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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115549
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/37 20180101AFI20230814BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20230814BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
F24F11/37
F24F11/86
H05K7/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017823
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平松 美紀
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】白川 拓也
【テーマコード(参考)】
3L260
5E322
【Fターム(参考)】
3L260AA11
3L260BA53
3L260CA12
3L260CB09
3L260FB04
5E322AB10
5E322BB06
5E322BB08
5E322EA11
(57)【要約】
【課題】 吸込温度T2が設定温度となるように駆動周波数が制御される空調装置において、停電中のサーバ室温度変化に着目した圧縮機の停電時起動制御の一例を開示する。
【解決手段】 温度差ΔT及び停電時間Tsを利用して、駆動周波数の加速度及び上限駆動周波数fmaxを決定し、当該決定された加速度にて駆動周波数を上限駆動周波数fmaxまで上昇変化させる。温度差ΔTとは、推定吸込温度T4と停止時空調機側温度T5との差をいう。推定吸込温度T4とは、停電後、電力供給が復帰した時の吸込温度として温度推定部6Bが推定した温度をいう。停止時空調機側温度T5とは、電力供給が停止した時に検出されたサーバ室温T1をいう。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の圧縮機を有する冷凍機を利用した空調装置において、
空調対象空間から吸引された空気を冷却又は加熱して当該空調対象空間に供給する熱交換器と、
空調対象空間内の空気温度を検出する室温センサであって、少なくとも停電時には無停電電源から電力が供給される室温センサと、
前記熱交換器にて熱交換される前の空気温度又は前記熱交換器にて熱交換された後の空気温度(以下、これらの温度を空調機側温度という。)を検出する空調温度センサと、
前記圧縮機を駆動する駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を制御する駆動制御部であって、少なくとも停電時起動制御又は通常制御にて駆動周波数を制御可能な駆動制御部と、
前記通常制御にて前記圧縮機が稼働しているときの前記室温センサの検出温度と前記空調温度センサの検出温度との差を利用して前記室温センサの検出温度から空調機側温度を推定する温度推定部とを備え、
前記停電時起動制御は、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時に実行される制御であり、
前記通常制御は、前記停電時起動制御の終了後に実行される制御であって、前記空調温度センサの検出温度が予め設定された温度となるように駆動周波数を調節する制御であり、
電力供給が復帰した時の空調機側温度として前記温度推定部が推定した温度を推定空調機側温度とし、電力供給が停止した時の前記空調温度センサの検出温度を停止時空調機側温度とし、
推定空調機側温度と停止時空調機側温度との差を温度差とし、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時まで時間を停電時間としたとき、
前記駆動制御部は、温度差及び停電時間を利用して、少なくとも駆動周波数の加速度を決定し、前記停電時起動制御は、当該決定された加速度にて駆動周波数を上昇変化させる制御である空調装置。
【請求項2】
電動式の圧縮機を有する冷凍機を利用した空調装置において、
空調対象空間から吸引された空気を冷却又は加熱して当該空調対象空間に供給する熱交換器と、
空調対象空間内の空気温度を検出する室温センサであって、少なくとも停電時には無停電電源から電力が供給される室温センサと、
前記熱交換器にて熱交換される前の空気温度又は前記熱交換器にて熱交換された後の空気温度(以下、これらの温度を空調機側温度という。)を検出する空調温度センサと、
