(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115081
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】オゾン破壊物質の蒸気プラズマアーク加水分解
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20230810BHJP
H05H 1/32 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023098017
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2021152255の分割
【原出願日】2012-03-19
(31)【優先権主張番号】61/454,368
(32)【優先日】2011-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2,753,043
(32)【優先日】2011-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(71)【出願人】
【識別番号】513235739
【氏名又は名称】パイロジェネシス・カナダ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キャラバン
(72)【発明者】
【氏名】ラクシュミナラヤナ・ミアダラ・プラーラダ・ラオ
(57)【要約】
【課題】オゾン破壊物質を分解するための新規のシステムを提供する。
【解決手段】前駆体物質が第1段階として反応器の高温領域で加水分解され、次いで第2段階で反応器の燃焼領域で反応物流動の中温酸化が行われ、そこでは燃焼酸素または空気が導入され、不要な副産物の形成を防ぐために結果的に生じるガスの流動の瞬間的な冷却が行われる、3領域反応器内で蒸気プラズマを用いた前駆体材料の分解に関する2段階プロセスである。関連する装置は非遷移直流蒸気プラズマトーチ、前駆体物質をプラズマトーチのプラズマプルーム内に導入するための外部冷却された3領域蒸気プラズマ反応器手段、燃焼空気又は酸素を燃焼領域に導入する手段、反応器から反応物質混合物を排出する手段及び反応器の排出端に位置する反応物質混合物を冷却する手段を含む。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内で蒸気プラズマを用いる前駆体物質の分解のための2段階のプロセスであって、
第1の段階として前記前駆体物質が前記反応器の高温領域内で加水分解され、
次いで第2の段階として前記反応器の燃焼領域内で中程度の温度での流動反応物の酸化が行われ、ここで不要な副産物の形成を防ぐために燃焼酸素または空気が導入されて速やかに結果的に生じるガス流動の急冷が行われる、プロセス。
【請求項2】
前記蒸気プラズマが非遷移直流蒸気プラズマトーチによって発生し、それによって金属電極と過熱蒸気との間に生じた電気アークが、反応性水素及び水酸化物イオンの豊富な前記プラズマトーチの出口端において高温プラズマプルームを形成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プラズマトーチが、窒素、アルゴン、ヘリウムまたはそれらの混合物などの不活性ガスを、過剰酸化から後方電極を保護するシュラウドガスとして少量使用する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応器の前記高温領域内で前記蒸気プラズマプルームの反応性水酸化物イオンおよび水素イオンを用いて高温で、前記前駆体物質が加水分解される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応器の前記水酸化物領域に存在するガス混合物が、前記反応器の前記燃焼領域において酸素の豊富な環境下で中程度の温度で燃焼され、必要な燃焼のための酸素または空気が導入される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
