(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115404
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230814BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20230814BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/165 207
B41J2/17 201
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111930
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 浩昭
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC12
2C056HA28
2C056HA29
2C056JC00
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】フラッシング時において、インク受け部周辺がインクの飛沫によって汚染されることを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、記録ヘッド51と、第1搬送ベルト8と、用紙吸引部9と、インク受け部10と、第2吸引部(用紙吸引部9)と、を備える。用紙吸引部9は、第1搬送ベルト8の孔部81及び開口部82を通して空気を吸引することで用紙Sを第1搬送ベルト8の用紙搬送面に吸着させる。インク受け部10は、第1搬送ベルト8を隔てて記録ヘッド51の下方に配置され、用紙Sに対するインクの吐出タイミングとは異なるタイミングで、記録ヘッド51にインクを吐出させるフラッシング時に、開口部82を通過したインクを受ける。第2吸引部(用紙吸引部9)は、インク受け部10内に貯留されるインクの最上面よりも上方の空間から空気を吸引する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
記録媒体を吸着させる複数の孔部、及び前記記録ヘッドから吐出される前記インクが通過する複数の開口部を有して前記記録ヘッドと対向する位置に前記記録媒体を搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの記録媒体搬送面の反対側の一面に対向する吸引空間内の空気を前記孔部及び前記開口部を通して吸引することで前記記録媒体を前記搬送ベルトの前記記録媒体搬送面に吸着させる第1吸引部と、
前記搬送ベルトを隔てて前記記録ヘッドの下方に配置され、前記記録媒体に対する前記インクの吐出タイミングとは異なるタイミングで、前記記録ヘッドに前記インクを吐出させるフラッシング時に、前記開口部を通過した前記インクを受けるインク受け部と、
前記インク受け部内に貯留される前記インクの最上面よりも上方の空間から空気を吸引する第2吸引部と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記吸引空間と、前記インク受け部内の空間とを連通させる連通部を有し、
前記第1吸引部は、前記連通部を介して前記インク受け部内の空気を吸引することで前記第2吸引部を兼ねることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1吸引部及び前記第2吸引部により前記孔部及び前記開口部を通して空気を吸引する吸引力は、前記記録ヘッドと前記インク受け部とが対向する対向区間よりも、前記対向区間に対して前記記録媒体の搬送方向の上流側及び下流側の非対向区間のほうが強いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク受け部内に貯留される前記インクを排出するインク排出部を有し、
前記インク排出部は、前記インク受け部から排出された前記インクが前記インク受け部に逆流することを防止する逆流防止弁を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記孔部は、前記開口部と同一形状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、インクの乾燥によるノズルの目詰まりを低減及び予防するため、定期的にインクをノズルから吐き出すフラッシング(空吐出)が行われている。このようなインクジェット記録装置の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1で開示された従来のインクジェット記録装置は、記録媒体に対してインク滴を吐出する単位記録ヘッドと、記録媒体を単位記録ヘッドの下に搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトを挟んで単位記録ヘッドと対向配置されたメンテナンス手段と、を備える。