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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115420
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20230814BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230814BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20230814BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K7/116
H02K11/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017601
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】白井 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 倫紀
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB14
5H607EE31
5H607GG01
5H607GG08
5H611AA01
5H611BB08
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
5H611TT02
5H611UA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部品点数および組立工数を低減できる構造を有する電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータ1は、中心軸線J1を中心として回転可能なロータ41と、コイル43cを有するステータ43と、コイルと接続される回路基板70と、ハウジング11とを備える。ハウジングは、ロータとステータを収容するモータ収容部13と、回路基板を収容し、モータ収容部の軸方向一方側に配置される回路基板収容部14と、モータ収容部と回路基板収容部との間に配置される隔壁部19とを有する。隔壁部は、隔壁本体部19aと、貫通孔19bと、突起部19fとを有する。コイルは、コイル本体部43dと、コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、回路基板と接続されるコイル引出線43eとを有する。突起部は、軸方向に見て、貫通孔と重なる引掛部19hを有する。回路基板は、コイル引出線が通される孔部70aを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸線を中心として回転可能なロータと、
コイルを有し、前記ロータと隙間を介して対向するステータと、
前記コイルと電気的に接続される回路基板と、
前記ロータ、前記ステータ、および前記回路基板を内部に収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記ロータおよび前記ステータを内部に収容するモータ収容部と、
前記回路基板を内部に収容し、前記モータ収容部の軸方向一方側に配置される回路基板収容部と、
軸方向において、前記モータ収容部と前記回路基板収容部との間に配置される隔壁部と、
を有し、
前記隔壁部は、
前記モータ収容部と前記回路基板収容部とを軸方向に隔てる隔壁本体部と、
径方向に沿って延び、前記隔壁本体部を軸方向に貫通する貫通孔と、
軸方向において、前記隔壁本体部と前記回路基板との間に配置される突起部と、
を有し、
前記コイルは、前記ステータに巻回されるコイル本体部と、前記コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、前記回路基板と接続されるコイル引出線と、を有し、
前記突起部は、軸方向に見て、前記貫通孔と重なって配置される引掛部を有し、
前記回路基板は、前記回路基板を貫通し、前記コイル引出線が軸方向に通される孔部を有し、
前記コイル引出線は、前記貫通孔を軸方向に通され、且つ、軸方向において前記貫通孔と前記引掛部との間を径方向一方側に向けて通され、前記引掛部の径方向一方側の端部において前記孔部に向けて屈曲する、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記貫通孔は、
前記隔壁本体部を軸方向に貫通する挿通孔と、
前記挿通孔から径方向一方側に延び、径方向と直交する方向の幅が前記挿通孔の径方向と直交する方向の幅よりも小さく、前記隔壁本体部を軸方向に貫通する長孔と、
を有し、
軸方向に見て、前記引掛部は、前記長孔と重なって配置され、
前記コイル引出線は、少なくとも前記挿通孔もしくは前記長孔のいずれか一方を軸方向に通される、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記長孔は、前記挿通孔から径方向内側に延びる、請求項2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記挿通孔の内側面に、軸方向一方側に向かうにしたがって径が小さいテーパ形状の案内面が設けられる、請求項2または3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記突起部は、前記隔壁本体部から軸方向一方側に突出する接続部を有し、
前記引掛部は、前記接続部の軸方向一方側の端部から径方向と直交する方向に突出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
軸方向に見て、前記引掛部の径方向一方側の端部と、前記孔部とが重なる、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
軸方向に見て、前記孔部は、前記コイル本体部と重ならない位置に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記引掛部の軸方向他方側を向く面には、軸方向一方側に窪み、且つ、径方向に延びる溝が設けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項9】
前記ハウジングの内部に収容され、前記ロータと連結される伝達機構と、
前記伝達機構を介して前記ロータの動力が伝わり、前記中心軸線と平行な出力軸線を中心として回転する出力シャフトと、
を備え、
前記伝達機構は、前記出力シャフトの回転数を、前記ロータの回転数よりも小さくする、請求項1から8のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータおよびステータを有する電動アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、ケース内に、モータ部を構成するロータおよびステータ、回路基板、バスバー等の複数の部品が個別に組み込まれた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-5431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成においては、ケースに対し、ステータ、回路基板、バスバーユニット等の部品をそれぞれ組み込む必要がある。このため、各部品をケースに組み付ける手間が掛かるため、電動アクチュエータの組立工数が増大する問題がある。また、各部品をケースに固定するための構造も必要であり、電動アクチュエータの部品点数の増加にも繋がるという問題がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、部品点数および組立工数を低減できる構造を有する電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸線を中心として回転可能なロータと、コイルを有し、前記ロータと隙間を介して対向するステータと、前記コイルと電気的に接続される回路基板と、前記ロータ、前記ステータ、および前記回路基板を内部に収容するハウジングと、を備える。前記ハウジングは、前記ロータおよび前記ステータを内部に収容するモータ収容部と、前記回路基板を内部に収容し、前記モータ収容部の軸方向一方側に配置される回路基板収容部と、軸方向において、前記モータ収容部と前記回路基板収容部との間に配置される隔壁部と、を有する。前記隔壁部は、前記モータ収容部と前記回路基板収容部とを軸方向に隔てる隔壁本体部と、径方向に沿って延び、前記隔壁本体部を軸方向に貫通する貫通孔と、軸方向において、前記隔壁本体部と前記回路基板との間に配置される突起部と、を有する。前記コイルは、前記ステータに巻回されるコイル本体部と、前記コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、前記回路基板と接続されるコイル引出線と、を有する。前記突起部は、軸方向に見て、前記貫通孔と重なって配置される引掛部を有する。前記回路基板は、前記回路基板を貫通し、前記コイル引出線が軸方向に通される孔部を有する。前記コイル引出線は、前記貫通孔を軸方向に通され、且つ、軸方向において前記貫通孔と前記引掛部との間を径方向一方側に向けて通され、前記引掛部の径方向一方側の端部において前記孔部に向けて屈曲する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、電動アクチュエータにおいて部品点数および組立工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の電動アクチュエータを示す斜視図である。