燃焼後に結果的に生じるプロセスガス流動が、どのような不要な副産物の形成も防ぐために冷水の微細スプレーを用いて急速に冷却される、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記加水分解反応器が、前駆体物質の完全な加水分解に必要な滞留時間を提供する円錐収束高温蒸気加水分解領域、次いで反応に必要な乱流及び追加的な滞留時間を提供する狭いチューブ状領域、並びに前記プロセスガス流動の完全な燃焼のための滞留時間を提供する円錐発散中温燃焼領域の3つの領域を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プラズマトーチからの前記プラズマプルームが前記反応器の第一の領域へ延長し、前記反応器内に含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記前駆体物質が、前記蒸気プラズマトーチに隣接する前記蒸気プラズマプルームのコア内及び前記プラズマトーチと前記反応器の前記加水分解領域との間に、乱流を発生させ前記前駆体物質を前記コアプラズマプルームと十分に混合する渦状ガスを用いて導入される、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス
【請求項10】
前記前駆体物質がガス、微細液体スプレーまたは微細固体粒子としてコア内に導入される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応性水素及び水酸化物蒸気プラズマが、前記反応器の前記加水分解領域内に存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
酸素欠乏環境が前記反応器の前記加水分解領域に存在し、酸素の豊富な環境が前記反応器の前記燃焼領域に存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応器の前記燃焼領域に存在する前記反応物質流動が、不要な副産物の形成を防ぐために、前記燃焼領域の出口に隣接した冷水の微細スプレーにより急速に冷却される、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1から13に記載のプロセスを実行する装置であって、
非遷移直流蒸気プラズマトーチ、
耐腐食耐熱内張りを含む外部から冷却された3領域蒸気プラズマ反応器、
前記プラズマトーチを前記反応器に取り付ける手段、
渦状ガス、微細液体スプレーまたは固体粒子の形状で前記プラズマトーチのプラズマプルーム内に前駆体物質を導入する手段、
前記反応器の燃焼領域内に燃焼空気又は酸素を導入する手段、
前記反応器から反応物質混合物を排出する手段、及び
前記反応器の出口端において前記反応物質混合物を冷却する手段を含む、装置。
【請求項15】
前記プラズマトーチが、間隔をあけて配置されたカソード、点火アノード及び作動アノードである金属電極の構成を含み、直流電気アークが、前記カソードと前記作動アノードとの間に存在し、ヘリウム、窒素、アルゴンまたはそれらの混合物などの不活性ガスをシュラウドガスとして使用し、主なプラズマ形成ガスとして蒸気を使用し、前記アノードの端部に存在するプラズマプルームを有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記冷却する手段が前記反応器の出口端に配置され、前記反応器を出るプロセスガス流動が通過する冷水のスプレーを形成する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
高温領域及び燃焼領域を含む反応器を備える前駆体物質の分解のための装置であって、
前記高温領域が前記前駆体物質を加水分解するように構成され、
前記燃焼領域が反応物質流動の中温酸化を生じさせるように構成され、燃焼酸素または空気が導入され、
冷却手段が、不要な副産物の形成を防ぐために結果的に生じるガス流動の冷却のために前記反応器の出口端に提供される、装置。
【請求項18】
前記反応器の前記高温領域が、前記前駆体物質の加水分解を完全に行うために必要な滞留時間を提供する円錐収束高温蒸気加水分解領域を含み、前記高温領域と燃焼領域との間に狭いチューブ領域が提供されて反応に必要な乱流及び追加的な滞留時間を提供し、前記反応器の前記燃焼領域が、プロセスガス流動の完全な燃焼のための滞留時間を提供する円錐発散中温燃焼領域を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
