(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115241
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
A61B3/028 300
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105939
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2019185094の分割
【原出願日】2019-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 英一
(57)【要約】
【課題】被検眼に呈示する視標の偏光透過軸に対応させて、偏光部材の偏光透過軸の方向を、簡易かつ高精度に設定可能な眼科装置を提供する。
【解決手段】検眼装置は、複数の光学素子12L,12Rを被検眼の眼前に選択的に配置することで被検眼の視機能を矯正可能とする検眼部1を備える。検眼部1は、左右の被検眼Eの眼前に配置され所定の偏光透過軸を有する偏光部材15L,15Rと、偏光透過軸が所定の第1の角度となる第1の位置、及び第1の角度とは異なる第2の角度となる第2の位置に、偏光部材15L,15Rを位置決めする位置決め部17L,17Rと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子を被検眼の眼前に選択的に配置することで前記被検眼の視機能を矯正可能とする検眼部を備えた検眼装置において、
前記検眼部は、
左右の前記被検眼の眼前に配置され、所定の偏光透過軸を有する偏光部材と、
前記偏光透過軸が所定の第1の角度となる第1の位置、及び前記第1の角度とは異なる第2の角度となる第2の位置に、前記偏光部材を位置決めする位置決め部と、
を備え、
前記偏光部材は、前記偏光透過軸が、前記検眼部を通して視認する視標表示部が有する偏光透過軸と一致するように、前記第1の角度及び前記第2の角度の何れか一方に位置決めされることを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
前記偏光部材の中心を回転軸として共に回転可能に前記偏光部材を保持する保持部を備え、
前記保持部は把持部を有し、前記把持部を把持して周方向へ移動させることで前記保持部を一方及び他方へ回転可能であり、
前記位置決め部は、前記第1の位置で前記把持部を係合し、前記保持部の一方への回転を規制する第1のストッパと、前記第2の位置で前記把持部を係合し、前記保持部の他方への回転を規制する第2のストッパと、を有することを特徴とする請求項1に記載の検眼装置。
【請求項3】
前記第1の位置から前記第2の位置までの前記偏光部材の回転角度が、45°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の検眼装置。
【請求項4】
前記第1の位置での左右の一方の前記偏光部材の前記偏光透過軸の前記第1の角度が45°であり、他方の前記偏光部材の前記偏光透過軸の前記第1の角度が135°であり、前記第2の位置での左右の一方の前記偏光部材の前記偏光透過軸の前記第2の角度が180°であり、他方の前記偏光部材の前記偏光透過軸の前記第2の角度が90°であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の検眼装置。
【請求項5】
前記偏光部材の前記偏光透過軸の方向を示すマーカを設けたことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の検眼ユニット内に、様々な光学素子が配置された複数のディスクを備え、各ディスクに保持された光学素子を、検査窓に切り換え配置して被検眼の屈折力を自覚的に検査する検眼装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような検眼装置では、立体視検査等を行う際には、偏光透過軸が互いに異なる偏光光を生じる左眼用の視標及び右眼用の視標を左右の被検眼に呈示し、左右の検眼窓に、各眼用の視標からの偏光光のみを透過する偏光部材を配置することで、左右の被検眼に左右眼用のそれぞれの視標のみを視認させて、検眼を行っている。検眼を適切に行うためには、視標からの偏光光の偏光方向に対応するように偏光部材の偏光透過軸の方向(角度)を適切に設定する必要がある。
【0003】
また、特許文献1に記載の発明では、ディスクを回転させる駆動手段等とは別個に、偏光部材を回転可能に保持する補助ディスクと、偏光部材を回転する駆動手段と、偏光部材を複数の所定の偏光方向で配置するための回転情報を記憶する記憶手段と、偏光部材の偏光透過軸の方向の切換信号を出力する切換信号出力手段と、該切換信号と記憶手段の回転情報とに基づいて駆動手段を制御する制御手段とを備えている。このため、特許文献1に記載の検眼装置は、構成が複雑で部品点数も多く、ユニットの容積や重量も増大していた。
