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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011534
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ブロナンセリン含有貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20230117BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230117BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20230117BHJP
   A61L 15/30 20060101ALI20230117BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20230117BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P25/18
A61K9/70 401
A61K47/12
A61K47/32
A61L15/24 100
A61L15/30 100
A61L15/44 100
A61L15/58 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111255
(22)【出願日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021114797
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】小松▲崎▼ 千尋
(72)【発明者】
【氏名】内田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】天野 智史
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD41
4C076EE03
4C076EE48
4C081AA03
4C081AA12
4C081CA021
4C081CA031
4C081CC02
4C081CE02
4C086AA01
4C086BC50
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA18
(57)【要約】
【課題】保管時に結晶が析出し難い、ブロナンセリン及びゴム系粘着基剤を含有する貼付剤の提供。
【解決手段】支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、上記粘着剤層が、ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩と、ゴム系粘着基剤と、粘着付与樹脂と、オレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸と、を含有し、上記粘着剤層中のブロナンセリンと上記有機酸の質量比が1:0.45~1:3である、貼付剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層が、ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩と、ゴム系粘着基剤と、粘着付与樹脂と、オレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸と、を含有し、
前記粘着剤層中のブロナンセリンと前記有機酸の質量比が1:0.45~1:3である、
貼付剤。
【請求項2】
前記粘着剤層が乳酸を含有しない、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記有機酸がオレイン酸及びイソステアリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記ゴム系粘着基剤が、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、又はこれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の貼付剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロナンセリン含有貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2-(4-エチル-1-ピペラジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(以下、ブロナンセリン)は、統合失調症の治療薬として臨床現場で使用されており、最近では貼付剤(商品名:ロナセン(登録商標)テープ)としても販売されている。
【0003】
ブロナンセリンを含有する貼付剤の特性について研究されてきた。特許文献1には、ブロナンセリン及びアクリル系粘着剤を含有する貼付剤は、代謝体の生成が抑制され、持続的に血中薬物濃度を維持できることが記載されている。特許文献2には、ブロナンセリン、アクリル系ポリマー、乳酸及び所定の安定化剤を含有する貼付剤は、ブロナンセリンの薬効が発揮されるのに十分な血中濃度が維持され、保存安定性にも優れることが記載されている。特許文献3には、ブロナンセリン、乳酸及び特定の添加剤を含有する貼付剤は、ブロナンセリンの皮膚透過性に優れることが記載されている。
【0004】
これまで研究されてきたブロナンセリン含有貼付剤は、その多くがアクリル系粘着基剤を含有する貼付剤であり、ゴム系粘着基剤を含有した貼付剤での研究は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/142295号
【特許文献2】特開2016-130269号公報
【特許文献3】国際公開第2012/105624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ブロナンセリン及びゴム系粘着基剤を含有する貼付剤の検討を行ったところ、貼付剤の保管時に、ブロナンセリンと考えられる結晶が析出することを見出した。結晶が析出した貼付剤は、ブロナンセリンの皮膚透過性及び粘着性などの特性に問題が生じる可能性がある。本発明の目的は、保管時に結晶が析出し難い、ブロナンセリン及びゴム系粘着基剤を含有する貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究を進めたところ、オレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸から選ばれる少なくとも1種をブロナンセリンに対して所定の質量比で含有し、粘着付与樹脂を含有する貼付剤は、結晶析出が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の貼付剤は、支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が、ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩と、ゴム系粘着基剤と、粘着付与樹脂と、オレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸と、を含有し、上記粘着剤層中のブロナンセリンと上記有機酸の質量比が1:0.45~1:3である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保管時に結晶が析出し難い貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を示して、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係る貼付剤は、支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が、ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩と、ゴム系粘着基剤と、粘着付与樹脂と、オレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸と、を含有し、上記粘着剤層中のブロナンセリンと上記有機酸の質量比が1:0.45~1:3である。
