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特開2023-115395強力な抗炎症ソフトコルチコステロイド化合物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115395
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】強力な抗炎症ソフトコルチコステロイド化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07J 3/00 20060101AFI20230810BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230810BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230810BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
C07J3/00 CSP
A61P1/04
A61P11/00
A61P17/00
A61P19/02
A61P27/02
A61P27/16
A61P29/00
A61K31/56
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023109508
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2019568670の分割
【原出願日】2018-06-13
(31)【優先権主張番号】62/518,922
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/559,201
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/562,099
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515249204
【氏名又は名称】ボドール ラボラトリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス エス. ボドール
(57)【要約】
【課題】 疾患を処置する方法を提供すること
【解決手段】 強力なソフトコルチコステロイド、それらを含む薬学的組成物、および抗炎症剤として使用するための方法。また、プロピオン酸フルチカゾンおよび同様のコルチコステロイドをソフトにして、強力であるがより安全な代替物に到達するための方法。フルチカゾンと等しく強力であるがフルチカゾンよりも安全である化合物、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、がとりわけ提供される。特に興味深い別の化合物は、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物:
【化32】
であって、式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、である、化合物。
【請求項2】
S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートおよびS-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートらなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各Xは、Fであり、Yは、Sである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
抗炎症有効量の請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物と、局部的適用または他の局所的適用に適した、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項5】
抗炎症有効量の請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物。
【請求項6】
炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症の軽減において使用するための、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、抗炎症有効量の式(I)を有する化合物:
【化38】
(式中、各Xは独立してFまたはClであり、Yはである)と、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含み、前記炎症反応は、限局性または局部的である、薬学的組成物。
【請求項7】
各Xは、Fであり、Yは、Sである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記炎症反応が、
眼の炎症反応;
鼻の炎症反応;
肺または気管支における炎症反応;
腸の炎症反応;
耳の炎症反応;
関節炎の炎症反応;
皮膚の炎症反応;および
口、歯肉または咽喉の炎症反応
からなる群より選択される、請求項6または7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
式(II)の17α-アルキルカルボニルオキシ置換コルチコステロイド化合物
【化33】
(式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、であり、Rは、C-Cアルキルである)をソフトにするためのプロセスであって、前記式(II)の化合物は、局所的または局部的なコルチコステロイド活性ならびに全身性のコルチコステロイド活性を有し、前記プロセスは、式(II)における17α-OCOR基が17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl)基に置き換えられた対応するコルチコステロイド化合物を合成して、結果として生じる式(I)のソフトコルチコステロイド化合物
【化34】
(式中、XおよびYは各々、上記の式(II)で定義されたとおりである)を得る工程を含み、前記式(I)の化合物は、対応する式(II)の化合物と比べて価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、対応する式(II)の化合物と比べて下した全身性のコルチコステロイド活性を有する、プロセス。
【請求項10】
前記結果として生じる式(I)のソフトコルチコステロイド化合物が、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートおよびS-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートらなる群より選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
式(I)および式(II)において、各Xは、Fであり、Yは、Sである、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記式(I)の化合物は、対応する式(II)の化合物と比べて等価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、対応する式(II)の化合物と比べて低下した全身性のコルチコステロイド活性を有する、請求項9~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記式(I)の化合物は、対応する式(II)の化合物と比べて改善された治療指数を有する、請求項9~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年6月13日に出願した米国特許仮出願第62/518,922号、2017年9月15日に出願した米国特許仮出願第62/559,201号および2017年9月22日に出願した米国特許仮出願第62/562,099号の利益を主張し、これらはすべて、その全体が参照により本明細書中に援用され、依拠される。
【0002】
分野
強力なソフトコルチコステロイド、それらを含む薬学的組成物、および抗炎症剤として使用するための方法。また、プロピオン酸フルチカゾンおよび同様のコルチコステロイドをソフトにして、強力であるがより安全な代替物に到達するための方法。
【背景技術】
【0003】
背景技術
強力な糖質コルチコイドの局部的適用または他の局所的適用は、クッシング様顔貌、下垂体副腎抑制、皮膚萎縮、免疫抑制および創傷治癒阻害などの重篤な有毒作用を生じさせることがある。アレルギーおよび白内障をはじめとした他の種類の毒性反応は、このタイプの薬物を長期間使用したことに起因する。
【0004】
糖質コルチコステロイドを眼に適用すると、さらなる問題が生じる。眼に備わっている防御機構により、眼に適用された用量のうち、ほんの少量しか眼の内部の標的部位に到達せず、一般に、総用量の90パーセント超が全身循環に進む。ひいては、このせいで、上に記載されたタイプの重大な全身性副作用が生じる。さらに、これらの薬物を眼に使用すると、眼内圧(IOP)の上昇という、より重大かつ具体的な副作用が生じる。実際に、コルチコステロイドによって誘発される慢性または急性緑内障が、1960年代初頭から報告されている。一般に、コルチコステロイドは、炎症を管理するために、局部的にしか必要とされない。しかしながら、吸収されたステロイドは、上で述べた重大な副作用に関わる。房水流出路および隣接組織のグリコサミノグリカン(GAG)に対するコルチコステロイドの影響が、糖質コルチコイドによって誘発される高眼圧症の発症において重要であると考えられている。
【0005】
ゆえに、全身作用を欠き、その結果としてこのクラスの薬物に関連する重大な全身性副作用を生じさせない、強力な局所抗炎症ステロイドが、非常に必要とされている。
【0006】
「ソフト」ステロイドは、従来のステロイドに匹敵する強力な抗炎症活性を有するが全身作用が最小限の化合物である。これらの化合物には、6、9および16位に様々な置換基を必要に応じて有するΔおよびΔ1,417α-アルコキシ-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロステン、ならびに17β-カルボン酸のエステルまたはチオエステルである関連する11-置換化合物が含まれる。これらの17α-エーテルは、Bodorの米国特許第4,710,495号に記載されている。好ましい化合物は、17α-アルコキシ-11β-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-3-オン-17β-カルボン酸のハロアルキルエステルであると教示されている。
【0007】
強力な抗炎症活性を有するが全身作用が最小限であると記載されている別のシリーズの「ソフト」ステロイドは、Bodorの米国特許第4,996,335号の17α-カーボネートである。これらの化合物には、好ましい実施形態として、ハロアルキル17α-アルコキシカルボニルオキシ-11β-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-3-オン-
17β-カルボキシレート、ならびに6α-および/または9α-フッ素ならびに16α-または16β-メチル置換基を必要に応じて有する対応するΔ1,4化合物が含まれる。これらの化合物の1つは、1998年にFDAが承認し、5つまたはそれを超える製品として世界中で販売されている、エタボン酸ロテプレドノール(LE)としても知られる、クロロメチル17α-エトキシカルボニルオキシ-11β-ヒドロキシアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボキシレートである。
【0008】
第1世代の「ソフト」コルチコステロイドの設計および開発を通じて、17α-カーボネート-17β-クロロメチルエステルのソフトファーマコフォア中心と、コルチコステロイド構造の通常の修飾(例えば、6αおよび/または9αにおけるフッ素化、16αおよび16β位におけるメチル化、ならびに17β-エステル官能基および17α-カーボネート官能基を変化させること)とを組み合わせて、120を超える化合物が合成され、研究された。QSAR研究から、公知の活性増強基がこのタイプのソフトステロイドにおいても同様に非常に効果的であることが示唆された。相対的レセプター結合活性(RRBA)値は、フルオロ置換基の有無、分子の体積(半経験的量子化学的方法によって計算される)および分配係数の計算値と密接に相関した。一部の置換LE誘導体は、極めて強力であり、例えば、6α,9α-ジフルオロ-16α-メチルロテプレドノール誘導体は、公知のあらゆるコルチコステロイドのうち最も高いRRBA(デキサメタゾンが100であるとして2100)を示した。しかしながら、このクラスでは、その新しいステロイドが、強力であればあるほど、「ソフト」ではなくなることが見出された。換言すれば、これらは、容易に加水分解されない/不活性化されないが酸化的代謝を受けやすい、現在知られている強力なコルチコステロイドにより近い。このようにして、6位および9位および16位において置換された化合物は結局、後に、真の「ソフト」ドラッグではないことが判明した。
【0009】
エチプレドノールジクロアセテート(ED;エチル17α-ジクロロアセトキシ-11β-ヒドロキシアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボキシレート)は、プレドニゾロンの不活性な代謝産物であるΔ-コルチエン酸(1)から出発して、それが17α-ジクロロアセテート(2)およびエステル化によってED(3)に変換される、レトロメタボリック原理を用いて設計された第2世代のソフトコルチコステロイドである。下記のスキーム1を参照のこと;Bodorの米国特許第5,981,517号も参照のこと。
【化1】
【0010】
EDは、ユニークな第2世代の「ソフト」コルチコステロイドであり、17α位にハロゲン置換基を含む最初のものであり、実際に重要なファーマコフォアとして働く。ジクロロ官能基が活性に必要である(モノクロロ誘導体は、塩素が立体障害によって追い込まれる位置が好ましくないことに起因して活性を欠く)ことが示されている。ジクロロアセチル官能基は、EDの「ソフト」な性質にも関わっている。ジクロロ置換基は、酢酸エステルにおける酵素加水分解の二次速度定数kcat/kMを非置換エステルと比べて20倍上昇させるが、一塩素の置換基は何の変化も引き起こさない。
17β-クロロメチルエステルのエステル切断によって加水分解的に不活性化されるエタボン酸ロテプレドノール(LE;4)によって代表される、コルチエン酸に基づく第1世代の「ソフト」コルチコステロイドとは対照的に、EDでは、加水分解は、17β-エステルにおいて切断せず、主に、17α-ジクロロアセチル官能基において切断する。それにもかかわらず、対応する17α-OH-代謝産物は、不活性であるので、ソフトドラッグの要件を満たす。
【化2】
【0011】
しかし、未だにこの分野において、強力かつ局所的な抗炎症活性を有するが全身作用が最小限であるかまたは存在しない新しい抗炎症ステロイドが非常に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,710,495号明細書
【特許文献2】米国特許第4,996,335号明細書
【特許文献3】米国特許第5,981,517号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
上で述べたように、17α-ジクロロアセチル官能基を有する、Δ-コルチエン酸に基づく第2世代のソフトステロイド(エチプレドノールジクロアセテート)は、主に、17β-エステルではなく17α-ジクロロアセテートにおいて加水分解されると見られる。動物種によっては、両方のエステル官能基が加水分解されることがあり、これは、これらの化合物の「ソフト」な性質に対して強い影響を及ぼす。これに反して、EDは、LEよりもいくらか強力である(約200対160のRRBA)。驚くべきことに、6αおよび9αおよび16α-メチルまたはβ-メチル置換における、効力を増強させる通常のFまたはClは、第1世代のLEファミリーの化合物での状況とは異なって、さらにより強力であるがよりソフトなコルチコステロイドをもたらし得る。したがって、この新しいえり抜きのクラスのステロイドの合成およびその特性の調査に着手し、それについてここで報告する。