【0004】
ところで、検眼装置は、視標表示部として液晶ディスプレイ等の電子表示デバイスを用いており、使用する電子表示デバイスの仕様等によって、偏光透過軸の方向が決まっている。このため、検眼装置の導入時や初期設定時に、使用する電子表示デバイスの偏光透過軸の方向に対応させて、偏光部材の偏光透過軸の方向を設定しておけば、その後は偏光部材の偏光透過軸の方向を変更する必要がない。
【0005】
このため、特許文献1に記載の検眼装置でも、導入時等に偏光部材の偏光透過軸の方向を設定してしまえば、その後は方向を変更する必要がない。その結果、駆動手段、記憶手段、切換信号出力手段、制御手段を作動させる機会がなくなり、複雑で効果なこれらの機構が無駄になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、被検眼に呈示する視標の偏光透過軸に対応させて、偏光部材の偏光透過軸の方向を、簡易かつ高精度に設定可能な眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の眼科装置は、複数の光学素子を被検眼の眼前に選択的に配置することで前記被検眼の視機能を矯正可能とする検眼部を備えた検眼装置において、前記検眼部は、左右の前記被検眼の眼前に配置され、所定の偏光透過軸を有する偏光部材と、前記偏光透過軸が所定の第1の角度となる第1の位置、及び前記第1の角度とは異なる第2の角度となる第2の位置に、前記偏光部材を位置決めする位置決め部と、を備え、前記偏光部材は、前記偏光透過軸が、前記検眼部を通して視認する視標表示部が有する偏光透過軸と一致するように、前記第1の角度及び前記第2の角度の何れか一方に位置決めされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成されることで、位置決め部によって、第1の位置又は第2の位置に偏光部材を位置決めすることで、透過させる視標の偏光透過軸と同じ方向となるように、偏光部材の偏光透過軸の方向を設定できる。したがって、視標の偏光透過軸に対応させて、偏光部材の偏光透過軸の方向を、簡易かつ高精度に設定可能な眼科装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る検眼装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る検眼装置の主要部分の側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る検眼装置のターレットの概略を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る検眼装置において、偏光部材を第1の位置に配置した状態を概略的に示す平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る検眼装置において、偏光部材を第2の位置に配置した状態を概略的に示す平面図である。
【
図6】指標表示装置のモニタの偏光透過軸を説明するための図であって、(a)は第1のモニタの偏光透過軸の説明図であり、(b)は第2のモニタの偏光透過軸の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の検眼装置の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る検眼装置は、被検眼に各種の視標を呈示し、その見え方に関する被検者からの応答に基づいて被検眼Eの視機能を検査する自覚式の検眼装置である。被検者Sが左右の被検眼Eを開放した状態で、斜位検査、融像検査、立体視機能検査等の両眼視機能の検査や、片眼ずつでの屈折力等の視機能の検査を行うことができる。
【0012】
図1、
図2に示すように、第1実施形態に係る検眼装置100は、検眼部1と、視標表示装置2と、コントローラ3と、検眼テーブル4と、を主に備えて構成される。検眼テーブル4の近傍には、被検者S用の椅子9aと、検者T用の椅子9bとが備えられている。
【0013】
なお、本明細書を通じて
図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者Sから見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(検眼部1から見て視標表示装置2の方向、奥行き方向)をZ方向とする。
【0014】
検眼テーブル4は、検眼部1の支持やコントローラ3の載置のための机である。検眼テーブル4には、長手方向に伸縮可能に支柱5が設けられている。この支柱5には、横方向に延びる支持アーム6が設けられている。この支持アーム6の、支柱5と反対側の先端部6aの下方に、支持部材7を介して検眼部1が吊り下げられている。また支持アーム6の先端部6aには、操作アーム8が設けられている。検者Tは、操作アーム8を操作することで、支持アーム6及び検眼部1を、支柱5の軸回り方向(矢印方向)に回動することができる。
