(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115143
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】微結晶性セルロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 15/08 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
C08B15/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023104826
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2020541804の分割
【原出願日】2019-02-06
(31)【優先権主張番号】20185110
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】520102646
【氏名又は名称】アンドリッツ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローマルク、ハンヌ
(72)【発明者】
【氏名】バンハタロ、カリ
(72)【発明者】
【氏名】ペルトネン、カリ
(72)【発明者】
【氏名】リントゥネン、タイナ
(57)【要約】
【課題】 本発明は、MCCプラントでの酸加水分解により繊維状セルロース性材料から微結晶性セルロースを製造する方法に関する。
【解決手段】 この方法では、セルロース系パルプの懸濁液が濃縮されるので、濾液が形成される。希釈液を添加することにより濃縮懸濁液の濃度を5~40%に調整し、酸によって懸濁液のpHを4以下に調整する。パルプ懸濁液を反応装置内で少なくとも120℃にて酸加水分解して、微結晶性セルロースと加水分解物の混合物を生成する。混合物を反応装置からより低い圧力及びより低い温度まで排出して、混合物をフラッシュし、フラッシュ蒸気を発生させる。微結晶性セルロースを加水分解物から分離し、分離したセルロースを1台又は複数台の洗浄装置で洗浄して、微結晶性セルロースの濃度を、さらなる処理のための濃縮又はさらなる処理のための濃縮及び乾燥によって上昇させる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微結晶性セルロース(MCC)プラントにおいて酸加水分解により繊維状セルロース性材料から微結晶性セルロースを製造する方法であって、
a)セルロース系材料の懸濁液を濃縮して、濾液を形成する、
b)希釈液を添加することにより前記濃縮懸濁液の濃度を5~40%に調整し、前記懸濁液のpHを酸により4以下の値に調整する、
c)前記懸濁液の温度を120~200℃に上昇させる、
d)前記懸濁液を反応装置内で120~200℃にて酸加水分解し、微結晶性セルロースと加水分解物の混合物を製造する、
e)前記混合物を前記反応装置から低圧及び低温まで排出して、前記混合物をフラッシュし、フラッシュ蒸気を生成する、
f)前記混合物を処理して、微結晶性セルロースを加水分解物から分離し、前記分離したセルロースを1台又は複数台の洗浄装置にて洗浄する、そして
g)さらなる処理のために濃縮すること、又はさらなる処理のために濃縮及び乾燥することによって、微結晶性セルロースの濃度を上昇させる
前記方法。
【請求項2】
ステップb)における前記希釈液が、微結晶性セルロースの前記洗浄からの弱加水分解物及び/又は前記MCCプラントの前記熱回収系からの凝縮液を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)で使用する凝縮液が形成されるように、ステップe)からの前記フラッシュ蒸気を凝縮器に移送することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記MCCプラントがパルプミルのパルプ生産に一体化されていることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)におけるセルロース系材料の前記懸濁液の前記濃縮で形成された前記濾液を回収して、前記パルプミルに移送して、そこでパルプ処理に使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップf)からの前記酸加水分解物及び/又は酸濾液を、事前加水分解クラフトパルプ製造において、