搬送ベルトには、単位記録ヘッドの配置に対応した複数の孔部が形成されている。メンテナンス手段は、単位記録ヘッドから吐出されたダミー印字のインク滴を収容するインク受け部材を備える。このインクジェット記録装置は、搬送ベルトの孔部が単位記録ヘッドと対向するときに、ダミー印字を行う。これにより、ダミー印字のインク滴を、搬送ベルトに付着させないように、搬送ベルトの孔部を通過させてインク受け部材に収容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、ダミー印字のインク滴をインク受け部材で受けるときに、インクの飛沫が生じることがあった。そして、インクの飛沫によって、例えば搬送ベルト等の、インク受け部材の周辺が汚染されることに課題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、記録媒体に対するインクの吐出タイミングとは異なるタイミングで、記録ヘッドにインクを吐出させるフラッシング時において、インク受け部周辺がインクの飛沫によって汚染されることを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドと、搬送ベルトと、第1吸引部と、インク受け部と、第2吸引部と、を備える。記録ヘッドは、インクを吐出する複数のノズルを有する。搬送ベルトは、無端状であり、記録媒体を吸着させる複数の孔部、及び記録ヘッドから吐出されるインクが通過する複数の開口部を有して記録ヘッドと対向する位置に記録媒体を搬送する。第1吸引部は、搬送ベルトの記録媒体搬送面の反対側の一面に対向する吸引空間内の空気を孔部及び開口部を通して吸引することで記録媒体を搬送ベルトの記録媒体搬送面に吸着させる。インク受け部は、搬送ベルトを隔てて記録ヘッドの下方に配置され、記録媒体に対するインクの吐出タイミングとは異なるタイミングで、記録ヘッドにインクを吐出させるフラッシング時に、開口部を通過したインクを受ける。第2吸引部は、インク受け部内に貯留されるインクの最上面よりも上方の空間から空気を吸引する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、第2吸引部は、インク受け部内のインクの最上面よりも上方の空間において負圧を生じさせる。これにより、インクの飛沫がインク受け部周辺に拡散することを抑制することができる。すなわち、例えば搬送ベルト等の、インク受け部周辺がインクの飛沫によって汚染されることを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のインクジェット記録装置の記録部及び第1ベルト搬送部周辺の構成を示す平面図である。
【
図3】
図1のインクジェット記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の用紙供給部から第2ベルト搬送部までの用紙搬送経路に沿う構成を模式的に示す説明図である。
【
図5】
図1の記録部及び第1ベルト搬送部周辺の構成を示す正面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置の第1ベルト搬送部の第1搬送ベルトの平面図である。
【
図7】
図6の第1搬送ベルト上の用紙の配置例1を示す平面図である。
【
図8】
図6の第1搬送ベルト上の用紙の配置例2を示す平面図である。
【
図9】
図6の第1搬送ベルト上の用紙の配置例3を示す平面図である。
【
図10】
図6の第1搬送ベルト上の用紙の配置例4を示す平面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置の第1ベルト搬送部の第1搬送ベルトの平面図である。
【
図12】
図11の第1搬送ベルト上の用紙の配置例1を示す平面図である。
【
図13】
図11の第1搬送ベルト上の用紙の配置例2を示す平面図である。
【
図14】
図11の第1搬送ベルト上の用紙の配置例3を示す平面図である。
【
図15】
図11の第1搬送ベルト上の用紙の配置例4を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態のインクジェット記録装置1の概略構成を示す断面図である。
図2は、
図1のインクジェット記録装置1の記録部5及び第1ベルト搬送部41周辺の構成を示す平面図である。
図3は、
図1のインクジェット記録装置1の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1は、例えばインクジェット記録式のプリンターである。インクジェット記録装置1は、
図1、
図2及び
図3に示すように、装置本体2と、用紙供給部3と、用紙搬送部4と、記録部5と、乾燥部6と、制御部7と、を備える。
【0012】
