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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011502
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】冷却構造およびパルス電源
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230117BHJP
   H01L 23/44 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H01L23/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094092
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021114720
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022016852
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長田 俊宏
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA07
5E322AA09
5E322DA00
5E322FA01
5F136BA03
5F136CA01
5F136CB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気的直列に接続されている複数個のスイッチ素子の冷却効率の向上や当該各スイッチ素子の電圧分担の均一化に貢献可能な冷却構造及びパルス電源を提供する。
【解決手段】電気機器11は、筐体状で絶縁性の容器21と、その容器21の内周側に充填されている絶縁性の液状冷媒3と、複数個のスイッチ素子SWが電気的直列に接続されているスイッチ素子群Gと、容器21の一端側に設けられて液状冷媒3を冷却する熱交換部41と、を備える。スイッチ素子群Gを、容器21の内周側における熱交換部41から離反した位置で、液状冷媒3に浸漬させる。熱交換部41は、容器21の一端側を成している熱伝導性の隔壁部2cと、その隔壁部2cから容器21の内周側に突出して液状冷媒3に浸漬されている内周側フィン4aと、隔壁部2cから容器21の外周側に突出している外周側フィンと4bと、その外周側フィン4bに送風する送風機4cと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体状で絶縁性の容器と、
前記容器の内周側に充填されている液状冷媒と、
複数個の半導体スイッチング素子が電気的直列に接続されているスイッチ素子群と、
前記容器の一端側に設けられ、前記液状冷媒を冷却する熱交換部と、
を備え、
前記スイッチ素子群は、前記容器の内周側における前記熱交換部から離反した位置で、前記液状冷媒に浸漬されていることを特徴とする冷却構造。
【請求項2】
前記熱交換部は、
前記容器の一端側を成している熱伝導性の隔壁部と、
前記隔壁部から前記容器の内周側に突出して前記液状冷媒に浸漬されている内周側フィンと、
前記隔壁部から前記容器の外側側に突出している外周側フィンと、
前記外周側フィンに送風する送風機と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造。
【請求項3】
前記熱交換部は、
前記容器の一端側を当該容器の内外方向に貫通して前記液状冷媒に浸漬され、当該容器の外周側から冷媒を循環させることが可能な循環管路と、
前記循環管路の外周面のうち前記容器の内周側に設けられた放熱フィンと、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造。
【請求項4】
前記熱交換部は、
前記容器の一端側を成している熱伝導性の隔壁部と、
前記隔壁部から前記容器の内周側に突出して前記液状冷媒に浸漬されている内周側フィンと、
前記隔壁部の内部に形成され、前記容器の外周側から冷媒を循環させることが可能な循環路と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造。
【請求項5】
前記熱交換部は、
複数個のラジエータフィンを有したラジエータを具備して成り、
前記ラジエータフィンが、前記容器の内周面側から突出して前記液状冷媒に浸漬されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造。
【請求項6】
前記容器の内周側において前記熱交換部と前記スイッチ素子群との両者間を交差する方向に延在しているバッフルを、更に備え、
前記バッフルの中央部には、前記両者間の方向に貫通している中央部貫通路が設けられており、
前記バッフルの外周縁部側と前記容器の内周面との間には、前記両者間の方向に貫通している外周側貫通路が設けられていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の冷却構造。
【請求項7】
前記液状冷媒に、循環装置が浸漬されており、
前記循環装置は、前記容器の内周面に沿った方向のうち前記スイッチ素子群と前記熱交換部とを結ぶ沿面方向に位置し、前記液状冷媒を当該沿面方向へ循環可能なことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の冷却構造。
【請求項8】
前記循環装置は、液状冷媒を吸入する吸入口と、当該吸入した液状冷媒を吐出する吐出口と、を有し、
前記吐出口は、前記スイッチ素子群に対向する位置に設けられ、
前記吐出口の開口縁面に、当該開口縁面から前記スイッチ素子群に対向する方向に延在した形状の吐出口バッフルが、設けられていることを特徴とする請求項7記載の冷却構造。
【請求項9】
複数個の前記循環装置が、前記沿面方向において分散した位置で、前記液状冷媒に浸漬されていることを特徴とする請求項7記載の冷却構造。
【請求項10】
前記スイッチ素子群は、前記複数個の半導体スイッチング素子が、平板状の支持基板の一端側面に、当該一端側面に沿って直線状に配列するように実装されていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の冷却構造。
【請求項11】
前記スイッチ素子群は、前記複数個の半導体スイッチング素子が、平板状の支持基板の一端側面に、当該一端側面に沿って直線状に配列するように実装されていることを特徴とする請求項6記載の冷却構造。
【請求項12】
前記半導体スイッチング素子は、平板状の支持基板の一端側面に実装されており、
前記容器は、それぞれ有底筒状の第1周壁部および第2周壁部を備え、当該第1周壁部および第2周壁部の各開口縁面により前記支持基板の外周縁部を挟んだ姿勢で、当該各開口縁面を互いに液密に接合して成り、
前記支持基板の外周縁部のうち一部が、前記各開口縁面間を介して前記容器の内周側から外周側に突出し、当該支持基板の外周縁部のうち他部が、前記容器の内周面との間に隙間部を形成していることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の冷却構造。
【請求項13】
前記半導体スイッチング素子は、平板状の支持基板の一端側面に実装されており、
前記容器は、それぞれ有底筒状の第1周壁部および第2周壁部を備え、当該第1周壁部および第2周壁部の各開口縁面により前記支持基板の外周縁部を挟んだ姿勢で、当該各開口縁面を互いに液密に接合して成り、
前記支持基板の外周縁部のうち一部が、前記各開口縁面間を介して前記容器の内周側から外周側に突出し、当該支持基板の外周縁部のうち他部が、前記容器の内周面との間に隙間部を形成していることを特徴とする請求項6記載の冷却構造。
【請求項14】
前記スイッチ素子群は、前記複数個の半導体スイッチング素子が、平板状の支持基板の一端側面に、当該一端側面に沿って直線状に配列するように実装されており、
1個以上の筒状周壁部が、前記容器の内周側における前記熱交換部から離反した位置で、前記液状冷媒に浸漬されており、
前記筒状周壁部の内周側には、前記スイッチ素子群を実装した支持基板が配置されていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の冷却構造。
【請求項15】
前記筒状周壁部には、電気部品が支持されていることを特徴とする請求項14記載の冷却構造。
【請求項16】
前記容器の内周側において前記熱交換部と前記筒状周壁部との両者間を交差する方向に延在しているバッフルを、更に備え、
前記バッフルの中央部には、前記両者間の方向に貫通している中央部貫通路が設けられており、
前記バッフルの外周縁部側と前記容器の内周面との間には、前記両者間の方向に貫通している外周側貫通路が設けられていることを特徴とする請求項14記載の冷却構造。
【請求項17】
前記液状冷媒に、循環装置が浸漬されており、
前記循環装置により循環させた前記液状冷媒は、前記筒状周壁部の内周側を通過することを特徴とする請求項14記載の冷却構造。
【請求項18】
前記筒状周壁部は、複数個並んで配置されていることを特徴とする請求項14記載の冷却構造。
【請求項19】
