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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115531
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】超純水製造装置及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20230814BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20230814BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230814BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20230814BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230814BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20230814BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/32
B01D19/00 H
B01D61/00
C02F1/44 J
C02F9/02
C02F9/12
C02F9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017787
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】市原 史貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【テーマコード(参考)】
4D006
4D011
4D025
4D037
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA32
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB62
4D006PC01
4D011AA17
4D025AA01
4D025AB02
4D025BA08
4D025BA13
4D025BA24
4D025BB04
4D025DA01
4D025DA04
4D025DA05
4D037AA01
4D037AB01
4D037AB02
4D037BA18
4D037CA03
4D037CA15
(57)【要約】
【課題】超純水製造装置において、リターンラインを流れる超純水の圧力エネルギーを有効に利用して、省エネルギーを実現する。
【解決手段】超純水製造装置1Aは、超純水を製造するための少なくとも一つの水処理装置と、少なくとも一つの水処理装置が設けられ、ユースポイントP.O.U.に接続され、ユースポイントP.O.U.に超純水を供給する母管L1と、ユースポイントP.O.U.で使用されない超純水を母管L1に戻すリターンラインL2と、リターンラインL2に設けられた少なくとも一つの水力発電装置21と、少なくとも一つの水力発電装置21をバイパスするバイパスラインL5と、バイパスラインL5に設けられた背圧制御弁V2と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水を製造するための少なくとも一つの水処理装置と、
前記少なくとも一つの水処理装置が設けられ、ユースポイントに接続され、前記ユースポイントに前記超純水を供給する母管と、
前記ユースポイントで使用されない超純水を前記母管に戻すリターンラインと、
前記リターンラインに設けられた少なくとも一つの水力発電装置と、
前記少なくとも一つの水力発電装置をバイパスするバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられた背圧制御弁と、
を有する超純水製造装置。
【請求項2】
前記母管に設けられたポンプを有し、前記ユースポイントにおける前記超純水の圧力が所定の範囲内に収まるように前記ポンプが制御される、請求項1に記載の超純水製造装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの水力発電装置で発電された電力で作動する電気作動式機械を有する、請求項1または2に記載の超純水製造装置。
【請求項4】
前記電気作動式機械は前記少なくとも一つの水力発電装置から供給された電力で作動し、前記少なくとも一つの水力発電装置からの電源供給異常時に外部電源で作動する、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項5】