装置本体2は、操作部21を備える。例えば、操作部21は、装置本体2の正面上部に配置され、記録に使用する用紙(記録媒体)の種類やサイズ、拡大縮小、両面記録の要否といった記録条件などの設定、及び実行指令等を、ユーザー自身から直接受け付ける。なお、画像データ、記録条件、及び実行指令等を、外部のコンピュータからネットワーク回線等を介して受け付けることにしても良い。
【0013】
用紙供給部3は、複数枚の用紙Sを収容し、記録時に用紙Sを1枚ずつ分離して送り出す。用紙搬送部4は、用紙供給部3から送り出された用紙Sを記録部5及び乾燥部6へと搬送し、さらに記録、乾燥後の用紙Sを用紙排出部22に排出する。両面記録が行われる場合、用紙搬送部4は、第1面の記録、乾燥後の用紙Sを分岐部43によって反転搬送部44に振り分け、さらに搬送方向を切り替えて表裏を反転させた用紙Sを再度、記録部5及び乾燥部6へと搬送する。
【0014】
用紙搬送部4は、第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42を有する。第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42は、無端状のベルトの上面に用紙Sを吸着保持して搬送する。第1ベルト搬送部41は、記録部5の下方に配置されて用紙Sを搬送する。第2ベルト搬送部42は、乾燥部6に配置されて用紙Sを搬送する。
【0015】
記録部5は、第1ベルト搬送部41の上面に吸着保持されて搬送される用紙Sに対向し、所定の間隔を設けて第1ベルト搬送部41の上方に配置される。記録部5は、ライン型インクジェット方式の記録ヘッド51を有する。記録ヘッド51は、
図2に示すように、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色それぞれに対応した記録ヘッド51B、51C、51M、51Yを含む。各色の記録ヘッド51のそれぞれは、用紙搬送方向Dcと直交する用紙幅方向Dwに沿って複数(例えば3つ)が千鳥状に配列される。
【0016】
記録ヘッド51は、その底部に複数のインク吐出ノズル52を有する。複数のインク吐出ノズル52は、用紙幅方向Dwに沿って並べて配置され、用紙S上の記録領域の全域にわたってインクを吐出することができる。すなわち、記録ヘッド51は、用紙S上にインクを吐出する複数のインク吐出ノズル52を有する。記録部5は、第1ベルト搬送部41によって搬送される用紙Sに向かって4色の記録ヘッド51B、51C、51M、51Yから順次インクを吐出し、フルカラー画像またはモノクロ画像を用紙Sに記録する。
【0017】
乾燥部6は、記録部5の用紙搬送方向の下流側に配置され、第2ベルト搬送部42が設けられる。記録部5でインク画像が記録された用紙Sは、乾燥部6において第2ベルト搬送部42に吸着保持されて搬送される間に、インクが乾燥される。
【0018】
制御部7は、不図示のCPU、その他の電子回路及び電子部品を含む。CPUは、記憶部71に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、インクジェット記録装置1に設けられた各構成要素の動作を制御してインクジェット記録装置1の機能に係る処理を行う。用紙供給部3、用紙搬送部4、記録部5及び乾燥部6それぞれは、制御部7から個別に指令を受け、連動して用紙Sへの記録を行う。
【0019】
また、制御部7は、用紙Sに対するインクの吐出タイミング(記録時)とは異なるタイミングで、記録ヘッド51にインクを吐出させるフラッシング(空吐出)を行う。フラッシングを行うことで、インクの乾燥によるインク吐出ノズル52の目詰まりを低減及び予防することができる。
【0020】
記憶部71は、例えば不図示のプログラムROM(Read Only Memory)、データROMなどといった不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)のような揮発性の記憶装置との組み合わせで構成される。
【0021】
図4は、
図1の用紙供給部3から第2ベルト搬送部42までの用紙搬送経路に沿う構成を模式的に示す説明図である。なお、説明の便宜上、
図4の記録ヘッド51の下側には、記録ヘッド51から吐出されたインク(水滴形状)を描画したが、実際に吐出されたインクは、
図4に描画されたインク(水滴形状)よりも遥かに小さい。後の説明で用いる
図5も同様である。
【0022】
インクジェット記録装置1は、
図4に示すように、レジストローラー対45と、レジストセンサー46と、第1用紙センサー47と、第2用紙センサー48と、を備える。
【0023】
レジストローラー対45は、用紙供給部3の用紙搬送方向Dcの下流側に配置される。レジストローラー対45の用紙搬送方向Dcの下流側の直近には、記録部5及び第1ベルト搬送部41が配置される。用紙供給部3から送り出された用紙Sは、用紙搬送部4を通ってレジストローラー対45の箇所に到達する。制御部7は、レジストローラー対45によって、用紙Sの斜め送りを矯正するとともに、記録部5のインク吐出動作とのタイミングを計り、第1ベルト搬送部41に向かって用紙Sを送り出す。
