(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115070
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】エレベータシステムのベルト
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20230810BHJP
D07B 1/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B66B7/06 A
D07B1/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097443
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2018081039の分割
【原出願日】2018-04-20
(31)【優先権主張番号】62/487,877
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】チェン チァンジャオ
(57)【要約】
【課題】軽量でかつ柔軟性が高く、シーブの直径を小さくすることが可能なエレベータシステムのベルトを提供する。
【解決手段】エレベータシステムのベルトは、ベルト幅方向に少なくとも部分的に延び、ベルトの長さに沿って長手方向に延びる引張部材であって、複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成された引張部材と、引張部材を少なくとも部分的に被覆するジャケット材とを含む。エレベータシステムは、昇降路と、昇降路に配置され、昇降路内を移動可能なエレベータかごと、エレベータかごに動作可能に接続されて、エレベータかごを吊り下げる及び/または昇降路に沿って駆動するベルトとを含む。ベルトは、ベルト幅方向に少なくとも部分的に延び、ベルトの長さ方向に長手方向に延びる引張部材を含む。引張部材は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成される。ジャケット材は、引張部材を少なくとも部分的に被覆する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステムのベルトであって、
ベルト幅方向に少なくとも部分的に延び、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延びる引張部材であって、複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成される前記引張部材と、
前記引張部材を少なくとも部分的に被覆するジャケット材と、
を含む、前記ベルト。
【請求項2】
前記芳香族ポリエステルベース繊維は、布に形成される、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記布は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維を含む前記布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンをさらに含む、請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記引張部材は、ベルト厚さ方向に配列された複数の布層を含む、請求項2に記載のベルト。
【請求項5】
前記ベルト幅方向に配置された複数の引張部材をさらに含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記引張部材は、
複数の耐荷重繊維を含むコードと、
前記コードを少なくとも部分的に囲む芳香族ポリエステルベース繊維の少なくとも1つの層と、
を含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項7】
前記耐荷重繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及び、ポリマー繊維の1つまたは複数である、請求項6に記載のベルト。
【請求項8】
前記複数の耐荷重繊維は、マトリクス材で配置される、請求項6に記載のベルト。
【請求項9】
前記ジャケット材は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレンプロピレンジエンエラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニルポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロックジエンエラストマー、天然ゴム、及び、少なくとも2つの化合物の任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
エレベータシステムであって、
昇降路と、
前記昇降路内に配置され、前記昇降路内を移動可能なエレベータかごと、
前記エレベータかごに動作可能に接続されて、前記エレベータかごを吊り下げる、及び/または、前記昇降路に沿って駆動するベルトとを含み、前記ベルトは、
ベルト幅方向に少なくとも部分的に延び、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延びる引張部材であって、複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成される前記引張部材と、
前記引張部材を少なくとも部分的に被覆するジャケット材と
を含む、前記エレベータシステム。
【請求項11】
