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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115418
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】帯電防止防眩性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20230814BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230814BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230814BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230814BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
C09D175/14
C09D7/61
C09D5/00 Z
C09D7/65
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017598
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畑 和幸
【テーマコード(参考)】
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J038CG032
4J038CG142
4J038DG031
4J038DG261
4J038FA281
4J038GA01
4J038HA216
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA11
4J038NA20
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC08
4J127AA04
4J127BA041
4J127BA051
4J127BB041
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC051
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB161
4J127CC181
4J127CC291
4J127DA06
4J127DA12
4J127DA46
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA21
(57)【要約】
【課題】帯電防止特性を有すると共に、高精細なディスプレイに用いた場合でも、ちらつきが少なく視認性が非常に良好である防眩性のハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】アクリル当量が300~30,000g/eqである多官能ウレタン(メタ)アクリレートと、導電性無機微粒子と、平均粒子径が0.1~4μmの微粒子と、光重合開始剤と、を含み、前記微粒子の配合量が前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対し0.5~13重量部である光硬化性樹脂組成物の硬化層を有することを特徴とする帯電防止防眩フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、導電性無機微粒子(B)と、平均粒子径が0.1~4μmの微粒子(C)(但し(B)を除く)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(A)のアクリル当量が300~30,000g/eqであり、前記(C)の配合量が前記(A)100重量部に対し0.5~13重量部である光硬化性樹脂組成物の硬化層を有することを特徴とする帯電防止防眩フィルム。
【請求項2】
前記(B)がアンチモンドープ酸化錫であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止防眩フィルム。
【請求項3】
前記(B)の平均粒子径が10~300nmであることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の帯電防止防眩フィルム。
【請求項4】
前記(A)の重量平均分子量が1,500~300,000であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の帯電防止防眩フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた帯電防止性を有すると共に、高精細でちらつき感がない防眩性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置と入力手段を兼ね備えたタッチパネルは幅広い分野で使用されているが、その代表例であるカーナビやスマートフォンなどは、画像の視認性を向上させるため、表面に微細な凹凸が形成された防眩性フィルムを用い、蛍光灯や太陽光などの反射光を散乱させることで映り込みを目立たなくしている。
【0003】
出願人はこうした用途に用いることが可能な防眩フィルムとして、過去に多官能(メタ)アクリレートと特定構造のフッ素変性樹脂と透光性微粒子と2種類以上のレベリング剤を含む樹脂組成物を硬化させた防眩性フィルムを発明している(特許文献1)。この発明は、指紋がつきにくく外光の光が乱反射しにくいため、視認性が非常に良好な優れたものであった。しかしながら、従来のディスプレイと比較し、ピクセル数が大幅に増加した高精細なディスプレイの場合は、従来の防眩フィルムを用いると、映像光の乱反射に起因するちらつき(シンチレーション現象)が顕著になり、画像の視認性を著しく損なうという課題が明らかになってきた。
【0004】
