん患者が低いインターフェロン-γレベルを有する場合、NK細胞の抗がん免疫および全般的な全身性免疫ががん患者において減少したと推定できる。これを、がんの進行と予後を決定するための重要なマーカーとして使用することが考えられる。
【0098】
実験例5:血液試料の種類に応じた、正常者およびがん患者のNK細胞活性の比較
正常者からの血液試料の種類に応じた、IL2によるインターフェロン-γ分泌能力の違いを決定するために、以下の実験を行った。(a)T細胞からのIL2 1ng/mlに対するNK細胞のインターフェロン-γ分泌能力、(b)NK細胞からのIL2 1ng/mlに対するNK細胞のインターフェロン-γ分泌能力、(c)全血からのIL2 1ng/mlに対するNK細胞のインターフェロン-γ分泌能力、および(d)PBMCからのIL2濃度に応じたNK細胞のインターフェロン-γ分泌能力を測定した。結果を
図7に示す。インターフェロン-γは上記と同じ方法で測定した。結果として、T細胞におけるIL2の活性化によって分泌されたインターフェロン-γの量は変化したが、未処理群のインターフェロン-γのものと大きく違わなかったため、T細胞は血液試料として使用するには適さなかった。全血、PBMCsおよびNK細胞において、未処理群のインターフェロン-γの量と比較して、インターフェロン-γの量に有意な差があった。そのため、全血、PBMCsおよびNK細胞は、本発明による方法およびキットに適用するための好適な血液試料であると評価された。
【0099】
実験例6:LPSによる、正常者から提供されたNK細胞活性の比較
血液試料中のNK細胞を刺激し、人為的にNK細胞を活性化してインターフェロン-γを生成させる役目をする作用物質の他の例として、LPSを、ヒト全血からのインターフェロン-γの量を測定するために使用した。
図8に示すように、インターフェロン-γの分泌が50ng/mlのLPSによって誘導されたことが明らかとなり、これはNK細胞がLPSなどの非特異的アゴニストで刺激される場合であっても、NK細胞が人為的に活性化し、インターフェロン-γを生成し得ることを示すものである。
【0100】
実験例7:安定化ペプチドと融合したhIL12およびhIL15によるNK細胞の刺激
NK細胞をインキュベートするチューブとして、抗凝固剤であるヘパリンナトリウムを含有するチューブ(BD)を購入し、血液の凝固を防ぐために使用した。5mlの全血を採取し、抗凝固剤(ヘパリンナトリウム)を含有するチューブの中に入れた。得られた全血の1mlをRPMI1640培地と混合し、NK細胞アクチベーターであるSP-hIL2/hIL12をそれに加えた。得られた混合物を37℃で16~24時間インキュベートした。安定化ペプチドが融合したSPhIL2およびhIL12による、全血におけるNK細胞の刺激は、上記実験例において記載された方法に従ってインキュベートした血液中のインターフェロン-γの量を測定することにより決定した。
【0101】
また、全血の培養条件に応じて分泌されるインターフェロン-γの量を測定した。
図9に示すように、NK細胞を、ウシ血清アルブミンなどの担体タンパク質が添加されたPBS中でインキュベートした場合、NK細胞をPBS中でインキュベートした場合と比較して、NK細胞のインターフェロン-γ分泌能力が上昇したことが明らかとなった。
【0102】
実験例8:がんの進行段階に応じたインターフェロン-γ分泌の違い
がんの進行段階応じた分泌インターフェロン-γの量を決定するために、がん患者1(乳癌から完全に回復した患者)、がん患者2(脳腫瘍を患っている疑いのある患者)および正常者からの全血を、IL12 100ng/mlおよびIL15 1000ng/mlが添加されたRPMI1640培地中で24時間インキュベートし、分泌されたインターフェロン-γの量を上記のとおりに測定した。全血はフローサイトメトリーにも供した。
【0103】
結果として、
図10に示すように、インターフェロン-γの分泌能力が、正常者、がん患者1およびがん患者2の順に確認された。そのため、分泌されるインターフェロン-γの量は、がんの進行段階に応じて異なることが確認された。これらの事実から、本発明による方法が、血液試料中のNK細胞によって分泌されるインターフェロン-γの量を測定し、それによって、がんの罹患および進行段階の予測、または、がんの再発を予測するために使用できることが分かった。
【0104】
実験例9:NK細胞の刺激により生成されるインターフェロン-γの定量化
NK細胞をインキュベートするチューブとして、抗凝固剤であるヘパリンナトリウムを含有するチューブ(BD)を購入し、血液の凝固を防ぐために使用した。5mlの全血を8人の正常者から採取し、抗凝固剤(ヘパリンナトリウム)を含有するチューブの中に入れた。得られた全血の1mlをRPMI1640培地と混合し、安定化ペプチドと結合したSP-hIL12/hIL15-SPをそれに加えた。得られた混合物を37℃で16~24時間インキュベートした。
【0105】