前記循環装置は、複数個並んで配置されていることを特徴とする請求項17記載の冷却構造。
【請求項20】
前記半導体スイッチング素子は、当該半導体スイッチング素子の表面に素子放熱フィンを備えていることを特徴とする請求項1~5,8,9,11,13,15~19の何れかに記載の冷却構造。
【請求項21】
前記半導体スイッチング素子は、当該半導体スイッチング素子の表面に素子放熱フィンを備えていることを特徴とする請求項14記載の冷却構造。
【請求項22】
請求項1~5,8,9,11,13,15~19の何れかに記載の冷却構造を備えたパルス電源であって、
負荷と、当該負荷に対して電気的直列に接続されている直流電源と、の間に対し、前記複数個の半導体スイッチング素子が電気的直列に挿入接続されていることを特徴とするパルス電源。
【請求項23】
請求項14記載の冷却構造を備えたパルス電源であって、
負荷と、当該負荷に対して電気的直列に接続されている直流電源と、の間に対し、前記複数個の半導体スイッチング素子が電気的直列に挿入接続されていることを特徴とするパルス電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却構造およびパルス電源に係るものであって、例えば冷却が必要な複数個の半導体スイッチング素子を電気的直列に接続して実装されている電気機器の冷却構造やパルス電源等に貢献可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高速・高電圧出力のパルス幅変調式パルス電源としては、PFLやPFNあるいはブルームラインによる回路方式もあるが、特にパルスの立ち上がり/立ち下がり時間が数十nsと短く、かつ数百nsまでの短いパルス幅出力が求められるような場合には、容易にパルス幅変調できるものとして、半導体スイッチング素子(以下、単にスイッチ素子と適宜称する)によってダイレクトに負荷に電力を供給する方式が有効とされている。
【0003】
図16は、複数個のスイッチ素子SW(図16図17中ではスイッチ素子SW1,SW2)を用いたパルス発生回路の基本的な回路構成例を示すものである。このパルス発生回路は、主に、直流電源EVと負荷LDとの間に設けられたスイッチ素子SW1,SW2や、抵抗R1,R2等から構成されている。図16中のLは、直流電源EVと負荷LDとの間の浮遊インダクタンスである。このパルス発生回路において直流電源EV等で電源供給し、その直流電源EVの応答性により電圧低下が考えられる場合には、図16のようにコンデンサC0を挿入することが挙げられる。抵抗R1,R2は、直流電源EVと負荷LDとの間の浮遊インダクタンスLの抑制や、当該負荷LDによって発生するリンギングの抑制等のために挿入されている。
【0004】
このようなパルス発生回路では、例えば図17に示すように、スイッチ素子SW1をON、スイッチ素子SW2をOFFとすると負荷LD側の電圧が立ち上がり(図17ではt2にて立ち上がり)、スイッチ素子SW1をOFF、スイッチ素子SW2をONとすると電圧が立ち下がる(図17ではt1にて立ち下がる)。
【0005】
なお、図16のパルス発生回路において負荷LDが抵抗負荷の場合、抵抗R2およびスイッチ素子SW2は不要であるが、容量性等により負荷LD側にエネルギーが残存する間に電圧を立ち下げるには、抵抗R2およびスイッチ素子SW2が必要となる。スイッチ素子SWには、例えばMOSFET等の電力用半導体素子によって構成されたものを適用することが挙げられる。
【0006】
図16のようなパルス発生回路において、主にプラズマ発生用途で使用する場合には、負荷LDに印加される電圧は高電圧(例えば数kV~数十kV)となる。このため、スイッチ素子SWについても、負荷LDに印加される電圧が必要であることから、高耐圧が要求される。
【0007】
このような高耐圧が要求されるスイッチ素子SW等の要素を比較的低コストに実現する一つの手法としては、例えばディスクリート型のスイッチ素子SWを適用し、当該スイッチ素子SW複数個を電気的直列に接続(例えば多段状に接続)して構成することが知られている。
【0008】
このように複数個のスイッチ素子を電気的直列に接続した電気機器の冷却方式の一つとしては、冷却水等の冷却媒体を循環させる方式が挙げられる。例えば特許文献1においては、窒化アルミニウム等の支持板(特許文献1では符号2,3)の一端面に複数個のスイッチ素子を並べて配置し、当該支持板の他端面に銅等からなる冷却水配管(特許文献1では符号4)を設けた冷却構造(以下、単に従来構造と適宜称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-115136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来構造において、例えば各スイッチ素子のドレイン電極(例えばスイッチ素子のパッケージの底面)が、支持板を挟んで冷却水配管に近接し、その冷却水配管が接地されて接地電位になっている場合には、当該各スイッチ素子のドレインと冷却水配管(接地)との間に、それぞれ浮遊容量(例えば後述の図18に示す浮遊容量C6~C11)が発生してしまうことが考えられる。
【0011】
このような各スイッチ素子に係る浮遊容量が不均一になると、当該各スイッチ素子(例えば後述の図18ではスイッチ素子SiC1~SiC5)の電圧分担も不均一となり、特に高圧側電圧に近い側(例えば後述の図18ではスイッチ素子SiC5側)の電圧は高くなり易い傾向となる。これにより、各スイッチ素子においては過電圧が印加され得るおそれがある。
【0012】
例えば特許文献1では、スイッチ素子を支持する支持板において、冷却水配管から離反して位置(特許文献1では符号14で示す金属製支持バーにより支持)させることにより、浮遊容量の低減を図る旨が開示されているが、当該離反する距離が大きくなるに連れて、スイッチ素子の冷却効率が低減してしまうことが考えられる。
【0013】
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであって、電気的直列に接続されている複数個のスイッチ素子の冷却効率の向上や当該各スイッチ素子の電圧分担の均一化に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明による冷却構造の一態様は、筐体状で絶縁性の容器と、前記容器の内周側に充填されている液状冷媒と、複数個の半導体スイッチング素子が電気的直列に接続されているスイッチ素子群と、前記容器の一端側に設けられ、前記液状冷媒を冷却する熱交換部と、を備え、前記スイッチ素子群は、前記容器の内周側における前記熱交換部から離反した位置で、前記液状冷媒に浸漬されていることを特徴とする。
【0015】
前記熱交換部は、前記容器の一端側を成している熱伝導性の隔壁部と、前記隔壁部から前記容器の内周側に突出して前記液状冷媒に浸漬されている内周側フィンと、前記隔壁部から前記容器の外側側に突出している外周側フィンと、前記外周側フィンに送風する送風機と、を備えているものとしても良い。
【0016】
また、前記熱交換部は、前記容器の一端側を当該容器の内外方向に貫通して前記液状冷媒に浸漬され、当該容器の外周側から冷媒を循環させることが可能な循環管路と、前記循環管路の外周面のうち前記容器の内周側に設けられた放熱フィンと、を備えているものとしても良い。
【0017】
また、前記熱交換部は、前記容器の一端側を成している熱伝導性の隔壁部と、前記隔壁部から前記容器の内周側に突出して前記液状冷媒に浸漬されている内周側フィンと、前記隔壁部の内部に形成され、前記容器の外周側から冷媒を循環させることが可能な循環路と、を備えているものとしても良い。
【0018】
また、前記熱交換部は、複数個のラジエータフィンを有したラジエータを具備して成り、前記ラジエータフィンが、前記容器の内周面側から突出して前記液状冷媒に浸漬されているものとしても良い。
【0019】
また、前記容器の内周側において前記熱交換部と前記スイッチ素子群との両者間を交差する方向に延在しているバッフルを、更に備え、前記バッフルの中央部には、前記両者間の方向に貫通している中央部貫通路が設けられており、前記バッフルの外周縁部側と前記容器の内周面との間には、前記両者間の方向に貫通している外周側貫通路が設けられているとしても良い。
【0020】
また、前記液状冷媒に、循環装置が浸漬されており、前記循環装置は、前記容器の内周面に沿った方向のうち前記スイッチ素子群と前記熱交換部とを結ぶ沿面方向に位置し、前記液状冷媒を当該沿面方向へ循環可能なものとしても良い。
【0021】
また、前記循環装置は、液状冷媒を吸入する吸入口と、当該吸入した液状冷媒を吐出する吐出口と、を有し、前記吐出口は、前記スイッチ素子群に対向する位置に設けられ、前記吐出口の開口縁面に、当該開口縁面から前記スイッチ素子群に対向する方向に延在した形状の吐出口バッフルが、設けられているものとしても良い。
【0022】
また、複数個の前記循環装置が、前記沿面方向において分散した位置で、前記液状冷媒に浸漬されているものとしても良い。
【0023】
また、前記スイッチ素子群は、前記複数個の半導体スイッチング素子が、平板状の支持基板の一端側面に、当該一端側面に沿って直線状に配列するように実装されているものとしても良い。
【0024】
