(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115393
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230810BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109417
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2020002414の分割
【原出願日】2020-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 泰志
(57)【要約】
【課題】揚重作業において、作業現場の安全を確保するための作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラムを提供する。
【解決手段】支援装置20は、三次元空間に構造材モデルを配置するBIMアプリケーションを実行する制御部21を備える。そして、制御部21は、三次元空間に揚重装置モデルを配置し、揚重対象の構造材モデルが指定された場合、構造材モデルの重心位置を特定し、重心位置と揚重装置モデルの配置との作業距離に応じて、揚重装置モデルによる揚重可否の判定を行なう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元空間に構造材モデルを配置するBIMアプリケーションを実行する制御部を備えた作業支援システムであって、
前記制御部が、
前記三次元空間に揚重装置モデルを配置し、
揚重対象の構造材モデルが指定された場合、前記三次元空間において、前記構造材モデルの重心位置を特定し、特定した重心位置の上方に、前記揚重装置モデルのブーム先端のフックが配置されるように、ブームを伸縮させて作業半径を特定し、前記重心位置と前記揚重装置モデルの配置との作業半径に応じて、前記揚重装置モデルの定格荷重表を用いて揚重可否の判定を行なうことを特徴とする作業支援システム。
【請求項2】
前記制御部が、
前記揚重装置モデルの機種を取得した場合、前記機種のサイズを特定し、
前記サイズに応じて、前記揚重装置モデルの形状を変更することを特徴とする請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
三次元空間に構造材モデルを配置するBIMアプリケーションを実行する制御部を備えた作業支援システムを用いて作業支援を行なう方法であって、
前記制御部が、
前記三次元空間に揚重装置モデルを配置し、
揚重対象の構造材モデルが指定された場合、前記三次元空間において、前記構造材モデルの重心位置を特定し、特定した重心位置の上方に、前記揚重装置モデルのブーム先端のフックが配置されるように、ブームを伸縮させて作業半径を特定し、前記重心位置と前記揚重装置モデルの配置との作業半径に応じて、前記揚重装置モデルの定格荷重表を用いて揚重可否の判定を行なうことを特徴とする作業支援方法。
【請求項4】
三次元空間に構造材モデルを配置するBIMアプリケーションを実行する制御部を備えた作業支援システムを用いて作業支援を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記三次元空間に揚重装置モデルを配置し、
揚重対象の構造材モデルが指定された場合、前記三次元空間において、前記構造材モデルの重心位置を特定し、特定した重心位置の上方に、前記揚重装置モデルのブーム先端のフックが配置されるように、ブームを伸縮させて作業半径を特定し、前記重心位置と前記揚重装置モデルの配置との作業半径に応じて、前記揚重装置モデルの定格荷重表を用いて揚重可否の判定を行なう手段として機能させることを特徴とする作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の揚重装置において、作業支援を出力する作業支援システム、作業支援方法及び作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、建築物の設計においてBIM(Building Information Modeling)を用いることがある。このBIMを用いることにより、3次元モデルに対して、構造設計や設備設計の各種情報を管理することができる。
【0003】
