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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115344
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】樹脂製チーズ継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/32 20060101AFI20230810BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
F16L47/32
F16L41/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108040
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2018187128の分割
【原出願日】2018-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】井村 元
(72)【発明者】
【氏名】置田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】延島 大地
(57)【要約】
【課題】金型構造の複雑化をともなわずに、第1コーナー及び/又は第2コーナーを通過する流体の圧力損失を低減できる樹脂製チーズ継手を提供すること。
【解決手段】継手本体11の分岐部24は、挿入された第1パイプ101が接続される第1ストレート部21と第2パイプ102が接続される第2ストレート部22と第3パイプ103が接続される第3ストレート部23とを相互に接続する。第1パイプ101~第3パイプ103の端部には、それぞれ第1インコア111~第3インコア113が挿入されている。分岐部24は、互いに直角となるよう配置された第1ストレート部21と第2ストレート部22とを接続する第1コーナー31及び互いに直角となるよう配置された第2ストレート部22と第3ストレート部23とを接続する第2コーナー32を構成する。第1及び第2コーナー31,32において内側部分61,62は、流路方向に沿った階段状に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に第1インコアが挿入された第1パイプが接続される第1ストレート部と端部に第2インコアが挿入された第2パイプが接続される第2ストレート部と端部に第3インコアが挿入された第3パイプが接続される第3ストレート部とを相互に接続するよう、当該第1ストレート部~第3ストレート部に対し一体形成されている分岐部を有する樹脂製の継手本体を備え、
前記分岐部は、互いに直角となるよう配置された前記第1ストレート部と前記第2ストレート部とを接続する第1コーナーを構成するとともに、互いに直角となるよう配置された前記第2ストレート部と前記第3ストレート部とを接続する第2コーナーを構成し、
前記第1コーナー及び/又は前記第2コーナーにおいて、流路の内側に位置する部分を、流路方向に沿った階段状に形成し、
当該階段状を構成する第1コーナー用角部及び/又は第2コーナー用角部は、前記第1インコア~第3インコアのうちの対応するいずれかの先端面を、前記分岐部の内空間に対して露出させることで形成された樹脂製チーズ継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製チーズ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1の第A5頁には、給水給湯用配管の分岐に用いられる「チーズソケット(以下、樹脂製チーズ継手とする)」が開示されている。図6に示すように、樹脂製チーズ継手200は、合成樹脂からなるT字状の継手本体201を備えている。継手本体201は、第1ストレート部211~第3ストレート部213と、分岐部214とを備えている。分岐部214は、第1ストレート部211~第3ストレート部213を相互に接続する。
【0003】
分岐部214は、樹脂製チーズ継手200の流路の第1コーナー215を構成する。第1コーナー215は、互いに直角となるよう配置された第1ストレート部211と第2ストレート部212とを接続する。分岐部214は、樹脂製チーズ継手200の流路の第2コーナー216を構成する。第2コーナー216は、互いに直角となるよう配置された第2ストレート部212と第3ストレート部213とを接続する。なお、第1コーナー215と第2コーナー216とは、第2ストレート部212の側において流路を共用している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社オンダ製作所「総合カタログ2018-2019」、第A5頁、第A7頁、第A8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1コーナー215は、流路の内側に位置する部分217(以下、内側部分217とする)が、湯水の流れを一気に曲げる直角形状をなしている。また、第2コーナー216は、流路の内側に位置する部分218(以下、内側部分218とする)が、湯水の流れを一気に曲げる直角形状をなしている。したがって、第1ストレート部211と第2ストレート部212との間や、第2ストレート部212と第3ストレート部213との間で湯水が流れる際に、内側部分217,218における湯水の急激な方向転換に起因した、大きな圧力損失を発生する問題があった。