前記複数の芳香族ポリエステルベース繊維は、布に形成される、請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記布は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維を含む前記布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンをさらに含む、請求項11に記載のエレベータシステム。
【請求項13】
前記引張部材は、ベルト厚さ方向に配列された複数の層を含む、請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項14】
前記ベルト幅方向に配置された複数の引張部材をさらに含む、請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項15】
前記引張部材は、
複数の耐荷重繊維を含むコードと、
前記コードを少なくとも部分的に囲む芳香族ポリエステルベース繊維の少なくとも1つの層と、
を含む、請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項16】
前記耐荷重繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及び、ポリマー繊維の1つまたは複数である、請求項15に記載のエレベータシステム。
【請求項17】
前記複数の耐荷重繊維は、マトリクス材で配置される、請求項15に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の実施形態は、エレベータシステムに関し、より詳細には、エレベータシステムのエレベータかごを吊り下げる及び/または駆動する耐荷重部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、建物の様々な階の間で、乗客、貨物、または、その両方を運ぶのに役立つ。一部のエレベータは、トラクションベースであり、エレベータかごを支持し、エレベータかごの所望の動き及び位置を達成するためのロープまたはベルト等の耐荷重部材を利用している。
【0003】
高層への吊り上げのための金属製ロープは、その引張強度と剛性の割に、重く、太い。代わりに、ベルトが耐荷重部材として使用されることが多い。ベルトが耐荷重部材として使用される場合、複数の引張部材またはコードが、共通のジャケットに埋め込まれる。ジャケットは、コードを所望の位置に保持し、また、摩擦荷重経路を提供する。例示のトラクションエレベータシステムにおいては、マシンが、ベルトが接触するトラクションシーブを駆動して、エレベータかごを昇降路に沿って駆動する。ベルトは、典型的に、スチール要素から形成された引張部材を利用するが、これらのベルトには、高層への吊り上げ用途において、スチールロープと同じ問題が多くある。代わりに、炭素繊維複合材等の複合材で形成された引張部材を利用してよい。
【0004】
炭素繊維複合材の引張部材においては、部材は、良好な強度対重量特性を有するが、典型的には、使用されている剛性熱硬化性マトリクスが原因で、柔軟性が低下し、また、スチールワイヤから形成された引張部材と比較して、高温性能も低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態においては、エレベータシステムのベルトは、ベルト幅方向に少なくも部分的に延び、ベルトの長さに沿って長手方向に延びる引張部材を含み、引張部材は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成され、ジャケット材が、引張部材を少なくとも部分的に被覆する。
【0006】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、芳香族ポリエステルベース繊維は、布に形成される。
【0007】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、布は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維を含む布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンをさらに含む。
【0008】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、引張部材は、ベルト厚さ方向に配列された複数の布層を含む。
【0009】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、複数の引張部材が、ベルト幅方向に配置される。
【0010】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、引張部材は、複数の耐荷重繊維を含むコードと、コードを少なくとも部分的に囲む芳香族ポリエステルベース繊維の少なくとも1つの層とを含む。
【0011】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、耐荷重繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及び、ポリマー繊維の1つまたは複数である。
【0012】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、複数の耐荷重繊維は、マトリクス材で配置される。
【0013】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、ジャケット材は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレンプロピレンジエンエラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニルポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロックジエンエラストマー(styrene block and diene elastomer)、天然ゴム、及び、少なくとも2つの化合物の任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
