(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115528
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】メッシュ構造体
(51)【国際特許分類】
F15D 1/02 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
F15D1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017780
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】縄野 智弘
(72)【発明者】
【氏名】世田 裕太郎
(57)【要約】
【課題】メッシュ部材の整流効果を向上させることができるメッシュ構造体を提供する。
【解決手段】メッシュ構造体1は、第1部材10と、第2部材20と、メッシュ部材30とを備える。第1部材10には、流体が流れる第1開口10aが形成されている。第2部材20は、第1部材10に固着されるものである。第2部材20には、第1開口10aに通じる第2開口20aが形成されている。メッシュ部材30は、第1部材10と第2部材20との間に挟まれて配置されていると共に、第1開口10aから第2開口20aに流れる流体が通過する。第2部材20には、メッシュ部材30にテンションTを加えるためのテンション付与部としての突部21が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる第1開口が形成されている第1部材と、
前記第1部材に固着され、前記第1開口に通じる第2開口が形成されている第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に挟まれて配置されていると共に、前記第1開口から前記第2開口に流れる前記流体が通過するメッシュ部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記メッシュ部材にテンションを加えるためのテンション付与部が形成されている、メッシュ構造体。
【請求項2】
前記第1部材と前記第2部材との一方には、突部が形成され、
前記第1部材と前記第2部材との他方には、前記突部が嵌め込まれる溝部が形成されている、請求項1に記載のメッシュ構造体。
【請求項3】
前記突部が前記溝部に対して溶着されることにより、前記第2部材は、前記第1部材に固着される、請求項2に記載のメッシュ構造体。
【請求項4】
前記突部は、前記メッシュ部材を押圧して、前記メッシュ部材にテンションを加える前記テンション付与部として構成される、請求項2又は3に記載のメッシュ構造体。
【請求項5】
前記第1部材と前記第2部材との一方には、リブが形成され、
前記リブは、前記メッシュ部材を押圧して、前記メッシュ部材にテンションを加える前記テンション付与部として構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のメッシュ構造体。
【請求項6】
前記メッシュ部材は、金属製の線材が編み込まれて形成されている金網を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のメッシュ構造体。
【請求項7】
前記メッシュ部材は、前記第1開口から前記第2開口に流れる前記流体を整流可能に形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のメッシュ構造体。
【請求項8】
前記メッシュ部材は、円盤状に形成され、
前記テンション付与部は、前記メッシュ部材に対して、円盤状の径方向にテンションを加えるように形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のメッシュ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上側部材と、上側部材に溶着されて固定される下側部材と、それら2部材に挟み込まれるメッシュプレート(板状部材)とを備える挟持構造が開示されている。上側部材及び下側部材の内部には、エアが流れる流路が形成されている。メッシュプレートは、エアが通過することにより、下側部材から上側部材に流れるエアを整流するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の挟持構造を製造する場合、上側部材と下側部材とでメッシュプレートを挟みつつ、上側部材と下側部材とを溶着する。このため、メッシュプレートがたわんだり、ゆがんだりする場合がある。この結果、特許文献1の挟持構造では、メッシュプレートのエアの整流能力が不十分となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、メッシュ部材の整流効果を向上させることができるメッシュ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るメッシュ構造体は、
流体が流れる第1開口が形成されている第1部材と、
前記第1部材に固着され、前記第1開口に通じる第2開口が形成されている第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に挟まれて配置されていると共に、前記第1開口から前記第2開口に流れる前記流体が通過するメッシュ部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記メッシュ部材にテンションを加えるためのテンション付与部が形成されている。
【0007】
前記第1部材と前記第2部材との一方には、突部が形成され、
前記第1部材と前記第2部材との他方には、前記突部が嵌め込まれる溝部が形成されていてもよい。
【0008】
前記突部が前記溝部に対して溶着されることにより、前記第2部材は、前記第1部材に固着されていてもよい。
【0009】
前記突部は、前記メッシュ部材を押圧して、前記メッシュ部材にテンションを加える前記テンション付与部として構成されていてもよい。
【0010】
前記第1部材と前記第2部材との一方には、リブが形成され、
前記リブは、前記メッシュ部材を押圧して、前記メッシュ部材にテンションを加える前記テンション付与部として構成されていてもよい。
【0011】
前記メッシュ部材は、金属製の線材が編み込まれて形成されている金網を有していてもよい。
【0012】
前記メッシュ部材は、前記第1開口から前記第2開口に流れる前記流体を整流可能に形成されていてもよい。
【0013】
前記メッシュ部材は、円盤状に形成され、
前記テンション付与部は、前記メッシュ部材に対して、円盤状の径方向にテンションを加えるように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テンション付与部がメッシュ部材にテンションを加えつつ、第2部材は第1部材に固着されている。これにより、本発明に係るメッシュ構造体は、メッシュ部材の整流効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るメッシュ構造体の断面図である。
