(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115170
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】膨張部材
(51)【国際特許分類】
A62B 1/20 20060101AFI20230810BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A62B1/20 C
B61D19/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105375
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2019181685の分割
【原出願日】2019-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227168
【氏名又は名称】株式会社ハイビックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】土居 顕吾
(72)【発明者】
【氏名】粟井 正寿
(57)【要約】
【課題】板状部を構成する基材本体と屈曲部を構成する基材本体とを一体的に連続したものとして構成する。
【解決手段】膨張部材(10)は、基材本体30と、固定材50と、を備える。基材本体30は、第1基布31aおよび第2基布31bの少なくともいずれかが内部空間10sに折り込まれることで形成された折目部36bを備える。固定材50は、折目部36bを覆うとともに基材本体30に固定されることで、板状部(11)に対して屈曲部12が折れ曲がるように、基材本体30を折れ曲がった状態で固定する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨らんだ状態で使用される膨張部材であって、
内部空間を形成した基材本体と、
前記基材本体の側面全体を覆うことで前記内部空間を密封した側面材と、
固定材と、
を備え、
前記基材本体は、
板状部と、
前記板状部に対して折れ曲がるように前記板状部の端部から延びる屈曲部と、
折目部と、
を備え、
前記板状部および前記屈曲部は、
布である第1基布と、
前記第1基布との間に前記内部空間を構成する隙間を開けて前記第1基布に対向して配置された布である第2基布と、
前記第1基布に設けられた第1樹脂層と、
前記第2基布に設けられた第2樹脂層と、
前記第1基布と前記第2基布とを緻密に連結した連結糸と、
を備え、
前記折目部は、前記第1基布および前記第2基布の少なくともいずれかが前記内部空間に折り込まれることで形成され、
前記固定材は、前記折目部を覆うとともに前記基材本体に固定されることで、前記板状部に対して前記屈曲部が折れ曲がるようにし、前記基材本体を折れ曲がった状態で固定する、
膨張部材。
【請求項2】
請求項1に記載の膨張部材であって、
前記第1基布は、前記板状部の上面を構成し、
前記板状部に含まれる複数の前記連結糸の一部は、前記第2基布から前記第1基布に向かうにしたがって、前記板状部の厚さ方向に直交する特定方向に向かうように、前記基材本体の厚さ方向に対して傾斜して配置される、
膨張部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膨張部材であって、
前記連結糸は、前記基材本体の厚さ方向から見たときに、前記板状部の厚さ方向に直交する特定方向に延びるように配置される連結糸列を形成しており、
前記連結糸列は、前記基材本体の厚さ方向および前記特定方向のそれぞれに直交する方向に互いに間隔をあけて配置され、
複数の前記連結糸列のそれぞれは、前記第1基布と前記第2基布との間で前記特定方向にジグザグ状に配置される、
膨張部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の膨張部材であって、
前記第1基布および前記第2基布の少なくともいずれかと、前記連結糸と、の連結部は、前記基材本体の厚さ方向から見たときに千鳥状に配置されている、
膨張部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の避難用シュートが記載されている。同文献に記載の避難用シュートは、避難者を支持しながら滑降させる滑降部を有する。この避難用シュートは、滑降部の内部空間に空気が注入されて、滑降部が膨らまされた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の避難用シュートの滑降部には、避難者を支持しながら滑降させることが可能となるような剛性が必要である。そのため、滑降部の形状を安定させるには、滑降部の内部空間に高い圧力を加える必要があった。また、滑降部の内部に高い圧力を加えるためには、滑降部の耐圧性能を高くする必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも滑降部の内部空間の圧力が低くても、滑降部の剛性を高めることができる避難用シュートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
避難用シュートは、車両内から外に避難者を滑降させるためのものである。避難用シュートは、基材本体と、側面材と、を備える。前記基材本体は、内部空間を形成している。前記側面材は、前記基材本体の側面全体を覆うことで前記内部空間を密封している。前記基材本体は、布である第1基布と、第2基布と、第1樹脂層と、第2樹脂層と、連結糸と、を備える。前記第2基布は、前記第1基布との間に前記内部空間を構成する隙間を開けて前記第1基布に対向して配置された布である。前記第1樹脂層は、前記第1基布に設けられている。前記第2樹脂層は、前記第2基布に設けられている。前記連結糸は、前記第1基布と前記第2基布とを緻密に連結している。避難用シュートは、水平方向に対して傾斜して配置されるとともに前記避難者を滑降させるための滑降部を備える。前記滑降部は、前記基材本体を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、従来よりも滑降部の内部空間の圧力が低くても、滑降部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の避難用シュート1を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す避難用シュート1を下側Z2から見た図である。
【
図3】
図1に示す避難用シュート1を幅方向Yから見た図である。
【
図4】
図1に示す避難用シュート1を前側X1から見た図である。
【
図5】
図1に示す基材本体30を厚さ方向から見た図である。
【
図6】
図5に示す第1連結部34aの配置の変形例を示す
図5相当図である。
【
図8】
図7に示す基材本体30の表面などを示す断面図である。
【
図9】
図1に示す滑降部11および滑降部横手摺部17aを滑降方向Sから見た断面図である。
【
図10】
図1に示す滑降部11および下屈曲部15を幅方向Yから見た断面図である。
【
図11】第2実施形態の避難用シュート201を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示す避難用シュート201を下側Z2から見た図である。
【
図13】
図11に示す避難用シュート201を幅方向Yから見た図である。
【
図14】
図11に示す避難用シュート201を前側X1から見た図である。
【
図15】第3実施形態の避難用シュート301を下側Z2から見た図である。
【
図16】
図15に示す避難用シュート301を幅方向Yから見た図である。
【
図17】
図15に示す避難用シュート301を前側X1から見た図である。
【
図18】第4実施形態の避難用シュート401を示す斜視図である。
【
図19】
図18に示す避難用シュート401を幅方向Yから見た図である。
【
図20】
図19のF20矢視図であり、避難用シュート401を前側X1から見た図である。
【
図21】
図19のF21矢視図であり、避難用シュート401を後側X2から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1~
図10を参照して、第1実施形態の避難用シュート1について説明する。
【0010】
避難用シュート1(脱出シュート、シュータ)は、車両C(
図3参照)内から車両C外(前側X1)に避難者を滑降させるためのものである。避難用シュート1は、非常時に避難者が車両Cから避難(脱出)する際に用いられる。避難用シュート1が用いられる車両Cは、例えば鉄道車両である。車両Cが鉄道車両の場合、避難用シュート1は、車両Cの側面の扉(例えば乗降扉)に設けられてもよく、車両Cの前後端の扉(例えば貫通扉、例えば運転室など)に設けられてもよい。
図1に示すように、避難用シュート1は、シュート本体10と、取付部61(
図2参照)と、給排部62と、シート着脱部63と、シート64と、保護部65(
図2参照)と、高さ調整材66と、を備える。
【0011】
シュート本体10は、避難用シュート1の本体部分である。避難用シュート1の使用時には、シュート本体10は膨らんだ状態であり、シュート本体10の内部空間10s(
