(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115286
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20230810BHJP
C02F 3/20 20230101ALI20230810BHJP
【FI】
C02F3/12 J
C02F3/20 D
C02F3/12 A
C02F3/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106530
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2019050172の分割
【原出願日】2019-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、複数の水処理系統での散気処理において、散気部で必要な気体量を、送風機から適正範囲で供給することで、特に省エネルギー化が可能となる散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、複数の水処理系統ごとに設けられた散気部に対し、主流路を介した主送風機と、主流路から分岐した副流路を介した副送風機とを備える散気システム及びその運転方法を提供する。また、複数の水処理系統ごとに設けられた散気部と既設主送風機との間に副流路を介して副送風機を合流させ、最大風量が既設主送風機よりも小さい主送風機に交換する送風機の更新方法を提供する。
これらによれば、散気部に対し主送風機と副送風機を設けることで、散気部に対して必要な気体量を、送風機から適正範囲で供給することができ、省エネルギー化が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水処理系統ごとに設けられた散気部と、
前記散気部へ気体を供給する主送風機と、
前記主送風機に接続される主流路と、
前記主流路から分岐し、前記散気部に接続される副流路と、
前記副流路に、風量可変で気体を供給する副送風機と、を備えることを特徴とする、散気システム。
【請求項2】
前記主送風機の最大風量よりも、前記副送風機の最大風量の方が低風量であることを特徴とする、請求項1に記載の散気システム。
【請求項3】
前記散気部で必要とされる風量は、前記主送風機から供給される風量よりも多く、かつ前記主送風機及び前記副送風機から供給される風量以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の散気システム。
【請求項4】
複数の水処理系統ごとに設けられた散気部を備えた散気システムの運転方法であって、
前記散気部全体へ気体を供給する主送風工程と、
前記散気部ごとに風量可変で気体を供給する副送風工程とを備えることを特徴とする、散気システムの運転方法。
【請求項5】
送風機の更新方法であって、
主流路から分岐し、複数の水処理系統ごとに設けられた散気部と既設主送風機との間の副流路に、副送風機の流路を合流させる合流ステップと、
最大風量が既設主送風機よりも小さい主送風機に交換する交換ステップと、を備えることを特徴とする送風機の更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気装置を備える散気システム及び散気システムを運転する方法に関するものである。更に詳しくは、排水等を水処理するための散気槽に用いる散気装置を備える散気システム及び散気システムの運転方法に関するものである。
また、本発明は、散気システムに用いる送風機の更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理方法の一つとして、水処理装置に散気槽を設け、この散気槽内に散気装置を設置し、この散気装置により空気などの気体を微細な気泡として被処理水中に分散する方法が知られている。散気装置は、送風機により供給された気体を、散気部を介して微細な気泡に変えて散気槽内に供給するものであり、気体が空気や酸素の場合には、被処理水中の溶存酸素量を高めることができるものである。
【0003】
散気装置を用いた水処理において、散気装置の駆動に係る消費電力は、処理全体における消費電力の中でも高い割合を占めている。また、散気装置により供給される気体量は、水処理の処理効率に影響を与えるものである。特に、好気性微生物を用いた生物処理では、散気装置により供給される空気量(酸素供給量)が微生物の活性に大きく影響することが知られている。