図2図2は、一実施形態の電動アクチュエータを示す断面図である。
図3図3は、一実施形態の電動アクチュエータの一部を示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態の隔壁を示す斜視図である。
図5図5は、一実施形態の突起部を示す断面図である。
図6図6は、一実施形態の電動アクチュエータの組立手順を示す断面図である。
図7図7は、一実施形態の電動アクチュエータの組立手順を示す断面図である。
図8図8は、一実施形態の電動アクチュエータの組立手順を示す断面図である。
図9図9は、一実施形態の電動アクチュエータの組立手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において図には、適宜、X軸、Y軸、およびZ軸を示す。Z軸と平行な方向を「上下方向Z」と呼ぶ。Z軸は、以下に説明する実施形態の電動アクチュエータ1の中心軸線J1が延びる方向を示している。各図に示す中心軸線J1は、仮想軸線である。以下の説明においては、中心軸線J1が延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸線J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「軸方向一方側」または「上側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「軸方向他方側」または「下側」と呼ぶ。
【0010】
周方向は、各図において矢印θで示されている。周方向のうち矢印θが向く側を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と逆側を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、軸方向一方側(+Z側)から見て中心軸線J1回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、軸方向一方側から見て中心軸線J1回りに反時計回りに進む側である。
【0011】
図1に示す本実施形態の電動アクチュエータ1は、車両に取り付けられる。より詳細には、電動アクチュエータ1は、例えば、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるパーク・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載される。図2に示すように、電動アクチュエータ1は、モータ部40と、減速機構(伝達機構)50と、出力部60と、ハウジング11と、制御装置7と、を備える。
【0012】
以下、電動アクチュエータ1の各部の説明は、組み立て工程における電動アクチュエータ1の姿勢を基に行う。具体的には、モータ部40の中心軸線J1が上下方向Zと平行に配置されている場合について、電動アクチュエータ1の各部の説明を行う。なお、車両に取り付けられる際の電動アクチュエータ1の姿勢は、特に限定されず、以下の説明において用いられる上下方向Z等の名称によっては限定されない。
【0013】
図2に示すように、モータ部40は、ロータ41と、第1軸受44aと、第2軸受44bと、第3軸受44cと、ステータ43と、第1センサマグネット45と、を有する。すなわち、電動アクチュエータ1は、ロータ41と、ステータ43と、を備える。本実施形態において、第1軸受44aは、滑り軸受けである。また、第2軸受44b、および第3軸受44cは、例えば、ボールベアリングである。
【0014】
図2に示すように、ロータ41は、軸方向に延びる中心軸線J1を中心として回転可能である。ロータ41は、モータシャフト42と、ロータコア41aと、磁石41bと、を有している。
【0015】
モータシャフト42は、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。モータシャフト42は、第1軸受44a、および第2軸受44bによって中心軸線J1を中心として回転可能に支持されている。モータシャフト42は、制御装置7よりも下側に配置されている。モータシャフト42は、第1部分42aと、フランジ部42bと、第2部分42cと、第3部分42dと、第4部分42eと、を有している。
【0016】
第1部分42aは、モータシャフト42の上側の部分である。第1部分42aの外周面にはロータコア41aが固定されている。第1部分42aの上端は、ロータコア41aよりも上側に突出している。第1部分42aの下端は、ロータコア41aよりも下側に突出している。第1部分42aの上側を向く面には、下側に窪む穴部42a1が設けられている。穴部42a1は、軸方向に見て、中心軸線J1を中心とする円形状である。第1部分42aの上側の外周面は、第1軸受44aの内周面と接触している。これにより、モータシャフト42のロータコア41aよりも上側の部分が中心軸線J1を中心に回転可能に支持されている。
【0017】
フランジ部42bは、中心軸線J1を中心とする円板状である。フランジ部42bの板面は、軸方向を向いている。フランジ部42bの上側を向く面は、第1部分42aの下端と繋がっている。フランジ部42bの外径は、第1部分42aの外径よりも大きく設けられている。フランジ部42bの下側を向く面は、第3軸受44cの内輪の上側を向く面を支持している。これにより、第3軸受44cの軸方向の位置が決まる。
【0018】
第2部分42cは、フランジ部42bの下端から下側に突出する円柱状である。第2部分42cの外径は、フランジ部42bの外径よりも小さい。第2部分42cには、第3軸受44cが固定されている。より詳細には、第2部分42cの外周面には、第3軸受44cの内輪が嵌め合わされている。第2部分42cの下側を向く面は、後述する偏心部材50aの上側を向く面を支持している。これにより、偏心部材50aの軸方向の位置が決まる。
【0019】
第3部分42dは、第2部分42cの下端から下側に突出する円柱状である。第3部分42dの外径は、第2部分42cの外径よりも小さい。第3部分42dの外周面には、後述する偏心部材50aが固定されている。第3部分42dの下側を向く面は、第2軸受44bの内輪の上側を向く面を支持している。これにより、第2軸受44bの軸方向に位置が決まる。
【0020】
第4部分42eは、第3部分42dの下端から下側に突出する円柱状である。第4部分42eの外径は、第3部分42dの外径よりも小さい。第4部分42eは、モータシャフト42の下側の部分である。第4部分42eには、第2軸受44bが固定されている。より詳細には、第4部分42eの外周面には、第2軸受44bの内輪が嵌め合わされて固定されている。これにより、モータシャフト42のロータコア41aよりも下側の部分が中心軸線J1を中心に回転可能に支持されている。
【0021】
ロータコア41aは、モータシャフト42の第1部分42aの外周面に固定されている。ロータコア41aは、中心軸線J1を中心とする円筒状である。
【0022】
磁石41bは、ロータコア41aに埋め込まれて保持されている。図示は省略するが、本実施形態において磁石41bは、周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。
【0023】
ステータ43は、ロータ41の径方向外側に位置する。より詳細には、ステータ43は、ロータコア41aの径方向外側に隙間を介して対向して配置されている。ステータ43は、ロータコア41aの径方向外側を囲む環状である。ステータ43は、ステータコア43aと、インシュレータ43bと、複数のコイル43cと、を有する。
【0024】
ステータコア43aは、ロータ41の径方向外側を囲む円環状である。ステータコア43aの外周面は、後述するハウジング11のモータ収容部13の内周面に固定されている。
【0025】
複数のコイル43cは、インシュレータ43bを介してステータコア43aの図示しないティースに巻回されている。複数のコイル43cは、それぞれ、コイル本体部43dと、コイル引出線43eとを有している。コイル本体部43dは、ステータコア43aの図示しないティースに巻回される部分である。コイル本体部43dは、ステータコア43aに固定されている。
【0026】
コイル引出線43eは、コイル本体部43dから上側、すなわち軸方向一方側に引き出される部分である。コイル引出線43eの一端は、コイル本体部43dと繋がっている。コイル引出線43eの他端は、後述する回路基板70と接続されている。これにより、回路基板70はコイル43cと電気的に接続される。コイル引出線43eと回路基板70を接続する工程については、後段で説明する。
【0027】
第1センサマグネット45は、モータシャフト42の穴部42a1に固定されている。第1センサマグネット45の上端は、モータシャフト42よりも上側に位置している。第1センサマグネット45は、中心軸線J1を中心とする円柱状である。第1センサマグネット45の上側を向く面は、制御装置7と軸方向に隙間を介して対向している。第1センサマグネット45には、周方向に沿ってN極とS極とが交互に設けられている。