前記電気作動式機械は外部電源で作動し、前記外部電源からの電源供給異常時に、前記少なくとも一つの水力発電装置から供給された電力で作動する、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項6】
蓄電池を有し、
前記電気作動式機械は前記少なくとも一つの水力発電装置で発電された電力で作動し、前記少なくとも一つの水力発電装置からの電力供給異常時に前記蓄電池で作動する、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項7】
蓄電池を有し、
前記電気作動式機械は前記蓄電池で作動し、前記蓄電池からの電力供給異常時に、前記少なくとも一つの水力発電装置で発電された電力で作動する、請求項3に記載の超純水製造装置。
【請求項8】
前記リターンラインの、前記バイパスラインの分岐部と前記少なくとも一つの水力発電装置との間に設けられ、前記少なくとも一つの水力発電装置に供給する超純水の流量を制御する流量制御弁を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項9】
前記母管に設けられた限外ろ過膜装置を有し、前記少なくとも一つの水力発電装置は前記限外ろ過膜装置の濃縮水で駆動される、請求項1から8のいずれか1項に記載の超純水製造装置。
【請求項10】
母管に設けられた少なくとも一つの水処理装置によって超純水を製造することと、
前記少なくとも一つの水処理装置で製造された前記超純水を、前記母管からユースポイントに供給することと、
前記ユースポイントで使用されない超純水を、少なくとも一つの水力発電装置が設けられ、前記母管に接続されたリターンラインを通して、前記母管に戻すことと、
前記少なくとも一つの水力発電装置をバイパスし背圧制御弁が設けられたバイパスラインに超純水の一部を供給しながら、前記少なくとも一つの水力発電装置で発電することと、を有する超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置と超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶デバイスの製造プロセスでは、洗浄工程など様々な用途に、不純物が高度に除去された超純水が使用されている。超純水は、一般的には、原水(河川水、地下水、工業用水など)を、前処理システム、1次純水システム及び2次純水システム(サブシステム)で順次処理することにより製造される。サブシステムの母管に沿って、超純水を製造するための水処理装置が設けられている。水処理装置で製造された超純水は母管からユースポイント(P.O.U.)に供給される。ユースポイントで使用されなかった超純水は、リターンラインを通って母管に戻される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-030087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ユースポイントにおける超純水の圧力は所定の範囲内に収めることが要求されている。通常、ユースポイントの圧力は母管とリターンラインの合流部の圧力より高いため、リターンラインを流れる超純水は、母管との合流部の上流側で減圧される。しかし、リターンラインを流れる超純水の圧力エネルギーは有効利用されていない。
【0005】
本発明は、リターンラインを流れる超純水の圧力エネルギーを有効に利用して、省エネルギーを実現する超純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超純水製造装置は、超純水を製造するための少なくとも一つの水処理装置と、少なくとも一つの水処理装置が設けられ、ユースポイントに接続され、ユースポイントに超純水を供給する母管と、ユースポイントで使用されない超純水を母管に戻すリターンラインと、リターンラインに設けられた少なくとも一つの水力発電装置と、少なくとも一つの水力発電装置をバイパスするバイパスラインと、バイパスラインに設けられた背圧制御弁と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リターンラインを流れる超純水の圧力エネルギーを有効に利用して、省エネルギーを実現する超純水製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。
図2】背圧弁の概略構成図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。
図4】実施例の超純水製造装置の概略構成図である。