したがって、散気装置を用いた水処理では、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上の観点から、散気装置により散気槽へ供給される気体量を適正範囲とすることが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、被処理水の導入とともに空気を供給して好気性生物処理を行う散気槽(曝気槽)を備え、硝酸計、アンモニア計、溶存酸素計、水温計の4つの測定値に基づき、散気槽に空気を供給する送風機(送風設備)の制御を行う送風量制御器を備える排水処理装置が記載されている。また、特許文献1には、送風量制御としてインレットベーンを取り付けた送風機を用いることや、複数の送風機を設けて台数制御を行うことなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、散気装置を用いた水処理において、インレットベーンを取り付けた送風機を用いることや、複数の送風機を設けて台数制御を行うことで送風機の送風量制御を行い、散気装置から供給される気体量の制御を行うことは知られている。
【0007】
一方、水処理における散気装置は水中に配置されるものであるため、散気装置から散気槽内に気体を供給するためには、水圧よりも高い圧力で送風する必要がある。つまり、水処理における散気装置においては、送風機からの圧力(以下、「送風圧力」という。)を維持した上で、さらに風量調整を行う必要がある。
しかし、特許文献1には、送風圧力の減少幅を考慮して送風量を設定することは記載されているが、送風圧力を維持した状態で送風量を制御することについては記載されていない。特許文献1に記載されるように、送風圧力の減少幅を考慮した送風量の制御を行う場合、実質的に制御可能な送風量範囲が狭くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、複数の水処理系統に対して散気装置を設ける場合において、送風機で制御可能な送風量範囲が狭いと、散気部ごとに対して送風機から適正量の気体を供給することが困難となるため、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が実現できないという問題がある。
【0009】
さらに、近年、散気装置の散気部側については、高効率化が進んでいる。しかし、送風機側で制御可能な送風量範囲が狭い場合、高効率の散気部を用いても送風機から適正量の気体を供給することができず、特に省エネルギー化が必ずしも実現できるものではないという問題がある。
【0010】
したがって、散気装置を用いた水処理では、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上の観点から、散気槽へ供給される気体量を適正範囲とするために、必要な気体量を送風機から適切に供給することが求められている。また、散気装置を用いた水処理における省エネルギー化及び処理効率の維持・向上の観点から、散気装置を更新する際には、散気部に対して必要な気体量を送ることができるように送風機側も更新することが必要となる。
【0011】
本発明の課題は、複数の水処理系統ごとに散気を行う水処理において、散気部に対して必要な気体量を、送風機から適正範囲で供給できるようにすることで、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、水処理系統ごとに散気部を設ける散気システムにおいて、複数の水処理系統に対して一括で送風する主送風機と、水処理系統ごとに送風する副送風機とを設けることで、各水処理系統における散気部の必要気体量に対する送風量制御が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法である。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の散気システムは、複数の水処理系統ごとに設けられた散気部と、散気部へ気体を供給する主送風機と、主送風機に接続される主流路と、主流路から分岐し、散気部に接続される副流路と、副流路に、風量可変で気体を供給する副送風機とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の散気システムによれば、散気部全体に気体を供給する主送風機に対し、散気部ごとに副送風機を並列に接続することで、散気部では主送風機と副送風機から気体の供給が行われる。すなわち、主送風機により送風に必要な送風圧力を維持した状態で、副送風機により送風量を制御することができ、送風機側で制御可能な送風量範囲を広げるとともに、送風量の微調整が可能となる。これにより、散気部に対して必要な気体量を、送風機から適正範囲で供給することができ、散気システムの省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる。
【0015】
また、本発明の散気システムの一実施態様としては、主送風機の最大風量よりも、副送風機の最大風量の方が低風量であるという特徴を有する。
この特徴によれば、主送風機に対して副送風機を小型化することができる。これにより、散気システムの省エネルギー化をより一層行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明の散気システムの一実施態様としては、散気部で必要とされる風量は、主送風機から供給される風量よりも多く、かつ主送風機及び副送風機から供給される風量以下であるという特徴を有する。
