(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115433
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20230814BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25D23/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017628
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 靖之
(72)【発明者】
【氏名】保坂 靖基
(72)【発明者】
【氏名】熊切 義朗
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045LA09
3L045NA15
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L345AA02
3L345AA18
3L345CC01
3L345EE13
3L345EE33
3L345EE37
3L345EE53
3L345FF13
3L345FF43
3L345FF44
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
3L345KK05
(57)【要約】
【課題】空気の侵入を抑えることで庫内および庫内に貯蔵された物への霜の発生・成長を抑制することが可能な冷却貯蔵庫を提供する。
【解決手段】扉16,16が開状態にあることが検出された場合に、循環ファン27を停止するとともに、循環ファン27が停止された後に設定停止時間(第1設定時間)t
1が経過した場合に、循環ファン27の運転を再開させる循環ファン一時停止制御を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体に取り付けられて前記貯蔵室を開閉可能な扉と、
冷気を生じさせる冷却器と、前記冷却器で生じた冷気を前記貯蔵室に送るとともに前記貯蔵室内の空気を前記冷却器に送るように前記貯蔵庫本体内の空気を還流させるための循環ファンと、を含んで構成される冷却装置と、
前記冷却装置を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、
前記扉が開状態にあることが検出された場合に、前記循環ファンを停止するとともに、前記循環ファンが停止された後に第1設定時間が経過した場合に、前記循環ファンの運転を再開させる循環ファン一時停止制御を実行することを特徴とする冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記制御部は 前記循環ファンの運転再開から第2設定時間の経過後において前記扉が開状態にある場合、前記循環ファンを再度停止する請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記循環ファンの停止中において、前記扉が閉状態にあることが検出された場合に、前記循環ファンの運転を再開させる処理を行う請求項1または請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵庫本体内の温度を検出する庫内温度センサを備え、
前記制御部は、前記庫内温度センサによって検出された庫内温度に基づいて前記扉の開閉を判断する扉開閉判断部を有し、前記扉開閉判断部によって前記扉が開状態にあると判断された場合に、前記循環ファン一時停止制御を実行する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項5】
前記扉開閉判断部は、前記庫内温度の単位時間当たりの上昇量が第1設定値以上となる場合に、前記扉が開状態にあると判断するものとされ、
前記庫内温度の前記上昇量は、現時点から設定期間遡った時点までの平均温度と、過去の時点から設定期間遡った時点までの平均温度との差に基づいて算出することを特徴とする請求項4に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項6】
前記制御部は 前記循環ファンの運転再開から第2設定時間の経過後に前記扉が開状態にある場合、前記循環ファンを再度停止するように構成され、