【0015】
検眼部1は、左右の被検眼E(左眼EL,右眼ER)に対応するように、左右に一対設けられた左眼用の検眼ユニット10L,10Rを備えている。各検眼ユニット10L,10Rは、左右方向(X方向)にスライド可能に支持部材7に取り付けられ、相対接近及び離反が可能となっている。以下、「左眼用及び右眼用」を、単に「左右眼用」、又は「左右の」と省略することがある。
【0016】
左右眼用の検眼ユニット10L,10Rのハウジング10aの前方(被検眼E側)及び後方(視標表示装置2側)に、各々左右眼用の検眼窓11L,11Rが設けられている。検眼窓11L,11Rには、透明なカバー11aが嵌め込まれている。
【0017】
各検眼ユニット10L,10Rのハウジング10a内には、円盤状の複数のターレット14L,14Rが、回転可能に設けられている。複数のターレット14L,14Rは、駆動部13L,13Rによって回転される。
【0018】
複数のターレット14L,14Rには、周方向に沿って並んで複数の開口部14aが設けられ、各開口部14aに、光学素子12L,12Rが取り付けられている。これら複数の光学素子12L,12Rは、球面レンズ、円柱レンズ、プリズム等を含んでいる。ターレット14L,14Rが駆動部13L,13Rによって回転することで、複数の光学素子12L,12Rの周方向に並んだうちの一つが検眼窓11L,11Rに位置する。これにより、検眼部1では、複数の光学素子12L,12Rが左右の被検眼Eの眼前に選択的に配置され、被検眼Eの視機能を矯正可能となっている。
【0019】
駆動部13L,13Rは、例えば、モータやソレノイド等の駆動源、複数の歯車組やラック・アンド・ピニオン等の駆動力伝達機構等から構成される。駆動源は、コントローラ3を介して入力したプリズム度数や球面度数等を設定するための設定指令に基づいて駆動する。
【0020】
検眼部1は、複数の光学素子12L,12Rの一つとして、所定の偏光透過軸を有する一対の偏光部材15L,15Rを備えている。偏光部材15L,15としては、特に限定されることはなく、公知のものを使用することができる。例えば、所定の偏光透過軸を有する直線偏光を透過させる偏光フィルムを、板材に貼った偏光板を用いることができる。この一対の偏光部材15L,15Rは、偏光透過軸が互いに直交するように、検眼窓11L,11Rに配置される。
【0021】
また、検眼ユニット10L,10Rは、上記一対の偏光部材15L,15Rを保持する保持部16L,16Rと、偏光部材15L,15R及び保持部16L,16Rを位置決めする位置決め部17L、17Rと、を備えている。以下、保持部16L,16R及び位置決め部17L,17Rの構成について、
図2~
図5を参照しながら説明する。
【0022】
保持部16L,16Rは、円筒状の本体内に偏光部材15L,15Rが収容されている。保持部16L,16Rは、ターレット14L,14Rの開口部14aの一つに取り付けられている。保持部16L,16Rは、偏光部材15L,15Rとともに、偏光部材15L,15Rの中心(検眼窓11L,11Rを通る視標の光の光軸Iに平行な軸)を回転軸として、ターレット14に平行な面内で回転可能となっている。この回転によって、被検眼Eに対する偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の角度を変更させることができる。
【0023】
保持部16L,16Rは半径方向に突出する把持部161L,161Rを有している。よって、切り替え操作の操作者がこの把持部161L,161Rを把持して周方向において一方及び他方に移動させることで、偏光部材15L,15Rとともに保持部16L,16Rを一方及び他方に回転可能となっている。
【0024】
また、保持部16L,16Rの一端面には、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向を示すマーカMが付されている。このマーカMは、本実施形態では
図3、
図4に示すように、偏光透過軸に沿って点対称に設けた2つの丸印からなる。しかし、マーカMが、これに限定されることはなく、偏光透過軸の方向が分かればよく、適宜の形状、方法等で設けることができる。
図3、
図4には、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向のイメージを、矢印で示している。
【0025】
位置決め部17L、17Rは、第1のストッパ171L,171Rと、第2のストッパ172L,172Rと、を有している。第1のストッパ171L,171Rは、第1の位置P1で把持部161L,161Rを係合し、保持部16L,16Rの一方(反時計回り、第1の位置P1方向)へのそれ以上の回転を規制する。第2のストッパ172L,172Rは、第2の位置P2で把持部161L,161Rを係合し、保持部16L,16Rの他方(時計回り、第2の位置P2方向)へのそれ以上の回転を規制する。