図7参照)に気体(例えば空気)が注入された状態である。避難用シュート1の非使用時(例えば格納時)には、シュート本体10はしぼんだ状態であり、例えば折り畳まれた状態(例えばつづら折りされた状態やロール状など)である。以下では、避難用シュート1の使用時の状態について説明する。シュート本体10の形状に着目すると、シュート本体10は、滑降部11と、屈曲部12と、を備える。シュート本体10を構成する材料に着目すると、シュート本体10は、基材20と、固定材50と、を備える。
【0012】
滑降部11は、
図3に示すように、車両C内から車両C外(前側X1)に避難者を滑降させるための部分である。滑降部11は、滑降部11の上を避難者が滑り降りることが可能となるように構成される。滑降部11は、水平方向に対して傾斜して配置される。
図1に示すように、滑降部11は、略板状である。
【0013】
(方向)
避難用シュート1に関する方向を次のように定義する。滑降部11の傾斜に沿う方向であって、滑降部11の傾斜の下り側(下る向き)を、滑降方向Sとする。滑降部11の傾斜に沿う方向は、
図1に示す例では、滑降部11の長手方向である。鉛直方向を、上下方向Z(上側Z1、下側Z2)とする。
図3に示すように、水平方向であって、車両Cに対して避難者が出入りする方向を、前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、避難者が車両C内から車両C外に出る側(出る向き)を前側X1とし、その逆側(車両C外から車両C内に向かう側)を後側X2とする。
図1に示すように、上下方向Zおよび前後方向Xのそれぞれに直交する方向を、幅方向Yとする。幅方向Yは、滑降方向Sに直交する水平方向である。
図2に示すように、幅方向Yには、幅方向内側Y1と、幅方向外側Y2と、がある。幅方向内側Y1は、滑降部11の幅方向Yにおける中央(例えば滑降部11の長手方向に延びる滑降部11の中心軸)に向かう側である。幅方向外側Y2は、滑降部11の幅方向Yにおける中央から遠ざかる側である。
【0014】
屈曲部12は、
図1に示すように、滑降部11に対して折れ曲がるように滑降部11の端部から延びる。屈曲部12は、上屈曲部13と、下屈曲部15と、手摺部17と、を備える。
【0015】
上屈曲部13は、
図3に示すように、滑降部11の上側Z1部分から後側X2に延びるように設けられる。上屈曲部13と滑降部11とは、連続して設けられる。上屈曲部13は、車両Cに置かれ、例えば車両Cの床に置かれる。上屈曲部13は、略板状である(下屈曲部15も同様)。上屈曲部13は、水平方向または略水平方向に延びるように配置される(下屈曲部15も同様)。上屈曲部13は、滑降部11に対して屈曲し、滑降方向Sに対して屈曲する(下屈曲部15も同様)。
【0016】
下屈曲部15は、滑降部11を下側Z2から支持する。下屈曲部15は、滑降部11の下側Z2部分から前側X1または下側Z2に延びるように設けられる。本実施形態では、下屈曲部15は、滑降部11の下側Z2部分から前側X1に延びる。この場合、下屈曲部15は、滑降部11を滑降した避難者を減速させる部分(減速部)である。下屈曲部15と滑降部11とは、連続して設けられる。下屈曲部15は、避難者が避難しようとしている場所(例えば地面G)に置かれる。
【0017】
手摺部17は、
図1に示すように、シュート本体10上から幅方向外側Y2への避難者の移動を制限する。手摺部17は、避難者が手を置くことが可能に構成される。手摺部17は、滑降部11などの幅方向外側Y2部分(左右)から上側Z1に延びるように配置される。手摺部17は、滑降部横手摺部17aと、上手摺部17bと、下手摺部17cと、を備える。
【0018】
滑降部横手摺部17aは、滑降部11の幅方向外側Y2部分(例えば幅方向外側Y2端部)から上側Z1に延びるように(突出するように)設けられる。滑降部横手摺部17aは、滑降部11の幅方向外側Y2の両側(左右)に設けられる。滑降部横手摺部17aは、滑降部11に対して屈曲する。
図4に示すように、幅方向外側Y2向きのベクトルと、前後方向Xから見て滑降部11から滑降部横手摺部17aが突出する向きのベクトルと、が成す角度を、角度θaとする。上記「前後方向Xから見て滑降部11から滑降部横手摺部17aが突出する向き」は、滑降部横手摺部17aの基端部から先端部に向かう向きであり、滑降部横手摺部17aの厚さ方向T(
図9参照)の中心を通る滑降部横手摺部17aの中心軸の向きである。なお、幅方向Yに対する上手摺部17bの屈曲の角度θb、および幅方向Yに対する下手摺部17cの屈曲の角度θcも、幅方向Yに対する滑降部横手摺部17aの屈曲の角度θaと同様に定義する。例えば、幅方向Yに対する滑降部横手摺部17aの屈曲の角度θaは、90°でもよく、約90°でもよく、90°未満でもよい(角度θbおよび角度θcも同様)。
【0019】
上手摺部17bは、
図1に示すように、上屈曲部13の幅方向外側Y2部分(例えば幅方向外側Y2端部)から上側Z1に延びるように(突出するように)設けられる。上手摺部17bは、上屈曲部13の幅方向外側Y2の両側(左右)に設けられる。上手摺部17bは、上屈曲部13に対して屈曲する。
【0020】
下手摺部17cは、下屈曲部15の幅方向外側Y2部分(例えば幅方向外側Y2端部)から上側Z1に延びるように(突出するように)設けられる。下手摺部17cは、下屈曲部15の幅方向外側Y2の両側(左右)に設けられる。下手摺部17cは、下屈曲部15に対して屈曲する。なお、
図4に示す角度θa、角度θb、および角度θcは、互いに同じ(または略同じ)大きさでもよく、互いに相違してもよい。
【0021】
基材20は、
図1に示すシュート本体10を構成する部材(材料)である。基材20は、略板状である。さらに詳しくは、基材20の内部空間10s(
図7参照)の圧力が所定範囲内のときに、基材20は略板状である。上記「所定範囲」の圧力は、基材20で構成された滑降部11に避難者が乗ったときに、滑降部11が折れ曲がらない程度に高い圧力である(滑降部11が許容範囲内でたわむのは構わない)。具体的には例えば、所定範囲の圧力の最大値は、0.8kg/cm2などである。なお、数値は適宜変更可能である(以下の数値についても同様)。基材20は、基材本体30と、側面材40と、を備える。
【0022】
基材本体30は、略板状の基材20のうち、略平板状の部分である。滑降部11、ならびに屈曲部12(上屈曲部13、下屈曲部15、および手摺部17)は、基材本体30を含む。
図5~
図7には、滑降部11を構成する基材本体30を示した。
図7に示すように、基材本体30は、内部空間10sを形成する。基材本体30の厚さ(厚さ方向Tにおける寸法)が大きいほど、基材本体30の剛性が高くなる。厚さ方向Tは、後述する第1基布31aと第2基布31bとが対向する方向である。例えば、
図1に示す上屈曲部13および下屈曲部15における基材本体30の厚さ方向T(
図7参照)は、上下方向Zである。例えば、滑降部11における基材本体30の厚さ方向Tは、滑降方向Sおよび幅方向Yのそれぞれに直交する方向である。
図7に示す基材本体30の厚さは、具体的には例えば50~100mmの範囲内であり、例えば80mmなどである。基材本体30は、第1基布31aと、第2基布31bと、第1樹脂層32aと、第2樹脂層32bと、連結糸33と、凹み部35(
図8参照)と、折曲部36(
図9参照)と、折曲外側部37(
図9参照)と、を備える。なお、
図7などでは、複数の連結糸33のうち一部の連結糸33にのみ符号を付した。
【0023】
第1基布31aは、布である。第1基布31aは、縦糸と横糸とにより形成される織布でもよく、糸のループによって形成される編物でもよい。第1基布31aが織布である場合は、第1基布31aが編物である場合よりも、通常、第1基布31aを構成する糸どうしの隙間が小さい。そのため、第1基布31aが織布である場合は、第1基布31aが編物である場合に比べ、硬く、形状保持性が高く、耐摩耗性が高い(長期に渡り使用することができる)。一方、第1基布31aが編物である場合は、第1基布31aが織布である場合よりも、通常、第1基布31aを構成する糸どうしの隙間が大きい。そのため、第1基布31aが編物である場合は、第1基布31aが織布である場合よりも、第1基布31aを構成する糸どうしの移動の自由度が大きく、軟らかく、曲げやすく、伸縮性が高い。第1基布31aが編物である場合は、第1基布31aが織布である場合よりも、避難用シュート1を収納時にコンパクトに折り畳むことができる。
【0024】
第2基布31bは、第1基布31aと同様の布である。第2基布31bは、第1基布31aとの間に、内部空間10sを構成する隙間を開けて配置される。第2基布31bは、第1基布31aに対向して配置される。第1基布31aと第2基布31bとの隙間が、内部空間10sを形成する。第1基布31aと第2基布31bと連結糸33とは、例えば機械織り(または機械編み)により作られ、立体織り(または立体編み)により作られる。第1基布31aと第2基布31bと連結糸33とが、同時に織られる(または編まれる)。なお、第1基布31aと第2基布31bとが別々に織られ(または編まれ)てもよい。この場合、第1基布31aの構造と第2基布31bの構成(例えば織布か編物かなど)が相違してもよい。
【0025】
第1樹脂層32aは、第1基布31aに設けられ、樹脂を含む層である。第1樹脂層32aは、気体が第1基布31aを略通らないようにするための層(不通気性層、コーティング)である。第1樹脂層32aの材料(素材)および厚さは、例えば、第1樹脂層32aでの不通気性を確保できるように設定される。第1樹脂層32aの材料(素材)および厚さは、第1樹脂層32aの強度および曲げやすさの少なくともいずれかを確保できるように設定されることが好ましい。第1樹脂層32aの材料は、例えば塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)でもよく、オレフィン系樹脂でもよく、ウレタン系樹脂でもよい。第1樹脂層32aが塩化ビニル系樹脂の場合、樹脂層32の厚さは、例えば0.3~1.5mmなどである。