また、前記スイッチ素子群は、前記複数個の半導体スイッチング素子が、平板状の支持基板の一端側面に、当該一端側面に沿って直線状に配列するように実装されており、1個以上の筒状周壁部が、前記容器の内周側における前記熱交換部から離反した位置で、前記液状冷媒に浸漬されており、前記筒状周壁部の内周側には、前記スイッチ素子群を実装した支持基板が配置されていることを特徴しても良い。
【0025】
また、前記筒状周壁部には、電気部品が支持されていることを特徴としても良い。
【0026】
また、前記容器の内周側において前記熱交換部と前記筒状周壁部との両者間を交差する方向に延在しているバッフルを、更に備え、前記バッフルの中央部には、前記両者間の方向に貫通している中央部貫通路が設けられており、
前記バッフルの外周縁部側と前記容器の内周面との間には、前記両者間の方向に貫通している外周側貫通路が設けられていることを特徴としても良い。
【0027】
また、前記液状冷媒に、循環装置が浸漬されており、前記循環装置により循環させた前記液状冷媒は、前記筒状周壁部の内周側を通過することを特徴としても良い。
【0028】
また、前記筒状周壁部は、複数個並んで配置されていることを特徴としても良い。
【0029】
また、前記循環装置は、複数個並んで配置されていることを特徴としても良い。
【0030】
また、前記各半導体スイッチング素子は、当該半導体スイッチング素子の表面に素子放熱フィンを備えているものとしても良い。
【0031】
また、前記半導体スイッチング素子は、平板状の支持基板の一端側面に実装されており、前記容器は、それぞれ有底筒状の第1周壁部および第2周壁部を備え、当該第1周壁部および第2周壁部の各開口縁面により前記支持基板の外周縁部を挟んだ姿勢で、当該各開口縁面を互いに液密に接合して成り、前記支持基板の外周縁部のうち一部が、前記各開口縁面間を介して前記容器の内周側から外周側に突出し、当該支持基板の外周縁部のうち他部が、前記容器の内周面との間に隙間部を形成しているものとしても良い。
【0032】
この発明による電源の一態様は、前記冷却構造の何れかを備えたパルス電源であって、負荷と、当該負荷に対して電気的直列に接続されている直流電源と、の間に対し、前記複数個の半導体スイッチング素子が電気的直列に挿入接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
以上示したように本発明によれば、電気的直列に接続されている複数個のスイッチ素子の冷却効率の向上や当該各スイッチ素子の電圧分担の均一化に貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施例1による冷却構造を説明するための電気機器11の概略構成図((A)は電気機器11を図示Z軸方向の一方側から観た外観図、(B)は電気機器11を図示Y軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(C)はB1-B1線断面図)。
図2】実施例2による冷却構造を説明するための電気機器12の概略構成図((A)は電気機器12を図示Z軸方向の一方側から観た外観図、(B)は電気機器12を図示Y軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(C)はB2-B2線断面図)。
図3】実施例3による冷却構造を説明するための電気機器13の概略構成図((A)は電気機器13を図示Z軸方向の一方側から観た外観図、(B)は電気機器13を図示Y軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(C)はB3-B3線断面図)。
図4】実施例4による冷却構造を説明するための電気機器14の概略構成図((A)は電気機器14を図示Z軸方向の一方側から観た外観図、(B)は電気機器14を図示Y軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(C)はB4-B4線断面図)。
図5】実施例5による冷却構造を説明するための電気機器15の概略構成図((A)は電気機器15を図示X軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(B)はA1-A1線断面図)。
図6】実施例6による冷却構造を説明するための電気機器16の概略構成図((A)は電気機器16を図示X軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(B)はA2-A2線断面図)。
図7】実施例7による冷却構造を説明するための電気機器17の概略構成図((A)は電気機器17を図示X軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(B)はA3-A3線断面図)。
図8】実施例8による冷却構造を説明するための電気機器18の概略構成図((A)は電気機器18を図示X軸方向の一方側から観た外観図(内部を部分的に仮想線で描写した図)、(B)はA4-A4線断面図)。
図9】実施例9による冷却構造を説明するための筒状周壁部Wの概略構成図((A)は筒状周壁部Wの概観斜視図、(B)は側壁部W24を取り除いて内周側を臨んだ図)。
図10】実施例9による冷却構造を説明するための電気機器WAの概略構成図((A)は側壁部62aを取り外して内周側を臨んだ図、(B)は側壁部62dを取り外して内周側を臨んだ図)。
図11】実施例9による冷却構造を説明するための電気機器WAの概略構成図((A)は蓋部64を取り外して内周側を臨んだ図、(B)は側壁部62bを取り外して内周側を臨んだ図)。
図12】実施例10による冷却構造を説明するための電気機器WBの概略構成図((A)は側壁部62aを取り外して内周側を臨んだ図、(B)は側壁部62dを取り外して内周側を臨んだ図)。
図13】実施例10による冷却構造を説明するための電気機器WBの概略構成図((A)は蓋部64を取り外して内周側を臨んだ図、(B)は側壁部62bを取り外して内周側を臨んだ図)。
図14】実施例11による冷却構造を説明するための電気機器WCの概略構成図((A)は側壁部62aを取り外して内周側を臨んだ図、(B)は側壁部62dを取り外して内周側を臨んだ図)。
図15】実施例11による冷却構造を説明するための電気機器WCの概略構成図((A)は蓋部64を取り外して内周側を臨んだ図、(B)は側壁部62bを取り外して内周側を臨んだ図)。
図16】複数個のスイッチ素子を用いたパルス発生回路の一例を説明するための回路構成図。
図17図16のパルス発生回路のスイッチ素子SW1,SW2のスイッチング動作の一例を説明するためのタイミングチャート図。
図18】浮遊容量を含むスイッチ素子(SiC1~SiC5)を電気的直列に接続した場合の一例を説明するための回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態における冷却構造は、従来構造とは全く異なるものであり、筐体状で絶縁性の容器と、その容器の内周側に充填されている絶縁性の液状冷媒と、複数個のスイッチ素子が電気的直列に接続されているスイッチ素子群と、前記容器の一端側に設けられて前記液状冷媒を冷却する熱交換部と、を備えたものである。そして、前記スイッチ素子群は、前記容器の内周側における前記熱交換部から離反した位置で、前記液状冷媒に浸漬されていることを特徴とする。
【0036】
従来構造の場合、例えば図18に示す回路のスイッチ素子SiC1~SiC5のように、ドレインと接地との間それぞれに浮遊容量が発生してしまうことが考えられる。この図18の回路では、スイッチ素子SiC1~SiC5が電気的直列に接続され、外付け抵抗R1~R5や外付けコンデンサC1~C5が設けられているが、浮遊容量C6~C11が発生している状況が読み取れる。
【0037】
このような浮遊容量C6~C11が存在していると、スイッチ素子SiC1~SiC5の電圧分担は不均一となり、特に高圧側電圧に近い側であるスイッチ素子SiC5側の電圧が高くなり易い。例えば、浮遊容量C6~C11の容量値が比較的大きく、当該容量値が不均一な場合には、各スイッチ素子SiC1~SiC5のドレイン-ソース間のインピーダンス(すなわち、浮遊容量C6~C11,外付け抵抗R1~R5,外付けコンデンサC1~C5の合成インピーダンスで定まるインピーダンス)も、不均一になり易い傾向となる。これにより、各スイッチ素子SiC1~SiC5においては、過電圧が印加され得るおそれがある。
【0038】
なお、特許文献1に開示されている手法(スイッチ素子を支持する支持板を冷却水配管から離反して位置させる手法)によれば、浮遊容量を低減できる可能性はあるが、前記離反する距離が大きくなるに連れてスイッチ素子の冷却効率が低減してしまうことが考えられる。また、窒化アルミニウム等の支持板は比較的高価であるため、当該支持板を用いると、冷却構造の高コスト化を招くおそれも考えられる。
【0039】
一方、本実施形態の冷却構造によれば、スイッチ素子群を、容器内に充填されている液状冷媒に浸漬して冷却できるため、当該スイッチ素子群を十分に冷却することが可能である。また、前記容器は絶縁性を有し、接地電位になり得るような要素(従来構造では冷却水配管等;以下、接地電位要素と適宜称する)からスイッチ素子群を隔離することが可能である。これにより、スイッチ素子群の各スイッチ素子における浮遊容量の発生を抑制することが可能となる。