【0006】
図5(b)は、図6の樹脂製チーズ継手200において第1ストレート部211から第2ストレート部212へ湯水が流れると仮定した、CAE(Computer Aided Engineering)解析の結果である。当該解析結果において、淡色の部分は湯水の流速が高いことを示し、濃色の部分は湯水の流速が低いことを示す。したがって、当該解析結果において、内側部分217(図6参照)における流路方向での淡色から濃色への大きな変化は、大きな圧力損失が発生していることを示す。なお、当該CAE解析は、第3ストレート部213が封止状態にあることを前提条件としている。
【0007】
このような問題を解決するために、例えば非特許文献1の第A7頁及び第A8頁に記載された「なめらかエルボ」のコーナーと同様にして、第1コーナー215の内側部分217及び第2コーナー216の内側部分218を、流路方向へ滑らかに湾曲させて形成することが考えられる。しかし、当然ながら、チーズ継手はエルボ継手と比較してコーナーが多く流路形状が複雑であり、よって継手本体201の金型構造が複雑となるため、第1コーナー215の内側部分217及び第2コーナー216の内側部分218を「なめらかエルボ」のコーナーと同様な滑らかさで射出成型することは困難であった。
【0008】
本発明の目的は、金型構造の複雑化をともなわずに、第1コーナー及び/又は第2コーナーを通過する流体の圧力損失を低減できる樹脂製チーズ継手を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1の発明は、端部に第1インコアが挿入された第1パイプが接続される第1ストレート部と端部に第2インコアが挿入された第2パイプが接続される第2ストレート部と端部に第3インコアが挿入された第3パイプが接続される第3ストレート部とを相互に接続するよう、当該第1ストレート部~第3ストレート部に対し一体形成されている分岐部を有する樹脂製の継手本体を備え、前記分岐部は、互いに直角となるよう配置された前記第1ストレート部と前記第2ストレート部とを接続する第1コーナーを構成するとともに、互いに直角となるよう配置された前記第2ストレート部と前記第3ストレート部とを接続する第2コーナーを構成し、前記第1コーナー及び/又は前記第2コーナーにおいて、流路の内側に位置する部分を、流路方向に沿った階段状に形成し、当該階段状を構成する第1コーナー用角部及び/又は第2コーナー用角部は、前記第1インコア~第3インコアのうちの対応するいずれかの先端面を、前記分岐部の内空間に対して露出させることで形成された樹脂製チーズ継手である。
【0010】
前記構成によれば、第1コーナー及び/又は第2コーナーにおいて、流路の内側に位置する部分における流体の流れを複数段階で曲げることができ、流体の方向転換が一気に行われずに緩やかとなって、第1コーナー及び/又は第2コーナーを通過する流体の圧力損失を低減できる。
【0011】
このように、第1コーナー及び/又は第2コーナーの当該部分を流路方向に沿った階段状に形成することで、当該階段状をなすための各構成要素を、それぞれ対応する第1ストレート部~第3ストレート部の軸線方向に沿う形状、換言すれば射出成型時における継手本体の離型方向に沿う形状とすることが容易となる。このようにすれば、例えば「従来技術」において述べた「なめらかエルボ」のコーナーのような、滑らかに湾曲した形状を射出成型する場合と比較して、金型の分割構成が複雑とならずに、継手本体の金型構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】樹脂製チーズ継手の縦断面図。
図2】継手本体の側面図。
図3図2のA-A線断面図。
図4図2のB-B線断面図。
図5】(a)は一実施形態の樹脂製チーズ継手に関するCAE解析の結果を示す図、(b)は従来の樹脂製チーズ継手に関するCAE解析の結果を示す図。
図6】従来の樹脂製チーズ継手の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂製チーズ継手の一実施形態について説明する。
図1に示すように、樹脂製チーズ継手1は、給水給湯用配管における上流側の第1パイプ101と、同じく下流側の第2パイプ102及び第3パイプ103とをT字状に接続するための分岐継手である。第1パイプ101~第3パイプ103は、例えばポリブテンや架橋ポリエチレン等の合成樹脂製である。