非遷移直流蒸気プラズマトーチ、前記反応器に前記プラズマトーチを取り付ける手段、前記前駆体物質を渦状ガス、微細液体スプレーまたは固体粒子の形状で前記プラズマトーチのプラズマプルーム内に導入する手段、前記反応器の前記燃焼領域内に燃焼空気又は酸素を導入する手段、前記反応器から反応物質混合物を排出する手段、及び前記反応器の出口端に位置する、前記反応物質混合物を冷却する手段が提供される、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記3領域蒸気プラズマ反応器が、外部から冷却され、耐腐食性耐熱内張りを含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プラズマトーチが、間隔をあけて配置されたカソード、点火アノード及び作動アノードである金属電極の構成を含み、直流電気アークが、前記カソードと前記作動アノードとの間に存在し、ヘリウム、窒素、アルゴンまたはそれらの混合物などの不活性ガスをシュラウドガスとして使用し、主なプラズマ形成ガスとして蒸気を使用し、前記アノードの端部において排出するプラズマプルームを有する、請求項17から20に記載の装置。
【請求項22】
前記冷却手段が、前記反応器を脱出する前記プロセスガス流動が通過する冷水のスプレーを形成する、請求項17から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記反応器の前記高温領域の温度が1500℃近くである、請求項1から13に記載のプロセス。
【請求項24】
前記前駆体物質が前記反応器の前記高温領域において加水分解され、それによって前記前駆体物質が水素イオンH+及び水酸化物イオンOH-の反応が豊富な蒸気プラズマと化学的に反応する、請求項1から13及び23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
処理される前記前駆体物質が、フランジを用いてプラズマプルーム内に直接導入される、請求項1から13、23及び24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記フランジが水冷され、耐酸性材料からなり、前記前駆体物質と前記高温粘性蒸気プラズマプルームとの十分な混合を容易にするように構成された、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記前駆体物質を前記プラズマトーチの前記プラズマプルーム内に導入する前記手段がフランジを含み、前記前駆体物質が直接前記プラズマプルーム内に導入される、請求項14から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記フランジが水冷され、耐酸性物質からなり、前記前駆体物質の前記高温粘性蒸気プラズマプルームとの十分な混合を容易にするように構成された、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記加水分解反応器が、前記前駆物質の完全な加水分解のために必要な滞留時間を提供する円錐収束高温蒸気加水分解領域、次いで反応に必要な乱流及び追加的な滞留時間を提供する狭いチューブ領域並びにプロセスガス流動の完全な燃焼のための滞留時間を提供する円形発散中温燃焼領域の3つの領域を含む、請求項14から22、26及び27に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中のオゾンの破壊に関連し、より具体的には、オゾン破壊物質の分解に関連する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2011年3月18日に出願され係属中である米国特許仮出願第61/454,368号及び2011年9月23日に出願され係属中であるカナダ特許出願第2,753,043号の優先権を主張し、これらは参照によって本明細書に組み込まれている。
【0003】
国連環境計画(UNEP)の技術経済アセスメントパネル(TEAP)は、オゾン破壊物質(ODS)の分解に関する計12の技術を調査し、承認した(非特許文献1)。記述された目的に関して、これらの承認された技術は焼却技術、アーク及び高周波プラズマを含むプラズマ技術並びにその他の非焼却技術として広く分類可能である(非特許文献1)。ODS分解に関するODS処理率及び処理ユニットの数の両方に関して、現在実用的に最も幅広く用いられるのは、焼却技術またはアルゴンプラズマ技術によるものである(非特許文献1、2)。どちらの技術も分解の主な機構として熱酸化を用いる。ODSは耐熱内張り反応器に供給され、1200℃程度の高温に加熱される。焼却機は、化石燃料燃焼バーナーを用いて必要な高温を達成する一方、アルゴンプラズマアークは、アルゴンプラズマ技術の場合に用いられる。(特許文献1、2、非特許文献2、3)
【0004】