【0026】
この第1樹脂層32aは、第1基布31aに積層されてもよい(第1樹脂層32aと第1基布31aとが別体でもよい)。この場合、例えば、第1樹脂層32aの材料となる樹脂であってフィルム状やシート状の樹脂が、例えば熱により第1基布31aに貼り付けられることで、第1樹脂層32aが形成されてもよい。第1樹脂層32aは、第1基布31aの片面にのみ設けられてもよく、第1基布31aの両面に設けられてもよい。第1基布31aの外側の面(内部空間10sとは反対側の面)にのみ第1樹脂層32aが設けられる場合は、第1基布31aの内側の面(内部空間10s側の面)に加工を容易に行うことができ、例えばミシンで糸を縫うなどの加工を容易に行うことができる。
【0027】
この第1樹脂層32aは、第1基布31aと一体的に設けられてもよい。例えば、第1樹脂層32aの材料となる樹脂が、第1基布31aに含浸されることで、第1樹脂層32aと第1基布31aとが一体的に設けられてもよい。この場合、例えば、第1樹脂層32aの材料となるペースト状の樹脂が、第1基布31aに塗布される。そして、この樹脂および第1基布31aが加熱され、乾燥させられることで、第1樹脂層32aが形成される。
【0028】
第2樹脂層32bは、第1樹脂層32aと同様に、気体が第2基布31bを略通らないようにするための層(不通気性層、コーティング)である。第1基布31aに第1樹脂層32aが設けられたのと同様に、第2基布31bに第2樹脂層32bが設けられる。第2樹脂層32bの構成(材料、厚さ、第2基布31bと別体か一体かなど)は、第1樹脂層32aと同一でもよく、相違してもよい。滑降部11では、第1基布31aおよび第1樹脂層32aは、滑降部11の上側Z1の面(滑降部上面11a(
図3参照)、避難者が滑降する側の面)を構成し、第2基布31bおよび第2樹脂層32bは、滑降部11の下側Z2の面を構成する。
【0029】
連結糸33(繋ぎ糸)は、第1基布31aと第2基布31bとを連結した糸である。連結糸33は、基材本体30が膨らむことを制限する。さらに詳しくは、基材本体30が膨らもうとして、第1基布31aと第2基布31bとが互いに離れようとしたときに、連結糸33に張力が生じることで、基材本体30が膨らむことが制限される。連結糸33は、第1基布31aと第2基布31bとを緻密(後述)に連結する。
【0030】
この連結糸33は、第1基布31aおよび第2基布31bを織る(または編む)のと同時に、第1基布31aおよび第2基布31bに連結されてもよい。連結糸33は、第1基布31aおよび第2基布31bが織られた(または編まれた)後に、第1基布31aおよび第2基布31bに取り付けられてもよい(例えば縫い込まれてもよい)。
【0031】
この連結糸33と第1基布31aとの連結部分を、第1連結部34aとする。連結糸33と第2基布31bとの連結部分を、第2連結部34bとする。なお、
図5~7、9、および10では、複数の第1連結部34aのうち一部の第1連結部34aにのみ符号を付した(連結糸33、および第2連結部34bも同様)。また、
図5は、第1基布31aを、内部空間10s(
図7参照)側とは反対側から見た図であるところ、
図5では、第1連結部34aの位置を黒い丸印で示し、第2連結部34bの位置を破線の丸印で示した。以下では、主に、
図1に示す滑降部11を構成する基材本体30について説明する。上屈曲部13、下屈曲部15、上手摺部17b、および下手摺部17cを構成する基材本体30については、下記の滑降部11を構成する基材本体30の説明における「滑降方向S」を「前後方向X」に読み替える。滑降部横手摺部17aを構成する基材本体30については、上記の読み替えは不要である。連結糸33は、連結糸列33Lを形成する。
【0032】
連結糸列33Lは、
図5に示すように、厚さ方向Tから見たときに、滑降方向Sに延びるように配置される。連結糸列33Lは、厚さ方向Tから見たときに、滑降方向Sに、直線状または略直線状に延びるように配置される。連結糸列33Lは、複数設けられる。複数の連結糸列33Lは、幅方向Y(厚さ方向Tおよび滑降方向Sのそれぞれに直交する方向)に互いに間隔をあけて配置される。複数の連結糸列33Lは、互いに同様(例えば同一)に構成される。以下では、複数の連結糸列33Lのうち1つの連結糸列33Lについて説明する。
図7に示すように、連結糸列33Lにおいて滑降方向Sに隣り合う2本の連結糸33を、連結糸33aおよび連結糸33bとする。連結糸33aが延びる方向と、滑降方向Sとがなす角度(0°以上、90°以下の角度)を、角度θ33aとする。滑降方向Sと、連結糸33bが延びる方向と、がなす角度(0°以上、90°以下の角度)を、角度θ33bとする。
【0033】
(連結糸33、第1連結部34a、および第2連結部34bの配置)
連結糸列33Lは、第2基布31bに対する第1基布31aの滑降方向Sへの移動(相対移動)を抑制できるように配置されることが好ましい。具体的には、角度θ33aは、90°未満である。さらに詳しくは、連結糸33aは、第2連結部34b(第2基布31b)から第1連結部34a(第1基布31a)に向かうにしたがって、滑降方向Sに向かうように、厚さ方向Tに対して傾斜して配置される。よって、第2基布31bに対して第1基布31aが滑降方向Sに移動しようとしたときに、連結糸33aに張力が生じる。この張力が、第2基布31bに対する第1基布31aの滑降方向Sへの移動の抵抗力となり、この移動が抑制される。角度θ33aが小さいほど、第2基布31bに対する第1基布31aの滑降方向Sへの相対移動がより抑制される。なお、角度θ33bが、90°未満でもよい。さらに詳しくは、連結糸33bは、第1連結部34aから第2連結部34bに向かうにしたがって、滑降方向Sに向かうように、厚さ方向Tに対して傾斜して配置されてもよい。角度θ33bが、90°未満の場合は、第2基布31bに対する第1基布31aの、滑降方向Sとは逆向きの移動を抑制できる。また、角度θ33aと角度θ33bとは、等しくてもよく、相違してもよい。
【0034】
連結糸列33Lは、第1基布31aと第2基布31bとの間で、ジグザグ状に連続するように(途切れずに)配置される。上記「連続する」には、連結糸33aと連結糸33bとが、第1連結部34aで実際に連続している場合が含まれる(第2連結部34bでも同様)。また、上記「連続する」には、連結糸33aと連結糸33bとが、第1連結部34aで、見た目上、連続している場合が含まれてもよい(第2連結部34bでも同様)。このような連結糸33aおよび連結糸33bの配置が、第1基布31aと第2基布31bとの間で、滑降方向Sに繰り返されることにより、連結糸列33Lが、幅方向Yから見てジグザグ状に配置される。なお、連結糸列33Lが「ジグザグ状に連続する」ための条件には、角度θ33aおよび角度θ33bの少なくともいずれかが90°未満であることが含まれる。
図7に示す例では、連結糸列33Lは、幅方向Yから見て、V字を滑降方向Sに連続させたようなジグザグ状である。なお、例えば、角度θ33aおよび角度θ33bのうち、一方が90°未満であり、他方が90°の場合も、上記「ジグザグ状」に含まれることとする。
【0035】
なお、連結糸列33Lは、幅方向Yから見てジグザグ状に配置されなくてもよい。例えば、連結糸33は、第1基布31aと第2基布31bとの間で、厚さ方向Tと一致する方向に延びるように配置されてもよい。また、
図1に示す滑降部11、上屈曲部13、下屈曲部15、および手摺部17の一部における連結糸列33L(
図7参照)の配置が、他の部分における連結糸列33Lの配置と異なってもよい。
【0036】
上記のように、
図7に示す連結糸33は、第1基布31aと第2基布31bとを緻密に連結する。ここで、互いに隣り合う(例えば滑降方向Sに隣り合う)第1連結部34a・34aどうしの間隔を、間隔A1とする。互いに隣り合う(例えば滑降方向Sに隣り合う)第2連結部34b・34bどうしの間隔を、間隔A2とする。第1基布31aと第2基布31bとの間隔(厚さ方向Tにおける間隔)を、間隔A3とする。このとき、間隔A1および間隔A2のそれぞれが、間隔A3未満である場合に、連結糸33が、第1基布31aと第2基布31bとを「緻密に連結する」こととする。「間隔A1/間隔A3」の値は、例えば、1/2以下、1/3以下、1/4以下、1/5以下、1/6以下、1/7以下、または1/8以下などである(「間隔A2/間隔A3」の値も同様)。具体的には例えば、10cm角(縦10cm、横10cmの範囲内)の第1基布31aに、50~100の第1連結部34aが配置される(第2基布31b、第2連結部34bも同様)。なお、第1連結部34a・34aどうしの間隔にばらつきがある場合は、複数の間隔の平均値を「間隔A1」としてもよい(間隔A2、間隔A3も同様)。また、
図7に示す例では、第1連結部34a・34aどうしの滑降方向Sにおける間隔を間隔A1とした。一方、測る方向によって第1連結部34a・34aどうしの間隔が異なる場合は、間隔が最も小さくなる方向における間隔を「間隔A1」としてもよい(間隔A2も同様)。
【0037】
上記のように、第1基布31a、第2基布31b、および連結糸33(以下「第1基布31aなど」という)が同時に織られる(または編まれる)場合がある。この場合、第1基布31aなどは、