図5】実施例における水力発電装置の運転データである。
図6】実施例におけるイオン交換装置の運転データである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に述べる実施形態は、リターンラインに設けられた水力発電装置で発電を行い、得られた電力で様々な機器を作動させるものである。水力発電装置で得られた電力の使用方法や蓄電池の使用方法等についての考えられるパターンを表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超純水製造装置1Aのサブシステムの概要を示している。サブシステムは、1次純水システム(図示せず)で製造された純水から、ユースポイントP.O.U.に供給される超純水を製造するためのシステムで、2次純水システムとも呼ばれる。本発明は超純水製造装置に関するものであるが、サブシステムの構成に特徴がある。このため、以下の超純水製造装置1Aについての説明は、特記ない限りサブシステムを対象とし、サブシステムを超純水製造装置1Aと称することがある。
【0012】
超純水製造装置1Aのサブシステムは、ユースポイントP.O.U.に接続された母管L1と、母管L1上に設けられ、超純水を製造するための少なくとも一つの水処理装置と、ユースポイントP.O.U.で使用されない(より正確には、使用されなかった)超純水を母管L1に戻すリターンラインL2と、を有している。母管L1上には、純水タンク11、純水供給ポンプ12、熱交換器13、紫外線酸化装置14、イオン交換装置15、膜脱気装置16、ブースターポンプ17、限外ろ過膜装置18が、記載された順序で、純水の流通方向Dに沿って直列に配置されている。紫外線酸化装置14、イオン交換装置15、膜脱気装置16、限外ろ過膜装置18は上述の水処理装置の例である。各ユースポイントP.O.U.に超純水を供給する複数の供給ラインL3が、母管L1から分岐している。各ユースポイントP.O.U.で使用されなかった超純水を回収する複数の回収ラインL4が、リターンラインL2に合流している。リターンラインL2は純水タンク11に接続されている。回収ラインL4からリターンラインL2に流入した超純水は、リターンラインL2と純水タンク11を通って、母管L1に戻される。
【0013】
純水タンク11には、1次純水システムで製造された純水が貯蔵されている。純水供給ポンプ12は、純水タンク11に貯留された純水を熱交換器13に供給する。紫外線酸化装置14は、熱交換器13で温度調整された純水に紫外線を照射し、純水に含まれる有機物を分解する。イオン交換装置15は、純水中のイオン成分を除去する。イオン交換装置15は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混床充填された非再生型のカートリッジポリッシャーである。膜脱気装置16は純水の脱気、すなわち純水に含まれる溶存酸素や二酸化炭素の除去を行う。ブースターポンプ17は、例えばユースポイントP.O.U.が高い場所に設けられている場合に、純水を加圧するために設けられている。ブースターポンプ17は、ユースポイントP.O.U.の位置によっては省略することができる。ブースターポンプ17の下流に、主にブースターポンプ17で発生した微粒子や粒子状成分を除去するためのイオン交換装置(図示せず)を設けてもよい。限外ろ過膜装置18は、純水中に含まれる微粒子を最終的に除去する。限外ろ過膜装置18としては、分画分子量が4000~6000程度の膜を用いたものが挙げられ、これによって微小な微粒子を効率的に除去することができる。紫外線酸化装置14とイオン交換装置15との間に、紫外線照射によって発生した過酸化水素を分解する過酸化水素除去装置(図示せず)を設けてもよい。過酸化水素を除去することで、後段のイオン交換装置15が酸化性物質によってダメージを受けることが防止される。
【0014】
母管L1の、限外ろ過膜装置18とユースポイントP.O.U.との間には、第1の流量計F1が配置されている。リターンラインL2の、母管L1との接続部S1と純水タンク11との間には、第2の流量計F2が配置されている。第1の流量計F1はユースポイントP.O.U.に供給される超純水の流量を測定する。第2の流量計F2はリターンラインL2を流れる超純水の流量を測定する。母管L1の、限外ろ過膜装置18とユースポイントP.O.U.との間には、第1の圧力計P1が配置されている。母管L1の、最下流の供給ラインL3の分岐部S2とリターンラインL2との接続部S1との間には、第2の圧力計P2が配置されている。第1の圧力計P1はユースポイントP.O.U.に供給される超純水の圧力を測定する。第2の圧力計P2はユースポイントP.O.U.の下流側における超純水の圧力を測定する。イオン交換装置15の入口と出口にはそれぞれ、純水の比抵抗を測定する第1の比抵抗計C1と第2の比抵抗計C2が設けられている。第1の比抵抗計C1と第2の比抵抗計C2の測定結果から、イオン交換装置15のイオン除去性能を監視することができる。比抵抗計の代わりに実施例で述べる導電率計を用いることもできる。