【0012】
支持体は、貼付剤、特に粘着剤層の形状を維持し得るものであればよい。支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタンなどの合成樹脂が挙げられる。支持体の性状は、例えば、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、織布、編布、不織布等の布、及びこれらの積層体などである。支持体の厚さは、特に制限されないが、通常、2μm~3000μm程度であることが好ましい。
【0013】
粘着剤層は、ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩と、ゴム系粘着基剤と、粘着付与樹脂と、オレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸と、後述する任意成分と、を混和して得られる粘着剤組成物から形成される。粘着剤層の単位面積当たりの質量は、特に制限されず、30g/m~400g/mとすることができ、40g/m~300g/m、40g/m~200g/m、又は40g/m~120g/mであってもよい。粘着剤層の単位面積当たりの質量が400g/mを超えると、被服の着脱時等に貼付剤が脱落しやすくなる。粘着剤層の単位面積当たりの質量が30g/m未満であると貼付剤の付着性が低下しやすくなる。
【0014】
ブロナンセリンの薬学的に許容可能な塩は、ブロナンセリンの酸付加塩のうち、医薬として利用可能なものを意味する。有機酸として、例えば、ギ酸、酢酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。無機酸として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
【0015】
ブロナンセリンの含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、1質量%~20質量%とすることができ、3質量%~20質量%、5質量%~15質量%、又は5質量%~10質量%であってもよい。なお、上記質量%は、粘着剤層中にブロナンセリンの薬学的に許容可能な塩が含まれる貼付剤である場合、ブロナンセリンのフリー体換算の質量%を意味する。
【0016】
ゴム系粘着基剤としては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、アルキルビニルエーテル(共)重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。ゴム系粘着基剤は、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、本実施形態に係るゴム系粘着基剤としては、粘着剤層のより十分な粘着力を発揮することができる傾向にあるという観点から、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0017】
ゴム系粘着基剤の具体例としては、Quintac(登録商標)3570C(商品名、日本ゼオン株式会社製)、SIS5002、SIS5229、SIS5505、SIS5505P(商品名、JSR株式会社製)、SIBSTAR(登録商標)T102(商品名、株式会社カネカ製)等が挙げられ、また、ポリイソブチレンには、いわゆるブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)も含まれ、具体例としては、Oppanol(登録商標)N50、N80、N100、N150、B11、B12、B50、B80、B100、B120、B150、B220(商品名、BASF社製)、JSR(登録商標)Butyl065、268、365(商品名、JSR株式会社製)、X_Butyl(登録商標)RB100、101-3、301、402(商品名、ARLANXEO社製)、Exxon(登録商標)Butyl065、065S、068、068S、268、268S、365、365S(商品名、ExxonMobile社製)等が挙げられる。
【0018】
ゴム系粘着基剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、10質量%~90質量%とすることができ、15質量%~60質量%、15質量%~40質量%、又は15質量%~30質量%であってもよい。
【0019】
粘着付与樹脂は、粘着剤層の粘着性を調整する成分であり、また、結晶析出を抑制する成分としても働く。粘着付与樹脂としては、例えば、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂及びキシレン系樹脂等が挙げられる。石油系樹脂としては、例えば、脂環族系石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂等)、脂肪族系石油樹脂(脂肪族炭化水素樹脂等)、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、より具体的には、アルコンP-70、アルコンP-85、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-115、アルコンP-125(以上、商品名、荒川化学工業株式会社製)、エスコレッツ8000(商品名、エッソ石油化学株式会社製)等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、ピネン重合体(α-ピネン重合体、β-ピネン重合体等)、テルペン重合体、ジペンテン重合体、テルペン-フェノール重合体、芳香族変性テルペン重合体、ピネン-フェノール共重合体が挙げられ、より具体的には、YSレジン(YSレジンPXN(1150N、300N)、YSレジンPX1000、YSレジンTO125、YSレジンTO105等)、クリアロンP105、クリアロンM115、クリアロンK100(以上、商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)、タマノル901(商品名、荒川化学工業株式会社製)が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、水素添加ロジングリセリンエステル、超淡色ロジン、超淡色ロジンエステル、酸変性超淡色ロジンが挙げられ、より具体的には、パインクリスタル(KE-311、PE-590、KE-359、KE-100等)(商品名、荒川化学工業株式会社製)等が挙げられる。粘着付与樹脂は、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、本実施形態に係る粘着付与樹脂としては、結晶析出を抑制する傾向にある観点から、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、水素添加ロジングリセリンエステル又はこれらの組み合わせであることが好ましく、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン系樹脂又はこれらの組み合わせであることがより好ましい。粘着付与樹脂の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、15質量%~80質量%とすることができ、15質量%~60質量%であってもよい。
