(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115564
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/34 20190101AFI20230814BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20230814BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20230814BHJP
B01D 29/13 20060101ALI20230814BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
F02M37/34
B01D29/06 510B
B01D29/10 510A
B01D29/10 530A
B01D29/14 A
B01D35/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017848
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓真
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕恭
(72)【発明者】
【氏名】亀井 優
(72)【発明者】
【氏名】東 慎也
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA16
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC17
4D116BC76
4D116DD05
4D116EE04
4D116EE06
4D116EE12
4D116KK06
4D116UU20
4D116VV02
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】フィルタ装置の濾過性能を高めるために濾材を分厚くすると、フィルタ装置全体が大きくなって場所をとってしまう。そこで、フィルタの形状を大きくすることなく濾過性能を向上できるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置は、袋状に形成された外側フィルタ10と、外側フィルタ10の内部の容積を保持する内骨部材20と、を有する。内骨部材20は濾過機能を有する内側フィルタから成り、内側フィルタが外側フィルタ10とは別体的に形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ装置であって、
袋状に形成された外側フィルタと、
前記外側フィルタの内部の容積を保持する内骨部材とを有し、
内骨部材は内側フィルタから成って濾過機能を有しており、
該内側フィルタが前記外側フィルタとは別体的に形成されているフィルタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ装置であって、
前記内骨部材が前記外側フィルタの内部の容積を保持する程度に変形しにくい硬質な素材で形成されているフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフィルタ装置であって、
前記内側フィルタが前記外側フィルタよりも目が細かいフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のフィルタ装置であって、
前記内骨部材は起伏がある形状とされるフィルタ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のフィルタ装置であって、
当該フィルタ装置は燃料タンク内に配置される燃料ポンプの吸入口に接続される燃料フィルタ装置であり、
前記外側フィルタは上下に並べられた上側濾材と下側濾材とが互いの周縁部を溶着されて成る扁平形状であるフィルタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルタ装置であって、
前記内骨部材が前記外側フィルタに対する前記内骨部材の位置ずれを防止する位置決め部を有するフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置に関する。実施形態によっては、自動車等の車両のエンジンに燃料を供給する燃料供給装置に用いられる燃料フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-251481号公報には、自動車の燃料タンク内に配置された燃料ポンプに取り付けられるフィルタ装置が開示されている。フィルタ装置は、上下に配置された上側濾材と下側濾材との外周部が互いに溶着された扁平な袋状のフィルタと、上側濾材と下側濾材との間に配置される樹脂製の内骨部材とを有する。内骨部材が燃料ポンプによって負圧になったフィルタ装置の内部の容積を保持することで、燃料が内部を隈なく流れることができるようになり、濾材の面積を有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報のフィルタ装置においてフィルタ内部の容積を保持したままフィルタの濾過性能を高めようとする場合、濾材を分厚くすることが考えられる。その場合フィルタ装置全体が大きくなってしまい、燃料タンク内において場所をとるだけでなく、燃料タンク内への据え付け作業が困難になるという懸念がある。そこで、フィルタの形状を大きくすることなく濾過性能を向上できるフィルタ装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様としてのフィルタ装置は、袋状に形成された外側フィルタと、外側フィルタの内部の容積を保持する内骨部材とを有する。内骨部材は内側フィルタから成って濾過機能を有しており、内側フィルタが外側フィルタとは別体的に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一つの実施形態に係るフィルタ装置が燃料ポンプに接続された状態を示す図である。
