(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115481
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】捕捉体及び堰堤
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20230814BHJP
E02B 5/08 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
E02B7/02 B
E02B5/08 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017707
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 幸司
(72)【発明者】
【氏名】松元 志津佳
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輝
(57)【要約】
【課題】捕捉体を乗り越えた岩石や流木によって捕捉体が破損しないようにすること。
【解決手段】河川の上流から流れてくる流水を通すとともに流水に含まれる物体を捕捉する捕捉体(3)は、河川の上流側に設けられ、物体を捕捉する上流側ユニット(6)と、河川の下流側に設けられ、中央部が上流側ユニット(6)に向けて突出するように曲げて形成された下流側ユニット(7)と、上流側ユニット(6)と下流側ユニット(7)とを連結する連結ユニット(8)と、を備え、下流側ユニット(7)の各端部は、捕捉体(3)における河川を横切る方向両側に構築された非越流部(1)に取り付けられており、下流側ユニット(7)は、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の上流から流れてくる流水を通すとともに流水に含まれる物体を捕捉する捕捉体であって、
河川の上流側に設けられ、前記物体を捕捉する上流側ユニットと、
河川の下流側に設けられ、中央部が前記上流側ユニットに向けて突出するように曲げて形成された下流側ユニットと、
前記上流側ユニットと前記下流側ユニットとを連結する連結ユニットと、を備え、
前記下流側ユニットの各端部は、前記捕捉体における河川を横切る方向両側に構築された非越流部に取り付けられており、
前記下流側ユニットは、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されていることを特徴とする捕捉体。
【請求項2】
前記下流側ユニットは、複数の横材が連結されており、
隣接する前記横材の軸線のなす角度が全て等しいことを特徴とする請求項1に記載の捕捉体。
【請求項3】
前記下流側ユニットは、隣接する一方の横材を連結する第1の連結部と、隣接する他方の横材を連結する第2の連結部とを有する複数の縦材を備え、
前記第1の連結部の軸線と前記第2の連結部の軸線とのなす角度が全て等しいことを特徴とする請求項2に記載の捕捉体。
【請求項4】
前記第1の連結部及び前記第2の連結部は、一つの縦材に複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の捕捉体。
【請求項5】
各横材は、軸線方向に沿った長さが等しく形成されていることを特徴とする請求項2から4までのいずれか一項に記載の捕捉体。
【請求項6】
前記上流側ユニットは、中央部が河川の上流側に向けて突出するように曲げて形成されており、
前記上流側ユニットの各端部は、前記非越流部に取り付けられており、
前記上流側ユニットは、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の捕捉体。
【請求項7】
前記上流側ユニットは、複数の横材が連結されており、
隣接する前記横材の軸線のなす角度が全て等しいことを特徴とする請求項6に記載の捕捉体。
【請求項8】
前記上流側ユニットは、隣接する一方の横材を連結する第1の連結部と、隣接する他方の横材を連結する第2の連結部とを有する複数の縦材を備え、
前記第1の連結部の軸線と前記第2の連結部の軸線とのなす角度が全て等しいことを特徴とする請求項7に記載の捕捉体。
【請求項9】
前記第1の連結部及び前記第2の連結部は、一つの縦材に複数設けられていることを特徴とする請求項8に記載の捕捉体。
【請求項10】
各横材は、軸線方向に沿った長さが等しく形成されていることを特徴とする請求項7から9までのいずれか一項に記載の捕捉体。
【請求項11】
河川の両岸からそれぞれ突き出た一対の非越流部と、
前記一対の非越流部の間の開口部に設けられた、請求項1から10までのいずれか一項に記載の捕捉体と、
を備えることを特徴とする堰堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕捉体及び堰堤に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の土石流対策工として、上流から流れてくる岩石や流木等を捕捉する捕捉体を備えた堰堤(いわゆる透過型堰堤)が知られている。堰堤は、河川の両岸からそれぞれ突き出た一対の非越流部を備えている。非越流部の間には水を通す開口部が設けられている。
捕捉体は、開口部に設けられており、径の小さい土砂や水を通過させつつ、径の大きな岩石や流木等を捕捉する。捕捉体は、河川の流れ方向において上流側に面する上流側ユニットと、下流側に面する下流側ユニットとを有しており、両ユニットは互いに上方に向かうにつれて近づくように傾斜して延びており、その上端部近傍において互いに連結されている。捕捉体は、開口部の幅方向にわたって設けられており、その下端部においてコンクリート基礎に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。捕捉体に土石流が衝突すると、捕捉体を下流側に倒そうとする力が作用する。捕捉体は、この力を下端部からコンクリート基礎に伝えることによって転倒しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大きな河川や大量の土石流が予測される河川においては、コンクリート基礎下から上端までの高さが15m以上のハイダムが設けられることが多い。ハイダムの場合、捕捉体も高く構築する必要があるが、上流側ユニットと下流側ユニットは互いに上方に向かうにつれて近づくように傾斜して延びているので、捕捉体が高くなるほど、河川の流水方向に沿った捕捉体の上端部と下端部の距離が大きくなる。