【0040】
すなわち、本実施形態の冷却構造によれば、電気的直列に接続されている複数個のスイッチ素子の冷却効率の向上や当該各スイッチ素子の電圧分担の均一化に貢献可能となる。
【0041】
本実施形態による冷却構造および当該冷却構造を備えたパルス電源は、前述のように容器内周側の液状冷媒にスイッチ素子群を浸漬し、そのスイッチ素子群から離反して位置する熱交換部によって液状冷媒を冷却できる構成であれば良く、種々の分野(例えば、半導体スイッチング素子分野,パルス電源分野,冷媒分野,熱交換器分野,容器分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として以下の実施例1~8が挙げられる。なお、以下の実施例1~11では、例えば重複する内容について同一符号を適用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0042】
≪実施例1≫
図1は、本実施例1による冷却構造を説明するための電気機器11の概略構成図である。この電気機器11は、筐体状で絶縁性の容器21と、当該容器21の内周側に充填されている絶縁性の液状冷媒3と、複数個のスイッチ素子SWが電気的直列に接続された状態で液状冷媒3に浸漬されているスイッチ素子群Gと、容器21の一端側(図1では図示Z軸方向の一端側(図示上側))でスイッチ素子群Gから離反した位置に設けられて液状冷媒3を冷却することが可能な熱交換部41と、を主な要素として備えている。
【0043】
このような電気機器11によれば、容器21の内周側における熱交換部41から離反した位置(図1では図示Z軸方向における熱交換部41の反対側の位置)にて、スイッチ素子群Gを液状冷媒3に浸漬した状態にすることができる。すなわち、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWを、接地電位要素から隔離した状態で冷却することが可能となる。液状冷媒3に吸熱された熱は、熱交換部41によって容器21の外周側に放熱されることとなる。
【0044】
<スイッチ素子SWおよびスイッチ素子群Gの構成例>
図1のスイッチ素子群Gは、平板状の支持基板Pの一端側面P1に実装されている複数個(図1では図示X軸方向に延びる2列において各列に14個ずつ配列し、各々の底部側のリード端子を介して実装した合計28個)のスイッチ素子SWにより、構成されている。支持基板Pには、所望の回路パターン(図示省略)が設けられており、これによりスイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWが電気的直列に接続されている。
【0045】
なお、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWは、例えば隣接する同士において熱干渉しない範囲内で、当該同士のリード端子間の距離(以下、隣接端子間距離と適宜称する)が短くなるように配置することが好ましい。具体例としては、図1に示すように、各スイッチ素子SWを、支持基板Pの一端側面P1に対し、当該一端側面P1に沿って直線状に配列(図示X軸方向に配列)して実装することが挙げられる。
【0046】
このような配置構成によれば、各スイッチ素子SWの浮遊容量の発生をより抑制して、当該各スイッチ素子SWの電圧分担の均一化に貢献し易くなる可能性がある。また、電気機器11の小型化にも貢献し易くなる可能性がある。
【0047】
スイッチ素子SWや支持基板Pは、種々の態様を適用することが可能である。具体例として、電気機器11がパルス電源の場合のスイッチ素子SWには、IGBT,MOSFET等の容量性のゲートを備えた構造のパワースイッチング素子であってディスクリート型のものを適用することが挙げられる。また、支持基板Pは、例えば所望の回路パターンが印刷されているプリント基板等を適用することが挙げられる。
【0048】
<容器21の構成例>
図1の容器21は、それぞれ有底筒状の第1周壁部2aおよび第2周壁部2bを筐体状に接合して成るものであって、当該容器21の内周側に液状冷媒3を充填でき、その液状冷媒3にスイッチ素子群Gを浸漬できるように構成されている。
【0049】
第1周壁部2aは、スイッチ素子群Gの外周側を包覆できる形状であって、当該スイッチ素子群Gと熱交換部41との両者を所定距離離反した状態で保持できる大きさとなるように、第2周壁部2bよりも深度が深い形状となっている。
【0050】
また、第1周壁部2aの底部側(図1では図示Z軸方向の一端側)は、後述の熱交換部41の隔壁部2cによって形成されている。この隔壁部2cは、例えば第1周壁部2a(隔壁部2c以外の部位)に対して着脱自在となるように設けても良く、これにより、容器21における開閉自在な蓋として機能させることも可能である。
【0051】
第1周壁部2a,第2周壁部2bにおいては、それぞれ同一形状の開口縁面21a,21bが形成されており、これら各開口縁面21a,21bにより支持基板Pの外周縁部(図1では基板部P23,P24の一部)を挟んだ姿勢で、当該各開口縁面21a,21bが互いに対向して接合されている。
【0052】
この接合構成において、図1の場合、支持基板Pの外周縁部のうちの一部(図示Y軸方向側)である基板部P21,P22が、容器21の内周側から外周側に突出するように構成されている。また、当該外周縁部のうちの他部(図示X軸方向側)である基板部P23,P24(図1では基板部P23,P24の中央寄りの部分)が、容器21の内周側に位置し、当該容器21の内周面20aとの間に隙間部20bを形成するように構成されている。
【0053】
このような接合構成により、例えば基板部P21,P22を介して外部機器(図示省略)とスイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWとの間を電気的に接続することが可能となる。また、液状冷媒3が隙間部20bを介して移動(図示Z軸方向の移動)でき、当該液状冷媒3を容器21の内周側において循環し易くなる。
【0054】
具体例として、容器21においては、アクリル等の絶縁性材料(樹脂材料等)を適宜成形して得られたものを適用することが挙げられるが、当該絶縁性材料は液状冷媒3に対する耐久性(耐腐食性等)を考慮して適宜選定することが好ましい。液状冷媒3は、スイッチ素子SWの稼動等を妨げない絶縁性の冷媒であれば良く、一例として絶縁性油や絶縁性有機溶剤(ガルデン(登録商標)等)を適用することが挙げられる。
【0055】
また、容器21は、必要に応じてシール材等を適宜適用することにより、当該容器21の内周側に充填した液状冷媒の漏出を抑制することが好ましい。例えば、各開口縁面21a,21bの両者においては、当該両者間にシール材を適宜介在させて液密に接合することが挙げられる。このように液密な接合により、たとえ前記のように各開口縁面21a,21bによって支持基板Pの外周縁部を挟んだ構成であっても、液状冷媒3の漏出を抑制することが十分可能となる。
【0056】
<熱交換部41の構成例>
図1の熱交換部41は、第1周壁部2aの底部側を成している平板状で熱伝導性の隔壁部2cと、その隔壁部2cから容器21の内周側に突出して液状冷媒3に浸漬されている内周側フィン4aと、前記隔壁部2cから容器21の外周側に突出している外周側フィンと4bと、その外周側フィン4bに送風する送風機4cと、を有した構成となっている。
【0057】
内周側フィン4aは、複数個の平板状のフィン部材4aaが、隔壁部2cから容器21の内周側に突出して液状冷媒3に浸漬された姿勢で、図示X軸方向に配列された構成となっている。外周側フィン4bは、複数個の平板状のフィン部材4bbが、隔壁部2cから容器21の外周側に突出した姿勢で、図示X軸方向に配列された構成となっている。
【0058】
送風機4cは、隔壁部2cにおける容器21の外周側であって、外周側フィン4bの図示X軸方向において隣接した位置に設けられ、当該外周側フィン4bに送風できるように構成されている。
【0059】
このように構成された熱交換部41によれば、液状冷媒3に蓄積されている熱(例えばスイッチ素子SWの稼動により発生した熱)を内周側フィン4aによって吸熱し、その吸熱した熱を外周側フィン4b,送風機4cを介して容器21の外周側に放熱することが可能となる。
【0060】
具体例として、隔壁部2c,内周側フィン4a,外周側フィン4bは、金属材料等(銅等)の熱伝導性の材料を適宜成形(例えば隔壁部2c,内周側フィン4a,外周側フィン4bを一体成形)して得られたものを適用することが挙げられる。内周側フィン4aの形状は、当該内周側フィン4aとスイッチ素子群Gとの両者が所定距離離反した状態となるように、適宜設定(図1では図示Z軸方向の寸法を適宜設定)する。送風機4cは、複数個のファンブレードを有したプロペラ式の冷却ファンが挙げられる。
【0061】
<電気機器11および従来構造の浮遊容量の一例>
電気機器11のスイッチ素子SWに発生し得る浮遊容量をCとすると、下記(1)式が成り立つ。なお、下記(1)式において、dは対地間の距離、Sは電極面積、ε0は真空の誘電率、εsは比誘電率とする。
【0062】
C=ε0×εs×(S/d) ……(1)