また、BIM基盤の現場施設物自動化モデリングシステムも検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示された技術においては、オブジェクト部、入力部及び制御部を備える。オブジェクト部は、現場施設物として配置される部材及び装備中一つ以上を含むオブジェクトのサイズと種類及び機種を選択及び編集する。入力部は、オブジェクト部で編集されたオブジェクトの位置や区間をライン描きで設定する。制御部は、オブジェクト部の編集データによるオブジェクトのモデルを入力部によって設定されたラインに沿って配置するように制御してディスプレイに出力する。そして、建築及び土木施工現場の施設物に使われる装備や部材の物量を算出して、仮設装備を現場に合うように自動配置することができる立体化されたモデルを完成する。
【0004】
また、BIMに用いられるデータにより、オペレータがクレーン及びその吊り荷の状態を客観的に把握できるようにする技術も検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この文献に開示された技術においては、クレーン操縦支援装置は、可動部の姿勢を計測し、フックブロックの高さを計測する。そして、計測結果に基づいて可動部モデル、フックブロックモデル、及び吊り荷モデルを仮想的な三次元空間に配置し、可動部モデル、フックブロックモデル及び吊り荷モデルを描画処理により表示デバイスに表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2018-522297号公報
【特許文献2】特開2019-59593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、揚重作業を行なう場合、安全かつ的確な作業のために現場において事前に作業内容の確認を行なうことが多い。この場合、クレーンの配置や吊り下げる部材の位置等の確認に手間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための作業支援システムは、三次元空間に構造材モデルを配置するBIMアプリケーションを実行する制御部を備える。前記制御部が、前記三次元空間に揚重装置モデルを配置し、揚重対象の構造材モデルが指定された場合、前記構造材モデルの重心位置を特定し、前記重心位置と前記揚重装置モデルの配置との作業距離に応じて、前記揚重装置モデルによる揚重可否の判定を行なう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揚重作業のために作業現場の状況を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本実施形態のクレーンのテンプレートの説明図であって、(a)は上面図、(b)は側面図。
【
図8】本実施形態のCAD画面におけるテンプレートの配置の説明図。
【
図9】本実施形態のCAD画面におけるラフテレーンクレーンのサイズを反映させた場合の説明図。
【
図10】本実施形態のCAD画面におけるクローラークレーンのサイズを反映させた場合の説明図。
【
図11】本実施形態のCAD画面におけるラフテレーンクレーンによる近い位置の部材を選択した場合の説明図。
【
図12】本実施形態のCAD画面におけるラフテレーンクレーンによる遠い位置の部材を選択した場合の説明図。
【
図13】本実施形態のCAD画面におけるクローラークレーンによる近い位置の部材を選択した場合の説明図。
【
図14】本実施形態のCAD画面におけるクローラークレーンによる遠い位置の部材を選択した場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、
図1~
図14に従って説明する。本実施形態では、建物の建築場において、揚重装置(ラフテレーンクレーン、クローラークレーン)を利用する場合に用いる作業支援システムとして説明する。
本実施形態では、
図1に示すように、重機情報サーバ10、支援装置20を用いる。
【0011】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、重機情報サーバ10、支援装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、重機情報サーバ10、支援装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0014】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、重機情報サーバ10、支援装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0015】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0016】
(システム構成)
次に、
図1を用いて、作業支援システムの各機能を説明する。
