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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115476
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】加工装置及びこれに用いる制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4063 20060101AFI20230814BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20230814BHJP
   B30B 15/26 20060101ALI20230814BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
G05B19/18 W
B30B15/26
B30B15/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017702
(22)【出願日】2022-02-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】593118128
【氏名又は名称】コアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風早 光弘
【テーマコード(参考)】
3C269
4E089
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB10
3C269EF02
3C269GG01
3C269MN07
3C269MN08
3C269MN21
3C269MN23
3C269MN26
3C269MN27
3C269QE01
3C269QE11
3C269QE15
3C269QE17
3C269QE31
3C269QE34
3C269QE35
4E089EA01
4E089EB01
4E089EB02
4E089EB03
4E089EC10
4E089EF08
4E089FB10
4E089FC03
(57)【要約】
【課題】荷重や速度等の波形とプログラムとを経過時間を合わせて同期させることにより、異常原因の解析を容易にした加工装置及びこれに用いる制御装置を提供する。
【解決手段】プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置であって、プログラムの実行開始からの経過時間を計測し、経過時間の情報と経過時間におけるワークの加工に関する検出値の情報との関係を示す時形系列的なデータである波形データを作成し、経過時間の情報と経過時間に実行されているプログラムの該当箇所の情報との関係を示すプログラムトレースデータを作成し、波形データとプログラムトレースデータとを経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における前記波形データに対応する前記プログラムの該当箇所が分かるようにしている。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置であって、
前記プログラムの実行開始からの経過時間を計測し、
前記経過時間の情報と前記経過時間におけるワークの加工に関する検出値の情報との関係を示す時形系列的なデータである波形データを作成し、
前記経過時間の情報と前記経過時間に実行されているプログラムの該当箇所の情報との関係を示すプログラムトレースデータを作成し、
前記波形データと前記プログラムトレースデータとを前記経過時間を合わせて同期させることにより、
任意の経過時間における前記波形データに対応する前記プログラムの該当箇所が分かるようにしたことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記プログラムは、複数のブロックで構成されており、前記複数のブロックはそれぞれ複数のステップで構成されている請求項1に記載の加工装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加工装置に用いる制御装置であって、前記波形データ及び前記プログラムトレースデータを作成する機能を有する制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置とこれに用いる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プログラムに従ってワークの加工を行うサーボプレスやナットランナーといった加工装置が知られている。サーボプレスは、サーボモータを駆動源とするプレス機であり、ナットランナーは、サーボモータを駆動源とするナットやネジの自動締付機である。これらは、いずれもサーボモータを駆動源とするものであり、例えばサーボプレスは、加工時の荷重、ラムの速度、加工位置等の特性を数値で設定することができ、これらの特性はロードセルやエンコーダで検出することができる。このため、制御プログラムを用いて検出値に応じた制御が可能になるので、複雑な制御が可能になり、このことはナットランナーについても同様である。
【0003】