前記扉開閉判断部は、前記循環ファンの運転再開から前記第2設定時間の経過後において、前記第2設定時間内の前記庫内温度の降下量が第2設定値以上である場合に、前記扉が閉状態になったと判断するとともに、前記庫内温度の降下量が第2設定値より小さい場合には、前記扉がいまだ開状態にあると判断する請求項4または請求項5に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項7】
前記扉の開閉を検出可能な扉開閉センサを備え、
前記制御部は、前記扉開閉センサの検出結果に基づいて、前記循環ファンの停止・運転を切り替える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項8】
前記扉開閉センサは、光学式のセンサである請求項7に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却貯蔵庫は、一般的に、冷気を生じさせる冷却器と、その冷却器で生じた冷気を貯蔵室に送るとともに貯蔵室内の空気を冷却器に送るように庫内の空気を還流させるための循環ファンと、を含んで構成される。扉を開けた際には、循環ファンによって水分を含んだ外気を貯蔵庫本体内に取り込み易く、冷却器への着霜が生じる場合がある。例えば、下記特許文献1の冷却貯蔵庫には、加熱ヒータを用いて霜を取り除く機能が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された冷却貯蔵庫は、例えば、庫内の設定温度が低い場合など、すべての霜を取り除くことができず、その霜残りを起点として再び霜が大きくなりやすい。また、この除霜機能では、ヒータから離れた箇所や庫内に貯蔵した食材等に着霜した場合には、その霜を取り除くことが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、外気の侵入を抑えることで庫内および庫内に貯蔵された物への霜の発生・成長を抑制することが可能な冷却貯蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の冷却貯蔵庫は、
貯蔵室を有する貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体に取り付けられて前記貯蔵室を開閉可能な扉と、
冷気を生じさせる冷却器と、前記冷却器で生じた冷気を前記貯蔵室に送るとともに前記貯蔵室内の空気を前記冷却器に送るように前記貯蔵庫本体内の空気を還流させるための循環ファンと、を含んで構成される冷却装置と、
前記冷却装置を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、
前記扉が開状態にあることが検出された場合に、前記循環ファンを停止するとともに、前記循環ファンが停止された後に第1設定時間が経過した場合に、前記循環ファンの運転を再開させる循環ファン一時停止制御を実行することを特徴とする。
【0007】
従来の冷却貯蔵庫においては、扉が開かれると、循環ファンが運転状態にあるため、循環ファンの還流に外気が加わって、貯蔵庫本体内に取り込まれ易い。循環ファンによる還流は、貯蔵室から冷却器に向かって流れるため、特に冷却器に着霜し易い。本願に開示の冷却貯蔵庫では、扉の開状態が検出された場合に、循環ファンを一時的に停止することで、外気の取り込みを抑えることができる。特に、貯蔵室から冷却器に向かう空気の流れをなくすことで、冷却器への着霜や、霜の成長を抑え、冷却器の冷却能力の低下を抑制することができる。例えば、扉が閉状態となるまで循環ファンを停止し続けることが生じ得るため、扉が開状態のまま放置されて循環ファンが停止し続けると、冷却装置において低圧側の圧力が下がりすぎて、冷媒の逆流等の問題が生じる虞がある。本願に開示の冷却貯蔵庫によれば、第1設定時間の経過で、循環ファンが運転を再開するため、そのような問題の発生を防止することができる。
【0008】
なお、第1設定時間は、使用者の使用方法に応じて適切な時間に設定変更可能な構成であることが望ましいが、一般的な使用方法の場合には、着霜の抑制と冷却装置の失陥防止との両者を鑑みれば、20秒以上40秒以内であることが望ましい。また、この構成の冷却貯蔵庫は、冷蔵庫であっても冷凍庫であっても良いが、扉の開状態において外気を取り込み易い冷凍庫に好適である。
【0009】