ODSは本質的に燃焼抑制物質であり、極端な処理条件が、これらの分解のために必要とされる。焼却機は、ODS分解に必要な高温を達成するために大量の化石燃料を必要とする。オゾン破壊物質は、空気又は酸素と共に比較的少量で焼却機の高温領域に供給される(特許文献1、2、非特許文献2、3)。これらの焼却機は二次燃焼室を有さないことが多く、発生した排気ガスは大気へ放出する前に単純に希釈される。従って、これらの焼却機は、少量のODSを分解するために大量の化石燃料を必要とし、顕著な量のCl2、F2、NOx、SOx、VOCを含む大量の燃焼排気を発生させ、これらは燃焼排気から除去することが困難である(特許文献1、2、非特許文献2、3)。さらに、焼却処理は、ダイオキシンやフランなどのような不完全燃焼の有毒産生物を放出する可能性が非常に高いという問題を有する(非特許文献4)。
【0005】
プラズマ分解技術は電気的アークからのエネルギーを高分解温度まで移送する媒体を形成するプラズマとしてアルゴン、窒素またはCO2を用いる(特許文献2から6)これらの技術もまた、その主な分解方法として熱酸化を用いている。直流プラズマトーチが、耐熱内張り反応器を高分解温度まで加熱するのに用いられる。ODS、空気及び蒸気が分解領域に導入され、ODSが燃焼する。これらのシステムの一次分解機構はやはり熱酸化であり、そのため燃焼排気から除去することが困難なCl2、F2及びCF4の産生などの類似した問題を有する。これらの処理は、高温領域に過剰な酸素及び空気が存在することで、依然としてNOxの形成の可能性があり、その一方で酸素レベルを減少させて稼働すると、除去が困難なすすの形成につながる。アルゴンプラズマ技術は、流量の大きな高純度のアルゴンを必要とし、使用が高コストとなる。
【0006】
そのため、当技術分野において、オゾン破壊物質の分解のための改善された技術が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4751076号、1988年、Hugら著、炭化水素の熱分解反応器
【特許文献2】米国特許出願第2003/0171635号、2003年、Bereczkyら著、有害液体有機廃棄物質の取り扱いに関する方法
【特許文献3】米国特許第5866753号、1999年、Deamら著、材料の処理
【特許文献4】米国特許第5296672号、1994年、Ramakrishnanら著、上流及び下流電極を有する電気アーク反応器
【特許文献5】米国特許第5227603号、1993年、Dooletteら著、3つの電極を有する電気アーク生成デバイス
【特許文献6】特開2000-334294号公報、1999年、Shimeiwaら著、二酸化炭素の分解において発生した一酸化炭素または炭素の酸化ガスによる酸化を伴う、冷媒として用いられた塩化フッ化炭素等価物質のプラズマアーク分解方法
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】UNEP (2002), http://www.ozone.unep.org/teap/Reports/Other_Task_Force/TEAP02V3b.pdf
【非特許文献2】Hay Yu, Kennedy E. M., Adesina A. A. and Dlugogorski B. Z., A review of CFC and halon treatment technologies - The nature and role of catalysts, Catalysis Surveys from Asia, Vol. 10, No. 1, March 2006
【非特許文献3】UNEP (2000) http://www.unep.fr/ozonaction/information/mmcfiles/3521-e-file1.pdf
【非特許文献4】Hassel G. R., Experimental Investigation of PIC Formation in CFC Incineration, Energy and Environ (Res. Corp, Irvine, CA, USA, 1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的はオゾン破壊物質を分解するための新規のシステムを提供することである。
【0010】