そのため、捕捉体を乗り越えた岩石や流木が下流側ユニットの下端部に向けて落下し、下流側ユニットが破損し、捕捉体に作用する力をコンクリート基礎に伝えることができなくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、捕捉体を乗り越えた岩石や流木によって捕捉体が破損しない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに流水に含まれる物体を捕捉する捕捉体であって、河川の上流側に設けられ、前記物体を捕捉する上流側ユニットと、河川の下流側に設けられ、中央部が前記上流側ユニットに向けて突出するように曲げて形成された下流側ユニットと、前記上流側ユニットと前記下流側ユニットとを連結する連結ユニットと、を備え、前記下流側ユニットの各端部は、前記捕捉体における河川を横切る方向両側に構築された非越流部に取り付けられており、前記下流側ユニットは、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記下流側ユニットは、複数の横材が連結されており、隣接する前記横材の軸線のなす角度が全て等しいことが好ましい。
【0008】
また、前記下流側ユニットは、隣接する一方の横材を連結する第1の連結部と、隣接する他方の横材を連結する第2の連結部とを有する複数の縦材を備え、前記第1の連結部の軸線と前記第2の連結部の軸線とのなす角度が全て等しいことが好ましい。
【0009】
また、前記第1の連結部及び前記第2の連結部は、一つの縦材に複数設けられていることが好ましい。
【0010】
また、各横材は、軸線方向に沿った長さが等しく形成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記上流側ユニットは、中央部が河川の上流側に向けて突出するように曲げて形成されており、前記上流側ユニットの各端部は、前記非越流部に取り付けられており、前記上流側ユニットは、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記上流側ユニットは、複数の横材が連結されており、隣接する前記横材の軸線のなす角度が全て等しいことが好ましい。
【0013】
また、前記上流側ユニットは、隣接する一方の横材を連結する第1の連結部と、隣接する他方の横材を連結する第2の連結部とを有する複数の縦材を備え、前記第1の連結部の軸線と前記第2の連結部の軸線とのなす角度が全て等しいことが好ましい。
【0014】
また、前記第1の連結部及び前記第2の連結部は、一つの縦材に複数設けられていることが好ましい。
【0015】
また、各横材は、軸線方向に沿った長さが等しく形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る一態様は、堰堤であって、河川の両岸からそれぞれ突き出た一対の非越流部と、前記一対の非越流部の間の開口部に設けられた、上記の捕捉体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、捕捉体を乗り越えた岩石や流木によって捕捉体が破損しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】(a)は縦材の正面図、(b)は縦材の平面図、(c)は縦材の側面図である。
【
図5】(a)は縦材の正面図、(b)は縦材の平面図、(c)は縦材の側面図である。
【
図6】(a)は縦材の正面図、(b)は縦材の平面図、(c)は縦材の側面図である。
【
図13】非越流部内を透視した堰堤の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
<堰堤の構成>
図1~
図3に示すように、堰堤100は、一般に透過型堰堤と呼ばれるものであり、一対の非越流部1と、開口部2と、捕捉体3と、架台4と、を備えている。なお、以下において、縦方向は堰堤100の高さ方向(河川の深さ方向)をいい、横方向は堰堤100の高さ方向に直交する堰堤100の幅方向(河川の幅方向)をいうものとする。
【0021】
非越流部1は、例えば、コンクリートにより形成された壁体である。一対の非越流部1は、それぞれ、河川の両岸から河川を横断するように河川の中央に向かって延びている。一対の非越流部1の間には、所定の間隔があけられており、開口部2が形成されている。非越流部1は、河床に形成された基礎11(
図7参照)にコンクリートが上方に向かって打設されることにより構築されている。
【0022】
開口部2は、一対の非越流部1間に形成された空間であり、捕捉体3が設置される。これにより、土石流に含まれる大きな岩石や流木を捕捉体3で捕捉しつつ、水、砂、小礫等を通過させる。開口部2の底部には、基礎21が形成されている。基礎21は、河床に形成されており、例えば、コンクリートによって形成されている。
【0023】
捕捉体3は、河川の上流から流れてくる流水を通すとともに、大きな岩石や流木といった物体を捕捉するものであり、開口部2において、開口部2の基礎21と、河川の流れ方向両側(河川を横切る方向両脇)にある非越流部1の側面とに取り付けられている。捕捉体3は、例えば、高堰堤(ハイダム)に適用される。ここで、「高堰堤(ハイダム)」とは、堰堤の基礎が設置される河川の河床(底部)から、捕捉体3の上端までの高さ(堤高)が15m以上の堰堤のことをいう。高堰堤は、主に、大きな河川や、大量の土石流が予測される河川に設けられる。
【0024】
捕捉体3は、上流側ユニット6と、下流側ユニット7と、連結ユニット8と、を備えている。
上流側ユニット6は、河川の上流側に設けられており、堰堤100の上流側から流れてきた土石流に含まれる岩石や流木等の物体を捕捉する機能部材である。すなわち、上流側ユニット6は、土石流の衝撃が直接作用するユニットである。
上流側ユニット6は、堰堤100を平面視した際に、河川を横切る方向(堰堤100の幅方向)に沿って直線状に設けられている。
上流側ユニット6は、複数の縦材61と、複数の横材62と、を備えている。
【0025】
複数の縦材61は、堰堤100の高さ方向に沿って設けられており、高さ方向に隣接する横材61が連結される。複数の縦材61は、堰堤100の幅方向に沿って並んで配置されている。隣接する縦材61間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくしておくことが好ましい。また、隣接する縦材61間の間隔は、捕捉体3の幅方向一端から他端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、捕捉体3の幅方向中央付近のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。