重機情報サーバ10には、重機メーカ等の各種クレーンの情報を提供するコンピュータシステムである。この重機情報サーバ10には、メーカ(重機の製造会社)、種別(重機の種類)、機種、寸法・重量、主要諸元、クレーン定格荷重表が記録されている。寸法・重量には、全長、シャシー長、全幅、全高、アウトリガー最大張出、総重量等に関する情報が含まれる。主要諸元には、クレーン容量、最大作業半径、最小作業半径、最大揚程、ブーム長さ・形式、ブーム伸ばし速度、旋回角度・速度、ブーム上げ速度、フック巻上げ速度、ワイヤロープ仕様等が含まれる。クレーン定格荷重表には、ブーム長に対して作業半径、定格荷重が記録される。なお、クレーン定格荷重表では、作業半径が大きい場合、揚程やブーム角度が低くなり、定格荷重が小さくなる。
【0017】
支援装置20は、BIMにおいてクレーン作業を支援するコンピュータシステムである。この支援装置20は、制御部21、記憶部22を備える。
制御部21は、後述するBIMにおける3次元CAD処理を行なう。このために、オペレーティングシステム211上で動作するBIMアプリケーションにより、BIM実行部212として機能する。更に、BIMアプリケーションのアドオンを実行させることにより、クレーン処理部213として機能する。更に、制御部21は、クレーン登録部214として機能する。
【0018】
オペレーティングシステム211は、支援装置20を動作させるための基本的なアプリケーションである。
BIM実行部212は、BIM技術により、3次元モデル(オブジェクト)を仮想3次元空間上で配置することにより、3次元CAD(computer-aided design)を実現する。各3次元モデルは、建築に関する各種情報を属性として保持している。
【0019】
クレーン処理部213は、仮想三次元空間内にクレーンモデルを配置する処理を実行する。更に、クレーン処理部213は、建築部材に対する揚重作業の可否を判定する処理を実行する。
【0020】
クレーン登録部214は、クレーン情報を登録したり検索したりする処理を実行する。このため、クレーン登録部214は、登録フォームや検索フォームを備える。登録フォームは、クレーン情報を記憶部22に記録する場合に用いられる。また、検索フォームは、記憶部22において、クレーン情報を検索する場合に用いられる。
【0021】
図3に示すように、テンプレート情報221には、クレーン種別、クレーンモデルに関する情報が記録される。このテンプレート情報221は、クレーンモデルを作成した場合に登録される。
【0022】
クレーン種別は、BIMにおいて用いるクレーンの種類を特定するための識別子である。本実施形態では、クレーン種別として、「ラフテレーンクレーン」、「クローラークレーン」を用いる。
【0023】
クレーンモデルは、クレーン種別のクレーン形状を概略的に表現した3次元モデル(揚重装置モデル)である。このクレーンモデルは、インスタンスプロパティを保持している。このインスタンスプロパティは、例えば、ブーム角度に関する情報を保持している。
【0024】
例えば、
図4は、ラフテレーンクレーンモデル601の概略図を示している。
図4(a)は上面図、
図4(b)は側面図である。ラフテレーンクレーンモデル601は、全幅W1、全高H1、車体長・前L1、車体長・後L2、旋回台・前L4、旋回台・後L5の各寸法で形状が定められている。各重機メーカのクレーンの各寸法が設定された場合、ラフテレーンクレーンモデル601の本体やアウトリガーのサイズを各寸法に応じて調整される。
【0025】
図5に示すように、クレーン情報222には、各クレーンの概要情報が記録されている。このクレーン情報222には、基本情報222a、構造情報222b、定格荷重表222cが含まれる。
【0026】
基本情報222aには、クレーン種別、メーカ、機種、拠点、ベンダに関する情報が記録される。
クレーン種別情報は、BIMにおいて用いるクレーンの種類を特定するための識別子である。
【0027】
メーカ情報は、クレーンの製造会社(重機メーカ)を特定するための情報である。
機種情報は、このクレーンの機種を特定するための情報である。
拠点情報は、このクレーンを用いる本支店を特定するための情報である。この拠点情報を用いることにより、拠点で使用されるクレーンを絞り込むためのキーとして用いることができる。
ベンダ情報は、このクレーンを提供するベンダを特定するための情報である。
【0028】
構造情報222bには、
図4に示した全幅、全高、車体長・前、車体長・後、旋回台・前、旋回台・後に関するサイズ情報が含まれる。この構造情報222bを用いることにより、BIMの三次元空間内に、縮尺に応じたクレーンモデルを配置することができる。なお、クレーンモデルの三次元形状は、ユーザによるサイズの指示に応じて、変更可能である。