【
図2】実施の形態1に係るメッシュ構造体の分解斜視図である。
【
図3】比較例に係るメッシュ構造体の断面図である。
【
図4】実施の形態2に係るメッシュ構造体の断面図である。
【
図5】実施の形態2に係るメッシュ構造体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係るメッシュ構造体1について、図面を参照しながら説明する。なお、
図1に示すように、理解を容易にするために、相互に直交するXYZ座標を設定し、適宜参照する。
【0017】
メッシュ構造体1は、例えば、車両の一部として用いられるものである。このメッシュ構造体1には、
図1に示すように、エンジンに供給されるエアが流れる流路Cが形成されている。メッシュ構造体1は、
図1及び
図2に示すように、第1部材10と、第2部材20と、メッシュ部材30と、エアフローメータ(図示なし)とを備える。
【0018】
第1部材10は、例えば、樹脂からなる。第1部材10は、中心軸Aを中心とする円筒形状の部分を含む部材である。第1部材10には、-Z方向に開口すると共に、エアが流れる第1開口10aが形成されている。第1開口10aは、円形の開口となるように形成されている。第1部材10には、溝11が形成されている。
【0019】
溝11は、第1部材10の下側(-Z側)の端面に形成されている。溝11は、中心軸Aを中心とする円周に沿って円状に形成されている。
【0020】
第2部材20は、第1部材10に溶着されることで固着される部材である。第2部材20は、例えば、第1部材10に溶着可能な樹脂からなる。第2部材20は、中心軸Aを中心とする円筒形状の部分を含む部材である。第2部材20には、第1開口10aに通じると共に、第1開口10aからのエアが流れる第2開口20aが形成されている。第2開口20aは、+Z方向に開口することで、第1開口10aに対向して形成されている。第2開口20aは、円形の開口となるように形成されている。第2開口20aの近傍には、中心軸Aに直交する方向である径方向Dに張り出したフランジ部20bが形成されている。第2部材20には、突部21が形成されている。
【0021】
突部21は、第2部材20のフランジ部20bから+Z方向に突出して設けられている。突部21は、溝11に嵌まり込むことが可能な形状に形成されており、中心軸Aを中心とする円周に沿って円環状に形成されている。突部21は、溝11に嵌まりつつ、メッシュ部材30を+Z方向に押圧して、メッシュ部材30にテンションTを加えるテンション付与部として構成される。
【0022】
上述のように構成されている突部21及び溝11は、第1部材10及び第2部材20を溶着する部分として用いられる。このため、突部21が溝11に対して溶着されることにより、第1部材10及び第2部材20は互いに固着される。このとき、突部21と溝11との間には、メッシュ部材30の外周の端部が挟み込まれる。
【0023】
メッシュ部材30は、本実施の形態1においては、金属製の線材が編み込まれて形成されている金網であり、円盤状に形成されている。メッシュ部材30は、第1部材10と第2部材20との間に挟まれて配置されている。また、メッシュ部材30は、第2部材20の突部21の押圧により、中心軸Aに直交する方向であると共に、円盤状の径方向DにテンションTが加えられる。このメッシュ部材30には、第1部材10の第1開口10aから第2部材20の第2開口20aに流れたり、第2部材20の第2開口20aから第1部材10の第1開口10aに流れたりするエアが通過して整流する。
【0024】
エアフローメータは、第1部材10及び第2部材20のいずれかに取り付けられ、メッシュ構造体1の流路Cを流れるエアの量を計測する。エアフローメータの計測値は、図示しない制御手段にフィードバックされ、エンジンを電子制御する際の情報として用いられる。
【0025】
以上、説明したように、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1においては、テンション付与部として構成される突部21がメッシュ部材30にテンションTを加えつつ、第2部材20が第1部材10に固着されている。このため、メッシュ部材30は、径方向Dに力が加わり、メッシュ部材30がたわんだり、ゆがんだりすることを抑制することができる。また、メッシュ部材30の編み目部分がほつれることを抑制することができる。この結果、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1は、メッシュ部材30の整流能力を向上させることができる。
【0026】
例えば、
図3に示すように、比較例に係るメッシュ構造体1Aにおいては、メッシュ部材30は、第1部材10のメッシュ部材取付け面12に対して、矢印A2に従って第1部材10に取り付けられる。この比較例においては、メッシュ部材30は、メッシュ部材取付け面12に接着剤によって固定される。メッシュ部材30にはテンションTが加わらないため、メッシュ部材30がたわんだり、ゆがんだりするおそれがある。また、メッシュ部材30の編み目部分がほつれることがある。この結果、メッシュ部材30を通過するエアに乱流が生じやすくなる。ひいては、比較例に係るメッシュ構造体1Aにおいては、メッシュ部材30の整流能力が低下するおそれがある。これにより、エアフローメータの検知精度も低下するおそれがある。
【0027】
これに対して、
図1及び
図2に示すように、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1において、メッシュ部材30は、テンションTが加わるため、メッシュ部材30がたわんだり、ゆがんだりすることを抑制することができる。また、メッシュ部材30の編み目部分がほつれることを抑制することができる。この結果、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1は、メッシュ部材30の整流能力を向上させることができ、エアフローメータの検知精度を向上させることができる。また、メッシュ構造体1は、エアフローメータの検知のばらつきを抑制することができる。
【0028】
また、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1においては、比較例に係るメッシュ構造体1Aに比べて、メッシュ構造体1を製造する際のメッシュ部材30の接着工程を割愛することができる。これにより、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1は、その製造工程数を削減することができると共に、製造効率を向上させることができる。ひいては、メッシュ構造体1の製造コストを抑制することができる。
【0029】
また、本実施の形態1に係るメッシュ構造体1においては、メッシュ部材30に加えるテンションTを大きくしたり小さくしたりする調整を容易に行うことができる。
【0030】
実施の形態2.