縦材61は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。捕捉体3においては、複数の縦材61が長手方向に連結されており、各縦材61は、長手方向の端部に設けられたフランジ部を介して互いに連結されている。例えば、捕捉体3は、三つの縦材61を備えている。なお、各縦材61は、フランジ部を設けることなく、端部同士を溶接にて連結してもよいが、土石流衝突後の交換作業を考慮すると、フランジ部を用いた連結が好ましい。
【0026】
各縦材61は、長手方向の端部間に横材62と連結する複数の連結部63,64を備えている。
具体的には、捕捉体3において最も下方に配置され、下端部が開口部2の基礎21に埋設される縦材61は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材62を連結する二つの第1の連結部63と、隣接する他方の横材62を連結する二つの第2の連結部64とを備えている。対となる第1の連結部63及び第2の連結部64は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、縦材61の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材61に溶接等によって接合されており、他端には横材62と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部63及び第2の連結部64の一端は、フランジ部を介して縦材61に連結されていてもよい。
ここで、
図3に示すように、第1の連結部63及び第2の連結部64は、それぞれの軸線同士がなす角度θ1が全て180度となるように縦材61に設けられている。
【0027】
捕捉体3において下から二段目に配置される縦材61は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材62を連結する三つの第1の連結部63と、隣接する他方の横材62を連結する三つの第2の連結部64とを備えている。対となる第1の連結部63及び第2の連結部64は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、縦材61の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材61に溶接等によって接合されており、他端には横材62と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部63及び第2の連結部64の一端は、フランジ部を介して縦材61に連結されていてもよい。
ここで、
図3に示すように、第1の連結部63及び第2の連結部64は、それぞれの軸線同士がなす角度θ1が全て180度となるように縦材61に設けられている。
【0028】
捕捉体3において最も上方に配置される縦材61は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材62を連結する五つの第1の連結部63と、隣接する他方の横材62を連結する五つの第2の連結部64とを備えている。対となる第1の連結部63及び第2の連結部64は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、縦材61の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材61に溶接等によって接合されており、他端には横材62と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部63及び第2の連結部64の一端は、フランジ部を介して縦材61に連結されていてもよい。
ここで、
図3に示すように、第1の連結部63及び第2の連結部64は、それぞれの軸線同士がなす角度θ1が全て180度となるように縦材61に設けられている。
【0029】
複数の横材62は、河川を横切る方向に沿って設けられており、堰堤100の高さ方向に沿って並んで配置されている。隣接する横材62間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくしておくことが好ましい。また、隣接する横材62間の間隔は、捕捉体3の上端から下端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、捕捉体3の上方のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。
横材62は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。各横材62は、長手方向の端部に設けられたフランジ部を介して縦材61の第1の連結部63及び第2の連結部64に連結されている。なお、各横材62は、フランジ部を設けることなく、端部同士を溶接にて連結してもよいが、土石流衝突後の交換作業を考慮すると、フランジ部を用いた連結が好ましい。
横材62のうち、河川の幅方向における最も外側に配置された横材62は、長手方向の一方の端部がそれぞれ対向する非越流部1の側壁に取り付けられている。具体的には、
図1に示すように、横材62の端部は、架台4に連結されており、この架台4が非越流部1に埋設されることにより、各横材62は非越流部1に固定される。
【0030】
下流側ユニット7は、上流側ユニット6から見て河川の下流側に設けられており、上流側ユニット6に作用する土石流の衝撃荷重が連結ユニット8を介して伝達され、捕捉体3を支持する。
下流側ユニット7は、堰堤100を平面視した際に、河川を横切る方向に沿って設けられており、その延在方向における中央部が上流側ユニット6に向けて突出するように曲げて形成されている。具体的には、下流側ユニット7は、平面視した際に、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されている。すなわち、下流側ユニット7は、アーチ構造を採用しており、連結ユニット8を介して上流側ユニット6から伝達された土石流の衝撃荷重を圧縮力で支持する構造部材である。
下流側ユニット7は、複数の縦材71と、複数の横材72と、を備えている。
【0031】
複数の縦材71は、堰堤100の高さ方向に沿って設けられており、高さ方向に隣接する横材71が連結される。複数の縦材71は、堰堤100の幅方向に沿って並んで配置されている。隣接する縦材71間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくしておくことが好ましい。また、隣接する縦材71間の間隔は、捕捉体3の幅方向一端から他端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、捕捉体3の幅方向中央付近のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。