上記構成において、前記制御部は 前記循環ファンの運転再開から第2設定時間の経過後において前記扉が開状態にある場合、前記循環ファンを再度停止する構成とすることができる。
【0010】
循環ファンが停止し続けると、冷却装置において低圧側の圧力が下がりすぎて、冷媒の逆流等の問題が生じる虞がある。この構成の冷却貯蔵庫によれば、扉が長時間開かれた場合であっても、循環ファンの停止と運転が交互に繰り返されるため、上記のような問題の発生を防止することができる。
【0011】
上記構成において、前記制御部は、前記循環ファンの停止中において、前記扉が閉状態にあることが検出された場合に、前記循環ファンの運転を再開させる処理を行う構成とすることができる。
【0012】
この構成の冷却貯蔵庫によれば、扉が閉じられた場合に、即座に循環ファンを運転させることができ、循環ファンの停止時間を短縮することができる。
【0013】
上記構成において、前記貯蔵庫本体内の温度を検出する庫内温度センサを備え、前記制御部は、前記庫内温度センサによって検出された庫内温度に基づいて前記扉の開閉を判断する扉開閉判断部を有し、前記扉開閉判断部によって前記扉が開状態にあると判断された場合に、前記循環ファン一時停止制御を実行する構成とすることができる。
【0014】
この構成の冷却貯蔵庫によれば、庫内温度が上昇し始めた場合に循環ファン一時停止制御を実行するようになっているため、短時間で扉を開閉するような場合に、循環ファンを短時間だけ停止させてしまうような事態を回避することができる。なお、この構成の冷却貯蔵庫には、例えば、検出した庫内温度自体,設定された時間内における温度差,温度勾配等を用いて、扉の開閉を判断する構成を採用することができる。
【0015】
上記構成において、前記扉開閉判断部は、前記庫内温度の単位時間当たりの上昇量が第1設定値以上となる場合に、前記扉が開状態にあると判断するものとされ、前記庫内温度の前記上昇量は、現時点から設定期間遡った時点までの平均温度と、過去の時点から設定期間遡った時点までの平均温度との差に基づいて算出する構成とすることができる。
【0016】
この構成の冷却貯蔵庫は、上昇量の算出に平均温度を用いることで、庫内温度センサにおける検出誤差等によって、誤った判断がなされることを防止することができる。つまり、この構成の冷却貯蔵庫は、扉の開状態を確実に判断することができる。
【0017】
上記構成において、前記制御部は 前記循環ファンの運転再開から第2設定時間の経過後に前記扉が開状態にある場合、前記循環ファンを再度停止するように構成され、前記扉開閉判断部は、前記循環ファンの運転再開から前記第2設定時間の経過後において、前記第2設定時間内の前記庫内温度の降下量が第2設定値以上である場合に、前記扉が閉状態になったと判断するとともに、前記庫内温度の降下量が第2設定値より小さい場合には、前記扉がいまだ開状態にあると判断する構成とすることができる。
【0018】
この構成の冷却貯蔵によれば、循環ファンの運転再開後においても、庫内温度センサの検出結果に基づいて、確実に扉の開閉を判断することができる。なお、この構成の冷却貯蔵庫において、前述の上昇量と同様に、平均温度を用いて降下量を算出するようにすれば、循環ファンの運転再開後における扉の開閉の判断を、確実に行うことができる。
【0019】
前記扉の開閉を検出可能な扉開閉センサを備え、前記制御部は、前記扉開閉センサの検出結果に基づいて、前記循環ファンの停止・運転を切り換える構成とすることができる。
【0020】
この構成の冷却貯蔵庫によれば、扉の開閉を直接検出することができるため、扉が開かれると即座に循環ファンを停止することができ、着霜を効果的に抑制することができる。
【0021】
上記構成において、前記扉開閉センサは、光学式のセンサとすることができる。
【0022】
この構成に記載の「光学式のセンサ」として、例えば、貯蔵庫本体に対する扉の位置変化を検出する赤外線式のセンサ,静電容量式のセンサや、開状態において点灯する照明が庫内に設けられている構成において、庫内の照度によって扉の開閉を検出する照度センサ等を採用することができる。この構成の冷却貯蔵庫によれば、リードスイッチのように構成部材を扉側に設ける必要がなく、光学式のセンサの貯蔵庫本体側への取り付けのみであるため、部品点数を削減するとともに、取付位置の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、外気の侵入を抑えることで庫内および庫内に貯蔵された物への霜の発生・成長を抑制することが可能な冷却貯蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態1の冷却貯蔵庫(冷凍庫)の正面図