またこうした視認性の向上対応に加え、ディスプレイ表面に発生する静電気が原因で、防塵性が悪化し塵が付着しやすくなるという問題から、帯電防止性能を合わせて求められるようになってきており、高精細でちらつき感がない良好な視認性と、帯電防止性能を兼ね備えたハードコートフィルムを実現するためには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5602999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、帯電防止特性を有すると共に、高精細なディスプレイに用いた場合でも、ちらつきが少なく視認性が非常に良好である防眩性のハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本出願に係る請求項1の発明は、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、導電性無機微粒子(B)と、平均粒子径が0.1~4μmの微粒子(C)(但し(B)を除く)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(A)のアクリル当量が300~30,000g/eqであり、前記(C)の配合量が前記(A)100重量部に対し0.5~13重量部である光硬化性樹脂組成物の硬化層を有することを特徴とする帯電防止防眩フィルムを提供する。
【0008】
また請求項2の発明は、前記(B)がアンチモンドープ酸化錫であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止防眩フィルムを提供する。
【0009】
また請求項3の発明は、前記(B)の平均粒子径が10~300nmであることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の帯電防止防眩フィルムを提供する。
【0010】
また請求項4の発明は、前記(A)の重量平均分子量が1,500~300,000であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の帯電防止防眩フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防眩性フィルムは、優れた帯電防止性能を有するため静電気に起因する塵の付着等がなく、また外光の反射や画像のちらつき感を抑制でき視認性が良好であるため、高精細なディスプレイで用いるハードコートフィルム(以下HCフィルムという)として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の帯電防止防眩性フィルムは、多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、導電性無機微粒子(B)と、平均粒子径が特定された微粒子(C)と、光重合開始剤(D)を含む光硬化性樹脂組成物(以下本組成物という)の硬化層を有する。なお本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルとメタクリロイルの双方を包含するものとする。
【0014】
本組成物で使用される多官能ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ウレタン結合に由来する水素結合の凝集力により優れた耐擦傷性を有しており、ハードコート皮膜を構成する主成分であると共に、(B)および(C)を分散させるバインダーとしての役割を担う。例えばポリオールと過剰なポリイソシアネートを反応させて得られるウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させたり、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させたりして得ることができる。官能基数としては4官能以上が好ましく、6官能以上が更に好ましく、8官能以上が特に好ましい。
【0015】
前記(A)のアクリル当量は300~30,000g/eqであり、350~10,000g/eqが好ましく、400~8,000g/eqが更に好ましい。300g/eq未満の場合は帯電防止性能と視認性が低下する傾向があり、30,000g/eq超では耐摩耗性が低下する場合や、作業性に適した粘度に調整しにくくなる場合がある。なお本明細書においてアクリル当量とは、重量平均分子量(以下Mwという)を、平均(メタ)アクリロイル基数で除した値とする。
【0016】
前記(A)のMwは1,500~300,000が好ましく、2,000~200,000が更に好ましく、3,000~100,000が特に好ましい。1,500以上とすることで十分な帯電防止性能と視認性を確保することができ、300,000以下とすることで作業性に適した粘度に調整しやすくできる。なおMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、スチレンジビニルベンゼン基材の充填剤を用いたカラムでテトラハイドロフラン溶離液を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定、算出した。
【0017】
前記(A)の配合量は、固形分全量に対し30~80重量%が好ましく、35~75重量%が更に好ましく、45~65重量%が特に好ましい。30重量%以上とすることで十分な光学特性と耐摩耗性を確保することができ、80重量%以下とすることで十分な帯電防止性能と視認性を確保することができる。
【0018】
本組成物で使用される導電性無機微粒子(B)は硬化皮膜に帯電防止性能を付与させると共に、十分な耐擦傷性を有するよう硬度を向上させ、更にはヘイズをアップさせる目的で配合する。例えばアンチモンドープ酸化錫(以下ATOという)、錫ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化錫、リンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では光線透過率に優れ、湿度や温度などの雰囲気によって導電性能が左右されにくいATOが好ましい。
【0019】
前記(B)の平均粒子径としては、10~300nmが好ましく、30~200nmが更に好ましく、50~150nmが特に好ましい。10nm以上とすることで十分な耐擦傷性を確保することができ、300nm以下とすることで透明性を損なわず十分な光学特性を確保することができる。なお以下平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0020】
