(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115576
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】展示用フックおよび展示具
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20230814BHJP
A47F 5/11 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A47F5/00 D
A47F5/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017873
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】森 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】京野 健史
(72)【発明者】
【氏名】八尋 史恭
【テーマコード(参考)】
3B118
【Fターム(参考)】
3B118FA05
3B118GA02
3B118GA28
(57)【要約】
【課題】ベース部に対して回動可能なフック部にスパウト部を有する物品を吊り下げることができる展示用フックを提供する。
【解決手段】
スパウト部を有する物品を吊り下げる展示用フック2は、ボードの取付穴に取り付けられるベース部3と、ベース部3に対して基端側を回動可能に支持されるフック部4と、を備え、フック部4には、先端から基端に向かってスパウト部41を進入させる長溝が形成され、フック部4の基端側には、回動中心付近から径方向の外側に向かって回動規制部33が延設され、フック部4は、ベース部3から正面側に向かって延設され、回動規制部33をベース部3に当接させ、スパウト部を長溝に進入させて掛合可能とする使用姿勢P1と、ボードの正面に沿うように上方に延設され、回動規制部33をベース部3から離間させる収納姿勢P2と、の間で回動する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウト部(41)を有する物品(40)を吊り下げる展示用フック(2)であって、
ボード(5)に穿設された取付穴(55)に背面側を貫通させた状態で取り付けられるベース部(3)と、
前記ボードの正面側に配置された前記ベース部に対して基端側を回動可能に支持されるフック部(4)と、を備え、
前記フック部には、先端から基端に向かって前記スパウト部を進入させる長溝(34)が形成され、
前記フック部の基端側には、回動中心付近から径方向の外側に向かって回動規制部(33)が延設され、
前記フック部は、
前記ベース部から正面側に向かって延設され、前記回動規制部を前記ベース部に当接させ、前記スパウト部を前記長溝に進入させて掛合可能とする使用姿勢(P1)と、
前記ボードの正面に沿うように上方に延設され、前記回動規制部を前記ベース部から離間させる収納姿勢(P2)と、の間で回動することを特徴とする展示用フック。
【請求項2】
前記ベース部と前記フック部のいずれか一方には、前記フック部の回動中心となる一対の軸部(32)が左右方向の両側に突設され、
前記ベース部と前記フック部のいずれか他方には、一対の前記軸部を着脱可能、且つ回転可能に支持する一対の支持溝(20)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の展示用フック。
【請求項3】
前記軸部は、
前記フック部を前記使用姿勢にした状態で前記支持溝の内側平面(20C)に面接触する使用平面(32A)と、
前記使用平面に隣接し、前記フック部を前記収納姿勢にした状態で前記内側平面に面接触する収納平面(32B)と、
前記使用平面と前記収納平面との間に形成され、回動中心からの半径を一定とする円周面(32C)と、を有することを特徴とする請求項2に記載の展示用フック。
【請求項4】
前記支持溝は、
前記軸部を嵌合させる嵌合溝部(21)と、
前記嵌合溝部よりも幅狭く形成され、前記嵌合溝部を延長するように切り込まれた調整溝部(22)と、を有し、
前記ベース部と前記フック部のいずれか他方において前記支持溝を構成する部位は、弾性変形可能に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の展示用フック。
【請求項5】
前記ベース部は、
前記ボードの正面に沿って配置される背壁(10)と、
前記背壁の左右方向の両端部から正面側に向かって延設され、上端から下方に向かって前記支持溝が切り込まれている一対の側壁(13)と、を有し、
前記側壁には、前記支持溝を挟んで前後方向に対向する正面挟持片(23)と背面挟持片(24)とが形成され、
前記ベース部を前記ボードに取り付ける前の状態で、前記背面挟持片は、前記正面挟持片よりも前記支持溝を広げるように弾性変形し易く形成され、