【
図3】庫内ファン一時停止制御プログラムのフローチャート
【
図4】庫内ファン再開処理サブルーチンのフローチャート
【
図5】庫内ファン再停止処理サブルーチンのフローチャート
【
図6】庫内ファン一時停止制御が行なわれる一例のタイミングチャート
【
図8】本発明の実施形態2の冷却貯蔵庫の側面断面図
【
図9】実施形態2の冷却貯蔵庫において庫内ファン一時停止制御が行なわれる一例のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
本発明の実施形態1の冷却貯蔵庫の構成を、
図1および
図2を参照しつつ簡単に説明する。本実施形態における冷却貯蔵庫は、
図1に示すように、2ドア式の縦型の冷凍庫10である。冷凍庫10は、貯蔵室11を有する貯蔵庫本体12と、貯蔵庫本体12の上方に設けられた機械室14と、を備える。貯蔵庫本体12の前面(
図2における左側の面)は開口されており、その開口は、水平方向に延びる仕切枠15によって仕切られている。これにより、貯蔵室11は、上下方向に配列された2つの開口部11A,11Aを有している。
【0026】
貯蔵庫本体12には、上下方向に配列された2つの扉16,16が回動可能に取り付けられており、開口部11Aは扉16によって開閉可能な構成となっている。貯蔵室11内には、水平方向に沿う形で棚板17が設けられており、貯蔵室11内に収容された貯蔵物は、棚板17の上に載置可能となっている。
図2に示すように、機械室14には、冷却装置20が設けられている。冷却装置20(冷凍ユニット)は、ユニット台23に載置されている。冷却装置20は、凝縮器ファン21Aを備える凝縮器21と、圧縮機22と、を備えている。
【0027】
貯蔵庫本体12の上部には、冷却ダクトを兼ねたドレンパン24が、後方(
図2の右側)に向かうにつれて下降傾斜する形で配されている。これにより、ユニット台23とドレンパン24との間に冷却器室25が形成されている。冷却器室25においては、冷却器26が、例えばユニット台23の下面に取り付けられる形で配されている。冷却器26は、冷媒管(図示せず)によって冷却装置20と循環接続されており、冷却装置20が駆動することで冷気を生成する構成となっている。冷媒管内には、例えば、プロパンやイソブタンからなる、空気よりも重い可燃性冷媒が封入されている。ドレンパン24の前側には、モータで駆動される庫内ファン(循環ファン)27が設けられ、ドレンパン24の後側には、冷気の吹出口28が形成されている。
【0028】
冷却運転時には、圧縮機22、庫内ファン27および凝縮器ファン21Aが駆動される。庫内ファン27の駆動により、
図2の矢印に示すように、貯蔵室11内の空気が冷却器室25内に吸引され、その後、冷却器26を通過する間に熱交換されて生成された冷気が、吹出口28から貯蔵室11内に吹き出される。これにより、貯蔵庫本体12内において空気が循環される構成となっている。
【0029】
また、冷却器室25内において庫内ファン27の上方には、庫内サーミスタ29(庫内温度センサ)が配されている。庫内サーミスタ29は、庫内ファン27によって吸引された貯蔵室11内の空気の温度(ひいては貯蔵室11内の温度)を検出可能となっている。
【0030】
機械室14には、
図1に示すように、上述した冷却装置20の他に、電装箱18が収容されている。電装箱18には、当該冷凍庫10の制御を司る制御装置(制御部)40(
図7参照)が収容されている。制御装置40は、CPU,ROM,RAMを有するコンピュータを主体とするものであり、冷却装置20の凝縮器ファン21Aおよび圧縮機22,庫内ファン27,庫内サーミスタ29等が接続されており、ROM内に記憶された種々のプログラムを実行することによって、それらの接続された機器が制御されるようになっている。
【0031】