【0014】
図1及び図2に示すように、樹脂製チーズ継手1は、樹脂からなるT字状の継手本体11を備えている。継手本体11は、第1ストレート部21~第3ストレート部23と分岐部24とを備えている。分岐部24は、第1ストレート部21~第3ストレート部23を相互に接続するよう、第1ストレート部21~第3ストレート部23に対し一体形成されている。なお、継手本体11を形成する樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂にグラスファイバーを混合したものがあげられる。
【0015】
図1に示すように、継手本体11において、第1ストレート部21と第2ストレート部22とは、互いに直角となる方向へ直線状に延びる円筒状に形成されている。分岐部24は、樹脂製チーズ継手1の流路の第1コーナー31を構成する。第1コーナー31は、第1ストレート部21と第2ストレート部22とを接続するように直角に屈曲されている。分岐部24において、当該屈曲部分の流路方向の内側に位置する部分には、第1コーナー用角部71が形成されている。
【0016】
継手本体11において第3ストレート部23は、第1ストレート部21と同一軸線上に位置してなおかつ第2ストレート部22と直角となる方向へ直線状に延びる円筒状に形成されている。分岐部24は、樹脂製チーズ継手1の流路の第2コーナー32を構成する。第2コーナー32は、第2ストレート部22と第3ストレート部23とを接続するように直角に屈曲されている。分岐部24において、当該屈曲部分の流路方向の内側に位置する部分には、第2コーナー用角部72が形成されている。なお、第1コーナー31と第2コーナー32とは、第2ストレート部22の側において流路を兼用している。
【0017】
第1ストレート部21には、第1ストレート部21に接続される第1パイプ101の抜け止めを行う第1ロック機構41が設けられている。第2ストレート部22には、第2ストレート部22に接続される第2パイプ102の抜け止めを行う第2ロック機構42が設けられている。第3ストレート部23には、第3ストレート部23に接続される第3パイプ103の抜け止めを行う第3ロック機構43が設けられている。
【0018】
分岐部24において第1ストレート部21との境界部分には、第1連通口24aが設けられている。分岐部24において第2ストレート部22との境界部分には、第2連通口24bが設けられている。分岐部24において第3ストレート部23との境界部分には、第3連通口24cが設けられている。
【0019】
第1ストレート部21~第3ストレート部23の内周面において分岐部24寄りの部分には、対応する第1パイプ101~第3パイプ103の端部を収容するための収容部25がそれぞれ設けられている。各収容部25の内周面と、分岐部24における対応する第1連通口24a~第3連通口24cの内周面との間には、それぞれ段差26が形成されている。各段差26と、対応する第1連通口24a~第3連通口24cの内周面とは、ほぼ直交した状態となっている。
【0020】
第1パイプ101~第3パイプ103の端部には、それぞれ金属からなる円筒状の第1インコア111~第3インコア113が挿入されている。第1インコア111~第3インコア113が、対応する第1パイプ101~第3パイプ103に没入することは、第1インコア111~第3インコア113の端部に形成されたフランジ111a~113aによって当接規制されている。第1パイプ101~第3パイプ103は、対応する第1インコア111~第3インコア113の先端面が段差26に当接する位置まで、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の収容部25に挿入されている。
【0021】
第1ストレート部21~第3ストレート部23の内周面において、各収容部25と、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の先端部との間には、それぞれ収容部25よりも内径が大きいシール部28が設けられている。各シール部28内には、収容部25側から、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の先端側に向けて、シールリング51、スペーサー52、シールリング53及び保持リング54が同順に配置されている。
【0022】
第1パイプ101~第3パイプ103の端部が、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の収容部25に挿入されたときには、第1パイプ101~第3パイプ103がシールリング51、スペーサー52、シールリング53及び保持リング54を貫通する。このとき、各シール部28のシールリング51,53が、対応する第1パイプ101~第3パイプ103の外周面に接触した状態となり、継手本体11を流れる湯水が第1パイプ101~第3パイプ103の外周面とシール部28の内周面との間から樹脂製チーズ継手1の外に漏れることが抑制される。
