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特開2023-115453逆流防止装置、スクリュ、および射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115453
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】逆流防止装置、スクリュ、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/52 20060101AFI20230814BHJP
   B29C 45/47 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B29C45/52
B29C45/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017669
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】澤田 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】赤木 誉志
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 靖貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ02
4F206AR12
4F206AR13
4F206AR18
4F206JA07
4F206JD03
4F206JQ02
4F206JQ14
4F206JQ27
(57)【要約】
【課題】射出量のばらつきを抑制する非共回りの逆流防止装置を提供する。
【解決手段】押し金(27)と、これから突き出している軸部(28)と、軸部(28)に貫通されている逆流防止リング(30)と、軸部(28)の先端に設けられているヘッド部(32)と、を備え、逆流防止リング(30)が計量時にヘッド部(32)に対して相対的に回転する逆流防止装置(25)を対象とする。ヘッド部(32)は、逆流防止リング(30)の端面(34)と接触する複数面の接触面(42)を備える。これらの接触面(42)の近傍に接触面(42)と端面(34)とが密着状態になるリンギングを解除するためのリンギング解除構造(43)を形成する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置のスクリュの先端部に設けられるようになっている押し金と、
前記押し金から突き出すように設けられている軸部と、
前記軸部によって貫通されている逆流防止リングと、
前記軸部の先端に設けられているヘッド部と、を備え、
前記逆流防止リングは計量時に前記ヘッド部に対して相対的に回転するようになっており、
前記ヘッド部は、前記逆流防止リングの端面と接触する複数面の接触面を備え、1面以上の前記接触面の近傍には前記接触面と前記端面とが密着状態になるリンギングを解除するためのリンギング解除構造が形成されている、逆流防止装置。
【請求項2】
前記複数面の接触面は平滑面になっている、請求項1に記載の逆流防止装置。
【請求項3】
前記ヘッド部と前記軸部はスクリュヘッドとして一体的に形成されている、請求項1または2に記載の逆流防止装置。
【請求項4】
前記ヘッド部には、その外周面に形成されている複数本の溝によって複数枚の羽根部が形成されており、
前記接触面は前記羽根部の前記押し金側の端部に形成されている、請求項1~3のいずれかの項に記載の逆流防止装置。
【請求項5】
前記複数枚の羽根部の前記押し金側の端部には、前記ヘッド部を形成している金属材料より硬質な金属材料からなる補強チップが設けられ、
前記接触面は前記補強チップに形成されている、請求項4に記載の逆流防止装置。
【請求項6】
前記リンギング解除構造は前記複数面の接触面の全ての近傍に形成されている、請求項1~5のいずれかの項に記載の逆流防止装置。
【請求項7】
前記リンギング解除構造は前記接触面に連続して前記接触面と異なる角度に形成されている傾斜面からなり、前記接触面と前記端面が密着するとき前記傾斜面と前記端面との間にくさび状の隙間が形成されるようになっている、請求項1~6のいずれかの項に記載の逆流防止装置。
【請求項8】
前記リンギング解除構造は前記接触面に隣接して形成されている段部からなり、前記接触面と前記端面が密着するとき前記段部と前記端面との間に隙間が形成されるようになっている、請求項1~6のいずれかの項に記載の逆流防止装置。