【0015】
一般に、ユースポイントP.O.U.における超純水の圧力は第1の所定の範囲内に収めることが要求されている。ユースポイントP.O.U.における超純水の圧力が第1の所定の範囲内に収まっているかは、第2の圧力計P2の測定値が第1の所定の範囲に対応した第2の所定の範囲内(0.1~0.7MPa(好ましくは0.2~0.6MPa))にあるかどうかで判断される。そして、第2の圧力計P2の測定値が第2の所定の範囲内となるように、ブースターポンプ17(ブースターポンプ17がない場合は純水供給ポンプ12)の流量が、第1の圧力計P1の測定値に基づき制御される。制御は第1の圧力計P1とブースターポンプ17または純水供給ポンプ12とに接続された制御装置(図示せず)によって行われる。
【0016】
上記の通り、ユースポイントP.O.U.に供給される超純水はブースターポンプ17または純水供給ポンプ12で加圧されることから、ユースポイントP.O.U.に供給される超純水の圧力はリターンラインL2の母管L1との合流部(本実施形態では純水タンク11)の圧力より一般的に高くなる。従って、ユースポイントP.O.U.における超純水の圧力は、合流部の圧力より高い一定の圧力(第1の所定の圧力)に維持する必要がある。この目的で、リターンラインL2から分岐するバイパスラインL5に、背圧制御弁V2が設けられている。すなわち、通常は、ユースポイントP.O.U.に送られる超純水がブースターポンプ17または純水供給ポンプ12で昇圧され、昇圧された超純水の圧力(背圧制御弁V2の1次側圧力)が背圧制御弁V2で一定の値に維持される。背圧制御弁V2に供給される超純水の流量に対する水力発電装置21に供給される超純水の流量の比は、ユースポイントP.O.U.での使用量と後述する水力発電装置21の仕様によって選択することが好ましい。なお、母管L1の、最下流の供給ラインL3の分岐部S2とリターンラインL2との接続部S1との間に、第1の弁V1が配置されている。第1の弁V1の開度を調整することで母管L1を流れる超純水の流量を調整し、それによってユースポイントP.O.U.の圧力を制御することも可能である。
【0017】
本実施形態では、背圧制御弁V2は背圧弁30とされている。図2に背圧弁30の概略構成を示す。背圧弁30は、弁箱31と、弁箱31の内部に収容された内部箱体32と、内部箱体32の開口38を開閉可能に設けられた弁体33と、弁箱31の内部に設けられ、弁体33を保持する可撓性の隔壁34と、隔壁34の外側で隔壁34に固定された第1のばね35と、弁体33の先端と内部箱体32の底部とに固定された第2のばね36と、を有する。弁箱31は上流側(1次側)と連通しており、内部箱体32は下流側(2次側)と連通している。上流側(1次側)の超純水は弁箱31の入口開口37から弁箱31に流入する。図2(a)に示すように、第1のばね35と第2のばね36の合計付勢力によって弁体33が内部箱体32の開口38を閉じているため、超純水が内部箱体32に流入することが防止される。上流側(1次側)の圧力が上昇すると、図2(b)に示すように、弁箱31の内部の圧力が第1のばね35と第2のばね36の合計付勢力に打ち勝ち、弁体33が内部箱体32の開口38を開き、超純水が内部箱体32に流入する。これによって、上流側(1次側)の超純水の圧力が下流側(2次側)に伝えられる。このように、背圧弁30は上流側の圧力が所定の設定値を超えると、その圧力を下流側に逃がす。しかし、上流側の圧力が所定の設定値以下であるときは、背圧弁30は閉じたままであるため、上流側(1次側)の超純水の圧力が設定値を下回ることが防止される。
【0018】
背圧制御弁V2として調節弁(コントロールバルブ)を用いることもできる。具体的には、リターンラインL2に第3の圧力計P3(図1に破線で示す)を設け、第3の圧力計P3と調節弁V2を調節器(図示せず)で接続する。第3の圧力計P3は、調節弁V2とユースポイントP.O.U.との間の圧力を測定する。調節器は第3の圧力計P3からの圧力信号を受信し、第3の圧力計P3で測定した圧力が所定の範囲に維持されるように、調節弁V2の開度を制御する。
【0019】