これらの加工装置は、荷重や位置等の時系列的な変化をモニターすることができ、サーボプレスでは、ラムの速度や位置、ラムが受ける荷重の時系列的な変化の数値表示や波形表示が可能であり、ナットランナーではツール回転数、締付トルクの時系列的な変化の数値表示や波形表示が可能である。このことにより、異常を検出したり、異常を解析することが可能になる。
【0004】
例えば、特許文献1記載のサーボプレス機械の荷重と成形速度の測定及び表示装置は、スライド位置、加圧力、スライド速度を時間と対応して表示することができるとともに(特許文献1の段落[0005])、カーソルを移動させて所要の位置のスライド位置、加圧力及びスライド速度の詳細な数値を求めることができるようにして、成形における詳細な解析が便利になるようしている(特許文献1の段落[0020])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-246498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、時間と製品の成形時の成形荷重、成形速度とを1対1に対応させて、当該荷重、速度に基づいて製品の中から不良品をピックアップするというものであり(特許文献1の段落[0005])、特許文献1記載の発明における「成形における詳細な解析」(特許文献1の段落[0005])は、ピックアップした不良品を、当該不良品の成形時の成形荷重、成形速度の観点から解析できるに留まっていた。
【0007】
すなわち、この解析では、不良品が生じる原因を装置を制御するプログラムにまで遡って特定することはできず、このような特定のための解析は困難かつ時間のかかるものであった。
【0008】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、荷重や速度等の波形とプログラムとを経過時間を合わせて同期させることにより、異常原因の解析を容易にした加工装置及びこれに用いる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の加工装置は、プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置であって、前記プログラムの実行開始からの経過時間を計測し、前記経過時間の情報と前記経過時間におけるワークの加工に関する検出値の情報との関係を示す時形系列的なデータである波形データを作成し、前記経過時間の情報と前記経過時間に実行されているプログラムの該当箇所の情報との関係を示すプログラムトレースデータを作成し、前記波形データと前記プログラムトレースデータとを前記経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における前記波形データに対応する前記プログラムの該当箇所が分かるようにしたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、波形データとプログラムトレースデータとを経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における波形データに対応するプログラムの該当箇所が分かることになる。このため、波形の異常を発見した場合、この異常部分に対応するプログラムの該当箇所を知ることができ、異常に対する対策が容易になる。例えば、プログラムに意図しない記述の誤りががあり、その結果として、波形に異常が生じている場合、波形の異常さえ発見できれば、異常部分に対応するプログラムの該当箇所が分かるので、記述の誤り箇所を探し出すことが容易になる。
【0011】
前記本発明の加工装置においては、前記プログラムは、複数のブロックで構成されており、前記複数のブロックはそれぞれ複数のステップで構成されていることが好ましい。この構成によれば、複数のブロックや複数のステップを番号で指定できるので、波形データとプログラムトレースデータとの対応付けが容易になる。
【0012】
本発明の制御装置は、前記本発明の加工装置に用いる制御装置であって、前記波形データ及び前記プログラムトレースデータを作成する機能を有するものである。本発明の制御装置を用いた加工装置は、前記のような本発明の加工装置と同じ効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は前記の通りであり、要約すれば、波形データとプログラムトレースデータとを経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における波形データに対応するプログラムの該当箇所が分かることになり、異常に対する対策が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るサーボプレスの全体構成図。
図2】本発明の一実施形態に係るプログラムを示す図。
図3】本発明の一実施形態に係る荷重目標プログラムの具体例を示す図。
図4図3に示した荷重目標プログラムのブロックを時系列的に示したフローチャート。
図5図4に示したブロック4(最終圧入)を時系列的に示したフローチャート。
図6】本発明の一実施形態に係るサーボプレスコントローラの構成を示すブロック図。
図7】本発明の一実施形態に係る操作端末の構成を示すブロック図。
図8】本発明の一実施形態に係る波形の一例及び経過時間と実行ブロックとの関係の一例を示した図。