従って、本発明によれば、第1の段階として前駆体物質が反応器の高温領域内で加水分解され、次いで第2の段階として前記反応器の燃焼領域内で中程度の温度での流動反応物の酸化が行われ、ここで不要な副産物の形成を防ぐために燃焼酸素または空気が導入されて速やかに結果的に生じるガス流動の急冷が行われる、反応器内で蒸気プラズマを用いる前駆体物質の分解のための2段階のプロセスが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、非遷移直流蒸気プラズマトーチ、耐腐食耐熱内張りを含む外部から冷却された3領域蒸気プラズマ反応器、前記反応器に前記プラズマトーチを取り付ける手段、渦状ガス、微細液体スプレーまたは固体粒子の形状で前記プラズマトーチのプラズマプルーム内に前駆体物質を導入する手段、前記反応器の燃焼領域内に燃焼空気又は酸素を導入する手段、前記反応器から反応物質混合物を排出する手段、及び前記反応器の出口端において前記反応物質混合物を冷却する手段を含む、上述のプロセスを実行する装置が提供される。
【0012】
さらに本発明によれば、前記高温領域が前記前駆体物質を加水分解するように構成され、前記燃焼領域が反応物質流動の中温酸化を生じさせるように構成され、燃焼酸素または空気が導入され、冷却手段が、不要な副産物の形成を防ぐために結果的に生じるガス流動の冷却のために前記反応器の出口端に提供される、高温領域及び燃焼領域を含む反応器を備える前駆体物質の分解のための装置が提供される。
【0013】
本発明のその他の目的、利点及び特徴は、単に例示として与えられるそれらの実施形態の以下の非限定的記載を、添付する図を参照して読むことにより、より明らかになるであろう。
【0014】
本発明の例示的な実施形態を示すための添付の図面が、ここで参照され、次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明の一実施形態に従うオゾン破壊物質を分解するための完全なシステムの概略図である。
【
図1b】本発明の他の実施形態に従うオゾン破壊物質を分解するための完全なシステムの概略図である。
【
図2】オゾン破壊物質を分解するための本システムの分解部の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ODSの分解のために蒸気プラズマ加水分解システムSを用いる。本発明の分解の主な機構はプラズマ蒸気加水分解である。このシステムにおいて、カスタム設計された蒸気プラズマトーチは、耐熱内張り一次反応室を1500℃に近い温度まで加熱する単一のエネルギー源として用いられる。通常の水から形成される過熱蒸気は、少量の不活性ガスと共に、主なプラズマ形成ガスとして用いられる。高い反応性の蒸気プラズマ、すなわち蒸気プラズマ中に存在する水素イオン及び水酸化物イオンは、酸素が豊富な環境内でODSをCO、HCl及びHFに変換するのに用いられる。産生されたCOはプロセスの下流で燃焼され、次いで水で瞬間的に冷却する。酸素が豊富な環境は、Cl2、F2及びCF4などの有毒物質の形成を防ぎ、急冷はダイオキシン及びフランの形成を防ぐ。プロセス中に形成される酸性ガスは(i)アルカリで中和されまたは(ii)まず水で洗浄されて弱酸性混合物を回収し次いで酸性ガスの回収不可能な成分が中和されることが可能である。どちらの場合も、主にCO2を含む浄化された排出ガスの流動が大気中に放出される。
【0017】
ここで添付された図面の各図を参照し、この蒸気プラズマ加水分解システムSをより詳細に説明する。
【0018】
前駆体物質1は渦状ガス、液体の微細スプレーまたは固体の流動のいずれかの形でシステムSに
図2に示すように導入される。分解される前駆体物質1は特別に設計されたフランジ12を介してプラズマトーチ4の近傍に供給される。このフランジ12は水冷式であり、耐酸性物質からなり、供給される前駆体材料1を高温粘性蒸気プラズマプルームと容易に瞬時に混合できるように特別に設計されている。
【0019】
外部加熱源、典型的には蒸気プラズマトーチ4は、耐熱内張り反応器を1500℃の温度まで加熱する熱源として使用される。プラズマトーチ4は、プラズマアークに到達する前にトーチ内部の過熱蒸気の濃縮が起こらないような特徴を有するように設計され、製作される。プラズマトーチのこれらの特徴は、(i)アークプルームへ自発的に濃縮せずトーチ本体内部の過熱蒸気の経路を最小化するような、主なプラズマ形成ガス、過熱蒸気のトーチ渦への直接導入部3、(ii)過熱蒸気濃縮を避けるための、高圧閉ループ内を循環する高温流体(プロピレングリコール-水混合物)によるプラズマトーチ本体の冷却、及び(iii)トーチ内部の要素に関してVespel(登録商標)またはPEEKのような高温耐性を有するポリマーの使用、を含む。
【0020】
蒸気プラズマトーチ4は、金属カソード2、金属点火アノード6及び金属作動アノード8を含み、これらは