前記圧縮機を駆動する駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を制御する駆動制御部であって、少なくとも停電時起動制御又は通常制御にて駆動周波数を制御可能な駆動制御部と、
前記通常制御にて前記圧縮機が稼働しているときの前記室温センサの検出温度と前記空調温度センサの検出温度との差を利用して前記室温センサの検出温度から空調機側温度を推定する温度推定部とを備え、
前記停電時起動制御は、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時に実行される制御であって、少なくとも3つの起動制御パターンを有する制御であり、
前記通常制御は、前記停電時起動制御の終了後に実行される制御であって、前記空調温度センサの検出温度が予め設定された温度となるように駆動周波数を調節する制御であり、
電力供給が復帰した時の空調機側温度として前記温度推定部が推定した温度を推定空調機側温度とし、電力供給が停止した時の前記空調温度センサの検出温度を停止時空調機側温度とし、
推定空調機側温度と停止時空調機側温度との差を温度差とし、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時まで時間を停電時間としたとき、
前記3つの起動制御パターンのうち第1の起動制御パターンは、温度差が予め決められた値未満であって、停電時間が予め決められた時間以上の場合に実行される起動制御であり、
前記3つの起動制御パターンのうち第2の起動制御パターンは、温度差が予め決められた値以上の場合に実行される起動制御であって、前記第1の起動制御パターンより大きな加速度で駆動周波数を上昇変化させる起動制御であり、
前記3つの起動制御パターンのうち第3の起動制御パターンは、温度差が予め決められた値未満、かつ、停電時間が予め決められた時間未満の場合に実行される起動制御であって、前記第1の起動制御パターンより小さな加速度で駆動周波数を上昇変化させる起動制御、又は駆動周波数が前記第1の起動制御パターン終了時の駆動周波数より低い予め決められた駆動周波数に到達した時に終了する起動制御である空調装置。
【請求項3】
前記室温センサは、空調対象空間内に配置された発熱体にて加熱される前の空気温度を検出する請求項1又は2に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動式の圧縮機を有する冷凍機を利用した空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調装置では、第1の空調機の温度差と第2の空調機の温度差とを比較して2つの空調機を起動させる際の制御を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6578920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、情報通信技術機器(以下、ICT機器という。)が設置された、いわゆるサーバ室を空調する空調装置は、サーバ室から吸引された空気を冷却して当該サーバ室に供給する熱交換器を備えるとともに、当該熱交換器にて発生する冷凍能力を調節することにより、サーバ室内の温度を所定温度範囲に維持する。
【0005】
冷凍能力を調節は、圧縮機の回転数、つまり電動圧縮機を駆動する際の駆動電流の周波数が制御されることにより調節される。そして、圧縮機の駆動制御部は、熱交換器にて熱交換される前の空気温度又は当該熱交換器にて熱交換された後の空気温度(以下、これらの温度を空調機側温度という。)が予め設定された温度となるように駆動周波数を制御する。
【0006】
本開示は、空調機側温度が予め設定された温度となるように駆動周波数が制御される空調装置において、空調対象空間の停電中の温度変化に着目した圧縮機の停電時起動制御の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電動式の圧縮機(2)を有する冷凍機(1)を利用した空調装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0008】
すなわち、当該構成要件は、空調対象空間から吸引された空気を冷却又は加熱して当該空調対象空間に供給する熱交換器(5)と、空調対象空間内の空気温度を検出する室温センサ(S1)であって、少なくとも停電時には無停電電源から電力が供給される室温センサ(S1)と、熱交換器(5)にて熱交換される前の空気温度又は熱交換器(5)にて熱交換された後の空気温度(以下、これらの温度を空調機側温度という。)を検出する空調温度センサ(S2)と、圧縮機(2)を駆動する駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を制御する駆動制御部(6A)であって、少なくとも停電時起動制御又は通常制御にて駆動周波数を制御可能な駆動制御部(6A)と、通常制御にて圧縮機(2)が稼働しているときの室温センサ(S1)の検出温度と空調温度センサ(S2)の検出温度との差を利用して室温センサ(S1)の検出温度から空調機側温度を推定する温度推定部(6B)とを備え、駆動制御部(6A)は、温度差(ΔT)及び停電時間(Ts)を利用して、少なくとも駆動周波数の加速度を決定し、停電時起動制御は、当該決定された加速度にて駆動周波数を上昇変化させる制御である。