別の実施形態においては、エレベータシステムは、昇降路と、昇降路内に配置され、昇降路内を移動可能なエレベータかごと、エレベータかごに動作可能に接続されて、エレベータかごを吊り下げる及び/または昇降路に沿って駆動するベルトとを含む。ベルトは、ベルト幅方向に少なくとも部分的に延び、ベルトの長さに沿って長手方向に延びる引張部材を含む。引張部材は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成される。ジャケット材は、引張部材を少なくとも部分的に被覆する。
【0015】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、複数の芳香族ポリエステルベース繊維は、布に形成される。
【0016】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、布は、複数の芳香族ポリエステルベース繊維を含む布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンをさらに含む。
【0017】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、引張部材は、ベルト厚さ方向に配列された複数の層を含む。
【0018】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、複数の引張部材は、ベルト幅方向に配置される。
【0019】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、引張部材は、複数の耐荷重繊維を含むコードと、コードを少なくとも部分的に囲む芳香族ポリエステルベース繊維の少なくとも1つの層とを含む。
【0020】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、耐荷重繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及び、ポリマー繊維の1つまたは複数である。
【0021】
さらに、または、代わりに、この実施形態または他の実施形態において、複数の耐荷重繊維は、マトリクス材で配置される。
【0022】
以下の記載は、いかなる点においても制限と解釈すべきではない。添付図面を参照すると、類似の要素には類似の番号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】エレベータシステムの実施形態の概略図である。
【
図2】エレベータシステムベルトの実施形態の概略断面図である。
【
図3】エレベータシステムベルトの実施形態の別の概略断面図である。
【
図4】エレベータシステムベルトの実施形態のさらに別の概略断面図である。
【
図5】エレベータシステムベルトの実施形態のさらに別の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
開示の装置及び方法の1つまたは複数の実施形態の詳細な記載を、図面を参照して、制限ではなく例示のために記載する。
【0025】
図1に示すのは、例示のトラクションエレベータシステム10の概略図である。本発明の理解に必要ないエレベータシステム10の特徴(ガイドレール、安全装置等)は、本明細書には記載しない。エレベータシステム10は、1つまたは複数のベルト16を用いて昇降路14内に運転可能に吊り下げられた、または、支持されたエレベータかご12を含む。1つまたは複数のベルト16は、エレベータシステム10の様々な構成要素を通るように1つまたは複数のシーブ18と接触する。1つまたは複数のベルト16は、カウンタウェイト22にも接続でき、カウンタウェイト22は、運転中、エレベータシステム10を釣り合わせるのを助けるために、また、トラクションシーブの両側のベルトの引張力の相違を少なくするために使用される。
【0026】
シーブ18は、それぞれ、直径20を有し、直径20は、エレベータシステム10の他のシーブ18の直径と同じであっても異なってもよい。シーブの少なくとも1つが、トラクションシーブ52であってよい。トラクションシーブ52は、マシン50によって駆動される。マシン50による駆動シーブの動きは、トラクションシーブ52を通る1つまたは複数のベルト16を(牽引によって)駆動、移動及び/または推進する。シーブ18の少なくとも1つは、ダイバータシーブ、そらせシーブ、または、アイドラシーブであってよい。ダイバータシーブ、そらせシーブ、または、アイドラシーブは、マシン50によって駆動されないが、1つまたは複数のベルト16をエレベータシステム10の様々な構成要素を通るように誘導するのを助ける。
【0027】
ある実施形態においては、エレベータシステム10は、エレベータかご12を吊り下げるために、及び/または、駆動するために2つ以上のベルト16を使用できる。さらに、エレベータシステム10は、1つまたは複数のベルト16の両側のいずれかが、1つまたは複数のシーブ18に係合するように、または、1つまたは複数のベルト16の片側のみが1つまたは複数のシーブ18に係合するように、様々な構成を有してよい。
図1の実施形態は、1:1のロープ配置を示し、1つまたは複数のベルト16は、かご12とカウンタウェイト22で終了しているのを示しているが、他の実施形態は、他のロープ配置を使用してよい。
【0028】
ベルト16は、十分な柔軟性を有するように構成されて、1つまたは複数のシーブ18を通る時、曲げ応力が低く、ベルトの寿命要件を満たし、滑らかな動作を提供する一方、エレベータかご12を吊り下げるために、及び/または、駆動するための強度要件を満たすことができるように十分に頑丈である。