この特徴によれば、散気部で必要な風量について、主送風機のみで満たすものとせず、副送風機により制御可能な送風量範囲とすることにより、送風量の微調整に係る精度がより一層向上する。また、散気部で必要な風量を主送風機及び副送風機で満たすものとするため、主送風機及び副送風機をそれぞれ小型化することができる。これにより、散気システムの省エネルギー化及び処理効率の維持・向上がより一層可能となる。
【0017】
上記課題を解決するための本発明の散気システムの運転方法は、複数の水処理系統ごとに設けられた散気部を備えた散気システムの運転方法であって、散気部全体へ気体を供給する主送風工程と、散気部ごとに風量可変で気体を供給する副送風工程とを備えるという特徴を有する。
本発明の散気システムの運転方法によれば、散気部全体に気体を供給する主送風工程に、散気部ごとに風量可変の副送風工程を加えることで、主送風工程により送風に必要な送風圧力を維持した状態で、副送風工程により送風量を制御することができ、送風時に制御可能な送風量範囲を広げるとともに、送風量の微調整が可能となる。これにより、散気部に対して必要な気体量を適正範囲で供給することができ、散気システムの省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明の送風機の更新方法は、主流路から分岐し、複数の水処理系統ごとに設けられた散気部と既設主送風機との間の副流路に、副送風機の流路を合流させる合流ステップと、最大風量が既設主送風機よりも小さい主送風機に交換する交換ステップとを備えるという特徴を有する。
本発明の送風機の更新方法によれば、副送風機を用いることで、散気システム全体を停止することなく、かつ散気システムの処理能力を低下させることなく、既設主送風機よりも最大風量が小さい主送風機への交換を効果的に行うことが可能となる。また、更新後の散気システム全体の送風機(主送風機及び副送風機)の最大風量を、散気部で必要な気体量に合わせたものとすることが容易となる。これにより、散気システムの省エネルギー化及び処理効率の維持・向上がより一層可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の水処理系統ごとに散気を行う水処理において、散気部に対して必要な気体量を、送風機から適正範囲で供給できるようにすることで、省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施態様の散気システムを示す概略説明図である。
【
図2】本発明の実施態様の散気システムにおける散気部の構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の実施態様の散気システムの運転制御に係るフロー図である。
【
図4】本発明の実施態様の主送風機の更新方法に係る工程の一つを示すフロー図である。
【
図5】本発明の実施態様の主送風機の更新方法に係る工程の一つを示すフロー図である。
【
図6】本発明の実施態様の主送風機の更新方法に係る工程の一つを示すフロー図である。
【
図7】本発明の実施態様の主送風機の更新方法に係る工程の一つを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する散気システムの構造については、本発明に係る散気システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、実施態様に記載する散気システムの運転方法及び送風機の更新方法については、本発明に係る散気システムの運転方法及び送風機の更新方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気を伴う水処理に係るものである。散気を伴う水処理としては、特に限定されないが、例えば、河川水、地下水、雨水などの原水に対する水質改善に係る上水処理のほか、工場排水や生活排水(下水)などの排水処理などが挙げられる。特に、排水等の被処理水を活性汚泥により生物処理する水処理に対し、本発明を好適に利用することができる。
【0023】
[実施態様]
(散気システム)
図1は、本発明の実施態様の散気システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る散気システム1は、
図1に示すように、複数の散気槽2と、散気槽2ごとに設けられた散気部3と、主送風機4と、主送風機4と接続される主流路5と、主流路5から分岐し、散気部3に接続される副流路6と、副流路6上に設けられる副送風機7とを備えている。主送風機4は、主流路5及び副流路6を介して各散気槽2の散気部3に気体を供給する。また、副送風機7は、副流路6を介して、散気槽2の散気部3に気体を供給する。
本実施態様の散気システム1では、副流路6ごとに1つの水処理系統Sを形成しているものとし、
図1には、2つの水処理系統S1及びS2を備えるものについて示している。また、以下の説明は、散気システム1が2つの水処理系統S1及びS2を備えているものについて説明する。なお、水処理系統Sの数についてはこれに限定されるものではなく、被処理水Wの処理量などに基づき、適宜選択することができるものである。