【0009】
そして、停電時起動制御は、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時に実行される制御であり、通常制御は、停電時起動制御の終了後に実行される制御であって、空調温度センサ(S2)の検出温度が予め設定された温度となるように駆動周波数を調節する制御である。
【0010】
また、電力供給が復帰した時の空調機側温度として温度推定部(6B)が推定した温度を推定空調機側温度とし、電力供給が停止した時の空調温度センサ(S2)の検出温度を停止時空調機側温度とし、推定空調機側温度と停止時空調機側温度との差を温度差(ΔT)とし、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時まで時間を停電時間(Ts)とする。
【0011】
これにより、当該空調装置によれば、複電後、速やかに圧縮機(2)を起動することができる。延いては、停電が発生した場合であっても、空調対象空間内の空気温度が大きく変化してしまうことが抑制され得る。
【0012】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る空調装置を示す図である。
図2】第1実施形態に係る停電時起動制御の起動パターンを示す図表である。
図3】サーバ室温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0015】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0016】
(第1実施形態)
<1.空調装置の構成>
本実施形態は、通信機器室やサーバ室等(以下、サーバ室という。)の空調を行う空調装置に本開示を適用したものである。つまり、本実施形態に係る空調装置は、サーバ室を空調対象空間とし、当該空調対象空間の気温等を調節する。
【0017】
サーバ室には、少なくとも1台の情報通信技術用機器(以下、ICT機器と記す。)等が設置されている。なお、ICT機器は、無停電電源装置(以下、UPSと記す。)を介して電力が供給されている。
【0018】
図1に示される冷凍機1は、サーバ室内の空調を行うための冷熱を生成する。当該冷凍機1は、電動式の圧縮機2を有する蒸気圧縮式冷凍機により構成されている。具体的には、冷凍機1は、圧縮機2、放熱器3、減圧器4及び蒸発器5、並びに制御装置6、室温センサS1、吸込温度センサS2及び吹出温度センサS3等を有している。
【0019】
圧縮機2は、蒸発器5から流出した低圧の気相冷媒を圧縮する。放熱器3は、圧縮機2から吐出されて温度が上昇した高圧冷媒を冷却する。なお、本実施形態に係る放熱器3では、冷却された冷媒は、凝縮(液化)する。
【0020】
減圧器4は、放熱器3から流出した冷媒を減圧する。本実施形態に係る減圧器4は、温度式膨張弁にて構成されている。温度式膨張弁は、蒸発器5の出口側における冷媒の過熱度が予め決められた値となるように、開度(減圧度)を自動調節する。
【0021】
蒸発器5は、減圧器4にて減圧された液相の冷媒を蒸発させて冷凍能力、つまり冷熱を生成する。具体的には、蒸発器5は、サーバ室に供給する空調風と当該冷媒とを熱交換し、当該空調風を冷却する。
【0022】
空調装置は、冷凍機1に加えて送風機5Aも備える。送風機5Aは、サーバ室内の空気を吸引して蒸発器5に当該空気を送風するとともに、蒸発器5にて冷却された空気をサーバ室に供給する。
【0023】
制御装置6は、圧縮機2及び送風機5A等の空調装置の構成機器を制御する。当該制御装置6には、室温センサS1、吸込温度センサS2及び吹出温度センサS3それぞれの検出値が入力されている。
【0024】
室温センサS1は、サーバ室内の空気温度(以下、サーバ室温T1という。)を検出する。本実施形態に係る室温センサS1は、サーバ室内に配置された発熱体にて加熱される前の空気温度、つまりICT機器にて加熱される前の空気温度を検出する。
【0025】
具体的には、本実施形態に係るサーバ室内は、コールドアイル(冷風供給空間)とホットアイル(温風排気空間)とに分離されている。そして、室温センサS1は、コールドアイル内の空気温度を検出する。
【0026】
