(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115464
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】海洋生物の付着を抑制する付着抑制部材
(51)【国際特許分類】
E02D 31/00 20060101AFI20230814BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
E02D31/00 Z
E02D27/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017688
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 真依子
(72)【発明者】
【氏名】高山 百合子
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA62
(57)【要約】
【課題】
モノパイルの打設後からトランジションピースの設置までの期間にモノパイルの上端部に海洋生物が付着することを抑制する付着抑制部材を提案する。
【解決手段】
海底面に打設される杭の上端部に海洋生物が付着することを抑制する付着抑制部材であって、杭の上端部に外嵌合する本体部と、上方から内部へ太陽光を取り込む開口部と、杭の上端部に載置するための保持部と、保持部の上側に固定される円錐形状の反射部と、を備えた付着抑制部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底面に打設される杭の上端部に海洋生物が付着することを抑制する付着抑制部材であって、
前記杭の上端部に外嵌合する本体部と
前記杭の上端部に載置するための保持部と、
前記保持部の上側に固定される円錐形状の反射部と、
を備えたことを特徴とする付着抑制部材。
【請求項2】
前記本体部は、上方から本体部内へ太陽光を取り込む開口部と、
前記杭と前記本体部の間に隙間部を形成する胴部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の付着抑制部材。
【請求項3】
前記本体部の内周面と前記反射部の外周面の表面に凹凸が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の付着抑制部材。
【請求項4】
前記本体部と前記開口部の内周面にシリコーン系白色塗料が塗装されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の付着抑制部材。
【請求項5】
前記本体部の内部に紫外線ランプが設けられている、
ことを特徴とする請求項1~3に記載の付着抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電設備の杭に装着することで海洋生物の付着を抑制する付着抑制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、海上に洋上風力発電設備を設けることで、クリーンで再生可能な風力エネルギーを利用した発電が行われていることが知られている。洋上風力発電設備の基礎構造としては、杭(モノパイル)を海底に打設後、風車とモノパイルを連結させるために接続管(トランジションピース)をモノパイルの上端部に設置する接続構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洋上風力発電設備の基礎構造を施工する際、モノパイルの上端部は海面付近に位置することから、モノパイルの打設後からトランジションピースの設置までの期間にモノパイルの上端部に海洋生物が付着するおそれがある。
本発明は、モノパイルの打設後からトランジションピースの設置までの期間にモノパイルの上端部に海洋生物が付着することを抑制する付着抑制部材を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、海底面に打設される杭の上端部に海洋生物が付着することを抑制する付着抑制部材であって、前記杭の上端部に外嵌合する本体部と、前記杭の上端部に載置するための保持部と、前記保持部の上側に固定される円錐形状の反射部と、を備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記本体部は、上方から本体部内へ太陽光を取り込む開口部と、前記杭と前記本体部の間に隙間部を形成する胴部と、を備えたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記本体部の内周面と前記反射部の外周面の表面に凹凸が形成されている、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2の構成に加え、前記本体部と前記開口部の内周面にシリコーン系白色塗料が塗装されている、ことを特徴とすることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1~3の構成に加え、前記本体部の内部に紫外線ランプが設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の付着抑制部材によれば、海底面に打設される杭の上端部に海洋生物が付着することを抑制することができる。また、杭の上端部に着脱可能であるため、繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る付着抑制部材を杭に装着した概略断面図である。
【