【0026】
第1、第2のストッパ171L,171R,172L,172Rは、ターレット14L,14Rの一面の第1の位置P1及び第2の位置P2に隣接して、円柱状に突出して設けられている。
【0027】
第1の位置P1は、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向(X方向に対する角度)が、第1の角度となる位置である。第2の位置P2は、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向(X方向に対する角度)が、第2の角度となる位置である。本実施形態では、後述のように、偏光透過軸が45°及び135°の偏光フィルムが交互に設けられたモニタ20と、偏光透過軸が90°及び180°の偏光フィルムが交互に設けられモニタ20Aとに対応させて、偏光透過軸に切り替え可能としている。このため、左眼用の偏光部材15Lの偏光透過軸の第1の角度を45°、これと直交する右眼用の偏光部材15Rの偏光透過軸の第1の角度を135°としている。これに対して、右眼用の偏光部材15Rの偏光透過軸の第2の角度を180°(0°)、これと直交する右眼用の偏光部材15Rの偏光透過軸の第2の角度を90°としている。
【0028】
第1の位置P1は、
図4に示すように、12時の位置であり、第1のストッパ171L,171Rに把持部161L,161Rが係合したときに、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸が第1の角度となる位置である。これに対して、第2の位置P2は、第1の位置P1から時計回りに45°回転した位置であって、第2のストッパ172L,172Rに把持部161L,161Rが係合したときに、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸が第2の角度となる位置である。
【0029】
したがって、第1の位置P1と第2の位置P2との間で、保持部16L、16Rを45°だけ回転させることで、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸を、第1の角度と第2の角度に簡易かつ容易に切り替えることができる。また、従来のように切換信号等による電気的な切り替えやプログラムによる切り替えとは異なり、第1、第2のストッパ171L,171R,172L,172Rと把持部161L,161Rとの係合による機械的な切り替えであるため、構成が簡易となるとともに、第1、第2の角度に高精度に切り替え可能となる。
【0030】
本実施形態では、検眼ユニット10L,10Rのハウジング10a内に収納したターレット14L,14Rに保持部16L,16R及び位置決め部17L,17Rを設けている。このため、把持部161L,161Rを第1の位置P1又は第2の位置P2に移動させ、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸を第1の角度又は第2の角度に切り替えるには、ハウジング10aの一部を外して行う。
【0031】
なお、保持部16L,16R及び位置決め部17L,17Rが第1実施形態の構成に限定されることはなく、これらの一部がハウジング10aから外部に露出するように構成して、ハウジング10aを外すことなく、切り替え可能としてもよい。
【0032】
視標表示装置2は、
図2に示すように、検眼部1を介して被検眼Eの前方に配置される。視標表示装置2は、視標表示部としてのモニタ20を備え、その表示面(表示領域)20aに視標を表示することによって、被検眼Eに視標を呈示する。視標表示装置2は、コントローラ3からの制御信号を受けることによって、視力検査視標、赤緑検査視標、乱視検査視標、両眼視機能検眼視標等の視標をモニタ20の表示面20aに表示する。
【0033】
モニタ20は、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等の電子表示デバイスによって構成される。表示面20aは、ピクセル(画素)がアレイ状に配列されている。表示する視標に応じて、表示面20aの所定の領域に視標を表示することができる。
【0034】
また、本実施形態では、両眼視機能検眼視標を表示するべく、表示面20aに、画素1~数ラインごとに、左眼用と右眼用の偏光フィルムを配置している。
図6(a)に示すように、第1のモニタ20の表示面20aは、偏光透過軸が45°の偏光フィルムが配置された左眼用表示領域21Lと、偏光透過軸が135°の偏光フィルムが配置された右眼用表示領域21Rとが、交互に設けられている。
図6(b)に示すように、第2のモニタ20Aの表示面20aには、偏光透過軸が180°(0°)の偏光フィルムが配置された左眼用表示領域21Lと、偏光透過軸が90°の偏光フィルムが配置された左眼用表示領域21Lとが、交互に設けられている。