コールドアイルは、蒸発器5から供給された冷風を各ICT機器に分配供給するための空間である。ホットアイルは、各ICT機器を冷却して温度が上昇した空気が集合する空間である。そして、送風機5Aは、ホットアイル内の空気を吸引して蒸発器5に供給する。
【0027】
吸込温度センサS2は、蒸発器5にて熱交換される前の空気温度(以下、吸込温度T2という。)を検出する。吹出温度センサS3は、蒸発器5にて熱交換された後の空気温度(以下、吹出温度T3という。)を検出する。
【0028】
室温センサS1には、UPSを介して電力が供給されている。吸込温度センサS2及び吹出温度センサS3には、空調装置の電源(図示せず。)から電力が供給されている。このため、停電が発生すると、吸込温度センサS2及び吹出温度センサS3は停止する。
【0029】
因みに、本実施形態に係る空調装置は、停電時用(非常用)電源装置として、エンジン駆動方式の電源装置(図示せず。)を備える。そして、商用電源からの電力供給が停止すると、自動的にエンジンが始動し、空調装置に電力が供給される。
【0030】
<2.制御装置の制御作動>
制御装置6は、少なくとも駆動制御部6A及び温度推定部6B等を有する。なお、本実施形態に係る制御装置6は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。そして、駆動制御部6A及び温度推定部6Bは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されたソフトウェアがCPUに実行されることにより実現される。
【0031】
<2.1 駆動制御部>
駆動制御部6Aは、インバータ方式の駆動回路(図示せず。)を介して圧縮機2の作動を制御する。具体的には、駆動制御部6Aは、駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を制御する。駆動電流とは、圧縮機2を駆動する電流である。
【0032】
そして、駆動制御部6A(以下、制御装置6と記す。)は、少なくとも停電時起動制御又は通常制御にて駆動周波数を制御可能である。停電時起動制御は、空調装置への電力供給の停止後、電力供給が復帰した時に実行される制御である。なお、停電時起動制御の詳細は、後述する。
【0033】
通常制御は、停電時起動制御の終了後、及び電力が通常供給されているときに実行される制御であって、吸込温度センサS2の検出温度、つまり吸込温度T2が予め設定された温度(以下、設定温度という。)となるように駆動周波数を調節する制御である。
【0034】
具体的には、制御装置6は、吸込温度T2が設定温度より高い場合には、駆動周波数を大きくする。制御装置6は、吸込温度T2が設定温度より低い場合には、駆動周波数を小さくする。これにより、吸込温度T2が設定温度に保持される。
【0035】
なお、本実施形態に係る制御装置6は、「吹出温度T3と設定温度との温度差」又は「吹出温度T3と吸込温度T2との温度差」が予め決められた温度差となるように、送風機5Aの送風量を制御する。換言すれば、制御装置6は、吹出温度T3が予め決められた温度となるように送風機5Aを制御する。
【0036】
<2.2 温度推定部>
温度推定部6Bは、室温センサS1の検出温度(サーバ室温T1)を利用して蒸発器5にて熱交換される前の空気温度を推定する。すなわち、温度推定部6Bは、通常制御にて圧縮機2が稼働しているときのサーバ室温T1と吸込温度T2との差を利用して当該温度を推定する。
【0037】
具体的には、温度推定部6Bは、通常制御時におけるサーバ室温T1と吸込温度T2との差を記憶し、サーバ室温T1と吸込温度T2との関係式又は当該差の値を、機械学習等により取得する。そして、温度推定部6Bは、その取得した関係式又は当該差の値を利用して空気温度を推定する。
【0038】
<2.3 停電時起動制御>
<停電時起動制御の概要>
停電時起動制御とは、温度差ΔT及び停電時間Tsを利用して、駆動周波数の加速度及び上限駆動周波数fmaxを決定し、当該決定された加速度にて駆動周波数を上限駆動周波数fmaxまで上昇変化させる制御である。
【0039】
なお、温度差ΔTとは、推定吸込温度T4と停止時空調機側温度T5との差をいう。推定吸込温度T4とは、停電後、電力供給が復帰した時の吸込温度として温度推定部6Bが推定した温度をいう。
【0040】
停止時空調機側温度T5とは、電力供給が停止した時に吸込温度センサS2が検出した温度をいう。本実施形態では、上記の機械学習のために記憶されている吸込温度T2のうち最新の吸込温度T2である。
【0041】
停電時間Tsは、電力供給の停止後、電力供給が復帰した時まで時間をいう。上限駆動周波数fmaxは、停電時起動制御を終了させる駆動周波数である。つまり、制御装置6は、駆動周波数が上限駆動周波数fmaxに到達すると、圧縮機2の制御を通常制御に移行させる。