パルプ漂白の酸ステージにおいて又は前記パルプミルのトール油プラントにおいて使用することを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)における前記加水分解の温度が120~185℃、好ましくは150~170℃であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップg)において、前記微結晶性セルロースの濃度を濃縮により40~50%まで上昇させて、前記濃縮されたMCCを前記MCCプラントから乾燥せずにさらなる処理に移送することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップg)において、前記微結晶性セルロースの濃度を濃縮及び乾燥によって少なくとも93%の乾燥含有量まで上昇させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップf)において、加水分解物からの微結晶性セルロースの前記分離の前に前記混合物を希釈し、微結晶性セルロースの前記洗浄からの弱加水分解物を希釈液として使用することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微結晶性セルロース(microcrystalline cellulose:MCC)を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、さらに処理することができるMCCを製造するための包括的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微結晶性セルロース(MCC)は、医薬品や食品を含む、多くの産業用途における用途の広い生成物である。MCCは例えば塗料、石油掘削、化粧品にも使用されている。
【0003】
微結晶性セルロースは、あらゆる種類の天然セルロースから製造できる粉末形態のセルロース生成物である。MCCは通例、セルロースの酸加水分解を利用して製造される。国際公報第2011/154601号パンフレットは、微結晶性セルロースを製造するために繊維状セルロース性材料を酸加水分解する方法を開示している。温度は少なくとも140℃であり、濃度(consistency)はセルロースの乾燥重量に対して少なくとも8%である。酸の量は少なく、セルロースの乾燥重量に対して0.2~2%である。国際公報第2011/154600号パンフレットは、繊維状セルロース性材料を高温にて酸により加水分解して、微結晶性セルロースを製造する方法を開示している。この文献では、酸加水分解で使用される化学薬品の少なくとも一部がパルプミルの一体化化学回収工程によって製造されるように、製造はパルプミルの製造に一体化されている。
【0004】
既知の方法を考慮して、様々な用途における原料又は添加剤として使用する微結晶性セルロースを製造するための、包括的な方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
高圧及び高温での酸加水分解によりMCCを製造するMCCプラントは、化学パルプミルの工程部とすることができる。MCCプラントは独立型プラントとすることもできる。
【0006】
化学パルプなどの繊維状セルロース性材料から微結晶性セルロースを、酸加水分解によって製造するための新たな方法が提供される。この方法により、
a)セルロース系材料の懸濁液を濃縮して、濾液を形成する、
b)希釈液を添加することにより濃縮懸濁液の濃度を5~40%に調整し、懸濁液のpHを酸により4以下の値に調整する、
c)懸濁液の温度を120~200℃に上昇させる、
d)パルプ懸濁液を反応装置内で120~200℃にて酸加水分解し、微結晶性セルロースと加水分解物の混合物を製造する、
e)混合物を反応装置から低圧及び低温まで排出して、混合物をフラッシュ(flash)し、フラッシュ蒸気(flash stream)を生成する、
f)混合物を処理して、微結晶性セルロースを加水分解物から分離し、分離した微結晶性セルロースを1台又は複数台の洗浄装置にて洗浄する、そして
g)さらなる処理のために濃縮すること、又はさらなる処理のために濃縮及び乾燥することによって、微結晶性セルロースの濃度を上昇させる。
【0007】