図9】本発明の一実施形態において、経過時間3秒における波形データと実行実行ブロック及び実行ステップとの関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置に関するものであり、詳細は後述するとおり、波形データとプログラムトレースデータとを同期させるというものである。波形データの作成、プログラムトレースデータの作成及び同期に関してもプログラムを用いるが、本実施形態でプログラムというときは、後者のプログラムのことではなく、前者のワークの加工を行うためのプログラムのことをいう。
【0016】
加工装置の種類については特に限定はなく、例えば、圧入、プレス、カシメ、組立て、締め付け、切削を行う加工装置が挙げられる。このうち、圧入、プレス、カシメ、組立てを行う加工装置として例えばサーボプレスが挙げられ、締め付け行う加工装置として例えばナットランナーが挙げられ、切削を行う加工装置として例えばNC(数値制御)工作機械が挙げられる。
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、加工装置がサーボプレスの例で説明する。図1は本発明の一実施形態に係るサーボプレス1の全体構成図を示している。最初に図1を参照しながら、サーボプレス1の概要を説明する。サーボプレス1は、支持体20に取り付けられたサーボプレス本体10に加え、モーター駆動部50、サーボプレスコントローラ40(制御装置)及び操作端末60を備えている。
【0018】
図1では、サーボプレスコントローラ40及び操作端末60は、サーボプレス1の構成の一部として示しているが、これらはサーボプレス本体10に対して接続可能な独立した外部装置であってもよい。また、サーボプレスコントローラ40及び操作端末60は、一つの装置として一体になっていてもよい。
【0019】
サーボプレス本体10は、支持体20の支持台21に固定されている。支持体20は、下側の基台22と上側の支持台21との間に支柱23を介在させた構造体である。サーボプレス本体10は、シリンダケース5の内部にラム2及びボールねじ3が内蔵されている。ボールねじ3の回転により、ナット4がボールねじ3の軸方向にスライドし、これと一体にラム2がガイド(図示せず)に沿ってスライドする(矢印a及びb)。ボールねじ3は、サーボモーター6の回転がタイミングベルト7を介して減速機8に伝達されることにより回転駆動される。
【0020】
ラム2を下降させることにより(矢印a)、ラム2で対象物を加圧することができる。このことにより、サーボプレス本体10を用いれば、圧入、成形、カシメ、検査、溶接・接合、組付け、切断等の作業を行うことができる。図1では、ラム2の先端にプラグ12が取り付けられており、ラム2を下降させることにより、プラグ12を作業台24上のワーク13(成型品)の凹部に圧入することができる。
【0021】
図1において、操作端末60はサーボプレスコントローラ40に種々の命令を指令する。サーボボプレスコントローラ40は、操作端末60からの指令、ロードセル9による検出荷重情報及びエンコーダ11からのエンコーダパルスに基づいて、モーター駆動部50に指令する。このことにより、モーター電流が制御されてサーボプレス本体10が駆動制御される。エンコーダパルスはモーター駆動部50にも入力され、フィードバック制御によりモーター電流は適宜補正される。
【0022】
本実施形態において荷重とは、ラム2に外部から加わる荷重のことである。本実施形態において、単に位置、速度というときは、ラム2の位置、ラム2の速度のことである。ラム2の位置とは直線的に往復移動するラム2の位置のことであり、例えばラム2の前進の初期位置(原点位置)からの変位量であり、本実施形態ではこの定義を用いる。
【0023】
以下、図2を参照しながら、プログラムについて説明する。前記のとおり、プログラムは、ワークの加工を行うためのプログラムのことをいう。本実施形態においては、制御装置であるサーボプレスコントローラ40は、内部に荷重目標プログラム70、位置目標プログラム71及び圧入目標プログラム72を保存している。各プログラム70~72は、モーター駆動部50(図1)を制御してラム2の駆動を制御するプログラムであり、各プロブラム70~72のうち、操作端末60から指定されたプログラムが実行される。
【0024】
荷重目標プログラム70は、ラム2が受ける荷重に関し、使用者により入力された目標荷重に基づいてラム2の駆動を制御するプログラムであり、位置目標プログラム71は、ラム2の位置に関し、使用者により入力された目標位置に基づいてラム2の駆動を制御するプログラムであり、圧入目標プログラム72は、ラム2の接触位置を起点とした最終圧入位置までの圧入長に関し、使用者により入力された目標圧入長に基づいてラム2の駆動を制御するプログラムである。
【0025】
図2において、荷重目標プログラム70は、ブロック1、ブロック2等の複数のブロックから成り、ブロック1等の各ブロックは、複数のステップ1、ステップ2等から成る。位置目標プログラム71及び圧入目標プログラム72についても同様である。
【0026】
図3は、図2に示した荷重目標プログラム70の具体例を示している。同プロブラムは、ブロック1~7から成り、ブロック1~4はそれぞれステップ1~2から成り、ブロック5はステップ1~3から成り、ブロック6はステップ1~2から成り、ブロック7はステップ1~3から成っている。