【0029】
図2は、例示のベルト16の構造または設計の断面の概略図である。ベルト16は、ベルト16に沿って長手方向に延び、且つ、ベルト幅26方向に少なくとも部分的に配置されて延びる引張部材24を含む。引張部材24は、ベルト16内で引張部材24が動かないようにし、且つ、引張部材24を保護するジャケット材28に少なくとも部分的に囲まれる。ジャケット材28は、トラクションシーブ52の対応する表面に接触するように構成されたトラクション側30を画定する。ジャケット材28の例示の材料は、例えば、熱可塑性ポリウレタンのエラストマー、ポリアミド、熱可塑性ポリエステルエラストマー、及び、ゴムを含む。他の材料は、ベルト16に必要な機能を満たすのに適していれば、ジャケット材28の形成に使用されてよい。例えば、ジャケット材28の主な機能は、ベルト16とトラクションシーブ52の間に十分な摩擦係数を与えて、それらの間に所望の牽引量を生み出すことである。ジャケット材28は、引張部材24に牽引荷重も伝えるべきである。さらに、ジャケット材28は、耐摩耗性でなければならず、例えば、衝撃損傷、化学物質等の環境要因への暴露から、引張部材24を保護しなければならない。
【0030】
ベルト16は、ベルト幅26とベルト厚さ32を有し、ベルト幅26とベルト厚さ32のアスペクト比は、1より大きい。ベルト16は、トラクション側30の反対側の裏側34と、トラクション側30と裏側34の間に延びるベルト端部36とをさらに含む。
【0031】
引張部材24は、液晶ポリマー材料から形成される。液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸の重縮合によって生成された芳香族ポリエステルである。ある実施形態においては、液晶ポリマーは、Vectran(商標)材料である。液晶ポリマーは、典型的な炭素繊維より低い密度、約1.4g/cm3を有する。さらに、液晶ポリマーの引張強度は、典型的な炭素繊維プロファイルの引張強度より高く、約3000~3200メガパスカルである。ある実施形態においては、液晶ポリマー材料は、織ることによって、または、他のプロセスによって布に形成される。
【0032】
ある実施形態においては、引張部材24は、液晶ポリマー布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンの1つまたは複数を有する液晶ポリマー材料を含む。さらに、ある実施形態においては、引張部材24を形成する布は、少なくとも50%液晶ポリマー繊維から形成される。
【0033】
別の実施形態においては、
図3に示すように、引張部材24は、ベルト厚さ方向32に積み重ねられたまたは配列された複数の布層60を含んでよい。ある実施形態においては、布層60は、積層されてよい、または、接着剤によって結合されてよい、一方、他の実施形態においては、布層60は、接着剤によって結合されず、周囲のジャケット材28のみによって適所に維持される。図示の実施形態においては、布層60は、サイズ及び形状が同じであるが、これらのパラメータは、例えば、予測される荷重、または、他の所望の性能特性に基づいて、布層60間で異なってよいことを当業者は容易に理解されよう。さらに、布層60の組成は異なってよい。
【0034】
図4を参照すると、ある実施形態においては、複数の引張部材24が、ベルト幅26方向に配置されてよく、各引張部材24は、1つまたは複数の布層60を有する。図示の実施形態においては、引張部材24は、布層60のサイズ、形状、及び、数が同じであるが、これらのパラメータは、例えば、予測される荷重、または、他の所望の性能特性に応じて、引張部材24間で異なってよいことを当業者は容易に理解されよう。さらに、布層60の組成は、引張部材24間で異なってよい。
【0035】
図5を参照すると、ある実施形態においては、引張部材24は、コード62が1つまたは複数の布層60に包まれた、または、覆われたハイブリッド構造である。ある実施形態においては、コード62は、マトリクス材66内に配置された複数の耐荷重繊維64から形成された合成部材である。例示の耐荷重繊維64は、液晶ポリマー繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、または、これらの組み合わせを含むが、これらに限らない。他の実施形態においては、いわゆる「乾燥繊維」構成を利用し、マトリクス材66は利用しない。
【0036】
さらに、マトリクス材66は、例えば、ポリウレタン、ビニルエステル、及び、エポキシ樹脂等の任意の適切な材料から形成されてよい。耐荷重繊維64及びマトリクス材66の材料は、引張部材24が所望の剛性及び強度になるように選択される。
【0037】
6つの引張部材24を
図5の実施形態で示しているが、他の実施形態は、他の数の引張部材24、例えば、4、8、10または12の引張部材24を含んでよい。さらに、
図5の実施形態の引張部材24は、ほぼ同じであるが、他の実施形態においては、引張部材24は、互いに異なってよい。
【0038】
引張部材24における液晶ポリマー等の芳香族ポリエステルベース繊維の使用によって、炭素繊維複合材引張部材またはスチールコード引張部材と比較して、引張部材24の重量が減り、且つ、引張部材24の柔軟性も向上して、エレベータシステム10で使用するシーブ18の直径を小さくすることができる。
【0039】
「約」という語は、出願時に利用可能な機器に基づいて、特定量の測定に関連する誤差の程度を含むことを意図している。例えば、「約」は、所与の値の±8%、5%、または、2%を含み得る。