【0042】
<停電時起動制御の詳細>
本実施形態に係る停電時起動制御では、制御装置6は、温度差ΔT及び停電時間Tsに基づいて、3つの起動制御パターンの中から実行すべき起動制御を決定した後、その決定した起動制御を実行する(図2参照)。
【0043】
<第1起動制御パターン>
第1起動制御パターンは、温度差ΔTが予め決められた値(例えば、5deg)未満、かつ、0degより大きい場合であって、停電時間Tsが予め決められた時間(例えば、5min)以上の場合に実行される起動制御である。
【0044】
以下、第1起動制御パターンにおける駆動周波数の加速度を基準加速度とし、第1起動制御パターンにおける上限駆動周波数fmaxを基準上限周波数という。なお、基準加速度及び基準上限周波数は、ROM等に予め記憶されている。
【0045】
<第2起動制御パターン>
第2起動制御パターンは、温度差ΔTが上記の予め決められた値以上の場合に実行される起動制御であって、基準加速度より大きな加速度で駆動周波数を上昇変化させる起動制御である。
【0046】
つまり、制御装置6は、温度差ΔTが5deg以上の場合には、停電時間Tsの長さによらず、上記の加速度で駆動周波数を上昇変化させる(図2参照)。なお、第2起動制御パターンに係る上限駆動周波数fmaxは、基準上限周波数と同じである。
【0047】
<第3起動制御パターン>
第3起動制御パターンは、温度差が上記の予め決められた値未満、かつ、0degより大きい場合であって、停電時間Tsが上記の予め決められた時間未満の場合に実行される起動制御である。そして、制御装置6は、基準加速度より小さな加速度で駆動周波数を基準上限周波数まで上昇変化させる。
【0048】
<3.本実施形態に係る空調装置(特に、停電時起動制御)の特徴>
サーバ室内の空気温度は、全体が同一温度(均一温度)となることは稀である。しかし、送風機5Aに吸引された空気は、蒸発器5に到達するまでの間で十分に混合(撹拌)されるため、蒸発器5に到達した空気の温度は、ほぼ均一な温度となっている。
【0049】
つまり、サーバ室から吸引されて蒸発器5に到達した空気は、サーバ室内の空気温度を適切に示す状態の温度(以下、適状温度という。)となっている。そこで、通常制御においては、吸込温度T2が設定温度となるように駆動周波数が制御される。
【0050】
停電が発生すると、送風機5Aが停止するものの、ICT機器はUPSから電力供給を受けて停電中も稼働し続ける。このため、吸込温度センサS2の雰囲気温度とサーバ室温T1との差が停電時間の経過にと共に拡大していく。
【0051】
したがって、電力供給が復帰した時、つまり複電直後に吸込温度センサS2が検出した温度(吸込温度T2)は、サーバ室温T1の温度に比べて低い温度となっている。しかも、停電時間Tsが長くなるほど、複電直後におけるサーバ室温T1と吸込温度T2との差が大きくなる。
【0052】
したがって、複電直後の吸込温度T2を用いて駆動周波数の加速度及び上限駆動周波数fmaxを決定すると、冷却能力が不足する可能性が高く、適切に圧縮機2の作動を制御することができない可能性が高い。
【0053】
これに対して、複電後、送風機5Aが稼働して吸込温度T2が適状温度に到達するために必要な時間(以下、適状時間という。)が経過したときの吸込温度T2を用いて駆動周波数の加速度及び上限駆動周波数fmaxを決定することが可能である。
【0054】
しかし、当該手法では、複電後、適状時間が経過するまで圧縮機2を起動することができないので、サーバ室内の空気温度が更に上昇してしまう。因みに、適状時間は、概ね、数分程度である。
【0055】
これに対して、本実施形態では、吸込温度センサS2の雰囲気温度(推定吸込温度T4)がサーバ室温T1を利用して推定され、かつ、当該推定吸込温度T4が利用されて停電時起動制御に実行される起動制御パターンが決定される。
【0056】
したがって、本実施形態では、複電後、適状時間が経過する前に圧縮機2を起動することができる。延いては、停電が発生した場合であっても、サーバ室内の空気温度が大きく上昇してしまうことが抑制される(図3参照)。
【0057】
本実施形態では、商用電源の停電が発生すると、エンジン駆動方式の非常用電源装置から空調装置に電力が供給されて複電する。エンジン駆動方式の非常用電源装置は、UPS等の蓄電池を用いた非常用電源に比べて複電までに要する時間が長い。
【0058】
さらに、非常用電源装置は、商用電源に比べて供給可能な電力が小さい。このため、仮に、温度差ΔT及び停電時間Tsによらず、同一条件(例えば、第2起動制御パターン)で圧縮機2を起動すると、非常用電源装置を圧迫する可能性がある。
【0059】