図2に示されるように配置される。プラズマアークはカソード2及び点火アノード6の間のヘリウムまたはその他の単原子ガスで開始される。アークが安定する(10)と、プラズマ形成蒸気が3の部分に導入され、アークが点火アノード6から作動アノード8へ移行する。窒素、ヘリウム、アルゴンまたはそれらの混合物が、シュラウドガス5として用いられる。シュラウドガス5は、金属カソード2を早発的な酸化から保護し、それによってカソード2の作動寿命を増大させる。過熱蒸気は主なプラズマ形成ガス3として用いられる。
【0021】
蒸気プラズマトーチ4は、熱源として働くのに加えて、前駆体物質1の分解に必要な反応性のある酸素イオン、水酸化物イオンおよび水素イオンを提供し、Cl2、F2、CFxのような不要な副産物の形成を防ぐ。全体の反応は以下のようにまとめることができる。
【0022】
CHxClyFz+aH2O→zHF+yHCl+aCO+bH2+cH2O
【0023】
耐熱内張り反応器14は、前駆体物質1を分解するのに用いられる。耐腐食高耐久耐熱内張り16が、反応器14の作動耐熱物質として用いられる。例えば、Kricon34(登録商標)のような高アルミナ耐熱物質(98%超のアルミナ含有量)や腐食性を有するHF及びHClガスに対して耐性があることが知られている類似の物質が、作動耐熱物質として使用される。
【0024】
反応器14の内壁は、hastealloy(登録商標)や類似の物質のような耐酸性高温金属コーティングで覆われる。反応器14の外壁は、安全上の理由により、また炉室の加熱を制限するために空気または水のいずれかによって外部から冷却される。
【0025】
図2に示すように、耐熱内張り反応器14は3つの領域を備える。これら3つの領域は、以下の通りである。
【0026】
1)供給される前駆体物質1が蒸気加水分解を受ける、円錐収束高温蒸気加水分解領域11
【0027】
2)ガスの高温乱流混合を発生させ、完全な加水分解反応を促進させる狭いチューブ領域13
【0028】
3)ガスが燃焼空気または酸素と共に燃焼される、円錐発散中温燃焼領域15
【0029】
燃焼空気または酸素9は、これも
図2に示されるように、反応器14に追加される。燃焼空気または酸素9は、反応器14へ定量され、反応器14の低温領域の温度を制御し、その一方完全な燃焼を実現し、Cl
2などの不要な副産物の形成を防ぐ。
【0030】
水冷ユニット20は、
図2に示されるように、反応器14の燃焼領域15の排出口の部分に近接して取り付けられる。1組のスプレーノズル18が、冷却ユニット20内に水の微小スプレー17を形成し、水のスプレー17はガスを瞬時に冷却する。このようにガスを瞬時に冷却することにより、ダイオキシン及びフランの再形成を防ぐこととなる。冷却ユニット20は、耐酸性物質からなる二重壁水冷パイプ部として作製される。
【0031】
スクラバータンク22は、最も好適に
図2に示すように、冷却ユニット20の底部に取り付けられる。スクラバータンク22は、全てのシーリング面に耐酸性プラスチックシーリング材料を用いる。スクラバータンク22の内壁は、Halar(登録商標)CCTFEや類似の物質のような耐酸性テフロン(登録商標)系コーティングで内張りされる。スクラバータンク22は冷却水19を集めるリザーバーとして働き、スクラバー水再循環ポンプ28(
図1aを参照)のために必要な水頭を提供する。
【0032】
標準的な排気ガス浄化技術、すなわち酸性ガス中和スクラバー24(
図1aを参照)を用いる湿式排気ガス浄化技術または乾式ガス浄化技術のいずれかが排気ガスから酸性ガスを除去するために用いられる。
【0033】
導入ドラフトファン26は、システムSを通して排気ガスを排気し、
図1に示すようにシステムS内をやや負圧にする。システムSの全体は、システムSからどのような酸性ガスも逃げないようにやや負圧(H
2Oカラムで数インチ)に保たれる。IDファンの排出口で、排気ガスが排気筒23に排出される。
【0034】
動作中は、蒸気プラズマトーチ4は、反応器14を望ましい動作条件まで加熱し、前駆体物質1がプラズマプルーム中に導入される。蒸気プラズマ中に存在する高い反応性を有する水素イオンおよび水酸化物イオンが、高温加水分解領域11内の前駆体物質1を加水分解する。追加的な蒸気7が加水分解領域11に追加される。反応した蒸気は狭いチューブ領域13を通して流れ、反応器14の燃焼領域15に到達するために反応に必要な乱流及び滞留時間を提供する。燃焼空気又は酸素9が反応器14に追加され、反応器14を出る排出ガスは燃焼領域15の排出部に位置する水冷部20に入る。排出ガスは、スプレーノズル18によって形成される水の微小スプレー17によって急速に冷却される。液体の流動はスクラバータンク22内に落ち、その一方排出ガスはスクラバータンク22を出て標準的な排出ガス浄化技術を通過する。湿式洗浄技術または乾式洗浄技術のいずれかが用いられて排出ガスをHF及びHClのような酸性ガスから浄化し、それらを無害な塩に変換する。導入ドラフトファン26は、排出ガスをシステムSを通して動かすのに用いられ、システムS内にわずかな負圧を作り出す。