【0027】
図3において、「繰返し」の列にチェックが入っているステップは、ブロック内で繰り返し実行される。チェックが入っていないステップは、ブロックに入った際に一度だけ実行される。「飛び先」の列は、分岐命令(ジャンプ)の飛び先であり、飛び先はブロック名で指定される。「パラメータ1」、「パラメータ2」は、プログラムの動作を決定するための情報であり、リアル荷重等の測定値、目標荷重等の設定値、スロープ変速等の速度モード(方式)である。
【0028】
例えば、図3のブロック2(アプローチ開始)は、ステップ1において、絶対位置を指定するための位置決め動作を行う「位置決めモード(絶対)」という命令に基づいて、「パラメータ2」である「接触位置」(ラムとワークが接触する予定の位置:設定値)まで、「パラメータ1」である「アプローチ速度」(ラムがワークと接触しない空走区間の速度:設定値)でラムが下降する。続くステップ2において、測定値である「リアルストローク」(リアルタイムで更新される位置情報、現在のラムの位置)が設定値である「接触位置」以上になると、「飛び先」である接触判定(ブロック3)へジャンプ(分岐)する。
【0029】
図4は、図3に示した荷重目標プログラム70のブロック1~7を時系列的に示したフローチャートである。図5は、ブロック4(最終圧入)について、ステップ1~2の内容を示したフローチャートである。図4に示したように、初期設定のブロック1を経て、順次ブロック2~6が進行し、ブロック7の処理を経て終了する。各ブロックにおいては、各ブロック内の各ステップの処理を経て次ブロックへ分岐する。例えば、図5に示したフローチャートのように、ブロック4(最終圧入)においては、ステップ1、2を経て、ブロック5(荷重保持)に分岐してブロック4が終了する。
【0030】
以下、図6及び図7を参照しながら、図1に示したサーボプレスコントローラ40(制御装置)及び操作端末60について、具体的に説明する。図6はサーボプレスコントローラ40の構成を示すブロック図である。図7は操作端末60の構成を示すブロック図である。操作端末60はコンピュータであり、専用機でもよく、パーソナルコンピュータ等の汎用機であってもよい。操作端末60は、通信制御部62を介して、図6のサーボプレスコントローラ40との間で種々のコマンドのやり取りを行う。
【0031】
図6において、サーボプレスコントローラ40は、通信コマンド解釈部41において、操作端末60の通信制御部62(図7)との間で交わされる通信コマンドを解釈し、サーボプレスコントローラ40の各部に対して指令及びデータの入出力を行う。サーボボプレスコントローラ40は、前記のとおり、図1において、操作端末60からの指令、ロードセル9による検出荷重情報及びエンコーダ11からのエンコーダパルスに基づいて、モーター駆動部50にサーボモーター6に対するモーター駆動指令を発し、同指令に見合ったモーター電流が出力される。
【0032】
モーター駆動指令は速度、位置又はこれらの組み合わせから成っている。モーター駆動指令の結果としての速度及び位置の情報は、位置・速度変換部42から得られる。位置・速度変換部42は、エンコーダ11(図1)からのエンコーダパルスをラム2の位置・速度に変換する部分である。ラム2の位置は、エンコーダパルスの累積により算出する。ラム2の速度は、エンコーダパルスの一定周期の計数によりを算出するが、エンコーダパルス間の周期を他の一定クロックにより計数することにより算出してもよい。前者は高速動作中、後者は低速動作中に適している。
【0033】
図7において、プログラム編集部68に保存されているプログラムは、プログラム送信部64及び通信制御部62を経て、図6のサーボプレスコントローラ40に出力され、通信コマンド解釈部41から発せられるプログラム保存指令により、プログラム保存部45に保存される。プログラム保存部45において、複数のプログラムが均等な領域にプログラム番号を付与されて保存される。図2のプロブラムの例では、荷重目標プログラム70、位置目標プログラム71及び圧入目標プログラム72のそれぞれについて異なるプログラム番号が付与される。
【0034】
図7に示した操作端末60のプログラム実行指令部63及び通信制御部62を経て、図6のサーボプレスコントローラ40に、指定されたプログラムの実行指令が発せられる。図6において、プログラム選択部46は、通信コマンド解釈部41より発せられたプログラム選択指令により、指定されたプログラムをプログラム保存部45からプログラム実行部43へコピーする。プログラム実行部43は、通信コマンド解釈部41から発せられるプログラム実行指令により、プログラムを実行する機能を有する。
【0035】
図6のサーボプレスコントローラ40は、波形データを取得でき、図7の操作端末60からの指令により、操作端末60に波形データを表示させることができる。波形データとは、プログラムの開始から終了までの間において、経過時間の情報と、位置、速度、荷重等のワークの加工に関する検出値の情報との関係を示す時形系列的なデータのことである。波形データは、波形データを記録し、保存する機能を有する波形データ保存部48に保存される。
【0036】