【0020】
粘着剤層中にオレイン酸、イソステアリン酸及びレブリン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含有させることで、保管時の結晶析出が抑制される。有機酸は、オレイン酸及びイソステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、オレイン酸であることがより好ましい。上記有機酸の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、4質量%~20質量%とすることができ、4質量%~15質量%、4質量%~12質量%、又は5質量%~10質量%であってもよい。結晶析出を抑制するために、粘着剤層中のブロナンセリンと上記有機酸の質量比は1:0.45~1:3であり、好ましくは1:0.6~1:2であり、より好ましくは1:0.7~1:1.6である。なお、上記質量比は、粘着剤層中にブロナンセリンの薬学的に許容可能な塩が含まれる貼付剤である場合、ブロナンセリンのフリー体換算の質量比を意味する。
【0021】
乳酸及びゴム系粘着基剤を含有する貼付剤は、ブロナンセリンの皮膚透過性が低下する傾向があるため、粘着剤層は乳酸を含有しないことが好ましい。
【0022】
粘着剤層は、任意に、その他の添加剤をさらに含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、吸収促進剤、溶解剤、安定化剤、充填剤、香料などが挙げられる。
【0023】
可塑剤として、例えば、パラフィンオイル(流動パラフィン等)、スクワラン、スクワレン、植物油類(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油、スペアミント油、ユーカリ油、ホホバ油、樟脳白油、ヒマワリ油、オレンジ油等)、油脂類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、及び液状ゴム(液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)が挙げられる。好ましい可塑剤は、流動パラフィンである。粘着剤層が可塑剤を含有する場合、可塑剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、例えば、3質量%~50質量%、5質量%~30質量%、又は7質量%~20質量%である。
【0024】
吸収促進剤は、従来、経皮吸収促進作用を有することが知られている化合物であればよい。吸収促進剤としては、例えば、有機酸エステル(例えば、脂肪酸エステル、ケイ皮酸エステル)、有機酸アミド(例えば、脂肪酸アミド)、脂肪アルコール、多価アルコール、エーテル(例えば、脂肪エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)などが挙げられる。これらの吸収促進剤は、不飽和結合を有していてもよく、環状、直鎖状又は分枝状の化学構造であってもよい。また、吸収促進剤は、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、及び植物油(例えば、オリーブ油)であってもよい。これらの吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
有機酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸メチル、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチルが挙げられる。脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であってもよい。脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエー卜、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、Span40、Span60、Span80、Span120(商品名、クローダジャパン株式会社製)、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)21、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)80、NIKKOL(登録商標)HCO-60(商品名、日光ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。
【0026】
有機酸アミドとしては、例えば、脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド)、ヘキサヒドロ-1-ドデシル-2H-アゼピン-2-オン(Azoneともいう。)及びその誘導体、ピロチオデカンが挙げられる。
【0027】
脂肪アルコールとは、炭素原子数6~20の脂肪族アルコールを意味する。脂肪アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコールが挙げられる。
【0028】
脂肪エーテルとは、炭素原子数6~20の脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基)を有するエーテルを意味する。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0029】
モノテルペン系化合物としては、例えば、ゲラニオール、チモール、テルピネオール、l-メントール、ボルネオール、d-リモネン、イソボルネオール、ネロール、dl-カンフルが挙げられる。モノテルペン系化合物として、ハッカ油を使用してもよい。
【0030】
粘着剤層が吸収促進剤を含有する場合、吸収促進剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、2質量%~40質量%とすることができる。
【0031】
溶解剤は、ブロナンセリン又はその薬学的に許容可能な塩を粘着剤組成物中に溶解させやすくする成分である。溶解剤としては、例えば、脂肪酸アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル)、脂肪酸多価アルコールエステル(例えば、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン)、脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド)、脂肪族アルコール(例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、ピロリドン誘導体(例えば、N-メチル-2-ピロリドン)が挙げられる。粘着剤層が溶解剤を含有する場合、溶解剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、2質量%~40質量%とすることができる。