繊維状セルロース性材料は、針葉樹又は広葉樹などの木材植物材料に由来し得る。好ましい繊維状セルロース性材料は、クラフトパルプ、ソーダAQパルプ、サルファイトパルプ、中性サルファイトパルプ、酸性サルファイトパルプ又はオルガノソルブパルプなどの、漂白又は無漂白化学パルプである。パルプは、蒸解直後に得られたパルプ、蒸解後に酸素脱リグニンされたパルプ又は酸素脱リグニンされて漂白されたパルプであってもよい。好ましいパルプは、酸素脱リグニンパルプ及び/又は完全漂白パルプである。溶解パルプはセルロース含有量が高いため、良好な原料である。綿、草、バガス、穀物作物の藁、亜麻、麻、サイザル麻、アバカ又は竹などの非木材リグノセルロース性植物材料から得られた、繊維状セルロース性材料を使用することも可能である。化学パルプなどの繊維状セルロース性材料は、好ましくは40カッパ価(kappa number)未満、より好ましくは30カッパ―価未満、最も好ましくは10カッパ価未満のリグニン含有量を有する。
【0008】
新たな方法の最初のステップであるステップa)は、事前濃縮ステージである。フィードパルプをより高い濃度まで濃縮することにより、その方法の後のステップによって必要とされる、各種の不可避の希釈物(希硫酸、直接蒸気加熱による凝縮液、弱加水分解物など)が得やすくなるので、加水分解ステージで所望の濃度を維持することができる。事前濃縮と後続の希釈を行わない場合、加水分解後の工程ステージで形成された濾液があまり使用されなくなり、これらの濾液の少なくとも一部を廃水として排出する必要がある。通常、これらの濾液は、MCCの洗浄ステージで形成される。本発明により、これらの濾液は、濃縮後の希釈に使用することができ、濾液を工程で循環させることができる。濃縮はスクリュプレスを用いて、又はパルプ懸濁液に好適な他の既知の脱水装置、例えばドラムフィルタ、ディスクフィルタ、フィルタプレス、ベルトプレス、ツインワイヤプレス、脱水プレス、ウォッシュプレスを用いて行うことができる。MCCプラントが供給パルプを製造するパルプミルに一体化されている場合、事前濃縮ステージの濾液の一部又は全部を回収して化学パルプミルに移送することができる。濾液の回収により、MCCプラントとパルプミルの水の経済性が向上する。濾液はパルプ漂白又は褐色貯蔵区域で使用することができる。
【0009】
事前濃縮ステージの後、加水分解反応装置のパルプ濃度は希釈によって制御される。希釈液は、微結晶性セルロースの洗浄からの弱加水分解物、MCCプラントの熱回収系からの凝縮液、加水分解反応装置の後に微結晶性セルロースから分離した強加水分解物、又はプロセス水であってよい。弱加水分解物は、微結晶性セルロースを1台又は複数台の洗浄機で処理して濾液を分離する際に形成される。加水分解反応装置からの混合物がより低い圧力及び温度まで、例えばブロー管まで排出されると、フラッシュ蒸気が生成され、フラッシュ蒸気は熱を熱水に回収するための凝縮器に移送される。微結晶性セルロースが乾燥される場合にも凝縮液が生成され、それにより蒸気が形成され、熱が乾燥凝縮器内で熱水に回収される。プロセス水は、MCCプラントの凝縮器で加熱された熱水であってよい。
【0010】
事前濃縮後の希釈は、パルプが事前濃縮ステージから加水分解反応装置に向けて移送されるときに、例えばスクリュコンベヤにて実施してよい。必要に応じて、例えば直接蒸気注入によって希釈液を加熱することができる。希釈スクリュはパルプをスタンドパイプに落下させ、スタンドパイプからパルプが5~40%、好ましくは10~30%の濃度で通例、中濃度(MC)ポンプ又はスクリュポンプによって前方に圧送される。
【0011】
次に、パルプ懸濁液を加水分解反応装置に向けて圧送する。パルプは、フィードポンプの後又は前でパルプに酸を注入することによって酸性化される。パルプ温度は、1台又は複数台の直接蒸気注入装置、例えば米国特許第6361025号明細書に記載されている蒸気注入ヒータによって上昇させる。パルプミルのボイラプラントからの中圧蒸気は、通例、直接蒸気加熱の熱源として使用される。独立型MCCプラントでは、蒸気は外部源から供給される。
【0012】
ミキサを使用して、パルプ懸濁液に酸と蒸気を均一に混合する。フィードポンプを用いて、必要に応じて例えばブースターポンプを使用して、パルプ圧を通例、反応装置上部にて3~14バール(g)である反応装置圧力まで上昇させる。
【0013】
酸は、有機酸又は無機酸であり得る。通例、酸は硫酸である。硫酸はパルプミルにて製造できる。パルプミルからの漂白濾液などの非塩素含有酸性液体流も、パルプ懸濁液の酸性化に使用できる。独立型MCCプラントでは、酸は外部源から供給される。
【0014】