縦材71は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。捕捉体3においては、複数の縦材71が長手方向に連結されており、各縦材71は、長手方向の端部に設けられたフランジ部を介して互いに連結されている。例えば、
図4~
図6に示すように、捕捉体3は、三つの縦材71を備えている。なお、各縦材71は、フランジ部を設けることなく、端部同士を溶接にて連結してもよいが、土石流衝突後の交換作業を考慮すると、フランジ部を用いた連結が好ましい。
【0032】
各縦材71は、長手方向の端部間に横材72と連結する複数の連結部73,74を備えている。
具体的には、
図4に示すように、捕捉体3において最も下方に配置され、下端部が開口部2の基礎21に埋設される縦材71は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材72を連結する二つの第1の連結部73と、隣接する他方の横材72を連結する二つの第2の連結部74とを備えている。対となる第1の連結部73及び第2の連結部74は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部73及び第2の連結部74は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部73及び第2の連結部74は、縦材71の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材71に溶接等によって接合されており、他端には横材72と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部73及び第2の連結部74の一端は、フランジ部を介して縦材71に連結されていてもよい。
ここで、第1の連結部73及び第2の連結部74は、それぞれの軸線同士がなす角度θ2が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材71に設けられている。また、第1の連結部73及び第2の連結部74は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0033】
図5に示すように、捕捉体3において下から二段目に配置される縦材71は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材72を連結する三つの第1の連結部73と、隣接する他方の横材72を連結する三つの第2の連結部74とを備えている。対となる第1の連結部73及び第2の連結部74は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部73及び第2の連結部74は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部73及び第2の連結部74は、縦材71の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材71に溶接等によって接合されており、他端には横材72と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部73及び第2の連結部74の一端は、フランジ部を介して縦材71に連結されていてもよい。
ここで、第1の連結部73及び第2の連結部74は、それぞれの軸線同士がなす角度θ2が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材71に設けられている。また、第1の連結部73及び第2の連結部74は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0034】
図6に示すように、捕捉体3において最も上方に配置される縦材71は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材72を連結する五つの第1の連結部73と、隣接する他方の横材72を連結する五つの第2の連結部74とを備えている。対となる第1の連結部73及び第2の連結部74は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部73及び第2の連結部74は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部73及び第2の連結部74は、縦材71の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材71に溶接等によって接合されており、他端には横材72と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部73及び第2の連結部74の一端は、フランジ部を介して縦材71に連結されていてもよい。
ここで、第1の連結部73及び第2の連結部74は、それぞれの軸線同士がなす角度θ2が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材71に設けられている。また、第1の連結部73及び第2の連結部74は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0035】
複数の横材72は、河川を横切る方向に沿って設けられており、堰堤100の高さ方向に沿って並んで配置されている。隣接する横材72間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくしておくことが好ましい。また、隣接する横材72間の間隔は、捕捉体3の上端から下端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、捕捉体3の上方のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。横材72は、河川の流れ方向において、上流側ユニット6の横材62に対向する位置に設けられている。
横材72は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。各横材72は、長手方向の端部に設けられたフランジ部を介して縦材71の第1の連結部73及び第2の連結部74に連結されている。各横材72は、土石流の衝撃荷重を受け止める機能が求められるので、上流側ユニット6の横材62を構成する鋼管よりも径の大きな強度の高い鋼管を用いることが好ましい。なお、各横材72は、フランジ部を設けることなく、端部同士を溶接にて連結してもよいが、土石流衝突後の交換作業を考慮すると、フランジ部を用いた連結が好ましい。