【0014】
本願の第1の主要な例示的実施形態では、局所的または局部的な抗炎症活性が高く、プロピオン酸フルチカゾンと比べて治療指数が改善されたソフトコルチコステロイドが提供され、その化合物は、式(I):
【化3】
によって表され、式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSである。
【0015】
別の例示的な実施形態において、式(I)のソフトコルチコステロイドは、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート(フルチカゾンジクロアセテート);S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート;フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート;またはクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。式(I)の化合物のうち、プロピオン酸フルチカゾンの最も類似のアナログ、すなわち、名前を挙げたばかりのS-フルオロメチル化合物は、顕著な活性を有しながらも、所望の加水分解感受性を有するので、強力であるがより安全な、プロピオン酸フルチカゾンの代替物である。
【0016】
別の例示的な実施形態では、抗炎症有効量の式(I)を有する化合物:
【化4】
(式中、各Xは、独立して、FおよびClからなる群より選択され、Yは、OまたはSで
ある)と、局部的適用または他の局所的適用に適した、その化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、薬学的組成物が提供される。さらに具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート;S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート;フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート;またはクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。
【0017】
なおもさらなる実施形態では、抗炎症有効量の上記の式(I)の化合物と、その化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物が提供される。さらに具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つである。
【0018】
本明細書中の別の実施形態は、限局性の炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症(inflammation in or on a warm-blooded animal)を軽減するための方
法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に局所投与する工程を含む。
【0019】
本明細書中の別の実施形態は、局部的炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に局部投与する工程を含む。
【0020】
本明細書中の別の実施形態は、眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような眼科用組成物を前記動物の眼(単数もしくは複数)に投与する工程を含む。
【0021】
別の実施形態は、鼻の炎症反応を示している温血動物における鼻の粘膜の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経鼻的に投与する工程を含む。
【0022】
なおも別の実施形態は、肺または気管支において炎症反応を示している温血動物の肺または気管支における喘息またはCOPDを軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物
が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を経口吸入によって前記動物に投与する工程を含む。
【0023】
さらに別の実施形態は、腸の炎症反応を示している温血動物において上部腸管または下部腸管の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に直腸投与する工程を含む。
【0024】
別の実施形態は、腸の炎症反応を示している温血動物において上部腸管または下部腸管の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経口投与する工程を含む。
【0025】
なおも別の実施形態は、耳の炎症反応を示している温血動物の耳(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物の耳(単数もしくは複数)に投与する工程を含む。
【0026】
別の実施形態は、関節炎の炎症反応を示している温血動物の関節(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記関節(単数もしくは複数)に注射する工程を含む。
【0027】
なおもさらなる実施形態は、皮膚の炎症反応を示している温血動物の皮膚の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経皮的に投与する工程を含む。
【0028】
本明細書中のなおも別の実施形態は、口、歯肉または咽喉の炎症反応を示している温血動物の口、歯肉または咽喉の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(I)の化合物が、上で名前が挙げられた4つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経口投与する工程を含む。
【0029】
なおもさらなる実施形態では、式(II)の17α-アルキルカルボニルオキシ置換コルチコステロイド化合物をソフトにするためのプロセスが提供され、
【化5】
式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、Rは、C-Cアルキルであり、前記式(II)の化合物は、局所的または局部的なコルチコステロイド活性ならびに全身性のコルチコステロイド活性を有し、前記プロセスは、式(II)における17α-OCOR基が17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl)基に置き換えられた対応するコルチコステロイド化合物を合成して、結果として生じる式(I)のソフトコルチコステロイド化合物を得る工程を含み、
【化6】
式中、XおよびYは、上記の式(II)で定義されたとおりであり、前記式(I)の化合物は、対応する式(II)の化合物と比べて実質的に等価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、対応する式(II)の化合物と比べて実質的に低下した全身性のコルチコステロイド活性を有する。このプロセスの具体的な実施形態において、結果として生じる式(I)のソフトコルチコステロイド化合物は、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート;S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート;フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート;またはクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。
【0030】
本願の第2の主要な例示的実施形態では、局所的または局部的な抗炎症活性が高く、対応する17α-アルコキシカルボニル(-OCOR)エステルと比べて治療指数が改善されたソフトコルチコステロイドが提供され、その化合物は、式(III)によって表され、
【化7】
式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、波線は、αまたはβ配置を示す。
【0031】
別の例示的な実施形態において、式(III)のソフトコルチコステロイドは、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(carboylate)または2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。式(III)の化合物は、顕著な活性を有しながらも、所望の加水分解感受性を有し、強力であるがより安全な、対応する17α-アルコキシカルボニル(-OCOR)エステルの代替物である。
【0032】
別の例示的な実施形態では、抗炎症有効量の式(III)を有する化合物:
【化8】
(式中、各X’は、独立して、H、FおよびClからなる群より選択されるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、波線は、αまた
はβ配置を示す)と、局部的適用または他の局所的適用に適した、その化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、薬学的組成物が提供される。さらに具体的な実施形態において、式(III)の化合物は、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートまたは2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。
【0033】
なおもさらなる実施形態では、抗炎症有効量の上記の式(III)の化合物と、その化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物が提供される。さらに具体的な実施形態において、式(III)の化合物は、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つである。
【0034】
本明細書中の別の実施形態は、限局性の炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた式(III)の2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に局所投与する工程を含む。
【0035】
本明細書中の別の実施形態は、局部的炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた式(III)の2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量のその化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に局部投与する工程を含む。
【0036】
本明細書中の別の実施形態は、眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた式(III)の2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような眼科用組成物を前記動物の眼(単数もしくは複数)に投与する工程を含む。
【0037】
別の実施形態は、鼻の炎症反応を示している温血動物における鼻の粘膜の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経鼻的に投与する工程を含む。
【0038】
なおも別の実施形態は、肺または気管支において炎症反応を示している温血動物の肺または気管支における喘息またはCOPDを軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた式(III)の2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を経口吸入によって前記動物に投与する工程を含む。
【0039】
さらに別の実施形態は、腸の炎症反応を示している温血動物において上部腸管または下部腸管の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に直腸投与する工程を含む。
【0040】
別の実施形態は、腸の炎症反応を示している温血動物において上部腸管または下部腸管の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経口投与する工程を含む。
【0041】
なおも別の実施形態は、耳の炎症反応を示している温血動物の耳(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物の耳(単数もしくは複数)に投与する工程を含む。
【0042】
別の実施形態は、関節炎の炎症反応を示している温血動物の関節(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記関節(単数もしくは複数)に注射する工程を含む。
【0043】
なおもさらなる実施形態は、皮膚の炎症反応を示している温血動物の皮膚の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経皮的に投与する工程を含む。
【0044】
本明細書中のなおも別の実施形態は、口、歯肉または咽喉の炎症反応を示している温血動物の口、歯肉または咽喉の炎症を軽減するための方法であり、その方法は、特に、上で定義されたような式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の式(III)の化合物、または特に、式(III)の化合物が、上で名前が挙げられた2つの具体的な化合物のうちの1つであるとき、抗炎症有効量の上で定義されたような薬学的組成物を前記動物に経口投与する工程を含む。
【0045】
なおもさらなる実施形態では、式(IV)の17α-アルキルカルボニルオキシ置換コルチコステロイド化合物をソフトにするためのプロセスが提供され、
【化9】
式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、Rは、C-Cアルキルであり、波線は、αまたはβ配置を示し、前記式(IV)の化合物は、局所的または局部的なコルチコステロイド活性ならびに全身性のコルチコステロイド活性を有し、前記プロセスは、式(IV)における17α-OCOR基が17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl)基に置き換えられた対応するコルチコステロイド化合物を合成して、結果として生じる式(III)のソフトコルチコステロイド化合物を得る工程を含み、
【化10】
式中、X’、Yおよび波線は、上記の式(IV)で定義されたとおりであり、前記式(III)の化合物は、対応する式(IV)の化合物と比べて実質的に等価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、対応する式(IV)の化合物と比べて実質的に低下した全身性のコルチコステロイド活性を有する。このプロセスの具体的な実施形態において、結果として生じる式(III)のソフトコルチコステロイド化合物は、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート;または2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートである。
【0046】
なおもさらなる実施形態では、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物
の調製における、式(I)を有する化合物の使用が提供され、
【化11】
式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、その薬学的組成物は、抗炎症有効量のその化合物と、その化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む。
【0047】
さらに別の例示的な実施形態では、眼科用組成物の調製における、式(I)を有する化合物の使用が提供され、
【化12】
