(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115124
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】鍋蓋
(51)【国際特許分類】
A47J 36/06 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
A47J36/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101872
(22)【出願日】2023-06-21
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】501095576
【氏名又は名称】株式会社大慶
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 義久
(57)【要約】
【課題】 鍋蓋の内面に発生した水滴を確実に鍋の内側に滴下させることができ、かつ、鍋蓋が傾いていても水滴の滴下位置が偏在しないようにすること及び調理中に発生する蒸気の抜けを適切に制御し、鍋の中の気流の動きを均一化して、各種の食材を美味しく調理できるようにすること。
【解決手段】
本体23、本体23の内面に中心を取り巻くように設けられている8本の円形状突起24、24’、本体23の中心に設けられている穴25、本体23の上面に穴25の周囲を取り巻くように形成されている略円筒状の把手26、把手26の上面を覆う小蓋22を有しており、本体23の中心から放射状に延びる16本の線に沿って、切れ目27が放射方向に隣接せず、かつ、周方向に放射状の線を跨がず隣接しないように形成されている鍋蓋21。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の内面に、該本体の中心を取り巻く複数の円形状突起又は前記本体の中心を取り巻く複数の周回突起からなる螺旋状突起が設けられており、
前記複数の円形状突起又は前記複数の周回突起には、それぞれ2以上24以下の切れ目が形成されている
ことを特徴とする鍋蓋。
【請求項2】
前記複数の円形状突起又は前記複数の周回突起に形成されている切れ目のうち、隣接する円形状突起又は隣接する周回突起に形成されている切れ目が、前記本体の中心から延びる放射線上に並んでいない
ことを特徴とする請求項1に記載の鍋蓋。
【請求項3】
前記本体の中央に穴が設けられ、前記本体の上面に前記穴の周囲を取り巻く把手が形成されているとともに、前記把手の上面を覆う小蓋を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鍋蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用の鍋に被せて使用する鍋蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理用の鍋に被せて使用する鍋蓋において、内面に結露した水滴を料理材料に滴下するための突起を設けたものが知られている。
例えば、特許文献1(実開昭57-94426号公報)には、内面に同心円状の突起を設けた鍋蓋が開示され(特に、第1図及び第2図を参照)、特許文献2(実公平4-30984号公報)には、内面に下向き頂角が鈍角の逆不等辺三角形断面形状を成す複数個の突状帯を断続的に列設した鍋蓋が開示され(特に、第2頁左欄第28~32行及び第1図を参照)、特許文献3(実用新案登録第3200806号公報)には、内面に3本の同心円に沿って突状の水滴誘導部を多数形成した鍋蓋が開示されている(特に、段落0034~0035及び
図1、3を参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている鍋蓋の突起は同心円状であるため、鍋蓋の内面に発生した水滴を確実に鍋の内側に滴下させることができるが、鍋蓋が少しでも傾いていると、同心円状の突起に沿って一方向に水滴が集まってしまい、滴下する位置が集中してしまうという問題があり、特許文献2に開示されている複数個の突状帯は一重しかなく、特許文献3に開示されている多数の水滴誘導部の形成位置はまばらであるため、鍋蓋の内面に発生した水滴の一部は突状帯や水滴誘導部を通り抜けて鍋蓋の縁に達し、鍋の内側に滴下しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57-94426号公報
【特許文献2】実公平4-30984号公報
【特許文献3】実用新案登録第3200806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、鍋蓋の内面に発生した水滴を確実に鍋の内側に滴下させることができ、かつ、鍋蓋が傾いていても水滴の滴下位置が偏在しないようにすることを第1の課題とする。
また、調理中に発生する蒸気の抜けを適切に制御し、鍋の中の気流の動きを均一化して、各種の食材を美味しく調理できるようにすることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の鍋蓋は、
本体の内面に、該本体の中心を取り巻く複数の円形状突起又は前記本体の中心を取り巻く複数の周回突起からなる螺旋状突起が設けられており、
前記複数の円形状突起又は前記複数の周回突起には、それぞれ2以上12以下の切れ目が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明の鍋蓋は、請求項1に記載の鍋蓋において、
前記複数の円形状突起又は前記複数の周回突起に形成されている切れ目のうち、隣接する円形状突起又は隣接する周回突起に形成されている切れ目が、前記本体の中心から延びる放射線上に並んでいないことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明の鍋蓋は、請求項1又は2に記載の鍋蓋において、