横材72のうち、河川の幅方向における最も外側に配置された横材72は、長手方向の一方の端部がそれぞれ対向する非越流部1の側壁に取り付けられている。具体的には、
図1に示すように、横材72の端部は、架台4に連結されており、この架台4が非越流部1に埋設されることにより、各横材72は非越流部1に固定される。
【0036】
下流側ユニット7のうち、横材72の延在方向(軸線方向)における中央部に配置された横材72が最も上流側ユニット6の横材62に近い位置にあり、横材72の端部に向かうにつれて上流側ユニット6の横材62から離れた位置にある。このような配置となるように横材72同士を連結することで下流側ユニット7をアーチ状に形成することができる。
また、横材72は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。したがって、下流側ユニット7において、各縦材71に連なる横材72、第1の連結部73、及び第2の連結部74は、それぞれ全て同じ大きさを有するように形成されている。
さらに、縦材71に設けられている第1の連結部73及び第2の連結部74は、それぞれの軸線同士がなす角度θ2が全て同じ角度(例えば、165度程度)をなしているので、第1の連結部73及び第2の連結部74に連結された、隣接する横材72の軸線のなす角度θ2が全て等しくなっている。
【0037】
連結ユニット8は、上流側ユニット6と下流側ユニット7とを連結するものである。
連結ユニット8は、河川の流れ方向に沿って設けられており、互いに対向する上流側ユニット6の縦材61と下流側ユニット7の縦材71とを連結している。すなわち、連結ユニット8は、横材62,72と同様に、堰堤100の高さ方向に沿って並んで配置されている。したがって、隣接する連結ユニット8間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくなるように設けられている。また、隣接する連結ユニット8間の間隔は、横材62,72と同様に、捕捉体3の上端から下端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、捕捉体3の上方のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。
連結ユニット8は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。連結ユニット8は、一端部が上流側ユニット6の縦材61にフランジ部を介して連結されており、他端部が下流側ユニット7の縦材71にフランジ部を介して連結されている。また、上流側ユニット6及び下流側ユニット7の最上端においては、連結ユニット8は、縦材61と縦材71の連結に加えて、一端部が上流側ユニット6の横材62に連結されており、他端部が下流側ユニット7の横材72に連結されている。
なお、連結ユニット8は、必ずしもフランジ部を用いた連結に限らず、溶接等によって接合されていてもよい。
【0038】
架台4は、非越流部1の基礎11に立設されている。架台4は、捕捉体3に連結されており、堰堤100の完成時には、捕捉体3に連結された状態で非越流部1に埋設される。
架台4は、捕捉体3を非越流部1に強固に固定するために用いられる。
架台4は、一つの非越流部1につき、上流側ユニット6の横材62の端部に対向する位置と、下流側ユニット7の横材72の端部に対向する位置とに設けられている。架台4は、非越流部1の高さ方向に沿って複数連結されており、捕捉体3の各横材62,72を連結できる位置に設けられている。
架台4は、複数の縦部41と、複数の横部42と、を備えている。
【0039】
複数の縦部41は、堰堤100の高さ方向に沿って設けられている。縦部41は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。縦部41の両端部には、フランジ部が設けられている。各縦部41は、その軸線方向端部がフランジ部を介して互いに連結されている。最も下方に配置される縦部41は、非越流部1の基礎11(
図7参照)に直接設けられており、基礎11に埋設されている。その結果、架台4の下端部が基礎11に立設されている。
【0040】
複数の横部42は、縦部41の軸線方向の途中に縦部41に交差(直交)するように設けられており、堰堤100の高さ方向に沿って並んで配置されている。横部42は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。各横部42は、その軸線方向一端部に設けられたフランジ部を介して捕捉体3の横材62,72と連結されている。
各横部42は、一部の縦部41を貫通するように設けられており、その交差部分において縦部41に接合されている。すなわち、架台4は、縦部41を構成する鋼管と、横部42を構成する鋼管とが互いに接合されて正面視略十字状の一体化された交差管として構成されている。
各横部42は、長手方向一端部が非越流部1から開口部2に露出するように設けられており、この一端部において横材62,72と連結できるように配置されている。
架台4は、横部42における捕捉体3の横材62,72との連結部位を除いて非越流部1に埋設されている。架台4が非越流部1に埋設されることにより、各横材62,72の端部は架台4を介して非越流部1に固定され、捕捉体3が非越流部1の側壁に固定される。
架台4は、互いの縦部41の端部同士を複数連結することにより、非越流部1の高さ方向に延在している。
【0041】
<堰堤を構築する方法>
次に、堰堤100を構築する方法について説明する。
堰堤100を構築する際には、
図7に示すように、開口部2の幅方向中央近傍から両岸の非越流部1に向けて基礎21に縦材61を立設しつつ、隣接する縦材61間を横材62で連結して組み立てていく。横材62は、縦材61に設けられた第1の連結部63及び第2の連結部64に連結することで、縦材61に連結される。
また、下流側ユニット7についても、上流側ユニット6と同様に、
図7に示すように、開口部2の幅方向中央近傍から両岸の非越流部1に向けて基礎21に縦材71を立設しつつ、隣接する縦材71間を横材72で連結して組み立てていく。横材72は、縦材71に設けられた第1の連結部73及び第2の連結部74に連結することで、縦材71に連結される。さらに、上流側ユニット6の縦材61と下流側ユニット7の縦材71を連結ユニット8により連結する(第1の工程)。
【0042】