【0028】
減速機構(伝達機構)50は、ロータコア41aおよびステータ43の下側に配置される。減速機構50は、モータシャフト42と連結される。つまり、減速機構(伝達機構)50はロータ41と連結される。減速機構50は、偏心部材50aと、外歯ギヤ51と、内歯ギヤ52と、出力ギヤ53と、複数の突出部54と、を有する。
【0029】
偏心部材50aは、中心軸線J1に対して偏心した偏心軸線J2を中心とする円環状である。偏心部材50aは、第3部分42dの外周面に固定されている。これにより、減速機構50は、モータシャフト42に連結されている。偏心軸線J2は、中心軸線J1と平行な仮想軸線である。モータシャフト42が中心軸線J1を中心として回転すると、偏心部材50aは、中心軸線J1を中心として周方向に公転する。
【0030】
外歯ギヤ51は、偏心軸線J2を中心として、偏心軸線J2の径方向に広がる円環板状である。外歯ギヤ51の板面は軸方向を向いている。外歯ギヤ51の外側面には、外歯歯車部51bが設けられている。外歯歯車部51bは、外歯ギヤ51の外周に沿って並ぶ複数の歯部を有する。外歯ギヤ51の内側面は、偏心部材50aの外周面と接触している。これにより、外歯ギヤ51は、偏心軸線J2回りに偏心部材50aと相対的に回転可能である。外歯ギヤ51は、複数の穴部51aを有する。
【0031】
穴部51aは、外歯ギヤ51を軸方向に貫通している。複数の穴部51aは、偏心軸線J2を中心とする周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。穴部51aは、軸方向に見て円形状である。穴部51aの内径は、突出部54の外径よりも大きい。なお、穴部51aは、底部を有する穴であってもよい。
【0032】
内歯ギヤ52は、外歯ギヤ51の径方向外側に位置し、外歯ギヤ51を囲む環状である。内歯ギヤ52は、中心軸線J1を中心とする円環状である。内歯ギヤ52は、後述する第2軸受保持部材48に固定されている。内歯ギヤ52の内側面には、内歯歯車部52bが設けられている。内歯歯車部52bは、内歯ギヤ52の内周に沿って並ぶ複数の歯部を有する。内歯歯車部52bは、外歯歯車部51bと噛み合っている。つまり、内歯ギヤ52は、外歯ギヤ51と噛み合っている。
【0033】
出力ギヤ53は、外歯ギヤ51および内歯ギヤ52の上側に配置されている。出力ギヤ53は、中心軸線J1を中心とする円環状である。出力ギヤ53の内周面は、第3軸受44cの外輪の外周面に固定されている。これにより、出力ギヤ53は、中心軸線J1を中心として回転可能である。出力ギヤ53の外側面には、出力歯車部53aが設けられている。出力歯車部53aは、出力ギヤ53の外周に沿って並ぶ複数の歯部を有する。出力歯車部53aは、後述する駆動ギヤ62の駆動歯車部62aと噛み合っている。
【0034】
複数の突出部54は、出力ギヤ53から外歯ギヤ51に向かって軸方向に突出している。各突出部54は、それぞれ、出力ギヤ53の下面から下側に突出する円柱状である。各突出部54は、それぞれ、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。各突出部54は、それぞれ穴部51aに上側から挿入されている。各突出部54の外周面は、各穴部51aの内側面と内接している。各突出部54は、穴部51aの内側面を介して、外歯ギヤ51を中心軸線J1回りに揺動可能に支持している。
【0035】
出力部60は、電動アクチュエータ1の駆動力を出力する部分である。図2に示すように、出力部60は、モータ部40の径方向外側に配置されている。出力部60は、出力シャフト61と、駆動ギヤ62と、第4軸受65aと、第5軸受65bと、第2センサマグネット63と、マグネットホルダ64と、を有する。
【0036】
出力シャフト61は、中心軸線J1と平行な出力軸線J3を中心として、軸方向に延びる円筒状である。つまり、出力シャフト61は、モータシャフト42と同じ方向に延びている。出力シャフト61は、制御装置7よりも下側に配置されている。出力シャフト61は、減速機構50を介してモータシャフト42に連結されている。これにより、出力シャフト61には、減速機構(伝達機構)50を介してロータ41の動力が伝わる。出力シャフト61は、モータシャフト42の径方向外側に互いに離れて配置されている。なお、以下の説明において、出力軸線J3を中心とする径方向を「出力径方向」と呼ぶ。出力径方向は、出力シャフト61の径方向である。出力シャフト61は、基部61aと、小径部61bと、大径部61cと、出力軸部61dと、を有する。
【0037】
基部61aは、出力軸線J3を中心として軸方向に延びる円柱状である。径方向に見て、基部61aは、ステータ43と重なる。基部61aの上側の部分は、上側に向かうにしたがって、外径が小さくなるテーパ状である。基部61aは、第4軸受65aを軸方向に通されている。基部61aの外周面は、第4軸受65aの内周面と接触している。これにより、出力シャフト61の上側の部分が出力軸線J3を中心に回転可能に支持される。
【0038】
小径部61bは、基部61aから上側に突出する、出力軸線J3を中心とする円柱状である。小径部61bの外径は、基部61aの外径よりも小さい。小径部61bの上端は、出力シャフト61の上端である。
【0039】
大径部61cは、基部61aから下側に突出する、出力軸線J3を中心とする円柱状である。大径部61cの外径は、基部61aの外径よりも大きい。大径部61cの外周面には、駆動ギヤ62が固定されている。
【0040】
出力軸部61dは、大径部61cから下側に突出する、出力軸線J3を中心とする円筒状である。出力軸部61dの外径は、大径部61cの外径よりも小さい。出力軸部61dは、第5軸受65bを軸方向に通されている。出力軸部61dの外周面は、第5軸受65bの内周面と接触している。これにより、出力シャフト61の下側の部分が出力軸線J3を中心に回転可能に支持される。
【0041】
出力軸部61dは、下側に開口している。出力軸部61dの内周面には、周方向に沿って複数のスプライン溝が設けられている。出力軸部61dの内周面には、電動アクチュエータ1の駆動力が出力される図示しない被駆動シャフトが挿入されて連結される。より詳細には、被駆動シャフトの外周面に設けられたスプライン部が、出力シャフト61の内周面に設けられたスプライン溝に嵌め合わされることで、出力シャフト61と被駆動シャフトとが連結される。これにより、電動アクチュエータ1は、被駆動シャフトを出力軸線J3回りに回転させる。被駆動シャフトは、例えば、車両におけるマニュアルシャフトである。出力軸部61dの外周面の下側の部分には溝が設けられ、溝にはOリング91が嵌め込まれている。Oリング91は、後述する突出筒状部17cの内周面と、出力軸部61dの外周面とに接触して、第2ハウジング部材17と出力シャフト61との間を封止している。
【0042】
図2に示すように、駆動ギヤ62は、出力シャフト61の大径部61cに固定されている。駆動ギヤ62は、出力シャフト61から出力ギヤ53に向かって径方向に延びている。図示は省略するが、駆動ギヤ62は、軸方向に見て、略扇形状である。出力軸線J3を中心とする周方向における駆動ギヤ62の寸法は、出力径方向の外側に向かうに従って大きくなっている。駆動ギヤ62は、出力径方向の外側面に駆動歯車部62aを有する。駆動歯車部62aは、出力軸線J3を中心とする周方向に沿って並ぶ複数の歯部を有する。駆動歯車部62aは、出力歯車部53aと噛み合っている。これにより、駆動ギヤ62は、減速機構50に接続される。そのため、駆動ギヤ62には、減速機構50を介してモータ部40の駆動力が伝達され、出力シャフト61は出力軸線J3を中心として回転する。
【0043】
マグネットホルダ64は、出力軸線J3を中心として軸方向に延びる略円筒状である。マグネットホルダ64は、軸方向の両側に開口している。マグネットホルダ64は、回路基板70よりも下側に配置されている。マグネットホルダ64の内周面のうち下側の部分は、小径部61bの外周面に嵌め合わされている。これにより、マグネットホルダ64は、出力シャフト61に固定されている。
【0044】
本実施形態において、第4軸受65aおよび第5軸受65bは、それぞれ、滑り軸受けである。第4軸受65aは、出力軸線J3を中心とし、上側および下側に開口する円筒状である。上述のように、第4軸受65aの内周面は、出力シャフト61の基部61aの外周面と接触している。また、第4軸受65aは、第1ハウジング部材12の後述する円筒部15cに支持されている。これにより、第4軸受65aは、出力シャフト61の基部61aを、出力軸線J3を中心に回転可能に支持する。
【0045】
第5軸受65bは、出力軸線J3を中心とし、上側および下側に開口する円筒状である。上述のように、第5軸受65bの内周面は、出力シャフト61の出力軸部61dの外周面と接触している。また、第5軸受65bは、第2ハウジング部材17の後述する突出筒状部17cに保持されている。これにより、第5軸受65bは、出力シャフト61の出力軸部61dを、出力軸線J3を中心に回転可能に支持する。また、第5軸受65bの上側を向く面は、出力シャフト61の大径部61cの下側を向く面の外縁部と接触している。これにより、軸方向における出力シャフト61の位置が決まる。
【0046】