この(1)式を従来構造のスイッチ素子に適用した場合、当該従来構造の冷却水配管が窒化アルミニウム等からなるものとすると、比誘電率εsは比較的大きい6~8程度(後述の電気機器11の場合と比較して大きい値)となることが読み取れる。また、当該従来構造のスイッチ素子を十分に冷却するには、冷却水配管とスイッチ素子との両者を互いに接近させる必要があるため、対地間の距離dは比較的小さい値(後述の電気機器11の場合と比較して小さい値)になってしまうことが読み取れる。
【0063】
一方、(1)式を電気機器11に適用した場合、当該電気機器11の液状冷媒3が一般的な絶縁性油や絶縁性有機溶剤であるとすると、比誘電率εsは比較的小さい2~3程度となることが読み取れる。また、スイッチ素子SWが容器21の内周側の液状冷媒3に浸漬され、接地電位要素から隔離されているため、対地間の距離dは比較的大きい値となることが読み取れる。
【0064】
したがって、以上示した実施例1の冷却構造によれば、従来構造と比較して、電気機器11のスイッチ素子SWに係る浮遊容量Cが小さくなり、ドレイン-ソース間のインピーダンスが均一化し、当該スイッチ素子SWの電圧分担が均一化されることが判る。
【0065】
≪実施例2≫
図2は、本実施例2による冷却構造を説明するための電気機器12の概略構成図である。この電気機器12は、電気機器11と同様の構成であって、熱交換部41を備える替わりに、熱交換部42を備えたものとなっている。
【0066】
<熱交換部42の構成例>
図2の熱交換部42は、容器21の一端側(図2では第1周壁部2aの底部側寄りの部位22,23)を当該容器21の内外方向(以下、単に内外方向と適宜称する)に貫通して液状冷媒3に浸漬されている循環管路4dと、その循環管路4dの外周面のうち容器21の内周側に設けられた放熱フィンと4eと、を有した構成となっている。
【0067】
循環管路4dにおいては、例えば容器21の外周側の冷媒循環装置(図示省略)からの冷媒(以下、単に外部冷媒と適宜称する)を、部位22側から供給して循環(例えば図2中の矢印a1,a2のように循環)できるように、構成されている。外部冷媒は、例えば液状冷媒3のように絶縁性のものに限定されず、種々の態様を適用することが可能である。
【0068】
図2の循環管路4dの場合、容器21における互いに距離を隔てた複数個所の部位22,23を内外方向に貫通して、当該容器21の内周側の当該部位22,23間を往復するように延在(図2ではU字状に延在)し、液状冷媒3に浸漬して設けられている。
【0069】
放熱フィン4eは、複数個のリング状のフィン部材4eeが、循環管路4dの外周面のうち容器21の内周側に設けられ、当該各フィン部材4eeが当該循環管路4dの軸心方向に配列された構成となっている。このように循環管路4dに放熱フィン4eが設けられた構成の熱交換部42の具体例としては、エロフィンチューブが挙げられる。
【0070】
このような構成の熱交換部42によれば、液状冷媒3に蓄積されている熱を、循環管路4dの外周面や内周側フィン4aによって吸熱できる。そして、当該吸熱した熱は、外部冷媒を介して容器21の外周側に放熱することが可能となる。
【0071】
以上示した実施例2の冷却構造によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例2の熱交換部42によれば送風機4cが不要であるため、冷却構造の小型化,簡略化,低コスト化等に、貢献できる可能性がある。
【0072】
≪実施例3≫
図3は、本実施例3による冷却構造を説明するための電気機器13の概略構成図である。この電気機器13は、電気機器11と同様の構成であって、熱交換部41を備える替わりに、熱交換部43を備えたものとなっている。
【0073】
<熱交換部43の構成例>
図3の熱交換部43は、容器21の一端側(図3では第1周壁部2aの底部側)を成している平板状で熱伝導性の隔壁部2cと、当該隔壁部2cから当該容器21の内周側に突出して液状冷媒3に浸漬されている内周側フィン4aと、当該隔壁部2cの内部に形成された循環路4fと、を有した構成となっている。
【0074】
図3の循環路4fの場合、隔壁部2cの内部において図示X軸方向に往復するように延在(図3ではU字状に延在)し、部位22側から外部冷媒を供給して循環(例えば図3中の矢印a3,a4のように循環)できるように構成されている。
【0075】
このような循環路4fは、適宜構成することが可能である。その一例としては、隔壁部2cを形成する際に、当該隔壁部2cに用いる材料(例えば銅等の金属材料)を適宜成形(隔壁部2cの内部に循環路4fが形成されるように成形)して実現することが挙げられる。
【0076】
以上示した実施例3の冷却構造によれば、実施例1,2と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例3の熱交換部43によれば、送風機4cが不要であり、また容器21の一部を成している隔壁部2c内(循環路4f)に外部冷媒を供給して循環できる構成であるため、冷却構造の小型化,簡略化,低コスト化等に、より貢献できる可能性がある。
【0077】
≪実施例4≫
図4は、本実施例4による冷却構造を説明するための電気機器14の概略構成図である。この電気機器14は、電気機器13と同様の構成であって、熱交換部43の内周側フィン4aとスイッチ素子群Gとの両者間に介在するバッフル5を、更に備えたものとなっている。
【0078】
<バッフル5の構成例>
図4のバッフル5は、容器21の内周側において、熱交換部43の内周側フィン4aとスイッチ素子群Gとの両者間を交差する方向(図4では図示X軸方向)に延在した形状となっている。具体的に、図4のバッフル5の場合、当該バッフル5の中央部から外周縁部に近づくに連れて、容器21の一端側(図4では第1周壁部2aの底部側)に上り傾斜するように延在した形状となっている。
【0079】
バッフル5の中央部においては、当該中央部を図示Z軸方向に貫通している中央部貫通路51が設けられている。また、バッフル5の外周縁部においては、図示Z軸方向の他端側に折曲されて折曲部52を有した形状となっている。
【0080】
また、バッフル5の外周縁部側と容器21の内周面20aとの両者間(図4では図示X軸方向の間)には隙間が設けられており、これにより、当該両者間を図示Z軸方向に貫通している外周側貫通路53が設けられている。
【0081】
このようなバッフル5を備えたことにより、液状冷媒3において自然対流が発生し易くなる。具体的に、液状冷媒3においては、スイッチ素子SWの稼動により発生した熱を吸熱して温度分布が不均一になると、容器21の内周側において移動し易くなる。そして、図4のようにバッフル5が配置されている場合には、当該液状冷媒3はバッフル5の中央部貫通路51,外周側貫通路53を順次通過しながら移動(例えば図4中の矢印a5,a6のように移動)し、自然対流が発生し易くなる。この自然対流により、液状冷媒3に吸熱されている熱が熱交換部43に熱伝導し易くなる。
【0082】
バッフル5は、前述のように液状冷媒3の自然対流を発生し易くするものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。例えば、バッフル5の外周縁部側と容器21の内周面20aとの両者間に隙間が無い場合(例えば両者が当接している場合)には、当該バッフル5の外周縁部側において図示Z軸方向の貫通加工等を施すことにより、図4と同様に、容器21の内周面20aとの間に外周側貫通路53を設けることが可能となる。
【0083】
以上示した実施例4の冷却構造によれば、実施例1~3と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例4のバッフル5によれば、液状冷媒3において自然対流が発生し易くなり、スイッチ素子群Gの冷却効率に更に貢献できる可能性がある。
【0084】
なお、バッフル5においては、電気機器11における熱交換部41とスイッチ素子群Gとの間に介在したり、電気機器12における熱交換部42とスイッチ素子群Gとの間に介在しても良く、これにより実施例4と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0085】
≪実施例5≫
図5は、本実施例5による冷却構造を説明するための電気機器15の概略構成図である。この電気機器15は、電気機器11~14と同様の構成であって、液状冷媒3を撹拌して循環する循環装置7を、更に備えたものとなっている。
【0086】
図5の電気機器15の場合、筐体状で絶縁性の容器60と、当該容器60の内周側に充填されている絶縁性の液状冷媒3と、複数個のスイッチ素子SWが電気的直列に接続された状態で液状冷媒3に浸漬されているスイッチ素子群Gと、容器60の一端側(図5では図示Z軸方向の一端側(図示上側))でスイッチ素子群Gから離反した位置に設けられて液状冷媒3を冷却することが可能な熱交換部44と、容器60の内周側に設けられて液状冷媒3を撹拌して循環する循環装置7と、を主な要素として備えている。
【0087】
循環装置7は、容器60の内周面60aに沿った方向のうちスイッチ素子群Gと熱交換部44とを結ぶ方向(以下、沿面方向と適宜称する)に位置し、液状冷媒3を当該沿面方向へ循環(例えば図5(A)では矢印y1~y3の方向に循環)できるように設けられている。
【0088】