加水分解は、酸性条件下(pHは4.0以下、好ましくは2~3)で120~200℃、通例120~185℃、好ましくは150~170℃の高温にて反応装置内の液相中で行われる。反応装置における30秒~240分、通例5~240分、好ましくは10~60分の滞留時間の間に微結晶性セルロースと加水分解物の混合物が形成される。加水分解において、アモルファスセルロース構造物とヘミセルロースが溶解し、セルロース繊維は平均径が約10~200μmの粒子に変換される。
【0015】
反応装置は、通例、上向流又は下向流反応装置であり得る、垂直容器である。
【0016】
微結晶性セルロースと加水分解物の混合物は、反応装置からより低い圧力及び温度までブローされる。混合物は、通例、ブロー管(blow tube)内に排出され、ブロー管にて混合物はより低い温度及び圧力までフラッシュする。発生したフラッシュ蒸気は凝縮器にて凝縮される。凝縮液は希釈して使用できるか、又は化学パルプミルに移送してそこで利用できる。
【0017】
ブロー後、加水分解物を微結晶性セルロースから分離するために、混合物を処理する。分離前に混合物を例えばブロー管底部にて希釈してから、混合物を前方に圧送する。
【0018】
希釈液は、洗浄部からの弱加水分解物、乾燥凝縮器からの凝縮液又はプロセス水であり得る。
【0019】
混合液の温度を後続の洗浄部に好適なレベルまで低下させるために、希釈液を冷却機にて冷却することができる。混合物は、3~10%などの好適なフィード濃度で第1洗浄機まで前方に圧送する。微結晶性セルロースからの加水分解物の分離は、第1洗浄装置にて行う。分離は第1洗浄装置の前に濃縮機内で行ってもよい。
【0020】
加水分解生成物の洗浄は、1台又は複数台の洗浄装置で行う。洗浄の原理は、装置の種類に応じて、希釈濃縮又は置換洗浄であることができる。洗浄機は、粒子状材料に好適な任意の装置タイプ、例えばドラム洗浄機、遠心分離機、ディスクフィルタ、ドラムフィルタ、フィルタプレス、ベルトプレス、ツインワイヤプレス、スクリュプレス、ウォッシュプレス又はベルト洗浄機であることができる。
【0021】
洗浄は向流で行う。最も清浄な洗浄液を最終洗浄ステージに供給し、各洗浄ステージからの濾液をMCC流の方向に、前の洗浄ステージに向流で移送する。
【0022】
(1台又は複数台の)洗浄機のために洗浄によって事前希釈が必要な場合、事前希釈は後続の洗浄機の濾液、乾燥凝縮器からの凝縮液及び/又はプロセス水を用いて行う。第1洗浄機では、事前希釈はブロー管で行ってよい。後続の洗浄機では、事前希釈は先行する洗浄機のリパルパスクリュコンベヤで行う。第1洗浄機の後のリパルパ(repulper)は、希釈した最終生成物をスタンドパイプに落下させ、生成物をスタンドパイプから通例3~10%の濃度で後続の洗浄機に圧送する。
【0023】
置換洗浄では、洗浄液は後続の洗浄機の濾液、乾燥凝縮器からの凝縮液及び/又はプロセス水であってもよい。
【0024】
加水分解物は第1洗浄機においてMCCから分離する。加水分解物は炭水化物に富み、通例中和され、エネルギー又はバイオ製品の生産に使用できる。加水分解物の一部は、加水分解前にpH調整のためにパルプ懸濁液に再循環させることができる。加水分解反応装置にも再循環させることができる。
【0025】
後続の洗浄機からの1つ又は複数の濾液(弱加水分解物)は、MCC洗浄における洗浄液及び/若しくは希釈液として、又は事前濃縮ステージ後の希釈液として使用され得る。弱加水分解物も、パルプの濃度制御又は加水分解反応装置の前及び/若しくは反応装置内のpH調整に使用され得る。
【0026】
洗浄部の最終装置は、洗浄機として、又は後続の乾燥機に応じて生成物の濃度を好適なレベルに調整する濃縮機としてのみ動作する。生成物の濃度が乾燥前に高いこと、好ましくは40%以上、通例40~50%であることが、乾燥エネルギー消費にとって有益である。乾燥が不要な場合、又は次の工程ステージで40~50%の濃度が好ましい場合は、任意に、濃縮後にMCCを直接次の処理又は使用に移送することができる。
【0027】
さらなる加工又は使用としては、製薬、食品、化粧品、紙及び板紙用途などの産業用途、並びにナノセルロース及びCMCなどの微結晶性セルロースの誘導体の製造が挙げられる。
【0028】