【0023】
第1ロック機構41~第3ロック機構43は、対応する第1パイプ101~第3パイプ103を、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23に保持するための保持部材44と、保持部材44を対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23に取り付けるためのキャップ45とを備えている。保持部材44には、嵌込リング46と割リング47との間に位置する円環状のロックリング48が設けられている。各保持部材44は、対応するシール部28に配置された保持リング54に隣接して位置している。
【0024】
キャップ45は円筒状に形成されている。キャップ45の内部に割リング47及びロックリング48を配置し、さらに嵌込リング46をキャップ45の内部に嵌め込むことによって、割リング47及びロックリング48はキャップ45から脱落しない。この状態で、キャップ45の開口端を、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の端部と径方向に重なる部分において当該端部に対し係合させることにより、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23に対し、保持部材44及びキャップ45からなる第1ロック機構41~第3ロック機構43が、それぞれ容易に組み付けられる。
【0025】
第1ロック機構41~第3ロック機構43(保持部材44及びキャップ45)が、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23に取り付けられた状態で、第1パイプ101~第3パイプ103の端部が、対応する保持部材44及びキャップ45を貫通して、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の先端部から収容部25に挿入されると、保持部材44のロックリング48が対応する第1パイプ101~第3パイプ103の外周面を押圧する。これにより、第1パイプ101~第3パイプ103が、対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23から抜け出すことを防止できる。
【0026】
次に、第1コーナー31及び第2コーナー32について詳しく説明する。
図1及び図4に示すように、第1コーナー31の流路の内側に位置する部分61(以下、内側部分61とする)において、分岐部24の第2連通口24bは、対応する第2インコア112と同一軸線上に位置してなおかつ第2インコア112の内径よりも大きな径を有する部分円筒に形成されている。したがって、内側部分61においては、第2インコア112の先端面の内周側が分岐部24の内空間に対して露出され、当該露出部分が第1コーナー用角部73をなしている。
【0027】
第2コーナー32の流路の内側に位置する部分62(以下、内側部分62とする)において、分岐部24の第2連通口24bは、対応する第2インコア112と同一軸線上に位置してなおかつ第2インコア112の内径よりも大きな径を有する部分円筒に形成されている。したがって、内側部分62においては、第2インコア112の先端面の内周側が分岐部24の内空間に対して露出され、当該露出部分が第2コーナー用角部74をなしている。
【0028】
図1及び図3に示すように、第1コーナー31の外側に位置する部分65において、分岐部24の第1連通口24aは、対応する第1インコア111と同一軸線上に位置してなおかつ第1インコア111の内径と同じ径を有する部分円筒に形成されている。したがって、当該部分65においては、第1インコア111の内周面と第1連通口24aの内周面との間に、軸線方向への段差は形成されていない。
【0029】
しかし、第1コーナー31の内側部分61において、分岐部24の第1連通口24aには、対応する第1インコア111の内空間を軸線方向に投影した領域を径方向の外側へとはみ出すようにして、部分円筒状に肉盗みが施されている。したがって、内側部分61においては、第1インコア111の先端面の内周側が分岐部24の内空間に対して露出され、当該露出部分が第1コーナー用角部75をなしている。
【0030】
このように、第1コーナー31の内側部分61は、複数の第1コーナー用角部71,73,75によって、第1コーナー31の流路方向に沿った階段状をなしている。したがって、第1ストレート部21と第2ストレート部22との間で湯水が流れる際に、内側部分61における湯水の流れを、複数の第1コーナー用角部71,73,75によって複数段階で曲げることができる。その結果、内側部分61における湯水の方向転換が一気に行われずに緩やかとなって、第1コーナー31を通過する湯水の圧力損失を低減できる。