前記ベース部を前記ボードに取り付けた状態で、前記背面挟持片は、前記ボードの正面に当接して前記支持溝を広げるような弾性変形を抑制されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の展示用フック。
【請求項6】
前記ベース部は、その上下方向の両側に設けられた上方係合部(11)と下方係合部(12)とを介して前記ボードの前記取付穴に取り付けられ、
前記上方係合部と前記下方係合部のいずれか一方は、前記ボードの正面側から前記取付穴に差し込まれ、前記取付穴の上縁部と下縁部のいずれか一方に係合し、
前記上方係合部と前記下方係合部のいずれか他方は、前記上方係合部と前記下方係合部のいずれか一方を係合させた状態で、前記取付穴の上縁部と下縁部のいずれか他方に接触して弾性変形しながら前記ボードの正面側から前記取付穴に差し込まれ、前記取付穴の上縁部と下縁部のいずれか他方に係合することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の展示用フック。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の1つまたは複数の展示用フック(2)と、
前記展示用フックの前記ベース部が取り付けられる1つまたは複数の取付穴(55)を有するボード(5)と、を備えていることを特徴とする展示具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウト部を有する物品を吊り下げる展示用フックおよび展示具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙ボードの係止孔に取り付けられる支持器(以下、「第1の支持器」と呼ぶ。)が開示されている。第1の支持器は、スパウト付き物品(容器)のスパウト部が係止される係止溝を設けた支持板と、支持板の後板の左右縁部から屈曲するように突設された一対の係止片と、を備えている。係止片が紙ボードの係止孔に挿入されると、第1の支持器は紙ボードの正面に接触した起立状態になる。一方、係止片を係止孔から引き出しながら支持板を倒すと、第1の支持器は支持板を横に延ばした伏状態になり、物品のスパウト部を係止溝に掛けることができる。
【0003】
また、特許文献1には、1本の係止棒を起伏自在(回動自在)に係止板に取り付けた第2の支持器が開示されている。係止棒は係止板の中央部に支持されており、係止板の中央部のみを紙ボードの係止孔から正面側に露出させている。係止板の中央部を除く部分は、紙ボードの背面側に係止されている。係止棒の基部には、係止棒を伏状態にしたときに紙ボードに接触して係止棒を水平に支持するストッパーが設けられている。なお、第2の支持器では、係止棒を貫通させることのできる穴が開いた軽量な物品が吊り下げられると考えられる。また、第2の支持器では、起立状態にした係止棒の先端部は、紙ボードに突き当たるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した第1の支持器では、係止片が屈曲した形状であるため、紙ボードの係止孔に対して係止片を出し入れすることが難しく、起立状態と伏状態との姿勢変更を円滑に行うことができないという問題があった。また、係止孔に係止片を出し入れする際、係止片が係止孔の縁に引っ掛かって紙ボードが破れる虞もあった。
【0006】
上記した問題は第2の支持器によって解決可能である。しかし、一般的に、スパウト付き容器には液体や粒状体等の重量物が封入されることが多いため、1本の係止棒のみでは、重量のあるスパウト付き物品(容器)を吊り下げることが難しかった。
【0007】
仮に、1本の係止棒に代えて、第1の支持器の支持板を係止板に回動自在に取り付け、この支持板に係止棒のストッパーを設けた場合、スパウト付き物品の重さによって、ストッパーが紙ボードに食い込んだり紙ボードを折り曲げたりする虞があった。すると、支持板は水平よりも先端側を下方に回動させた姿勢になり、スパウト付き物品を適正に吊り下げることができない虞があった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、ベース部に対して回動可能なフック部にスパウト部を有する物品を吊り下げることができる展示用フックおよび展示具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スパウト部を有する物品を吊り下げる展示用フックであって、ボードに穿設された取付穴に背面側を貫通させた状態で取り付けられるベース部と、前記ボードの正面側に配置された前記ベース部に対して基端側を回動可能に支持されるフック部と、を備え、前記フック部には、先端から基端に向かって前記スパウト部を進入させる長溝が形成され、前記フック部の基端側には、回動中心付近から径方向の外側に向かって回動規制部が延設され、前記フック部は、前記ベース部から正面側に向かって延設され、前記回動規制部を前記ベース部に当接させ、前記スパウト部を前記長溝に進入させて掛合可能とする使用姿勢と、前記ボードの正面に沿うように上方に延設され、前記回動規制部を前記ベース部から離間させる収納姿勢と、の間で回動する。