基礎21への縦材61,71の立設と、横材62,72の連結、連結ユニット8による上流側ユニット6の縦材61と下流側ユニット7の縦材71の連結を繰り返し、
図8に示すように、横材62,72の端部がそれぞれ非越流部1の施工領域に直前まで近づいたところで、非越流部1の基礎11に架台4を立設する(第2の工程)。
【0043】
非越流部1の基礎11に架台4を立設した後、
図9に示すように、非越流部1に隣接する位置まで設けた縦材61,71の連結部63,64,73,74と架台4の横部42の端部とを横材62,72により連結する。ここで、横材62,72の一端部は、フランジ部を介して連結部63,64,73,74に連結され、横材62,72の他端部は、フランジ部を介して架台4の横部42に連結される(第3の工程)。
これにより、捕捉体3の最下段の部分が完成し、この最下段における横材62は、架台4に連結されている。
【0044】
次に、
図10に示すように、非越流部1の基礎11にコンクリートを打設して非越流部1を構築する(第4の工程)。
ここで、非越流部1の基礎11には、構築済みの架台4の最も上方に配置された縦部41の上端部のフランジ部と、構築済みの架台4の横部42のフランジ部が露出するようにコンクリートが打設され、架台4の大部分が非越流部1に埋設される。
なお、第4の工程は、第1の工程から第3の工程までをさらに複数回繰り返した後に行ってもよい。すなわち、縦材61,71と横材62,72、及び架台4をさらに複数段にわたって連結してから非越流部1の基礎11にコンクリートを打設して非越流部1を構築してもよい。
【0045】
また、第4の工程における非越流部1の構築と同時、あるいは、非越流部1の構築の前後において、開口部2の基礎21にコンクリートを打設して縦材61,71の下端部をコンクリートに埋設する。
【0046】
次に、
図11に示すように、第1の工程から第3の工程を繰り返して、既に基礎21に立設された縦材61,71に二つ目の縦材61,71を連結する。すなわち、最下段の縦材61,71の上端に新たな縦材61,71を連結しつつ、隣接する縦材61,71を横材62,72で連結していく。さらに、縦材61と縦材71を連結ユニット8により連結する。
そして、横材62,72の端部がそれぞれ非越流部1の施工領域に直前まで近づいたところで、架台4の縦部41の上端に新たな架台4の縦部41を連結する。その後、非越流部1に隣接する位置まで設けた縦材61,71の連結部63,64,73,74と架台4の横部42とを横材62,72により連結する。
その後、非越流部1の上端面にコンクリートを打設して非越流部1を構築する。ここで、非越流部1の上端面には、構築済みの架台4の最も上方に配置された縦部41の上端部のフランジ部と、構築済みの架台4の横部42のフランジ部が露出するようにコンクリートが打設され、架台4の大部分が非越流部1に埋設される。
【0047】
次に、第1の工程から第3の工程を繰り返して、二つ目の縦材61,71に三つ目の縦材61,71を連結する。すなわち、二段目の縦材61,71の上端に新たな縦材61,71を連結しつつ、隣接する縦材61,71を横材62,72で連結していく。さらに、縦材61と縦材71を連結ユニット8により連結すると共に、最上端に配置された対向する横材62と横材72を連結ユニット8により連結する。
そして、横材62,72の端部がそれぞれ非越流部1の施工領域に直前まで近づいたところで、架台4の縦部41の上端に新たな架台4の縦部41を連結する。その後、非越流部1に隣接する位置まで設けた縦材61,71の連結部63,64,73,74と架台4の横部42とを横材62,72により連結する。
その後、非越流部1の上端面にコンクリートを打設して非越流部1を構築する。ここで、非越流部1の上端面には、構築済みの架台4の最も上方に配置された縦部41の上端部が完全に隠れ、構築済みの架台4の横部42のフランジ部が露出するようにコンクリートが打設され、架台4の大部分が非越流部1に埋設される。
以上の工程をもって、
図12に示すような堰堤100を構築する。
【0048】
以上のような堰堤100によれば、下流側ユニット7を構成する横材72が非越流部1に取り付けられているので、土石流に含まれる岩石や流木が上流側ユニット6及び下流側ユニット7の上端を乗り越えて捕捉体3の下方に落下しても、落下した岩石や流木が捕捉体3に衝突しにくくなり、捕捉体3の破損を抑制することができる。また、縦材71も横材72の並び方向(捕捉体3の高さ方向)に沿って立設されているので、縦材71は、横材72から下流側にはみ出すこともなく、落下した落石等が衝突することもない。
また、下流側ユニット7は、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されているので、隣接する横材72の軸線のなす角度θ2が全て等しくなる。これにより、縦材71における第1の連結部73と第2の連結部74のなす角度θ2を等しくすることができるので、縦材71に連結される第1の連結部73及び第2の連結部74を共通化することができる。これに伴い、縦材71同士を連結する横材72も同じ長さにすることができるので、下流側ユニット7を構成する横材72を共通化することができる。よって、縦材71及び横材72を何種類も製造する必要がなくなるので、製造コストの削減、品質の向上、製造効率の向上、在庫管理の簡易化を図ることができる。
また、第1の連結部73及び第2の連結部74を共通化することで、同じ縦材71に複数の第1の連結部73及び第2の連結部74を設けることができ、縦材71の長尺化を図り、縦材71の連結箇所を減らすことができる。
【0049】
また、捕捉体3は、非越流部1を構築するコンクリートに埋設された架台4に連結されているので、捕捉体3は、非越流部1に強固に固定される。これにより、捕捉体3に作用する土石流の荷重の一部を非越流部1に逃がすことができ、捕捉体3の押し抜きや引き抜きに対する耐力が向上する。
また、架台4は、ともに鋼管から形成された縦部41と横部42というシンプルな構成であるため、捕捉体3の縦材61,71及び横材62,72と同じ部材を用いることができ、連結作業を容易に行うことができる。
【0050】
<変形例>
また、
図13、
図14に示すような捕捉体3Aを備えた堰堤200としてもよい。
捕捉体3Aは、
図1~
図6に示す捕捉体3において、上流側ユニット6の構成を上流側ユニット6Aに変更したものである。以下では、捕捉体3Aにおける捕捉体3との相違点である上流側ユニット6Aについて説明する。
図13、
図14に示すように、捕捉体3Aは、上流側ユニット6Aと、下流側ユニット7Aと、連結ユニット8Aと、を備えている。