【
図2】フィルタ装置がサブタンクに配置された状態を示す断面図である。
【
図5】他の実施形態に係るフィルタ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<フィルタ装置>
以下、種々の実施形態を、
図1-5を用いて説明する。
図1に示すフィルタ装置1は、一つの実施形態として、エンジンを備える車両の燃料タンク内に配置され、燃料ポンプ3の吸入口に取り付けられる燃料フィルタ装置である。燃料ポンプ3はこのフィルタ装置1を通して燃料タンク内の燃料を吸入することで、異物が除去された清浄な燃料をエンジンに供給することができる。
【0008】
図2、3に示すように、フィルタ装置1は袋状を成す外側フィルタ10を有し、その内部が燃料ポンプ3と連通されている。燃料タンク内の燃料はフィルタ装置1の内部を通って燃料ポンプ3に吸入されるようになっている。
【0009】
外側フィルタ10は上側濾材11と下側濾材12とで扁平に形成される。上側濾材11と下側濾材12とはそれぞれ扁平状の不織布から成る。上側濾材11と下側濾材12とはそれぞれ1枚の不織布から成るものであっても良いし、複数枚の不織布が層状に重ねられて形成されたものであっても良い。上側濾材11と下側濾材12とは例えばそれぞれの周縁部に沿って互いに溶着される(溶着部13)。それにより外側フィルタ10は袋状に形成される。
【0010】
<内骨部材>
図2、3に示すように、フィルタ装置1は上側濾材11と下側濾材12との間に設けられる内骨部材20を有する。内骨部材20は厚みのある硬質な濾紙から成る。内骨部材20は、複数の山部21と谷部22とが交互に並ぶ波形状とされる。
図4に示すように、山部21と谷部22とは一方向に沿って直線状に延びる形状とされる。上記により、内骨部材20は剛性が高く変形が生じにくい構造となる。
【0011】
したがって、内骨部材20は燃料ポンプ3の吸引による負圧が外側フィルタ10の内部に掛けられた際に、外側フィルタ10が潰れることを防止する。すなわち、内骨部材20は上側濾材11と下側濾材12との間に挟まって形状を保つことで、上側濾材11と下側濾材12との間隔を保持する。それにより、内骨部材20は外側フィルタ10の内部の容積を確保することができる。内骨部材20により、燃料ポンプ3に吸引された燃料が外側フィルタ10の内部を適切に通過できる。このように内骨部材20は外側フィルタ10の変形による圧力損失の上昇を防ぐことができる。
【0012】
また上述したように、内骨部材20は厚みのある濾紙で形成されている。したがって、内骨部材20は、内側フィルタとして、外側フィルタ10で濾過された燃料を更に濾過する機能も有する。内骨部材20は、外側フィルタ10よりも目が細かい濾紙で構成される。それにより、外側フィルタ10で除去しきれなかった細かい異物を内骨部材20によって除去することができる。
【0013】
内骨部材20は、各山部21と各谷部22とから成る起伏形状により表面積が大きくなる。したがって、内骨部材20が山部21や谷部22を有しない平らな構造と比べて濾過性能を高めることができる。内骨部材20は、各谷部22により外側フィルタ10との間に隙間を有する。このため内骨部材20の圧力損失を抑えることができる。すなわち外側フィルタ10の内側表面に隙間なく密着するような形状の内骨部材が設けられる構成と比べて内骨部材20を目詰まりさせにくくすることができる。
【0014】
<燃料ポンプとの接続>
図2、3に示すように、フィルタ装置1は燃料ポンプ3と連結するための樹脂製の連結部材40を有する。連結部材40は、フィルタ装置1の内部を燃料ポンプ3の吸入口に連通させる接続通路41を有する。
【0015】
連結部材40はさらに接続通路41の端部に設けられたフランジ43に下方から溶着される挟持プレート42を有する。挟持プレート42は例えば超音波溶着を用いてフランジ43に溶着される。
図3に示すように、フランジ43と挟持プレート42との間には、外側フィルタ10の上側濾材11が挟まれて一体的に溶着されるようになっている。それにより、外側フィルタ10が連結部材40と一体的に組み付けられる。上側濾材11は連結部材40の接続通路41を接続するための開口部11aを有する。挟持プレート42もこの上側濾材11の開口部11aに対応する位置に開口部42aを有する。
【0016】
図4に示すように、挟持プレート42はその下面から下方に向かって張り出す複数の張出部42bを有する。各張出部42bは開口部42aの周囲に形成されている。内骨部材20には各張出部42bの張り出しを受け入れることができるように開口する位置決め孔23が形成されている。フィルタ装置1の組み立ての際は、例えば、挟持プレート42に内骨部材20を組み付けてから上側濾材11に下側濾材12を溶着することで、内骨部材20を外側フィルタ10の内部に挟み込むようにする。このとき、内骨部材20は、位置決め孔23が張出部42bに嵌まるようにして挟持プレート42に組み付けられる。内骨部材20は、位置決め孔23に張出部42bが入り込むことで左右方向のずれが規制されるようになっている。このように、位置決め孔23は外側フィルタ10に対する内骨部材20の位置ずれを防止する位置決め部とされる。位置決め孔23の形状は円形状やD字状など任意の適当な形状とすることができ、複数の張出部42bの配置はこの位置決め孔23の形状に対応したものとする。
【0017】
<サブタンク>