式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、その眼科用組成物は、抗炎症有効量のその化合物と、その化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む。
【0048】
さらに例示的な実施形態では、炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症の軽減において使用するための、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物が提供され、その薬学的組成物は、抗炎症有効量の式(I)を有する化合物:
【化13】
(式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSである)と、その化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含み、その炎症反応は、限局性または局部的である。別の例示的な実施形態では、眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症の軽減において使用するための、抗炎症有効量の式(I)を有する化合物:
【化14】
(式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSである)と、その化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物が提供される。
【0049】
さらに別の例示的な実施形態では、式(IV)
【化15】
(式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、Rは、C1-C3アルキルであり、波線は、αまたはβ配置を示す)における17α-OCOR基を17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl2)基で置換することによって式(III)のソフトコルチコステロイド化合物:
【化16】
(式中、X’およびYの各々は、上記の式(IV)で定義されたとおりである)を生成するための、式(IV)の17α-アルキルカルボニルオキシ置換コルチコステロイド化合物の使用が提供され、前記式(IV)の化合物は、局所的または局部的なコルチコステロイド活性ならびに全身性のコルチコステロイド活性を有し、前記式(III)の化合物は、式(IV)の対応する化合物と比べて実質的に等価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、式(IV)の対応する化合物と比べて実質的に低下した全身性のコルチコステロイド活性を有する。
【0050】
別の例示的な実施形態では、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物の調製における、式(III)を有する化合物の使用が提供され、
【化17】
式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、波線は、αまたはβ配置を示し、その薬学的組成物は、抗炎症有効量のその化合物と、その化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む。
【0051】
さらに別の例示的な実施形態では、眼科用組成物の調製における、式(III)を有する化合物の使用が提供され、
【化18】
式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、波線は、αまたはβ配置を示し、その眼科用組成物は、抗炎症有効量のその化合物と、その化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む。
【0052】
別の例示的な実施形態では、炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症の軽減において使用するための、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物が提供され、その薬学的組成物は、抗炎症有効量の式(III)を有する化合物:
【化19】
(式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、波線は、αまたはβ配置を示す)と、その化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含み、その炎症反応は、限局性または局部的である。
【0053】
さらに別の例示的な実施形態では、眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症の軽減において使用するための、抗炎症有効量の式(III)を有する化合物:
【化20】
(式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、波線は、αまたはβ配置を示す)と、その化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
本明細書中で使用される「ソフトにする」という表現は、高い局所的/局部的なコルチコステロイド活性を維持しつつ、前記コルチコステロイド化合物における[例えば、(II)におけるような]酸化的に代謝可能な構造基を容易に加水分解可能な構造基で置換することによって、抗炎症コルチコステロイドの全身性のコルチコステロイド活性/毒性(または副作用)を低下させることを意味する。特に、「ソフトにする」という表現は、対
応する(I)または(III)を得るために、17α-OCOR基を17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl)基で置換しつつ、それぞれ化合物(II)または(IV)の6α位、9α位および16α位に効力を高める置換を保持するコルチコステロイド化合物[上記の(I)または(III)]を合成することを意味する。
【0055】
ED(3)の合成は、上記のスキーム1に図示されている。式3の化合物に対して示されたプロセスと類似のプロセスを用いるが、Δ-コルチエン酸を下記に示されるフッ化アナログ6および7で置き換えて、一般式5によって表されるEDアナログを合成した。
【化21】
【0056】
コルチエン酸6および7を、対応する17α-ジクロロアセチルエステルに変換した。それらは、下記の表1に列挙されていて、本明細書の以後にある使用実施例に含められる、様々な17β-エステル8~15に対する出発物質であった。
【0057】
最後に、最も使用されている非常に強力なコルチコステロイドの1つであるプロピオン酸フルチカゾン(FLU)の前駆体である商業的に入手可能な6α,9α-ジフルオロ-16α-メチルプレドニゾロン(18)を、対応するコルチエン酸誘導体19に酸化し、必要であれば、19をチオコルチエン酸23に変換した。下記のスキーム2に図示されるように、19および23からそれぞれ20および24へのジクロロアセチル化、ならびにその後の17β-カルボキシ官能基のエステル化によって、目標のハロ(ClまたはF)16α-メチルエステル21、22、25および26に到達した。
【化22】
【0058】
化合物25は、プロピオン酸フルチカゾンのソフトアナログであり、17α-プロピオニル官能基が、加水分解に対しより不安定なジクロロアセチル官能基に置き換えられている。化合物25または他の構造アナログのいくつかは、驚くべきことに、高活性であるが安全性が改善されているがゆえに治療指数が改善されているという点に関して、フルチカゾンより優れている。
【化23】
【0059】
エチプレドノールジクロアセテートおよびそのアナログは、ヒト単球細胞株THP-1からのIL-1βの遊離を有意に阻害した。EDおよびそのアナログのインビトロ抗炎症効果を、様々な条件下(希釈または無希釈のヒト全血、血清とのプレインキュベーション)においてLPS誘発TNFα放出を用いて評価することにより、様々な化合物の内因性の抗炎症活性および全身性の生物学的安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
EDの2つの代表的なアナログを、広く使用されている、オバルブミンで感作および負荷されたBrown Norwayラットモデルにおけるインビボ研究のために選択した。この動物におけるアレルギー負荷は、好酸球数および粘液を産生する杯細胞数の増加が特徴的な肺、および血管周囲の浮腫の滲出液において広範な炎症を引き起こす。さらに、喘息の主要な特徴である気道過敏症も発症する。次いで、EDを、このモデルにおいて、選択された9α-フルオロ-16β-メチルアナログ(11)と比較した。最後に、フルチカゾンアナログ25をフルチカゾンと比較した。結果を表2に要約する。
【0061】
表1:構造(5)によって表される選択された17α-ジクロロアセトキシエチプレドノールアナログのインビトロ抗炎症活性(nMを単位とするIC50値):
【表1】
LPSで刺激された血液細胞のTNFα産生の阻害。ばらつきは、種々の個体(3~6個体が血液を提供した)の血液における差を反映している。
(a)希釈血液1:5
(b)無希釈
**マイトジェンによって誘発されるPBMC増殖の阻害
***LPSで刺激された全血細胞のTNF-α産生の阻害(nMを単位とするIC50
(c)ヒト血漿中でのプレインキュベーションなし
(d)一晩プレインキュベーション
【0062】
表2:(負荷の2時間前に)気管内に投与されたエチプレドノールジクロアセテート(ED)、アナログ11、フルチカゾン(FLU)およびそのアナログ25の、オバルブミンで感作および負荷されたBrown Norwayラット(N=10)の気道の変化に対する効果
【表2】
ED50=50%有効量(Prisma);
MSED=統計学的に有意な最小有効量(マンホイットニーのU検定)
**アセチルコリン最大量に対する相対的反応として計測された気道過敏症
***気管支肺胞洗浄液
ND=測定されず
【0063】
本発明者および共同研究者らは、以前に、LPSで刺激されたヒト血液におけるTNF-α産生に対するED(3)の明白な抗炎症活性を報告した。希釈(1:5)血液と無希釈血液とにおける3の活性の差にも注目した。EDの有効性は、存在する血清タンパク質の量の増加に応じて減少し、この活性の低下が、元の化合物の消失速度および提唱される主要代謝産物の出現と一致することがLC/MS/MSによって実証された。その当時、EDの推定分解酵素は、不明であり、カルボキシルエステラーゼであると考えられていた。驚くべきことに、同定された主要代謝産物は、17α-ヒドロキシ誘導体、つまり、高度に束縛された17β-エステルよりも容易に切断されるジクロロアセチル官能基であった。
【0064】
最近、本発明者および共同研究者らは、その加水分解酵素が、ヒト血液中のHDLと関連するパラオキソナーゼ1であることを同定した。この事実は、希釈の効果を説明するだけでなく、複数の置換を有するが改善された治療指数も有する非常に強力なコルチコステロイドの同定の可能性も高める。先に述べたように、置換ロテプレドノール誘導体(6α、9α、16-α、β)は、容易に加水分解しないので、許容できる程度に「ソフト」にはならない。さらに、「ソフト」ステロイドであるとされているフルチカゾンは、17β-フルオロメチルチオエステルの加水分解を起こさず、その代わりに、P-450によって触媒される比較的ゆっくりとした代謝に左右される。本願は、フルチカゾンのジクロロアセチルアナログ(25)をはじめとしたED置換アナログの研究を記載する。
【0065】
表1は、様々な条件におけるインビトロ活性の結果を示している。1番目の段は、血液
の希釈の効果を明白に示しており、対応するIC50は、無希釈の血液よりも最大10倍低い。研究された他の重要な特性は、TNF-α産生を評価する前のプレインキュベーションの影響である。これは、一般的な循環器系におけるこれらの化合物の予想外にも優れた安定性の指標である。以前の研究は、ED(3)が、インキュベーション中にその活性を失う(2日間で5倍、5日間で100倍)と示した。同じ条件下において、同等に有効なデキサメタゾンおよびブデソニド(budesonide)は、完全な活性を維持する。
【0066】
これらの化合物のうちの2つを、さらなるインビボ研究のために選択した。EDの9α-フルオロ-16-β-メチルアナログ(11)およびフルチカゾンアナログ(25)を、オバルブミンで感作されたBrown Norwayラットモデルにおいて研究した。アレルゲン誘発気道過敏症(AHR)、アレルゲン誘発の細胞浸潤(気管支肺胞洗浄液(BALF)および肺組織における好酸球)、杯細胞の過形成、粘液分泌の増加、およびアレルゲンによって誘発される血管周囲の浮腫形成をはじめとした様々な計測パラメータを表2に示す。
【0067】
結果から、9αおよび6α,9α-ジフルオロならびに16-メチルによる置換が、エチプレドノールの活性を高めることが明確に実証される。しかしながら、最も魅力的な特徴は、有効性に対する血清/血液とのインキュベーション時間の効果によって反映されるような、増強されたソフトな性質である。明らかに、現在のパラオキソナーゼは、LEシリーズとは異なり、上記の置換基によってほとんど減速せずに17α-ジクロロアセチル官能基を加水分解する。興味深いことに、ED(3)の9α-F-16β-メチルアナログ(11)は、粘液産生を除いて、EDに勝る有意な改善を示さない。他方で、フルチカゾンアナログ25は、主に好酸球増加および浮腫形成の減少について、FLUよりも全体的に優れている。
【0068】
表1および2に含められた結果によって例証されるように、第2世代のソフトステロイドであるEDの選択された置換アナログは、予想外に/驚くべきことに、ハードアナログおよび17α-カーボネートソフトアナログと比べて、全体的に高い局所的/局部的な抗炎症活性と、有意に改善された治療指数との両方を有する。特に、フルチカゾンアナログである化合物25は、最も強力であるが最も有毒で、最も急勾配の副作用曲線を有するコルチコステロイドであるフルチカゾンよりも優れていると見込まれる。
【0069】
以下の例示的な実施形態について、別段示されない限り、化学物質は、SIGMA(St.Louis,MO,USA)から購入した。エチプレドノールジクロアセテート(エチル17α-ジクロロアセトキシ-11β-ヒドロキシアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボキシレート、BNP-166)は、Department of Chemistry,Institute for Drug Research,Budapest,Hungaryにおいて合成された。Urethane、Primazin(2%キシラジン)、Ketalar(10%ケタミン)およびUnopetteキットを、それぞれReanal(Budapest,Hungary)、Alfasan International BV(AB Woerden,The Netherlands)、Parke Davis(London,UK)およびBD Biosciences(Franklin Lakes,NJ,USA)から購入した。
【実施例0070】
実施例1:11β,17α-ジヒドロキシアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボン酸(1)
30℃のテトラヒドロフラン(600ml)とメタノール(220ml)との混合物中の(70g,0.194mol)のプレドニゾロンに、温かい(50℃の)水(550m
l)中のメタ過ヨウ素酸ナトリウム(120g,0.561mol)の溶液を25分間にわたって加えた。その反応混合物を室温で2時間撹拌した。有機溶媒を真空中で除去した。沈殿物を濾過により回収し、水で2回洗浄し、乾燥させずに、0.25N水酸化ナトリウム水溶液(880ml)に溶解した。不溶性の不純物を濾過により除去し、透明の溶液を塩化メチレンで2回洗浄し、pH=1になるまで0.5N塩酸(550ml)で酸性化した。沈殿物を濾過により回収し、水で3回洗浄し、一定の重量まで40℃で乾燥させた。収量:63.7g(95%)、白色結晶性粉末。Mp230℃(decomp.)。
【0071】
1H NMR (250 MHz, DMSO-d6): δ 0.92 (3 H, s, CH3-18), 1.40 (3 H, s, CH3-19), 4.36 (1 H, ms, Hα-11), 5.91 (1 H, d, J = 10 Hz, H-2).