図5に示す連結糸列33Lが延びる方向(
図5に示す例では滑降方向S)に製造される場合がある。この場合、連結糸列33Lが延びる方向における第1連結部34a・34aどうしの間隔A4が広いほど、第1基布31aなどの製造を速くすることができる。具体的には例えば、間隔A4(例えば12mmなど)は、連結糸列33Lどうしの間隔A5(幅方向Yにおける間隔)(例えば10mmなど)よりも広い(第2連結部34bも同様)。なお、
図5に示す例では、連結糸列33Lが延びる方向における第1連結部34a・34aどうしの間隔A4は、第1連結部34a・34aどうしの間隔が最も小さくなる方向における間隔A1と等しいが、間隔A4と間隔A1とは相違してもよい。
【0038】
第1連結部34aおよび第2連結部34bは、第1基布31aおよび第2基布31bに連結糸33の張力がバランスよく作用するように配置されることが好ましい。具体的には、厚さ方向Tから見たときに、第1連結部34aは、千鳥状に配置されることが好ましい(第2連結部34bも同様)。さらに詳しくは、幅方向Yに隣り合う連結糸列33L・33Lの第1連結部34aどうし(第1連結部34a-1と第1連結部34a-2と)の、滑降方向Sのずれを、ずれDとする。このとき、ずれDが、0よりも大きい。また、滑降方向Sに隣り合う第1連結部34a-1・34a-1を結ぶ線分を、線分B1とする。線分B1を幅方向Yに挟むように配置される2つの第1連結部34a-2・34a-2を結ぶ線分を、線分B2とする。このとき、線分B1のうち両端以外の部分と、線分B2のうち両端以外の部分と、が交わる。第1連結部34aが千鳥状に配置されることにより、次の作用が得られる。内部空間10s(
図7参照)の圧力により、2つの第1連結部34a-1・34a-1の間の第1基布31aが、膨らもうとする。このとき、2つの第1連結部34a-2・34a-2が、2つの第1連結部34a-1の間の第1基布31aが膨らむことを抑制する(2つの第1連結部34a-2が、言わば補助的な働きを行う)。このような作用が、複数の第1連結部34aで生じる。よって、第1連結部34aに、連結糸33の張力がバランスよく作用し、複数の連結糸33の間での張力の差異(ばらつき)を小さくすることができる。その結果、第1基布31aが膨らむことが、より抑制される。
【0039】
ずれDの大きさは、線分B1の長さ(=間隔A4)の、例えば1/2である。この場合、厚さ方向Tから見たときに、第1連結部34aは、菱形(正方形を含む)の格子Lを形成するように配置される。格子Lの形状は様々に設定可能である。例えば、
図5に示す例では、厚さ方向Tから見たときに、菱形の格子Lの2つの角が60°、もう2つの角が120°となる。例えば、
図6に示す例では、厚さ方向Tから見たとき、格子Lは、正方形を形成する。なお、ずれDの大きさは、第1連結部34a-1・34a-1どうしの間隔の1/2でなくてもよい。格子Lは、菱形でない四角形でもよい。また、ずれDは0でもよい。厚さ方向Tから見たときに、第1連結部34aは、千鳥状に配置されなくてもよい。
【0040】
凹み部35は、
図8に示すように、基材本体30の表面に形成され、第1基布31aおよび第2基布31b(
図7参照)に形成される。以下では、第1基布31aに形成される凹み部35について説明する。凹み部35は、厚さ方向Tから見て第1連結部34aと重なる位置に設けられる。凹み部35は、凹み部35の周辺の第1基布31aに対して、内部空間10s側に凹む。凹み部35は、次のように形成される。内部空間10sの圧力が所定範囲内のとき、第1基布31aと第2基布31b(
図7参照)とが互いに離れようとする(膨らもうとする)。すると、連結糸33に張力が発生し、連結糸33の張力が第1連結部34aに作用する。よって、第1連結部34aの周辺部に比べ、第1連結部34aの位置で、第1基布31aが凹む。この凹みの部分が、凹み部35である。一方、内部空間10sの圧力が所定範囲内の場合、第1連結部34aと第1連結部34aの周辺部とが、平らまたは略平らになる。よって、内部空間10sの圧力を検出するセンサが無くても、凹み部35の凹みの程度によって、内部空間10sの圧力の大きさ(所定範囲内か否かなど)を、避難用シュート1の利用者に知らせることができる。また、滑降部11(
図1参照)に凹み部35がある場合、滑降部11と避難者との摩擦力を低減することができ、避難者が滑降しやすくなる。
【0041】
折曲部36は、
図1に示すように、基材本体30のうち折り曲げられた部分である。
図9に示すように、折曲部36は、滑降部11と滑降部横手摺部17aとの間(境界部分)に設けられる。同様に、折曲部36は、滑降部11と上屈曲部13との間(
図2参照)、滑降部11と下屈曲部15との間(
図10参照)、上屈曲部13と上手摺部17bとの間、および、下屈曲部15と下手摺部17cとの間のそれぞれの間に設けられる。
図9に示すように、折曲部36は、折込部36aと、折目部36bと、を備える。
【0042】
折込部36aは、第1基布31aのうち、基材本体30の表面に対して内部空間10sに折り込まれた部分である。折込部36aは、折込固定部36a1を備えることが好ましい。折込固定部36a1は、折込部36aを構成する第1基布31aであって向かい合う第1基布31aどうしを固定した部分である。折込固定部36a1は、第1基布31aどうしを、例えば接着剤で固定した部分である。折込固定部36a1は、折込部36aの一部に設けられてもよく、折込部36aの全体に設けられてもよい。折込固定部36a1は、折込部36aのうち、折目部36b側の端部を含むことが好ましく、折目部36b側の端部から折目部36bとは反対側に向かって設けられることが好ましい。折込固定部36a1が設けられることによって、折曲部36の形状を安定させることができ、折曲部36での折り曲げの角度を安定させることができ、折曲部36に必要な強度を長期間維持することができる。折目部36bは、第1基布31aが内部空間10sに折り込まれることで形成された、第1基布31aの折目である。なお、第2基布31bに、折込部36aおよび折目部36bが設けられてもよい。以下では、第1基布31aに、折込部36aおよび折目部36bが設けられる場合について説明する。
【0043】
折曲外側部37は、折曲部36の外側に形成される。さらに詳しくは、基材本体30の厚さ方向Tにおける両面のうち、一方の面に折曲部36が形成され、他方の面に折曲外側部37が形成される。第1基布31aに折曲部36が設けられる場合、折曲部36の外側の第2基布31bが、折曲外側部37となる。折曲外側部37は、次のように形成される。折曲外側部37と折込部36aとにつながれた連結糸33の張力は、ゼロ、または、他の部分の連結糸33の張力よりも小さい。そのため、第2基布31bが膨らもうとする力に対抗する力(内部空間10sの圧力に対抗する力)が、ない、または折曲外側部37以外の部分に比べて小さい。よって、折曲外側部37を構成する第2基布31bは、内部空間10sの圧力によって膨らむ(二点鎖線で示す折曲外側部37を参照)。さらに詳しくは、折曲外側部37を構成する第2基布31bは、折曲外側部37を構成していない第2基布31bに比べ、第1基布31aから離れる側に膨らむ。
【0044】
側面材40は、基材本体30の側面全体を覆うことで内部空間10sを密封する。「基材本体30の側面」は、第1基布31aの端31at(厚さ方向Tに直交する方向における端)と、第2基布31bの端31bt(同)と、に挟まれた部分である。側面材40には、連結糸33が連結されなくてもよい。例えば、側面材40は、第1基布31aおよび第1樹脂層32aと同様に構成されてもよい。側面材40が、織布または編物を含む場合は、これらを含まない場合(例えば樹脂のみにより構成される場合)に比べ、側面材40の強度を向上させることができる。例えば、側面材40の材料(素材)は、第1樹脂層32aの材料と同様でもよい。側面材40の材料が第1樹脂層32aの材料と同一である場合は、避難用シュート1にかかるコストを抑制することができる。
【0045】
この側面材40は、
図1に示す上屈曲部13の後側X2端部、下屈曲部15の前側X1端部、手摺部17の上側Z1端部、および手摺部17の前後方向Xの端部に設けられる。
図9に示すように、手摺部17の上側Z1端部に側面材40が設けられる場合、手摺部17を構成する基材本体30に対して、手摺部17を構成する側面材40が、上側Z1に突出する(膨らむ)。この場合、手摺部17の上側Z1端部では、手摺部17の厚さ方向Tの幅が、上側Z1に向かうにしたがって狭くなる。よって、手摺部17の上側Z1端部を避難者が手で掴みやすくなる、または手を置きやすくなる。
【0046】
固定材50は、滑降部11に対して屈曲部12が折れ曲がった状態で、基材本体30を固定する。固定材50は、基材本体30の折曲部36を折れ曲がった状態で固定する。固定材50は、基材本体30に、例えば貼り付けられ、例えば溶着される。固定材50は、折目部36bを覆うとともに、基材本体30に固定される(一体化される)。固定材50は、基材本体30を折れ曲がった状態で固定できるような強度を有する材料(素材)により形成される。固定材50は、例えばテープ状でもよく、シート状でもよい。固定材50は、例えば織布などである。
【0047】
取付部61は、