第2センサマグネット63は、マグネットホルダ64の内周面に固定されている。第2センサマグネット63は、マグネットホルダ64を介して、出力シャフト61と固定されている。第2センサマグネット63は、出力軸線J3を中心とする円柱状である。第2センサマグネット63の上側を向く面は、制御装置7と軸方向に隙間を介して対向している。第2センサマグネット63には、周方向に沿ってN極とS極とが交互に設けられている。
【0047】
モータシャフト42が中心軸線J1回りに回転されると、偏心部材50aは中心軸線J1を中心として周方向に公転する。偏心部材50aの公転は、外歯ギヤ51に伝達され、外歯ギヤ51は、穴部51aの内周面と突出部54の外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。これにより、外歯ギヤ51の外歯歯車部51bと内歯ギヤ52の内歯歯車部52bとの噛み合う位置が、周方向に変化する。したがって、内歯ギヤ52に、外歯ギヤ51を介してモータシャフト42の回転力が伝達される。
【0048】
上述のように内歯ギヤ52は、後述する第2軸受保持部材48に固定されているため回転しない。そのため、内歯ギヤ52に伝達される回転力の反力によって、外歯ギヤ51が偏心軸線J2回りに回転する。このとき外歯ギヤ51の回転する向きは、モータシャフト42の回転する向きと反対向きとなる。外歯ギヤ51の偏心軸線J2回りの回転は、穴部51aと突出部54とを介して、出力ギヤ53に伝達される。これにより、出力ギヤ53が中心軸線J1回りに回転する。出力ギヤ53には、モータシャフト42の回転が減速されて伝達される。
【0049】
出力ギヤ53が回転すると、出力ギヤ53に噛み合う駆動ギヤ62が出力軸線J3回りに回転する。これにより、駆動ギヤ62に固定された出力シャフト61が、出力軸線J3回りに回転する。このようにして、出力シャフト61には、減速機構50を介してモータ部40の回転トルクが伝達される。このような減速機構(伝達機構)50によれば、出力シャフト61の回転数を、ロータ41の回転数よりも小さくできる。そのため、出力シャフト61の回転トルクを大きくできる。したがって、本実施形態の電動アクチュエータ1では小型化を図りつつ、大きな出力トルクを発生させることができる。なお、本実施形態において、出力シャフト61は1周しない範囲内で双方向に回転させられる。
【0050】
ハウジング11は、モータ部40、減速機構(伝達機構)50、出力部60、制御装置7、および、第2軸受保持部材48を内部に収容する。ハウジング11は、第1ハウジング部材12と、蓋部材16と、第2ハウジング部材17とを有する。本実施形態において、第1ハウジング部材12は、ロータ41およびステータ43を内部に収容し、モータシャフト42および出力シャフト61を上側から回転可能に支持する。蓋部材16は、第1ハウジング部材12の上側に固定される。第2ハウジング部材17は、第1ハウジング部材12の下側に固定され、モータシャフト42および出力シャフト61を下側から回転可能に支持する。
【0051】
図2に示すように、第1ハウジング部材12は、軸方向に延びる筒状である。第1ハウジング部材12は、上側に開口する開口14aと、下側に開口する開口13bと、を有する。図1に示すように、第1ハウジング部材12は、軸方向に見て、四角形状である。図2に示すように、第1ハウジング部材12は、モータ収容部13と、回路基板収容部14と、出力部収容部15と、隔壁部19とを有している。
【0052】
図2に示すように、モータ収容部13は、ロータ41およびステータ43を内部に収容する。モータ収容部13は、中心軸線J1を中心として軸方向に延びる略円筒状である。モータ収容部13は、下側に開口する開口13bを有する。モータ収容部13の内部は、開口13bを介して、第2ハウジング部材17の内部と繋がっている。モータ収容部13の上側は隔壁部19によって塞がれている。モータ収容部13の内周面には、ステータ43が固定されている。より詳細には、モータ収容部13の内周面には、ステータコア43aの外周面が嵌め合わされて固定されている。モータ収容部13は、第1段差面13aと、爪部13cとを有している。
【0053】
第1段差面13aは、モータ収容部13の内周面に設けられる、下側を向く段差面である。第1段差面13aは、ステータコア43aの上側を向く面の外縁部が接触している。これにより、第1ハウジング部材12に対する、ステータ43の軸方向の位置が決まるとともに、ステータ43が上側に移動することを抑制できる。
【0054】
爪部13cはモータ収容部13の下側に設けられる。図示は省略するが、本実施形態において、爪部13cは3個設けられている。各爪部13cは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。各爪部13cの上側向く面は、ステータコア43aの下側を向く面の外縁部と接触している。これにより、第1ハウジング部材12に対する、ステータ43の軸方向の位置が決まるとともに、ステータ43が下側に移動することを抑制できる。また、爪部13cは径方向に弾性を有する。そのため、電動アクチュエータ1の組立時において、第1ハウジング部材12の内部に、ステータ43が下側から挿入され、ステータコア43aの外周面と、各爪部13cとが接触すると、各爪部13cを含むモータ収容部13の一部が径方向外側に変形する。さらに、ステータ43が上側に挿入され、ステータコア43aの下端が、爪部13cよりも上側に位置すると、各爪部13cを含むモータ収容部13の一部は弾性力により、径方向内側に移動する。これにより、各爪部13cの上側を向く面と、ステータコア43aの下側を向く面とが接触し、ステータコア43aの軸方向の位置が決まる。そのため、本実施形態では、第1ハウジング部材12にステータ43を容易に組み付けることができる。したがって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減することができる。なお、各爪部13cは、上側向く面においてステータコア43aの下側を向く面と上下に対向していれば抜け止めとして機能することができるため、必ずしも接触してなくてもよい。
【0055】
図2に示すように、回路基板収容部14は、制御装置7を内部に収容する。図1に示すように、回路基板収容部14は、中心軸線J1および出力軸線J3を囲み、軸方向に延びる四角筒状である。図2に示すように、回路基板収容部14は、モータ収容部13および出力部収容部15の上側、すなわち軸方向一方側に配置されている。回路基板収容部14は、第1ハウジング部材12の上側の部分である。回路基板収容部14の下端は、モータ収容部13の上端および出力部収容部15の上端と繋がっている。回路基板収容部14は、上側に開口する開口14aを有している。軸方向において、回路基板収容部14の内部と、モータ収容部13の内部とは、隔壁部19によって隔てられている。また、軸方向において、回路基板収容部14の内部と、出力部収容部15の内部とは、繋がっている。図4に示すように、回路基板収容部14には、回路基板収容部14を軸方向に貫通する複数の孔部14bが設けられている。本実施形態において孔部14bは、10個設けられている。
【0056】
図2に示すように、出力部収容部15は、出力部60の上側の部分を内部に収容する。図4に示すように、出力部収容部15は、出力軸線J3を囲み、上側に開口する略四角筒状である。出力部収容部15は、モータ収容部13の径方向外側に配置されている。出力部収容部15は、側壁部15aと、底壁部15bと、円筒部15cと、第2基板支持部15fとを有する。
【0057】
側壁部15aは、出力シャフト61の出力径方向外側を囲み、軸方向に延びる略四角筒状である。側壁部15aの径方向内側の部分は、モータ収容部13と繋がっている。側壁部15aの外周面には接続端子保持部15iが設けられている。
【0058】
接続端子保持部15iは、側壁部15aから出力径方向外側に突出する略四角筒状である。接続端子保持部15iは、複数の電源用接続端子92および複数の信号用接続端子93を保持する。図3に示すように、複数の電源用接続端子92および複数の信号用接続端子93は後述する回路基板70と接続される。接続端子保持部15iには、図示しない外部コネクタが挿入される。複数の電源用接続端子92は、外部コネクタが保持する外部電源端子と接続される。電源用接続端子92および外部電源用端子を介して、回路基板70と図示しない外部電源とが電気的に接続される。複数の信号用接続端子93は、外部コネクタが保持する外部信号用端子と接続される。信号用接続端子93および外部信号用端子を介して、回路基板70と図示しない外部機器とが電気的に接続される。
【0059】
図2に示すように、底壁部15bは、出力シャフト61の基部61aを囲む板状である。底壁部15bの板面は、軸方向を向いている。図4に示すように、底壁部15bの出力径方向の端部の一部は、側壁部15aの下端と繋がっている。また、図示は省略するが、底壁部15bの出力径方向の端部の他の部分は、モータ収容部13の下端と繋がっている。
【0060】
図2に示すように、円筒部15cは、底壁部15bの内縁部から上側に突出する、出力軸線J3を中心とする円筒状である。円筒部15cは上側および下側に開口している。円筒部15cには、出力シャフト61の基部61aが通されている。円筒部15cの内周面には、第4軸受65aが固定されている。これにより、円筒部15cは、第4軸受65aを介して、出力シャフト61を支持している。
【0061】