【0024】
レジストセンサー46は、レジストローラー対45の用紙搬送方向Dcの上流側の直近に配置される。レジストセンサー46は、用紙供給部3から送り出され、レジストローラー対45の箇所に到達する用紙Sを検知する。制御部7は、レジストセンサー46から受信した用紙Sの検知信号に基づき、レジストローラー対45の回転を制御する。
【0025】
第1用紙センサー47は、レジストローラー対45の用紙搬送方向Dcの下流側、且つ第1ベルト搬送部41の用紙搬送方向Dcの上流側に配置される。第1用紙センサー47は、レジストローラー対45から第1ベルト搬送部41に送られる用紙Sの幅方向の位置を検知するラインセンサーである。制御部7は、第1用紙センサー47から受信した用紙Sの検知信号に基づき、各色の記録ヘッド51それぞれの複数のインク吐出ノズル52のうち、用紙幅に対応するインク吐出ノズル52からのインク吐出動作を制御し、用紙Sに画像を記録することができる。
【0026】
第2用紙センサー48は、第1用紙センサー47の用紙搬送方向Dcの下流側、且つ記録部5の用紙搬送方向Dcの上流側であって、第1ベルト搬送部41の上方に配置される。第2用紙センサー48は、第1ベルト搬送部41によって搬送される用紙Sの搬送方向の位置を検知するセンサーである。制御部7は、第2用紙センサー48から受信した用紙Sの検知信号に基づき、第1ベルト搬送部41によって各色の記録ヘッド51それぞれと対向する位置に到達した用紙Sに対し、インク吐出ノズル52からのインク吐出動作を制御する。
【0027】
第1ベルト搬送部41は、記録部5の下方に配置される。第1ベルト搬送部41は、その上面に用紙Sを吸着保持し、当該用紙Sを用紙搬送方向Dcに沿って搬送する。第1ベルト搬送部41は、第1搬送ベルト(搬送ベルト)8と、ローラー412と、第1ベルトセンサー413と、第2ベルトセンサー414と、を含む。
【0028】
第1搬送ベルト8は、無端状のベルトであって、内側に配置された4本のローラー412によって架設される。ローラー412は、第1搬送ベルト8の内側に配置され、用紙幅方向Dw(
図2参照)に沿って延びる回転軸線を中心として回転可能に支持される。4本のローラー412のうち1本が駆動ローラーであり、第1搬送ベルト8は、当該駆動ローラーによって、上面が用紙搬送方向Dcに移動するように回転される。第1搬送ベルト8は、表裏を貫通する複数の孔部81及び複数の開口部82(開口部群83)を有する(
図6参照)。第1搬送ベルト8は、記録ヘッド51と対向する位置に用紙Sを搬送する。
【0029】
第1ベルトセンサー413は、記録部5の用紙搬送方向Dcの下流側であって、第1ベルト搬送部41の上方に配置される。第2ベルトセンサー414は、第1搬送ベルト8の内側であって、第1搬送ベルト8の上面の用紙搬送方向Dcの上流端部に隣接するローラー412の第1搬送ベルト8の回転方向上流側に配置される。第1ベルトセンサー413及び第2ベルトセンサー414は、第1搬送ベルト8に設けられた複数の開口部82の集合である開口部群83(
図6参照)の位置を検知する。なお、第1ベルトセンサー413は、第2用紙センサー48と同等の機能を兼ね備える。
【0030】
第2ベルト搬送部42は、乾燥部6に配置される。第2ベルト搬送部42は、その上面に用紙Sを吸着保持し、当該用紙Sを用紙搬送方向Dcに沿って搬送する。第2ベルト搬送部42は、第2搬送ベルト421と、ローラー422と、を含む。
【0031】
第2搬送ベルト421は、無端状のベルトであって、内側に配置された2本のローラー422によって架設される。ローラー422は、第2搬送ベルト421の内側に配置され、用紙幅方向Dw(
図2参照)に沿って延びる回転軸線を中心として回転可能に支持される。2本のローラー422のうち1本が駆動ローラーであり、第2搬送ベルト421は、当該駆動ローラーによって、上面が用紙搬送方向Dcに移動するように回転される。
【0032】
乾燥部6は、乾燥器61を有する。記録部5によって画像が記録された用紙Sは、乾燥部6において、第2ベルト搬送部42による搬送中に乾燥器61によって乾燥され、乾燥部6の用紙搬送方向Dcの下流側へと搬送される。
【0033】
図5は、
図1の記録部5及び第1ベルト搬送部41周辺の構成を示す正面図である。
図6は、本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置1の第1ベルト搬送部41の第1搬送ベルト8の平面図である。インクジェット記録装置1は、
図5に示すように、用紙吸引部9と、インク受け部10と、インク排出部11と、を備える。
【0034】
用紙吸引部9は、第1搬送ベルト8の内側の上部であって、第1搬送ベルト8の用紙搬送面の反対側(下側、裏側)の一面に対向する箇所に配置される。用紙吸引部9は、ハウジング91と、吸気ファン92と、を備える。
【0035】