図3に示すように、車両Cにシュート本体10を取り付けるための部分である。取付部61は、例えばベルトなどであり、例えば輪状などである。取付部61は、図示しないロープなどを介して車両Cにつながれてもよい。取付部61は、車両Cに直接つながれてもよい。取付部61は、シュート本体10に設けられる。取付部61は、シュート本体10のうち、車両Cへの取り付けが容易な部分に設けられることが好ましい。取付部61は、例えば上屈曲部13に設けられてもよく、例えば上屈曲部13の下側Z2の面に設けられてもよい。
【0048】
給排部62(給排口)は、シュート本体10の内部空間10s(
図7参照)と、シュート本体10の外部と、を連通可能および閉塞可能な部分である。シュート本体10の外部の気体が、給排部62を介して、シュート本体10の内部空間10sに供給される。給排部62は、シュート本体10のどの位置に設けられてもよい。
図1に示す例では、給排部62は、下手摺部17cの幅方向外側Y2の面に配置される。
図13に示す例では、給排部62は、滑降部横手摺部217aの幅方向外側Y2の面に配置される。
図1に示す給排部62には、気体供給装置が接続される。気体供給装置は、人力(手動、足踏みなど)によるポンプでもよく、電動ポンプ(コンプレッサ)でもよく、ボンベ(インフレータ)でもよい。気体供給装置は、避難用シュート1に対して、別体でもよく、一体(例えば内蔵)でもよい。
【0049】
シート着脱部63は、シート64をシュート本体10に着脱可能に取り付けるための部分である。シート着脱部63は、例えばファスナであり、面ファスナでもよく、線ファスナでもよく、スナップファスナ(スナップボタン)でもよい。シート着脱部63は、シート64の上側Z1部分が取り付けられるシート上部着脱部63a(
図3参照)と、シート64の下側Z2部分が取り付けられるシート下部着脱部63bと、を備える(後述)。
【0050】
シート64は、シュート本体10の上面に配置される(敷かれる、取り付けられる)。シート64は、シュート本体10の保護や耐久性向上のために設けられる保護用シートでもよい。シート64は、避難者と避難用シュート1との摩擦力を調整(制御)するためのものでもよい。シート64は、避難者が滑降する際の抵抗の大きさ(滑降抵抗性能)を調整(制御)するためのものでもよい。シート64は、シュート本体10の表面を覆い、基材本体30の表面を覆う。シート64は、シュート本体10に(基材本体30に)着脱可能に取り付けられる。シート64は、例えば、滑降シート64aと、上シート64bと、を備える。なお、
図1では、シート64がない状態を図示し、シート64の位置を二点鎖線で示した。
【0051】
滑降シート64aは、滑降部11の上面に配置される。例えば、水平方向に対する滑降方向Sの傾斜角度(滑降部11の設置角度)に応じて、滑降シート64aと避難者との摩擦力が調整されてもよい。さらに詳しくは、
図3に示す上屈曲部13が置かれる部分(車両Cの床面)から下屈曲部15が置かれる部分(地面G)までの高さは、避難用シュート1が用いられる現場によって、様々な高さになりうる。そのため、水平面に対する滑降方向Sの傾斜角度が様々な値となりうる。そこで、
図1に示す滑降シート64aと避難者との摩擦力が調整されることで、滑降部11での滑降抵抗性能が調整される。
【0052】
この滑降シート64aの材料(素材)は、例えば、避難者とシュート本体10との摩擦係数に比べ、避難者と滑降シート64aとの摩擦係数が小さくなるように設定される。具体的には例えば、第1樹脂層32a(
図7参照)の材料が塩化ビニルの場合、滑降シート64aの材料は、ウレタンでもよく、ナイロンでもよい。滑降シート64aの材料は、例えば織布を含んでもよく、平織(例えばオックス組織など)の織布を含んでもよく、平織以外の織布(綾織、繻子織など)の織布を含んでもよい。滑降シート64aの材料は、撥水加工が施されたものを含んでもよく、防水加工が施されたものを含んでもよい。滑降シート64aの材料は、ゴムのコーティングが施されたものを含んでもよい。コーティングされるゴムは、例えば、アクリルでもよく、クロロプレンでもよく、クロロスルフォン化ポリエチレンでもよい。滑降シート64aの材料が、クロロスルフォン化ポリエチレンのコーティングが施されたものである場合は、アクリルのコーティングが施されたものである場合に比べ、強度が高く、ベタツキが少なく、耐光性が高い。具体的には例えば、滑降シート64aの材料は、420デニールのナイロンの糸を縦糸および横糸に用いたオックス組織の布に、クロロスルフォン化ポリエチレンがコーティングされたものを含んでもよい。なお、シート64のうち滑降シート64a以外の部分(上シート64bなど)の材料は、上記の滑降シート64aの材料と同じでもよく、相違してもよい。
【0053】
上シート64bは、上屈曲部13の上面に配置される。上シート64bは、滑降シート64aと一体的に(連続的に)設けられてもよく、滑降シート64aと別体でもよい。例えば、滑降シート64aおよび上シート64bが一体的に設けられる場合は、シート64は、次のようにシュート本体10に取り付けられる。シート64の上側Z1部分、具体的には例えば上シート64bの端部であって滑降シート64aとは反対側の端部は、
図3に示すシート上部着脱部63aに着脱可能に取り付けられる。シート上部着脱部63aは、例えば上屈曲部13の下側Z2の面に配置される。シート64(
図1参照)が、車両Cの床面と上屈曲部13とで挟まれる場合は、
図1に示すシート64がシュート本体10から外れることが抑制される。シート64の下側Z2(前側X1)部分、具体的には例えば滑降シート64aの下側Z2(前側X1)の端部は、シート下部着脱部63bに着脱可能に取り付けられる。シート下部着脱部63bは、例えば滑降部11の下側Z2部分(例えば下側Z2端部の近傍)に配置される。なお、シート下部着脱部63bは、下屈曲部15に配置されてもよい。シート64(下シート)が、下屈曲部15の上面に設けられてもよい。
【0054】
保護部65は、
図3に示すように、シュート本体10の下側Z2部分を、地面G(例えば石、砂利、および砂など)から保護するための部材である。保護部65は、下屈曲部15に設けられる。保護部65は、下屈曲部15の下側Z2の面に取り付け(例えば貼り付け)られる部材(シート状部材)でもよい。例えば、保護部65の材料(材質)は、基材20の材料よりも強度の高いものでもよい。保護部65は、下屈曲部15を覆う部材(カバー)でもよい(
図11を参照)。保護部65は、
図1に示すシート64と一体でもよい。
【0055】
高さ調整材66は、滑降部11の傾斜角度を調整するための部材である。高さ調整材66は、滑降部11の下側Z2部分よりも下側Z2に配置され、例えば、下屈曲部15よりも下側Z2に配置される。高さ調整材66は、シュート本体10とは別体である。高さ調整材66は、例えば略板状などである。高さ調整材66は、基材20と同様の構造でもよく、基材20と異なる構造でもよい。高さ調整材66は、複数設けられてもよく、設けられなくてもよい。
【0056】
(非使用時)
避難用シュート1の非使用時には、シュート本体10は、内部空間10s(
図7参照)に気体が略ない状態(しぼんだ状態)であり、折り畳まれた状態である。高さ調整材66の構造が基材20と同じ構造の場合は、避難用シュート1が格納状態のとき、高さ調整材66は、しぼんだ状態でもよく、折り畳まれた状態でもよい。
【0057】
(使用時の状態への変更)
避難用シュート1は、次のように、非使用時の状態から使用時の状態に変えられる。シュート本体10の外部から内部に、給排部62を介して、気体が供給されると、シュート本体10が膨らむ。そして、内部空間10s(
図7参照)の圧力が所定範囲内になるまで、内部空間10sが加圧される。すると、シュート本体10が、滑降部11、上屈曲部13、下屈曲部15、および手摺部17を備えた形状になる。次に、シート64が、シュート本体10に取り付けられる。また、
図3に示す取付部61が、直接的または間接的に車両Cに取り付けられる。また、必要に応じて、
図1に示す高さ調整材66により、滑降部11の傾斜角度が調整される。その結果、避難用シュート1が、使用時の状態となる。
【0058】
(梯子との比較)
避難者が車両C(
図3参照)から避難する際に、非常用梯子が用いられる場合がある。例えば、車両Cが鉄道車両の場合、乗降扉などの開口部に設置された非常用梯子を用いて、避難者が車両Cの外部に降りる場合がある。この場合、避難者は、車両C側に向いた姿勢、すなわち、避難者の背中を車両Cの外側に向けた姿勢(後ろ向きの体勢)になる必要がある。そのため、避難者に不安を与えてしまうことがあり、避難の動作が慎重になり、迅速な避難が困難になることがあった。一方、本実施形態では、避難者は、車両Cの外側に向いた姿勢(前向きの体勢)で、避難用シュート1を滑降することができる。よって、非常用梯子が用いられる場合よりも、車両Cから避難者を迅速に避難させることができる。
【0059】
(効果)
図1に示す避難用シュート1による効果は、次の通りである。
【0060】
(第1の発明の効果)
避難用シュート1は、車両C(
図3参照)内から外(車両C外)に避難者を滑降させるためのものである。
【0061】
[構成1-1]避難用シュート1は、基材本体30と、側面材40と、を備える。基材本体30は、内部空間10s(
図7参照)を形成する。側面材40は、基材本体30の側面全体を覆うことで内部空間10s(
図7参照)を密封する。
図7に示すように、基材本体30は、布である第1基布31aと、第2基布31bと、第1樹脂層32aと、第2樹脂層32bと、連結糸33と、を備える。第2基布31bは、第1基布31aとの間に内部空間10sを形成する隙間を開けて第1基布31aに対向して配置された布である。第1樹脂層32aは、第1基布31aに設けられる。第2樹脂層32bは、第2基布31bに設けられる。