このような電気機器15によれば、容器60の内周側における熱交換部44から離反した位置(図5では図示Z軸方向における熱交換部44の反対側の位置)にて、スイッチ素子群Gを液状冷媒3に浸漬した状態にすることができる。すなわち、電気機器11~14と同様に、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWを、接地電位要素から隔離した状態で冷却することが可能となる。液状冷媒3に吸熱された熱は、熱交換部44によって容器60の外周側に放熱されることとなる。
【0089】
<容器60の構成例>
図5の容器60は、有底筒状の周壁部6aと、当該周壁部6aの開口側に対して開閉自在に設けられた蓋部6bと、を有して成る筐体状であって、当該容器60の内周側に液状冷媒3を充填でき、その液状冷媒3にスイッチ素子群Gを浸漬できるように構成されている。この容器60は、容器21と同様に、アクリル等の絶縁性材料(樹脂材料等)を適宜成形して得られたものを適用することが挙げられ、必要に応じてシール材等を適宜適用することも挙げられる。
【0090】
周壁部6aは、当該周壁部6aの内周側にスイッチ素子群G,熱交換部44,循環装置7を沿面方向に所定距離を隔てて位置するように収納できる形状であって、当該スイッチ素子群Gと熱交換部44との両者を所定距離離反した状態で保持できる大きさ(深度が深い形状)となっている。
【0091】
具体的に、図5(A)の容器60の場合、当該周壁部6aの内周側の底部側で図示Y軸方向の一端側(図示左側)寄りにスイッチ素子群Gを配置し、当該周壁部6aの内周側の蓋部6b側で図示Y軸方向の他端側(図示右側)寄りに熱交換部44を配置できる形状となっている。
【0092】
<熱交換部44の構成例>
熱交換部44は、熱交換部41~43と同様に、液状冷媒3を冷却できるものであれば良く、その一例として、図5に示すようなラジエータ4gを具備した構造を適用することが挙げられる。
【0093】
図5の熱交換部44の場合、ラジエータフィン4gaを有したラジエータ4gを具備して成り、当該ラジエータ4gが液状冷媒3に浸漬するように設置(例えば、フランジ類等のラジエータ装備品を用いて内周面60aに取り付けられ、容器60外側から冷却水を通流できるように設置)された態様となっている。
【0094】
具体的に、図5(A)の熱交換部44のラジエータ4gの場合、周壁部6aの内周側の蓋部6b側で図示Y軸方向の他端側(図示右側)寄りの位置にて、液状冷媒3に浸漬されている。ラジエータ4gは、複数個の平板状のラジエータフィン4gaが、容器60の内周面60a側から突出(容器60の内周側に突出)して液状冷媒3に浸漬された姿勢で、図示X軸方向に配列された構成となっている。
【0095】
<循環装置7>
循環装置7は、液状冷媒3を撹拌して沿面方向に循環できるものであれば良く、その一例として、図5に示すようなクロスフローファン構造を適用することが挙げられる。
【0096】
図5の循環装置7の場合、液状冷媒3を吸入する吸入口71と、当該吸入した液状冷媒3を吐出する吐出口72と、を有した態様となっている。また、図5(A)に示すように、周壁部6aの内周側の底部側で図示Y軸方向の他端側(図示右側)寄りの位置において、吸入口71が熱交換部44と対向し吐出口72がスイッチ素子群Gと対向する姿勢となるように、配置されている。
【0097】
このような循環装置7を稼動させることにより、液状冷媒3が沿面方向へ循環することとなる。具体例としては、図5(A)に示す矢印y1のように、液状冷媒3が、循環装置7の吸入口71により吸引された後、矢印y2のように吐出口72からスイッチ素子群G側に吐出される。次に、スイッチ素子群G側の熱を吸熱した液状冷媒(吸熱して比較的高温になった液状冷媒)3は、矢印y3のように流動し、熱交換部44により冷却(放熱)された後、再び循環装置7の吸入口71により吸引されて循環することとなる。
【0098】
<その他>
容器60内のスイッチ素子群Gの各スイッチ素子SW,循環装置7は、例えば、蓋部6bを貫通する配線(図示省略)等を介して、外部機器(図示省略)と電気的に適宜接続することが可能であり、当該接続構成は特に限定されるものではない。
【0099】
以上示した実施例5の冷却構造によれば、実施例1~4と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例5の循環装置7によれば、液状冷媒3を強制的に循環しながら熱交換部44により冷却できるため、液状冷媒3において温度分布の差が生じないように抑制でき、例えばスイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWをより冷却し易くなる。これにより、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWにおいて、隣接端子間距離を短くし易くなり、当該各スイッチ素子SWの電圧分担の均一化や電気機器15の小型化に貢献し易くなる。
【0100】
≪実施例6≫
図6は、本実施例6による冷却構造を説明するための電気機器16の概略構成図である。この電気機器16は、電気機器15と同様の構成であって、循環装置7の吐出口72に吐出口バッフル73を備えたものとなっている。
【0101】
図6の吐出口バッフル73は、吐出口72の開口縁面に設けられ、当該開口縁面からスイッチ素子群Gに対向する方向(吐出口72の開口方向)に延在した形状となっている。
【0102】
このような吐出口バッフル73を備えたことにより、吐出口72から吐出される液状冷媒3を、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWに対して供給し易くなる。
【0103】
以上示した実施例6の冷却構造によれば、実施例1~5と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例6の吐出口バッフル73によれば、例えば実施例5の場合と比較して、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWを集中的に冷却し易くなる。これにより、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWにおいて、隣接端子間距離をより短くし易くなり、当該各スイッチ素子SWの電圧分担の均一化や電気機器16の小型化により貢献し易くなる。
【0104】
≪実施例7≫
図7は、本実施例7による冷却構造を説明するための電気機器17の概略構成図である。この電気機器17は、電気機器16と同様の構成であって、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWが、当該スイッチ素子SWの表面に素子放熱フィン4hを備えたものとなっている。
【0105】
図7の各スイッチ素子SWの場合、当該各スイッチ素子SWにおける図示X軸方向の一端側面(図7(B)では図示左側面;以下、単に素子一端側面と適宜称する)に素子放熱フィン4hが設けられた態様となっている。
【0106】
素子放熱フィン4hは、複数個の平板状のフィン部材4haが、素子一端側面から図示X軸方向に突出した姿勢で、図示Z軸方向に配列された構成となっている。
【0107】
以上示した実施例7の冷却構造によれば、実施例1~6と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例7の素子放熱フィン4hによれば、例えば実施例6の場合と比較して、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWの表面積を大きくすることができ、液状冷媒3との熱抵抗を低減することが可能となる。これにより、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWにおいて、隣接端子間距離をより短くし易くなり、当該各スイッチ素子SWの電圧分担の均一化や電気機器17の小型化により貢献し易くなる。
【0108】
≪実施例8≫
図8は、本実施例8による冷却構造を説明するための電気機器18の概略構成図である。この電気機器18は、電気機器17と同様の構成であって、複数個の循環装置7(図8中では2個の循環装置7a,7b)を備えたものとなっている。
【0109】
図8の循環装置7a,7bは、沿面方向における分散した位置で液状冷媒3に浸漬され、当該液状冷媒3を当該沿面方向へ循環できるように設けられていれば良い。例えば図8の循環装置7a,7bの場合、沿面方向において互いに対向する位置に設けられている。
【0110】
具体的に、循環装置7aは、図8(A)に示すように、周壁部6aの内周側の底部側で図示Y軸方向の他端側(図示右側)寄りの位置において、吸入口71が熱交換部44と対向し吐出口72がスイッチ素子群Gと対向する姿勢となるように、配置されている。また、循環装置7bは、図8(A)に示すように、周壁部6aの内周側の蓋部6b側で図示Y軸方向の一端側(図示左側)寄りの位置において、吸入口71がスイッチ素子群Gと対向し吐出口72が熱交換部44と対向する姿勢となるように、配置されている。
【0111】
