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特開2023-115544サーマルプリントヘッド、サーマルプリンタ、及びサーマルプリントヘッドの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115544
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、サーマルプリンタ、及びサーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
B41J2/335 101E
B41J2/335 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017811
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】中久保 一也
(72)【発明者】
【氏名】有瀧 康之
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065JE03
2C065JE07
2C065JE08
2C065JE09
2C065JE12
2C065JH12
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】印字時において、良好な印字効率を確保したサーマルプリントヘッドを提供する。また、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供する。また、印字時において、良好な印字効率を確保したサーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】蓄熱層33と、蓄熱層33上に配置されている発熱抵抗体40と、蓄熱層33上に配置され、かつ、櫛歯部32Aを有する共通電極32と、蓄熱層33上に配置され、共通電極32の櫛歯部32Aと離隔し、かつ、櫛歯部32Aと対向している個別電極31と、を備え、蓄熱層33の厚さ方向Zにおいて、個別電極31及び櫛歯部32Aは、第1の膜厚部と、第1の膜厚部より膜厚が小さい第2の膜厚部と、をそれぞれ有し、発熱抵抗体40は、個別電極31の第2の膜厚部及び櫛歯部32Aの第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッド100。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱層と、
前記蓄熱層上に配置されている発熱抵抗体と、
前記蓄熱層上に配置され、かつ、櫛歯部を有する共通電極と、
前記蓄熱層上に配置され、前記共通電極の櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、を備え、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記個別電極及び前記櫛歯部は、第1の膜厚部と、前記第1の膜厚部より膜厚が小さい第2の膜厚部と、をそれぞれ有し、
前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記発熱抵抗体と前記個別電極及び前記櫛歯部との接触箇所において、前記発熱抵抗体は、前記個別電極上及び前記櫛歯部上に配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記発熱抵抗体と前記個別電極及び前記櫛歯部との接触箇所において、前記個別電極及び前記共通電極は、前記発熱抵抗体上に配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記共通電極は、前記櫛歯部と接続している共通部をさらに有し、
前記共通部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚と同じである、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記個別電極の材料及び前記共通電極の材料は、銀又は金を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記蓄熱層が上面に配置されている基板をさらに有し、
前記基板は、セラミックからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【請求項8】
蓄熱層を形成し、
前記蓄熱層上に、櫛歯部を有する共通電極と、前記櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、をそれぞれ第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有するように形成し、
前記櫛歯部上及び前記個別電極上に発熱抵抗体を形成し、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚より小さく、
前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記個別電極及び前記共通電極の形成は、
前記蓄熱層上に第1の電極層を形成する工程と、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の第1の電極層上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、
前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、
前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚である、請求項8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記個別電極及び前記共通電極の形成は、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の蓄熱層上に第1の電極層を形成する工程と、
前記第1の電極層上及び前記発熱抵抗体と重畳する領域の前記蓄熱層上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、
前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、
前記第2の膜厚部は、前記第2の電極層の膜厚である、請求項8に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項11】
蓄熱層を形成し、
前記蓄熱層上に発熱抵抗体を形成し、
前記蓄熱層上及び前記発熱抵抗体上に、櫛歯部を有する共通電極と、前記櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、をそれぞれ第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有するように形成し、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚より小さく、
前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記個別電極及び前記共通電極の形成は、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体上と重畳する領域以外の蓄熱層上に第1の電極層を形成する工程と、
前記第1の電極層上及び前記発熱抵抗体上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、
前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、
前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第2の電極層の膜厚である、請求項11に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記個別電極及び前記共通電極の形成は、
前記蓄熱層上及び前記発熱抵抗体上に第1の電極層を形成する工程と、
前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の第1の電極層上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、
前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、