【請求項9】
前記リンギング解除構造は前記接触面を横切るように前記接触面内に形成されている溝からなる、請求項1~6のいずれかの項に記載の逆流防止装置。
【請求項10】
射出装置の加熱シリンダに入れられるスクリュであって、
前記スクリュは、スクリュ本体と、
逆流防止装置と、から構成され、
前記逆流防止装置は、前記スクリュ本体の先端部に設けられている押し金と、
前記押し金から突き出すように設けられている軸部と、
前記軸部によって貫通されている逆流防止リングと、
前記軸部の先端に設けられているヘッド部と、を備え、
前記逆流防止リングは計量時に前記ヘッド部に対して相対的に回転するようになっており、
前記ヘッド部は、前記逆流防止リングの端面と接触する複数面の接触面を備え、1面以上の前記接触面の近傍には前記接触面と前記端面とが密着状態になるリンギングを解除するためのリンギング解除構造が形成されている、スクリュ。
【請求項11】
前記複数面の接触面は平滑面になっている、請求項10に記載のスクリュ。
【請求項12】
前記ヘッド部と前記軸部はスクリュヘッドとして一体的に形成され、
前記ヘッド部には、その外周面に形成されている複数本の溝によって複数枚の羽根部が形成されており、
前記接触面は前記羽根部の前記押し金側の端部に形成されている、請求項10または11に記載のスクリュ。
【請求項13】
前記複数枚の羽根部の前記押し金側の端部には、前記ヘッド部を形成している金属材料より硬質な金属材料からなる補強チップが設けられ、
前記接触面は前記補強チップに形成されている、請求項12に記載のスクリュ。
【請求項14】
前記リンギング解除構造は前記複数面の接触面の全ての近傍に形成されている、請求項10~13のいずれかの項に記載のスクリュ。
【請求項15】
前記リンギング解除構造は前記接触面に連続して前記接触面と異なる角度に形成されている傾斜面からなり、前記接触面と前記端面が密着するとき前記傾斜面と前記端面との間にくさび状の隙間が形成されるようになっている、請求項10~14のいずれかの項に記載のスクリュ。
【請求項16】
前記リンギング解除構造は前記接触面に隣接して形成されている段部からなり、前記接触面と前記端面が密着するとき前記段部と前記端面との間に隙間が形成されるようになっている、請求項10~14のいずれかの項に記載のスクリュ。
【請求項17】
前記リンギング解除構造は前記接触面を横切るように前記接触面内に形成されている溝からなる、請求項10~14のいずれかの項に記載のスクリュ。
【請求項18】
射出材料を射出する射出装置と、
金型を型締めする型締装置と、を備えた射出成形機であって、
前記射出装置は加熱シリンダと、
前記加熱シリンダ内に入れられているスクリュと、を備え、
前記スクリュは、スクリュ本体と、
逆流防止装置と、から構成され、
前記逆流防止装置は、前記スクリュ本体の先端部に設けられている押し金と、
前記押し金から突き出すように設けられている軸部と、
前記軸部によって貫通されている逆流防止リングと、
前記軸部の先端に設けられているヘッド部と、を備え、
前記逆流防止リングは計量時に前記ヘッド部に対して相対的に回転するようになっており、
前記ヘッド部は、前記逆流防止リングの端面と接触する複数面の接触面を備え、1面以上の前記接触面の近傍には前記接触面と前記端面とが密着状態になるリンギングを解除するためのリンギング解除構造が形成されている、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機のスクリュに設けられている逆流防止装置、および逆流防止装置が設けられているスクリュ、並びに射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機のスクリュには、特許文献1に記載されているようにその先端に逆流防止装置が設けられている。逆流防止装置は、スクリュの先端部に設けられる押し金と、同様にスクリュの先端部に設けられるスクリュヘッドと、逆流防止リングとから構成されている。スクリュヘッドには先端のヘッド部と小径の軸部とから構成され、スクリュの端部には軸部が接続している。逆流防止リングはこの軸部に貫通されており、ヘッド部と押し金との間でスライド自在になっている。
【0003】