【0031】
図5(a)は、図1の樹脂製チーズ継手1において第1ストレート部21から第2ストレート部22へ湯水が流れると仮定した、図5(b)と同一条件でのCAE解析の結果である。当該解析結果においては、内側部分61(図1参照)における流路方向での淡色から濃色への大きな変化つまり大きな圧力損失は見られない。なお、図1の樹脂製チーズ継手1において、第2ストレート部22から第1ストレート部21へ湯水が流れると仮定した場合も、図5(a)と同等なCAE解析の結果を得られることは、想像に難くない。
【0032】
図1及び図3に示すように、第2コーナー32の外側に位置する部分66において、分岐部24の第3連通口24cは、対応する第3インコア113と同一軸線上に位置してなおかつ第3インコア113の内径と同じ径を有する部分円筒に形成されている。したがって、当該部分66においては、第3インコア113の内周面と第3連通口24cの内周面との間に、軸線方向への段差は形成されていない。
【0033】
しかし、第2コーナー32の内側部分62において、分岐部24の第3連通口24cには、対応する第3インコア113の内空間を軸線方向に投影した領域を径方向の外側へとはみ出すようにして、部分円筒状に肉盗みが施されている。したがって、内側部分62においては、第3インコア113の先端面の内周側が分岐部24の内空間に対して露出され、当該露出部分が第2コーナー用角部76をなしている。
【0034】
このように、第2コーナー32の内側部分62は、複数の第2コーナー用角部72,74,76によって、第2コーナー32の流路方向に沿った階段状をなしている。したがって、第2ストレート部22と第3ストレート部23との間で湯水が流れる際に、内側部分62における湯水の流れを、複数の第2コーナー用角部72,74,76によって複数段階で曲げることができる。その結果、内側部分62における湯水の方向転換が一気に行われずに緩やかとなって、第2コーナー32を通過する湯水の圧力損失を低減できる。
【0035】
なお、図1の樹脂製チーズ継手1において、第2ストレート部22から第3ストレート部23へ湯水が流れると仮定した場合や、第3ストレート部23から第2ストレート部22へ湯水が流れると仮定した場合も、図5(a)と同等なCAE解析の結果を得られることは、想像に難くない。
【0036】
ここで、図1の樹脂製チーズ継手1において、対応する第1パイプ101~第3パイプ103の呼び径が「13A」である場合について、つまり第1ストレート部21~第3ストレート部23に対応した各構成要素の寸法設定を「13A」対応とした場合について、当該樹脂製チーズ継手1の相当管長を測定した。
【0037】
当該測定の結果によれば、第1ストレート部21と第2ストレート部22との間で湯水が流れる場合や、第2ストレート部22と第3ストレート部23との間で湯水が流れる場合には、相当管長が1.1m~1.2mとなった。この結果は、同一条件での従来の樹脂製チーズ継手200(図6参照)と比較して、相当管長が約20%減少したことを示す。
【0038】
また、図1の樹脂製チーズ継手1において、対応する第1パイプ101~第3パイプ103の呼び径が「16A」である場合について、つまり第1ストレート部21~第3ストレート部23に対応した各構成要素の寸法設定を「16A」対応とした場合について、当該樹脂製チーズ継手1の相当管長を測定した。
【0039】
当該測定の結果によれば、第1ストレート部21と第2ストレート部22との間で湯水が流れる場合や、第2ストレート部22と第3ストレート部23との間で湯水が流れる場合には、相当管長が1.9m~2.0mとなった。この結果は、同一条件での従来の樹脂製チーズ継手200(図6参照)と比較して、相当管長が約20%減少したことを示す。
【0040】
さらに、図1の樹脂製チーズ継手1において、第1パイプ101及び第3パイプ103の呼び径が「16A」であって、第2パイプ102の呼び径が「13A」である場合について、つまり、第1ストレート部21及び第3ストレート部23に対応した各構成要素の寸法設定を「16A」対応とし、第2ストレート部22に対応した各構成要素の寸法設定を「13A」対応とした場合について、当該樹脂製チーズ継手1の相当管長を測定した。
【0041】
当該測定の結果によれば、第1ストレート部21から第2ストレート部22へ湯水が流れる場合や、第3ストレート部23から第2ストレート部22へ湯水が流れる場合には、相当管長が、下流側である第2パイプ102相当で、すなわち呼び径「13A」のパイプ相当で、1.0m~1.1mとなった。この結果は、同一条件での従来の樹脂製チーズ継手200(図6参照)と比較して、相当管長が約20%減少したことを示す。
【0042】
本実施形態においては次のような効果を得られる。