【0062】
[構成1-2]連結糸33は、第1基布31aと第2基布31bとを緻密に連結する。
【0063】
[構成1-3]
図1に示すように、避難用シュート1は、滑降部11を備える。滑降部11は、水平方向に対して傾斜して配置されるとともに避難者を滑降させるための部分である。滑降部11は、基材本体30を含む。
【0064】
上記[構成1-1]では、基材本体30と側面材40とが内部空間10s(
図7参照)を密封している。よって、基材本体30に曲げの力が加えられると、内部空間10sの圧力が上がろうとする。すると、基材本体30のうち、力が加えられた部分の周辺の部分が膨らもうとする。ここで、上記[構成1-2]のように、
図7に示す基材本体30では、第1基布31aと第2基布31bとが、連結糸33により緻密に連結されている。よって、基材本体30が膨らもうとすると、連結糸33の張力が基材本体30に作用し、基材本体30が膨らむことが抑制される。その結果、基材本体30の曲げ変形が抑制される。よって、基材本体30の形状を維持(安定)させやすく、基材本体30の剛性を高めることができる。この基材本体30は、上記[構成1-3]のように、避難者を滑降させるための滑降部11(
図1参照)に含まれている。よって、
図1に示す滑降部11を避難者が滑降し、滑降部11に曲げの力が加えられたときに、滑降部11が膨らむことが抑制され、滑降部11の曲げ変形が抑制される。よって、滑降部11の形状を維持させやすく、滑降部11の剛性を高めることができる。その結果、避難用シュート1の剛性を高めることができる。
【0065】
滑降部11が膨らむことが抑制されるので、基材本体30が膨らむことによる滑降抵抗の増加を抑制できる。よって、避難者に滑降部11を滑らかに滑降させることができる。
【0066】
仮に、
図7に示す連結糸33が設けられなくても、内部空間10sの圧力を高くすれば、基材本体30の剛性を高めることはできる。一方、本実施形態の避難用シュート1は、上記[構成1-2]の連結糸33を備えるので、連結糸33が設けられない場合に比べて、滑降部11の内部空間10sの圧力が低くても、滑降部11の形状を維持させやすい。よって、連結糸33が設けられない場合(従来技術)に比べ、滑降部11の内部空間10sの圧力が低くても、滑降部11(
図1参照)の剛性を高めることができる。その結果、内部空間10sの圧力が低くても、避難用シュート1の剛性を高めることができる。
【0067】
内部空間10sの圧力が低くても避難用シュート1(
図1参照)の剛性を高めることができる結果、内部空間10sへの気体の注入量を減らすことができる。よって、気体の注入開始から、避難用シュート1が使用可能な状態になるまでの時間を短縮することができる。よって、避難者の避難を、早いタイミングで開始させることができる。また、内部空間10sの圧力を低くできるので、第1基布31a、第2基布31b、第1樹脂層32a、および第2樹脂層32bのそれぞれの必要強度(必要な耐圧力)を低減することができる。よって、これらにかかるコスト(材料費など)を抑制することができる。
【0068】
仮に連結糸33が設けられない場合でも、基材本体30の厚さ方向Tの寸法を大きくすれば、基材本体30の剛性を高めることはできる。一方、本実施形態の避難用シュート1(
図1参照)は、上記[構成1-2]の連結糸33を備えるので、連結糸33が設けられない場合に比べて基材本体30の厚さ方向Tの寸法が小さくても(基材本体30が薄くても)、基材本体30の形状を維持させやすい。その結果、
図1に示す避難用シュート1を小型化することができる。
【0069】
(第2の発明の効果)
避難用シュート1は、屈曲部12を備える。屈曲部12は、滑降部11に対して折れ曲がるように滑降部11の端部から延びる。
【0070】
[構成2]屈曲部12は、基材本体30を含む。
【0071】
上記[構成2]では、屈曲部12が基材本体30を含む。よって、上記「第1の発明の効果」のように、屈曲部12の剛性を高めることができる。その結果、屈曲部12の種類に応じた効果を得ることができる(下記の「第3の発明の効果」を参照)。
【0072】
(第3の発明の効果)
[構成3-1]屈曲部12は、上屈曲部13と、下屈曲部15と、滑降部横手摺部17aと、を備える。上屈曲部13は、滑降部11の上側Z1部分から後側X2に延び、基材本体30を含む。後側X2は、車両C(
図3参照)外から内に向かう側である。下屈曲部15は、滑降部11の下側Z2部分から前側X1または下側Z2に延び、基材本体30を含む。滑降部横手摺部17aは、滑降部11の幅方向外側Y2部分から上側Z1に延び、基材本体30を含む。
【0073】
上記[構成3-1]では、上屈曲部13が基材本体30を含むので、上屈曲部13の剛性を高めることができる。よって、滑降部11を滑降しようとしている避難者を、上屈曲部13で支持することができる。具体的には例えば、避難者が上屈曲部13に乗ったときに、避難者が揺れたり跳ねたりすることを抑制することができる。また、上屈曲部13の剛性を高めることができるので、上屈曲部13が、滑降部11を上側Z1から確実に支持する(例えば吊り下げる)ことができる。
【0074】
上記[構成3-1]では、下屈曲部15が基材本体30を含むので、下屈曲部15の剛性を高めることができる。よって、下屈曲部15が、滑降部11を下側Z2から確実に支持することができる。また、下屈曲部15が、滑降部11から前側X1に延びる場合は、次の効果が得られる(下側Z2に延びる場合は後述)。この場合、滑降部11を滑降した避難者が、下屈曲部15に乗ったときに、下屈曲部15が変形しにくい。よって、下屈曲部15が、避難者を確実に支持することができる。具体的には例えば、避難者が下屈曲部15に乗ったときに、避難者が揺れたり跳ねたりすることを抑制することができる。
【0075】
上記[構成3-1]では、屈曲部12が滑降部横手摺部17aを備えるので、次の効果が得られる。この場合、滑降部横手摺部17aが基材本体30を含むので、滑降部横手摺部17aの剛性を高めることができる。よって、滑降部11を滑降する避難者が滑降部横手摺部17aの幅方向内側Y1部分に接触した際に、滑降部横手摺部17aが変形しにくい。よって、避難者が滑降部11から幅方向外側Y2に外れることを抑制することができる。また、上記「第1の発明の効果」のように、基材本体30に必要な耐圧力を低減できるので、滑降部横手摺部17aを構成する材料としてより軟らかい材料を選択することができる。よって、避難者が滑降部横手摺部17aを持ちやすくなる。
【0076】
(第5の発明の効果)
[構成5]避難用シュート1は、
図9に示す折目部36bと、固定材50と、を備える。折目部36bは、第1基布31aおよび第2基布31bの少なくともいずれかが内部空間10sに折り込まれることで形成された部分である。固定材50は、折目部36bを覆うとともに基材本体30に固定されることで、基材本体30を折れ曲がった状態で固定する。固定材50は、
図1に示すように、滑降部11に対して、滑降部横手摺部17a(手摺部17)、下屈曲部15、および上屈曲部13の少なくともいずれかが折れ曲がった状態で、基材本体30を固定する。
【0077】
上記[構成5]により、次の効果が得られる。滑降部11に対して折れ曲がった部分(以下、「滑降部横手摺部17aなど」)を構成する基材本体30と、滑降部11を構成する基材本体30とを、一体的に連続したものとして構成することができる。よって、滑降部11を構成する基材本体30と、滑降部横手摺部17aなどを構成する基材本体30と、が別体である場合に比べ、避難用シュート1にかかるコストを抑制できる。
【0078】
滑降部横手摺部17aなどに力が作用すると、滑降部11に対する滑降部横手摺部17aなどの折り曲げの角度θa(
図4参照)が変わろうとする。このとき、基材本体30が膨らもうとし、
図7に示す内部空間10sの圧力が上がろうとする。すると、連結糸33の張力が基材本体30に作用する。その結果、連結糸33の張力が、角度θa(
図4参照)が変わろうとする曲げの力に対する抵抗力となる。よって、
図4に示す滑降部11に対する滑降部横手摺部17aなどの、折り曲げの角度θaが維持されやすい。
【0079】
(第6の発明の効果)
[構成6]
図7に示す第1基布31aは、滑降部11の上側Z1の面を構成する。滑降部11に含まれる複数の連結糸33の一部(連結糸33a)は、第2基布31bから第1基布31aに向かうにしたがって、滑降部11の滑降方向Sに向かうように、基材本体30の厚さ方向Tに対して傾斜して配置される。
【0080】
上記[構成6]により、次の効果が得られる。滑降部11では、避難者が滑降方向Sに滑降する。そのため、避難者が第1基布31a上を滑降すると、第2基布31bに対して第1基布31aが滑降方向Sに移動しようとする。このとき、上記[構成6]では、連結糸33aに張力が生じる。よって、連結糸33aの張力が、第2基布31bに対する第1基布31aの滑降方向Sへの移動に対する抵抗力となる。よって、滑降部11の剛性をより高めることができ、避難用シュート1の剛性をより高めることができる。
【0081】
(第7の発明の効果)
図5に示すように、連結糸33は、基材本体30の厚さ方向Tから見たときに、滑降部11の滑降方向Sに延びるように配置される連結糸列33Lを形成している。連結糸列33Lは、基材本体30の厚さ方向Tおよび滑降方向Sのそれぞれに直交する方向(幅方向Y)に互いに間隔をあけて配置される。