【0024】
散気槽2は、被処理水Wを貯留し、散気を行うためのものである。なお、
図1では、2つの散気槽(散気槽2A及び散気槽2B)を示している。
散気槽2としては、散気槽2内部に散気部3を備え、被処理水Wに対して散気を行うものであれば特に限定されない。例えば、散気槽2内に生物処理に用いられる各種微生物や活性汚泥を収容した生物処理槽とすることや、被処理水WのpH調整槽とすることなどが挙げられる。
また、散気槽2は、1つの区画のみからなるものであってもよく、散気槽2内を複数の区画に区分するものであってもよい。
【0025】
散気部3は、被処理水Wに対し気体を供給するためのものであり、各散気槽2(散気槽2A及び散気槽2B)内にそれぞれ設けられている。なお、
図1では、散気部3Aは、散気槽2Aに対して設けられたものを示しており、散気部3Bは、散気槽2Bに対して設けられたものを示している。
散気部3としては、微細な気泡を発生させ、被処理水Wに対し気体を供給することができるものであれば特に限定されない。例えば、散気板や散気管からなる散気体を備えるものなどが挙げられる。
【0026】
また、散気部3の規模、配置及び設置方法については特に限定されない。散気部3の規模や配置については、例えば、散気槽2の規模や、散気システム1として必要な処理効率等に応じ、散気部3の規模や配置範囲を定めることなどが挙げられる。また、散気部3の設置方法については、例えば、散気部3自体に散気槽2の底部あるいは側面に設置可能な構造を設けることや、散気槽2の底部あるいは側面に散気部3を固定するための構造を設けることなどが挙げられる。
【0027】
本実施態様の散気部3の一例について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施態様の散気システムにおける散気部の概要説明図を示す。
散気部3は、
図2に示すように、副流路6から分岐したライザー管31を介して気体が供給されるヘッダー管32と、ヘッダー管32の軸線方向に沿って配置され、ヘッダー管32から気体が供給される複数の散気体33を有する散気ユニット34を備えている。
【0028】
散気体33は、ヘッダー管32から供給された気体を微細気泡にして被処理水W中に拡散させる構造を有するものである。
散気体33としては、
図2に示すように、気体が通過する微細な散気孔を有するメンブレンが巻かれた管状部材からなり、微細気泡を発生させることができる超微細気泡式散気管が挙げられるが、これに限定されるものではない。散気体33の他の例としては、多孔質の合成樹脂又はセラミックからなる散気筒や、多数のスリットを設けたフレキシブルチューブのような管状部材からなる散気管などが挙げられる。また、散気体33は、管状部材に限定されるものではなく、例えば、角型、丸型などの板状部材からなる散気板であってもよい。
【0029】
散気部3内の散気ユニット34の数は特に限定されず、散気槽2の規模や、散気システム1として必要な処理効率に応じて適宜選択することができる。例えば、散気部3は、1つの散気ユニット34からなるものとすることや、複数の散気ユニット34を備えるものとすることが挙げられる。なお、
図1には、散気槽2内に、散気部3として2つの散気ユニット34を有するものを示しているが、これに限定されるものではない。
【0030】
主送風機4は、複数の散気槽2に対して気体を供給するためのものであり、
図1に示すように、主流路5を介し、各散気槽2A,2Bに気体を供給する。
【0031】
主送風機4から供給される気体は、被処理水Wに対する散気の種類によって選択することができ、例えば、空気、酸素、窒素などが挙げられる。
【0032】
主送風機4としては、気体を圧送することができるものであれば特に限定されない。なお、本発明において、「送風機」とは、送風機及び圧縮機を含むものである。
本実施態様の主送風機4としては、散気槽2内の水圧と同程度、あるいはそれ以上の圧力上昇が可能なものが好ましく、例えば、吐出圧力が10kPa以上(圧力比1.1以上)のブロワなどを用いることが挙げられる。
【0033】
主送風機4は、1台の送風機からなるものであってもよく、複数の送風機を並列に設けたものであってもよい。
【0034】
散気システム1内の制御対象を減らし、風量制御を容易とするためには、主送風機4から供給される風量は一定値となるようにすることが好ましい。したがって、主送風機4としては、少なくとも風量を一定にした状態で連続運転が可能なものであれば特に限定されず、風量が一定値に固定されたものであってもよく、風量可変のものであってもよい。
【0035】
副送風機7は、散気部3に気体を供給するためのものであり、
図1に示すように、主流路5から分岐した副流路6を介し、散気槽2ごと(水処理系統Sごと)に設けられる。なお、
図1では、副送風機7Aは、副流路6Aを介し散気槽2Aに対して設けられたものを示しており、副送風機7Bは、副流路6Bを介し散気槽2Bに対して設けられたものを示している。