本冷凍庫10は、機械室14の前面を覆うとともに開閉可能なフロントパネル14Aを備えている。そのフロントパネル14には、表示部41および操作部42が設けられている。表示部41は、液晶パネルによって構成され、操作部42は、押圧操作可能なボタンによって構成されている。表示部41および操作部42は、フロントカバー14Aの裏側に配されている。作業者は、フロントカバー14Aに設けられた透明部材(ガラスなど)を通じて前方から表示部41を視認可能となっている。また、作業者は、フロントカバー14Aを開くことで、操作部42を操作することが可能となっている。作業者は、操作部42を操作することで、本冷凍庫10の運転や各種設定(庫内設定温度の変更など)を行うことができるようになっている。
【0032】
以下に、制御装置40によって行われる庫内ファン一時停止制御について詳しく説明する。この庫内ファン一時停止制御は、例えば、
図3にフローチャートを示す庫内ファン一時停止制御プログラムが実行されることによって行われる。以下に、このフローチャートを参照しつつ、庫内ファン一時停止制御について説明することとする。なお、この庫内ファン一時停止制御プログラムは、比較的短い所定の時間間隔Δtごとに繰り返し実行されるようになっている。また、この庫内ファン一時停止制御において、庫内ファン停止フラグFLが用いられるようになっている。このフラグFLは、通常時において、その値が0とされており、庫内ファン一時停止制御が実行されると、その値が0から1に切り替えられるものである。
【0033】
このプログラムでは、まず、ステップ1(以下「S1」と略す場合がある。他のステップも同様である。)において、庫内サーミスタ29によって検出された庫内温度T1が取得され、続くS2において、現時点から設定時間t0(本実施形態においては、5.0sec)前までの平均庫内温度TAVGが算出される。次いで、S3において、本冷凍庫10において、通常の運転が行なわれているか否か、換言すれば、庫内ファン一時停止制御が実行されていないか否かの判定が、フラグFLに基づいて行われ、通常の運転が行なわれている場合(FL=0である場合)には、S4以下の処理が行なわれる。
【0034】
S4においては、庫内ファン一時停止制御を実行するか否かの判定が、2つの扉16,16のいずれかが開状態にあるか否かの判定によって行われる。本実施形態においては、その判定は、庫内サーミスタ29によって検出された庫内温度T1に基づいて、詳しく言えば、S2において算出した平均庫内温度TAVGに基づいて行われるようになっている。S4においては、t0前に算出された平均庫内温度から現時点で算出された平均庫内温度を引くとともに1分間(単位時間当たり)の温度差に換算した温度差ΔTAVGを算出し、その温度差ΔTAVGが、-5.0K(ケルビン)以下であるか否かの判定が行われる。1分間に換算すると5.0K(第1設定値)以上、庫内温度が上昇するような状況下においては、庫内ファン一時停止制御が実行されるのであり、具体的には、S5において、庫内ファン27が停止させられるのである。なお、扉16,16の開状態か否かを庫内温度に基づいて判定を行う方法は、上記の方法に限定されない。本実施形態のように、設定時間内の平均庫内温度を用いることで、庫内サーミスタ29の検出結果に検出誤差等が含まれた場合であっても、誤った判断がなされることを防止することができる。
【0035】
本実施形態の冷凍庫10においては、
図6のタイミングチャートに示すように、扉16,16のいずれかが開かれたとしても、即座に庫内ファン一時停止制御が実行されず、庫内の温度が上昇し始めたことを検出して、庫内ファン27を停止するようになっている。つまり、短時間で扉16の開け閉めが行なわれた場合には、庫内ファン一時停止制御は実行されないようになっている。そして、S5において庫内ファン27が停止させられた場合、S6において、フラグFLのフラグ値が1とされ、プログラムの1回の実行が終了する。
【0036】
一方、S3において、庫内ファン一時停止制御が実行されていると判定された場合(FL=1である場合)には、S7において、
図4にフローチャートを示す庫内ファン再開処理サブルーチンが実行される。庫内ファン一時停止制御は、
図6に示すように、庫内ファン27が停止した状態が長時間継続しないように、庫内ファン27の停止時間t
Sが設定停止時間(第1設定時間)t
1以上となった場合に、庫内ファン27を一時的に運転させる猶予運転が行なわれるようになっている。庫内ファン一時停止制御プログラムにおいて用いられている庫内ファン停止フラグFLは、庫内ファン27に対して猶予運転が行なわれると、そのフラグ値が1から2に切り替えられるようになっている。つまり、フラグFLは、庫内ファン27の停止中において1とされ、猶予運転中においては2とされる。