(1)第1コーナー31及び第2コーナー32の内側部分61,62を、流路方向に沿った階段状に形成することで、当該階段状をなすための各構成要素を、それぞれ対応する第1ストレート部21~第3ストレート部23の軸線方向に沿う形状、換言すれば射出成型時における継手本体11の離型方向に沿う形状とすることが容易となる。このようにすれば、例えば「従来技術」において述べた「なめらかエルボ」のコーナーのような、滑らかに湾曲した形状を射出成型する場合と比較して、金型の分割構成が複雑とならずに、継手本体11の金型構造を簡素化できる。
【0043】
(2)第1インコア111~第3インコア113の先端面の露出を利用して、第1コーナー用角部73,75及び第2コーナー用角部74,76を形成している。したがって、分岐部24の内面形状を、第1コーナー用角部71及び第2コーナー用角部72の形成のみで簡単にでき、継手本体11の金型構造をさらに簡素化できる。
【0044】
(3)第1コーナー31の内側部分61においては、第1インコア111の先端面の内周側のみが分岐部24の内空間に対して露出されており、当該先端面の外周側は、対応する段差26に当接されて当該内空間に対して露出されていない。つまり、第1コーナー用角部75の形成によっても、第1インコア111と段差26との当接を、環状領域において周方向に途切れることなく維持できて、当該当接領域の全体における遮水性を良好に維持できる。したがって、例えば分岐部24を流れる湯水が、第1ストレート部21に対応したシールリング51へと直接的に向かうことがなく、ひいては樹脂製チーズ継手1の水密性の低下を防止できる。
【0045】
これは、第2インコア112の先端面の露出を利用して形成される、第1コーナー用角部73及び第2コーナー用角部74や、第3インコア113の先端面の露出を利用して形成される第2コーナー用角部76についても同様であって、同じく第2ストレート部22に対応したシールリング51や、第3ストレート部23に対応したシールリング51へと、湯水が直接的に向かうことを防止できる。
【0046】
<別例>
本発明は例えば次の態様でも実施が可能である。
○第1コーナー31及び第2コーナー32の一方についてのみ、対応する内側部分61,62を流路方向に沿った階段状に形成すること。
【0047】
○第1コーナー用角部73,75及び第2コーナー用角部74,76を削除するとともに、第1コーナー用角部71及び第2コーナー用角部72を、それぞれ流路方向に沿った階段状(複数の角部)に形成すること。
【0048】
○前記実施形態においては、第1コーナー31の内側部分61における湯水の流れを、3段階(3つの第1コーナー用角部71,73,75)で曲げる構成であったが、これを変更し、2段階、4段階、5段階、6段階等、3段階以外の複数段階で湯水の流れを曲げる構成とすること。
【0049】
○前記実施形態においては、第2コーナー32の内側部分62における湯水の流れを、3段階(3つの第2コーナー用角部72.74,76)で曲げる構成であったが、これを変更し、2段階、4段階、5段階、6段階等、3段階以外の複数段階で湯水の流れを曲げる構成とすること。
【0050】
○本発明を、3方向以上に分岐する構成の樹脂製チーズ継手において実施すること。
【0051】
次に、上記実施形態から把握できる技術思想について記載する。
(イ)端部に第1インコアが挿入されたポリブテン製又は架橋ポリエチレン製の第1パイプが接続される第1ストレート部と端部に第2インコアが挿入されたポリブテン製又は架橋ポリエチレン製の第2パイプが接続される第2ストレート部と端部に第3インコアが挿入されたポリブテン製又は架橋ポリエチレン製の第3パイプが接続される第3ストレート部とを相互に接続するよう、当該第1ストレート部~第3ストレート部に対し一体形成されている分岐部を有する樹脂製の継手本体を備え、
前記分岐部は、互いに直角となるよう配置された前記第1ストレート部と前記第2ストレート部とを接続する第1コーナーを構成するとともに、互いに直角となるよう配置された前記第2ストレート部と前記第3ストレート部とを接続する第2コーナーを構成し、
前記第1コーナー及び/又は前記第2コーナーにおいて、流路の内側に位置する部分を、流路方向に沿った階段状に形成し、
当該階段状を構成する第1コーナー用角部及び/又は第2コーナー用角部は、前記第1インコア~第3インコアのうちの対応するいずれかの先端面を、前記分岐部の内空間に対して露出させることで形成された樹脂製チーズ継手。
【符号の説明】
【0052】
1…樹脂製チーズ継手、11…継手本体、21…第1ストレート部、22…第2ストレート部、23…第3ストレート部、24…分岐部、31…第1コーナー、32…第2コーナー、61…内側部分、62…内側部分、71…第1コーナー用角部、72…第2コーナー用角部、73…第1コーナー用角部、74…第2コーナー用角部、75…第1コーナー用角部、76…第2コーナー用角部、101…第1パイプ、102…第2パイプ、103…第3パイプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6