ハウジング91は、その内部に、四方を側壁91aに囲まれた吸引空間911を有する。吸引空間911は、第1搬送ベルト8と記録ヘッド51とが対向する対向区間Soに対して用紙搬送方向Dcの上流側及び下流側の、第1搬送ベルト8と記録ヘッド51とが対向しない非対向区間Snに配置される。吸引空間911は、ブラックの記録ヘッド51Bの用紙搬送方向Dcの上流側の下方からイエローの記録ヘッド51Yの用紙搬送方向Dcの下流側の下方まで、5箇所に設けられる。ハウジング91は、5つの吸引空間911それぞれの上方に複数の吸気孔912を有する。複数の吸気孔912は、ハウジング91を上下方向に貫通する。
【0036】
吸気ファン92は、ハウジング91の内部であって、吸引空間911の下方に配置される。なお、第1搬送ベルト8は、
図6に示すように、複数の孔部81と、複数の開口部82と、を有する。孔部81及び開口部82は、第1搬送ベルト8の表裏を貫通する。吸気ファン92を駆動させると、用紙吸引部9は、吸引空間911内の空気を吸気孔912、孔部81及び開口部82を通して吸引することで用紙Sを第1搬送ベルト8の用紙搬送面(上面)に吸着させる。
【0037】
複数の孔部81及び複数の開口部82は、用紙吸引部9によって空気が吸引されることで、第1搬送ベルト8の用紙搬送面である上面に用紙Sを吸着させる。開口部82の開口面積は、孔部81の開口面積よりも大きい。開口部82は、フラッシング時に、記録ヘッド51から吐出されるインクが通過する。開口部82は、複数(例えば10個)が集合することで開口部群83を構成している。
【0038】
インク受け部10は、第1搬送ベルト8を隔てて記録ヘッド51の下方に配置される。すなわち、インク受け部10は、第1搬送ベルト8と記録ヘッド51とが対向する対向区間Soの下方に配置される。インク受け部10の、用紙搬送方向Dcの上流側及び下流側のそれぞれには、吸引空間911が隣接している。インク受け部10は、上面が開口した用紙幅方向Dwに延びる直方体形状の箱体で構成される。インク受け部10は、フラッシング時に、第1搬送ベルト8の開口部82を通過したインクを受ける。
【0039】
用紙吸引部9は、さらに連通部93を備える。連通部93は、吸引空間911の側壁91aと、インク受け部10との間に配置される。連通部93は、吸引空間911の側壁91aの吸気ファン92よりも上方の部分と、インク受け部10の、インク受け部10内に貯留されるインクの最上面よりも上方の部分とに接続される。連通部93は、例えば用紙搬送方向Dcに延びる管状で構成され、吸引空間911と、インク受け部10内の空間とを連通させる。
【0040】
吸気ファン92を駆動させると、用紙吸引部9は、吸引空間911内の空気を吸引し、さらに連通部93を介してインク受け部10内の空気を吸引する。すなわち、インクジェット記録装置1は、用紙Sを第1搬送ベルト8の用紙搬送面に吸着させる第1吸引部(用紙吸引部9)と、インク受け部10内に貯留されるインクの最上面よりも上方の空間から空気を吸引する第2吸引部(用紙吸引部9)と、備える。
【0041】
上記の構成によれば、第2吸引部(用紙吸引部9)は、インク受け部10内のインクの最上面よりも上方の空間において負圧を生じさせる。これにより、インクの飛沫がインク受け部10周辺に拡散することを抑制することができる。すなわち、例えば第1搬送ベルト8等の、インク受け部10周辺がインクの飛沫によって汚染されることを抑制することが可能である。
【0042】
また、上記の構成のように、第1吸引部である用紙吸引部9は、連通部93を介してインク受け部10内の空気を吸引することで第2吸引部を兼ねている。この構成によれば、吸気ファン92に加えて別途インク受け部10内の空気を吸引するための動力源を設けることなく、インク受け部10内の空気を吸引することができる。これにより、部品点数の低減と、組み立て工数の低減と、低消費電力化とを図ることが可能である。
【0043】
なお、インクジェット記録装置1は、第1吸引部と、第2吸引部とを個別に備えることにしても良い。この構成によれば、用紙Sを吸引するための吸引力と、インク受け部10内の空気を吸引するための吸引力とを個別に細かく設定することが可能になる。
【0044】
また、インク受け部10内の空気が連通部93を介して吸引され、用紙吸引部9(第1吸引部及び第2吸引部)により孔部81及び開口部82を通して空気を吸引する吸引力は、記録ヘッド51とインク受け部10とが対向する対向区間Soよりも、対向区間Soに対して用紙搬送方向Dcの上流側及び下流側の非対向区間Snのほうが強い。
【0045】
上記の構成によれば、対向区間Soである記録ヘッド51の下方において、用紙吸引部9による空気の吸引力を弱くすることができ、インク吐出ノズル52から吐出されたインク滴に気流の影響が及ぶことを抑制することができる。これにより、高品質な画像の記録を実現することが可能である。
【0046】