【0032】
安定化剤は、紫外線等の光線、熱又は活性化学種の作用により発生するフリーラジカルの生成及びその連鎖反応の進行を抑制できるものであればよい。安定化剤としては、例えば、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、2,6-ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。安定化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着剤層が安定化剤を含有する場合、安定化剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、0.05質量%~3質量%とすることができ、0.05質量%~1質量%、0.05質量%~0.25質量%、又は0.1質量%~0.25質量%であってもよい。
【0033】
充填剤としては、例えば、金属化合物(酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム等)、セラミクス(タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロキシアパタイト、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)又は有機化合物(セルロース粉末、ステアリン酸塩等)の、粉末又はこれらを含む樹脂の短繊維が挙げられる。粘着剤層が充填剤を含有する場合、充填剤の含有量は、粘着剤層の総質量を基準として、0.1質量%~20質量%とすることができる。
【0034】
貼付剤は、さらに剥離ライナーを備えていてもよい。剥離ライナーは、粘着剤層に対して、支持体と反対側の面に積層される。剥離ライナーを備えていると、保管時において、粘着剤層へのゴミ等の付着を低減することができる傾向がある。剥離ライナーの粘着剤層と接する面は、シリコーン又はフッ素化ポリオレフィン等により離型処理されていることが好ましい。
【0035】
剥離ライナーの素材としては、特に限定されず、当業者に一般的に知られているライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、例えば、紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、アルミニウム等のフィルムが挙げられる。剥離ライナーは、上質紙とポリオレフィンとのラミネートフィルムであってもよい。剥離ライナーの材質としては、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート製のフィルムが好ましい。
【0036】
貼付剤は、例えば、次の方法により製造することができるが、これに限定されず、公知の方法を使用することができる。まず、粘着剤層を構成する各成分を所定の割合で混合して均一な溶解物(粘着剤組成物)を得る。次に、剥離可能なフィルム(剥離ライナー)上に粘着剤組成物を所定の厚みで展延して粘着剤層を形成する。さらに、粘着剤層が剥離ライナーと支持体とに挟まれるように、粘着剤層に支持体を圧着する。最後に、所望の形状及び寸法に裁断することにより、貼付剤を得ることができる。この場合、剥離ライナーは、貼付剤の適用時に除去される。貼付剤の面積は、5~100cmであってよく、30~80cmであってよい。貼付剤の形状及び寸法は、例えば、短辺が3~14cmかつ長辺が7~20cmの矩形、又は直径が1~10cmの円形であってもよい。
【実施例0037】
試験例1:有機酸を含有する貼付剤の評価
1.貼付剤の調製
下記表1に従って、各成分を混合し粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を剥離ライナー(離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム)上に、単位面積当たりの質量が80g/mになるように展延し、溶媒を乾燥除去して粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の前記反対の面上に支持体層(ポリエチレンテレフタレート製フィルム)を積層し、支持体層/粘着剤層/剥離ライナーの順に積層された貼付剤を得た。
【0038】
2.結晶析出評価
製造した貼付剤をアルミニウム製包材に封入し室温で保管後、任意の日数経過後に結晶が析出しているかどうかを下記の基準で評価した。
A:結晶が析出している。
B:結晶が析出していない。
初めて結晶が析出していると判定された日を結晶析出(日)として表1に示した。
【0039】
3.ヘアレスマウス皮膚透過性試験
製造した貼付剤を2cmに打ち抜き、摘出したヘアレスマウス皮膚の脂肪を除去し、表皮側に剥離ライナーを除去した貼付剤を貼付した。これを真皮側がレセプター側に接するようにフロースルータイプのフランツ型透過試験セルにセットし、セルにレセプター溶液(生理食塩水)を満たした。次いで、レセプター溶液が32℃に保温されるように、温めた循環水を外周部に循環させながらレセプター溶液を送液し、2時間毎に24時間までレセプター溶液を採取した。採取したレセプター溶液中のブロナンセリンの濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定し、貼付開始から24時間までのブロナンセリンの累積皮膚透過量(μg/cm)を算出した。
<分析条件>
カラム:TSK gel ODS-80TsQA 5μm(4.6mmI.D.×150mm)
移動相:0.5%リン酸(5mMデカンスルホン酸ナトリウム添加):メタノール=31:69
測定波長:206nm
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
【0040】
【表1】
【0041】
比較例1~5の貼付剤では、ブロナンセリンの結晶抑制が十分ではなかった。
【0042】
試験例2:有機酸を含有する貼付剤の評価
試験例1と同様に、下記表2に従って貼付剤を製造し、結晶析出評価及びヘアレスマウス皮膚透過性試験を行った。なお、6か月経過時点で結晶析出が認められなかった貼付剤は、「未析出」と評価した。
【0043】
【表2】
【0044】
比較例7の貼付剤では、ブロナンセリンの結晶抑制効果は認められたものの、皮膚透過性の低下が認められた。実施例1~3の貼付剤では、ブロナンセリンの結晶抑制効果が認められた。
【0045】
試験例3:有機酸を含有する貼付剤の評価
試験例1と同様に、下記表3に従って貼付剤を製造し、結晶析出評価及びヘアレスマウス皮膚透過性試験を行った。
【0046】
【表3】
【0047】
比較例8の貼付剤では、ブロナンセリンの結晶抑制効果は認められなかった。実施例4~6の貼付剤では、ブロナンセリンの結晶抑制効果が認められた。
【0048】
試験例4:粘着付与樹脂の有無の評価
試験例1と同様に、下記表4に従って貼付剤を製造し、結晶析出評価及びヘアレスマウス皮膚透過性試験を行った。
【0049】
【表4】
【0050】
比較例9~10の貼付剤(粘着付与樹脂不含)では、ブロナンセリンの結晶抑制効果は認められなかった。実施例7~10の貼付剤(粘着付与樹脂含有)では、ブロナンセリンの結晶抑制効果が認められた。