37℃でインキュベートした8人の正常者からの全血を1500~2000gで遠心分離し、上清としての血清を得た。その後、血清の150~200μlを採取し、インターフェロン-γELISAに供した。0.05%Tween一次抗体(抗ヒトインターフェロン-γモノクローナル抗体、ATGen、Cat# ATGK02)をコーティングバッファー(0.1炭酸ナトリウム、pH9.5)で1:1000の比率に希釈した。希釈した一次抗体を、100μl/ウェルの量で96ウェルマイクロタイターELISAプレート(Nunc Maxisorp、NUNC, Naperville, IL)に分け、16~18時間、4℃で維持した。その後、プレート内の溶液を除去し、プレートを400μl/ウェルの量の洗浄溶液(0.05%Tween20を含有するPBS)で洗浄した。この場合、洗浄は3回行った。その後、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するPBSを300μl/ウェルの量で分け、室温で1時間維持した。その後、プレート内の溶液を除去し、プレートを400μl/ウェルの量のPBST(0.05%Tween20を含有するPBS溶液)で洗浄した。この場合、洗浄は3回行った。一次抗体でコーティングした96ウェルマイクロタイターELISAプレートをシールし、使用するために4℃で保管した。
【0106】
インターフェロン-γ標準溶液(組換えヒトインターフェロン-γ(ATGen, Cat# IFG4001)200ngおよび0.05%Proclin300を含有するPBS)を希釈し、一次抗体でコーティングした96ウェルマイクロタイターELISAプレートに100μl/ウェルの量で分け、実験段階で調製した患者の血清を100μl/ウェルの量で分け、その後室温で2時間維持した。
【表2】
【0107】
2時間後、96ウェルマイクロタイターELISAプレート内の溶液を除去し、プレートを400μl/ウェルの量の洗浄溶液で洗浄した。この場合、洗浄は3回行った。その後、2次抗体(ビオチン化抗ヒトインターフェロン-γモノクローナル抗体(ATGen Cat# ATGK03))を希釈溶液で1:500の比率に希釈し、100μl/ウェルの量で分け、その後室温で1時間維持した。その後、プレート内の溶液を除去し、プレートを400μl/ウェルの量の洗浄溶液で3回洗浄した。HRP結合ストレプトアビジン溶液(Thermo Scientific, Cat# 21130)を、希釈溶液で1:3000の比率に希釈し、100μl/ウェルの量で分け、その後室温で30分維持した。その後、希釈したHRP結合ストレプトアビジン溶液をELISAプレートに分け、1時間インキュベートした。1時間の培養の後、96ウェルマイクロタイターELISAプレート内の溶液を除去し、プレートを400μl/ウェルの量の洗浄溶液で3回洗浄した。
【0108】
テトラメチルベンジジン(TMB)1mgを、ジメチルスルホキシド(DMSO)1mlに溶解し、得られた混合液を0.05Mクエン酸リン酸塩バッファー9mlで希釈して基質溶液を調製した。その後、基質溶液を100μl/ウェルの量でプレートに分け、室温で30分間維持した。
【0109】
反応停止溶液(2N希硫酸溶液)を100μl/ウェルの量で分けて反応を停止させ、得られた反応液をELISAリーダーを使用して450nmで測定した。
【0110】
8人の正常者からの全血を使用して測定したNK細胞のインターフェロン-γ分泌能力を
図11に示す。これらの結果は、全血がサイトカインによって刺激されると、血液中に存在する免疫細胞がインターフェロン-γの分泌を誘導するために効果的に活性化されることを示す。
【0111】
さらに、8人の正常者からの全血をサイトカインによって刺激した後、全血をフローサイトメトリーに供した。結果を
図12に示す。これらの結果から、NK細胞が全血の刺激によって活性化されたときに、NK細胞が細胞毒性を示したことが明らかとなった。CD56はNK細胞のマーカーであり、CD107aはNK細胞が細胞傷害性顆粒を分泌していることを示すマーカーである。
図11のインターフェロン-γ分泌結果が、
図12のNK細胞による細胞傷害性の結果と顕著に相関することから、全血の刺激によるNK細胞のインターフェロン-γ分泌能力は、間接的にNK細胞の細胞傷害性を表すことが分かった。
【0112】
本発明によると、がんの罹患または再発は、例えば、がんを患っている、または、がんの疑いのある対象においてin vivo免疫システムにおける変化をモニタリングすること、および、血液中のNK細胞活性を測定することによって診断することができる。そのため、本発明は、対象からの血液試料を使用して、がんの罹患または再発を予測することに有用たり得る。
【0113】
本明細書に例示的な態様を開示したが、他のバリエーションが可能であることを理解すべきである。そのようなバリエーションは、本発明の例示的な態様の範囲からの逸脱としてみなされるべきではなく、当業者にとって明らかであるようなすべてのそのような改変は以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0114】
本明細書で引用されるすべての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
全血試料中のNK細胞を刺激し、それによって人為的にNK細胞を活性化してNK細胞分泌サイトカインを生成および分泌させるステップが、担体タンパク質を含有する溶液において行われる、請求項1に記載の方法。
NK細胞の刺激が、全血試料を、インターロイキン18または安定化ペプチドとの融合タンパク質の形態であるインターロイキン18と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1または6に記載の方法。
NK細胞の刺激が、全血試料を、インターロイキン15または安定化ペプチドとの融合タンパク質の形態であるインターロイキン15と共にインキュベートすることによって行われる、請求項1または6に記載の方法。
NK細胞活性の測定が、対象からの全血試料中に分泌されたNK細胞分泌サイトカインの測定量を、正常者の全血試料中に分泌されたNK細胞分泌サイトカインの測定量と比較することを含む、請求項1に記載の方法。