背圧制御弁V2を設ける結果、リターンラインL2を流れる超純水は、母管L1との合流部(純水タンク11)の上流側で減圧される。合流部の圧力は純水タンク11の耐圧性能を下回る値に設定される。しかしながら、リターンラインL2を流れる超純水の圧力エネルギーは有効利用されているとはいえない。一例では、超純水は背圧制御弁V2で約0.5MPa減圧される。すなわち、約0.5MPaに相当する圧力エネルギーが消失している。この値はユースポイントP.O.U.と純水タンク11の設置レベルの差や配管の圧損によって変わり得るが、一般的に言えば、超純水がユースポイントP.O.U.から純水タンク11に戻る過程で、数十mの水頭に相当する圧力エネルギーが仕事をすることなく消失していることになる。
【0020】
そこで、本実施形態の超純水製造装置1Aは、リターンラインL2を流れる超純水の圧力エネルギーを電力として回収するための、少なくとも一つの水力発電装置21(以下、単に水力発電装置21という場合がある)を有している。水力発電装置21はリターンラインL2に設けられ、リターンラインL2を流れる超純水を利用して発電を行う。発電された電力は以下に述べるように、様々な用途に利用される。このような水力発電装置21により、リターンラインL2を流れる超純水の圧力エネルギーを超純水製造装置1Aの他の設備のために利用することができ、超純水製造装置1A全体としてエネルギー効率を向上させることができる。
【0021】
水力発電装置21は、水車22と、水車22に接続された発電機23と、を有する。超純水の圧力エネルギー(位置エネルギーや運動エネルギー)を電気エネルギーに変換できるものであれば、水車22の構成に特に制限はなく、超純水の流量や要求される発電量に応じて公知の適切な水車22を用いることができる。中でも、超純水製造装置1Aにおける一般的なリターンラインL2の流量や水車22の有効落差を踏まえると、リターンラインL2を流れる超純水の流れを受けて羽根車が回転する羽根車式水車が好ましい。羽根車式水車の例として、フランシス水車が挙げられる。特に、羽根車の回転数から超純水の流量を検出するように構成されたものが好ましい。このような水車22を用いることで、水車22の近傍に流量計を設置することが不要になる。また、発電機23の種類にも特に制限はなく、直流発電機と交流発電機のいずれも用いることができる。ただし、実施例で述べるように、発電機23の出力を変換するパワーコンディショナー(図示せず)を必要に応じて設ける場合がある。
【0022】
水力発電装置21と背圧制御弁V2は並列に設けられている。具体的には、水力発電装置21の上流でリターンラインL2から分岐し、水力発電装置21の下流でリターンラインL2に合流し、水力発電装置21をバイパスするバイパスラインL5が設けられ、バイパスラインL5上に背圧制御弁V2が設けられている。背圧制御弁V2は上述のように背圧制御弁V2の上流側の圧力を維持する。これによって、水力発電装置21を設置した場合でも、ユースポイントP.O.U.に供給される超純水の圧力の変動を無視できるレベルに収められる。
【0023】
リターンラインL2の、バイパスラインL5の分岐部S3と水力発電装置21の水車22との間に、流量制御弁V3が設けられている。流量制御弁V3は水力発電装置21の水車22に供給する超純水の流量を制御する。リターンラインL2を流れる超純水の流量はユースポイントP.O.U.での超純水の使用量によって変動する。リターンラインL2を流れる超純水の流量が増えた場合は流量制御弁V3の開度を絞り、超純水の流量が減った場合は流量制御弁V3の開度を増加する。これによって、水力発電装置21の水車22に供給される超純水の流量を適正な範囲に制御することができる。
【0024】
水力発電装置21は複数基設けることができる。複数の水力発電装置21は直列に接続してもよく、並列に接続してもよい。直列接続する場合、複数の水車22に供給される超純水の流量は同じであるが、水車22によって有効落差が異なり、複数の仕様の水車22を準備しなければならない可能性がある。並列接続する場合、流量も有効落差も同じであるため、同じ仕様の水車22が使用できる。一方、同じ発電量を得るための超純水の流量は、直列接続が並列接続より少なくて済む。一般的には、並列接続は、大流量・低落差に向いており、直列接続は、小流量・高落差に向いている。従って、水力発電装置21に供給される超純水の総流量と圧力に応じて、直列接続と並列接続から適切な構成を選択することが好ましく、直列接続と並列接続を組み合わせることもできる。
【0025】