前記(B)の配合量としては、(A)100重量部に対し25~160重量部が好ましく、30~150重量部が更に好ましく、40~100重量部が特に好ましい。また固形分全量に対しては18~65重量%が好ましく、20~60重量%が更に好ましく、25~40重量%が特に好ましい。25重量部以上とすることで十分な帯電防止特性を確保することができ、160重量部以下とすることで透明性を損なわず十分な光学特性を確保することができる。
【0021】
本組成物で使用される微粒子は(C)は、硬化被膜表面に凸凹を形成し、又コーティング層中で光を散乱して防眩性を付与させる目的で配合し、有機微粒子及び/又は無機微粒子を用いることができる。(C)の平均粒子径は0.1~4μmであり、0.2~3μmが好ましく、0.3~2.5μmが更に好ましい。0.1μm未満では光の散乱効果が不足して防眩性が不足する傾向があり、4μm超では硬化被膜表面の凹凸が大きくなり過ぎるため透過鮮明性が低下すると共に、ぎらつきも強くなり視認性が低下する傾向がある。
【0022】
前記(C)で用いられる有機微粒子としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリル-スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、更にはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ弗化エチレン樹脂等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、(A)への分散性が良好で入手性にも優れるアクリル系樹脂が好ましい。
【0023】
前記(C)で用いられる無機微粒子としては、例えばシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では透光性に優れ、屈折率も(A)と比較的近いシリカが好ましい。シリカを用いる場合は、(A)成分内での分散性を良好にするため、表面処理された疎水性シリカが好ましい。
【0024】
前記(C)の配合量としては、(A)100重量部に対し0.5~13重量部であり、0.8~10重量部が好ましく、1~8重量部が更に好ましい。また固形分全量に対しては0.3~10重量%が好ましく、0.5~8重量%が更に好ましく、1~6重量%が特に好ましい。0.5重量部未満では必要とされる防眩性を確保できない場合があり、13重量部超では十分な視認性を確保できない場合がある。
【0025】
本組成物で使用される光重合開始剤(D)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad184及び同2959(商品名:iGM社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)などがある。
【0026】
前記(D)の配合比率は、光硬化樹脂成分100重量部に対し0.5~10重量部が好ましく、3~8重量部が更に好ましい。0.5重量部以上とすることで充分な硬化性を確保でき、10重量部以下とすることで過剰添加とならず塗膜の黄変や保存性低下を防ぐことができる。
【0027】
本組成物には、更に防汚性を有するレベリング剤を含むことが望ましい。例えばフッ素系、シリコーン系、フッ素-シリコーン系化合物が挙げられる。特に(A)と重合反応する反応性官能基を有していると、硬化後の皮膜から経時的に欠落することがなく、効果を長期的に持続させることが可能であるため好ましい。市販品としてはX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、フッ素-シリコーン系化合物)等がある。
【0028】
前記レベリング剤の配合量は、光硬化樹脂成分100重量部に対し0.1~5.0重量部が好ましく、0.2~3.0重量部が更に好ましい。0.1重量部以上とすることで十分なレベリング性により良好な外観を確保することができ、5.0重量部以下とすることで過剰添加とならず十分な光学特性を確保することができる。
【0029】
また本組成物には反応性希釈剤としてアクリル系モノマーを配合しても良い。例えば脂肪族(メタ)アクリレート、脂環族(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、エーテル骨格(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、アミド基含有(メタ)アクリレート、アクリルアミド等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。官能基数には特に制限はないが、硬化収縮を小さくできる点で2官能以下が好ましい。
【0030】
前記反応性希釈剤の配合量としては、(A)100重量部に対し100重量部以下が好ましく、80重量部以下が更に好ましく、60重量部以下が特に好ましい。100重量部以下とすることで、十分な高精細性を確保することができる。
【0031】
更に本組成物には必要に応じて防汚剤、撥水化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、防曇剤、スリップ剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0032】
本組成物は、有機プラスチックフィルムへの塗工性を向上させるため、溶剤にて固形分が10~70%に希釈される。溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン(以下MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGM),ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
本組成物が塗布される有機プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、シクロオレフィン(コ)ポリマーフィルム等を例示することができる。
【0034】
これらの中では、価格、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムや、耐候性の点からアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね30μm~250μmであればよい。