【0037】
庫内ファン再開処理サブルーチンにおいては、まず、S11において、庫内ファン27が停止中か猶予運転中かの判断が、フラグFLに基づいて行われる。庫内ファン27が停止中である場合(FL=1である場合)には、S12以下の処理が行なわれる。このS12においては、2つの扉16,16が閉じられているか否かの判定が、扉16の開状態の判定と同様に、庫内ファン一時停止制御プログラムのS2において算出した平均庫内温度TAVGに基づいて行われるようになっている。具体的には、温度差ΔTAVGが+2.5K(ケルビン)以上であるか否かの判定が行われる。1分間に換算すると2.5K(第1設定値)以上、庫内温度が下降するような状況下においては、2つの扉16,16が閉状態にあると判断し、庫内ファン一時停止制御を終了するようになっている。具体的には、S17において、フラグFL等の本制御に用いられる指標がリセットされるとともに、S18において、庫内ファン27が再開される。つまり、庫内ファン27が通常時の運転に戻され、本サブルーチンが終了するとともに、庫内ファン一時停止制御プログラムの1回の実行が終了する。
【0038】
一方、S12において、温度差ΔTAVGが+2.5K(ケルビン)より小さく、扉16,16のいずれかが開状態であると判断された場合には、S13において、庫内ファン27が停止している時間(庫内ファン停止時間tS)が算出され、S14において、その庫内ファン停止時間tSが、設定停止時間t1(例えば、30sec)以上となったか否かが判定される。ちなみに、本実施形態の冷凍庫10においては、設定停止時間t1は、使用者の使用方法に応じて変更できるように、操作部42を操作して、例えば99sec以下で設定変更できるようになっている。
【0039】
S14において、庫内ファン停止時間tSが設定停止時間t1を経過していない場合には、S15以下の処理がスキップされ、本サブルーチンが終了するとともに、庫内ファン一時停止制御プログラムの1回の実行が終了する。S14において、庫内ファン停止時間tSが設定停止時間t1を経過した場合には、庫内ファン27に対して前述した猶予運転を行うようになっている。具体的には、S15以下において、庫内ファン停止フラグFLのフラグ値を2に変更するとともに、庫内ファン停止時間tSをリセットし、S16において、庫内ファン27の運転が再開される。そして、この処理で、本サブルーチンが終了するとともに、庫内ファン一時停止制御プログラムの1回の実行が終了する。
【0040】
また、庫内ファン27が猶予運転中においては、庫内ファン再開処理サブルーチンのS11の判定から、S18の庫内ファン再停止処理が行なわれる。この処理は、
図5にフローチャートを示す庫内ファン再停止処理サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンでは、まず、S21において、庫内ファン27に対して猶予運転が行なわれている時間(猶予運転時間t
D)が算出され、S22において、その猶予運転時間t
Dが、設定猶予運転時間(第2設定時間)t
2(例えば、5.0sec)以上となったか否かが判定される。
【0041】
S22において、猶予運転時間tDが設定猶予運転時間t2を経過していない場合には、S23以下の処理がスキップされ、本サブルーチンが終了するとともに、庫内ファン一時停止制御プログラムの1回の実行が終了する。S22において、猶予運転時間tDが設定猶予運転時間t2を経過した場合には、S23において、扉16,16が閉状態とされたか否かの判定が、庫内ファン一時停止制御プログラムのS2において算出した平均庫内温度TAVGに基づいて行われるようになっている。具体的には、温度差ΔTAVGが+0.5K(ケルビン)以上であるか否かの判定が行われる。1分間に換算すると0.5K以上、庫内温度が下降するような状況下においては、2つの扉16,16が閉状態にあると判断し、庫内ファン一時停止制御を終了するようになっている。ちなみに、この判定に用いられる閾値は、庫内ファン27が停止中あるいは猶予運転中に扉16が閉状態とされることで、庫内温度が下降し始めるため、そのことを判断可能な大きさに設定されている。庫内ファン一時停止制御を終了する処理を具体的に説明すれば、S26において、フラグFL等の本制御に用いられる指標がリセットされるとともに、S27において、庫内ファン27の運転が再開される。つまり、庫内ファン27が通常時の運転に戻され、本サブルーチンが終了するとともに、庫内ファン一時停止制御プログラムの1回の実行が終了する。