上流側ユニット6Aは、河川の上流側に設けられており、堰堤200の上流側から流れてきた土石流に含まれる岩石や流木等の物体を捕捉する。すなわち、上流側ユニット6Aは、土石流の衝撃が直接作用するユニットである。
上流側ユニット6Aは、堰堤200を平面視した際に、河川を横切る方向に沿って設けられており、その延在方向における中央部が河川の上流に向けて突出するように曲げて形成されている。具体的には、上流側ユニット6Aは、平面視した際に、その長手方向に沿った軸線が正多角形の軌跡を辿るように形成されている。すなわち、上流側ユニット6Aは、湾曲したアーチ構造を採用しており、上流側ユニット6Aの温度応力(温度変化に伴って構造物に生じる内部応力(例えば、外気温の変化による各構成部材の伸縮に伴う応力など))に対する合成応力度を小さくした構造となっている。
上流側ユニット6Aは、複数の縦材61と、複数の横材62とが連結されて構成されている。
【0051】
複数の縦材61は、堰堤200の高さ方向に沿って設けられており、高さ方向に隣接する横材62が連結される。複数の縦材61は、堰堤200の幅方向に沿って並んで配置されている。隣接する縦材61間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくしておくことが好ましい。また、隣接する縦材61間の間隔は、捕捉体3Aの幅方向一端から他端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、捕捉体3Aの幅方向中央付近のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。
縦材61は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。捕捉体3Aにおいては、複数の縦材61が長手方向に連結されており、各縦材61は、長手方向の端部に設けられたフランジ部を介して互いに連結されている。例えば、
図13に示すように、捕捉体3Aは、三つの縦材61を備えている。なお、各縦材61は、フランジ部を設けることなく、端部同士を溶接にて連結してもよいが、土石流衝突後の交換作業を考慮すると、フランジ部を用いた連結が好ましい。
【0052】
各縦材61は、長手方向の端部間に横材62と連結する複数の連結部63,64を備えている。
具体的には、捕捉体3Aにおいて最も下方に配置され、下端部が開口部2の基礎21に埋設される縦材61は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材62を連結する二つの第1の連結部63と、隣接する他方の横材62を連結する二つの第2の連結部64とを備えている。対となる第1の連結部63及び第2の連結部64は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、縦材61の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材61に溶接等によって接合されており、他端には横材62と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部63及び第2の連結部64の一端は、フランジ部を介して縦材61に連結されていてもよい。
ここで、
図14に示すように、第1の連結部63及び第2の連結部64は、それぞれの軸線同士がなす角度θ3が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材61に設けられている。また、第1の連結部63及び第2の連結部64は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0053】
捕捉体3Aにおいて下から二段目に配置される縦材61は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材62を連結する三つの第1の連結部63と、隣接する他方の横材62を連結する三つの第2の連結部64とを備えている。対となる第1の連結部63及び第2の連結部64は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、縦材61の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材61に溶接等によって接合されており、他端には横材62と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部63及び第2の連結部64の一端は、フランジ部を介して縦材61に連結されていてもよい。
ここで、第1の連結部63及び第2の連結部64は、それぞれの軸線同士がなす角度θ3が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材61に設けられている。また、第1の連結部63及び第2の連結部64は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0054】
捕捉体3Aにおいて最も上方に配置される縦材61は、長手方向端部間において、隣接する一方の横材62を連結する五つの第1の連結部63と、隣接する他方の横材62を連結する五つの第2の連結部64とを備えている。対となる第1の連結部63及び第2の連結部64は、同じ高さとなる位置に設けられている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。第1の連結部63及び第2の連結部64は、縦材61の長手方向に直交する方向に延在しており、一端が縦材61に溶接等によって接合されており、他端には横材62と連結するフランジ部が設けられている。なお、第1の連結部63及び第2の連結部64の一端は、フランジ部を介して縦材61に連結されていてもよい。
ここで、第1の連結部63及び第2の連結部64は、それぞれの軸線同士がなす角度θ3が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材61に設けられている。また、第1の連結部63及び第2の連結部64は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0055】
複数の横材62は、河川を横切る方向に沿って設けられており、堰堤200の高さ方向に沿って並んで配置されている。隣接する横材62間の間隔は、土石流の発生時に捕捉すべき岩石の径よりも小さくしておくことが好ましい。また、隣接する横材62間の間隔は、捕捉体3Aの上端から下端にわたって全て同じ間隔としてもよいし、
図13に示すように、捕捉体3Aの上方のみ間隔を狭くする等、想定される土石流の規模に応じて自由に変更可能である。横材62は、河川の流れ方向において、下流側ユニット7Aの横材72に対向する位置に設けられている。