実施例2:17α-ジクロロアセトキシ-11β-ヒドロキシアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボン酸(2)
【0072】
塩化メチレン(1500ml)中の塩化ジクロロアセチル(62.5ml,95.8g;0.65mol)を、水(2000ml)中の重炭酸カリウム(139.5g,1.39mol)および1(45.0g,0.13mol)の撹拌溶液にゆっくり2時間にわたって加えた。得られた反応混合物を、pH=1~2になるまで5N塩酸(135ml)で酸性化した。層を分離し、水層を塩化メチレンで抽出した(2×210ml)。合わせた有機層を飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した(2×360ml)。有機層を、水(1000ml)中の重炭酸カリウム(17.1g,172mmol)の溶液とともに30分間撹拌した。そのプロセスを、水(600ml)中の重炭酸カリウム(8.6g,86.0mmol)の溶液を用いて繰り返した。合わせた水溶液を塩化メチレン(135ml)で洗浄し、次いで、撹拌しながら、pH=1~2になるまで2N塩酸でゆっくり酸性化した。その溶液を45~50℃に加温し、次いで、沈殿した白色固体を濾過により回収し、水で洗浄した。得られた白色粉末を、一定の重量まで、真空中、45℃において乾燥させた。収量:55.4g(93%)、白色結晶性粉末。Mp210~214℃。
【0073】
【化24】
実施例3:エチル17α-ジクロロアセトキシ-11β-ヒドロキシアンドロスタ-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボキシレート(3)(ED-エチプレドノールジクロアセテート)
【0074】
方法A:ヨウ化エチルによる2のエステル化による方法
【0075】
無水ジメチルホルムアミド(500ml)中の、2(50g,0.109mol)および無水炭酸カリウム(16.58g,0.120mol)の撹拌懸濁液に、ヨウ化エチル(13.1ml,25.5g;0.164mol)を室温において加えた。1.5時間撹拌した後、その反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液(1000ml)で希釈し、1時間撹拌した。得られた沈殿物を濾過により回収し、水で洗浄した(3×180ml)。粗生成物(53.2g)を酢酸エチル(400ml)から再結晶させた。収量:31.9g(61%)、白色結晶性粉末。Mp201~202.5℃。
【0076】
【化25】
【0077】
方法B:硫酸ジエチルによる2のエステル化による方法
【0078】
ヨウ化エチルの代わりに硫酸ジエチル(21.5ml,25.3g,0.164mol)を使用したという点が異なる、上に記載された手順(方法A)に従った。収量:70%。
実施例4:9α-フルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸(6)
【0079】
9α-フルオロプレドニゾロンから出発して、上記で1について記載されたように調製した。収量:89%、白色結晶性粉末。Mp258~259℃。
【0080】
【化25-2】
実施例5:6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸(7)
【0081】
6α,9α-ジフルオロ-プレドニゾロンから出発して、上記で1について記載されたように調製した。収量:97%、白色結晶性粉末。Mp265~267℃。
【0082】
1H NMR (CD3OD): δ 1.17 (3H, s, CH3-18), 1.24 (3H, d, CH3-16), 1.59 (3H, s, CH3-19), 2.60 (1H, m, H-8), 4.25 (1H, ddd, Hα-11), 5.54 (1H, dddd, Hβ-6), 6.29 (1H, m, H-4), 6.32 (1H, dd, H-2), 7.34 (1H,
dd, H-1).
実施例6:17-α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸(8)
【0083】
ジクロロメタン(75ml)中の塩化ジクロロアセチル(3.1ml,4.76g;32.3mmol)を、水(100ml)中の、炭酸水素カリウム(6.94g,69.3mmol)および6(1.75g,4.62mmol)の撹拌溶液にゆっくり2時間にわたって加えた。得られた反応混合物を、pH=1.2になるまで5N塩酸(4.8ml)
で酸性化した。層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出した(2×10ml)。合わせた有機層を飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した(2×13ml)。有機層を、水(35ml)中の炭酸水素カリウム(0.608g,6.07mmol)の溶液とともに30分間撹拌した。そのプロセスを、水(22ml)中の炭酸水素カリウム(0.306g,3.05mmol)の溶液を用いて繰り返した。合わせた水溶液をジクロロメタン(10ml)で洗浄し、次いで、撹拌しながら、pH=1~2になるまで2N塩酸でゆっくり酸性化した。その溶液を45~50℃に加温し、次いで、沈殿した白色固体を濾過により回収し、水で洗浄した。得られた白色粉末を、一定の重量まで、真空中、45℃において乾燥させた。収量:1.95g(86%)、白色結晶性粉末。Mp193~194℃。
【0084】
1H NMR (MeOH-d4): δ 1.13 (3H, s, CH3-19), 1.43 (3H, d, CH3-16), 4.29 (1H, m, Hα-11), 6.10 (1H, m, H-4), 6.30 (1H, dd, H-2), 7.40 (1H, d, H-10).
実施例7:17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ(difloro)-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸(9)
【0085】
7から出発して、上記で8について記載されたように調製した。収量:78%、白色結晶性粉末。Mp186℃。
【0086】
1H NMR (CDI3 + 3滴のメタノール-d4): δ 1.07 (3H, s, H-18), 1.40 (3H, d, CH3-16), 1.51 (3H, s, H-19), 2.17 (1H, m, Hα-16), 2.45 (1H, m, H-8), 4.29 (1H, m, Hα-11), 5.37 (1H, dddd, Hβ-6), 5.91 (1H, s, CHCI2), 6.32 (1H, dd, H-2), 6.38 (1H, m, h-4), 7.16 (1H, dd, H-1). 13C NMR (CDCI3 + 3滴のメタノール-d4): δ 16.7 (18), 20.0 (CH3-16), 22.9 (19), 32.6 (8), 33.9 (7), 34.8 (15), 36.1 (12), 43.0 (14), 45.1 (16), 47.3 (13), 48.2 (10), 64.3 (CHCI2), 71.2 (11), 82.6 (6), 92.7 (17), 99.1 (9), 120.7 (4), 129.7 (2), 151.5 (1), 162.3 (5), 163.4 (OC=O), 169.6 (20), 186.1 (3).
実施例8:メチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(10)
【0087】
無水ジメチルホルムアミド(3.5ml)中の、8(0.35g,0.8mmol)および無水炭酸カリウム(0.122g,0.88mmol)の撹拌懸濁液に、ヨウ化メチル(0.17g,1.2mmol)を室温において加えた。1.5時間撹拌した後、その反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液(8ml)で希釈し、90分間撹拌した。得られた沈殿物を濾過により回収し、水で洗浄した(3×5ml)。粗生成物(0.32g)を、ジクロロメタン-メタノール95:5で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、次いで、酢酸エチル/n-ヘキサンから再結晶させた。収量:90%、オフホワイトの結晶性粉末。Mp213~215℃。
【0088】
1H NMR (CDCI3): δ 1.08 (3H, s, CH3-18), 1.57 (3H, s, CH3-19), 1.46 (3H, d, CH3-16), 2.22 (1H, m, Hα-16), 4.44 (1H, m, Hα-11), 6.14
(1H, m, H-4), 6.35 (1H, dd, H-2), 7.20 (1H, d, H-1), 3.71 (3H, s,
CH3O), 5.91 (1H, s, CHCI2). 13C NMR (CDCI3): 151.6 (C-1), 130.0 (C-2), 186.3 (C-3), 125.3 (C-4), 166.5 (C-5), 30.9 (C-6), 27.5 (C-7), 33.9 (C-8), 100.0 (C-9), 48.1 (C-10), 72.0 (C-11), 37.3 (C-12), 47.7 (C-13), 43.3 (C-14), 35.0 (C-15), 45.6 (C-16), 20.0 (CH3-16), 92.8 (C-17), 17.3 (C-18), 23.0 (C-19), 167.8 (C-20), 51.9 (CH3O), 163.4 (OC=O),
64.3 (CHCI2).
実施例9:エチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(11)
【0089】
8から出発し、ヨウ化メチルの代わりに硫酸ジエチルを使用して、上記で10について記載されたように調製した。収量:約100%、白色結晶性粉末。Mp194~195℃。
【0090】
【化26】
実施例10:クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(12)
【0091】
8から出発し、ヨウ化メチルの代わりに4モル過剰なクロロヨードメタンを使用して、上記で11について記載されたように調製した。8.5時間撹拌した後、その反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液で希釈した。粗生成物を、ジエチルエーテルでの抽出によって単離し、酢酸エチル-n-ヘキサン1:1で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製した。次いで、生成物を酢酸エチル/n-ヘキサンから再結晶させた。収量:48%、白色結晶性粉末。Mp177~180℃。
【0092】
1H NMR (CDCI3): δ 1.13 (3H, s, CH3-18), 1.57 (3H, s, CH3-19), 1.48 (3H, d, CH3-16), 2.23 (1H, m, Hα-16), 4.46 (1H, m, Hα-11), 6.15
(1H, m, H-4), 6.36 (1H, dd, H-2), 7.18 (1H, d, H-1), 3.50/5.94 (2H, d, CH2O), 5.92 (1H, s, CHCI2). 13C NMR (CDCI3): 151.3 (C-1), 130.1
(C-2), 186.2 (C-3), 125.4 (C-4), 166.3 (C-5), 30.9 (C-6), 27.5 (C-7), 33.9 (C-8), 99.7 (C-9), 48.0 (C-10), 71.9 (C-11), 37.3 (C-12), 48.0
(C-13), 43.5 (C-14), 34.9 (C-15), 45.8 (C-16), 19.9 (CH3-16), 91.9 (C-17), 16.9 (C-18), 23.0 (C-19), 165.3 (C-20), 68.9 (CH2O), 163.4 OC=O), 64.1 (CHCI2).