前記本体の中央に穴が設けられ、前記本体の上面に前記穴の周囲を取り巻く把手が形成されているとともに、前記把手の上面を覆う小蓋を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鍋蓋。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の鍋蓋は、本体の内面に、本体の中心を取り巻く複数の円形状突起又は本体の中心を取り巻く複数の周回突起からなる螺旋状突起が設けられており、複数の円形状突起又は複数の周回突起には、それぞれ2以上12以下の切れ目が形成されているので、鍋蓋の内面に発生した水滴を鍋の内側に滴下させることができ、かつ、鍋蓋が傾いていても水滴の滴下位置の偏在を抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明の鍋蓋による効果に加えて、複数の円形状突起又は複数の周回突起に形成されている切れ目のうち、隣接する円形状突起又は隣接する周回突起に形成されている切れ目が、本体の中心から延びる放射線上に並んでいないので、本体の内面を周辺に向かって流れ落ちる水滴が切れ目を通り抜けて本体の縁まで達することがほとんどなくなり、鍋蓋の内面に発生した水滴を確実に鍋の内側に滴下させることができる。また、鍋蓋が傾いている場合における水滴の滴下位置の偏在をより良く抑制することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明の鍋蓋による効果に加えて、本体の中央に穴が設けられ、本体の上面に穴の周囲を取り巻く把手が形成されているとともに、把手の上面を覆う小蓋を有しているので、外蓋を用いることなく噴き出す蒸気の飛散を防止でき、鍋蓋のコストを低く抑えることができる。
また、調理中に発生する蒸気の抜けが適切に制御され、鍋の中の気流の動きが中央から立ち上がり周辺部に下降することとなって均一化する。そのため、各種の食材を美味しく調理できる。特に、ご飯を炊飯する場合に、非常に良い炊き上がり状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る鍋蓋の断面図及び内面の平面図。
【
図2】実施例1に係る小蓋の断面図及び内面の平面図。
【
図3】実施例2に係る鍋蓋の断面図及び内面の平面図。
【
図4】実施例3に係る鍋蓋の断面図及び内面の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0014】
図1は実施例1に係る鍋蓋1の断面図及び内面の平面図であり、
図2は実施例1に係る小蓋2の断面図及び内面の平面図である。
図1(A)及び(B)に示すとおり、実施例1に係る鍋蓋1は、直径15~30cmで弧状の断面を有する本体3、本体3の内面に、その中心を取り巻くように同心円状に設けられている4本の円形状突起4、本体3の中心に設けられている直径2~5mmの穴5、本体3の上面に穴5の周囲を取り巻くように形成されている直径5~10cm、高さ2~4cmの略円筒状の把手6、把手6の上面を覆う直径6~11cmの小蓋2を有している。
4本の円形状突起4は、最も内側の直径が4~8cm、最も外側の直径が14~28cmで、ほぼ等間隔に配置されており、いずれも幅3~6mm、高さ3~6mmで下面側ほど幅が小さくなっている。そして、円形状突起4には、中心から十字状に延びる線に沿って切れ目7が形成され、それぞれ4つの弧状部に分割されている。
また、
図2(A)及び(B)に示すとおり、実施例1に係る小蓋2は、直径6~11cm、厚さ6~15mmの円板部8と、外径が把手6の内径より少し小さく、高さが6~15mmの円環部9を有している。そして、円板部8の下面側で円環部9の外側には、幅2~5mm、深さ1~3mmの溝10が2箇所設けられている。
なお、実施例1における本体3及び小蓋2は、いずれも粘土に各種の粉末を混ぜて成形、焼成して製造される磁器又は陶器であるが、本発明の鍋蓋は、陶磁器に限定されるものではなく、各種金属の鋳物又はガラスや耐熱性樹脂を成形したものであっても良い。
【0015】
実施例1に係る鍋蓋1を用いると、調理中に発生した蒸気は本体3の内面で結露して水滴となるが、水滴がある程度の大きさになると、重力によって本体3の周辺側に移動し、4本の円形状突起4のいずれかにぶつかり、ぶつかった円形状突起4の側面を伝わって、その下面側から鍋の内側に滴下され、調理中の材料等の上に落ちる。
そして、鍋蓋1の本体3が、例えば
図1(B)の右側に傾いていたとしても、左側にある円形状突起4にぶつかった水滴が、上下に延びる線に沿って形成されている切れ目7を越えて、右側にある円形状突起4に伝わってくることはないので、水滴の滴下位置が右側に偏ってしまうことがない。
また、本体3の中央には穴5が設けられているため、鍋の調理材料が沸騰して蒸気圧が高くなると、蒸気が穴5から噴き出すが、穴5の周囲を取り巻く把手6の上面は小蓋2で覆われているため、噴き出した蒸気が周囲に飛び散ることがなく、把手6の内側に溜まった水滴は穴5から鍋の中に戻るので、煮汁の減少を抑えることができる。
そして、小蓋2の下面外側には浅い溝10が2箇所設けられているため、噴き出した蒸気が狭い隙間を通って適度に抜けていくので、小蓋2が安定した状態に保たれ、上下動による異音を抑制できるとともに、蒸気の抜ける位置が限定されるので安全である。
さらに、鍋の中の気流は中央から立ち上がり周辺部に下降して動きが均一な状態となるので、調理中の食材に均一に熱が回り、各種の食材を美味しく調理することができる。
実施例2に係る鍋蓋11を用いると、実施例1に係る鍋蓋1を用いた時の効果に加え、隣接する螺旋状突起14に形成されている切れ目17が、本体13の中心から延びる放射線上に並ぶことがないので、本体13の内面を周辺に向かって流れ落ちる水滴が切れ目17を通り抜けて本体の縁まで達することがほとんどなくなる。
そのため、本体13の内面に発生した水滴を確実に鍋の内側に滴下させることができ、また、鍋蓋11が傾いている場合においても、多数の切れ目17がばらばらに配置されていることから、螺旋状突起14を伝わってくる水滴の滴下位置が偏ってしまうのを、実施例1の鍋蓋1以上に抑えることができる。