前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚である、請求項11に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、サーマルプリントヘッド、サーマルプリンタ、及びサーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、例えば、ヘッド基板上に主走査方向に並ぶ多数の発熱部を備えている。各発熱部は、ヘッド基板にグレーズ層(蓄熱層ともいう)、共通電極、個別電極、及び抵抗体層を積層することにより形成されている。共通電極と個別電極間を通電することにより、上記抵抗体層の露出部(発熱部)がジュール熱により発熱する。当該熱を印刷媒体(バーコードシート又はレシートを作成するための感熱紙等)に伝えることにより、印刷媒体への印刷がなされる。
【0003】
共通電極及び個別電極等は、金、銀などの金属を使用したペーストをスクリーン印刷する(さらにリソグラフィ工程を行ってもよい)ことによって電極パターンを形成されている。また、外部から電圧を共通電極及び個別電極へ供給するための配線は、それぞれ共通電極及び個別電極と接している。配線は、金、銀などの金属を使用したリソグラフィ工程によって形成されている。金は高価であり、製品のコスト低減の観点から、比較的に安価で電気伝導性の良好な金属として銀を用いた技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-121283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
共通電極及び個別電極、並びに配線の材料に銀を用いる際、銀の凝集及び保護膜への銀の拡散による共通電極及び個別電極、並びに配線の断線の影響を低減するため、材料に金を用いるときと比較して共通電極及び個別電極、並びに配線の厚さを厚くしている。しかしながら、発熱部付近において共通電極及び個別電極を厚く形成すると、発熱部から共通電極及び個別電極への熱伝導(熱拡散)が大きくなるため、発熱部を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーが増大し、感熱紙等に印字する際の印字効率(エネルギー効率)が低下する問題が発生している。
【0006】
本実施形態の一態様は、印字時において、良好な印字効率を確保したサーマルプリントヘッドを提供することを目的の一とする。また、本実施形態の他の一態様は、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供することを目的の一とする。また、本実施形態の他の一態様は、印字時において、良好な印字効率を確保したサーマルプリントヘッドの製造方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様は、蓄熱層と、前記蓄熱層上に配置されている発熱抵抗体と、前記蓄熱層上に配置され、かつ、櫛歯部を有する共通電極と、前記蓄熱層上に配置され、前記共通電極の櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、を備え、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記個別電極及び前記櫛歯部は、第1の膜厚部と、前記第1の膜厚部より膜厚が小さい第2の膜厚部と、をそれぞれ有し、前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドである。
【0008】
また、本実施形態の他の一態様は、上記サーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタである。
【0009】
また、本実施形態の他の一態様は、蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に、櫛歯部を有する共通電極と、前記櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、をそれぞれ第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有するように形成し、前記櫛歯部上及び前記個別電極上に発熱抵抗体を形成し、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚より小さく、前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドの製造方法である。
【0010】
また、本実施形態の他の一態様は、蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に発熱抵抗体を形成し、前記蓄熱層上及び前記発熱抵抗体上に、櫛歯部を有する共通電極と、前記櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、をそれぞれ第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有するように形成し、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚より小さく、前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、印字時において、良好な印字効率を確保したサーマルプリントヘッドを提供することができる。また、サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供することができる。また、印字時において、良好な印字効率を確保したサーマルプリントヘッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドを説明する部分斜視図である。
図1B図1Bは、図1AのIB-IB線に沿う部分断面図である。
図1C図1Cは、図1AのIC-IC線に沿う部分断面図である。
図1D図1Dは、図1AのID-ID線に沿う部分断面図である。
図2A図2Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その1)。
図2B図2Bは、図2AのIIB-IIB線に沿う部分断面図である。
図2C図2Cは、図2AのIIC-IIC線に沿う部分断面図である。
図2D図2Dは、図2AのIID-IID線に沿う部分断面図である。
図3A図3Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その2)。
図3B図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線に沿う部分断面図である。
図3C図3Cは、図3AのIIIC-IIIC線に沿う部分断面図である。
図3D図3Dは、図3AのIIID-IIID線に沿う部分断面図である。
図4A図4Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その3)。
図4B図4Bは、図4AのIVB-IVB線に沿う部分断面図である。
図4C図4Cは、図4AのIVC-IVC線に沿う部分断面図である。
図4D図4Dは、図4AのIVD-IVD線に沿う部分断面図である。
図5A図5Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その4)。
図5B図5Bは、図5AのVB-VB線に沿う部分断面図である。
図5C図5Cは、図5AのVC-VC線に沿う部分断面図である。
図5D図5Dは、図5AのVD-VD線に沿う部分断面図である。
図6A図6Aは、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その5)。
図6B図6Bは、図6AのVIB-VIB線に沿う部分断面図である。
図6C図6Cは、図6AのVIC-VIC線に沿う部分断面図である。
図6D図6Dは、図6AのVID-VID線に沿う部分断面図である。
図7A図7Aは、第1の変形例に係るサーマルプリントヘッドを説明する部分斜視図である。
図7B図7Bは、図7AのVIIB-VIIB線に沿う部分断面図である。
図7C図7Cは、図7AのVIIC-VIIC線に沿う部分断面図である。
図7D図7Dは、図7AのVIID-VIID線に沿う部分断面図である。
図8A図8Aは、第2の変形例に係るサーマルプリントヘッドを説明する部分斜視図である。
図8B図8Bは、図8AのVIIIB-VIIIB線に沿う部分断面図である。
図8C図8Cは、図8AのVIIIC-VIIIC線に沿う部分断面図である。
図8D図8Dは、図8AのVIIID-VIIID線に沿う部分断面図である。
図9A図9Aは、第2の変形例に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その1)。