逆流防止リングと軸部の間には射出材料が流れる隙間が形成されており、ヘッド部にもその外周面に射出材料が流れる溝が形成されている。したがって、スクリュを回転して溶融した射出材料を前方に送り出すとき、逆流防止リングは射出材料によって前方に押されてその端面の一部がヘッド部の後端面つまり接触面に接触する。射出材料は逆流防止リングと軸部の隙間とヘッド部の溝を通って前方に送られる。すなわち計量される。一方、スクリュを前方に駆動すると、逆流防止リングの端面に射出材料の圧力が作用する。逆流防止リングの反対の端面が押し金に押し当てられ、射出材料の流路が閉鎖される。これによって射出材料の逆流が防止され、射出材料を金型に射出することができる。
【0004】
逆流防止装置には、スクリュを回転して計量するとき逆流防止リングがスクリュと共に一体的に回転するいわゆる共回りのタイプと、スクリュに対して一体的に回転しないいわゆる非共回りのタイプとがある。非共回りのタイプでは、計量時に逆流防止リングがその端面がスクリュヘッドのヘッド部の接触面に接しながら摺動して回転することになる。そこで逆流防止リングの端面が摺動による摩耗を防止するために、ヘッド部の接触面は平滑面に加工されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-62879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非共回りの逆流防止装置は、スクリュヘッドのヘッド部の接触面が平滑面すなわち滑らかな面に形成されているので逆流防止リングの摩耗を抑制することができる。しかしながら射出量が安定しない場合がある。すなわち、成形サイクル毎に射出・保圧完了時のスクリュ位置にばらつきが出ることがある。
【0007】
本開示において、射出量のばらつきを抑制することができる非共回りの逆流防止装置、そのような逆流防止装置を備えたスクリュ、および射出成形機を提供する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、押し金と、押し金から突き出している軸部と、軸部によって貫通されている逆流防止リングと、軸部の先端に設けられているヘッド部と、を備え、逆流防止リングが計量時にヘッド部に対して相対的に回転する逆流防止装置を対象とする。ヘッド部は、逆流防止リングの端面と接触する複数面の接触面を備える。そしてこのような複数面の接触面の1面以上の接触面について、その近傍に接触面と端面とが密着状態になるリンギングを解除するためのリンギング解除構造を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、射出量のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係る逆流防止装置と、射出装置の一部を示す正面断面図である。
図3A図2における符号Xで示された本実施の形態に係る逆流防止装置の一部を拡大して示す正面断面図である。
図3B図2における符号Xで示された本実施の形態に係る逆流防止装置の一部を拡大して示す正面断面図である。
図3C図2におけるY-Y断面で示す本実施の形態に係る逆流防止装置の側面断面図である。
図4】第2の実施の形態に係る逆流防止装置の一部を拡大して示す正面断面図である。
図5】第3の実施の形態に係る逆流防止装置の一部を拡大して示す正面断面図である。
図6】第4の実施の形態に係る逆流防止装置の一部を拡大して示す側面断面図である。
図7】第5の実施の形態に係る逆流防止装置の一部を拡大して示す側面断面図である。
図8】実験方法を説明するための図で、スクリュヘッドと逆流防止リングとを示す正面断面図である。
図9】実験結果を示すスクリュヘッドと逆流防止リングの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、トグル式の型締装置2と、射出装置3と、を備えている。
【0014】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤5と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤7と、型締ハウジング6と、を備えている。固定盤5と型締ハウジング6は複数本のタイバー9、9、…により連結されており、可動盤7は固定盤5と型締ハウジング6の間でスライド自在になっている。型締ハウジング6と可動盤7の間には型締機構11が設けられている。本実施の形態において型締機構11はトグル機構11からなる。固定盤5と可動盤7には、それぞれ固定側金型13、可動側金型14が設けられている。従って、トグル機構11を駆動すると金型13、14が型開閉される。