水力発電装置21で発電された電力は、電気で作動する機械(以下、電気作動式機械Mという)の作動に用いられる。超純水製造装置1Aには、水力発電装置21で発電された電力で作動可能な様々な電気作動式機械Mが設けられている。電気作動式機械Mは水力発電装置21の発電機23に(場合によりパワーコンディショナーを介して)電気的に接続されている。電気作動式機械Mは外部電源25とも接続されている。電気作動式機械Mの一例は、膜脱気装置16の真空ポンプである。一般的に膜脱気装置16では、水の表面積を増大させるための気液接触材を脱気塔に充填し、脱気塔内の気体を真空ポンプで減圧し、純水を真空状態におき、溶存酸素等を除去する。電気作動式機械Mの他の例は、純水に紫外線を照射する紫外線酸化装置14の紫外線ランプである。紫外線酸化装置14は例えば365nm、254nm、185nm、172nmの少なくともいずれかの波長を含む紫外線ランプを用いる。膜脱気装置16の真空ポンプと紫外線酸化装置14の紫外線ランプの少なくとも一つを水力発電装置21で発電された電力で作動させることができる。電気作動式機械Mはサブシステムの装置に限らず、前処理システムや1次純水システムの装置であってもよい。
【0026】
電気作動式機械Mの他の例は超純水の計測機器である。計測機器は電気で作動する限り限定されないが、例えば、上述の第1の流量計F1、第2の流量計F2、第1の圧力計P1、第2の圧力計P2、第1の比抵抗計C1、第2の比抵抗計C2が挙げられる。図示はしていないが、全有機炭素(TOC)計、微粒子計なども電気作動式機械Mの例に含まれる。計測機器の必要電力は真空ポンプや紫外線ランプの必要電力と比べて小さいので、発電量が少ない場合は計測機器を選択することが好ましい。水力発電装置21の発電量に余裕がある場合、真空ポンプや紫外線ランプを作動させることができ、場合によっては、水力発電装置21で計測機器を作動させることもできる。
【0027】
水力発電装置21から供給された電力は通常時に使用することもできるし(表1のパターンA1)、非常時のバックアップとして使用することもできる(表1のパターンA2)。パターンA1では、電気作動式機械Mは通常時に、水力発電装置21から供給された電力で作動し、水力発電装置21からの電源供給異常時に、外部電源25で作動する。パターンA2では、電気作動式機械Mは通常時に外部電源25で作動し、外部電源25からの電源供給異常時に、水力発電装置21から供給された電力で作動する。パターンA1は通常時に水力発電装置21から供給された電力を用いるため、省エネルギーの観点からパターンA2より有利である。パターンA2は通常時に、水力発電装置21から供給された電力ではなく外部電源25を用いるため、水力発電装置21の発電量の変動が大きい場合には好ましい選択となる可能性がある。万が一、外部電源25からの電源供給が異常となった場合も、外部電源25が復旧するまでの間、一時的に電源を水力発電装置21に切り替えることで、超純水製造装置1Aの運転を継続することができる。
【0028】
以上説明した超純水製造装置1Aは以下のように作動する。母管L1に設けられた少なくとも一つの水処理装置によって超純水が製造される。少なくとも一つの水処理装置によって製造された超純水が、母管L1からユースポイントP.O.U.に供給される。ユースポイントP.O.U.で使用されない超純水は、母管L1に接続されたリターンラインL2を通して、母管L1に戻される。リターンラインL2には少なくとも一つの水力発電装置21が設けられている。バイパスラインL5に超純水の一部を供給しながら、超純水の残りが少なくとも一つの水力発電装置21に供給され、少なくとも一つの水力発電装置21で発電が行われる。電気作動式機械Mは水力発電装置21で発電された電力で作動する。
【0029】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る超純水製造装置1Bのサブシステムの概要を示している。以下の説明では第1の実施形態との差異を中心に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。本実施形態の超純水製造装置1Bは蓄電池24を有している。蓄電池24は水力発電装置21の発電機23に電気的に接続されており、水力発電装置21で発電された電力を蓄電することができる。蓄電池24は外部電源25にも電気的に接続されており、外部電源25から供給された電力を蓄電することができる。電気作動式機械Mは、水力発電装置21の発電機23と蓄電池24と外部電源25に電気的に接続されており、これらから供給される電力で作動することができる。蓄電池24は複数台設けることが好ましい。本実施形態では、電気作動式機械Mの通常時の駆動電源、通常電源異常時のバックアップ電源、蓄電池24の充電方法によって、表1に示すパターンB1~B6が可能である。
【0030】