図9B図9Bは、図9AのIXB-IXB線に沿う部分断面図である。
図9C図9Cは、図9AのIXC-IXC線に沿う部分断面図である。
図9D図9Dは、図9AのIXD-IXD線に沿う部分断面図である。
図10A図10Aは、第2の変形例に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その2)。
図10B図10Bは、図10AのXB-XB線に沿う部分断面図である。
図10C図10Cは、図10AのXC-XC線に沿う部分断面図である。
図10D図10Dは、図10AのXD-XD線に沿う部分断面図である。
図11A図11Aは、第2の変形例に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その3)。
図11B図11Bは、図11AのXIB-XIB線に沿う部分断面図である。
図11C図11Cは、図11AのXIC-XIC線に沿う部分断面図である。
図11D図11Dは、図11AのXID-XID線に沿う部分断面図である。
図12A図12Aは、第2の変形例に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その4)。
図12B図12Bは、図12AのXIIB-XIIB線に沿う部分断面図である。
図12C図12Cは、図12AのXIIC-XIIC線に沿う部分断面図である。
図12D図12Dは、図12AのXIID-XIID線に沿う部分断面図である。
図13A図13Aは、第3の変形例に係るサーマルプリントヘッドを説明する部分斜視図である。
図13B図13Bは、図13AのXIIIB-XIIIB線に沿う部分断面図である。
図13C図13Cは、図13AのXIIIC-XIIIC線に沿う部分断面図である。
図13D図13Dは、図13AのXIIID-XIIID線に沿う部分断面図である。
図14図14は、サーマルプリントヘッドを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
具体的な本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0016】
<1> 蓄熱層と、前記蓄熱層上に配置されている発熱抵抗体と、前記蓄熱層上に配置され、かつ、櫛歯部を有する共通電極と、前記蓄熱層上に配置され、前記共通電極の櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、を備え、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記個別電極及び前記櫛歯部は、第1の膜厚部と、前記第1の膜厚部より膜厚が小さい第2の膜厚部と、をそれぞれ有し、前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッド。
【0017】
<2> 前記発熱抵抗体と前記個別電極及び前記櫛歯部との接触箇所において、前記発熱抵抗体は、前記個別電極上及び前記櫛歯部上に配置されている、<1>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0018】
<3> 前記発熱抵抗体と前記個別電極及び前記櫛歯部との接触箇所において、前記個別電極及び前記共通電極は、前記発熱抵抗体上に配置されている、<1>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0019】
<1>~<3>によれば、個別電極及び共通電極形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極及び共通電極の抵抗を低減させることができる。また、発熱抵抗体と重畳する領域の、個別電極及び共通電極の膜厚が小さいため、発熱抵抗体から個別電極及び共通電極への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0020】
<4> 前記共通電極は、前記櫛歯部と接続している共通部をさらに有し、前記共通部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚と同じである、<1>~<3>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0021】
<4>によれば、共通部の抵抗を低減させることができ、さらに、金属の凝集による断線を抑制することができる。
【0022】
<5> 前記個別電極の材料及び前記共通電極の材料は、銀又は金を含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0023】
<5>によれば、良好な金属の特性及びイオン化傾向を有する個別電極及び共通電極を得ることができる。
【0024】
<6> 前記蓄熱層が上面に配置されている基板をさらに有し、前記基板は、セラミックからなる、<1>~<5>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0025】
<6>によれば、サーマルプリントヘッドに放熱性に富んだ基板を用いることができる。
【0026】
<7> <1>~<6>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【0027】
<7>によれば、良好な印字効率を確保したサーマルプリンタを得ることができる。
【0028】
<8> 蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に、櫛歯部を有する共通電極と、前記櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、をそれぞれ第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有するように形成し、前記櫛歯部上及び前記個別電極上に発熱抵抗体を形成し、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚より小さく、前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【0029】
<9> 前記個別電極及び前記共通電極の形成は、前記蓄熱層上に第1の電極層を形成する工程と、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の第1の電極層上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚である、<8>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0030】
<10> 前記個別電極及び前記共通電極の形成は、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の蓄熱層上に第1の電極層を形成する工程と、前記第1の電極層上及び前記発熱抵抗体と重畳する領域の前記蓄熱層上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、前記第2の膜厚部は、前記第2の電極層の膜厚である、<8>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0031】
<11> 蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に発熱抵抗体を形成し、前記蓄熱層上及び前記発熱抵抗体上に、櫛歯部を有する共通電極と、前記櫛歯部と離隔し、かつ、前記櫛歯部と対向している個別電極と、をそれぞれ第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有するように形成し、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の膜厚部の膜厚より小さく、前記発熱抵抗体は、前記個別電極の前記第2の膜厚部及び前記櫛歯部の前記第2の膜厚部と接している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【0032】
<12> 前記個別電極及び前記共通電極の形成は、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の蓄熱層上に第1の電極層を形成する工程と、前記第1の電極層上及び前記発熱抵抗体上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第2の電極層の膜厚である、<11>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0033】