【0010】
この場合、前記ベース部と前記フック部のいずれか一方には、前記フック部の回動中心となる一対の軸部が左右方向の両側に突設され、前記ベース部と前記フック部のいずれか他方には、一対の前記軸部を着脱可能、且つ回転可能に支持する一対の支持溝が形成されてもよい。
【0011】
この場合、前記軸部は、前記フック部を前記使用姿勢にした状態で前記支持溝の内側平面に面接触する使用平面と、前記使用平面に隣接し、前記フック部を前記収納姿勢にした状態で前記内側平面に面接触する収納平面と、前記使用平面と前記収納平面との間に形成され、回動中心からの半径を一定とする円周面と、を有してもよい。
【0012】
この場合、前記支持溝は、前記軸部を嵌合させる嵌合溝部と、前記嵌合溝部よりも幅狭く形成され、前記嵌合溝部を延長するように切り込まれた調整溝部と、を有し、前記ベース部と前記フック部のいずれか他方において前記支持溝を構成する部位は、弾性変形可能に形成されてもよい。
【0013】
この場合、前記ベース部は、前記ボードの正面に沿って配置される背壁と、前記背壁の左右方向の両端部から正面側に向かって延設され、上端から下方に向かって前記支持溝が切り込まれている一対の側壁と、を有し、前記側壁には、前記支持溝を挟んで前後方向に対向する正面挟持片と背面挟持片とが形成され、前記ベース部を前記ボードに取り付ける前の状態で、前記背面挟持片は、前記正面挟持片よりも前記支持溝を広げるように弾性変形し易く形成され、前記ベース部を前記ボードに取り付けた状態で、前記背面挟持片は、前記ボードの正面に当接して前記支持溝を広げるような弾性変形を抑制されてもよい。
【0014】
この場合、前記ベース部は、その上下方向の両側に設けられた上方係合部と下方係合部とを介して前記ボードの前記取付穴に取り付けられ、前記上方係合部と前記下方係合部のいずれか一方は、前記ボードの正面側から前記取付穴に差し込まれ、前記取付穴の上縁部と下縁部のいずれか一方に係合し、前記上方係合部と前記下方係合部のいずれか他方は、前記上方係合部と前記下方係合部のいずれか一方を係合させた状態で、前記取付穴の上縁部と下縁部のいずれか他方に接触して弾性変形しながら前記ボードの正面側から前記取付穴に差し込まれ、前記取付穴の上縁部と下縁部のいずれか他方に係合してもよい。
【0015】
本発明に係る展示具は、上記のいずれか1つに記載の1つまたは複数の展示用フックと、前記展示用フックの前記ベース部が取り付けられる1つまたは複数の取付穴を有するボードと、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベース部に対して回動可能なフック部にスパウト部を有する物品を吊り下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る展示具を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る展示具を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る展示具のボードのブランクを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る展示用フックのベース部およびフック部を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る展示用フックのベース部およびフック部を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る展示用フックのベース部およびフック部を示す背面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る展示用フックのベース部およびフック部を示す側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る展示用フックの各姿勢を説明する側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る展示用フックを斜め前上方から示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る展示用フックを斜め後下方から示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る展示用フック(収納姿勢)を示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る展示用フックをボードに取り付ける過程を示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る展示具であって、展示用フックを使用姿勢にした状態を示す側面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る展示具であって、展示用フックを収納姿勢にした状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、方向や位置を示す用語は、主に、展示具の使用時における方向や位置を基準にしている。