【0042】
一方、S23において、温度差ΔTAVGが+0.5K(ケルビン)より小さく、扉16,16のいずれかが開状態であると判断された場合には、S24,S25において、庫内ファン27を再度停止させる処理が行なわれる。つまり、扉16,16が開状態のままである場合には、庫内ファン27が第1設定時間t1の間、停止させられることと、庫内ファン27が第2設定時間t2の間、猶予運転させられることとが、繰り返し行われることになる。
【0043】
上述した庫内ファン一時停止制御を実行する制御装置40は、
図7にブロック図で示すような機能構成のものとされ、種々の機能部を有するとなっている。詳しく言えば、制御装置40は、庫内サーミスタ29によって検出された庫内温度に基づいて扉16,16の開閉を判断する扉開閉判断部50と、扉開閉判断部50による扉16,16の開閉状態に基づいて庫内ファン一時停止制御を実行する庫内ファン一時停止制御実行部52と、を有している。なお、本実施形態においては、扉開閉判断部52は、庫内ファン一時停止制御プログラムにおけるS1,2,4、庫内ファン再開処理サブルーチンにおけるS12、庫内ファン再停止処理サブルーチンのS23を実行する部分を含んで構成され、庫内ファン一時停止制御実行部54は、庫内ファン一時停止制御プログラムを実行する部分を含んで構成されていると考えることができる。
【0044】
以上のように構成された本実施形態の冷凍庫10は、貯蔵室11を有する貯蔵庫本体12と、貯蔵庫本体12に取り付けられて貯蔵室11を開閉可能な扉16,16と、冷気を生じさせる冷却器26と、冷却器26で生じた冷気を貯蔵室11に送るとともに貯蔵室11内の空気を冷却器26に送るように貯蔵庫本体12内の空気を還流させるための庫内ファン(循環ファン)27と、を含んで構成される冷却装置20と、冷却装置20を制御する制御装置(制御部)40と、を備え、制御装置40は、扉16,16が開状態にあることが検出された場合に、庫内ファン27を停止するとともに、庫内ファン27が停止された後に設定停止時間(第1設定時間)t1が経過した場合に、庫内ファン27の運転を再開させる庫内ファン一時停止制御(循環ファン一時停止制御)を実行することを特徴としている。
【0045】
従来の冷却貯蔵庫においては、扉が開かれると、庫内ファンが運転状態にあるため、庫内ファンの還流に外気が加わって、貯蔵庫本体内に取り込まれ易い。なお、庫内ファンによる還流は、貯蔵室から冷却器に向かって流れるため、特に冷却器に着霜し易い。本実施形態の冷凍庫10では、扉16,16の開状態が検出された場合に、庫内ファン27を一時的に停止することで、外気の取り込みを抑えることができる。特に、貯蔵室11から冷却器26に向かう空気の流れをなくすことで、冷却器26への着霜や、霜の成長を抑え、冷却器26の冷却能力の低下を抑制することができる。例えば、扉16,16が閉状態となるまで庫内ファン27を停止し続けることが生じ得るため、扉16,16が開状態のまま放置されて庫内ファン27が停止し続けると、冷却装置20において低圧側の圧力が下がりすぎて、冷媒の逆流等の問題が生じる虞がある。本実施形態の冷凍庫10によれば、第1設定時間t1の経過で、庫内ファン27が運転を再開するため、そのような問題の発生を防止することができる。
【0046】
また、本実施形態の冷凍庫10は、制御装置40が 庫内ファン27の運転再開から設定猶予運転時間(第2設定時間)t2の経過後において扉16,16が開状態にある場合、庫内ファンを再度停止する構成とされている。ここれにより、扉16,16が長時間開かれた場合であっても、庫内ファン27の停止と運転が交互に繰り返されるため、上記のような問題の発生を防止することができる。
【0047】
<実施形態2>
本発明の実施形態2の冷却貯蔵庫は、実施形態の冷凍庫10と同様に、ドア式の縦型の冷凍庫100である。本実施形態の冷凍庫100は、実施形態1の冷凍庫10とほぼ同様の構成であるため、同じ構成要素については、同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。本実施形態の冷凍庫100は、実施形態1の冷凍庫10とは異なり、扉16,16の開閉状態を検出可能な扉開閉センサとして、光学式のドアセンサ102を備えている。ドアセンサ102は、2つの扉16,16の各々に対応して、貯蔵庫本体12に対して設けられている。詳しく言えば、貯蔵庫本体12の前面で各扉16,16の各々に対向する位置に、2つのドアセンサ102,102が設けられているのである。これら光学式のドアセンサ102は、例えば、赤外線式や静電容量式のものであり、貯蔵庫本体12に取り付けるのみで、扉16,16の開閉を検出することができる。つまり、この光学式のドアセンサ102を用いることで、リードスイッチのように、扉16側に部材を取り付ける必要がなく、部材点数を削減することができる。