実施例11:2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(13)
【0093】
8から出発し、ヨウ化メチルの代わりに6モル過剰な2-ブロモエタノールおよび触媒量のヨウ化カリウムを使用して、上記で11について記載されたように調製した。反応混合物を24時間撹拌し、それを水で希釈した後、粗生成物を、ジエチルエーテルでの抽出によって単離し、ジクロロメタン-メタノール95:5で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製した。次いで、生成物を、n-ヘキサンでのトリチュレー
トによって結晶化した。収量:50%、白色結晶性粉末。Mp193℃。
【0094】
1H NMR (CDCI3): δ 1.11 (3H, s, CH3-18), 1.57 (3H, s, CH3-19), 1.46 (3H, d, CH3-16), 2.23 (1H, m, Hα-16), 4.41 (1H, m, Hα-11), 6.15
(1H, m, H-4), 6.35 (1H, dd, H-2), 7.21 (1H, d, H-1), 4.28 (2H, m,
CH2O), 3.82 (2H, m, CH2OH), 5.93 (1H, s, CHCI2). 13C NMR (CDCI3): 151.9 (C-1), 129.9 (C-2), 186.5 (C-3), 125.2 (C-4), 166.9 (C-5), 30.9
(C-6), 27.6 (C-7), 33.9 (C-8), 100.0 (C-9), 48.1 (C-10), 72.0 (C-11), 37.0 (C-12), 47.8 (C-13), 43.4 (C-14), 35.0 (C-15), 45.7 (C-16), 20.0 (CH3-16), 92.8 (C-17), 17.2 (C-18), 22.9 (C-19), 167.2 (C-20), 66.5
(CH2O), 60.9 (CH2OH), 163.7 (OC=O), 64.3 (CHCI2).
実施例12:メチル6α,9α-ジフルオロ-17α-ジクロロアセトキシ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(14)
【0095】
9から出発して、上記で10について記載されたように調製した。収量:51%、白色結晶性粉末。Mp216~217℃。
【0096】
1H NMR (CDCI3): δ 1.08 (3H, s, H-18), 1.46 (3H, d, CH3-16), 1.55
(3H, s, H-19), 2.50 (1H, m, H-8), 3.72 (3H, s, CH3O), 4.44 (1H, m, Hα-11), 5.38 (1H, dddd, Hβ-6), 5.92 (1H, s, CHCI2), 6.38 (1H, dd, H-2), 6.45 (1H, m, H-4), 7.12 (1H, dd, H-1). 13C NMR (CDCI3): δ
17.2 (18), 20.0 (CH3-16), 23.1 (19), 32.6 (8), 33.9 (7), 34.9 (15),
37.1 (12), 43.0 (14), 45.5 (16), 47.7 (13), 47.9 (10), 51.9 (CH3O),
64.3 (CHCI2), 71.8 (11), 86.3 (6), 92.5 (17), 98.6 (9), 121.3 (4),
130.4 (2), 150.2 (1), 161.0 (5), 163.3 (OC=O), 171.7 (20), 185.4 (3).
実施例13:エチル6α,9α-ジフルオロ-17α-ジクロロアセトキシ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(15)
【0097】
9から出発して、上記で11について記載されたように調製した。粗生成物を酢酸エチル/n-ヘキサンから再結晶させた。収量:57%、白色結晶性粉末。Mp155~156℃。
【0098】
【化27】
実施例14:クロロメチル6α,9α-ジフルオロ-17α-ジクロロアセトキシ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(16)
【0099】
9から出発し、ヨウ化メチルの代わりに4モル過剰なクロロヨードメタンを使用して、上記で12について記載されたように調製した。その反応混合物を26.5時間撹拌し、次いで、水で希釈した。粗生成物を、ジエチルエーテルでの抽出によって単離し、ジクロロメタン-メタノール95:5で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製した。得られた生成物を酢酸エチル/n-ヘキサンから再結晶させた。収量:28%、白色結晶性粉末。Mp142~144℃。
【0100】
1H NMR (CDCI3): δ 1.13 (3H, s, H-18), 1.49 (3H, d, CH3 - 16), 1.55 (3H, s, H -19), 2.51 (1H, m, H-8), 4.46 (1H, m, Hα-11), 5.41 (1H, dddd, Hβ-6), 5.50/5.97 (1H + 1H, d, CH2 CI), 5.93 (1H, s, CHCI2), 6.39 (1H, dd, H-2), 6.45 (1H, m, H-4), 7.11 (1H, dd, H-1).
実施例15:2-ヒドロキシエチル6α,9α-ジフルオロ-17α-ジクロロアセトキシ-16β-メチル-11β-ヒドロキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(17)
【0101】
9から出発し、ヨウ化メチルの代わりに6モル過剰な2-ブロモエタノールおよび触媒量のヨウ化カリウムを使用して、上記で13について記載されたように調製した。反応混合物を5.5時間撹拌し、水で希釈した後、粗生成物をジエチルエーテルでの抽出によって単離し、ジクロロメタン-メタノール95:5で溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製した。次いで、生成物を酢酸エチル/n-ヘキサンから再結晶した。収量:45%、白色結晶性粉末。Mp205~207℃。
【0102】
【化28】
実施例16:フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(21)
【0103】
工程1:17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸(20)の調製
【0104】
11β,17α-ジヒドロキシ-6α,9α-ジフルオロ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸19(2.55g,6.5mmol)を、水(100ml)中のKHCO(7.0g)の溶液に連続的に加えた。この撹拌溶液に、ジクロロメタン(75ml)に溶解したジクロロアセチルクロリド(3.12ml,32.48mmol)をr.t.において2時間にわたって滴下した。撹拌をさらに1時間続けた。次いで、その反応混合物を1N HClで酸性化し、相を分離した。有機相を水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させて、表題の生成物の一部を得た(1.06g)。水相を酢酸エチルで抽出し、この抽出物は、乾燥および蒸発の後、さらなる画分(1.73g)の表題の生成物をもたらした。合わせた生成物をメタノール(25ml)から再結晶させて、純粋な生成物20を得た(2.21g,67%)。Mp:206℃(dec)、[α]:+8.9°(c=0.5,EtOH)。
【0105】
【化29】
【0106】
2326Cl(507.35)の分析計算値:C54.44;H5.17;実測値:C53.72;H5.02。
【0107】
工程2:先の工程1のカルボン酸誘導体20(0.51g,1.0mmol)をDMF(7ml)に溶解し、KHCO(0.15g,1.5mmol)を加え、0℃で0.5時間撹拌した後、ブロモフルオロメタンガスを毛細管チューブによって1分間投入した。ガスの吸収量は、約1.7gであった。0℃で2時間撹拌した後、その混合物を一晩静置した。次いで、完全な変換に到達するために、さらなる量のガス(約0.5g)を吸収させ、撹拌をさらに4時間続けた。その反応混合物を氷水に注ぎ込み、分離した生成物(0.5g)を濾過によって単離した。表題の粗生成物を、木炭を用いてメタノール(50ml)から再結晶させ、その溶液を体積が約10mlになるまで濃縮した。収量:0.34gの21、mp:241℃;[α]:+7.3°(c=0.5、酢酸エチル)。
【0108】
【化30】
実施例17:クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート(22)
【0109】
17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸20(1.0g,2.0mmol,実施例5,工程1)をDMF(15.0ml)に溶解し、撹拌しながらKHCO(0.30g,3.0mmol)を加えた。0.5時間撹拌した後、クロロヨードメタン(0.58ml,8.0mmol)を加え、r.t.での撹拌を一晩続けた。次いで、その混合物を氷水に注ぎ込み、粗生成物を濾過によって単離した。脱色のために木炭を使用することによってエタノールから再結晶することにより、0.42gの表題の生成物22を得た。mp:226℃、[α]:+15.1(c=0.5、酢酸エチル)。
【0110】
1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 0.91 (3H, d, CH3-16), 1.05 (3H, s, H-18), 1.49 (3H, s, H -19), 3.29 (1H, m, Hβ-16), 4.19 (1H, m, Hα-11), 5.63 (1H, dddd, Hβ-6), 5.63 (1H, dddd, Hβ-6), 5.63 (1H, d, HOCH
α-11), 5.87/5.96 (1H+1H, d, OCH2F), 6.11 (1H, d, H-4), 6.29 (1H, dd,
H-2), 7.06 (1H, s, CHCI2), 7.24 (1H, d, H-1). Ei-MS:[M]
554/556/558(3/3/1);m/z:140(100),139(94),134(77);Ci-MS:[M+H]:555/557/559(96/100/36)。
実施例18:S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート(25)
【0111】
工程1:17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(24)の調製
【0112】
11β,17α-ジヒドロキシ-6α,9α-ジフルオロ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸23(7.6g,18.4mmol)を、20の工程1に対して記載されているような手順に従って17α-ジクロロアセテート誘導体に変換した。しかしながら、最後の酢酸エチル溶液の蒸発によって生成された油性残渣を、ジイソプロピルエーテルを用いてトリチュレートして、固体の表題化合物24を得た(9.40g,97%)。この粗物質をクロロホルムからの再結晶によって精製した。収量:6.67g(69%)、mp:170°(dec)。
【0113】
2326ClSに対する分析計算値(523.42):S6.13;実測値:S6.19。
【0114】
工程2:先の工程1のカルボチオ酸誘導体(1.05g,2.0mmol)を酢酸エチル(12ml)、水(3.5ml)、トリエチルアミン(0.31ml,2.2mmol)に溶解し、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(90mg)を加え、その不均一な撹拌混合物を0℃に冷却し、次いで、ブロモフルオロメタンガスを毛細管チューブによって約1分間投入した。吸収量は、約1.5gであった。撹拌を続け、2時間の間に温度をr.t.まで加温した。TLC検査(シリカゲル、溶離剤:c.ヘキサン-酢酸エチル-酢酸(5:4:1))は、完全な変換を示した。その混合物を酢酸エチル(10ml)で希釈し、相を分離し、有機相を0.5N HCl、飽和NaHCO溶液およびブラインで連続的に洗浄した。次いで、その溶液を中性のアルミナパッドで濾過し、蒸発させて、固体を得た。溶離剤:N.ヘキサン-酢酸エチル(1:1)を使用することによるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって、表題化合物25を得た(0.80g,72%)。サンプルをエタノールから再結晶させた。mp:267℃、[α]:+40.0°(c=0.3,エタノール)。