【0035】
タンクまたはドラム25から苛性ソーダまたはその他のアルカリがスクラバー水再循環配管31に、スクラバー溶液のpHを連続的に調整するために薬品投入ポンプ30によって供給され、排気ガスから様々な酸性成分(HCl、HF)を中和する。中和された水21は、スクラバータンクからブローダウン配管32によって除去される。
【0036】
ここで
図1bを参照すると、変形された蒸気プラズマ加水分解システムS’が記載されており、ガス浄化オプション(ii)を含み、それによって弱酸が産生され、次いで酸性ガスが中和される。
【0037】
冷却ユニット20を離れるガスは、酸回収タンク22bへ送られ、希薄な酸が冷却ユニット20を離れる酸性ガスの洗浄に用いられる。酸回収タンク22bは、
図2に最も好適に示すように冷却ユニット20の底部に直接取り付けられる。酸回収タンク22bは全てのシーリング面に耐酸プラスチックシーリング材料を用いる。酸回収タンク22bは、冷却水19を集めるリザーバーとして働き、再循環ポンプ41(
図1b)のために必要な液頭を提供する。新しい水42が、酸濃度を制御できるように、連続的にまたは断続モードのいずれかで酸回収タンク22bに追加される。
【0038】
ガスは、パックされた酸洗浄ユニット43内を洗浄液体の流動と反対の流れで移動する。酸性ガスは、酸洗浄ユニット43を通過するにつれて洗浄される。酸回収タンク22bの底部で集められた弱酸混合物流動44は、酸洗浄タンクユニット22から一時的に除去される。
【0039】
酸洗浄ユニット43を離れる洗浄されたガス流動、流動45は、ガス浄化スクラバーユニット46に入る。スクラバータンクユニット47がガス浄化スクラバーユニット46の底部に取り付けられる。スクラバータンクユニット47は、全てのシーリング面に耐酸プラスチックシーリング材料を用いる。スクラバータンクユニット47は、洗浄水を集めるリザーバーとして働き、スクラバー水再循環ポンプ48に必要な水頭を提供する。
【0040】
苛性ソーダまたはその他のアルカリがタンクまたはドラム52からスクラバー水再循環配管54に、スクラバー溶液のpHを連続的に調整するために薬品投入ポンプ51によって供給され、排気ガスからあらゆる酸成分(HCl、HF)を中和する。中和された水49は、ブローダウン配管53によってガス浄化スクラバータンクから除去される。
【0041】
標準的な排出ガス浄化技術、すなわち中和スクラバー46(
図1bを参照)を用いる湿式排出ガス浄化技術または乾式ガス浄化技術のいずれかが、排出ガスを浄化するのに用いられる。
【0042】
本発明が上述の通りその実施形態によって説明されたが、本明細書に記載された対象の発明の本質及び教示から逸脱しないで改良されうる。
【符号の説明】
【0043】
S、S’ 蒸気プラズマ加水分解システム
1 前駆体物質
2 カソード
4 プラズマトーチ
6 点火アノード
7 追加的な蒸気
8 作動アノード
9 燃焼空気または酸素
12 フランジ
13 狭いチューブ領域
14 反応器
15 燃焼領域
16 耐熱内張り
17 微小スプレー
18 スプレーノズル
20 冷却ユニット
22 スクラバータンク
22b 酸回収タンク
23 排気筒
24 酸性ガス中和スクラバー
25 ドラム
26 導入ドラフトファン
30 薬品投入ポンプ
31 ブローダウン配管32
43 酸スクラバーユニット
45 洗浄されたガス流動
46 ガス浄化スクラバーユニット
47 スクラバータンクユニット
48 スクラバー水再循環ポンプ
51 薬品投入ポンプ
52 ドラム
54 スクラバー水再循環配管
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内で蒸気プラズマを用いる、オゾン破壊物質の分解のための2段階のプロセスであって、
第1の段階として前記オゾン破壊物質が前記反応器の高温領域内で加水分解され、
次いで第2の段階として燃焼酸素または空気が導入されて前記反応器の燃焼領域内で前記高温領域内よりも低い温度で、加水分解された前記オゾン破壊物質の酸化が行われ、
次いで前記反応器より排出されるガスの水による冷却が行われ、
前記蒸気プラズマのための水蒸気は、前記蒸気プラズマを発生させるプラズマトーチのプラズマアークの領域に導入され、前記オゾン破壊物質は、前記プラズマトーチの出口において前記蒸気プラズマに混合される、プロセス。
【外国語明細書】