さらなる加工又は使用の前に、MCCを高い乾燥含有量まで乾燥する必要がある場合、方法の次のステップは乾燥であり得る。乾燥機のタイプは、パドル乾燥機、フラッシュ乾燥機、流動床乾燥機、ベルト乾燥機、ドラム乾燥機、らせん乾燥機、プレート乾燥機又はスプレー乾燥機であることができる。乾燥機は、動力系、例えば化学パルプミルの蒸気、電気、通例、低圧又は中圧蒸気を利用する。生成物が乾燥機内を進むにつれ、その水分が蒸発して凝縮器に排出される。凝縮液は、MCC製造ラインで利用され得るか、又は化学パルプミルへ移送され得る。独立型MCCプラントでは、乾燥機は動力系、例えば外部ユーティリティ供給者の蒸気、電気を利用する。
【0029】
通例、93%を超える濃度の乾燥生成物は、(1台又は複数の)乾燥機から後続の生成物処理、例えば梱包ステップに移送される。
【0030】
MCCプラントでは必要のないMCC製造による酸性液体流をパルプミルに移送することができる。これらの流れは、加水分解物並びに事前濃縮、洗浄及び/又は濃縮からの濾液を含む。酸性液体は、事前加水分解クラフトパルプ製造、パルプ漂白の酸性ステージ及び/又はトール油プラントにおける酸性化ステージで使用できる。フラッシング又は乾燥による凝縮液もパルプミルで使用できる。
【0031】
本発明をより良く理解できるようにし、本発明が実施され得る方法を示すために、ここで例示に過ぎないが、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による方法を実施するための例示的な系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に従って使用され得るMCCプラントの例示的な系を示す。本実施形態では、MCCプラントは化学パルプミルに一体化されている。新たな方法は独立型MCCプラントでも実施できる。
【0034】
新たな方法の初期ステージでは、繊維状セルロース性材料がライン1を通じて事前濃縮ステージ2に供給される。材料は針葉樹又は広葉樹などの木材植物材料に由来し得る。好ましい繊維状セルロース性材料は、クラフトパルプなどの漂白若しくは無漂白化学パルプ、又は溶解パルプである。
【0035】
濃縮はスクリュプレスを用いて、又はパルプ懸濁液に好適な他の既知の脱水装置、例えばドラムフィルタ、ディスクフィルタ、フィルタプレス、ベルトプレス、ツインワイヤプレス、脱水プレス、ウォッシュプレスを用いて行うことができる。MCCプラントがパルプミルに一体化されている場合、濃縮ステージからの濾液の一部又は全部を回収してライン3を通じて化学パルプミルに移送することができる。濾液はパルプ漂白又は褐色貯蔵区域で使用することができる。
【0036】
濃縮ステージ2の後、酸加水分解のパルプ濃度は希釈によって制御される。パルプは、ライン4を通じて誘導され、ライン4では希釈液がパルプに添加され、このパルプはさらに希釈スクリュ5に送られる。希釈液は、MCCプラントの熱回収系からの凝縮液を含み得る。希釈は、パルプが事前濃縮ステージから加水分解反応装置に向けて移送されるときに、例えばスクリュコンベヤにて実施され得る。希釈スクリュはパルプをスタンドパイプ6に落下させ、スタンドパイプ6からパルプが5~40%、好ましくは10~30%の濃度でポンプ8、例えば中濃度(MC)ポンプ又はスクリュポンプによって前方に圧送される。
【0037】
次に、パルプ懸濁液を加水分解反応装置12に向けて圧送する。パルプは、フィードポンプ8の後又は前でパルプに酸7を注入することによって酸性化される。パルプ温度は、1台又は複数台の直接蒸気注入装置9、例えば米国特許第6361025号明細書に記載されている蒸気注入装置ヒータによって上昇させる。蒸気は通例、中圧蒸気10である。ミキサ11を使用して、パルプ懸濁液に酸と蒸気を均一に混合する。フィードポンプ8を用いて、必要に応じて、例えばブースターポンプを使用して、パルプ圧を、通例、反応装置上部にて3~12バール(g)である反応装置圧力まで上昇させる。
【0038】
酸は、有機酸又は無機酸であり得る。通例、酸は硫酸である。硫酸はパルプミルにて製造できる。パルプミルからの漂白濾液などの酸性液体流も、パルプ懸濁液の酸性化に使用できる。
【0039】
加水分解は、酸性条件下(pHは4.0以下、好ましくは2~3)で、高温(120~200℃、通例120~185℃、好ましくは150~170℃)にて反応装置12で行われる。反応装置12における5~240分、通例10~60分の滞留時間の間、微結晶性セルロースと加水分解物の混合物が形成される。
【0040】
反応装置12は、通例、上向流又は下向流反応装置であり得る、垂直容器である。
【0041】