【0029】
定格荷重表222cには、ブーム長、作業半径、定格荷重に関する情報が記録されている。
ブーム長情報は、クレーンのブームの長さに関する情報である。定格荷重表222cにおいては、最短から最長までの複数のブーム長が設定されている。
【0030】
作業半径情報は、クレーンの旋回中心から、ブーム長とブーム角度とに応じて定まる作業円の半径である。この作業円により、ブームにより揚重可能な部材の範囲を特定することができる。
定格荷重は、各ブーム長(作業半径)において、揚重可能な重量である。この定格荷重には、揚重対象の部材の重量及びフックの重量が含まれる。
【0031】
図6に示すように、BIM情報223には、BIMにおいて作成した設計情報が記録される。このBIM情報223は、3次元CADを用いて、建築物の設計を行なった場合に記録される。BIM情報223は、プロジェクト情報、要素モデル、配置情報、属性情報を含んで構成される。
【0032】
プロジェクト情報は、建築現場の名称、経度・緯度、建設現場の方位等に関する情報を含む。
要素モデルは、建築現場に用いる各建築要素(部材)の3次元モデル(オブジェクト)に関する情報である。
【0033】
配置情報は、各要素モデルを配置する座標に関する情報を含む。
属性情報は、この建築要素の属性情報である。この属性情報には、仕様(規格、寸法、面積、体積、素材、価格等)に関する情報が含まれる。
【0034】
(作業支援処理)
図7~
図14を用いて、作業支援処理を説明する。
まず、支援装置20の制御部21は、クレーン情報の入力・確認処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、クレーン情報を取得する場合、ユーザは、支援装置20を用いて、重機情報サーバ10にアクセスする。そして、支援装置20は、各メーカのクレーン情報を取得する。この場合、ユーザは、取得したクレーン情報の基本情報、構造情報、定格荷重情報を記録した表計算テーブルを作成する。次に、ユーザの指示に応じて、支援装置20は、クレーン登録部214を用いて、登録フォームを表示装置H13に出力する。この登録フォームを用いて、支援装置20は、表計算テーブルの情報をインポートし、クレーン情報222として記憶部22に登録する。更に、使用するクレーンを支援装置20において検索する場合には、検索フォームを表示装置H13に出力する。この検索フォームに、クレーン種別、メーカ、機種、拠点、ベンダ等の検索キーを設定することにより、記憶部22において、クレーン情報を検索、確認することができる。
【0035】
次に、支援装置20の制御部21は、設計情報の登録処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部21のBIM実行部212は、CAD画面において敷地や各建築要素の三次元モデルを配置することにより、建物を構成する。この場合、建築要素の規格、寸法、素材が選択された場合、BIM実行部212は、建築要素の面積や体積を算出し、建築要素モデルの属性情報(プロパティ)として設定する。そして、BIM実行部212は、作成したBIM情報223を記憶部22に記録する。
【0036】
次に、支援装置20の制御部21は、クレーンの配置処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、クレーン作業を確認する場合、CAD画面においてクレーンを配置する。例えば、ラフテレーンクレーン、クローラークレーンを配置する場合を想定する。
【0037】
この場合、
図8に示すように、制御部21のBIM実行部212は、CAD画面に、敷地モデル500、建物モデル510を表示する。そして、BIM実行部212は、ユーザによって指示された位置に、記憶部22に記録されたラフテレーンクレーンモデル611、クローラークレーンモデル612を配置する。
【0038】
次に、支援装置20の制御部21は、プロパティの設定処理を実行する(ステップS1-4)。具体的には、制御部21のBIM実行部212は、クレーン処理部213を起動する。この場合、クレーン処理部213は、読込画面を出力する。この読込画面において、読込対象(表計算テーブル又は記憶部22)を指定することができる。読込画面において、読込対象が指定された場合、クレーン処理部213は、クレーンモデルのタイププロパティと読込対象のクレーン情報とを関連付けて連動させる。
【0039】