図2】(a)は本発明の実施形態に係る付着抑制部材を示した概略断面図である。(b)は(a)のA-A線概略断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る付着抑制部材を示した概略図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る付着抑制部材を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る付着抑制部材100の実施形態について適宜図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る付着抑制部材100を杭10に装着した概略断面図である。また、
図2は、(a)は本発明の実施形態に係る付着抑制部材を示した概略断面図である。(b)は(a)のA-A線概略断面図である。また、
図3は、本発明の第2実施形態に係る付着抑制部材を示した概略図である。また、
図4は、本発明の第2実施形態に係る付着抑制部材を示した概略断面図である。
【0009】
付着抑制部材100は、洋上風力発電設備の杭10の上端部に装着することで海洋生物の付着を抑制するものである。なお、杭10は、海底に打設されるモノパイル式基礎杭(モノパイル)である。例えば、大口径鋼管杭などである。杭10の海洋生物付着を抑制したい範囲(杭10の上端部)を付着抑制部材100で覆うようにする。なお、本実施形態では、杭10は、直径が900mm程度の鋼管(杭10)に装着される鋼材の付着抑制部材100として説明するが、杭10の直径や材質はこれに限定されない。
【0010】
図1に示すように、付着抑制部材100は、本体部1と保持部2と反射部3により形成される。付着抑制部材100の形状は、杭10に連結されるトランジションピース(図は省略)の接続部分の形状とすることが望ましい。なお、洋上風力発電設備の基礎構造としてトランジションピースの内径は、杭10の外径よりも約数10センチ程度多くなるように形成されており、トランジションピースを杭10に結合後、隙間にグラウト材が充填される。
【0011】
本体部1は、開口部11と胴部12で構成されている。本体部1は、杭10の上端部に外嵌合するものである。開口部11は、杭10の先端部に付着抑制部材100を装着した際に、上方から内部へ太陽光を取り込むために上部が開口しており、下方から上方に向かうにつれて縮径する中空の略円錐台形状に形成されている。なお、形状は上部が開口していればよく、例えば円柱形状であってもよい。胴部12は、本体部1が杭11に装着されると、胴部12の内周面と杭10の外周面の間に隙間部4が形成される。胴部12の内周面の形状と大きさは、トランジションピースの内周面の形状と大きさと同程度に形成される。具体的には、胴部12の内径は、杭10の外径よりも約数10センチ程度多くなるように形成されている。
【0012】
図2(a)は本発明の実施形態に係る付着抑制部材を示した概略断面図である。(b)は(a)のA-A線概略断面図である。
図2(b)に示すように、保持部2は、胴部12の内周面から中心に向けて突出するように複数(4本)の部材が設けられている。保持部2は、棒形状に形成されており、杭10の上端部に付着抑制部材100を載置する際に、反射部4を下方から支えるためのものである。なお、実施形態では、4本であるが、付着抑制部材100を杭10の上端部に装着できれば形状や本数は限定されない。例えば、十字状や格子状であってもよい。
【0013】
反射部3は、円錐形状に形成されており、開口部11の開口から本体部1内部に取り込んだ太陽光を反射させるためのものである。なお、保持部2の上側に固定されており、開口部11と反射部3の間に一定の空間が形成される。なお、反射部3の形状は、円錐形状に限定されるものではなく、例えば半円形状や略三角錐形状であってもよい。
【0014】
次に、杭10に付着抑制部材100を装着した際の状況について、
図1により説明する。杭10が海底に打設されると、杭10の上端部が海面付近に位置する。
図1に示すように、付着抑制部材100を杭10に装着すると、胴部12の一部が海面よりも下方に位置し、隙間部4には海水が侵入する。なお、付着抑制部材100は、海底に杭10を打設した後、杭10に連トランジションピース(図は省略)を接続するまでの間に使用するものである。すなわち、トランジションピース(図は省略)を接続するまでの間に使用した付着抑制部材100は、他の杭10で再利用できるように杭10に対して固定されるものではなく着脱可能である。
【0015】
図1に示すように、開口部11の内周面と反射部2の外周面の表面に凹凸が形成されている。このように凹凸を形成することで開口部12の内部で太陽光が反射しやすいようにする。さらに、胴部12の内周面の表面に凹凸を形成しても良い。
また、本体部11の内周面と反射部2の外周面にはシリコーン系白色塗料が塗装されている。また、
図4に示すように、本体部1の内部(胴部12の内部)に紫外線ランプ6を設けて海水面を紫外線で照射し、杭10の海洋生物付着を抑制してもよい。
【0016】
図3は、本発明の第2実施形態に係る付着抑制部材を示した概略図である。付着抑制部材100の内周面と杭10の外周面との間の海水(隙間部4の海水)を循環させることで、杭10の上端部に海洋生物が付着するのを抑制するものである。本体部1の上部と下部を循環ホース5で連結しポンプ(図は省略)で上部の海水を下部に移動させることで、付着抑制部材100の内周面と杭10の外周面との間の海水を下部と上部で交換する。
図4に示すように、隙間部4の上部の海水は、循環ホース5を介して隙間部4の下部へ放出される。なお、隙間部4の下部へ海水を放出する際は、
図4に示すように少し斜め上方に向けて海水が放水される
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。 例えば、本実施形態では、洋上風力発電設備の杭10に装着する付着抑制部材について説明したが、例えば、桟橋などの杭に使用してもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 本体部
10 杭
11 開口部
12 胴部
2 保持部
3 反射部
4 隙間部
5 循環ホース
6 紫外線ランプ