しかし、本実施形態では、温度差ΔT及び停電時間Tsに応じて起動制御パターンを選択して圧縮機2を起動するので、非常用電源装置の圧迫が抑制されるとともに、サーバ室内の空気温度が大きく上昇してしまうことが抑制される。
【0060】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、サーバ室がコールドアイル(冷風供給空間)とホットアイル(温風排気空間)とに分離され、かつ、室温センサS1は、コールドアイル内の空気温度を検出する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0061】
すなわち、当該開示は、例えば、室温センサS1がホットアイル内の空気温度を検出する構成、又はサーバ室がコールドアイルとホットアイルとに分離されていない構成であってもよい。
【0062】
上述の実施形態に係る第3起動制御パターンでは、制御装置6は、基準加速度より小さな加速度で駆動周波数を基準上限周波数まで上昇変化させた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0063】
すなわち、当該開示は、例えば、第3起動制御パターンにおいて、制御装置6は、駆動周波数を、基準上限周波数より低い上限駆動周波数fmaxまで基準加速度にて上昇変化させてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、温度差ΔTが予め決められた値以上の場合には、停電時間Tsによらず、駆動周波数の上昇加速度が同じであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、温度差ΔTが予め決められた値以上の場合であっても、停電時間Tsに応じて上昇加速度が異なる構成であってもよい。
【0065】
上述の実施形態に係る温度推定部6Bは、通常制御時におけるサーバ室温T1と吸込温度T2との差を記憶し、サーバ室温T1と吸込温度T2との関係式又は当該差の値を、機械学習等により取得した。
【0066】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、サーバ室温T1と吸込温度T2との関係式又は当該差の値として予め記憶された関係式又は値が記憶され、それらを用いて吸込温度を推定する構成であってもよい。
【0067】
上述の実施形態では、吸込温度T2が設定温度となるように圧縮機2が制御される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、吹出温度T3が設定温度となるように圧縮機2が制御される構成であってもよい。
【0068】
なお、当該構成に係る温度推定部6Bは、サーバ室温T1を利用して蒸発器5にて熱交換された後の空気温度、つまり吹出温度を推定する。当該構成における送風機5Aの送風量は、駆動周波数の関数値として決定される構成であってもよい。
【0069】
上述の実施形態に係る空調装置は、蒸発器5にて室内に供給する空気を直接的に冷却する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、蒸発器5にて冷却された冷水をエアハンドリングユニット等の室内熱交換器に供給することにより、室内に供給する空気を間接的に冷却する構成であってもよい。
【0070】
上述の実施形態に係る空調装置は、空調対象空間を冷却する空調装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、凝縮器3で発生する温熱を利用した暖房にも適用可能である。
【0071】
上述の実施形態に係る停電時起動制御は、温度差ΔT及び停電時間Tsを利用して3つの起動制御パターンの中から起動制御を決定した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、温度差ΔT及び停電時間Tsを利用して少なくとも駆動周波数の加速度を決定し、当該決定された加速度にて駆動周波数を上昇変化させる制御を起動制御とする構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態に係る空調装置は、非常用電源装置として、エンジン駆動方式の電源装置を備えていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、非常用電源装置を備えていない構成、又は蓄電池にて構成された非常用電源装置を備えた構成であってもよい。
【0073】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1… 冷凍機
2… 圧縮機
3… 放熱器
4… 減圧器
5… 蒸発器
5A… 送風機
6… 制御装置
S1… 室温センサ
S2… 吸込温度センサ
S3… 吹出温度センサ
図1
図2
図3