図4に示すように、第2基板支持部15fは、底壁部15bから上側に突出する円筒状である。図2に示すように、第2基板支持部15fの上端は、第1ハウジング部材12の上端よりも下側に位置している。図4に示すように、本実施形態において、第2基板支持部15fは2つ設けられている。各第2基板支持部15fは、底壁部15bの径方向外側の縁部に間隔をあけて設けられている。第2基板支持部15fは、第2基部15gと、第2突出部15hとを有している。
【0062】
第2基部15gは、底壁部15bから上側に突出する円筒状である。第2突出部15hは、第2基部15gから上側に突出する円筒状である。第2突出部15hの外径は、第2基部15gの外径よりも小さい。
【0063】
図2に示すように、隔壁部19は、ステータ43およびロータコア41aの上側に配置されている。隔壁部19は、モータ収容部13の上側を塞いでいる。隔壁部19は、中心軸線J1を中心とする略円環板状である。図4に示すように、隔壁部19は、隔壁本体部19aと、貫通孔19bと、突起部19fと、筒状部19iと、第1基板支持部19jと、を有している。
【0064】
図2に示すように、隔壁本体部19aは、中心軸線J1を中心とする略円環板状である。隔壁本体部19aの板面は、軸方向を向いている。隔壁本体部19aの径方向外側の端部は、モータ収容部13の上端と繋がっている。隔壁本体部19aは、モータ収容部13の上側を塞いでいる。これにより、モータ収容部13と回路基板収容部14とが軸方向に隔てられる。
【0065】
図2に示すように、貫通孔19bは、隔壁本体部19aを軸方向に貫通する孔である。貫通孔19bには、コイル引出線43eが略軸方向に通されている。図4に示すように、本実施形態において、貫通孔19bは、3個設けられている。各貫通孔19bは、それぞれ、径方向に沿って延びる孔である。各貫通孔19bは、周方向に沿って間隔をあけて設けられている。一つの貫通孔19bは、中心軸線J1を挟んで出力軸線J3と反対側の位置に設けられている。他の二つの貫通孔19bは、一つの貫通孔19bの周方向一方側と周方向他方側にそれぞれ設けられている。貫通孔19bは、互いに繋がる挿通孔19cと、長孔19dとを有している。
【0066】
挿通孔19cは、貫通孔19bのうち、隔壁本体部19aを軸方向に貫通する円形状の孔である。図2に示すように、軸方向に見て、貫通孔19bは、コイル引出線43eがコイル本体部43dから引き出させる位置と重なる。挿通孔19cの内側面のうち下側の部分には、上側、すなわち軸方向一方側に向かうにしたがって径が小さいテーパ形状の案内面19c1が設けられている。よって、挿通孔19cの下端の内径よりも、挿通孔19cの上端の内径の方が小さい。本実施形態において、挿通孔19cにはコイル引出線43eの一部が略軸方向に通されている。より詳細には、コイル引出線43eの一部が軸方向から径方向に傾いて通されている。
【0067】
図4に示すように、長孔19dは、挿通孔19cから径方向内側(径方向一方側)に延び、隔壁本体部19aを軸方向に貫通する孔である。なお、長孔19dは、挿通孔19cから径方向外側に延びていてもよい。図2に示すように、長孔19dの径方向内側の端部は、ステータ43よりも径方向内側に位置している。また、図4に示すように、本実施形態において、長孔19dの径方向と直交する方向の幅は、挿通孔19cの径方向と直交する方向の幅よりも小さく設けられている。なお、長孔19dの径方向と直交する方向の幅は、挿通孔19cの径方向と直交する方向の幅と同じ幅もしくは、大きな幅であってもよい。図2に示すように、長孔19dには、コイル引出線43eの一部が略軸方向に通されている。より詳細には、コイル引出線43eの一部が軸方向から径方向に傾いて通されている。つまり、本実施形態では、コイル引出線43eは、挿通孔19cおよび長孔19dの両方を軸方向に通されている。すなわち、コイル引出線43eは、少なくとも挿通孔19cもしくは長孔19dのいずれか一方を軸方向に通されている。
【0068】
上述のように、本実施形態によれば、長孔19dは、挿通孔19cから径方向内側に延びている。そのため、長孔19dが、挿通孔19cから径方向外側の延びる場合と比較して、隔壁部19、および後述する回路基板70が径方向に大型化することを抑制できる。したがって、電動アクチュエータ1が径方向に大型化することを抑制できる。
【0069】
図2に示すように、突起部19fは、隔壁本体部19aから上側に突出している。突起部19fは、軸方向において、隔壁本体部19aと後述する回路基板70との間に配置されている。図4に示すように、本実施形態において、突起部19fは、それぞれ、3個設けられている。各突起部19fは、それぞれ、互いに異なる貫通孔19bの縁部に設けられている。より詳細には、各突起部19fは、それぞれ、各貫通孔19bの長孔19dの周方向他方側の縁部に設けられている。突起部19fは、接続部19gと、引掛部19hとを有している。
【0070】
接続部19gは、隔壁本体部19aから上側、すなわち軸方向一方側に突出する長方形の板状である。接続部19gの板面は、周方向を向いている。接続部19gは、長孔19dの周方向他方側の縁部に配置されている。接続部19gの径方向内側の端部は、長孔19dの径方向内側の端部よりも径方向外側に配置されている。
【0071】
図4に示すように、引掛部19hは、接続部19gの上側、すなわち軸方向一方側の端部から径方向と直交する方向に突出する長方形の板状である。軸方向に見て、引掛部19hは、長孔19dと重なって配置されている。すなわち、突起部19fは、軸方向に見て、貫通孔19bと重なって配置される引掛部19hを有している。引掛部19hの径方向内側の端部は、長孔19dの径方向内側の端部よりも径方向外側に配置されている。また、図5に示すように、引掛部19hの下側、すなわち軸方向他方側を向く面には、上側、すなわち軸方向一方側に窪み、且つ、径方向に延びる溝19h1が設けられている。本実施形態において、溝19h1は、上側に向かうにしたがって、径方向と直交する方向における幅が狭いテーパ形状である。溝19h1の内部には、コイル引出線43eが保持されている。
【0072】
図2に示すように、貫通孔19bを軸方向に通されたコイル引出線43eは、軸方向において貫通孔19bと引掛部19hとの間を径方向内側(径方向一方側)に向けて通されている。より詳細には、図5に示すように、コイル引出線43eは、引掛部19hの溝19h1に沿って、径方向内側に向けて通されている。また、図2に示すように、コイル引出線43eは、引掛部19hの径方向内側(径方向一方側)の端部において、上側に向けて屈曲している。
【0073】
上述のように、本実施形態によれば、突起部19fは、隔壁本体部19aから上側、すなわち軸方向一方側に突出する接続部19gを有し、引掛部19hは、接続部19gの上側の端部から径方向と直交する方向に突出する。よって、突起部19fを、接続部19gと引掛部19hのみによって、簡易な形状で構成できる。そのため、第1ハウジング部材12を成形する際に、突起部19fを設けることができる。よって、突起部19fを第1ハウジング部材12に加えて別途の部材で構成する必要が無い。よって、第1ハウジング部材12の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。したがって、電動アクチュエータ1の部品点数および組立工数が増大することを抑制できる。
【0074】
図2に示すように、筒状部19iは、隔壁本体部19aから下側に突出し、下側に開口する円筒状である。筒状部19iは、モータシャフト42の上端および第1軸受44aを径方向外側から囲む。
【0075】
第1軸受保持部材47は、中心軸線J1を中心とし、上側および下側に開口する円筒状である。第1軸受保持部材47は、モータシャフト42の上側の部分および第1軸受44aを径方向外側から囲む。第1軸受保持部材47の外周面は、筒状部19iの内周面に固定されている。第1軸受保持部材47の内周面には第1軸受44aが保持されている。よって、第1軸受44aは、第1軸受保持部材47を介して、ハウジング11に保持される。これにより、第1軸受44aは、モータシャフト42の上端を、中心軸線J1を中心に回転可能に支持する。
【0076】
図4に示すように、第1基板支持部19jは、隔壁本体部19aから上側に突出する円筒状である。図2に示すように、第2基板支持部15fの上端は、後述する回路基板70よりも上側に位置している。図4に示すように、本実施形態において、第1基板支持部19jは5つ設けられている。各第1基板支持部19jは、第1基部19kと、第1突出部19mとを有している。
【0077】
第1基部19kは、隔壁本体部19aから上側に突出する円筒状である。第1突出部19mは、第1基部19kから上側に突出する円筒状である。第1突出部19mの外径は、第1基部19kの外径よりも小さい。軸方向において、第1基部19kの上側を向く面は、第2基部15gの上側を向く面と同じ位置に配置されている。
【0078】
図1に示すように、蓋部材16は、第1ハウジング部材12の上側に固定されている。蓋部材16は、軸方向に突出し、下側に開口する略四角筒状である。図2に示すように、蓋部材16は、第1ハウジング部材12の開口14aを上側から塞いでいる。蓋部材16の内部には、後述する制御装置7の一部が収容されている。本実施形態において、蓋部材16は、金属製である。蓋部材16は、例えば、ダイカストによって成形されている。蓋部材16は、蓋本体部16aと、蓋側部16bと、爪部16dとを有している。