【0036】
副送風機7から供給される気体は、通常、主送風機4から供給される気体と同一とすることが挙げられるが、これに限定されるものではなく、主送風機4から供給される気体と異なるものとしてもよい。例えば、散気槽2において空気よりも酸素含有量の高い気体の供給が必要な場合、主送風機4からは空気を供給し、副送風機7からは酸素を供給することで、散気槽2で必要な酸素含有量を有する気体を供給するとともに、酸素の使用量を抑制し、コストを低減することが可能となる。
【0037】
副送風機7としては、主送風機4と同様に、気体を圧送することができるものであれば特に限定されない。また、副送風機7としては、風量が可変であるものを用い、散気部3に供給する風量を変動させることができるものとする。これにより、主送風機4から供給された風量をベースとし、副送風機7で風量の調整を行い、散気部3で必要とする風量に応じた気体の供給を行うことが可能となる。
【0038】
副送風機7の風量を可変する手段は特に限定されない。例えば、副送風機7の吐出弁の開度調整やインレットベーンの開度調整を制御する制御部71を設けることが挙げられる。なお、制御部71では、副送風機7から供給する風量に係るデータを直接入力されるものであってもよく、副送風機7から供給する風量に関連したパラメータを入力することで副送風機7から供給する風量の演算を行うものとしてもよい。また、制御部71では、入力結果又は演算結果に基づき、開閉スイッチまたはインバータ等により吐出弁の開度調整やインレットベーンの開度調整を行うことなどが挙げられる。
【0039】
ここで、散気部3に供給される風量は、主送風機4からの風量と副送風機7からの風量の和となることから、主送風機4により一定程度の風量が供給されていれば、副送風機7は散気部3に供給する風量の微調整を行うことができる能力を有するものであればよく、主送風機4と同程度の能力を有する必要はない。したがって、副送風機7の最大風量は、主送風機4の最大風量よりも低いものとすることが好ましい。これにより、副送風機7のランニングコストを低減し、かつ省エネルギー化を行うことができるため、散気システム1a全体の省エネルギー化が可能となる。
【0040】
また、主送風機4からは一定程度の風量が供給されることが好ましいが、散気部3で必要とされる風量を主送風機4だけで供給可能とした場合、主送風機4から供給される風量を調整する必要があるため、風量制御が複雑になる。したがって、散気部3で必要とされる風量は、主送風機4から供給される風量よりも多く、かつ主送風機4及び副送風機7から供給される風量以下とすることが好ましい。これにより、主送風機4から供給される風量は一定とし、副送風機7により風量調整を行うものとすることができ、風量制御を容易にするとともに、風量の微調整に係る精度がより一層向上する。また、散気部3で必要とされる風量を、主送風機4及び副送風機7によって満たすものとするため、主送風機4及び副送風機7をそれぞれ小型化することができ、散気システム1a全体の省エネルギー化が可能となる。
【0041】
散気部3で必要とされる風量は、散気槽2や散気部3の設計上、あらかじめ定めるものとしてもよく、散気槽2内での処理効率等に応じてその都度設定するものとしてもよい。
本実施態様の散気システム1には、散気部3で必要とされる風量を設定するための風量設定手段を設けるものとしてもよい(不図示)。風量設定手段としては、例えば、散気槽2内に散気槽2内での被処理水Wの処理効率に係るパラメータを検出する各種検出器を設けるとともに、各種検出器の検出結果に基づき、散気部3で必要とされる風量を演算する演算部を設けることなどが挙げられる。各種検出器としては、例えば、DO計、アンモニア計、pH計、水温計などが挙げられる。
また、副送風機7に設けた制御部71に、風量設定手段の演算結果を自動又は手動で入力し、副送風機7の自動制御又は作業員による手動制御を行うものとしてもよい。
【0042】
(散気システムの運転方法)
図3を参照して、散気システムの運転制御例について説明する。
図3は、本実施態様における散気システムの運転制御に係るフロー図である。なお、
図3における散気システムの装置構成及び説明については
図1と同様である。また、
図3内の太線の矢印は、気体の流れを示すものである。
【0043】
まず、各散気槽2A、2Bに設けられた散気部3A、3Bで必要とされる風量QRA、QRB(以下、「必要風量QRA」、「必要風量QRB」という。)を決定する。必要風量QRA、QRBは、設計上定められる値であってもよく、風量設定手段により設定されるものであってもよい。
【0044】
次に、主送風機4から主流路5を介し、各散気槽2A及び2Bに気体を供給する(主送風工程)。このとき、主送風機から供給される風量Q1は、必要風量QRA、QRBよりも小さいものとする。