図2に示すように、フィルタ装置1と燃料ポンプ3とはサブタンク5の内部に設けることができる。サブタンク5は燃料タンクの内部に配置される。サブタンク5はフィルタ装置1と燃料ポンプ3とを上方から囲う有天円筒状のタンク部50と、タンク部50の下面開口部を覆うように取り付けられるロアカバー60とを有する。タンク部50に対するロアカバー60の取り付けにより、外側フィルタ10の溶着部13がタンク部50とロアカバー60との間でシール状態に挟持される。ロアカバー60には不図示の開口が複数設けられており、各開口を通って燃料が下側濾材12からフィルタ装置1の内部に吸入されるようになっている。
【0018】
サブタンク5には、例えば、燃料ポンプ3から圧送された燃料の一部が不図示のプレッシャレギュレータを介して送られるようにする。これによりサブタンク5の内部には燃料が十分に貯留される。サブタンク5に燃料が十分に貯留されることで、路面の傾斜により燃料タンクが傾いたり自動車の旋回や加速により慣性力が働いたりして燃料が片寄ることでフィルタ装置1の下側から直接燃料を吸入できない場合でも、サブタンク5の内部から燃料を吸入することができる。サブタンク5に貯留された燃料は上側濾材11を通ってフィルタ装置1の内部に吸入される。
【0019】
<利点>
以上をまとめると、フィルタ装置1は袋状に形成された外側フィルタ10と、外側フィルタ10の内部の容積を保持する内骨部材20と、を有する。内骨部材20は内側フィルタから成って濾過機能を有しており、内側フィルタが外側フィルタ10とは別体的に形成されている。このような構成となっていることにより、内骨部材20が袋状の外側フィルタ10を潰れないように支えることができる。これにより、外側フィルタ10の内部の圧力損失を抑えることができる。また内骨部材20が内側フィルタから成ることでフィルタ装置1の濾過性能を高めることができる。
【0020】
また、内骨部材20が外側フィルタ10の内部の容積を保持する程度に変形しにくい硬質な素材で形成されている。このような構成となっていることにより、内骨部材20に外力が掛けられても形状を保ちやすくなる。これにより、内骨部材20が外側フィルタ10の内部の容積を保持しやすくできる。
【0021】
また、内側フィルタが外側フィルタ10よりも目が細かい。このような構成となっていることにより、内骨部材20が外側フィルタ10で捕捉できない小さい異物を捕捉することができる。
【0022】
また、内骨部材20は起伏がある形状とされる。このような構成となっていることにより、内骨部材20の表面積が大きくなることで濾過性能を高めることができる。また起伏の凹部により、内骨部材20が外側フィルタ10との間に隙間を形成する。これによりフィルタ装置1の圧力損失を抑えることができる。
【0023】
また、フィルタ装置1は燃料タンク内に配置される燃料ポンプ3の吸入口に接続される燃料フィルタ装置である。外側フィルタ10は上下に並べられた上側濾材11と下側濾材12とが互いの周縁部を溶着されて成る扁平形状である。このような構成となっていることにより、外側フィルタ10の内部に燃料ポンプ3の吸入により負圧が掛けられても内骨部材20により圧力損失を高めることなく燃料ポンプ3が燃料を吸入することができる。
【0024】
また、内骨部材20が外側フィルタ10に対する内骨部材20の位置ずれを防止する位置決め孔23を有する。このような構成となっていることにより、内骨部材20を外側フィルタ10に対して組み付けやすくできる。
【0025】
<その他の実施形態>
別の実施形態として、フィルタ装置は燃料フィルタの他、エアフィルタや排水フィルタ等の種々のフィルタに適用することができる。またフィルタ装置は自動車の燃料フィルタの他、二輪車や船舶等の燃料フィルタに適用することもできる。
【0026】
別の実施形態として、外側フィルタは扁平形状ではなく筒形状や球形状、その他任意の形状であっても良い。外側フィルタは別体の2枚の濾材を溶着させる例を示したが、1枚の濾材を2つ折りにして周縁部を溶着することで袋状に形成しても良い。外側フィルタの開口部は上側濾材ではなく下側濾材に設けられても良いし、周縁部の一部に形成されてもよい。上側濾材と下側濾材とは不織布以外の濾材で形成されても良い。
【0027】
別の実施形態として、
図5に示すように、内骨部材120は位置決め孔23を有しないものとしても良い。その場合、連結部材140の挟持プレート142は張出部42bを有しないものとする。位置決め部は内骨部材を挟持プレートに対して位置決めできればどのようなものでも良く、孔形状ではなく例えば挟持プレートに係止可能な凸状の構造であってもよい。また内骨部材は上側濾材と下側濾材との挟み込みによる外側フィルタとの摩擦のみによって位置ずれしにくくしても良い。
【0028】
内骨部材の波形状は山部と谷部とがそれぞれ一方向に沿って直線状に延びる例を示したが、別の実施形態として、燃料ポンプの吸入口を中心として波紋状に延びても良い。内骨部材は波形状の他、水平方向に広がる平板部から上下方向に複数の突起部が張り出す形で起伏形状とされるものであっても良い。
【0029】
さらに別の実施形態として、内骨部材は濾紙の他に不織布等の濾過機能を有するもので形成されても良い。内骨部材は外側フィルタと別体的に構成されるものであれば同じもので形成されても良い。
【0030】
以上、様々な実施形態を説明したが、本開示はそれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば他にも各種の変形、置換、改良などが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルタ装置
10 外側フィルタ
11 上側濾材
12 下側濾材
20 内骨部材
23 位置決め孔
3 燃料ポンプ