【0048】
本実施形態の冷凍庫100が備える制御装置は、実施形態1の冷凍庫10と同様に、扉16,16のいずれかが開状態にあることが検出された場合に、庫内ファン27を停止するとともに、庫内ファン27が停止された後に第1設定時間が経過した場合に、庫内ファン27の運転を再開させる庫内ファン一時停止制御を実行するように構成されている。ただし、本実施形態において、冷凍庫100の制御装置は、庫内温度ではなく、上記のドアセンサ102,102の検出結果に基づいて、庫内ファン一時停止制御を実行するようになっている。
【0049】
図9には、本実施形態の冷凍庫100において、庫内ファン一時停止制御が行なわれる一例のタイミングチャートを示している。この
図9に示すように、2つの扉16,16のいずれかが開かれ、ドアセンサ102が扉16の開状態を検出すると、庫内ファン27が停止させられる。そして、庫内ファン27が停止させられた後、使用者によって設定されている設定停止時間(第1設定時間)t
1が経過すると、庫内ファン27の運転が再開させられる。
【0050】
また、設定停止時間の経過によって、再開された庫内ファン27の運転は、実施形態1の冷凍庫10と同様に、猶予運転であり、庫内ファン27の再開から設定猶予運転時間(第2設定時間)t2が経過した時点において、扉16,16のいずれかが開状態にある場合には、庫内ファン27は、再度停止させられるようになっている。なお、2つの扉16,16の両者が閉状態となれば、庫内ファン27は通常の連続運転に戻される。つまり、庫内ファン一時停止制御は、2つの扉16,16の両者が閉状態となるまで、庫内ファン27は、設定停止時間t1の停止と、設定猶予運転時間t2の猶予運転とが、繰り返し行われる。
【0051】
本実施形態2の冷凍庫100は、扉の開閉を直接検出することができるため、第1実施形態の冷凍庫10に比較して扉が開かれた後、早い段階で庫内ファン27を停止することができ、着霜を効果的に抑制することができる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)上記2つの実施形態の冷凍庫10,100は、庫内ファン27の停止中において、扉16が閉状態にあることが検出された場合に、庫内ファン27の運転を再開させる処理を行うように構成されていたが、その条件は必須ではなく、第1設定時間の経過後にのみ、庫内ファン27の運転が再開されるような構成であってもよい。
【0054】
(2)上記の第1実施形態の冷凍庫10は、定めされた時間内の庫内温度の平均値に基づいて、扉16の開閉を判断するように構成されていたが、それに限定されない。例えば、検出された庫内温度自体に基づいて扉16の開閉を判断するような構成であってもよく、庫内温度の変化勾配を算出し、その庫内温度の変化勾配に基づいて扉16の開閉を判断するような構成であってもよい。
【0055】
(3)上記実施形態1の冷凍庫10において行われる庫内ファン一時停止制御は、
図3から
図5にフローチャートを示したプログラムにより実行されるものとされていたが、このプログラムは、一例であり、種々の態様のものを採用可能である。
【0056】
(4)上記2つの実施形態の冷却貯蔵庫は、冷凍庫に適用されていたが、冷蔵庫に適用することもできる。ただし、上記実施形態において実行される循環ファン一時停止制御は、貯蔵室11内の温度が低いほど、扉の開状態において外気を取り込み易いため、冷凍庫に好適である。
【符号の説明】
【0057】
10…冷凍庫〔冷却貯蔵庫〕、11…貯蔵室、11A…開口、12…貯蔵庫本体、16…扉、20…冷却装置、26…冷却器、27…庫内ファン〔循環ファン〕、29…庫内サーミスタ〔庫内温度センサ〕、40…制御装置〔制御部〕、50…扉開閉判断部、52…庫内ファン一時停止制御実行部、100…冷凍庫〔冷却貯蔵庫〕、102…ドアスイッチ〔扉開閉センサ〕