<13> 前記個別電極及び前記共通電極の形成は、前記蓄熱層上及び前記発熱抵抗体上に第1の電極層を形成する工程と、前記蓄熱層の厚さ方向において、前記発熱抵抗体と重畳する領域以外の第1の電極層上に第2の電極層を形成する工程と、を備え、前記第1の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚及び前記第2の電極層の膜厚の合計であり、前記第2の膜厚部の膜厚は、前記第1の電極層の膜厚である、<11>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0034】
<8>~<13>によれば、個別電極及び共通電極形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極及び共通電極の抵抗を低減させることができる。また、発熱抵抗体と重畳する領域の、個別電極及び共通電極の膜厚が小さいため、発熱抵抗体から個別電極及び共通電極への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0035】
<サーマルプリントヘッド>
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド100について図面を用いて説明する。
【0036】
図1Aは、サーマルプリントヘッド100を示す部分斜視図である。図1Bは、図1AのIB-IB線に沿う部分断面図である。図1Cは、図1AのIC-IC線に沿う部分断面図である。図1Dは、図1AのID-ID線に沿う部分断面図である。図1A図1Dは、複数のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタの一部分(1個のサーマルプリントヘッドに相当)を示しており、本実施形態では、この1個のサーマルプリントヘッドを個片状のサーマルプリントヘッド100とする。サーマルプリントヘッド100は、絶縁体である基板15と、基板15上の蓄熱層33と、蓄熱層33上に配置され、かつ、櫛歯部32Aを有する共通電極32と、蓄熱層33上に配置され、共通電極32の櫛歯部32Aと離隔し、かつ、櫛歯部32Aと対向している個別電極31と、蓄熱層33上、個別電極31上、及び共通電極32上の発熱抵抗体40と、個別電極31、共通電極32、及び発熱抵抗体40を覆う保護膜34と、を備える。図1Aは、理解を容易にするため、保護膜34の図示を省略している。
【0037】
個別電極31は、第1の電極層31aと、後述する厚さ方向Zにおいて、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層31a上の第2の電極層31bと、を有する。共通電極32は、第1の電極層32aと、厚さ方向Zにおいて、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層32a上の第2の電極層32bと、を有する。本実施形態において、蓄熱層33の厚さ方向Zにおける、第1の電極層31aと第2の電極層31bとが積層されている部分を個別電極31の第1の膜厚部とし、第1の電極層31aのみの部分を個別電極31の第2の膜厚部とする。また、本実施形態において、蓄熱層33の厚さ方向Zにおける、第1の電極層32aと第2の電極層32bとが積層されている部分を共通電極32(櫛歯部32A等を含む)の第1の膜厚部とし、第1の電極層32aのみの部分を共通電極32の第2の膜厚部とする。つまり、個別電極31において、第2の膜厚部の膜厚は第1の膜厚部より膜厚が小さく、共通電極32において、第2の膜厚部の膜厚は第1の膜厚部より膜厚が小さい。発熱抵抗体40は、個別電極31の第2の膜厚部及び共通電極32の一部である櫛歯部32Aの第2の膜厚部と接している。
【0038】
発熱抵抗体40は個別電極31及び共通電極32を流れる電流により発熱する複数の発熱抵抗部41を含む。個別電極31及び共通電極32の間において、各発熱抵抗部41が独立して形成されている。図1Aは、複数の発熱抵抗部41の図示を省略している。複数の発熱抵抗部41は、蓄熱層33上において直線状に配置されている。
【0039】
発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32と電気的に接続しており、個別電極31及び共通電極32からの電流が流れた部分が発熱する。具体的には、外部から駆動IC等に送信される印字信号に従って発熱用電圧が個別に印加される発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)が、選択的に発熱させられる。発熱抵抗部41は、印字信号に従って個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。このように発熱することによって印字ドットが形成される。発熱抵抗体40と個別電極31及び共通電極32(櫛歯部32A)との接触箇所において、発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32(櫛歯部32A)上に配置されている。発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32を構成する材料よりも抵抗率が高い材料を用い、例えば、酸化ルテニウムなどを用いることができる。
【0040】
本実施形態において、発熱抵抗体40が直線状に延びる方向を主走査方向X、主走査方向Xに対して垂直で、かつ、基板15の上面に対して平行な方向を副走査方向Y、基板15の厚さに対応する方向を厚さ方向Zとする。言い換えれば、厚さ方向Zは、主走査方向X及び副走査方向Yのそれぞれに対して垂直な方向である。また、基板15からみて蓄熱層33が位置している方向を上方向、蓄熱層33からみて基板15が位置している方向を下方向とする。
【0041】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0042】
基板15は、絶縁体であり、例えば、セラミック又は単結晶半導体からなる。セラミックとしては、例えば、アルミナ等を用いることができる。単結晶半導体基板としては、例えば、シリコン基板などを用いることができる。放熱性の観点から、比較的、熱伝導率が大きいアルミナを基板15に用いることが好ましい。
【0043】
基板15上には、熱を蓄積する機能を有する蓄熱層33(グレーズ層ともいう)が積層されている。蓄熱層33は、後述の発熱抵抗部41から発生する熱を蓄積する。蓄熱層33は、絶縁性材料を用いることができ、例えば、ガラスの主成分である酸化シリコン、窒化シリコンを蓄熱層33に用いることができる。蓄熱層33の厚さ方向Zにおける寸法は、特に限定されず、例えば、5~200μmであり、好ましくは10~30μmである。
【0044】
蓄熱層33上には、金属ペーストから形成される、個別電極31及び共通電極32が設けられている。個別電極31の材料及び共通電極32の材料である金属ペーストをスクリーン印刷等によって蓄熱層33に塗布し、その後焼成し、電極パターンを形成することにより個別電極31及び共通電極32が得られる。また、スクリーン印刷に加えてリソグラフィ工程を行って個別電極31及び共通電極32を形成してもよい。
【0045】
金属ペーストとしては、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金等の金属粒子などを含むペーストを用いることができる。また、有機金属化合物を金属ペーストとして用いることもできる。金属の特性及びイオン化傾向の観点から、銀及び金であることが好ましく、金属の特性、イオン化傾向及びコスト低減の観点から、銀であることがより好ましい。また、金属ペーストに含まれる溶剤は、金属粒子を均一に分散させる機能を有し、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、脂環族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等の1種または2種以上を混合したものなどが挙げられるがこれに限られない。
【0046】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、炭酸ジメチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンベンゼン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサンノン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等、これらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等や、これらモノエーテル類の酢酸エステル等である。