次に、支援装置20の制御部21は、クレーンの選択処理を実行する(ステップS1-5)。具体的には、CAD画面において、使用するクレーンモデルが選択されると、クレーン処理部213は、表示装置H13に重機アシスト画面を出力する。この重機アシスト画面には、拠点、ベンダ、機種の入力欄が設けられている。重機アシスト画面において、機種が設定された場合、クレーン処理部213は、タイププロパティにおいて連動されたクレーン情報を呼び出し、主要諸元を取得する。そして、BIM実行部212は、主要諸元に応じて、クレーンモデルのサイズを、三次元空間の縮尺に応じてリサイズする。
【0040】
図9に示すように、ラフテレーンクレーンモデル601が選択された場合には、構造情報に基づいて、モデルのサイズを変更する。この場合、アウトリガー長の最大張り出し長さも全体のサイズに比例させて変更する。なお、アウトリガー長も、ユーザの指示に応じて変更可能である。
また、
図10に示すように、クローラークレーンモデル602が選択された場合には、構造情報に基づいて、モデルのサイズを変更する。
【0041】
次に、支援装置20の制御部21は、定格荷重表の読込処理を実行する(ステップS1-6)。具体的には、制御部21のクレーン処理部213は、指定された機種の定格荷重表をタイププロパティにおいて関連付けられて連動されたクレーン情報222から取得する。
【0042】
次に、支援装置20の制御部21は、部材の選択処理を実行する(ステップS1-7)。具体的には、ユーザは、CAD画面の建物モデル510において、クレーンによって揚重する部材を指定する。この場合、制御部21のBIM実行部212は、指定された部材のBIM情報223を取得する。
【0043】
次に、支援装置20の制御部21は、重量の特定処理を実行する(ステップS1-8)。具体的には、制御部21のBIM実行部212は、BIM情報223の素材により、構造材の比重を特定する。次に、BIM実行部212は、体積と比重とを乗算することにより、指定された部材の重量を算出する。そして、クレーン処理部213は、BIM実行部212が算出した重量を取得する。
【0044】
次に、支援装置20の制御部21は、重心の特定処理を実行する(ステップS1-9)。具体的には、制御部21のBIM実行部212は、要素モデルの形状に基づいて、部材の重心位置を特定する。そして、クレーン処理部213は、BIM実行部212が算出した重心位置を取得する。
【0045】
次に、支援装置20の制御部21は、ブーム伸縮処理を実行する(ステップS1-10)。具体的には、制御部21のクレーン処理部213は、特定した重心位置の上方に、ブーム先端のフックが配置されるように、ブームを伸縮する。この場合、ブーム角度において、ブームモデルが建築物モデルに接触しないように干渉チェックを行なう。ブームと建物とが干渉する場合には、アラームを出力する。この場合には、例えばブーム角度を干渉しないように変更する。次に、クレーン処理部213は、伸縮したブーム長に応じて、作業半径を特定する。
【0046】
図11に示すように、ラフテレーンクレーンモデル611の選択時に部材511が選択された場合、部材511の重心位置の上方にフックが配置されるように、ブームを伸縮させる。この場合、部材511は、ラフテレーンクレーンモデル611から近い位置にあるため、ブームは比較的に短くなる。
【0047】
図12に示すように、ラフテレーンクレーンモデル611の選択時に部材512が選択された場合、部材512の重心位置の上方にフックが配置されるように、ブームを伸縮させる。この場合、部材512は、ラフテレーンクレーンモデル611から遠い位置にあるため、ブームは比較的長く伸ばす。
【0048】
図13に示すように、クローラークレーンモデル612の選択時に部材513が選択された場合、部材513の重心位置の上方にフックが配置されるように、ブームを伸縮する。この場合、部材513は、クローラークレーンモデル612から近い位置にあるため、ブームは比較的に短くなる。
【0049】
図14に示すように、クローラークレーンモデル612の選択時に部材514が選択された場合、部材514の重心位置の上方にフックが配置されるように、ブームを伸縮させる。この場合、部材514は、クローラークレーンモデル612から遠い位置にあるため、ブームは比較的長く伸ばす。
【0050】
次に、支援装置20の制御部21は、定格荷重の特定処理を実行する(ステップS1-11)。具体的には、制御部21のクレーン処理部213は、クレーン情報222の定格荷重表から、作業半径に対応する定格荷重を取得する。
【0051】