インク排出部11は、インク受け部10の下方に配置される。インク排出部11は、インク受け部10内に貯留されるインクを排出する。インク排出部11のインク排出方向の下流側には、例えば送液ポンプ(不図示)が配置され、インク受け部10内に貯留されるインクが吸い出される。
【0047】
インク排出部11は、逆流防止弁111を有する。逆流防止弁111は、例えば弁体と、弁体をインク排出方向の上流側に付勢する付勢部材とを備える。逆流防止弁111は、インク受け部10から排出されたインクがインク受け部10に逆流することを防止する。
【0048】
上記の構成によれば、インク受け部10内のインクの最上面よりも上方の空間において負圧が生じた場合に、インク受け部10から排出されたインクがインク受け部10に逆流することを防止することができる。これにより、インク受け部10内のインクを、効率良く排出すことが可能である。
【0049】
続いて、第1実施形態の第1搬送ベルト8の詳細な構成について、
図6に加えて
図7、
図8、
図9及び
図10を用いて説明する。
図7~
図10は、
図6の第1搬送ベルト8上の用紙Sの配置例1~配置例4を示す平面図である。
【0050】
第1搬送ベルト8は、前述のように、複数の孔部81と、複数の開口部82と、を有する。開口部82は、複数(例えば10個)が集合することで開口部群83を構成する。
【0051】
第1搬送ベルト8は、
図6に示すように、用紙搬送方向Dcの1周期Peにおいて、開口部群83を複数有しており、本実施形態では6つ有している。開口部群83は、用紙搬送方向Dcの下流側から順に配置された、開口部群83A、83B、83C、83D、83E、83Fを含む。孔部81は、用紙搬送方向Dcにおいて隣り合う開口部群83の間に配置される。孔部81は、開口部群83が設けられた領域には配置されていない。
【0052】
開口部群83は、第1搬送ベルト8の用紙搬送方向Dcの1周期Peにおいて、不等な間隔で配置されている。すなわち、用紙搬送方向Dcにおいて隣り合う開口部群83の間隔は、一定ではない。
【0053】
開口部群83は、例えば2つの開口部列84を含む。開口部列84は、複数(例えば5個)の開口部82が用紙幅方向Dwに沿って等間隔に並置されて構成される。2つの開口部列84それぞれの開口部82は、互いに用紙幅方向Dwにずらして配置され、且つ一部が用紙搬送方向Dcに重なるように配置される。フラッシング時、記録ヘッド51のすべてのインク吐出ノズル52から吐出されるインクは、開口部群83のいずれかの開口部82を通過する。
【0054】
制御部7は、例えば第1搬送ベルト8上に吸着保持されて搬送される用紙Sと用紙Sとの間で、フラッシング(紙間フラッシング)を実行する。フラッシング時、制御部7は、第1搬送ベルト8の用紙搬送方向Dcの1周期Peにおいて、インクを通過させる開口部群83の組み合わせを、用紙Sのサイズに応じて決定する。制御部7は、操作部21介して受け付けられて記憶部71等に記憶された記録条件などの情報に基づき、用紙Sのサイズを認識する。
【0055】
図7は、用紙SのサイズがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合の、用紙Sの配置例1を示している。なお、「横置き」とは、長方形状の用紙Sの長手方向が用紙幅方向Dwに沿うように配置した用紙Sの置き方である。用紙SのサイズがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83C、83Fを選択する。
【0056】
図8は、用紙SのサイズがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合の、用紙Sの配置例2を示している。なお、「縦置き」とは、長方形状の用紙Sの長手方向が用紙搬送方向Dcに沿うように配置した用紙Sの置き方である。用紙SのサイズがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83Dを選択する。
【0057】
図9は、用紙SのサイズがA3サイズ(縦置き)、B4サイズ(縦置き)またはリーガルサイズ(縦置き)である場合の、用紙Sの配置例3を示している。用紙SのサイズがA3サイズ(縦置き)、B4サイズ(縦置き)またはリーガルサイズ(縦置き)である場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83B、83Eを選択する。
【0058】
図10は、用紙Sのサイズが13インチ×19.2インチである場合の、用紙Sの配置例4を示している。用紙Sのサイズが13インチ×19.2インチである場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83Dを選択する。
【0059】
制御部7は、第1ベルトセンサー413及び第2ベルトセンサー414(ともに