【0047】
脂肪族系溶剤としては、例えば、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。脂環族系溶剤としては、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、テトラリン等が挙げられる。アルコール系溶剤(上述のグリコールエーテル系溶剤を除く)としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0048】
金属ペーストは、必要に応じて、分散剤、表面処理剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤、イオン捕捉剤等を含有することができる。
【0049】
個別電極31は、第1の電極層31aと、第2の電極層31bと、を有する。共通電極32は、第1の電極層32aと、第2の電極層32bと、を有する。第1の電極層31a及び第1の電極層32aは、第2の電極層31b及び第2の電極層32bに比べて粒径が小さい金属粒子を含むペーストを用いて形成されることが好ましく、例えば、銀を含むレジネートペーストから形成されることが好ましい。第1の電極層31a及び第1の電極層32aの厚さ方向Zにおける寸法は、特に限定されず、例えば、1~3μmであり、好ましくは1.5~2.5μmである。
【0050】
第2の電極層31bは、一部の第1の電極層31a上に配置されており、具体的には、厚さ方向Zにおいて、後述の発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層31a上に配置される。第2の電極層32bは、一部の第1の電極層32a上に配置されており、具体的には、厚さ方向Zにおいて、後述の発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層32a上に配置される。第2の電極層31b及び第2の電極層32bは、第1の電極層31a及び第1の電極層32aの形成に用いるペーストに含まれる金属粒子よりも粒径が大きい金属粒子を含むペーストを用いて形成されることが好ましく、例えば、銀粒子を含むレジネートペーストから形成されることが好ましい。第2の電極層31b及び第2の電極層32bの厚さ方向Zにおける寸法は、特に限定されず、例えば、1~5μmであり、好ましくは2~4μmである。
【0051】
第1の電極層31a及び第1の電極層32aの形成に用いるペーストに含まれる金属粒子は、第2の電極層31b及び第2の電極層32bの形成に用いるペーストに含まれる金属粒子より粒径が小さいため、第1の電極層31a及び第1の電極層32aの平均面粗さは、第2の電極層31b及び第2の電極層32bの平均面粗さより小さい。平均面粗さは、例えば、JIS B 0601:2013やISO 25178に準拠して求めることができる。
【0052】
平均面粗さが大きい電極層をワイヤなどと接触する上側に配置することにより、密着性などのボンディング特性が良好になるため好ましい。すなわち、平均面粗さが相対的に大きい第2の電極層31b及び第2の電極層32bを平均面粗さが相対的に小さい第1の電極層31a上及び第1の電極層32a上にそれぞれ配置することにより、図示しない個別パット部でのワイヤと第2の電極層31b又は第2の電極層32bとの接触が広範囲になり、のボンディング特性が良好になる。
【0053】
個別電極31において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層31aの膜厚及び第2の電極層31bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第1の電極層31aの膜厚である。共通電極32において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層32aの膜厚及び第2の電極層32bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第1の電極層32aの膜厚である。なお、第1の電極層31a(又は第1の電極層32a)と第2の電極層31b(又は第2の電極層32b)とが互いに同じ材料等で境界を判別しにくい場合は、第2の電極層31b(又は第2の電極層32b)の上面から第1の電極層31a(又は第1の電極層32a)の膜厚分離れた部分を第1の電極層31a(又は第1の電極層32a)と第2の電極層31b(又は第2の電極層32b)との境界面とする。
【0054】
個別電極31の第1の膜厚部は個別電極31の第2の膜厚部より膜厚が大きく、共通電極32の第1の膜厚部は共通電極32の第2の膜厚部より膜厚が大きいため、個別電極31及び共通電極32形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極31及び共通電極32の抵抗を低減させることができる。後述の発熱抵抗体40と重畳する領域である、個別電極31の第2の膜厚部及び共通電極32の第2の膜厚部は、それぞれ個別電極31の第1の膜厚部及び共通電極32の第1の膜厚部より膜厚が小さいため、発熱抵抗体40から個別電極31及び共通電極32への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体40を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0055】
各個別電極31は、概ね副走査方向Yに延伸する帯状をしており、それらは、互いに導通していない。そのため、各個別電極31には、サーマルプリントヘッドが組み込まれたプリンタが使用される際に、個別に、互いに異なる電位が付与されうる。各個別電極31の端部には、図示しない個別パッド部が接続されている。
【0056】
共通電極32は、サーマルプリントヘッドが組み込まれたプリンタが使用される際に複数の個別電極31に対して電気的に逆極性となる部位である。共通電極32は、櫛歯部32Aと、櫛歯部32Aと接続している共通部32Bと、を有する。共通部32Bは基板15の上方側の縁に沿って主走査方向Xに形成される。なお、副走査方向Yにおいて、個別電極31からみて共通電極32の共通部32Bがある方向を副走査方向Yの上方側とする。各櫛歯部32Aは、副走査方向Yに延伸する帯状をしている。各櫛歯部32Aの先端部は、各個別電極31の先端部に対して副走査方向Yに沿って所定間隔を隔てて対向させられている。このような構成にすることにより、発熱抵抗体40のピッチを狭くすることができるため、高精細な印字が可能となる。
【0057】
発熱抵抗体40は、抵抗体ペーストを焼成することによって形成することができる。本実施形態では、発熱抵抗体40の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~10μm程度である。
【0058】
発熱抵抗体40等は、保護膜34で覆われており、保護膜34は、発熱抵抗体40等を摩耗、腐食、酸化等から保護する。保護膜34は絶縁性の材料を用いることができ、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34はガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。保護膜34の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、2~8μm程度である。この範囲の厚さであると、耐圧不良を抑制でき、かつ、良好な印字品質を維持することが可能なサーマルプリントヘッド100を得ることができるため好ましい。
【0059】
ここで、本実施形態のサーマルプリントヘッド100の製造方法について説明する。
【0060】
図2A図2Dに示すように、まず、基板15を用意し、基板15上に蓄熱層33を形成する。
【0061】
蓄熱層33は、例えば、ガラスペーストをスクリーン印刷等により基板15に塗布し、塗布されたガラスペーストを乾燥させ、その後、焼成処理を行うことにより形成することができる。焼成処理は、例えば、800~1200℃で10分~1時間行う。蓄熱層33の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、25μmである。
【0062】
次に、図3A図3Dに示すように、蓄熱層33上に、個別電極31の第1の電極層31a及び共通電極32の第1の電極層32aを形成する。第1の電極層31a及び第1の電極層32aは、上述の比較的粒径が小さい金属ペーストをスクリーン印刷等によって蓄熱層33に塗布し、その後焼成し、リソグラフィ工程を行うことで得られる。第1の電極層31a及び第1の電極層32aの厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~3μmである。