【0019】
[展示具の概要]
図1および
図2を参照して、展示具1の概要について説明する。
図1は展示具1を示す正面図である。
図2は展示具1を示す平面図である。
【0020】
展示具1は、複数(例えば12個)の展示用フック2と、ボード5と、を備えている。各々の展示用フック2は、スパウト部41を有する物品40を吊り下げるための部材である。ボード5には、複数の展示用フック2が取り付けられる複数(例えば12個)の取付穴55(
図3参照)が形成されている。例えば、展示具1はボード5の上部に連結された紐S(
図1参照)を介して店舗の壁面に吊り下げられ、物品40は展示用フック2に吊り下げられた状態で展示される。なお、紐SにS字状の金具(図示せず)が取り付けられ、展示具1は、当該金具を介して店舗の壁面に吊り下げられてもよい。また、展示用フック2(取付穴55)の数は1つ以上であればよく、自由に増減してもよい。
【0021】
[物品]
図1および
図2に示すように、物品40は、例えば、所謂スパウト付きパウチであって、液体や粉体等の流動性を有する内容物(図示せず)を収容するための袋部42と、袋部42の上部に固定され、内容物を袋部42から流出させるためのスパウト部41と、を有している。スパウト部41はキャップ(図示せず)で封止されており、スパウト部41の基端部(根本部分)は展示用フック2に引っ掛けるためにフランジ状に形成されている。
【0022】
[ボード]
次に、
図3を参照して、ボード5について説明する。
図3はボード5のブランク5Aを示す平面図である。
【0023】
ボード5は、
図3に示すブランク5Aを組み立てることで形成される。ブランク5Aは、例えば、複数の紙を積層した合紙(厚紙)を抜型等で打ち抜いて形成されている。なお、
図3は、合紙の表面(正面)を示している。本明細書では、合紙の紙目と平行な方向を「紙目方向」と呼び、紙目に直交する方向を「幅方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「幅方向」を示し、「Y」は「紙目方向」を示している。
【0024】
[ブランク]
図3に示すように、ブランク5Aは、取付板50と、一対の第1柱板51と、一対の第2柱板52と、一対の接着板53と、折返板54と、を備えている。なお、一対の第1柱板51、一対の第2柱板52および一対の接着板53は、取付板50を中心として幅方向に線対称となる形状であるため、本明細書では、主に、1つの第1柱板51、1つの第2柱板52および1つの接着板53について説明する。
【0025】
<取付板>
取付板50は、紙目方向を長辺とする略長方形状に形成されている。取付板50には、12個の取付穴55が3行4列の格子状に配列(穿設)されている。各取付穴55は、紙目方向を長辺とする略長方形状に形成された穴である。取付板50の紙目方向の一方(上部)には、紐Sを通すための二対の吊下穴50Aが穿設されている。
【0026】
<第1柱板、第2柱板、接着板>
一対の第1柱板51は、第1折曲線L1を介して取付板50の幅方向の両端に連設されている。一対の第2柱板52は、第2折曲線L2を介して一対の第1柱板51の幅方向の両端に連設されている。一対の接着板53は、第3折曲線L3を介して一対の第2柱板52の幅方向の両端に連設されている。第1柱板51、第2柱板52および接着板53は、それぞれ、幅方向に狭く、紙目方向に細長い略長方形状に形成されている。接着板53には、紙目方向に間隔をあけて4つの押え片53Aが形成されている。各押え片53Aは、接着板53から第2柱板52に食い込むように切り込まれた略コ字状の切目によって区画されている。なお、各押え片53Aには、第3折曲線L3は形成されていない。
【0027】
<折返板>
折返板54は、第4折曲線L4を介して取付板50の紙目方向の一端(上端)に連設されている。折返板54は、紙目方向に狭く、幅方向に細長い略長方形状に形成されている。折返板54には、取付板50の二対の吊下穴50Aに対応するように、二対の吊下穴54Aが穿設されている。なお、折返板54の吊下穴54Aは、取付板50の吊下穴50Aよりも大径に形成されている。
【0028】
なお、第1~第4折曲線L1~L4は、合紙を表面から厚み方向に潰した汎用罫線、複数の切目を入れたミシン線、または合紙を表面(または裏面)から厚み方向に半分程度の切り込んだ半切線等、合紙を所望の向きに折り曲げることができる構造であればよい。また、本明細書では、合紙の裏面を内側に向けるように折ることを「正折り」と呼び、合紙の表面を内側に向けるように折ることを「逆折り」と呼ぶこととする。