このような循環装置7a,7bを稼動させることにより、液状冷媒3が沿面方向へ循環することとなる。具体例としては、図8(A)に示す矢印y1のように、液状冷媒3が、循環装置7aの吸入口71により吸引された後、矢印y2のように当該循環装置7aの吐出口72からスイッチ素子群G側に吐出される。次に、スイッチ素子群G側の熱を吸熱した液状冷媒(吸熱して比較的高温になった液状冷媒)3は、矢印y31のように流動し、循環装置7bの吸入口71により吸引された後、矢印y32のように当該循環装置7bの吐出口72から熱交換部44側に吐出される。そして、熱交換部44により冷却(放熱)された液状冷媒3は、再び循環装置7aの吸入口71により吸引されて循環することとなる。
【0112】
以上示した実施例8の冷却構造によれば、実施例1~7と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例8の各循環装置7(7a,7b)によれば、例えば実施例5~7の場合と比較して、液状冷媒3を強制的により循環し易くなり、液状冷媒3において温度分布の差が生じないようにより抑制できる。これにより、スイッチ素子群Gの各スイッチ素子SWにおいて、隣接端子間距離をより短くし易くなり、当該各スイッチ素子SWの電圧分担の均一化や電気機器15の小型化により貢献し易くなる。
【0113】
≪実施例9≫
図1図8に示す電気機器11~18では、スイッチ素子群Gを支持基板Pに実装した状態で液状冷媒に浸漬しているが、当該スイッチ素子群Gおよび支持基板Pにおいては、例えば図9に示すような筒状周壁部Wの内周側に配置した状態で、液状冷媒3に浸漬しても良い。
【0114】
図9に示す筒状周壁部Wは、例えば金属パネルを折曲加工することにより筒状に成形して成るものであって、当該筒状周壁部Wの軸心方向の両端に開口部W11,W12を有した形状となっている。この筒状周壁部Wの内周側には、スイッチ素子群Gを実装(図9(B)では、複数個のスイッチ素子SWが一端側面P1に沿って直線状に配列(図示X軸方向に配列)されているスイッチ素子群Gを実装)した支持基板Pが、配置されている。図9(B)の場合、内周面W13の底壁部W21側に、支持基板Pの他端側面P2が支持(図9(B)では支柱P3を介して支持)されている。
【0115】
このように構成された筒状周壁部Wにおいては、スイッチ素子群Gおよび支持基板Pの他に、例えばスイッチ素子SWに対して電気的接続可能な電気部品(例えば後述の駆動用コアユニットU,抵抗Rw,コンデンサCw;以下、適宜纏めて単に電気部品と称する)を配置しても良く、これにより当該スイッチ素子群G,支持基板P,電気部品を一体化させることが可能となる。
【0116】
筒状周壁部Wに配置する電気部品の位置は、適宜設定することが可能であり、特に限定されるものではない。例えば、図9(B)に示すように、筒状周壁部Wの内周側の余剰スペース(図9(B)では天上壁部W22側の余剰スペース)に、各スイッチ素子SWそれぞれに対応した駆動用コアユニットUを適宜配置することが挙げられる。
【0117】
駆動用コアユニットUは、種々の態様を適用することが可能であり、その一例としては、スイッチ素子SWを駆動するための電源生成や制御信号(ゲートオン・オフ信号)送信の機能を有した態様が挙げられる。図9(B)の各駆動コアユニットUの場合、それぞれの駆動回路基板U1の一端側面にコアU2が実装(図9(B)では2個実装)された構成であって、それぞれ筒状周壁部Wの軸心方向(図9(B)では図示X軸方向)に所定間隔を隔てて配置されている。また、各駆動回路基板U1は、筒状周壁部Wの径方向(図9(B)では図示Z軸方向)に沿って立設した姿勢で、内周面W13の側壁部W23側または/および側壁部W24側に支持することが挙げられる。
【0118】
また、各駆動回路基板U1間(図中では各駆動回路基板U1間のうちの3箇所)には、必要に応じて、筒状周壁部Wの径方向に沿って延在した形状の仕切壁W14を適宜介在することが挙げられる。また、筒状周壁部Wの内周側の余剰スペースが狭い場合には、後述の図10図11に示すように筒状周壁部Wの外周側に電気部品を支持(例えば後述の図10図11のように、外周面W15に抵抗Rw,コンデンサCwを支持)して配置することも挙げられる。
【0119】
<筒状周壁部Wの適用した場合の電気機器の構成例>
図10図11は、本実施例9による冷却構造を説明するための電気機器WAの概略構成図である。この電気機器WAは、電気機器11~14と同様の構成であって、スイッチ素子群G,支持基板P,電気部品を一体化させた筒状周壁部Wが、液状冷媒3に対して1個以上(図10図11中では10個)浸漬されたものとなっている。
【0120】
図10図11の電気機器WAの場合、筐体状で絶縁性の容器60Aと、当該容器60Aの内周側に充填されている液状冷媒3と、液状冷媒3に浸漬されている筒状周壁部Wと、容器60Aの一端側(図5では図示Z軸方向の一端側(図示上側))で筒状周壁部W(筒状周壁部群WG)から離反した位置に設けられて液状冷媒3を冷却することが可能な熱交換部44Aと、を主な要素として備えている。
【0121】
液状冷媒3に浸漬された筒状周壁部Wの内周側においては、開口部W11,W12を介して、当該液状冷媒3が流出入して循環される。これにより、当該筒状周壁部Wの内周側に配置されたスイッチ素子群Gを冷却することができ、液状冷媒3に吸熱された熱は、熱交換部44Aによって容器60Aの外周側に放熱されることとなる。
【0122】
<容器60Aの構成例>
図10図11の容器60Aは、平板状の底壁部61と、当該底壁部61の一端側面の四方を包囲するように立設して延在している筒状の周壁部62(図10図11では平板状の側壁部62a,62b,62c,62dが立設して延在している周壁部62)と、当該周壁部62の立設方向の開口部63に対して開閉自在に設けられた蓋部64と、を有して成る筐体状であって、当該容器60Aの内周側に液状冷媒3を充填でき、その液状冷媒3に熱交換部44A,筒状周壁部W(その他、例えば筒状周壁部Wに支持される抵抗Rw,コンデンサCw等の電気部品)を浸漬できるように構成されている。この容器60Aは、容器21と同様に、アクリル等の絶縁性材料(樹脂材料等)を適宜成形して得られたものを適用することが挙げられ、必要に応じてシール材等を適宜適用することも挙げられる。
【0123】
周壁部62は、当該周壁部62の内周側に熱交換部44A,筒状周壁部W(後述の実施例10,11では更に循環装置7A)を収納できる形状であって、当該熱交換部44Aと筒状周壁部Wとの両者を所定距離離反した状態で保持できる大きさ(深度が深い形状)となっている。
【0124】
具体的に、図10図11の容器60Aの場合、当該容器60Aの内周側の底壁部61側に筒状周壁部Wを配置し、当該容器60Aの内周側の蓋部64側に熱交換部44Aを配置できる形状となっている。また、例えば図11(A)に示すように、周壁部62の開口縁面63aがフランジ形状をなしており、当該フランジ形状の開口縁面63aに対して蓋部64の内周面64aの外周縁側が面接合でき、容器60Aの内周側を封止自在(例えば必要に応じてシール材を介して封止自在)な構成となっている。
【0125】
<熱交換部44Aの構成例>
図10図11の熱交換部44Aは、熱交換部41~44と同様に、液状冷媒3を冷却できるものであれば良く、その一例として、図10図11に示すようなラジエータ4rを具備した構造を適用することが挙げられる。
【0126】
図10図11の熱交換部44Aの場合、循環管路4raを有したラジエータ4rを具備して成り、当該ラジエータ4rが液状冷媒3に浸漬するように設置(例えば、フランジ類等のラジエータ装備品を用いて蓋部64の内側面64aに取り付けられ、容器60A外側から循環管路4raに冷却水を通流できるように設置)された態様となっている。
【0127】
具体的に、図10図11の熱交換部44Aのラジエータ4rの場合、平板状で熱伝導性を有し蓋部64の内側面64aに取り付けられる支持部4rbと、その支持部4rbの内部において図示X軸方向に複数回往復しながら図示Y軸方向に延在(支持部4rb内において張り巡らすように延在)した循環管路4raと、を有している。そして、部位4rcの供給口4r1から循環管路4ra内に冷却水を供給でき、当該供給した冷却水を排出口4r2から排出して循環できるように構成されている。
【0128】
<筒状周壁部Wの配置構成例>
容器60A内の筒状周壁部Wの配置構成は、特に限定されるものではなく、適宜設定できるものであるが、当該筒状周壁部Wを複数個配置する場合には、当該複数個の筒状周壁部Wを適宜整列させて配置することが挙げられる。図10図11の場合、複数個(図10図11中では2個)の筒状周壁部Wが所定間隔を隔てて同軸状(図10図11では図示X軸方向)に連なって並べられて筒状周壁部群WGが構成されており、当該筒状周壁部Wの軸心方向に対して交差する方向に、当該筒状周壁部群WGが複数個配列(図10図11では図示Y軸方向に5個配列)された配置構成となっている。
【0129】
図10図11の筒状周壁部群WGにおいては、各筒状周壁部Wの外周面W15の天井壁部W22側それぞれには、複数個の抵抗Rwが支持(図10図11ではブラケットb1を介して支持)されている。また、円柱形状を成し各筒状周壁部Wの共通のコンデンサCwが、当該各筒状周壁部Wの外周面W15の天井壁部W22側それぞれの間を跨って延在(図10図11ではブラケットb2,b3を介して)するように支持されている。また、抵抗Rwの表面には、複数個の平板状のフィン部材Rhaを有した放熱フィンRhが、設けられている。
【0130】