【0115】
1H NMR (500 MHz, ピリジン-d5): δ 1.16 (3H, d, CH3-16), 1.44 (3H, s, H-18), 1.73 (3H, s, H -19), 3.61 (1H, m, Hβ-16), 4.68 (1H, m, Hα-11), 5.68 (1H, dddd, Hβ-6), 6.07/6.12 (1H+1H, d, OCH2F), 6.60 (1H, dd, H-2), 6.80 (1H, d, H-4), 7.26 (1H, d, H-1), 7.44 (1H, s, CHCI2). Ei-MS:[M]:554/556(2/1);m/z:139(100),333(89),140(73);Ci-MS:[M+H]:555/557(100/69)。C2427ClSの分析計算値(555.44):S5.77;実測値:S5.75。
実施例19:S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート(26)
【0116】
17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸24(1.04g,2.0mmol,工程1)をDMF(12ml)に溶解し、その溶液を0℃に冷却した。NaHCO(0.26g,3.0mmol)を加え、10分間撹拌した後、クロロヨードメタン(0.22ml,3.0mmol)を滴下した。温度を1時間にわたってr.t.まで上げ、撹拌を3時間続けた。次いで、その混合物を水(240ml)に注ぎ込み、生成物を酢酸エチルで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ、蒸発乾固させた。部分的に固体の残渣を、溶離剤クロロホルム-酢酸エチル(4:1)を用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製した。主要な画分(0.81g)を、熱メタノールを用いてトリチュレートし、冷却した後、純粋な表題化合物26(0.35g)を回収した。Mp:272℃、[α]:+59.8°(c=0.5,エタノール)。
【0117】
【化31】
薬理学的研究
【0118】
動物
【0119】
実験の開始時に体重が140~170gであった雄のBrown Norwayラットを、Charles River Hungary LTD(Budapest,Hungary)から購入した。到着時に、それらの動物を、体調不良の明白な徴候について調べ、次いで、使用前の1週間、隔離した。それらの動物を、一定の12時間明期/暗期サイクルにおいて、標準的な動物用ケージ内で維持した(1つのケージに5匹)。それらの動物は、水道水およびCharles Riverから購入した標準的な飼料を自由に摂取できた。動物は、European Communities Council Directive(86/609/EEC)に従って処置し、すべての実験手順が、Institutional Animal Care Committee(Institute for Drug Research,Budapest,Hungary)によって承認されたものであった。
【0120】
動物の感作、処置および負荷
【0121】
動物を様々な処置群(4~5匹/群)にランダムに割り当て、体重測定し、ナンバリングした。0、14および21日目に、それらの動物の背中にミョウバン沈殿オバルブミン(25μgのオバルブミン+20mgのAl(OH)を含む0.5mlの食塩水/動物)を皮下投与して感作した。同時に、各場合において、0.25ml(10細胞/ml)の熱失活した百日咳菌(Bordatella pertussis)ワクチンを腹腔内に注射した。28日目に、種々の試験用量(0.1、1.0、10.0および100.0μg/kg)の糖質コルチコイドを、負荷の2時間前に気管内に投与した。気管内への薬物の適用は、短時間型の全身麻酔+筋肉内に投与されたキシラジン(10mg/kg)およびケタミン(10mg/kg)によって生じさせた筋弛緩のもとで行った。動物を背
臥位で維持し、特別なカニューレ(Vasocan Braunule)を喉頭に通し、気管の中央部にまで進めた。粉末状の固体物質(10mg)[ビヒクル(ラクトース一水和物)および活性薬物]を、5mlシリンジによって肺に送り込んだ。コントロール動物は、ビヒクルのみで処置した。「鼻部吸入システム」(Nose Only Exposure System for Rodents;Technical and Scientific Equipment GmbH,Bad Homburg Germany)によって投与された、気化した1%オバルブミン水溶液(食塩水)に動物を1時間曝露することによって、抗原負荷を行った。
【0122】
気管支肺胞洗浄
【0123】
負荷の48時間後、ウレタンの過量投与によって動物を屠殺し、次いで、気管支肺胞洗浄液(BALF)を得た。気管切開術後、ポリエチレンカテーテルを挿入し、気管の分岐点まで進めた。次いで、37℃に加温しておいた3mlのハンクス平衡塩類溶液で気道を洗浄した。同じ体積の緩衝液による洗浄を3回繰り返し、洗液を、クエン酸ナトリウムを含む遠心管に回収した。フロキシンB染色(Unopetteキット)の後に、回収したBALF中の全好酸球数をカウントした。
【0124】
エキソビボにおける気道過敏症の計測
【0125】
気管を動物から取り出し、接着組織から慎重に抜き取った後、それらの気管を単一の環状物に切断した。調製した環状物を、クレブス緩衝液を含むオーガンバス(organ bath)チャンバーに吊るし、通気を続けながら37℃で維持した。等尺性張力の変化の記録について、環状物を1.0gの張力下に置き、30分間の平衡化期間の後、アセチルコリンに対する累積濃度反応を測定した。コントロール(感作あり、負荷なし、および処置なし)気管の環状物の最大反応は、10-3Mアセチルコリンにおいて得た。この反応の大きさを100%と定義した。他のすべての収縮を、パーセンテージとして表現し、コントロール反応に関係していた。コントロールの収縮に対する50%に等しい収縮を引き起こすために必要なアセチルコリンの濃度を、線形回帰を用いて、各調製物に対して求めた。各動物から2~3つの環状物を調べた。
【0126】
組織化学
【0127】
各動物からの全小葉の肺検体を気管支肺胞洗浄後に回収した。サンプルをリン酸緩衝8%ホルマリン中で2週間固定し、次いで、組織化学に向けて規定通りに処理した。厚い切片(5μm)を切断し、表面処理されたスライドにのせた。630倍の倍率において、気管支周囲および血管周囲のすべての肺組織における視野内の全好酸球をカウントすることによって、改変メイグリュンワルドギムザ染色によって染色された切片における血管周囲および気管支周囲の好酸球増加が明らかになった。血管周囲の浮腫部位は、ヘマトキシリンで対比染色された、過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)検体において明らかにされた。各実験群のランダムに選択された50個の微小血管を、400倍の倍率でデジタル的に露出させた(Zeiss Axiocam;Axiovert 200システム)。血管周囲の浮腫部位の計測は、Zeiss Axiovision 3.1ソフトウェア(Carl Zeiss Vision GmbH,Jena,Germany)によって行った。血管周囲の浮腫の拡大を、それぞれの微小血管の部位のパーセンテージとして表現する。同様に調製された(PAS+ヘマトキシリン)肺組織切片における粘液産生および杯細胞過形成を、400倍の倍率において、調製物全体における各気道セグメントの全上皮細胞をカウントして、測定した。粘液産生細胞の数の変化は、組織切片の全小葉においてカウントされた全上皮細胞に対するPAS陽性杯細胞の比として表現される。
【0128】
サイトカインのアッセイ
【0129】
商業的に入手可能なヒトサイトカインELISAセットを使用した。TNF-αおよびGM-CSFセットをBD Pharmingen,San Diego,CA,USA)から購入し、IL-1βセットをR&D Systems(Minneapolis,MN,USA)から入手した。製造者のプロトコルに従ってELISAを行った。無細胞上清を2つ組で試験した。検出限界は、TNF-αの場合、7.8pg/ml、GM-CSFの場合、4.7pg/ml、およびIL-1βの場合、3.9pg/mlであった。結果は、平均阻害パーセントとして表現した。試験化合物に対するIC50値は、線形回帰によって計算した。
【0130】
刺激されたTHP.1細胞のIL-1β産生
【0131】
THP.1細胞(ヒト単球性細胞株:American Type Culture Collection.Rockville,MD,USA)を、10%FCS、5×10-5M 2-メルカプト(merkapto)-エタノール、2mMグルタミンおよび抗生物質が補充されたRPMI-1640培地中で維持し、3日おきに分割した。試験化合物の効果を調べるために、IL-1β産生の場合は、先に記載されたように(Nemethら、1995)、2×10個の細胞/ウェル(1ml/ウェル体積の24ウェルプレート)を1μg/ml LPSおよび25μg/mlシリカで刺激した。試験化合物を、RPMI-1640培地または0.01%DMSOを含む培地に溶解した。1処置群あたり2つの同等の細胞培養物を独立した3つの実験において実施した。無細胞上清中のIL-1βレベルをELISAによって測定した。
【0132】
リポ多糖で刺激されたヒト血液のTNF-α産生
【0133】
健康ドナー由来の末梢血を、ヘパリン処理された(Vacutainer(商標))滅菌チューブに無菌的に回収した。各個体由来の全血サンプルを、全実験において、無希釈と、RPMI-1640培地による5倍希釈との両方で並行して使用した。血液サンプルを24ウェルプレートに分配し、段階濃度の試験化合物および1μg/mlのリポ多糖とともに37℃、CO恒温装置において24時間インキュベートした。コントロールは、リポ多糖およびビヒクル(PBSまたはPBS中の0.01%ジメチルスルホキシド)で処置した。インキュベーションの後、無細胞上清を遠心分離(1000g10分間)によって分離し、TNF-αの量を測定するまで-20℃で保存した。異なる5人の個体由来の血液サンプル中の試験化合物を調べた。1処置あたり2つの同等の培養物で実施した。
【0134】
実験化合物と血清とのプレインキュベーション、およびリポ多糖で刺激されたヒト末梢血単核球のTNF-α産生に対するそれらの化合物の効果の計測
【0135】
健康ドナーの末梢血由来の単核細胞をフィコール勾配において単離した。0.9mlのRPMI1640培地中の100万個の細胞を24ウェルプレートに分配し、新鮮ヒト血清中に即時生成されたまたは18時間前に生成された段階濃度の試験化合物を、リポ多糖(0.05ml;1μg/ml最終濃度)とともに加えた(0.05ml)。それらの化合物と血清とのプレインキュベーションを37℃において行った。培養物の処理を、上に記載されたように行った。
【0136】
ED50の計算、統計的評価
【0137】
ED50値を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.,San Diego CA,USA)を用いて計算した。群間
の統計解析を、マン・ホイットニー(Mann-Whitley)のU検定またはスチューデントt検定を用いて行い、処置間の差(例えば、エチプレドノールジクロアセテート
対 ブデソニド(budesonide))を、2元配置分散分析によって解析した。すべての計算を、Statistica for Windows(登録商標)ソフトウェアバージョン5.1(Stat Soft Inc.,Tulsa,OK,USA)を用いて行った。
【0138】
レクチンで刺激された末梢単核細胞の増殖
【0139】
健康ドナーのヘパリン処理された末梢血由来の単核細胞を、好適な勾配(Optiprep溶液,1.077g/ml)において単離した。試験化合物の段階希釈物(2×10-5~2×10-8Mの範囲)を、滅菌された丸底96ウェルマイクロタイタープレートの1ウェルあたり100μlの培地において生成した。コントロールウェルは、培養液だけを含んだ。コンカナバリンA(2μg/ml)を含む100μlの細胞懸濁液(10個の細胞/ml)を各ウェルに加えた。増殖バックグラウンドコントロール細胞懸濁液は、レクチンを含まなかった。すべての培養を3つ組で行った。マイクロタイタープレートを、37℃、5%COを含む加湿雰囲気において、72時間インキュベートした。インキュベーションの最後の18時間にわたって、細胞培養物に[H]チミジンを0.1μCi/ウェルという最終濃度で加えた。インキュベーションの終わりに、細胞をガラスマイクロファイバーフィルター(Whatman G/F)に収集し、関連する放射活性を液体シンチレーションによって測定した。