また、同時に副送風機7から副流路6を介して、各散気槽2A及び2Bに設けられた散気部3A及び3Bに気体を供給する(副送風工程-1)。このとき、散気槽2Aでは、散気部3Aの必要風量QRAからQ1を減算した風量Q2Aを、散気槽2Aに設けられた副送風機7Aから供給する風量とする。また、散気槽2Bでは、散気部3Bの必要風量QRBからQ1を減算した風量Q2Bを、散気槽2Bに設けられた副送風機7Bから供給する風量とする。これにより、各散気部3A及び3Bの必要風量QRA、QRBごとに適正な風量を供給することができる。
さらに、散気槽2A及び2B内の処理状況の変化に伴い、各散気部3A及び3Bの必要風量QRA、QRBが変化した場合、主送風機から供給される風量Q1は一定のまま、それぞれの副送風機7A又は7Bの風量Q2A又はQ2Bを変化させることで、必要風量QRA、QRBを満たすものとする(副送風工程-2)。これにより、必要風量QRA、QRBに対して常に適正な風量を供給することが可能となる。
【0045】
本実施態様の散気システム及び散気システムの運転方法により、散気を伴う水処理において、送風機によって制御可能な送風量範囲を広げ、散気部に対して必要な気体量を適切に送風機から供給できるようにすることで、散気システム全体の省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる。
【0046】
(送風機の更新方法)
本実施態様における送風機の更新方法は、散気部3の高効率化に伴い、適正な風量を供給するための送風機4の更新を、散気システム全体を停止することなく効果的に行うものである。また、送風機4の更新後は本実施態様における散気システム1と同様の効果を発揮する散気システムを構築するものである。
【0047】
以下、
図4~
図7を参照し、本実施態様における送風機の更新方法について説明する。
図4~
図7は、主送風機の更新方法に係る工程を示すフロー図である。
図4~
図7内の四角囲いの数字は、説明のために仮定した送風機の最大風量又は散気部で必要とされる風量を示すものである。
なお、
図1に示した散気システムと同様の構造及び説明については省略する。また、
図5~
図7においては、
図4で説明した構成の一部を省略している。
【0048】
図4に示すように、更新前の散気システム10aは、複数の処理系統S3~S5ごとに設けられた散気槽2C~2Eと、既設主送風機4A~4Cを備えている。既設主送風機4A~4Cは並列に配置されており、主流路5を介し、散気槽2C~2E内の散気部3C~3Eに気体を供給している。また、散気部3C~3Eは、それぞれ主流路5から分岐した副流路6C~6Eに接続されている。ここで、既設主送風機4A~4Cの最大風量をそれぞれ150(m
3/min)とし、散気部3C~3Eの必要風量をそれぞれ100(m
3/min)としている。なお、以下で説明する
図5~
図7では、処理系統S3~S5及び散気槽2C~2Eについては図示を省略している。
【0049】
まず、第1段階として、
図4に示すように、既設主送風機4Cを撤去し、散気部3Cに接続する副流路6C上に、副送風機7Cの流路を合流させる(合流ステップ-1)。なお、このとき、副送風機7Cの最大風量を50(m
3/min)としている。そして、散気部3Cを、必要風量が70(m
3/min)である高効率の散気部3Fに交換する。
ここで、一般的に安定した散気を継続して行うためには、送風機の最大風量の合計が散気部の必要風量の合計を超えることが好ましい。しかし、例えば、単に既設主送風機4Cを撤去した場合では、既設主送風機4A及び4Bの最大風量の合計が、散気部3C~3Eの必要風量の合計を超えないため、散気システム10a全体を一度停止する必要がある。一方、
図4に示すように、副送風機7Cを設けることで、送風機の最大風量の合計が散気部の必要風量の合計を超えるため、既設主送風機4Cの撤去及び散気部3Cの更新をスムーズに行うことが可能となる。また、撤去した主送風機4Eよりも最大風量が小さい副送風機7Cを設けることで、散気システム10a全体として省エネルギー化が可能となる。
【0050】
また、第2段階として、
図5に示すように、既設主送風機4Bを撤去し、既設主送風機4Bよりも最大風量が小さい主送風機4Dと交換する(交換ステップ-1)。なお、このとき、主送風機4Dの最大風量を75(m
3/min)としている。また、散気部3Dに接続する副流路6D上に、副送風機7Dの流路を合流させる(合流ステップ-2)。なお、このとき、副送風機7Dの最大風量を50(m
3/min)としている。そして、散気部3Dを、必要風量が70(m
3/min)である高効率の散気部3Gに交換する。
【0051】
そして、第3段階として、
図6に示すように、既設主送風機4Aを撤去し、既設主送風機4Aよりも最大風量が小さい主送風機4Eと交換する(交換ステップ-2)。なお、このとき、主送風機4Eの最大風量を75(m
3/min)としている。また、散気部3Eに接続する副流路6E上に、副送風機7Eの流路を合流させる(合流ステップ-3)。なお、このとき、副送風機7Eの最大風量を50(m
3/min)としている。そして、散気部3Eを必要風量が70(m
3/min)である高効率の散気部3Hに交換する。
【0052】
最後に、