図4参照)から受信した開口部群83の検知信号に基づき、第1搬送ベルト8に対して用紙Sを送り出すレジストローラー対45の回転を制御し、さらにインク吐出ノズル52からのインク吐出動作を制御する。これにより、用紙Sは、フラッシングに用いる開口部群83として選択された開口部群83A、83B、83C、83D、83E、83Fの領域を避けて、第1搬送ベルト8上に配置される。そして、フラッシングのインクは、フラッシングに用いる開口部群83として選択された開口部群83A、83B、83C、83D、83E、83Fの開口部82を通過し、インク受け部10内に収容される。
【0060】
次に、第2実施形態の第1搬送ベルト8の構成について、
図11、
図12、
図13、
図14及び
図15を用いて説明する。
図11は、本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置1の第1ベルト搬送部41の第1搬送ベルト8の平面図である。
図12~
図15は、
図11の第1搬送ベルト8上の用紙Sの配置例1~配置例4を示す平面図である。
【0061】
第2実施形態の第1搬送ベルト8は、
図11に示すように、複数の開口部82を有する。開口部82は、第1搬送ベルト8の全域にわたって配置される。第2実施形態の第1搬送ベルト8は、第1実施形態の第1搬送ベルト8(
図6参照)で見られた複数の孔部81に相当する構成を有していない。第2実施形態において、開口部82は、第1搬送ベルト8に用紙Sを吸着させる孔部を兼ねている。すなわち、第2実施形態において、第1搬送ベルト8の、用紙Sを吸着させる孔部は、開口部82と同一形状である。
【0062】
開口部82は、複数(例えば5個)が用紙幅方向Dwに沿って等間隔に並置されることで開口部列84を構成する。開口部列84は、第1搬送ベルト8の用紙搬送方向Dcに沿って等間隔で配置されている。用紙搬送方向Dcに隣り合う開口部列84それぞれの開口部82は、互いに用紙幅方向Dwにずらして配置され、且つ一部が用紙搬送方向Dcに重なるように配置される。
【0063】
開口部群83は、用紙搬送方向Dcに隣り合う2つの開口部列84で構成される。第1搬送ベルト8は、
図11に示すように、用紙搬送方向Dcの1周期Peにおいて、開口部群83を複数有している。開口部群83は、用紙搬送方向Dcの下流側から順に配置された、開口部群83A、83B、83C、83D、83E、83Fを含む(
図12、
図13、
図14及び
図15参照)。
【0064】
図12は、用紙SのサイズがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合の、用紙Sの配置例1を示している。用紙SのサイズがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83C、83Fを選択する。
【0065】
図13は、用紙SのサイズがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合の、用紙Sの配置例2を示している。用紙SのサイズがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83Dを選択する。
【0066】
図14は、用紙SのサイズがA3サイズ(縦置き)、B4サイズ(縦置き)またはリーガルサイズ(縦置き)である場合の、用紙Sの配置例3を示している。用紙SのサイズがA3サイズ(縦置き)、B4サイズ(縦置き)またはリーガルサイズ(縦置き)である場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83B、83Eを選択する。
【0067】
図15は、用紙Sのサイズが13インチ×19.2インチである場合の、用紙Sの配置例4を示している。用紙Sのサイズが13インチ×19.2インチである場合、制御部7は、フラッシングに用いる開口部群83として、開口部群83A、83Dを選択する。
【0068】
上記の構成のように、第1搬送ベルト8の、用紙Sを吸着させる孔部は、開口部82と同一形状であるので、フラッシングに用いる開口部群83として、いずれの開口部群83をも選択することができる。したがって、フラッシングを容易に実行することが可能である。また、第1搬送ベルト8に設けられた孔部及び開口部82がすべて同じ形状であることで、第1搬送ベルト8を容易に製造することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、インクジェット記録装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 インクジェット記録装置
5 記録部
7 制御部
8 第1搬送ベルト(搬送ベルト)
9 用紙吸引部(第1吸引部、第2吸引部)
10 インク受け部
11 インク排出部
51 記録ヘッド
52 インク吐出ノズル
81 孔部
82 開口部
93 連通部
111 逆流防止弁
Dc 用紙搬送方向
Dw 用紙幅方向
S 用紙(記録媒体)
Sn 非対向区間
So 対向区間