【0140】
ヒト血漿の存在下におけるエチプレドノールジクロアセテートの安定性
【0141】
エチプレドノールジクロアセテート(BNP-166)を、調製されたばかりの健康ドナーのヒト血漿に5ng/mlの濃度で加え、種々の間隔にわたって37℃でインキュベートした。インキュベーションの後、元の化合物(エチル-17α-ジクロロアセトキシ-11β-ヒドロキシアンドロスタ(hydroxyandostra)-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボキシレート)およびその主要代謝産物の1つであるM-OH(17α,11β-ジヒドロキシアンドロスタ(dihydroxyandostra)-1,4-ジエン-3-オン-17β-カルボキシレート)の量を、HPLC/MS/MS法を用いて測定した。手短に言えば、フルオシノロンアセトニドが内部標準として働き(20ng/ml)、サンプルをExtrelut(登録商標)カラムにおいて液液抽出で抽出し、アセトニトリル、水および酢酸を含む移動相系との直線勾配を用い、0.3ml/分の流速でPurospher STAR 30×2mm(3μm)逆相カラムにおいて分離した。陽イオン化モードで作動するエレクトロスプレーインターフェースが搭載されている三連四重極質量分析計(Perkin-Elmer SCIEX API 2000)において測定を行った。複数のイオンモニタリング、すなわち、485.2→265.2、375.2→265.2および495.2→337.2という親イオン→娘イオンの遷移を、それぞれエチプレドノールジクロアセテートの定量、そのM-OH代謝産物の定量および内部標準のために使用した。結果は、内部標準に対して正規化されたピーク面積として表現される。選択されたEDアナログ(10、11、13、17、21、25)の安定性を、ED(3)について上に記載されたように測定した。化合物13、17、21および25が、特に安定であった。化合物13および17が、それぞれ対応する17β-C(O)CHCH化合物11および15よりも強力であるがそれよりもソフトであることにも注目されたい。上記の表1を参照のこと。
【0142】
式(I)または(III)の化合物は、好適な薬学的に許容され得る非毒性キャリアと組み合わされることにより、局部的な炎症または他の限局性の炎症の処置において使用するための薬学的組成物を提供することができる。当然、全身作用を欠くという点を考慮す
ると、式(I)および(III)の化合物は、全身性の副腎皮質療法の必要が示される症状、例えば、副腎皮質不全の処置を対象としない。式(I)または(III)の少なくとも1つの化合物および1つまたはそれを超える薬学的キャリアを含む薬学的組成物で処置され得る炎症症状の例として、以下のものが挙げられ得る:皮膚障害(例えば、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬または接触皮膚炎);気管支喘息などのアレルギー状態;COPDなどの呼吸器疾患;急性および慢性のアレルギー反応および炎症反応を伴う眼および視覚の疾患(例えば、眼の炎症症状、例えば、眼瞼炎、結膜炎、上強膜炎、強膜炎、角膜炎、前部ブドウ膜炎および交感性眼炎);口、歯肉および/または咽喉の炎症(例えば、歯肉炎または口腔内アフタ);鼻の粘膜の炎症(例えば、アレルギーが原因の炎症);上部腸管および下部腸管の炎症(例えば、潰瘍性大腸炎);関節炎に関連する炎症;ならびに痔に関連する肛門直腸の炎症、そう痒症および疼痛、直腸炎、陰窩炎、裂傷、術後痛、および肛門そう痒症。そのような組成物は、移植に関連して生じる炎症および組織拒絶反応に対する予防的措置としても局所的に適用され得る。
【0143】
当然、キャリアおよび剤形の選択は、組成物が投与される特定の症状および投与経路によって変化する。
【0144】
局部投与/局所投与に適した様々なタイプの調製物の例としては、軟膏、ローション剤、クリーム剤、散剤、滴剤(例えば、点眼剤または点耳剤または点鼻剤)、スプレー剤(例えば、鼻用または咽喉用)、坐剤、停留浣腸、チュアブル錠もしくは吸引可能な錠剤またはペレット剤(例えば、アフタ性潰瘍の処置用)およびエアロゾル剤が挙げられる。軟膏およびクリーム剤は、例えば、水性または油性の基剤を用いて、好適な増粘剤および/もしくはゲル化剤ならびに/またはグリコールを加えて製剤化され得る。したがって、そのような基剤としては、例えば、水および/もしくは油(例えば、流動パラフィンまたは植物油(例えば、落花生油またはヒマシ油))またはグリコール溶媒(例えば、プロピレングリコールまたは1,3-ブタンジオール)が挙げられ得る。基剤の性質に従って使用され得る増粘剤としては、軟パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、硬化ラノリンおよび蜜ろうおよび/またはモノステアリン酸グリセリルおよび/または非イオン性乳化剤が挙げられる。
【0145】
軟膏またはクリーム剤におけるステロイドの溶解度は、芳香族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールまたはフェノキシエチルアルコール)の組み込みによって高められ得る。
【0146】
ローション剤は、水性または油性の基剤を用いて製剤化され得、一般に、以下、すなわち、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、溶媒、着色剤および香料のうちの1つまたはそれを超えるものも含む。散剤は、任意の好適な散剤基剤、例えば、タルク、ラクトースまたはデンプンを活用して形成され得る。滴剤は、1つまたはそれを超える分散剤、懸濁化剤または可溶化剤なども含む水性基剤を用いて製剤化され得る。スプレー組成物は、例えば、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタンを使用して、エアロゾル剤として製剤化され得る。
【0147】
噴霧製剤または粉末状の製剤は、当該分野で周知であるように、喘息、COPDなどの処置における経口吸入のために調製され得る。液剤および懸濁剤は、例えば、本明細書中以後の実施例により詳細に記載されているように、腸の炎症の処置において使用するための経口投与または直腸投与のために調製され得る。非経口製剤/注射製剤は、非経口製剤の当業者に周知の方法と合致する関節炎の処置において関節(単数もしくは複数)に直接注射するために調製され得る。
【0148】
組成物中の活性成分の割合は、使用される正確な化合物、調製される製剤のタイプおよ
び組成物が投与される特定の症状によって変化する。製剤は、一般に、約0.0001~約5.0重量%の式(I)または(III)の化合物を含む。局部調製物は、一般に、0.0001~2.5%、好ましくは、0.01~0.5%を含み、1日に1回または随時投与される。また、概して、式(I)または(III)の化合物は、公知の高度に活性な作用物質(例えば、酢酸メチルプレドニゾロンおよびジプロピオン酸ベクロメタゾン)と比べてほぼ同じ(または本発明の最も強力な化合物の場合、その分だけ低い)投与量レベルで、またはヒドロコルチゾンなどのより低活性の公知の薬剤と比べてかなり低い投与量レベルで、公知の糖質コルチコステロイドを含む、現在入手可能なタイプの組成物と実質的に同様に製剤化された局部組成物および他の局所組成物に組み込まれ得る。
【0149】
したがって、例えば、喘息の処置における使用に適した吸入製剤は、薬学的製剤の当業者に周知の手順に従って、代表的な種類(例えば、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートまたは2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレート)を含む定量エアロゾル単位として調製され得る。そのようなエアロゾル単位は、好適な噴射剤(例えば、トリクロロフルオロメタンおよびジクロロジフルオロメタン)中の上述の化合物のうちの1つの微結晶性懸濁液を、オレイン酸または他の好適な分散剤とともに含み得る。各単位は、通常、1~10ミリグラムの前述の活性成分を含み、そのうちのおよそ5~50マイクログラムが、1回の作動において放出される。
【0150】
薬学的組成物の別の例は、プロピレングリコール、エトキシ化ステアリルアルコール、ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル、セチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、トリエタノールアミンおよび水といった粘膜付着性の泡沫基剤中に0.05%~0.1%の式(I)または(III)の化合物(例えば、上述のS-フルオロメチルまたは2-ヒドロキシエチル化合物)および1%の局所麻酔剤(例えば、プラモキシン塩酸塩)を不活性な噴射剤とともに含む、多種多様の肛門直腸の炎症障害の処置に適した、肛門または肛門周囲に適用される泡沫である。
【0151】
なおも別の薬学的製剤は、停留浣腸としての使用に適した液剤または懸濁剤であり、その単回用量は、通常、塩化ナトリウム、ポリソルベート80および1~6オンスの水(水は使用の直前に加える)とともに、20~40ミリグラムの式(I)または(III)の化合物(例えば、上述のS-フルオロメチルまたは2-ヒドロキシエチル化合物)を含む。その懸濁剤は、潰瘍性大腸炎の処置において、停留浣腸として、または1週間に数回の持続点滴によって、投与され得る。
【0152】
本願に係る他の薬学的製剤は、以下の実施例に例証される。
【表3】
【0153】
季節性または通年性アレルギー性および非アレルギー性鼻炎の処置に適した点鼻薬の別の例が、FLONASE(登録商標)点鼻薬,50mcgと同じように製剤化される。その製剤では、FLONASE(登録商標)点鼻薬の活性な構成要素であるプロピオン酸フルチカゾンが、本明細書中の式(I)または(III)の代表的な化合物、好ましくは、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートまたは2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ(dichlororacetoxy)-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートで置き換えられている。その点鼻薬は、計量噴霧スプレーポンプを用いて、50mcgの式(I)または(III)の超微粒化合物を送達する。その組成物は、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、塩化ベンザルコニウム(0.02%w/w)、ポリソルベート80、フェニルエチルアルコール(0.25%w/w)も含み、5~7のpHを有する。例示的な投与量は、毎日の200mcgである(1日1回、片鼻孔に
2回の50mcgのスプレーまたは1日2回、片鼻孔に1回の50mcgのスプレー)。
【0154】
喘息を処置するための経口吸入の場合、例えば、FLOVENT(登録商標)HFA 44mcg経口吸入エアロゾル、FLOVENT(登録商標)HFA 110mcg経口吸入エアロゾルまたはFLOVENT(登録商標)HFA 220mcg経口吸入エアロゾル中に存在するプロピオン酸フルチカゾンが、等量の本明細書中の式(I)または(III)の化合物、好ましくは、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエートまたは2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートで置き換えられ得る。微粒子化されたコルチコステロイドに加えて、各吸入器は、噴射剤HFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)を含む。S-フルオロメチル化合物の場合、噴射剤の各発動によって、44、110または220mcgの当量のコルチコステロイドプロピオン酸フルチカゾンが送達される。
【0155】
本明細書中の上記および下記で特定されるすべての米国特許およびすべての文献論文は、その全体が参照により援用され、依拠される。
【0156】
参考文献
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Kurucz I, Nemeth K, Meszaros S, Torok, K, Nagy Z, Zubovics Z, Horvath K, Bodor N. Anti-inflammatory effect and soft properties of etiprednol dicloacetate (BNP-166), a new, anti-asthmatic steroid. Pharmazie.