次に、支援装置20の制御部21は、判定処理を実行する(ステップS1-12)。具体的には、制御部21のクレーン処理部213は、算出した作業半径が定格荷重表に記載されていない場合には、到達不可(揚重不可)と判定し、到達不可メッセージを表示装置H13に出力する。一方、算出した作業半径が定格荷重表に記載されている場合には、到達可能と判定する。到達可能な場合、クレーン処理部213は、定格荷重表から取得した定格荷重と部材の重量とを比較する。部材の重量が定格荷重よりも大きい場合には、荷重オーバー(揚重不可)と判定し、荷重オーバーメッセージを表示装置H13に出力する。一方、部材重量が定格荷重以下の場合には、吊下可能(揚重可能)と判定し、吊下可能メッセージを表示装置H13に出力する。
【0052】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、クレーン情報222には、各クレーンの概要情報が記録されている。これにより、建築現場のBIM空間において、クレーンモデルを的確に配置することができる。
【0053】
(2)本実施形態では、支援装置20の制御部21は、プロパティの設定処理を実行する(ステップS1-4)。これにより、表計算テーブルにおいて設定した構造情報や定格荷重表を、クレーンモデルのプロパティと関連付けて連動させることができる。
【0054】
(3)本実施形態では、支援装置20の制御部21は、ブーム伸縮処理(ステップS1-10)、判定処理(ステップS1-12)を実行する。これにより、クレーンモデルの配置と部材の重心位置とに応じて、クレーンモデルのブームを伸縮させることができる。更に、干渉チェックにより、ブームのブーム角度の妥当性を判断することができる。そして、クレーンモデルのブームを用いて、部材に到達可能かどうかを判定することができる。
【0055】
(4)本実施形態では、支援装置20の制御部21は、定格荷重の特定処理(ステップS1-11)、判定処理(ステップS1-12)を実行する。これにより、作業半径に応じた定格荷重に対して、揚重可能かどうかを確認することができる。
【0056】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、支援装置20の制御部21は、クレーン情報の入力・確認処理を実行する(ステップS1-1)。この場合、ユーザは、取得したクレーン情報の基本情報、構造情報、定格荷重情報を記録した表計算テーブルを作成する。ここで、支援装置20が、外部の重機情報サーバ10に直接、アクセスして、クレーン情報を取得して、クレーン情報222として記憶部22に登録するようにしてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、支援装置20の制御部21は、ブーム伸縮処理を実行する(ステップS1-10)。ここで、支援装置20の制御部21が、ブーム角度を調整するようにしてもよい。この場合には、例えば、ブーム角度として、建物モデルに干渉しない角度で、揚重作業可能な最低角度を用いる。
【0058】
・上記実施形態では、支援装置20の制御部21は、判定処理を実行する(ステップS1-12)。ここでは、ブームの到達、揚重の可否を判定する。判定項目はこれらに限定されるものではない。例えば、敷地モデルと建物モデルとの大きさに応じて、クレーンの作業空間の余裕状況を判定するようにしてもよい。この場合には、旋回台の旋回時において、クレーンモデルと閾値境界との距離を算出する。この距離が所定位置以下の場合には、これを用いた揚重作業についてアラームメッセージを出力する。更に、支援装置20の制御部21が、敷地モデルと建物モデルとの大きさに応じて、構造情報222bを用いて、配置や作業が可能な機種を選択するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、BIM情報223は、3次元CADを用いて、建築物の設計を行なった場合に記録される。BIM情報223は、プロジェクト情報、要素モデル、配置情報、属性情報を含んで構成される。ここで、BIM情報223に工程情報を含めてもよい。この場合、支援装置20の制御部21は、部材を配置する工程を特定し、この工程までに配置される他の建築要素を三次元空間に配置する。そして、支援装置20の制御部21は、他の建築要素と、クレーンのブームとの干渉チェックを行なう。
【0060】
・上記実施形態では、揚重装置として、ラフテレーンクレーン、クローラークレーンを用いる。揚重装置はこれらに限定されるものではない。例えば、タワークレーンを用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…重機情報サーバ、20…支援装置、21…制御部、211…オペレーションシステム、212…BIM実行部、213…クレーン処理部、214…クレーン登録部、22…記憶部、221…テンプレート情報、222…クレーン情報、223…BIM情報