【0063】
次に、図4A図4Dに示すように、後に形成する発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層31a上に第2の電極層31bを形成し、当該発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層32a上に第2の電極層32bを形成する。第2の電極層31b及び第2の電極層32bは、第1の電極層31a及び第1の電極層32aの形成に用いるペーストに含まれる金属粒子よりも粒径が大きい金属粒子を含むペーストをスクリーン印刷等によって第1の電極層31a及び第1の電極層32aに塗布し、その後焼成し、リソグラフィ工程を行うことで得られる。第2の電極層31b及び第2の電極層32bの厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~5μmである。
【0064】
上記工程により、第1の電極層31aと第2の電極層31bとが積層されている部分である第1の膜厚部と、第1の電極層31aのみの部分である第2の膜厚部と、を有する個別電極31を形成することができ、また、第1の電極層32aと第2の電極層32bとが積層されている部分である第1の膜厚部と、第1の電極層32aのみの部分である第2の膜厚部と、を有する共通電極32を形成することができる。
【0065】
なお、個別電極31及び共通電極32の形成方法は、これに限られず、例えば、第1の電極層31a及び第1の電極層32aとなる金属ペーストをスクリーン印刷等によって基板15に塗布し、さらに、第2の電極層31b及び第2の電極層32bとなる金属ペーストをスクリーン印刷等によって第1の電極層31a及び第1の電極層32aとなる金属ペーストに塗布した後、これらの金属ペーストをまとめて焼成し、リソグラフィ工程を行って形成してもよい。また、1層の電極層の一部の領域(後に形成する発熱抵抗体40と重畳する領域)をエッチング等によって除去して上述の第1の膜厚部及び第2の膜厚部を有する個別電極31及び共通電極32を形成してもよい。
【0066】
次に、図5A図5Dに示すように、発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)となる抵抗体ペーストを形成する。抵抗体ペーストは、例えば、酸化ルテニウムを含む。次に、上述の抵抗体ペーストを焼成することにより、発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)を形成する。
【0067】
次に、図6A図6Dに示すように、保護膜34を形成する。保護膜34は、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34はガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。
【0068】
以上の工程により、本実施形態のサーマルプリントヘッド100を製造することができる。
【0069】
本実施形態によれば、個別電極31及び共通電極32形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極31及び共通電極32の抵抗を低減させることができる。また、発熱抵抗体40と重畳する領域の、個別電極31及び共通電極32の膜厚が小さいため、発熱抵抗体40から個別電極31及び共通電極32への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体40を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0070】
<第1の変形例>
本変形例に係るサーマルプリントヘッド100Aの構成を説明する。
【0071】
図7Aは、サーマルプリントヘッド100Aを示す部分斜視図である。図7Bは、図7AのVIIB-VIIB線に沿う部分断面図である。図7Cは、図7AのVIIC-VIIC線に沿う部分断面図である。図7Dは、図7AのVIID-VIID線に沿う部分断面図である。サーマルプリントヘッド100Aは、絶縁体である基板15と、基板15上の蓄熱層33と、蓄熱層33上に配置され、かつ、櫛歯部32Aを有する共通電極32と、蓄熱層33上に配置され、共通電極32の櫛歯部32Aと離隔し、かつ、櫛歯部32Aと対向している個別電極31と、蓄熱層33上、個別電極31上、及び共通電極32上の発熱抵抗体40と、個別電極31、共通電極32、及び発熱抵抗体40を覆う保護膜34と、を備える。図7Aは、理解を容易にするため、保護膜34の図示を省略している。
【0072】
個別電極31は、第1の電極層31aと、第1の電極層31a上の第2の電極層31bと、を有する。共通電極32は、第1の電極層32aと、第1の電極層32a上の第2の電極層32bと、を有する。本実変形例において、蓄熱層33の厚さ方向Zにおける、第1の電極層31aと第2の電極層31bとが積層されている部分を個別電極31の第1の膜厚部とし、第2の電極層31bのみの部分を個別電極31の第2の膜厚部とする。また、本実変形例において、蓄熱層33の厚さ方向Zにおける、第1の電極層32aと第2の電極層32bとが積層されている部分を共通電極32(櫛歯部32A等を含む)の第1の膜厚部とし、第2の電極層32bのみの部分を共通電極32の第2の膜厚部とする。発熱抵抗体40は、個別電極31の第2の膜厚部及び共通電極32の一部である櫛歯部32Aの第2の膜厚部と接している。本変形例に係るサーマルプリントヘッド100Aが上述の図1A図1Dに示すサーマルプリントヘッド100と異なる点は、個別電極31の第2の膜厚部が第2の電極層31bのみの部分からなる点、及び共通電極32の第2の膜厚部が第2の電極層32bのみの部分からなる点である。本変形例において図1A図1Dに示すサーマルプリントヘッド100と共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0073】
個別電極31は、第1の電極層31aと、第2の電極層31bと、を有する。共通電極32は、第1の電極層32aと、第2の電極層32bと、を有する。第1の電極層31a及び第1の電極層32aは、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の少なくとも一部の蓄熱層33上に配置されている。第2の電極層31bは、第1の電極層31a上及び発熱抵抗体40と重畳する領域の蓄熱層33上に配置されている。第2の電極層32bは、第1の電極層32a上及び発熱抵抗体40と重畳する領域の蓄熱層33上に配置されている。発熱抵抗体40は、平均面粗さが大きい第2の電極層31b及び第2の電極層32bと接触しているため、発熱抵抗体40と第2の電極層31b又は第2の電極層32bとの接触が広範囲になり、これらの接触において良好な密着性を得ることができる。
【0074】
本変形例における個別電極31において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層31aの膜厚及び第2の電極層31bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第2の電極層31bの膜厚である。本変形例における共通電極32において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層32aの膜厚及び第2の電極層32bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第2の電極層32bの膜厚である。
【0075】
本変形例によれば、個別電極31及び共通電極32形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極31及び共通電極32の抵抗を低減させることができる。また、発熱抵抗体40と重畳する領域の、個別電極31及び共通電極32の膜厚が小さいため、発熱抵抗体40から個別電極31及び共通電極32への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体40を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0076】
<第2の変形例>
本変形例に係るサーマルプリントヘッド100Bの構成を説明する。
【0077】