パターンB1~B3では、通常時、電気作動式機械Mは水力発電装置21で発電された電力で作動する。そして、水力発電装置21からの電力供給異常時に、電気作動式機械Mは蓄電池24で作動する。水力発電装置21からの電力供給異常時には、蓄電池24と外部電源25を併用してもよい。蓄電池24からの電力供給異常が発生した場合、電源を外部電源25に切り替えることもできる。パターンB4~B6では、通常時、電気作動式機械Mは蓄電池24で作動する。そして、蓄電池24からの電力供給異常時に、電気作動式機械Mは水力発電装置21で発電された電力で作動する。蓄電池24からの電力供給異常時には、水力発電装置21と外部電源25を併用してもよい。水力発電装置21からの電力供給異常が発生した場合、電源を外部電源25に切り替えることもできる。
【0031】
パターンB1~B3では、電気作動式機械Mは水力発電装置21で発電された電力で直接作動するが、パターンB4~B6では、水力発電装置21で発電された電力が一旦蓄電池24に蓄電され、蓄電池24に蓄電された電力で電気作動式機械Mが作動する。パターンB4~B6は、電気作動式機械Mが蓄電池24に蓄電された安定した電力で駆動されるので、水力発電装置21の発電量の変動を受けにくい。パターンB1~B3は、通常時に蓄電池24のエネルギー損失(充電エネルギー量と放電エネルギー量の差に基づくエネルギーロス)が発生しないため、電力の使用効率の点でパターンB4~B6と比べて有利である。また、頻繁に充放電を繰り返すことがないので、蓄電池24の寿命の点でもパターンB1~B3は有利である。
【0032】
蓄電池24の充電方法としていくつかの構成が可能である。パターンB1,B4では、蓄電池24は外部電源25で充電される。パターンB2,B5では、蓄電池24は水力発電装置21で発電された電力で充電される。パターンB3,B6では、蓄電池24は外部電源25及び水力発電装置21で発電された電力で充電される。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、水力発電装置21の追加的な駆動源として、限外ろ過膜装置18の濃縮水を利用することができる。濃縮水の圧力は一般に高いので、水力発電装置21の駆動源として好適に利用できる。限外ろ過膜装置18ではほとんどの水がろ過されて、限外ろ過膜装置18を透過するが、一部の水は濃縮水として限外ろ過膜装置18から排出される。図示は省略するが、濃縮水の排出ラインをリターンラインL2に合流させることで、限外ろ過膜装置18から排出される濃縮水の圧力エネルギーを利用することができる。
【0034】
また、本実施形態では水力発電装置21で発電した電力で超純水製造装置1A,1Bの様々な電気作動式機械を作動させているが、水力発電装置21で発電した電力の使用用途はこれに限定されない。水力発電装置21で発電した電力は、超純水製造装置1A,1B以外の装置や設備の電源としても利用できる。
【0035】
(実施例)
実施例により、水力発電装置で安定した発電が可能であること、水力発電装置で発電した電力によって計測機器が正常に動作することを確認した。図4には実施例のサブシステムの概要を示している。タンク41とポンプ42と水力発電装置43とを有する循環ラインL6で水を循環させながら、水力発電装置43で発電を行った。循環ラインL6に圧力計P11,P12と流量計F11とを設け、それぞれで水力発電装置43の入口圧力と出口圧力と供給水流量を測定した。水力発電装置43で発電された電力(三相交流)をパワーコンディショナー44によって単相交流に変換し、イオン交換装置45の入口に設けられた第1の導電率計C11’と、出口に設けられた第2の導電率計C12’とを作動させた。イオン交換装置45にイオン成分を含む被処理水を供給し、第1の導電率計C11’と第2の導電率計C12’によって、イオン交換装置45のイオン除去性能を測定した。
【0036】
図5に水力発電装置43の運転データを示す。運転開始直後を除き、水力発電装置43の入口圧力、出口圧力、供給水流量、水車の有効落差、発電量とも安定しており、安定した発電が可能であることが確認された。図6にイオン交換装置45の運転データを示す。運転開始直後を除き、イオン交換装置45の供給水流量は安定している。脱塩率(%)は(1-イオン交換装置45の出口水導電率/イオン交換装置45の入口水導電率)×100で求めた。イオン交換装置45の入口水と出口水の導電率及び脱塩率は予想された範囲内にあり、第1の導電率計C11’と第2の導電率計C12’が正常に動作することが確認された。
【符号の説明】
【0037】
1A,1B 超純水製造装置
14 紫外線酸化装置
16 膜脱気装置
18 限外ろ過膜装置
21 水力発電装置
22 水車
23 発電機
24 蓄電池
25 外部電源
L1 母管
L2 リターンライン
L5 バイパスライン
M 電気作動式機械
P.O.U. ユースポイント
V2 背圧制御弁
V3 流量制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6