【0035】
このような構成のモニタ20,20Aでは、左眼用表示領域21Lに左眼用の視標Oを表示し、右眼用表示領域21Rに右眼用の視標Oを表示する。これにより、1つのモニタ20,20Aで、偏光透過軸が直交する左眼用と右眼用の視標Oを、左右の被検眼Eに呈示することができる。
【0036】
なお、
図6に示すモニタ20,20Aによって視標を呈示する構成に限定されることはなく、左眼用の偏光フィルムを全面に配置したモニタ(左眼用表示領域)と、右眼用の偏光フィルムを全面に配置したモニタ(右眼用表示領域)を備え、各々のモニタに左眼用、右眼用の視標を表示してもよい。または、1つのモニタを上下又は左右の領域に二分して、一方の領域に左眼用の偏光フィルムを配置して左眼用表示領域とし、他方のモニタに右眼用の偏光フィルムを配置して右眼用表示領域としもよい。これらの構成でも、それぞれ変更透過軸が直交する視標を被検眼Eに呈示することができる。なお、これらの構成の場合、左眼用表示領域及び右眼用表示領域からの各光を、プリズムやミラー等の偏向素子で偏向して左眼及び右眼に導く構成とすれば、自然視状態と同様の眼位での両眼視機能検査が可能となる。
【0037】
なお、表示面20aに表示する視標Oとしては、特に限定されることはなく、公知のものを用いることができ、例えば、十字、ランドルト環、スネレン視標、Eチャート、ひらがなやカタカナ等の文字、動物や指等の絵等が好適に挙げられる。また、両眼視機能検眼視標の場合は、両眼検査用の特定の図形や風景画や風景写真等であってもよい。また、視標Oは静止画でも動画でもよい。モニタ20,20A(視標表示部)として、LCD等の電子表示デバイスを用いているため、所望の形状及び形態の視標Oを表示することができ、多様な両眼視機能検眼が可能となる。
【0038】
コントローラ3は、検者Tが検眼装置100を操作するために用いられる。コントローラ3は、検者Tによる操作を受け付け、この操作に応じた制御信号を検眼部1又は視標表示装置2又はこれら双方へ出力する。コントローラ3と検眼部1及び視標表示装置2とは、一般的な通信インターフェイス(I/F)によって、通信可能に接続される。コントローラ3は、この通信I/Fを介して、制御信号を検眼部1及び視標表示装置2へ出力する。
【0039】
コントローラ3は、CPU、RAM、ROM等を有するノート型パソコンから構成される。コントローラ3は、検眼装置100全体の動作を制御する制御部30と、検者Tからの操作指示を受け付ける操作部31と、検眼パラメータ、検査情報又は検査結果等を表示する表示部32と、などを有して構成される。
【0040】
操作部31として、例えば、キーボードやマウスを備えている。また、表示部32は、LCDやEL等により構成することができる。表示部32がタッチパネル式であれば、表示部32の表示面が操作部31としても機能する。操作部31は、表示面20aに表示する各種視標の選択指示、プリズム度数、球面度数(S)、円柱度数(C)、軸角度(A)、瞳孔間距離(PD)、加入度(ADD)等を設定するための指示、被検眼Eを左眼EL、右眼ER又は両眼に設定するため指示等を受け付ける。
【0041】
なお、コントローラ3がノート型パーソナルコンピュータに限定されることはなく、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)で構成することもできる。また、コントローラ3が、検眼専用のコントローラであってもよい。
【0042】
制御部30は、CPUと、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶部と、を有して構成される。記憶部には、検眼装置100の各部の制御を行うためのコンピュータプログラムが予め記憶される。制御部30は、このコンピュータプログラムを、例えばRAM上に展開して実行することにより、検眼装置100の動作を統括的に制御する。
【0043】
制御部30は、操作部31で受け付けた操作指示に応じて、検眼パラメータや検査情報を表示部32に表示させる。また、タッチパネル式の表示部32の場合は、操作キーなどを表示部32に表示させる。また、制御部30は、操作指示に応じて、駆動部13L,13Rを駆動してターレット14L,14Rを回転させ、検眼窓11L,11Rに配置される光学素子12L,12Rを切り替えて、レンズ度数等を変更する。
【0044】
また、制御部30は、操作部31で受け付けた呈示対象視標の選択指示によって選択された視標を、表示面20aに表示するように視標表示装置2を制御する。この選択指示により、両眼視機能検眼視標の表示が選択された場合、制御部30は、表示面20aの左眼用表示領域21L及び右眼用表示領域21Rに、左眼用及び右眼用の視標Oをそれぞれ表示する。このとき、制御部30は、駆動部13L,13Rを駆動して対応するターレット14L,14Rを回転させ、左右の被検眼Eの前方であって検眼窓11L,11Rに偏光部材15L,15Rを配置する。