隣接する同士の2つの筒状周壁部群WGの間や、当該筒状周壁部群WGの各筒状周壁部W間は、電線やバスバー等の接続部(図10図11の接続部W3,W4)を介して電気的接続しても良い。例えば図10図11では、筒状周壁部群WGの各筒状周壁部W間を接続するバスバー状の接続部W3と、各筒状周壁部群WGの間を接続するバスバー状の接続部W4と、が設けられている。これにより、隣接する同士の2つの筒状周壁部群WGの間や、当該筒状周壁部群WGの各筒状周壁部W間を、電気的直列または/および電気的並列に適宜接続することが可能となる。
【0131】
以上示した実施例9の冷却構造によれば、実施例1~8と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、筒状周壁部Wを適用することにより、当該筒状周壁部Wの内周側にスイッチ素子群Gおよび支持基板Pを配置したり当該筒状周壁部Wに電気部品を支持した状態(スイッチ素子群G,支持基板P,電気部品を一体化させた状態)で、当該筒状周壁部Wを液状冷媒3に浸漬することが可能であり、容器60A内における収納性(収納効率,収納作業性等)や電気機器WAの組立作業性の向上に貢献することが可能となる。
【0132】
≪実施例10≫
図12図13は、本実施例10による冷却構造を説明するための電気機器WBの概略構成図である。この電気機器WBは、電気機器WAと同様の構成であって、電気機器15~18と同様に液状冷媒3を撹拌して循環する循環装置7Bを、更に備えたものとなっている。
【0133】
図12図13の電気機器WBの場合、容器60Aと、当該容器60Aの内周側に充填されている液状冷媒3と、液状冷媒3に浸漬されている筒状周壁部Wと、容器60Aの一端側(図12図13では図示Z軸方向の一端側(図示上側))で筒状周壁部W(筒状周壁部群WG)から離反した位置に設けられて液状冷媒3を冷却することが可能な熱交換部44Bと、循環装置7Bと、を主な要素として備えている。
【0134】
熱交換部44Bは、熱交換部44Aと同様の構成であって、当該熱交換部44を変形した態様となっている。図12図13の熱交換部44Bの場合、支持部4rbが図示X軸方向に縮径化され図示Z軸方向に拡径化された形状であり、その縮径化および拡径化された支持部4rbが、内周面60aにおける側壁部62d側で蓋部64寄りの位置に取り付けられた態様となっている。
【0135】
循環装置7Bは、循環装置7と同様の構成であって、容器60Aの内周面60aに沿った方向のうち筒状周壁部Wと熱交換部44Bとを結ぶ方向(すなわち、沿面方向)に位置し、液状冷媒3を当該沿面方向へ循環(例えば図12(A)では矢印y1~y3の方向に循環)できるように設けられている。容器60Aの外周面60bのうち循環装置7Bが近接する位置(図12図13では側壁部62a側の位置)には、当該循環装置7Bを駆動するためのモータMが取り付けられている。
【0136】
図12図13の液状冷媒3に浸漬されている筒状周壁部Wの場合、当該筒状周壁部Wの軸心方向が前記沿面方向に沿って延在(すなわち、開口部W11,W12が沿面方向に開口)するように配置されているため、前記のように循環装置7Bにより循環させた液状冷媒3は、当該筒状周壁部Wの内周側を通過し易くなる。
【0137】
以上示した実施例10の冷却構造によれば、実施例9と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例10の循環装置7Bによれば、液状冷媒3を強制的に循環しながら熱交換部44Bにより冷却できるため、液状冷媒3において温度分布の差が生じないように抑制でき、例えば筒状周壁部Wの内周側に配置されたスイッチ素子群Gや電気部品を冷却し易くなる。
【0138】
≪実施例11≫
図14図15は、本実施例11による冷却構造を説明するための電気機器WCの概略構成図である。この電気機器WCは、電気機器WBと同様の構成であって、複数個の循環装置7B(図14図15では2個の循環装置7Ba,7Bb)を備えたものとなっている。
【0139】
図14図15の電気機器WCの場合、容器60Aと、当該容器60Aの内周側に充填されている液状冷媒3と、液状冷媒3に浸漬されている筒状周壁部Wと、容器60Aの一端側(図14図15では図示Z軸方向の一端側(図示上側))で筒状周壁部W(筒状周壁部群WG)から離反した位置に設けられて液状冷媒3を冷却することが可能な熱交換部44Bと、2個の循環装置7Ba,7Bbと、を主な要素として備えている。
【0140】
循環装置7Ba,7Bbは、それぞれ循環装置7Bと同様の構成であって、容器60Aの内周面60aに沿った方向のうち筒状周壁部Wと熱交換部44Bとを結ぶ方向(すなわち、沿面方向)に位置し、かつ当該循環装置7Ba,7Bbの両者が前記沿面方向に対して交差する方向に並んで配置されている。これにより、各循環装置7Ba,7Bbは、それぞれ液状冷媒3を当該沿面方向へ循環(例えば図14(A)では矢印y1~y3の方向に循環)できるように構成されている。容器60Aの外周面60bのうち循環装置7Ba,7Bbが近接する位置(図14図15では、それぞれ側壁部62a側,側壁部62c側の位置)には、当該循環装置7Ba,7Bbを駆動するためのモータMa,Mbがそれぞれ取り付けられている。
【0141】
以上示した実施例11の冷却構造によれば、実施例10と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例11のように複数個の循環装置7Bを適用することにより、各循環装置7Bによる液状冷媒の循環速度を上昇(例えばクロスフローファン構造の場合には、クロスフローファンを高速回転)させ易くなり、液状冷媒3において温度分布の差が生じないようにより抑制し易く、筒状周壁部Wの内周側に配置されたスイッチ素子群Gや電気部品をより冷却し易くなる。
【0142】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0143】
例えば、実施例1~11の冷却構造は、図1図15に示したような電気機器11~18,WA~WCに限定されるものではなく、種々の態様の電気機器に適用することが可能である。例えば、図16に示したようなパルス発生回路を有したものであって、直流電源EVからの直流電力エネルギーをパルス状に変換して負荷LDに供給する構成のパルス電源に適用することが挙げられる。
【0144】
より具体的には、図16の負荷LDと直流電源EVとの間において、複数個のスイッチ素子SWを電気的直列に挿入接続してスイッチ素子群Gを構成し、当該各スイッチ素子SWを各々のゲート駆動回路(図示省略)によりスイッチング制御できるようにし、当該スイッチ素子群Gを図1図15に示したように液状冷媒3に浸漬して冷却できるようにした態様が挙げられる。
【0145】
また、実施例1~11は、互いに適宜組み合わせても良い。例えば、電気機器11~14において容器60,循環装置7,熱交換部44等を適用したり、電気機器15~18において容器21,熱交換部41~43の何れか等を適用したり、電気機器WAにおいてバッフル5等を適用(例えば、容器60Aの内周側において、熱交換部44Bと筒状周壁部群WDとの両者間を交差する方向(図10図11では図示X軸方向)に延在した形状のバッフル5を適用)することが挙げられる。
【0146】
具体例として、電気機器15~18に容器21を適用した場合、各開口縁面21a,21bにより支持基板Pの外周縁部(例えば図5では基板部P23,P24の一部)を挟んだ姿勢で、当該各開口縁面21a,21bを互いに対向して接合した構成にすることが挙げられる。これにより、支持基板Pの外周縁部のうち一部(例えば図5では基板部P23,P24)が、各開口縁面21a,21b間を介して容器21の内周側から外周側に突出し、当該支持基板Pの外周縁部のうち他部(例えば図5では基板部P21,P22)が、容器21の内周面20aとの間に隙間部20bを形成できることとなる。
【0147】
電気機器WAにおいてバッフル5を適用する場合、容器60Aの内周側において、熱交換部44Bと筒状周壁部群WDとの両者間を交差する方向(図10図11では図示X軸方向)に延在した形状のバッフル5を適用することが挙げられる。これにより、容器60Aの内周側において液状冷媒3の自然対流が発生し易くなり、液状冷媒3に吸熱されている熱が熱交換部44Bに熱伝導し易くなる。
【符号の説明】
【0148】
11~18,WA,WB,WC…電気機器
21,60,60A…容器、2a…第1周壁部、2b…第2周壁部、2c…隔壁部、21a,21b…開口縁面、6a…周壁部、6b…蓋部
3…液状冷媒
41~44,44A,44B…熱交換部
4a…内周側フィン、4b…外周側フィン、4c…送風機、4d…循環管路、4e…放熱フィン、4f…循環路、4g…ラジエータ、4h…素子放熱フィン
5…バッフル、51…中央部貫通路、53…外周側貫通路
7,7B,7Ba,7Bb…循環装置
73…吐出口バッフル
SW…半導体スイッチング素子
G…スイッチ素子群
P…支持基板
LD…負荷
EV…直流電源
M,Ma,Mb…モータ
W…筒状周壁部
WG…筒状周壁部群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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