【0082】
[構成7]複数の連結糸列33Lのそれぞれは、
図7に示すように、第1基布31aと第2基布31bとの間で滑降方向Sにジグザグ状に配置される。
【0083】
上記[構成7]により、1か所の第1連結部34a(第1基布31aと連結糸33との連結部)に2本の連結糸33が連結され、1か所の第2連結部34b(第2基布31bと連結糸33との連結部)に2本の連結糸33が連結される。よって、1か所の第1連結部34aに1本のみの連結糸33が連結される場合や、1か所の第2連結部34bに1本のみの連結糸33が連結される場合に比べ、連結糸33に作用する力を分散させることができる。よって、連結糸33の伸びを抑制できるので、基材本体30が膨らむことをより抑制でき、基材本体30の剛性をより高めることができる。
【0084】
(第8の発明の効果)
避難用シュート1(
図1参照)は、下記[構成8-1]および[構成8-2]の少なくともいずれかを備える。[構成8-1]
図5に示すように、第1基布31aと連結糸33との第1連結部34aは、基材本体30の厚さ方向Tから見たときに千鳥状に配置されている。[構成8-2]第2基布31b(
図7参照)と連結糸33との第2連結部34bは、基材本体30の厚さ方向Tから見たときに千鳥状に配置されている。
【0085】
上記[構成8-1]により、次の効果が得られる。基材本体30の厚さ方向Tから見たときに第1連結部34aが千鳥状に配置されていない場合に比べ、連結糸33の張力を第1基布31aにバランスよく作用させることができる(詳細は上記の通り)。よって、第1基布31aが膨らみにくくなる。よって、基材本体30の剛性をより高めることができる。
【0086】
第1連結部34aの配置によって基材本体30の剛性を高めることができるので、基材本体30の剛性を確保しつつ、第1連結部34a-1・34aー1どうしの滑降方向Sの間隔A4を広げることができる。間隔A4を広げた場合は、一定面積あたりの、第1連結部34aの数を減らすことができる。その結果、基材本体30の製造コストを低減できてもよく、基材本体30の製造が速くなってもよい。上記[構成8-1]による効果と同様に、上記[構成8-2]によっても、基材本体30の剛性を高めることができ、また、第2連結部34bどうしの滑降方向Sの間隔を広げることができる。
【0087】
(第9の発明の効果)
[構成9]
図1に示すように、避難用シュート1は、シート64を備える。シート64は、基材本体30の表面を覆い、基材本体30に対して着脱可能に取り付けられる。
【0088】
上記[構成9]では、シート64は、基材本体30の表面を覆う。よって、基材本体30の表面を保護することができてもよく、基材本体30と避難者との摩擦係数を調整することができてもよい。また、上記[構成9]では、シート64は、基材本体30に対して着脱可能である。よって、シート64が傷んだ場合などに容易にシート64を交換することができてもよく、また、基材本体30と避難者との摩擦係数を容易に変更することができてもよい。
【0089】
(第2実施形態)
図11~
図14を参照して、第2実施形態の避難用シュート201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、避難用シュート201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。避難用シュート201のうち、第1実施形態と同一の符号を付した部分は、第1実施形態との共通点である。共通点の説明を省略する点については、後述する第3実施形態の説明も同様である。
【0090】
図1に示す例では、手摺部17は、滑降部横手摺部17aと、上手摺部17bと、下手摺部17cと、を備えた。一方、これらの少なくとも一部が設けられなくてもよい。具体的には、
図11に示すように、本実施形態では、手摺部17は、滑降部横手摺部217aを備え、
図1に示す上手摺部17bおよび下手摺部17cを備えない。
【0091】
図4に示す例では、滑降部横手摺部17aの角度θa(定義は上記の通り)は、約90°である。一方、角度θaは様々に変更可能である(角度θb、角度θcも同様)。具体的には、
図14に示すように、本実施形態では、滑降部横手摺部217aの角度θaは、90°未満であり、例えば約45°である。
【0092】
(第3実施形態)
図15~
図17を参照して、第3実施形態の避難用シュート301について、第2実施形態との相違点を説明する。
【0093】
図12に示す例では、取付部61は、例えばベルト状などであった。一方、取付部61は、車両C(
図13参照)に取り付け可能であればどのような構成でもよい。具体的には、
図15に示すように、本実施形態では、取付部361は、上屈曲部13と一体的に設けられる。取付部361は、基材本体30を含み、さらに詳しくは、基材本体30および側面材40を含む。取付部361は、上屈曲部13から幅方向外側Y2に突出し、滑降部11よりも幅方向外側Y2に突出する。取付部361は、車両Cの構造物(例えば壁、扉など)に取り付けられる。取付部361は、車両Cの構造物に、例えば引っ掛けられてもよく、挟まれてもよい。
【0094】
(第4実施形態)
図18~
図22を参照して、第4実施形態の避難用シュート401について、第1実施形態との相違点を説明する。
図18に示す避難用シュート401の下屈曲部15は、脚部419を備える。避難用シュート401は、上部布471と、下部布472と、クッション材着脱部473と、クッション材474と、を備える。避難用シュート401は、下手摺部17c(
図1参照)を備えなくてもよい。
【0095】
脚部419は、避難用シュート401から避難者を容易に降ろすための部分である。脚部419は、滑降部11の下側Z2部分に座っている避難者を、容易に立ち上がらせるための部分である。
図19に示すように、脚部419は、滑降部11の下側Z2部分(前側X1部分)から下側Z2に延びる。脚部419の上下方向Zの寸法は、滑降部11の下側Z2部分に座った避難者が、滑降部11から降りやすくなるような寸法に設定される。例えば、脚部419の下側Z2端部から、滑降部11の滑降部上面11aの下側Z2端部までの高さH419は、一般的な座席の下面から座面までの高さと同じである。高さH419は、具体的には例えば、平均的な中学生から成人までの避難者がスムーズに立ち上がれるような寸法に設定される。さらに具体的には、高さH419は、390~450mmなどである。脚部419は、脚部本体部419aと、脚部支持部419bと、を備える。
【0096】
脚部本体部419aは、滑降部11に対して下側Z2に屈曲する。滑降部11に対する脚部本体部419aの屈曲の向きは、滑降部11に対する下屈曲部15(
図3参照)の屈曲の向きとは逆向きである。脚部本体部419aは、滑降部11の下側Z2部分から下側Z2に延びる。脚部本体部419aは、幅方向Yおよび上下方向Zのそれぞれに延びるように配置される(
図18参照)。脚部本体部419aと滑降部11との間(境界部)には、折曲部36が設けられる。
【0097】
脚部支持部419bは、地面Gに対する脚部419の安定性を向上させるための部分である。脚部支持部419bは、滑降部11から受ける力であって、脚部419を後側X2に倒そうとうとする向きの力に対抗する部分である。脚部支持部419bは、脚部本体部419aの下側Z2部分(少なくとも下側Z2部分)から後側X2(裏側)に突出する。例えば、脚部支持部419bは、脚部本体部419aの下側Z2端部から上側Z1端部(または略上側Z1端部)までの部分から、後側X2に延びる。
図18に示すように、脚部支持部419bは、脚部本体部419aの幅方向外側Y2(例えば幅方向外側Y2の両側)部分から後側X2に延びる。脚部支持部419bは、脚部419の幅方向外側Y2部分(側壁)を構成する。脚部支持部419bは、前後方向Xおよび上下方向Zに延びるように配置される。
図22に示すように、脚部支持部419bと脚部本体部419aとの間(境界部)には、折曲部36が設けられる。脚部本体部419aに対する脚部支持部419bの屈曲の角度θdは90°でもよく、約90°でもよい。角度θdは、幅方向外側Y2向きのベクトルと、上下方向Zから見て脚部本体部419aから脚部支持部419bが突出する向きのベクトルと、が成す角度である。脚部本体部419aの前後方向Xの寸法は、脚部419の安定性を確保できるように設定される。脚部本体部419aの前後方向Xの寸法は、例えば、
図18に示す滑降部11に対する滑降部横手摺部17aの突出量と同じまたは略同じなどである。
【0098】
上部布471は、避難者が滑降部11を適切に滑降できるような滑り性を有する(いわば滑りやすい)布である。上部布471は、滑降部11の滑降部上面11aの上側Z1部分(後側X2部分)に設けられる。例えば、上部布471は、滑降部上面11aの少なくとも上側Z1端部に設けられてもよい。例えば、上部布471の下側Z2端部の位置は、滑降部上面11aの滑降方向Sにおける中央部または略中央部でもよく、中央部よりも上側Z1でもよく、中央部よりも下側Z2でもよい。上部布471は、シュート本体10に対して着脱可能なシート64(さらに詳しくは滑降シート64a)でもよい。上部布471は、滑降部11に対して固定(例えば貼り付け)された布でもよい。上部布471の材料は、例えばナイロンなどである(滑降シート64aの説明と同様)。
【0099】