【0045】
上述のような構成の第1実施形態の検眼装置100における、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向の切り替え操作の一例を説明する。この切り替え操作は、検眼装置100の導入時や初期設定時等に一度行えばよい。
【0046】
まず、検眼ユニット10L,10Rのハウジング10aの一部を取り外す。検眼装置100が第1のモニタ20を備える場合は、露出した把持部161L,161Rを把持して、保持部16L,16Rを反時計回りに回転させ、把持部161L,161Rを第1の位置P1で第1のストッパ171L,171Rに係合させる。これにより、左眼用、右眼用の各偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の角度が45°と135°(第1の角度)に各々切り替えられる。切り替えが終わったら、検眼ユニット10L,10Rに、取り外したハウジング10aの一部を装着する。
【0047】
一方、検眼装置100が第2のモニタ20Aを備える場合、又は第1のモニタ20を第2のモニタ20Aに交換した場合の切り替え操作について説明する。この場合は、把持部161L,161Rを把持して、保持部16L,16Rを時計回りに回転し、把持部161L,161Rを第2の位置P2で第2のストッパ172L,172Rに係合させる。これにより、左眼用、右眼用の各偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の角度が180°(0°)と90°(第2の角度)に各々切り替えられる。
【0048】
以上の切り替え操作により、検眼窓11L,11Rに偏光部材15L,15Rを配置したときに、左眼用、右眼用の偏光部材15L,15Rの偏光透過軸と、第1のモニタ20(又は第2のモニタ20A)に表示された左眼用、右眼用の各視標Oからの光の偏光透過軸とを一致させることができる。
【0049】
そして、例えば立体視機能の検査の際には、検者Tがコントローラ3を操作して、立体視機能用の視標Oの呈示を指示する。この指示に従って、制御部30が視標表示装置2を制御して、モニタ20の表示面20aの左眼用及び右眼用表示領域21L,21Rに、左眼用及び右眼用の視標Oをそれぞれ表示する。
【0050】
また、制御部30の制御により、駆動部13L,13Rが駆動され、対応するターレット14L,14Rが回転する。これにより、左眼用及び左眼用の検眼窓11L,11Rに、左眼用及び左眼用の偏光部材15L,15Rが各々配置される。
【0051】
したがって、被検者Sは、左右の検眼窓11L,11R及び偏光部材15L,15Rを通して、視標表示装置2から呈示される左眼用及び右眼用の偏光透過軸が直交する光に偏光された視標Oの像を注視することができる。そして、視標Oの見え方などに応じて、ターレット14L,14Rを回転させて、偏光部材15L,15Rに重ね合わせて、光学素子12L,12Rを検眼窓11L,11Rに配置していくことにより、斜位等の被検眼Eの矯正を行うことができる。
【0052】
また、ターレット14L,14Rの回転により、偏光部材15L,15Rを、検眼窓11L,11Rから退避させることで、両眼視機能検眼等以外の各種検査も行うことができる。
【0053】
以上説明したように、第1実施形態に係る検眼装置100は、複数の光学素子12L,12Rを被検眼Eの眼前に選択的に配置することで被検眼Eの視機能を矯正可能とする検眼部1を備える。検眼部1は、左右の被検眼Eの眼前に配置され所定の偏光透過軸を有する偏光部材15L,15Rと、偏光透過軸が所定の第1の角度となる第1の位置P1、及び第1の角度とは異なる第2の角度となる第2の位置P2に、偏光部材15L,15Rを位置決めする位置決め部17L,17Rと、を備える。
【0054】
以上の構成により、位置決め部17L,17Rによって、第1の位置P1又は第2の位置P2に偏光部材15L,15Rを位置決めすることで、透過させる視標Oの偏光透過軸の方向と一致するように、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向を設定できる。したがって、被検眼Eに呈示する視標Oの偏光透過軸に対応させて、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向を、簡易かつ高精度に設定可能な検眼装置100を提供できる。
【0055】