【0015】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ16と、加熱シリンダ16内に設けられているスクリュ17と、スクリュ駆動装置18と、を備えている。加熱シリンダ16はスクリュ駆動装置18に支持されており、スクリュ17はスクリュ駆動装置18によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ16にはホッパ20と、射出ノズル22が設けられている。ホッパ20から射出材料を供給し、加熱シリンダ16を加熱してスクリュ駆動装置18によりスクリュ17を回転すると、射出材料が溶融し、計量される。スクリュ駆動装置18によりスクリュ17を軸方向に駆動すると射出材料を金型13、14に射出することができる。
【0016】
<本実施の形態に係る逆流防止装置>
スクリュ17の先端部には、図2に示されているように、本実施の形態に係る逆流防止装置25が設けられている。逆流防止装置25は、スクリュ17の先端に設けられている押し金27と、この押し金27から前方に突き出ている小径の軸部28と、軸部28に挿入されている逆流防止リング30と、軸部28の先端に設けられているヘッド部32と、から構成されている。
【0017】
逆流防止リング30は、その外周面が加熱シリンダ16のボアとわずかな隙間で摺動するようになっており、この部分において射出材料が漏れることはない。逆流防止リング30の内径は軸部28の外径より十分に大きくなっており、軸部28と逆流防止リング30の隙間が流路になって射出材料が流れるようになっている。逆流防止リング30には、ヘッド部32側に端面34が、そして押し金27側に閉鎖端面35が形成されている。逆流防止リング30が押し金27に着座すると、閉鎖端面35が押し金27に接触して射出材料の流路が閉鎖されることになる。すなわち射出材料の逆流が防止されることになる。
【0018】
ヘッド部32は、その外周面に複数本の溝37、37、…が形成されており、これによって複数枚の羽根部38、38、…が形成されている。ヘッド部32を側方から見た図が図3Cに示されているが、本実施の形態において溝37、37、…の本数は4本、羽根部38、38、…の枚数は4枚になっている。羽根部38、38、…には、図2に示されているように押し金27側あるいは逆流防止リング30側に補強チップ40、40、…が設けられている。補強チップ40、40、…はヘッド部32を形成している金属材料より硬質な金属材料からなり摩耗しにくくなっている。
【0019】
この補強チップ40、40、…には、図3Aに示されているように、それぞれ2個の面が形成されている。すなわち、逆流防止リング30の端面34と接触するようになっている接触面42と、この接触面42に接して接触面42と異なる角度θに形成されている傾斜面43である。スクリュ17(図2参照)を回転して射出材料を計量するとき、逆流防止リング30は図3Bに示されているようにその端面34が接触面42に接触し、接触面42に対して摺動しながら相対的に回転することになる。すなわち、本実施の形態に係る逆流防止装置25は非共回りのタイプになっている。したがって、接触面42は逆流防止リング30の端面34が摩耗しないように平滑面、つまり滑らかな面になっている。
【0020】
ところでこのような非共回りのタイプの逆流防止装置25では、射出時において射出量が安定しない現象が発生することがある。つまり適切に逆流防止装置25が機能せず、射出材料の逆流が発生することがある。本発明者等はこの現象の原因が、ヘッド部32の接触面42と逆流防止リング30の端面34とが密着する、いわゆるリンギングにあることを見いだした。つまり接触面42が平滑面に形成されていることにより、端面34に強く密着してしまい、射出時において逆流防止リング30がヘッド部32から離間するタイミングに遅れが生じることがあることが分かった。
【0021】