図7に示すように、主送風機4Dを撤去することで、散気部3C~3Eを高効率化した散気部3F~3Hに更新するとともに、既設主送風機4C~4Eは、主送風機4Eと副送風機7C~7Eに更新される。これにより、散気部側の必要風量の合計及び送風機側の最大風量の合計が大幅に低減し、散気部側と送風機側の両方で省エネルギー化が可能となる。
【0053】
以上のように、段階的に主送風機4C~4Eと散気部3C~3Eの更新を行うことで、散気システム全体10aを停止することなく、かつ散気システム10aの処理効率を低下させることなく送風機の更新が可能となる。また、更新後の散気システム10bは、高効率化した散気部3F~3Hの必要風量に適した送風量範囲を有する送風機(主送風機4E及び副送風機7C~7E)の組み合わせとすることができる。
【0054】
なお、上述した送風機の更新に係る各段階は、実施態様の一例を示すものであって、これに限定されるものではない。例えば、各段階において、送風機(主送風機及び副送風機)の最大風量の合計が、散気部の必要風量の合計を超えるように、合流ステップ及び交換ステップを行うものであればよい。
【0055】
本実施態様の送風機の更新方法によれば、散気装置の高効率化に伴い、高効率の散気装置に適した送風量制御を行うことのできる送風機に更新することで、散気システムの省エネルギー化及び処理効率の維持・向上が可能となる送風機の更新方法を提供することができる。特に、本実施態様の送風機の更新方法は、散気部の高効率化に係る更新に合わせて実施することで、高効率化した散気部の性能を十分に生かすことが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施態様は散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法の一例を示すものである。本発明に係る散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る散気システム、散気システムの運転方法及び送風機の更新方法を変形してもよい。
【0057】
例えば、本実施態様の散気システム及び散気システムの運転方法において、散気槽2に導入される被処理水Wの導入量及び水質を測定し、この測定結果に基づき、散気部3で必要とされる風量を決定するものであってもよい。これにより、散気部に対して必要な気体量に係るデータの精度が向上するため、散気システムの処理効率を向上させることが可能となる。
また、散気槽2に導入される被処理水Wの導入量及び水質が、人間の生活サイクルなど1日の中の時間帯や、カレンダーに応じて変わるものである場合、過去の実績などから主送風機及び副送風機から供給する風量を時間帯やカレンダーのデータに基づき推計して、制御するものとしてもよい。これにより、被処理水Wの導入量及び水質に関連するパラメータの測定点数を増やすことなく、散気システムの処理効率を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の散気システム、散気システムの制御方法及び送風機の更新方法は、液体中に微細な気泡を分散させるための散気を伴う水処理に利用することができる。特に、排水等の被処理水を活性汚泥により生物処理を行う水処理に対し、本発明を好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 散気システム、10a 更新前の散気システム、10b 更新後の散気システム、2A~2E 散気槽、3A,3B 散気部、3C~3E 更新前の散気部、3F~3H 更新後の散気部、31 ライザー管、32 ヘッダー管、33 散気管、34 散気ユニット、4 主送風機、4A~4C 更新前の主送風機、4D,4E 更新後の主送風機、5 主流路、6A~6E 副流路、7A~7E 副送風機、71 制御部、Q1 主送風機からの気体供給量、Q2A,Q2B 副送風機からの気体供給量、QRA,QRB 散気部の必要風量、S1~S5 水処理系統、W 被処理水
【手続補正書】
【提出日】2023-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台以上の既設主送風機を備える散気システムの更新方法であって、
既設主送風機に接続される主流路から分岐し、複数の水処理系統に設けられた散気部に接続される副流路に、副送風機の流路を合流させる合流ステップと、
前記既設主送風機のうち 、少なくとも1台以上の既設主送風機を新設主送風機に交換する交換ステップと、を備えることを特徴とする、散気システムの更新方法。
【請求項2】
前記新設送風機の最大風量は、前記既設主送風機の最大風量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の散気システムの更新方法。
【請求項3】
前記副送風機の最大風量は、前記既設主送風機または前記新設送風機の最大風量よりも小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の散気システムの更新方法。