図8に、波形データから作成した波形グラフの一例を示している。図8(a)は経過時間と荷重との関係を示す波形グラフであり、図8(b)は経過時間と速度との関係を示す波形グラフであり、図8(c)は経過時間と電流との関係を示す波形であり、図8(d)は経過時間と位置との関係を示す波形グラフである。
【0037】
図8の各波形グラフにおいて横軸の時間は、図6の時間計数部47により計測される。時間計数部47は、プログラムの実行開始によりゼロリセットされ、ゼロスタートする時計機能を有する。図8(a)の縦軸の荷重の情報はロードセル9(図1)による検出荷重情報から得られ、図8(b)の縦軸の速度の情報及び図8(d)の位置の情報は位置・速度変換部42より得られる。図8(c)の電流の情報は、モータ駆動部50(図1)から得られる。
【0038】
図2を用いて説明したとおり、荷重目標プログラム70等のプログラムは、複数のブロックから成り、各ブロックは複数のステップから成り、各ブロック及び各ステップにはそれぞれ番号が付与されている。図6において、プログラムトレースデータ保存部44は、プログラム実行部43により現在実行されているプログラムの該当箇所の情報(ブロック番号及びステップ番号)を得ることができ、時間計数部47よりプログラム開始からの経過時間の情報を得ることができる。このためサーボプレスコントローラ40は、経過時間の情報と当該経過時間に実行されているプログラムの該当箇所の情報とを対応付けることができる。本実施形態においては、経過時間の情報と当該経過時間に実行されているプログラムの該当箇所の情報との関係を示すデータのことをプログラムトレースデータという。
【0039】
プログラムトレースデータ保存部44は、プログラムの実行時に、プログラムトレースデータを保存する機能を有し、同保存部44に、2つの情報(経過時間の情報と、当該経過時間に実行されているプログラムのブロック番号及びステップ番号)が時系列的に保存される。
【0040】
図6の波形データ保存部48に保存された波形データは、図7に示した波形データ要求部67からの波形データ要求指令により、操作端末60に送られ、図6のプログラムトレースデータ保存部44に保存されたプログラムトレースデータは、図7に示したプログラムトレースデータ要求部66からのプログラムトレースデータ要求指令により、操作端末60に送られる。
【0041】
前記のとおり、波形データは、経過時間の情報と位置、速度、荷重等のワークの加工に関する検出情報の情報との関係を示す時形系列的なデータであり、プログラムトレースデータは、経過時間の情報と当該経過時間に実行されているプログラムの該当箇所(ブロック番号及びステップ番号)の情報との関係を示すデータのことである。このため、波形データとプログラムトレースデータが得られれば、同一経過時間における位置、速度、荷重等の情報と、当該同一経過時間に実行されているプログラムのブロック番号及びステップ番号を知ることができる。
【0042】
具体的には、図8(a)~図8(d)の波形グラフは、経過時間と荷重等との関係が示されており、前記のとおり、これらは波形データに基づいて作成可能である。図8(e)は、経過時間と実行ブロックとの関係を示しており、この関係は、プログラムトレースデータから知ることができる。波形データ及びプログラムトレースデータの経過時間の開始時間は統一されているので、両データを経過時間を合わせて同期させることができる。本実施形態における同期とは、同一経過時間における波形データとプログラムトレースデータとを対応付けることをいう。
【0043】
例えば、図8(e)において、2900msで実行ブロック4が開始し3550msで実行ブロック5が開始するので、2900ms~3550msの期間が実行ブロック4の実行期間となる。波形データとプログラムトレースデータとを同期させることにより、実行ブロック5の実行期間と、図8(a)~図8(d)の各波形グラフとを対応付けることができる。実行ブロック5以外の実行ブロックについても同様であり、同期により実行ブロック1~7と、図8(a)~図8(d)の各波形グラフとを対応付けることができる。
【0044】
したがって、同期により、任意の経過時間における波形データに対応する実行ブロック及び実行ステップを知ることができる。図9は、経過時間3秒における波形グラフと実行ブロック及び実行ステップとの関係を示した図である。図9によれば、経過時間3秒における波形グラフに対応する実行ブロックが実行ブロック4であることが分かる。図9のブロック4の斜線は、ハイライト表示されていることを便宜的に図示したものである。
【0045】
図5に示したブロック4のフローチャートによれば、ステップ1が実行されると、リアル荷重(リアルタイムで更新される荷重情報、現在の荷重)が設定値である目標荷重以上になるまで、ステップ2が繰り返し実行される。したがって、図9からは、経過時間3秒における各波形の状態を知ることができるとともに、この波形の状態は、ブロック4のステップ2が実行中であることによるものであるが分かる。
【0046】
波形データの表示に関しては、図7において、図6のサーボプレスコントローラ40から送られてきた波形データ72が表示部位生成部70に送られ、波形表示部74を経て、ディスプレイ上に波形グラフとして表示される。この場合、操作部61における操作入力により時間を指定し、この指定時間に対応する縦線を波形グラフ上に表示させるようにすればよい。図9の例では、指定時間3秒の位置に縦線を表示する。
【0047】