【0079】
図1に示すように、蓋本体部16aは、略四角形の板状である。図2に示すように、蓋本体部16aの板面は軸方向を向いている。蓋本体部16aの下側を向く面の外縁部は、回路基板収容部14の上端と接触している。これにより、蓋部材16は、第1ハウジング部材12の開口14aを上側から塞いでいる。
【0080】
蓋側部16bは、蓋本体部16aから下側に突出する、略四角筒状である。蓋側部16bは、蓋本体部16aの外縁部に沿って、一周に亘って設けられている。蓋側部16bの外側面は、回路基板収容部14の内側面と嵌め合わされている。これにより、蓋部材16は、第1ハウジング部材12に固定されている。
【0081】
図1に示すように、爪部16dは、蓋本体部16aの外縁部から下側に突出する板状である。図示は省略するが、爪部16dの下端には、径方向内側に向けて突出する凸部が設けられている。本実施形態において、爪部16dは10個設けられている。各爪部16dは、それぞれ、回路基板収容部14の孔部14bを軸方向に通されている。図示は省略するが、各爪部16dの凸部は、それぞれ、回路基板収容部14の外側面に設けられる凹部に嵌め合わされている。これにより、蓋部材16は、第1ハウジング部材12に固定される。
【0082】
図2に示すように、第2ハウジング部材17は、第1ハウジング部材12の下側に固定されている。第2ハウジング部材17は、減速機構50と、出力部60の下側の部分と、を内部に収容する。第2ハウジング部材17は、第1ハウジング部材12の開口13bを下側から塞いでいる。本実施形態において、第2ハウジング部材17は、金属製である。第2ハウジング部材17は、例えば、ダイカストによって成形されている。第2ハウジング部材17は、側部17aと、底部17bと、底板部17c1と、突出筒状部17cと、取付部17gと、を有している。
【0083】
図2に示すように、側部17aは、中心軸線J1および出力軸線J3を囲み、上側に開口する筒状である。側部17aは、減速機構50と、出力部60の下側の部分を径方向外側から囲む。側部17aの上側を向く面には、下側に窪む凹部17iが設けられている。凹部17iには、モータ収容部13の下端部および出力部収容部15の下端部が嵌め込まれている。これにより、第1ハウジング部材12に対する第2ハウジング部材17の径方向および周方向における位置が決まる。
【0084】
底部17bは、中心軸線J1を中心とし、上側に開口する略円筒状である。底部17bは、減速機構50の下側に配置されている。底部17bの径方向外側の端部は、側部17aの下端と繋がっている。底部17bは、第2軸受保持部材48を保持する。底部17bは、第1筒部17b1と、第1底部17b2と、第2筒部17b3と、第2底部17b4と、を有している。
【0085】
第1筒部17b1は、中心軸線J1を中心とし、上側に開口する円筒状である。第1筒部17b1の上端は、側部17aの下端と繋がっている。第1筒部17b1は、外歯ギヤ51および内歯ギヤ52を囲んでいる。
【0086】
第1底部17b2は、中心軸線J1を中心とする円環板状である。第1底部17b2の板面は、軸方向を向いている。第1底部17b2は、外歯ギヤ51および内歯ギヤ52の下側に配置されている。第1底部17b2の径方向外側の端部は、第1筒部17b1の下端と繋がっている。
【0087】
第2筒部17b3は、中心軸線J1を中心とし、上側に開口する円筒状である。第2筒部17b3は、第2軸受44bおよびモータシャフト42の第4部分42eを囲んでいる。第2筒部17b3の上端は、第1底部17b2の径方向内側の端部と繋がっている。
【0088】
第2底部17b4は、中心軸線J1を中心とする円板状である。第2底部17b4の板面は、軸方向を向いている。第2底部17b4は、第2軸受44bの下側に配置されている。第2底部17b4の径方向外側の端部は、第2筒部17b3の下端と繋がっている。
【0089】
図2に示すように、第2軸受保持部材48は、底部17bに保持されるとともに、第2軸受44bを保持する。第2軸受保持部材48は、底部17bと減速機構50のとの間に配置されている。第2軸受保持部材48は、第1筒状部48aと、平面部48bと、第2筒状部48cと、円環部48dと、を有する。
【0090】
第1筒状部48aは、中心軸線J1を中心とし、上側に開口する円筒状である。第1筒状部48aは、外歯ギヤ51および内歯ギヤ52を囲んでいる。第1筒状部48aは、第1筒部17b1に嵌め合わされている。第2軸受保持部材48の内周面には、内歯ギヤ52が固定されている。
【0091】
平面部48bは、中心軸線J1を中心とする円環板状である。平面部48bの板面は、軸方向を向いている。平面部48bの径方向外側の端部は、第1筒状部48aの下端と繋がっている。平面部48bの下側を向く面は、第1底部17b2の上側を向く面と接触している。平面部48bの上側を向く面の径方向外側の部分は、内歯ギヤ52の下側を向く面を支持している。
【0092】
第2筒状部48cは、中心軸線J1を中心とし、上側に開口する円筒状である。第2筒状部48cの上端は、平面部48bの径方向内側の端部と繋がっている。第2筒状部48cは、第2筒部17b3に嵌め合わされている。第2筒状部48cの内周面には、第2軸受44bが固定されている。より詳細には、第2筒状部48cの内周面には、第2軸受44bの外輪が嵌め合わされて固定されている。これにより、第2軸受44bは、第2軸受保持部材48を介して、第2ハウジング部材17に固定される。
【0093】
円環部48dは、中心軸線J1を中心とする円環板状である。円環部48dの板面は、軸方向を向いている。円環部48dの径方向外側の端部は、第2筒状部48cの下端と繋がっている。円環部48dの上側を向く面は、第2軸受44bの外輪を軸方向に支持している。これにより、第2軸受44bの軸方向の位置が決まる。
【0094】
底板部17c1は、出力軸線J3を中心とする円環板状である。底板部17c1の板面は、軸方向を向いている。底板部17c1は、駆動ギヤ62の下側に配置されている。底板部17c1の径方向内側の端部は、第1筒部17b1の上端と繋がっている。底板部17c1の径方向外側の端部は、側部17aの下端と繋がっている。
【0095】
突出筒状部17cは、出力軸線J3を中心として、上側および下側に開口する円筒状である。突出筒状部17cは、底板部17c1の出力径方向内側の端部から下側に向けて突出する。突出筒状部17cは、出力シャフト61の出力軸部61dを囲んでいる。突出筒状部17cの内周面には、第5軸受65bが保持されている。これにより、出力シャフト61は、第5軸受65bを介して、第2ハウジング部材17に保持される。
【0096】
図1および図2に示すように、取付部17gは、側部17aから径方向外側に突出する略円筒状である。取付部17gは、上側および下側に開口する。図示は省略するが、本実施形態において、取付部17gは、3個設けられている。各取付部17gの内周面には、上側および下側に開口する円筒状のカラー部材95が固定されている。カラー部材95の内部には、図示しない車両部の雌ネジ部に締め込まれるネジが軸方向に通される。これにより、カラー部材95を介して、電動アクチュエータ1は、車両に取り付けられる。
【0097】
制御装置7は、複数のコイル43cに供給する電流を制御する。図2に示すように、制御装置7は、モータ部40および出力部60の上側に配置される。制御装置7は、回路基板収容部14の内部に収容される。図2および図3に示すように、制御装置7は、回路基板70と、複数の電子部品71と、モータ部センサ8と、出力部センサ9と、を有する。
【0098】
図2に示すように、回路基板70は、モータ部40および出力部60の上側に配置される。回路基板70は、板面が軸方向と直交する板状である。回路基板70は、回路基板収容部14の内部に収容される。すなわち、回路基板70は、ハウジング11の内部に収容される。図2または図3に示すように、回路基板70には、複数の電子部品71、モータ部センサ8、出力部センサ9、電源用接続端子92、信号用接続端子93、およびコイル43cのコイル引出線43eの他端が取り付けられている。図3に示すように、軸方向に見て、回路基板70は略長方形状である。回路基板70には、孔部70aと、第1嵌合孔70bとが、第2嵌合孔70cが設けられている。
【0099】
図2に示すように、孔部70aは、回路基板70を軸方向に貫通する孔である。孔部70aには、コイル引出線43eが軸方向に通される。コイル引出線43eの他端は、はんだ付けによって、孔部70aに固定される。これにより、コイル43cと、回路基板70とが電気的に接続される。本実施形態において、孔部70aは、周方向に沿って間隔をあけて3個設けられている。図2に示すように、軸方向に見て、孔部70aは、引掛部19hの径方向内側(径方向一方側)の端部と重なっている。また、軸方向に見て、孔部70aは、コイル本体部43dと重ならない位置に配置されている。本実施形態では、孔部70aは、コイル本体部43dよりも径方向内側に配置されている。よって、本実施形態によれば、回路基板70の孔部70aにコイル引出線43eをはんだ付けによって固定する際に、溶融した高温のはんだが下側に落下して、コイル本体部43dに付着することを抑制できる。そのため、コイル本体部43dにおいて、導電性のコイル線を覆う絶縁被覆層が溶融して、コイル線が外部に露出することを抑制できる。つまり、コイル本体部43dの絶縁性を好適に確保できる。