また、第1実施形態では、偏光部材15L,15Rの中心(光軸I)を回転軸として共に回転可能に偏光部材15L,15Rを保持する保持部16L,16Rを備えている。また、保持部16L,16Rは把持部161L,161Rを有し、各把持部161L,161Rを把持して周方向へ移動させることで保持部16L,16Rを一方及び他方へ回転可能である。位置決め部17L,17Rは、第1の位置P1で把持部161L,161Rを係合し、保持部16L,16Rの一方への回転を規制する第1のストッパ171L,171Rと、第2の位置P2で把持部161L,161Rを係合し、保持部16L,16Rの他方への回転を規制する第2のストッパ172L,172Rと、を有している。このように、第1、第2のストッパ171L,171R,172L,172Rと把持部161L,161Rとの係合によって機械的に位置決め可能であるため、従来に比べて検眼部1の構成が簡易となり、操作も容易である。さらに、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸を、第1、第2の角度に高精度に切り替え可能となる。
【0056】
また、第1実施形態では、第1の位置P1から第2の位置P2までの偏光部材15L,15Rの回転角度が、45°である。このため、従来のように偏光部材を360°方向に自在に回転可能とした場合と比較して、第1実施形態は、必要最小限の回転のみで、高精度に位置決めが可能となり、回転のずれなども効果的に抑制して、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向の切り替えを、高効率かつ高精度に行うことができる。
【0057】
また、第1実施形態において、第1の位置P1での左右の偏光部材15L,15Rの一方の偏光透過軸の第1の角度が45°であり、他方の偏光透過軸の第1の角度が135°である。また、第2の位置P2での左右の偏光部材15L,15Rの一方の偏光透過軸の第2の角度が180°であり、他方の偏光透過軸の第2の角度が90°である。よって、市場に出回っている多くのモニタに適用可能な検眼装置100を提供することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向を示すマーカMを設けている。これにより、偏光部材15L,15Rの偏光透過軸の方向が一目でわかり、操作者が方向を眼で確認しつつ、より容易に切り替え操作を行うことができる。
【0059】
以上、本発明の眼科装置を実施形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0060】
例えば、上記第1実施形態では、把持部161L,161Rと第1、第2のストッパ171L,171R,172L,172Rとの係合によって、位置決めを行っている。これに対して、他の異なる実施形態として、保持部16L,16Rに突没自在な係合突起を設け、この係合突起を係合する係合凹部を、ターレット14L,14Rの第1、第2の位置P1,P2に設けた構成が挙げられる。この構成では、係合突起が引っ込むことで、保持部16L,16Rを容易に回転させることができ、第1、第2の位置P1,P2では、係合突起が突出して係合凹部に係合し、それ以上の回転が規制される。したがって、偏光部材15L,15Rの位置決めを、簡易かつ高精度に行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態では、表示面20aに表示される直線偏光の視標Oを透過させる偏光部材15L,15Rとしているが、視標Oからの光が直線偏光に限定されるものではない。表示面20aに円偏光用の偏光フィルムを配置し、左右眼で回転方向が異なる円偏光の視標Oを呈示し、この円偏光の視標Oに対応する偏光透過軸を有する偏光部材15L,15Rとしてもよい。円偏光とすることで、検眼ユニット10L,10Rが傾いた場合等でも、偏光状態が維持されることから、クロストークが起こりにくく、より安定した検査を行うことができる。
【0062】
また、LCD等の電子表示デバイスからなるモニタ20,20Aから出射される光は偏光している。そのため、左眼用及び右眼用の一方の表示領域には偏光フィルムを何ら配置せずに当該表示領域からの光を一方の偏光部材に導き、他方の表示領域には一例としてλ/2位相差板からなる偏光フィルム等を配置することで、一方の表示領域の光に対して偏光透過軸が90°回転した光を得て、他方の偏光部材に導くようにしてもよい。
【0063】
また、上記各実施形態では、視標表示部として、LCDやEL等の電子表示デバイスから構成されるモニタ20,20Aを用いているが、これに限定されるものではない。例えば、紙や樹脂等に各種視標が印刷等された視標表示部を用い、偏光フィルム等によって、左眼用と右眼用の異なる偏光透過軸を有する視標を得てもよい。消費者等のニーズに応じた様々なタイプの視標表示装置及び検眼装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 検眼部 12L,12 光学素子 15L,15R 偏光部材
16L,16R 保持部 161L,161R 把持部
17L,17R 位置決め部 171L,171R 第1のストッパ
172L,172R 第2のストッパ 100 検眼装置
E 被検眼 M マーカ P1 第1の位置 P2 第2の位置