プログラムの表示に関しては、図6のサーボプレスコントローラ40から送られてきたプログラムトレースデータ71が表示部位生成部70に送られ、プログラム表示部73を経て、ディスプレイ上にプログラムの記述内容が例えば図9の下図のような表形式で表示される。この場合、操作部61における操作入力で指定された指定時間に対応するブロック及びステップをハイライト表示するようにすればよい。図9では、ブロック4全体がハイライト表示されているが、ハイライト表示は、ステップの単位で行ってもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、波形データとプログラムトレースデータとを経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における波形データに対応するプログラムの該当箇所が分かることになる。このため、波形の異常を発見した場合、この異常部分に対応するプログラムの該当箇所を知ることができ、異常に対する対策が容易になる。
【0049】
例えば、プログラムに意図しない記述の誤りがあり、その結果として、波形に異常が生じている場合、波形の異常さえ発見できれば、異常部分に対応するプログラムの該当箇所が分かるので、記述の誤り箇所を探し出すことが容易になる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前記実施形態は一例であり、適宜変更したものでもよい。例えば、前記実施形態では、図2のサーボプレスコントローラ40と図4の操作端末60は、それぞれ機能を分担しているが、操作端末60にサーボプレスコントローラ40の機能の全部又は一部を含ませてもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、プログラムは複数のブロック及び複数のステップで構成されているが、波形データとの対応箇所が指定できる構成であればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 サーボプレス
2 ラム
6 サーボモーター
10 サーボプレス本体
13 ワーク
40 サーボプレスコントローラ(制御装置)
45 プログラム保存部
50 モーター駆動部
43 プログラム実行部
44 プログラムトレースデータ保存部
48 波形データ保存部
60 操作端末
70 表示部位生成部
71 プログラムトレースデータ
72 波形データ
73 プログラム表示部
74 波形表示部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置であって、
前記プログラムの実行開始からの経過時間を計測し、
前記経過時間の情報と前記経過時間におけるワークの加工に関する検出値の情報との関係を示す時形系列的なデータである波形データを作成し、
前記経過時間の情報と前記経過時間に実行されている前記プログラムの記述内容の情報との関係を示すプログラムトレースデータを作成し、
前記波形データと前記プログラムトレースデータとを前記経過時間を合わせて同期させることにより、
任意の経過時間における前記波形データに対応する前記プログラムの記述内容の情報が分かることにより、前記記述内容の誤りの有無を発見できるようにしたことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記プログラムは、複数のブロックで構成されており、前記複数のブロックはそれぞれ複数のステップで構成されている請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加工装置に用いる制御装置であって、前記波形データ及び前記プログラムトレースデータを作成する機能を有する制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の加工装置は、プログラムに従ってワークの加工を行う加工装置であって、前記プログラムの実行開始からの経過時間を計測し、前記経過時間の情報と前記経過時間におけるワークの加工に関する検出値の情報との関係を示す時形系列的なデータである波形データを作成し、前記経過時間の情報と前記経過時間に実行されている前記プログラムの記述内容の情報との関係を示すプログラムトレースデータを作成し、前記波形データと前記プログラムトレースデータとを前記経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における前記波形データに対応する前記プログラムの記述内容の情報が分かることにより、前記記述内容の誤りの有無を発見できるようにしたことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
この構成によれば、波形データとプログラムトレースデータとを経過時間を合わせて同期させることにより、任意の経過時間における波形データに対応するプログラムの該当箇所が分かることになる。このため、波形の異常を発見した場合、この異常部分に対応するプログラムの該当箇所を知ることができ、異常に対する対策が容易になる。例えば、プログラムに意図しない記述の誤りがあり、その結果として、波形に異常が生じている場合、波形の異常さえ発見できれば、異常部分に対応するプログラムの該当箇所が分かるので、記述の誤り箇所を探し出すことが容易になる。