【0100】
図3に示すように、第1嵌合孔70bは、回路基板70を軸方向に貫通する円形状の孔である。本実施形態において、第1嵌合孔70bは5つ設けられている。軸方向に見て、各第1嵌合孔70bは、それぞれ、隔壁部19の第1基板支持部19jと重なる。図2に示すように、回路基板70の下側を向く面は、第1基部19kの上側を向く面に支持されている。これにより、回路基板70の軸方向の位置が決まる。また、第1嵌合孔70bは、第1突出部19mと嵌め合わされている。これにより、回路基板70は第1ハウジング部材12に固定される。なお、第1突出部19mの先端は、第1嵌合孔70bに挿入した状態で熱かしめによって第1嵌合孔70bより大径に変形されていることが好ましい。この場合、第1突出部19mの変形した先端部は、回路基板70の抜け止めとして機能する。
【0101】
図3に示すように、第2嵌合孔70cは、回路基板70を軸方向に貫通する円形状の孔である。本実施形態において、第2嵌合孔70cは2つ設けられている。軸方向に見て、各第2嵌合孔70cは、それぞれ、出力部収容部15の第2基板支持部15fと重なる。図示は省略するが、回路基板70の下側を向く面は、第2基部15gの上側を向く面に支持されている。これにより、回路基板70の軸方向の位置が決まる。第2嵌合孔70cは、第2突出部15hと嵌め合わされている。これにより、回路基板70は第1ハウジング部材12に固定される。なお、第2突出部15hの先端も、第1突出部19mと同様に熱かしめされていることが好ましい。
【0102】
複数の電子部品71は、回路基板70に取り付けられている。複数の電子部品71は、はんだ付け等によって回路基板70に固定され、回路基板70と電気的に接続される。複数の電子部品71は、回路基板70の上面もしくは下面に固定される。本実施形態において、複数の電子部品71は、コンデンサやトランジスタ等の電子部品である。
【0103】
モータ部センサ8は、回路基板70の下面に固定されている。より詳細には、モータ部センサ8は、回路基板70の下側の面のうち第1センサマグネット45と隙間を介して軸方向に対向する部分に固定されている。モータ部センサ8は、第1センサマグネット45の磁界を検出可能な磁気センサである。モータ部センサ8は、例えば、ホールIC等のホール素子である。モータ部センサ8は、第1センサマグネット45の磁界を検出することで第1センサマグネット45の回転位置を検出してモータシャフト42の回転を検出する。
【0104】
出力部センサ9は、回路基板70の下面に固定されている。より詳細には、出力部センサ9は、回路基板70の下側の面のうち第2センサマグネット63と隙間を介して軸方向に対向する部分に固定されている。出力部センサ9は、第2センサマグネット63の磁界を検出可能な磁気センサである。出力部センサ9は、例えば、ホールIC等のホール素子である。出力部センサ9は、第2センサマグネット63の磁界を検出することで第2センサマグネット63の回転位置を検出して出力シャフト61の回転を検出する。
【0105】
次に、本実施形態の電動アクチュエータ1の組立において、コイル引出線43eと回路基板70とを接続する工程について説明する。コイル引出線43eと回路基板70とを接続する工程は、挿通工程と、屈曲工程と、基板固定工程と、コイル引出線接続工程と、を有する。なお、以下の説明において、明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0106】
挿通工程は、コイル引出線43eを、隔壁部19の挿通孔19cに通す工程である。図6に示すように、作業者等は、まず、治具等に固定した第1ハウジング部材12に対して、ステータ43を下側から移動させ、開口13bを介して、モータ収容部13の内部に挿入する。このとき、コイル引出線43eは、コイル本体部43dから上側に引き出され、コイル本体部43dから上側に突出している。軸方向に見て、コイル引出線43eは、挿通孔19cと重なる。図示は省略するが、ステータコア43aが、モータ収容部13の内部に挿入されると、ステータコア43aの外周面と爪部13cとが接触する。これにより、爪部13cを含む第1ハウジング部材12の一部が径方向外側に曲げられる。
【0107】
図7に示すように、作業者等が、ステータ43をモータ収容部13の内部に挿入すると、コイル引出線43eは挿通孔19cを軸方向に通される(二点鎖線で記載)。本実施形態では、上述のように、コイル引出線43eは、コイル本体部43dから上側に引き出され、軸方向に見て、コイル引出線43eは、挿通孔19cと重なっている。そのため、ステータ43を第1ハウジング部材12の内部に挿入するする作業のみによって、コイル引出線43eを挿通孔19cに通すことができる。
【0108】
また、本実施形態によれば、挿通孔19cの内側面に、上側、すなわち軸方向一方側に向かうにしたがって径が小さいテーパ形状の案内面19c1が設けられる。そのため、コイル引出線43eが、軸方向から傾いてコイル本体部43dから突出していた場合であっても、コイル引出線43eの他端が、案内面19c1と接触し、案内面19c1によって挿通孔19cの中心方向へと案内される。これにより、コイル引出線43eを挿通孔19cに容易に通すことができる。そのため、挿通工程の作業性を向上させることができる。よって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減できる。また、挿通孔19cの上側の内径を小さくできるため、挿通孔19cに通された、コイル引出線43eの径方向および周方向における位置をより精度よく決めることがでる。
【0109】
作業者等が、ステータコア43aの上側を向く面の外縁部が、第1段差面13aと接触するまで、ステータ43がモータ収容部13の内部に挿入すると、挿通工程は終了する。このとき、ステータコア43aの下端が、爪部13cよりも上側に位置する。そのため、爪部13cは弾性力により、径方向内側に移動し、爪部13cの上側を向く面が、ステータコア43aの下側を向く面の外縁部と接触する。これらにより、軸方向における、第1ハウジング部材12に対するステータコア43aの位置が決まるとともに、ステータ43は、第1ハウジング部材12に固定される。つまり、本実施形態では、ステータ43を第1ハウジング部材12の内部に挿入する作業のみによって、ステータ43の軸方向の位置を決めつつ、ステータ43を第1ハウジング部材12に固定できる。したがって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減できる。
【0110】
屈曲工程は、コイル引出線43eを、突起部19fの引掛部19hに引掛けつつ、上側に屈曲させる工程である。図7に示すように、挿通孔19cを軸方向に通されたコイル引出線43e(二点鎖線で記載)は、作業者等よって、径方向内側に向けて引っ張られつつ、引掛部19hと長孔19dとの間を通される。このとき、図5に示すように、コイル引出線43eは、引掛部19hの溝19h1の内部に保持される。そのため、溝19h1によって、径方向と直交する方向における、コイル引出線43eの位置を容易に決めることができる。また、上述のようにコイル引出線43eは、径方向内側に向けて引っ張られるため、コイル引出線43eは、挿通孔19cおよび長孔19dの両方を軸方向に通る。すなわち、コイル引出線43eは、少なくとも挿通孔19cもしくは長孔19dのいずれか一方を軸方向に通される。
【0111】
次に、作業者等は、引掛部19hと長孔19dとの間を通されたコイル引出線43eを、引掛部19hに引掛けつつ、引掛部19hの径方向内側(径方向一方側)の端部において、引掛部19hの径方向内側を向く面に沿うように上側に向けて屈曲させる。このとき、コイル引出線43eは、引掛部19hの径方向内側を向く面に沿って、上側に突出するため、径方向における、コイル引出線43eの位置を容易に決めることができる。
【0112】
基板固定工程は、第1ハウジング部材12に回路基板70を固定しつつ、回路基板70の孔部70aにコイル引出線43eを通す工程である。図8に示すように、作業者等は、治具等に固定された第1ハウジング部材12に対して、上側から回路基板70を移動させ、開口14aを介して、回路基板収容部14の内部に挿入する。このとき、軸方向に見て、回路基板70の第1嵌合孔70bは、第1突出部19mと重なり、第2嵌合孔70cは、第2突出部15hと重なる。また、軸方向に見て、孔部70aは、コイル引出線43eの上側に突出する部分と重なる。つまり、コイル引出線43eは孔部70aに向けて屈曲している。そのため、回路基板70を回路基板収容部14の内部に挿入すると、第1嵌合孔70bに第1突出部19mが挿入され、第2嵌合孔70cに第2突出部15hが挿入され、孔部70aにコイル引出線43eが軸方向に通される。
【0113】
図9に示すように、作業者等が、回路基板70の下側を向く面が、第1基部19kの上側を向く面と接触するまで、回路基板70が回路基板収容部14の内部に挿入すると、基板固定工程は終了する。このとき、図示は省略するが、回路基板70の下側を向く面は、第2基部15gの上側を向く面とも接触する。また、上述のように、第1嵌合孔70bは、第1突出部19mと嵌め合わされている。第2嵌合孔70cは、第2突出部15hと嵌め合わされている。これらにより、回路基板70は第1ハウジング部材12に固定される。なお、上述したように、第1突出部19mおよび第2突出部15hの先端は、熱かしめされていてもよい。本実施形態では、回路基板70を第1ハウジング部材12の内部に挿入する作業のみによって、コイル引出線43eを、孔部70aに通すことができる。