横材62は、例えば、円筒状に形成され、長手方向に沿った軸線が直線となる鋼管から形成されている。各横材62は、長手方向の端部に設けられたフランジ部を介して縦材61の第1の連結部63及び第2の連結部64に連結されている。なお、各横材62は、フランジ部を設けることなく、端部同士を溶接にて連結してもよいが、土石流衝突後の交換作業を考慮すると、フランジ部を用いた連結が好ましい。また、第1の連結部63と第2の連結部64は、横材62でアーチ形状をなすように、その軸線のなす角度が所定の角度で縦材61に取り付けられている。横材62を連結した梁部分の曲がり具合は、横材62の本数や捕捉体3Aの幅によって決まる。
横材62のうち、河川の幅方向における最も外側に配置された横材62は、長手方向の一方の端部がそれぞれ対向する非越流部1の側壁に取り付けられている。具体的には、
図9に示すように、横材62の端部は、架台4に連結されており、この架台4が非越流部1に埋設されることにより、各横材62は非越流部1に固定される。なお、架台4の構成は、上述した
図1に示す構成と同じであるため、説明を省略する。
【0056】
下流側ユニット7Aは、上流側ユニット6Aから見て河川の下流側に設けられており、上流側ユニット6Aに作用する土石流の衝撃荷重が連結ユニット8Aを介して伝達され、捕捉体3Aを支持する。
下流側ユニット7Aは、堰堤200を平面視した際に、河川を横切る方向に沿って設けられており、その延在方向における中央部が上流側ユニット6Aに向けて突出するように曲げて形成されている。すなわち、下流側ユニット7Aは、湾曲したアーチ構造を採用しており、連結ユニット8Aを介して上流側ユニット6Aから伝達された土石流の衝撃荷重を圧縮力で支持する構造部材である。
下流側ユニット7Aは、複数の縦材71と、複数の横材72とが連結されて構成されている。
なお、下流側ユニット7Aの構成は、上記の実施の形態における下流側ユニット7と同様であるため、詳細な説明を省略するが、
図14に示すように、各縦材71に設けられている第1の連結部73及び第2の連結部74は、それぞれの軸線同士がなす角度θ4が全て同じ角度(例えば、165度程度)となるように縦材71に設けられている。また、第1の連結部73及び第2の連結部74は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。
【0057】
連結された横材62,72は、その延在方向(横材62,72の軸線方向)における中央部が河川の上流側に向けて最も突出するように曲げられてアーチ状に形成されている。横材62,72は、平面視した際に、河川の流れ方向において互いに対向する横材62と横材72とが一端から他端にわたってほぼ等間隔となるように設けられている。すなわち、河川の流れ方向に沿って対向する横材62と横材72とが同じ長さの複数の連結ユニット8Aによって連結されている。各縦材61は、各横材62同士を連結し、各縦材71は、各横材72同士を連結する。
また、横材62,72は、長手方向に沿った長さが全て同じ長さとなるように形成されている。したがって、上流側ユニット6A及び下流側ユニット7Aにおいて、各縦材61,71に連なる横材62,72、第1の連結部63,73、及び第2の連結部64,74は、それぞれ全て同じ大きさを有するように形成されている。
さらに、縦材61,71に設けられている第1の連結部63,73及び第2の連結部64,74は、それぞれの軸線同士がなす角度θ3及び角度θ4が全て同じ角度(例えば、165度程度)をなしているので、第1の連結部63,73及び第2の連結部64,74に連結された、隣接する横材62,72の軸線のなす角度θ3,θ4が全て等しくなっている。
【0058】
連結ユニット8Aは、上流側ユニット6Aと下流側ユニット7Aとを連結するものである。
連結ユニット8Aは、河川の流れ方向に沿って設けられており、互いに対向する上流側ユニット6Aの縦材61と下流側ユニット7Aの縦材71とを連結している。
なお、連結ユニット8Aの構成は、上記の実施の形態における連結ユニット8と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
以上のように、堰堤200によれば、堰堤100と同様の効果を奏するほか、上流側ユニット6Aは、非越流部1に固定されているので、土石流による衝撃荷重を非越流部1に逃がすことができる。その際、温度応力を検討すると、上流側ユニット6Aが直線状に形成されている場合には合成応力度が大きくなる。ハイダムのように、堰堤の高さや幅が大きくなるほど、温度応力は大きくなる。
しかし、
図13~
図14に示す捕捉体3Aのように、上流側ユニット6Aは曲げて形成されているので、両端部が架台4を介して非越流部1に固定されている場合であっても、温度応力に対する合成応力度を小さくすることができる。これにより、堰堤200の強度を高めつつ、温度応力に対する合成応力度を小さくすることができ、上流側ユニット6Aの鋼管径を小さくすることもできるようになる。
また、上流側ユニット6Aと下流側ユニット7Aを捕捉体3Aの幅方向全域にわたって等間隔に配置し、第1の連結部63,73と第2の連結部64,74がなす角度を等しくすることで、上流側ユニット6Aと下流側ユニット7Aの縦材61,71、横材62,72、第1の連結部63,73及び第2の連結部64,74の部材の共通化、連結ユニット8Aの共通化を図ることができる。これに伴い、上流側ユニット6Aの上端と下流側ユニット7Aの上端とを連結して、上流側ユニット6Aと下流側ユニット7Aの間への岩石や流木の落下を防ぐカバー部材の設置も容易にすることができる。
【0060】
<その他>
なお、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更してもよい。
例えば、捕捉体3の下流側ユニット7は、その長手方向に沿った軸線が円弧の軌跡を辿るように形成されていてもよい。この場合、第1の連結部73、第2の連結部74、及び横材72は、同じ曲率で形成する必要がある。
また、捕捉体3は、ハイダムと呼ばれる堰堤100に設けられた例を説明したが、ハイダムではない堰堤に設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 非越流部
11 基礎
2 開口部
21 基礎
3、3A 捕捉体
4 架台
41 縦部
42 横部
6、6A 上流側ユニット
61 縦材
62 横材
63 第1の連結部
64 第2の連結部
7、7A 下流側ユニット
71 縦材
72 横材
73 第1の連結部
74 第2の連結部
8、8A 連結ユニット
100、200 堰堤