上記実施の形態1に係るメッシュ構造体1においては、突部21がメッシュ部材30を押圧して、メッシュ部材30にテンションTを加えるテンション付与部として構成されている。しかしながら、これに限られない。テンション付与部は、突部21以外の構造のものであってもよい。以下、異なる構造のテンション付与部を備えるメッシュ構造体2について、
図4及び
図5を用いて説明する。なお、実施の形態1との相違点を主に説明し、説明した相違点以外は、実施の形態1と同一又は同等のものとする。
【0031】
メッシュ構造体2は、
図4及び
図5に示すように、第1部材10と、第2部材20と、メッシュ部材30と、エアフローメータ(図示なし)とを備える。
【0032】
第1部材10、メッシュ部材30、及びエアフローメータは、実施の形態1のものと同等のものである。
【0033】
第2部材20には、突部21に加えて、リブ22が形成されている。リブ22は、第2部材20の第2開口20aの縁から+Z方向に突出して設けられている。リブ22は、中心軸Aを中心とする円周に沿って円環状に形成されている。リブ22は、メッシュ部材30を+Z方向に押圧して、メッシュ部材30にテンションTを加えるテンション付与部として構成される。なお、実施の形態2の場合、第2部材20には、突部21が形成されているが、この突部21は、テンション付与部としては構成されていない。
【0034】
以上、説明したように、本実施の形態2に係るメッシュ構造体2においても、テンション付与部として構成されるリブ22がメッシュ部材30にテンションTを加えつつ、第2部材20は第1部材10に固着されている。このため、メッシュ部材30は、径方向Dに力が加わり、メッシュ部材30がたわんだり、ゆがんだりすることを抑制することができる。また、メッシュ部材30の編み目部分がほつれることを抑制することができる。この結果、本実施の形態2に係るメッシュ構造体2は、メッシュ部材30の整流能力を向上させることができ、エアフローメータの検知精度を向上させることができる。また、メッシュ構造体2は、エアフローメータの検知のばらつきを抑制することができる。
【0035】
また、本実施の形態2に係るメッシュ構造体2においても、メッシュ部材30に加えるテンションTを大きくしたり小さくしたりする調整を容易に行うことができる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されるものではない。
【0037】
例えば、上記実施の形態1においては、
図1及び
図2に示すように、突部21は、第2部材20に形成されていると共に、溝11は、第1部材10に形成されている。しかしながら、これに限られない。突部21は、第1部材10に形成されていると共に、溝11は、第2部材20に形成されていてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態2においては、
図4及び
図5に示すように、リブ22は、第2部材20に形成されている。しかしながら、これに限られない。リブ22は、第1部材10に形成されていてもよい。
【0039】
また、上記実施の形態1、2においては、
図2及び
図5に示すように、メッシュ部材30は、金属製の線材が編み込まれて形成されている円形状の金網である。しかしながら、これに限られない。メッシュ部材30は、その一部が、金属製の線材が編み込まれて形成されている円盤状の金網であればよい。
【0040】
また、上記実施の形態1、2において、エアは、第1部材10から第2部材20側に流れてもよいし、第2部材20から第1部材10側に流れてもよい。
【0041】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0042】
1,1A,2:メッシュ構造体
10:第1部材
10a:第1開口
11:溝
12:メッシュ部材取付け面
20:第2部材
20a:第2開口
20b:フランジ部
21:突部
22:リブ
30:メッシュ部材
A:中心軸
C:流路
D:径方向
A2:矢印
T:テンション