下部布472は、滑降している避難者が減速できるような滑り性を有する(いわば滑りにくい)。下部布472の滑り性は、上部布471の滑り性よりも低い。さらに詳しくは、ある滑降者と下部布472との摩擦係数は、この滑降者と上部布471との摩擦係数よりも大きい。下部布472は、滑降部上面11aのうち、上部布471が設けられる部分よりも下側Z2部分(前側X1部分、滑降方向Sの下流側)に設けられる。下部布472は、シート64でもよく、滑降シート64aでもよい。下部布472は、滑降部11に対して固定(例えば貼り付け)された布でもよい。下部布472は、基材本体30(さらに詳しくは第1基布31a(
図7参照))でもよい。下部布472と上部布471とは、別体でも、一体(連続する1枚の布)でもよい。上部布471が下部布472を覆うように、下部布472と上部布471とが重ねられてもよい。上部布471と下部布472とが滑降方向Sに並ぶように配置されてもよい(図示なし)。下部布472の材料は、上部布471よりも滑り性が低い材料である。下部布472の材料は、例えば塩化ビニルを含んでもよく、塩化ビニルを含むターポリン(
図7に示す第1基布31aおよび第1樹脂層32aと同様のものなど)でもよい。なお、下部布472が設けられずに、上部布471が設けられてもよい。
【0100】
クッション材着脱部473は、クッション材474をシュート本体10(例えば脚部419)に着脱可能に取り付けるための部分である。クッション材着脱部473(および後述するクッション材取付部474b)は、例えばファスナであり、面ファスナでもよく、線ファスナでもよく、スナップファスナ(スナップボタン)でもよい。例えば、クッション材着脱部473は、脚部支持部419bに設けられる(固定される)。具体的には例えば、
図22に示すように、クッション材着脱部473は、脚部支持部419bの幅方向外側Y2の面に設けられてもよく、脚部支持部419bの幅方向内側Y1の面に設けられてもよく、脚部本体部419aに設けられてもよい(図示なし)。
【0101】
クッション材474(脚部クッション材)は、
図19に示す地面G(例えば砂利など)によるシュート本体10の傷付きを抑制するための部材でもよい。クッション材474は、避難者が滑降部11から降りる(立ち上がる)際に、避難者の足元を安定させるための部材でもよい。クッション材474は、クッション材本体部474aと、クッション材取付部474bと、を備える。
【0102】
クッション材本体部474aは、脚部419よりも下側Z2に配置され、地面Gよりも上側Z1に配置される。この場合、クッション材本体部474aにより、シュート本体10の傷付きを抑制することができる。クッション材本体部474aは、脚部419の下側Z2端部よりも前側X1に配置される、脚部419の下側Z2端部から前側X1に延びるように配置される。この場合、クッション材本体部474aにより、避難者の足元を安定させることができる。例えば、クッション材本体部474aは、略板状などである(
図18参照)。例えば、クッション材本体部474aは、袋と、袋の内部に配置されたクッション性のある材料(例えば低反発ウレタンなど)と、を備えてもよい。クッション材本体部474aの袋は、例えばターポリンで製作されたものなどである。
【0103】
このクッション材本体部474aは、具体的には例えば、次のように配置されてもよい。
図22に示すように、クッション材本体部474aの幅方向Yの寸法は、脚部419の幅方向Yの寸法と同じまたは略同じ(例えば600mmなど)でもよい。クッション材本体部474aは、脚部419の幅方向外側Y2の一方の端(右端)から他方の端(左端)にわたって設けられてもよい。クッション材本体部474aは、少なくとも、脚部419の後側X2の端から、脚部419の前側X1の端にわたって設けられてもよい。クッション材本体部474aのうち、脚部419から前側X1に突出する部分の前後方向Xの寸法(300mmなど)は、脚部419の真下に配置される部分の前後方向Xの寸法(200mmなど)に対して、大きくてもよく、小さくてもよく、等しくてもよい。
図18に示すクッション材本体部474aの上下方向Zの寸法(厚み)は、必要なクッション性に応じて適切に設定される(30mmなど)。なお、クッション材本体部474aは、高さ調整材66(
図1参照)と兼用されてもよい。また、クッション材本体部474aと高さ調整材66とが上下方向Zに重ねられてもよい。クッション材本体部474aは、高さ調整材66と脚部419との間に配置されてもよい。クッション材本体部474aは、高さ調整材66の傷付きを保護するために、地面Gと高さ調整材66との間に配置されてもよい。
【0104】
クッション材取付部474bは、シュート本体10に取り付けられる。クッション材取付部474bは、クッション材着脱部473に着脱可能に取り付けられ、シュート本体10(さらに詳しくは脚部419)に着脱可能に取り付けられる。クッション材取付部474bは、クッション材本体部474aに取り付けられ、例えばクッション材本体部474aから上側Z1に突出する。
【0105】
(第3の発明の効果(下屈曲部15が滑降部11から下側Z2に延びる場合))
[構成3-2]下屈曲部15は、滑降部11の下側Z2部分から下側Z2に延び、基材本体30を含む。
【0106】
上記[構成3-2]の下屈曲部15は、基材本体30を含む。よって、下屈曲部15の剛性を高めることができる(上記「第1の発明の効果」を参照)。また、上記[構成3-2]では、基材本体30を含む下屈曲部15(脚部419)は、滑降部11の下側Z2部分から下側Z2に延びる。よって、滑降部11の下側Z2部分に座っている避難者を、下側Z2から確実に支持することができる。その結果、滑降部11の下側Z2部分に座っている避難者の姿勢が安定するので、避難者が滑降部11から容易に立ち上がることができる。
【0107】
(第4の発明の効果)
下屈曲部15は、脚部419を備える。脚部419は、脚部本体部419aと、脚部支持部419bと、を備える。脚部本体部419aは、滑降部11の下側Z2部分から下側Z2に延びる。
【0108】
[構成4]脚部支持部419bは、脚部本体部419aの下側Z2端部から後側X2に延びる。
【0109】
避難者が滑降部11を滑降する際、脚部419を後側X2に倒そうとする力が、滑降部11から脚部419に作用する。さらに詳しくは、上記[構成3-2]では、下屈曲部15(脚部419)は、滑降部11の下側Z2部分(すなわち前側X1部分)から下側Z2に延びる。よって、滑降部11は、脚部419よりも後側X2に配置されている。よって、避難者は、脚部419よりも後側X2の位置で、滑降部11を滑降する。このとき、脚部419を後側X2に倒そうとする力が、滑降部11から脚部419に作用する。そこで、脚部419は、上記[構成4]の脚部支持部419bを備える。よって、脚部支持部419bが滑降部11から受ける力であって脚部419を後側X2に倒そうとする向きの力に、脚部支持部419bが対抗することができる。よって、脚部419が後側X2に倒れることを抑制することができる。その結果、避難用シュート401を安定させることができる。
【0110】
(第10の発明の効果)
[構成10]避難用シュート401は、上部布471と、下部布472と、を備える。上部布471は、滑降部11の滑降部上面11aの上側Z1部分に設けられる。下部布472は、滑降部上面11aのうち上部布471が設けられる部分よりも下側Z2部分に設けられる。下部布472の滑り性は、上部布471の滑り性よりも低い。
【0111】
上記[構成10]により、次の効果が得られる。避難者は、上部布471を滑降した後、下部布472を滑降する。このとき、下部布472は、避難者を減速させることができる。よって、下部布472が避難者を減速させた状態で、滑降部11の下側Z2部分に避難者を到達させることができる。よって、避難者が滑降部11から容易に降りることができる。
【0112】
(変形例)
上記の各実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0113】
具体的には例えば、
図14に示す滑降部横手摺部217aを備える避難用シュート201に、
図15に示す取付部361が設けられてもよい。例えば、
図1に示す上屈曲部13および下屈曲部15の少なくともいずれかが設けられなくてもよく、手摺部17の少なくとも一部が設けられなくてもよい。上記実施形態では、滑降部11、上屈曲部13、下屈曲部15、および手摺部17が、連続した基材20により、一体的に構成された。一方、滑降部11、上屈曲部13、下屈曲部15、および手摺部17のうちの一部と、他の部分とが、別体でもよい。滑降部11の下側Z2部分から前側X1に延びる下屈曲部15(減速部)と、
図18に示す滑降部11の下側Z2部分から前側X1に延びる下屈曲部15(脚部419)と、の両方が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、201、301、401 避難用シュート
10 シュート本体(膨張部材)
10s 内部空間
11 滑降部(板状部)
11a 滑降部上面
12 屈曲部
13 上屈曲部
15 下屈曲部
17 手摺部
30 基材本体
31a 第1基布
31b 第2基布
32a 第1樹脂層
32b 第2樹脂層
33 連結糸
33L 連結糸列
34a 第1連結部(連結部)
34b 第2連結部(連結部)
36b 折目部
40 側面材
50 固定材
64 シート
419 脚部
419a 脚部本体部
419b 脚部支持部
471 上部布
472 下部布
C 車両
S 滑降方向(特定方向)
X1 前側
X2 後側