微結晶性セルロースと加水分解物の混合物は、反応装置12からより低い圧力及び温度までブローされる。混合物は、通例、ライン13を通じてブロー管14内に排出され、ブロー管にて混合物はより低い温度及び圧力までフラッシュする。発生したフラッシュ蒸気33は、凝縮器35で凝縮されて熱水34を生成する。凝縮液は、ライン36及び38を通じてライン4のパルプ希釈液に移送できるか、又はライン37を通じて化学パルプミルに移送してそこで利用できる。
【0042】
ブロー後、加水分解物を微結晶性セルロースから分離するために、混合物を処理する。混合物を最初に、例えばブロー管14の底部にて希釈してから、混合物を前方に圧送する。
【0043】
希釈液は、洗浄部からの弱加水分解物44、乾燥凝縮器からの凝縮液又はプロセス水であってよい。
【0044】
混合液の温度を後続の洗浄部に好適なレベルまで低下させるために、希釈液を冷却機43にて冷却することができる。混合物を3~10%などの好適なフィード濃度で、ライン15を通じて第1洗浄機16まで前方に圧送する。加水分解生成物は中濃度でも容易に流動化及び懸濁されるため、プロセスポンプ(process pump)の使用が可能である。
【0045】
加水分解生成物の洗浄は、1台又は複数台の洗浄装置で行う。洗浄の原理は、希釈濃縮又は置換洗浄である。本実施形態では、希釈濃縮法が使用される。洗浄機16及び18はドラム洗浄機であってよい。
【0046】
洗浄は向流で行う。熱水などの最も清浄な洗浄液をライン20から最終洗浄又は濃縮ステージ21に供給し、洗浄/濃縮ステージ21及び18からの濾液47及び42をMCC流の方向に前の洗浄ステージまで向流で移送する。
【0047】
洗浄装置は、生成物を25~30%の濃度まで濃縮し、後続のリパルパスクリュコンベヤ洗浄機内又は乾燥部に排出する。
【0048】
洗浄で(1台又は複数台の)洗浄機のために事前希釈が必要である場合、事前希釈は、後続の洗浄機の濾液、乾燥凝縮器からの凝縮液及び/又はプロセス水を用いて行う。第1洗浄機では、事前希釈はブロー管で行ってよい。後続の洗浄機では、事前希釈は、先行する洗浄機のリパルパスクリュコンベヤで行う。第1洗浄機の後のリパルパは、希釈した最終生成物をスタンドパイプに落下させ、生成物をスタンドパイプから通例3~10%の濃度で後続の洗浄機に圧送する。
【0049】
置換洗浄では、洗浄液は後続の洗浄機の濾液、乾燥凝縮器からの凝縮液及び/又はプロセス水であってもよい。
【0050】
加水分解物は第1洗浄機16においてMCCから分離する。加水分解物は炭水化物に富み、パルプミルでのエネルギー生産に使用でき、パルプミルにおいて加水分解物がライン39、41を通じて移送される。加水分解物の一部は、反応装置12において加水分解前にpH調整のために、ライン40を通じてパルプ懸濁液中に再循環させることができる。加水分解反応装置にも直接再循環させることができる。
【0051】
第2洗浄機18からの濾液(弱加水分解物)は、スクリュコンベヤ5にて希釈液として使用されてもよく、スクリュコンベヤにはライン46を通じて濾液が移送される。濾液は直接蒸気ヒータ48で加熱してよい。第2洗浄機からの濾液は、ライン45を通じて加水分解反応装置12にも添加してよい。
【0052】
洗浄部の最終装置21は、洗浄機として又は後続の乾燥機に応じてMCC生成物の乾燥濃度を好適なレベルに調整する濃縮機としてのみ動作する。生成物の濃度が乾燥前に高いこと、好ましくは40%以上、通例40~50%であることが、乾燥エネルギー消費にとって有益である。
【0053】
さらなる処理又は使用の前に、MCCを高い乾燥含有量まで乾燥させる必要がある場合、方法の次のステップは乾燥である。乾燥機のタイプは、パドル乾燥機、フラッシュ乾燥機、流動床乾燥機、ベルト乾燥機、ドラム乾燥機、らせん乾燥機、プレート乾燥機又はスプレー乾燥機であることができる。乾燥機23は、動力系、例えば化学パルプミルの蒸気、電気、通例、低圧又は中圧蒸気24を利用する。この蒸気を乾燥機23で凝縮し、凝縮液26をボイラプラントに戻して、ボイラ水として使用する。生成物が乾燥機内を進むにつれ、その水分が蒸発して、ライン27を通じて凝縮器29に排出され、そこで熱水28が生成される。ライン30、31中の凝縮液は、ライン4におけるパルプ希釈で利用されるか、又はライン32を通じて化学パルプミルに移送される。通例、93%を超える濃度の乾燥生成物は、乾燥機23~25から後続の生成物処理、例えば梱包ステップに移送される。
【0054】
乾燥が不要な場合は、任意に、40~50%の濃度への濃縮後にMCCを直接次の処理又は使用に移送することができる。
【外国語明細書】