【0035】
本組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などを利用できる。塗布する膜厚としては、乾燥膜厚で0.5μm~10μmが例示できる。
【0036】
本組成物を塗布した後は60~120℃で乾燥し、紫外線照射機を用いて硬化させる。紫外線を照射する場合の光源としては例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプ、LEDランプなどがあげられ、硬化条件としては500mW/cm~3000mW/cmの照射強度で、積算光量として50~2,000mJ/cmが例示される。また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
【0037】
本組成物を塗布したHCフィルムの表面抵抗率としては1×1014Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□以下が更に好ましく、1×1011Ω/□以下が特に好ましい。1×1014Ω/□以下とすることで帯電防止効果を発現できる。
【0038】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。また表記が無い場合は、室温は25℃、相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は固形分換算での重量部を示す。
【0039】
実施例1
(A)としてウレアク1(10官能、Mw6,000、アクリル当量600g/eq、固形分80%のMEK希釈品)を、(B)としてSNS―10M(商品名:石原産業社製:ATO、平均粒子径100nm、固形分30%のMEK希釈品)を、(C)としてGM-0105(商品名:アイカ工業社製、アクリル樹脂系粒子、平均粒子径2.0μm)を、(D)としてOmnirad184(商品名:iGM社製)を、レベリング剤としてX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%のMIBK希釈品)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌して実施例1を調整した。
【0040】
実施例2~11
実施例1で用いた材料の他、(A)としてウレアク2(15官能、Mw85,000、アクリル当量5,667g/eq、固形分90%のトルエン希釈品)を、(C)として5SM-CL4(商品名:アドマテックス社製、表面処理シリカ、平均粒子径0.5μm)及びSS-50F(商品名:東ソーシリカ社製、表面処理シリカ、平均粒子径1.2μm)を、反応性希釈剤としてACMO(商品名:KJケミカルズ社製、アクリロイルモルフォリン)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌して実施例2~11を調整した。
【0041】
比較例1~6
実施例で用いた材料の他、バインダーとしてEbecryl1290(商品名:ダイセル・オルネクス社製、6官能ウレタン(メタ)アクリレート、Mw1,000、アクリル当量167g/eq)を、帯電防止剤としてMEK-50R(商品名:三光化学工業社製、リチウムイオン系、固形分50%のMEK希釈品)を、微粒子としてGM-0578S(商品名:アイカ工業社製、アクリル樹脂系粒子、平均粒子径6.0μm)及びGMX-0610(商品名:アイカ工業社製、アクリル樹脂系粒子、平均粒子径7.0μm)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表2記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌して比較例1~6を調整した。
【0042】
表1
【0043】
表2
【0044】
評価用HCフィルムの調整
A4サイズのポリエチレンテレフタレートフィルムU403(商品名:東レ社製、100μm、両面易接着層有り)に、本組成物を硬化時の膜厚が2.5μmとなるよう塗布し、恒温槽で80℃×1分乾燥後、フュージョンUVシステムジャパン製の無電極UV照射装置F300S/LC-6Bを用い、Hバルブで出力1200mW/cm2、積算光量200mJ/cm2で紫外線硬化させ評価用HCフィルムを調整した。
【0045】
評価方法は以下の通りとした。
【0046】
全光線透過率:JISK7361-1に準拠し、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用い測定した。80%以上を〇、80%未満を×とした。
【0047】
ヘイズ:JISK7361-1に準拠し、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用い測定した。5%超を◎、3%から5%を〇、3%未満を×とした。
【0048】
表面抵抗率:三菱ケミカルアナリック社製の高抵抗 抵抗率計ハイレスターUXMCP-HT800を用い、印加電圧500V,測定時間1分で測定し、1.0×1014Ω/□以下を○、1.0×1012Ω/□以下を◎、1.0×1014Ω/□超を×とした。
【0049】
耐摩耗性:東洋精機社製の摩耗試験機を用い、接触面積が直径25mmφのスチールウール#0000の上に200gの荷重を載せ、往復速度100回/分で10往復させ、目視による観察で傷が付かない場合を○、傷が付く場合を×とした。
【0050】
高精細性:iPad(登録商標:アップル社製)に表示した緑色画面上にハードコートフィルムを配置し、目視にてチラツキが無い場合を○、ある場合を×とした。
【0051】
評価結果
表3
【0052】
評価結果
表4
【0053】
実施例は全光線透過率、ヘイズ、表面抵抗率、耐摩耗性、高精細性すべての面で問題はなく良好であった。
【0054】
一方、(C)の配合量が上限を超えている比較例1、(C)の粒子径が上限を超えている比較例2及び3は高精細性が劣り、アクリル当量が下限未満の比較例4は表面抵抗率が高く、高精細性にも欠けていた。また(B)の代りにイオン性の帯電防止剤を配合した比較例5はヘイズ、耐摩耗性、高精細性が劣り、(B)が未配合の比較例6は表面抵抗率が高く、いずれも本願発明には適さないものであった。