そこで、本発明者等はヘッド部32において接触面42に隣接して傾斜面43を形成した。図3Bには逆流防止リング30の端面34がヘッド部32の接触面42に強く密着した状態が示されている。このとき、傾斜面43と端面34の間にはくさび状の隙間が形成される。この隙間に射出材料が入り込むことによって、隙間において射出材料の圧力が上昇しリンギングが容易に解除されることになる。つまり本実施の形態において、傾斜面43はリンギング解除構造になっている。これによって射出時において逆流防止リング30がヘッド部32から離間するタイミングに遅れは生じない。つまり射出量は安定する。本実施の形態においてリンギング解除構造つまり傾斜面43、43、…は、図3Cに示されているように4面つまり全ての接触面42、42、…に対して隣接して形成されている。
【0022】
ところで本実施の形態において、図2に示されているように、ヘッド部32と軸部28は一体的に形成された1個の部品であるスクリュヘッド45から形成されている。スクリュヘッド45には軸部28に連続して雄ネジ46が形成されている。スクリュ17には雌ネジ48が明けられており、この雌ネジ48に雄ネジ46が螺合することにより、スクリュヘッド45がスクリュ17に取り付けられている。なお、ヘッド部32と軸部28は1個の部品から形成する必要はなく、例えば軸部28と押し金27とを一体的に形成し、これらを1個の部品とすることもできる。この場合にはヘッド部32はネジ等の固定手段により軸部28に固定することになる。
【0023】
<第2の実施の形態に係る逆流防止装置>
本実施の形態に係る逆流防止装置25は色々な変形が可能である。図4には、変形した第2の実施の形態に係る逆流防止装置25Aが示されている。第2の実施の形態においては逆流防止リング30Aの端面34Aはテーパ面に形成されている。そしてヘッド部32の補強チップ40に形成されている接触面42Aも同じ角度のテーパ面になっている。この実施の形態においてはリンギング解除構造である傾斜面43Aは、接触面42Aより角度θ‘だけ異なるテーパ面になっている。この第2の実施の形態に係る逆流防止装置25Aにおいても、逆流防止リング30Aの端面34Aとヘッド部32の接触面42Aが接触しているとき端面34Aと傾斜面43Aの間にくさび状の隙間が形成される。したがって端面34Aと接触面42Aのリンギングは容易に解除される。
【0024】
<第3の実施の形態に係る逆流防止装置>
図5には、第3の実施の形態に係る逆流防止装置25Bが示されている。第3の実施の形態に係る逆流防止装置25Bは、接触面42に隣接して形成されているリンギング解除構造が第1、2の実施の形態と相違している。この実施の形態においてリンギング解除構造は段部50になっている。段部50は、接触面42を浅く削った部分になっている。第3の実施の形態に係る逆流防止装置25Bにおいて、逆流防止リング30の端面34とヘッド部32の接触面42とが接触するとき、端面34と段部50との間に隙間が形成される。この隙間に射出材料が入り込んで圧力が上昇し、端面34と接触面42のリンギングが容易に解除される。
【0025】
<第4の実施の形態に係る逆流防止装置>
図6には、第4の実施の形態に係る逆流防止装置25Cが示されている。この実施の形態においては、リンギング解除構造は接触面42、42、…内において接触面42、42、…を横切るように形成されている浅い溝51、51、…からなる。第4の実施の形態に係る逆流防止装置25Cにおいて、逆流防止リング30の端面34とヘッド部32の接触面42とが接触するとき、端面34と溝51との間に隙間が形成される。この隙間に射出材料が入り込んで圧力が上昇し、端面34と接触面42のリンギングが容易に解除される。
【0026】
<第5の実施の形態に係る逆流防止装置>
図7には、第5の実施の形態に係る逆流防止装置25Dが示されている。この実施の形態においてリンギング解除構造は一部の接触面42、42に対してのみ形成されている。すなわち、接触面42、42、…は全部で4面あるが、そのうちの2面の接触面42、42にのみリンギング解除構造が形成されている。リンギング解除構造は接触面42、42と異なる角度で形成された傾斜面43D、43D、…からなる。傾斜面43D、43D、…が形成されている位置は、第1の実施の形態と相違している。つまり接触面42、42の両側部に傾斜面43D、43Dが形成されている。この第5の実施の形態も、これら傾斜面43D、43D、…の作用によりリンギングが容易に解除されるようになっている。
【0027】
<他の変形例>
本実施の形態あるいは第2~5の実施の形態は他の変形も可能である。例えばヘッド部32には補強チップ40が設けられているように説明したが、補強チップ40は必須ではない。補強チップ40が設けられていない場合には、接触面42、傾斜面43等はヘッド部32に直接形成するようにすればよい。またヘッド部32の羽根部38、38の枚数は4枚であるように説明したが、2枚や3枚、あるいは5枚以上であってもよい。