図8Aは、サーマルプリントヘッド100Bを示す部分斜視図である。図8Bは、図8AのVIIIB-VIIIB線に沿う部分断面図である。図8Cは、図8AのVIIIC-VIIIC線に沿う部分断面図である。図8Dは、図8AのVIIID-VIIID線に沿う部分断面図である。サーマルプリントヘッド100Bは、絶縁体である基板15と、基板15上の蓄熱層33と、蓄熱層33上の発熱抵抗体40と、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上の櫛歯部32Aを有する共通電極32と、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上の、共通電極32の櫛歯部32Aと離隔し、かつ、櫛歯部32Aと対向している個別電極31と、蓄熱層33、発熱抵抗体40、個別電極31、及び共通電極32を覆う保護膜34と、を備える。図8Aは、理解を容易にするため、保護膜34の図示を省略している。本変形例に係るサーマルプリントヘッド100Bが上述の図1A図1Dに示すサーマルプリントヘッド100と異なる点は、個別電極31の一部及び共通電極32の一部が発熱抵抗体40上に配置されている点である。本変形例において図1A図1Dに示すサーマルプリントヘッド100と共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0078】
個別電極31は、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上に配置されており、第1の電極層31aと、第2の電極層31bと、を有する。共通電極32は、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上に配置されており、第1の電極層32aと、第2の電極層32bと、を有する。第1の電極層31a及び第1の電極層32aは、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上に配置されている。第2の電極層31bは、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層31a上に配置されている。第2の電極層32bは、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層32a上に配置されている。
【0079】
本変形例における個別電極31において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層31aの膜厚及び第2の電極層31bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第1の電極層31aの膜厚である。本変形例における共通電極32において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層32aの膜厚及び第2の電極層32bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第1の電極層32aの膜厚である。
【0080】
ここで、本実施形態のサーマルプリントヘッド100Bの製造方法について説明する。
【0081】
まず、図2A図2Dに示したように、基板15を用意し、基板15上に蓄熱層33を形成する。次に、図9A図9Dに示すように、蓄熱層33上に発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)となる抵抗体ペーストを形成する。抵抗体ペーストは、例えば、酸化ルテニウムを含む。次に、上述の抵抗体ペーストを焼成することにより、発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)を形成する。
【0082】
次に、図10A図10Dに示すように、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上に、個別電極31の第1の電極層31a及び共通電極32の第1の電極層32aを形成する。第1の電極層31a及び第1の電極層32aは、上述の粒径が小さい金属ペーストをスクリーン印刷等によって蓄熱層33及び発熱抵抗体40に塗布し、その後焼成、リソグラフィ工程を行うことで得られる。第1の電極層31a及び第1の電極層32aの厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~3μmである。
【0083】
次に、図11A図11Dに示すように、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層31a上に第2の電極層31bを形成し、発熱抵抗体40と重畳する領域以外の第1の電極層32a上に第2の電極層32bを形成する。第2の電極層31b及び第2の電極層32bは、第1の電極層31a及び第1の電極層32aの形成に用いるペーストに含まれる金属粒子よりも粒径が大きい金属粒子を含むペーストをスクリーン印刷等によって第1の電極層31a及び第1の電極層32aに塗布し、その後焼成、リソグラフィ工程を行うことで得られる。第2の電極層31b及び第2の電極層32bの厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~5μmである。
【0084】
上記工程により、第1の電極層31aと第2の電極層31bとが積層されている部分である第1の膜厚部と、第1の電極層31aのみの部分である第2の膜厚部と、を有する個別電極31を形成することができ、また、第1の電極層32aと第2の電極層32bとが積層されている部分である第1の膜厚部と、第1の電極層32aのみの部分である第2の膜厚部と、を有する共通電極32を形成することができる。
【0085】
次に、図12A図12Dに示すように、保護膜34を形成する。保護膜34は、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34はガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。
【0086】
以上の工程により、本実施形態のサーマルプリントヘッド100Bを製造することができる。
【0087】
本変形例によれば、個別電極31及び共通電極32形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極31及び共通電極32の抵抗を低減させることができる。また、発熱抵抗体40と重畳する領域の、個別電極31及び共通電極32の膜厚が小さいため、発熱抵抗体40から個別電極31及び共通電極32への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体40を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0088】
<第3の変形例>
本変形例に係るサーマルプリントヘッド100Cの構成を説明する。
【0089】
図13Aは、サーマルプリントヘッド100Cを示す部分斜視図である。図13Bは、図13AのXIIIB-XIIIB線に沿う部分断面図である。図13Cは、図13AのXIIIC-XIIIC線に沿う部分断面図である。図13Dは、図13AのXIIID-XIIID線に沿う部分断面図である。サーマルプリントヘッド100Cは、絶縁体である基板15と、基板15上の蓄熱層33と、蓄熱層33上の発熱抵抗体40と、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上の櫛歯部32Aを有する共通電極32と、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上の、共通電極32の櫛歯部32Aと離隔し、かつ、櫛歯部32Aと対向している個別電極31と、蓄熱層33、発熱抵抗体40、個別電極31、及び共通電極32を覆う保護膜34と、を備える。図13Aは、理解を容易にするため、保護膜34の図示を省略している。本変形例に係るサーマルプリントヘッド100Cが上述の図7A図7Dに示すサーマルプリントヘッド100Aと異なる点は、個別電極31の一部及び共通電極32の一部が発熱抵抗体40上に配置されている点である。本変形例において図7A図7Dに示すサーマルプリントヘッド100Aと共通する点は上述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0090】