【0114】
コイル引出線接続工程は、コイル引出線43eと回路基板70とをはんだ付けによって接続する工程である。上述のように、孔部70aを軸方向に通されたコイル引出線43eと、回路基板70とは、はんだ付けによって接続される。これにより、ステータ43と回路基板70とが電気的に接続される。
【0115】
本実施形態によれば、隔壁部19は、モータ収容部13と回路基板収容部14とを軸方向に隔てる隔壁本体部19aと、径方向に沿って延び、隔壁本体部19aを軸方向に貫通する貫通孔19bと、軸方向において、隔壁本体部19aと回路基板70との間に配置される突起部19fと、を有し、コイル43cは、ステータ43に巻回されるコイル本体部43dと、コイル本体部43dから上側、すなわち軸方向一方側に引き出され、回路基板70と接続されるコイル引出線43eと、を有し、突起部19fは、軸方向に見て、貫通孔19bと重なって配置される引掛部19hを有し、回路基板70は、回路基板70を貫通し、コイル引出線43eが軸方向に通される孔部70aを有し、コイル引出線43eは、貫通孔19bを軸方向に通され、且つ、軸方向において貫通孔19bと引掛部19hとの間を径方向一方側に向けて通され、引掛部19hの径方向一方側の端部において孔部70aに向けて屈曲する。よって、軸方向に見て、引掛部19hが、貫通孔19bと重なって配置されるため、貫通孔19bを軸方向に通された、コイル引出線43eを、容易に、引掛部19hに引掛けることができる。そのため、コイル引出線43eを、引掛部19hに引掛けて、上側、すなわち、孔部70aに向けて容易に屈曲させることができる。したがって、屈曲工程における組立工数を低減できる。また、屈曲工程において、コイル引出線43eを、引掛部19hに引掛けて、上側に向けて屈曲させるため、径方向における、コイル引出線43eの位置を容易に精度よく決めることができる。そのため、基板固定工程において、回路基板70を第1ハウジング部材12の内部に挿入する作業のみによって、コイル引出線43eを孔部70aに通すことができる。よって、バスバーユニットなどの中間部材を用いることなく、簡易な作業のみによって、コイル引出線43eを回路基板の孔部70aに容易に通すことができる。したがって、電動アクチュエータ1の部品点数を削減できるとともに、基板固定工程の組立工数を低減できる。したがって、電動アクチュエータ1の部品点数および組立工数を低減できる。
【0116】
また、本実施形態では、コイル引出線43eが、径方向に延びる貫通孔19bを通される。そのため、引掛部19hを、コイル本体部43dよりも径方向一方側に配置しても、コイル本体部43dと引掛部19hとの間におけるコイル引出線43eを、上側、且つ、径方向一方側に向けて貫通孔19bに通すことができる。したがって、コイル引出線43eを、コイル本体部43dから上側、且つ、径方向一方側に向けて回路基板収容部14の内部に引き出すことができる。よって、コイル本体部43dと引掛部19hとの間におけるコイル引出線43eの曲率を小さくでき、係る部分のコイル引出線43eにかかる曲げ応力を低減できる。そのため、屈曲工程において、コイル引出線43eを、容易に引掛部19hに引掛けて、上側に向けて屈曲させることができる。したがって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減できる。また、コイル引出線43eにかかる曲げ応力を低減できるため、コイル引出線43eが損傷することを抑制できる。
【0117】
本実施形態によれば、貫通孔19bは、隔壁本体部19aを軸方向に貫通する挿通孔19cと、挿通孔19cから径方向一方側に延び、径方向と直交する方向の幅が挿通孔19cの径方向と直交する方向の幅よりも小さく、隔壁本体部19aを軸方向に貫通する長孔19dと、を有し、軸方向に見て、引掛部19hは、長孔19dと重なって配置され、コイル引出線43eは、少なくとも挿通孔19cもしくは長孔19dのいずれか一方を軸方向に通される。よって、挿通工程において、コイル引出線43eを、径が大きな挿通孔19cを介して、回路基板収容部14の内部に通すことができる。そのため、挿通工程において、ステータ43をモータ収容部13の内部に挿入する作業のみによって、コイル引出線43eを挿通孔19cに通すことができる。したがって、挿通工程における組立工数を低減できる。また屈曲工程において、コイル引出線43eを、コイル本体部43dから上側、且つ、径方向一方側に向けて引き出すことによって、コイル引出線43eを、径方向と直交する方向の幅が小さい長孔19dに通すことができる。よって、回路基板収容部14の内部において、径方向と直交する方向におけるコイル引出線43eの位置をより精度よく決めることができる。さらに、軸方向に見て、引掛部19hが、長孔19dと重なって配置されるため、コイル引出線43eを、容易に引掛部19hに引掛けて、上側、すなわち、孔部70aに向けて屈曲させることができる。よって、屈曲工程の組立工数を低減できる。したがって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減できる。
【0118】
また、本実施形態では、上述のように、突起部19fの引掛部19hにコイル引出線43eを引掛けて、上側に向けて屈曲させるため、コイル引出線43eを引掛部19hの径方向内側を向く面に沿って、上側に突出させることができる。よって、径方向における、コイル引出線43eの位置をより精度よく決めることができる。そのため、基板固定工程において、回路基板70を第1ハウジング部材12の内部に挿入する作業のみによって、コイル引出線43eを、孔部70aに容易に通すことができる。よって、バスバーユニットなどの中間部材を用いることなく、簡易な作業のみによって、コイル引出線43eを回路基板の孔部70aに容易に通すことができる。したがって、電動アクチュエータ1の部品点数および組立工数を低減できる。
【0119】
本実施形態によれば、軸方向に見て、引掛部19hの径方向一方側(径方向内側)の端部と、孔部70aとが重なる。よって、屈曲工程において、引掛部19hに引掛けて上側に屈曲されたコイル引出線43eを、孔部70aに向けて突出させることができる。そのため、基板固定工程において、回路基板70を第1ハウジング部材12の内部に挿入する作業のみによって、コイル引出線43eを、容易に孔部70aに通すことができる。よって、基板固定工程の組立工数を低減できる。したがって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減できる。
【0120】
本実施形態によれば、引掛部19hの下側、すなわち軸方向他方側を向く面には、上側、すなわち軸方向一方側に窪み、且つ、径方向に延びる溝19h1が設けられる。そのため、屈曲工程において、コイル引出線43eは、引掛部19hの溝19h1の内部に保持されるため、コイル引出線43eは引掛部19hから径方向と直交する方向に外れづらいため、コイル引出線43eを、容易に径方向内側に引き出すことができる。そのため、コイル引出線43eを、容易に引掛部19hに引掛けて上側に屈曲させることができる。よって、屈曲工程の組立工数を低減できる。したがって、電動アクチュエータ1の組立工数を低減できる。
【0121】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0122】
本発明が適用される電動アクチュエータは、電力が供給されることで対象となる物体を動かすことができる装置であればよく、減速機構を備えないモータであってもよい。また、電動アクチュエータは、モータ部によって駆動されるポンプ部を備える電動ポンプであってもよい。電動アクチュエータの用途は、特に限定されない。電動アクチュエータは、運転者のシフト操作に基づいて駆動されるシフト・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載されてもよい。また、電動アクチュエータは、車両以外の機器に搭載されてもよい。
【0123】
突起部は、コイル引出線を引掛ることができるならば、どのような構成であってもよい。突起部は、第1ハウジング部材に固定される、第1ハウジング部材とは別個の部材であってもよい。突起部は、第1ハウジングに固定されなくてもよい。
【0124】
貫通孔は、コイル引出線を軸方向に容易に通すことができれば、どのような構成であってもよい。例えば、長孔は、挿通孔から径方向外側に延びる孔であってもよい。また、長孔は、設けられなくてもよい。案内面19c1は設けられてなくてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1…電動アクチュエータ、11…ハウジング、13…モータ収容部、14…回路基板収容部、19…隔壁部、19a…隔壁本体部、19b…貫通孔、19c…挿通孔、19c1…案内面、19d…長孔、19f…突起部、19g…接続部、19h…引掛部、19h1…溝、41…ロータ、43…ステータ、43c…コイル、43d…コイル本体部、43e…コイル引出線、50…減速機構(伝達機構)、61…出力シャフト、70…回路基板、70a…孔部、J1…中心軸線、出力軸線J3…出力軸線
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9