【実施例0028】
本実施の形態に係る逆流防止装置25(図3A参照)について、逆流防止リング30の端面34とヘッド部32の接触面42とのリンギングが発生しにくいことを確認するため、実験を行った。リンギングが適切に解除されるようになっていれば、射出時に逆流防止リング30がヘッド部32から速やかに離間して押し金27に着座して射出材料の逆流が防止され、射出量が安定するからである。実験の内容を説明する。
【0029】
実験内容:
図8に示されているように、2本のスクリュヘッド45z、45(図2図3A参照)と、2個の逆流防止リング30、30を用意した。左のスクリュヘッド45zはヘッド部32において傾斜面43は形成しないようにした。つまり接触面42だけが形成されており、本実施の形態に係る逆流防止装置25とは相違している。以下、比較例Zと呼ぶ。一方、右のスクリュヘッド45は、ヘッド部32において接触面42に隣接して傾斜面43を形成するようにした。つまり、本実施の形態に係る逆流防止装置25のスクリュヘッド45になっている。以下、実施例Aと呼ぶ。
【0030】
これら比較例Zと実施例Aのそれぞれのスクリュヘッド45‘、45を床面に対して直立させた。逆流防止リング30、30の端面34、34にそれぞれ光明丹を塗布し、逆流防止リング30、30を持ち上げてヘッド部32、32に押しつけた。ゆっくりと逆流防止リング30、30から手を離したところ、図9に示されているように左のスクリュヘッド45’においては逆流防止リング30が落下せず、右のスクリュヘッド45においては逆流防止リング30が落下した。
【0031】
この実験により接触面42に隣接してリンギング解除構造つまり傾斜面43が形成されている本実施の形態に係る逆流防止装置25では、逆流防止リング30が容易にヘッド部32から離間されることが確認できた。つまりリンギングが発生しにくいことが確認できた。
【実施例0032】
実施例Aの逆流防止装置25を取り付けたスクリュ17(図2参照)と、比較例Zの逆流防止装置25を取り付けたスクリュ17とによって、実際に射出成形を実施して、射出量のばらつきが発生するか否かを確認する実験を行った。
【0033】
実験内容:
実施例Aと比較例Zの逆流防止装置25、25を取り付けたそれぞれのスクリュ17、17を使用して、30回ずつ金型13、14(図1参照)に射出材料を射出する射出工程を実施した。それぞれの射出工程の完了時におけるスクリュ17のスクリュ位置つまりクッション量を検出し、そのばらつきを調べた。
【0034】
実験結果:
実施例Aの逆流防止装置25が設けられているスクリュ17においては、クッション量の最大値は3.56mm、最小値は3.48mm、そして標準偏差の3倍である3σの大きさは0.069mmであった。
一方、比較例Zの逆流防止装置25が設けられているスクリュ17においては、クッション量の最大値は3.39mm、最小値は1.56mm、そして3σの大きさは1.595mmであった。
【0035】
クッション量のばらつきは、逆流防止装置25における射出材料の逆流の発生の頻度を示している。つまりクッション量が一定であれば逆流が発生しておらず、クッション量がばらついていれば、逆流が生じていることが分かる。実験の結果から比較例Zに比して実施例Aではクッション量のばらつきが小さくなっていることが分かった。つまり、ヘッド部32においてリンギング解除構造である傾斜面43を備えている、本実施の形態に係る逆流防止装置25は、射出材料の逆流が発生しにくい、ということが確認できた。これにより、射出量が安定することが保証される。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 5 固定盤
7 可動盤 6 型締ハウジング
9 タイバー 11 型締機構
13 固定側金型 14 可動側金型
16 加熱シリンダ 17 スクリュ
18 スクリュ駆動装置 20 ホッパ
22 射出ノズル 25 逆流防止装置
27 押し金 28 軸部
30 逆流防止リング 32 ヘッド部
34 端面 35 閉鎖端面
37 溝 38 羽根部
40 補強チップ 42 接触面
43 傾斜面 45 スクリュヘッド
46 雄ネジ 48 雌ネジ
50 段部 51 溝
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9