個別電極31は、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上に配置されており、第1の電極層31aと、第2の電極層31bと、を有する。共通電極32は、蓄熱層33上及び発熱抵抗体40上に配置されており、第1の電極層32aと、第2の電極層32bと、を有する。本実変形例において、蓄熱層33の厚さ方向Zにおける、第1の電極層31aと第2の電極層31bとが積層されている部分を個別電極31の第1の膜厚部とし、第2の電極層31bのみの部分を個別電極31の第2の膜厚部とする。また、本実変形例において、蓄熱層33の厚さ方向Zにおける、第1の電極層32aと第2の電極層32bとが積層されている部分を共通電極32(櫛歯部32A等を含む)の第1の膜厚部とし、第2の電極層32bのみの部分を共通電極32の第2の膜厚部とする。発熱抵抗体40は、個別電極31の第2の膜厚部及び共通電極32の一部である櫛歯部32Aの第2の膜厚部と接している。発熱抵抗体40は、平均面粗さが大きい第2の電極層31b及び第2の電極層32bと接触しているため、発熱抵抗体40と第2の電極層31b又は第2の電極層32bとの接触が広範囲になり、これらの接触において良好な密着性を得ることができる。
【0091】
本変形例における個別電極31において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層31aの膜厚及び第2の電極層31bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第2の電極層31bの膜厚である。本変形例における共通電極32において、第1の膜厚部の膜厚は、第1の電極層32aの膜厚及び第2の電極層32bの膜厚の合計であり、第2の膜厚部の膜厚は、第2の電極層32bの膜厚である。
【0092】
本変形例によれば、個別電極31及び共通電極32形成時(焼成時)において、金属ペーストに含まれる金属の凝集による断線を抑制することができる。さらに、個別電極31及び共通電極32の抵抗を低減させることができる。また、発熱抵抗体40と重畳する領域の、個別電極31及び共通電極32の膜厚が小さいため、発熱抵抗体40から個別電極31及び共通電極32への熱伝導を小さくすることができ、発熱抵抗体40を所定の温度に上昇させるために必要なエネルギーの増大を抑制することができる。このため、良好な印字効率を確保することができる。
【0093】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【0094】
<サーマルプリンタ>
サーマルプリントヘッド(例えば、サーマルプリントヘッド100)は、さらに図14に示すように、基板15(基板15上の蓄熱層33等は図示せず)、接続基板5、放熱部材8、駆動IC7と、複数のワイヤ81と、樹脂部82と、コネクタ59と、を備える。基板15及び接続基板5は、放熱部材8上に副走査方向Yに隣接させて搭載されている。基板15には、主走査方向Xに配列される複数の発熱抵抗部41が形成されている。当該発熱抵抗部41は、接続基板5上に搭載された駆動IC7により選択的に発熱するように駆動される。当該発熱抵抗部41は、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号にしたがって、プラテンローラ91により発熱抵抗部41に押圧される感熱紙等の印刷媒体92に印字を行う。
【0095】
接続基板5は、例えば、プリント配線基板を用いることができる。接続基板5は、基材層と図示しない配線層とが積層された構造を有する。基材層は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などを用いることができる。配線層は、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金等の金属などを用いることができる。
【0096】
放熱部材8は、基板15からの熱を放散させる機能を有する。放熱部材8には、基板15及び接続基板5が取り付けられている。放熱部材8は、例えば、アルミニウムなどの金属を用いることができる。
【0097】
ワイヤ81は、例えば、金などの導体を用いることができる。ワイヤ81は複数あり、その一部はボンディングにより、駆動IC7と各個別電極とが導通している。また、他のワイヤ81のうちの一部はボンディングにより、接続基板5における配線層を介して、駆動IC7とコネクタ59とが導通している。
【0098】
樹脂部82は、例えば、黒色の樹脂を用いることができる。樹脂部82としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを使用することができる。樹脂部82は、駆動IC7及び複数のワイヤ81等を覆っており、駆動IC7及び複数のワイヤ81を保護している。コネクタ59は、接続基板5に固定されている。コネクタ59には、サーマルプリントヘッドの外部からサーマルプリントヘッドへ電力を供給し、及び、駆動IC7を制御するための配線が接続される。
【0099】
サーマルプリンタは、上述のサーマルプリントヘッドを備えることができる。サーマルプリンタは、副走査方向Yに沿って搬送される印刷媒体に印刷を施す。通常、印刷媒体は、コネクタ59側から発熱抵抗部41側に向かって搬送される。印刷媒体としては、例えば、バーコードシート又はレシートを作成するための感熱紙等が挙げられる。
【0100】
サーマルプリンタは、例えば、サーマルプリントヘッド100と、プラテンローラ91と、主電源回路と、計測用回路と、制御部と、を備える。プラテンローラ91は、サーマルプリントヘッド100に正対している。
【0101】
主電源回路は、サーマルプリントヘッド100における複数の発熱抵抗部41に電力を供給する。計測用回路は、複数の発熱抵抗部41の各々の抵抗値を計測する。計測用回路は、例えば、印刷媒体への印字を行わない時に、複数の発熱抵抗部41の各々の抵抗値を計測する。これにより、発熱抵抗部41の寿命や故障した発熱抵抗部41の有無が確認されうる。制御部は、主電源回路及び計測用回路の駆動状態を制御する。制御部は、複数の発熱抵抗部41の各々の通電状態を制御する。計測用回路は省略される場合がある。
【0102】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッド100外の装置と通信するために用いられる。コネクタ59を介して、サーマルプリントヘッド100は、主電源回路及び計測用回路に電気的に接続している。コネクタ59を介して、サーマルプリントヘッド100は、制御部に電気的に接続している。
【0103】
駆動IC7は、コネクタ59を介して、制御部から信号を受ける。駆動IC7は制御部から受けた当該信号に基づき、複数の発熱抵抗部41の各々の通電状態を制御する。具体的には、駆動IC7は、複数の個別電極を選択的に通電させることにより、複数の発熱抵抗部41のいずれかを任意に発熱させる。
【0104】
また、サーマルプリントヘッドは、上述の構成に限られず、例えば、接続基板5を設けずに駆動IC7を直接基板15に搭載させる構成であってもよいし、フリップチップ実装によりワイヤ81を設けない構成であってもよいし、放熱部材8を設けない構成であってもよい。
【0105】
次に、サーマルプリンタの使用方法について説明する。
【0106】
印刷媒体への印刷時には、コネクタ59に、主電源回路から、入力信号である第1の電位が付与される。この場合、複数の発熱抵抗部41が選択的に通電し、発熱する。当該熱を印刷媒体に伝えることにより、印刷媒体への印刷がなされる。上述のとおり、コネクタ59に、主電源回路から、第1の電位が付与されている場合、複数の発熱抵抗部41の各々への通電経路が確保されている。
【0107】
印刷媒体への印字を行わない時には、各発熱抵抗部41の抵抗値を計測する。当該計測時には、主電源回路からコネクタ59に電位は付与されない。各発熱抵抗部41の抵抗値の計測時には、コネクタ59に、計測用回路から、第2の電位が付与される。この場合、複数の発熱抵抗部41が順番に(例えば、主走査方向Xの端に位置する発熱抵抗部41から順番に)通電する。発熱抵抗部41に流れる電流の値および第2の電位に基づき、計測用回路は、各発熱抵抗部41の抵抗値を計測する。上述のとおり、コネクタ59に、主電源回路から、第2の電位が付与されている場合、複数の発熱抵抗部41の各々への通電経路が実質的に遮断される。これにより、計測用回路によって、より正確に各発熱抵抗部41の抵抗値を計測でき、発熱抵抗部41の寿命及び故障した発熱抵抗部41の有無が確認されうる。
【0108】
上記によれば、良好な印字効率を確保したサーマルプリンタを得ることができる。
【符号の説明】
【0109】
5 接続基板
7 駆動IC
8 放熱部材
15 基板
31 個別電極
31a、32a 第1の電極層
31b、32b 第2の電極層
32 共通電極
32A 櫛歯部
32B 共通部
33 蓄熱層
34 保護膜
40 発熱抵抗体
41 発熱抵抗部
59 コネクタ
81 ワイヤ
82 樹脂部
91 プラテンローラ
92 印刷媒体
100、100A、100B、100C サーマルプリントヘッド
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14