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【0157】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式(I)を有する化合物:
【化32】

であって、式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSである、化合物。
(項2)
S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよびクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項1に記載の化合物。
(項3)
抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物と、局部的適用または他の局所的適用に適した、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、薬学的組成物。
(項4)
抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物。
(項5)
炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物に投与する工程を含み、前記投与は、炎症反応が限局性であるとき、局所投与であるか、または前記投与は、前記炎症反応が局部的であるとき、局部投与である、方法。
(項6)
眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項4に記載の組成物を前記動物の眼(単数もしくは複数)に投与する工程を含む、方法。
(項7)
鼻の炎症反応を示している温血動物における鼻の粘膜の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物に経鼻的に投与する工程を含む、方法。
(項8)
肺または気管支において炎症反応を示している温血動物における喘息またはCOPDを軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物に経口吸入によって投与する工程を含む、方法。
(項9)
腸の炎症反応を示している温血動物において上部腸管または下部腸管の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物に投与する工程を含み、前記投与は、直腸投与または経口投与である、方法。
(項10)
耳の炎症反応を示している温血動物の耳(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物の耳(単数もしくは複数)に投与する工程を含む、方法。
(項11)
関節炎の炎症反応を示している温血動物の関節(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記関節(単数もしくは複数)に注射する工程を含む、方法。
(項12)
皮膚の炎症反応を示している温血動物の皮膚の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物に経皮的に投与する工程を含む、方法。
(項13)
口、歯肉または咽喉の炎症反応を示している温血動物の口、歯肉または咽喉の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項1および2のいずれか1項に記載の化合物または上記項3に記載の組成物を前記動物に経口的に投与する工程を含む、方法。
(項14)
式(II)の17α-アルキルカルボニルオキシ置換コルチコステロイド化合物
【化33】

(式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、Rは、C -C アルキルである)をソフトにするためのプロセスであって、前記式(II)の化合物は、局所的または局部的なコルチコステロイド活性ならびに全身性のコルチコステロイド活性を有し、前記プロセスは、式(II)における17α-OCOR基が17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl )基に置き換えられた対応するコルチコステロイド化合物を合成して、結果として生じる式(I)のソフトコルチコステロイド化合物
【化34】

(式中、XおよびYは各々、上記の式(II)で定義されたとおりである)を得る工程を含み、前記式(I)の化合物は、対応する式(II)の化合物と比べて実質的に等価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、対応する式(II)の化合物と比べて実質的に低下した全身性のコルチコステロイド活性を有する、プロセス。
(項15)
前記結果として生じる式(I)のソフトコルチコステロイド化合物が、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよびクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項14に記載のプロセス。
(項16)
式(III)を有する化合物:
【化35】

であって、式中、各X’は独立してH、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’はFまたはClであり、YはOまたはSであり、波線はαまたはβ配置を示す、化合物。
(項17)
2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよび2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項16に記載の化合物。
(項18)
抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物と、局部的適用または他の局所的適用に適した、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、薬学的組成物。
(項19)
抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物。
(項20)
炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物に投与する工程を含み、前記投与は、前記炎症反応が限局性であるとき、局所投与であるか、または前記投与は、前記炎症反応が局部的であるとき、局部投与である、方法。
(項21)
眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項19に記載の組成物を前記動物の眼(単数もしくは複数)に投与する工程を含む、方法。
(項22)
鼻の炎症反応を示している温血動物における鼻の粘膜の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物に経鼻的に投与する工程を含む、方法。
(項23)
肺または気管支において炎症反応を示している温血動物における喘息またはCOPDを軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物に経口吸入によって投
与する工程を含む、方法。
(項24)
腸の炎症反応を示している温血動物において上部腸管または下部腸管の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物に投与する工程を含み、前記投与は、直腸投与または経口投与である、方法。
(項25)
耳の炎症反応を示している温血動物の耳(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物の耳(単数もしくは複数)に投与する工程を含む、方法。
(項26)
関節炎の炎症反応を示している温血動物の関節(単数もしくは複数)における炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記関節(単数もしくは複数)に注射する工程を含む、方法。
(項27)
皮膚の炎症反応を示している温血動物の皮膚の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物に経皮的に投与する工程を含む、方法。
(項28)
口、歯肉または咽喉の炎症反応を示している温血動物の口、歯肉または咽喉の炎症を軽減するための方法であって、前記方法は、抗炎症有効量の上記項16および17のいずれか1項に記載の化合物または上記項18に記載の組成物を前記動物に経口的に投与する工程を含む、方法。
(項29)
局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物の調製における、式(I)を有する化合物:
【化36】

(式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSである)の使用であって、前記薬学的組成物は、抗炎症有効量の前記化合物と、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、使用。
(項30)
眼科用組成物の調製における、式(I)を有する化合物:
【化37】

(式中、各Xは独立してFまたはClであり、YはOまたはSである)の使用であって、前記眼科用組成物は、抗炎症有効量の前記化合物と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、使用。
(項31)
前記化合物が、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよびクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項29および30のいずれかに記載の使用。
(項32)
炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症の軽減において使用するための、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、抗炎症有効量の式(I)を有する化合物:
【化38】

(式中、各Xは独立してFまたはClであり、YはOまたはSである)と、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含み、前記炎症反応は、限局性または局部的
である、薬学的組成物。
(項33)
前記炎症反応が、
鼻の炎症反応;
肺または気管支における炎症反応;
腸の炎症反応;
耳の炎症反応;
関節炎の炎症反応;
皮膚の炎症反応;および
口、歯肉または咽喉の炎症反応
からなる群より選択される、上記項32に記載の薬学的組成物。
(項34)
前記化合物が、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよびクロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項32および33のいずれかに記載の薬学的組成物。
(項35)
眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症の軽減において使用するための、抗炎症有効量の式(I)を有する化合物:
【化39】

(式中、各Xは、独立して、FまたはClであり、Yは、OまたはSである)と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物。
(項36)
前記化合物が、S-フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、S-クロロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオエート、フルオロメチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよびクロロメチル17α-ジクロロアセ
トキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項35に記載の眼科用組成物。
(項37)
式(IV):
【化40】

(式中、各X’は、独立して、H、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’は、FまたはClであり、Yは、OまたはSであり、Rは、C -C アルキルであり、波線は、αまたはβ配置を示す)における17α-OCOR基を17α-ジクロロアセトキシ(17α-OCOCHCl )基で置き換えることによって、式(III)のソフトコルチコステロイド化合物:
【化41】

(式中、X’およびYは各々、上記の式(IV)で定義されたとおりである)を生成するための、式(IV)の17α-アルキルカルボニルオキシ置換コルチコステロイド化合物の使用であって、前記式(IV)の化合物は、局所的または局部的なコルチコステロイド活性ならびに全身性のコルチコステロイド活性を有し、前記式(III)の化合物は、式(IV)の対応する化合物と比べて実質的に等価な局所的または局部的なコルチコステロイド活性を有するが、式(IV)の対応する化合物と比べて実質的に低下した全身性のコルチコステロイド活性を有する、使用。
(項38)
前記式(III)のソフトコルチコステロイド化合物が、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-
3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよび2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項37に記載の使用。
(項39)
局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物の調製における、式(III)を有する化合物:
【化42】

(式中、各X’は独立してH、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’はFまたはClであり、YはOまたはSであり、波線はαまたはβ配置を示す)の使用であって、前記薬学的組成物は、抗炎症有効量の前記化合物と、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、使用。
(項40)
眼科用組成物の調製における、式(III)を有する化合物:
【化43】

(式中、各X’は独立してH、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’はFまたはClであり、YはOまたはSであり、波線はαまたはβ配置を示す)の使用であって、前記眼科用組成物は、抗炎症有効量の前記化合物と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、使用。
(項41)
前記化合物が、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン
-17β-カルボキシレートおよび2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項39および40のいずれかに記載の使用。
(項42)
炎症反応を示している温血動物の内部または表面の炎症の軽減において使用するための、局部的適用または他の局所的適用に適した薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、抗炎症有効量の式(III)を有する化合物:
【化44】

(式中、各X’は独立してH、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’はFまたはClであり、YはOまたはSであり、波線はαまたはβ配置を示す)と、前記化合物用の薬学的に許容され得る非毒性キャリアとを含み、前記炎症反応は、限局性または局部的である、薬学的組成物。
(項43)
前記炎症反応が、
鼻の炎症反応;
肺または気管支における炎症反応;
腸の炎症反応;
耳の炎症反応;
関節炎の炎症反応;
皮膚の炎症反応;および
口、歯肉または咽喉の炎症反応
からなる群より選択される、上記項42に記載の薬学的組成物。
(項44)
化合物が、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよび2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項42および43のいずれかに記載の薬学的組成物。
(項45)
眼の炎症反応を示している温血動物の眼(単数もしくは複数)における炎症の軽減において使用するための、抗炎症有効量の式(III)を有する化合物:
【化45】

(式中、各X’は独立してH、FまたはClであるが、但し、少なくとも1つのX’はFまたはClであり、YはOまたはSであり、波線はαまたはβ配置を示す)と、前記化合物用の眼科的に許容され得る非毒性キャリアとを含む、眼科用組成物。
(項46)
前記化合物が、2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートおよび2-ヒドロキシエチル17α-ジクロロアセトキシ-9α-フルオロ-11β-ヒドロキシ-16β-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボキシレートからなる群より選択される、上記項45に記載の眼科用組成物。
【外国語明細書】