【0040】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけに使用されており、本開示を制限することを意図していない。ここで使用される場合、単数形「a」「an」「the」は内容が明らかに複数形でないことを示していない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される「comprises(含む)」、及び/または「comprising(含む)」という語は、記載した特徴、整数値、ステップ、動作、要素、及び/または、構成要素の群の存在を特定するが、それらの1つまたは複数の他の特徴、整数値、ステップ、動作、要素、及び/または、構成要素の存在または追加を除外しないことをさらに理解されよう。
【0041】
本開示は、例示の実施形態(単数または複数)を参照して記載したが、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われてよく、例示の実施形態の要素を同等の要素で置き換えてよいことを当業者は理解されよう。さらに、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるための多くの修正が、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく、行われてよい。よって、本開示は、本開示を実行するために考慮された最適な態様として開示された特定の実施形態に制限されず、本開示は、請求項の範囲に該当する全ての実施形態を含むことを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステムのベルトであって、
ベルト幅方向に部分的に延び、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延びる複数の引張部材であって、これらの複数の引張部材の各々が複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成され、前記複数の芳香族ポリエステルベース繊維は、布に形成され、各引張部材は、ベルト厚さ方向に積み重ねられた複数の前記布の層を含む、前記複数の引張部材と、
前記複数の引張部材を少なくとも部分的に被覆するジャケット材と、
を含み、
前記複数の引張部材は前記ベルト幅方向に沿って配列され、前記ジャケット材は、前記ベルト幅方向において前記複数の引張部材のうち隣接する引張部材を分離するように前記ベルト厚さの全長に沿ってさらに延び、
前記複数の布の層は、少なくとも1つの引張部材において、前記布の層のサイズ、形状および/または組成が異なる、
ベルト。
【請求項2】
前記布は、前記複数の芳香族ポリエステルベース繊維を含む前記布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンをさらに含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記ジャケット材は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレンプロピレンジエンエラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニルポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロックジエンエラストマー、天然ゴム、及び、少なくとも2つの化合物の任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記複数の布の層は、前記少なくとも1つの引張部材において、前記布の層の数が異なる、請求項1に記載のベルト。
【請求項5】
エレベータシステムであって、
昇降路と、
前記昇降路内に配置され、前記昇降路内を移動可能なエレベータかごと、
前記エレベータかごに動作可能に接続されて、前記エレベータかごを吊り下げる、及び/または、前記昇降路に沿って駆動するベルトとを含み、前記ベルトは、
ベルト幅方向に部分的に延び、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延びる複数の引張部材であって、これらの複数の引張部材の各々が複数の芳香族ポリエステルベース繊維から少なくとも部分的に形成され、前記複数の芳香族ポリエステルベース繊維は、布に形成され、各引張部材は、ベルト厚さ方向に積み重ねられた複数の前記布の層を含む、前記複数の引張部材と、
前記複数の引張部材を少なくとも部分的に被覆するジャケット材と、
を含み、
前記複数の引張部材は、前記ベルト幅方向に沿って配列され、前記ジャケット材は、前記ベルト幅方向において前記複数の引張部材のうち隣接する引張部材を分離するように前記ベルト厚さの全長に沿ってさらに延び、
前記複数の布の層は、少なくとも1つの引張部材において、前記布の層のサイズ、形状および/または組成が異なる、
エレベータシステム。
【請求項6】
前記布は、前記複数の芳香族ポリエステルベース繊維を含む前記布の一部として形成された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾール繊維、または、ナイロンをさらに含む、請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記ジャケット材は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレンプロピレンジエンエラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニルポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロックジエンエラストマー、天然ゴム、及び、少なくとも2つの化合物の任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記複数の布の層は、前記少なくとも1つの引張部材において、前記布の層の数が異なる、請求項5に記載のエレベータシステム。