【0029】
[ボードの組立]
次に、
図1および
図2を参照して、ボード5の組立手順について説明する。
【0030】
図2に示すように、作業者は、第1柱板51を第1折曲線L1に沿って正折りし、第2柱板52を第2折曲線L2に沿って正折りし、接着板53を第3折曲線L3に沿って逆折りし、接着板53を取付板50の裏面に接着する。これにより、ボード5の背面の左右両側には、略三角柱状の支柱部56が設けられる。なお、接着板53は、取付穴55を塞がない位置に接着される。また、各押え片53Aは、第2柱板52から切り抜かれ、相対的に支柱部56の内側に突出する。
【0031】
図1に示すように、作業者は、折返板54を第4折曲線L4に沿って取付板50の裏側に折り返し(正折りし)、折返板54を取付板50の裏面に接着する。折返板54の吊下穴54Aは、取付板50の吊下穴50Aに略一致する。なお、折返板54の左右両端部は、一対の接着板53の上に重なる。
【0032】
以上によって、ボード5が完成する。なお、紐Sは、各吊下穴50A,54Aを通されてボード5に繋がれる(
図1参照)。
【0033】
なお、ボード5の背面に設けられた一対の支柱部56(第1~第2柱板51,52、接着板53)が省略され、取付板50と折返板54がボード5を構成してもよいし、取付板50のみがボード5を構成してもよい(いずれも図示せず)。また、ボード5(取付板50)には、複数の取付穴55が格子状に配列されていたが、これに限らず、取付穴55の配置は自由に変更してもよい(図示せず)。また、ボード5は、合紙であったが、これに限らず、紙製の段ボール等であってもよい。
【0034】
[展示用フック]
次に、
図4ないし
図7を参照して、展示用フック2について説明する。
図4~
図7は、展示用フック2のベース部3およびフック部4を示す平面図、正面図、背面図および側面図である。なお、
図4~
図7では、下段にベース部3を図示し、上段にフック部4を図示している。また、本明細書では、主に、1つの展示用フック2について説明する。
【0035】
展示用フック2は、ベース部3と、フック部4と、を備えている(
図1および
図2参照)。ベース部3は、ボード5に穿設された取付穴55に背面側を貫通させた状態で取り付けられる。フック部4は、ボード5の正面側に配置されたベース部3に対して基端側を回動可能に支持される。例えば、ベース部3およびフック部4は、それぞれ、合成樹脂で一体成型されている。
【0036】
<ベース部>
ベース部3は、背壁10と、上方係合部11と、下方係合部12と、一対の側壁13と、を有している。なお、一対の側壁13は、背壁10を中心として線対称となる形状であるため、本明細書では、主に、1つの側壁13について説明する。
【0037】
(背壁)
背壁10は、一対の支持壁部14と、上方梁部15と、下方梁部16と、を有している。一対の支持壁部14は、略垂直に起立した姿勢とされ、左右方向に間隔(空隙)をあけて配置されている。一対の支持壁部14の間隔は、取付穴55の左右幅よりも僅かに狭く設定されている。上方梁部15は一対の支持壁部14の上端部に架設され、下方梁部16は一対の支持壁部14の上下方向の中央よりも若干下側に架設されている。一対の支持壁部14、上方梁部15および下方梁部16は、正面から見て略A字形状を形成している(
図5参照)。
【0038】
一対の支持壁部14の内側縁部、上方梁部15および下方梁部16は、後方に突設されており、背面から見て略A字形状となる嵌合部17を形成している(
図6参照)。詳細は後述するが、嵌合部17は、ボード5の取付穴55に僅かな隙間を有して嵌め込まれ、嵌合部17を除く背壁10(一対の支持壁部14)は、ボード5(取付板50)の表面(正面)に沿って配置される。
【0039】
(上方係合部、下方係合部)
上方係合部11は、上方梁部15の後端部(嵌合部17の上端)から上方に向かって延設されている。下方係合部12は、下方梁部16の前端部から前方に延びた後、下方に湾曲しながら折り返され、その後に後方に向かって延設されている(
図7参照)。下方係合部12の先端部は、一対の支持壁部14の間の空隙を通って嵌合部17の下端付近に達している。下方係合部12の先端部には、下方に突き出した爪部12Aが設けられている。下方係合部12は、主に湾曲部分で弾性変形することで、爪部12Aを上下方向に変位させる。
【0040】
(側壁)
一対の側壁13は、背壁10(一対の支持壁部14)の左右方向の両端部から前方(正面側)に向かって延設されている。上記した背壁10には、側壁13との境界に沿って分離溝18が形成されている。分離溝18は、背壁10の上端から中央付近まで切り込まれている。つまり、側壁13は、略下半分で背壁10に連設されている。
【0041】
(支持溝)
側壁13には、上端から下方に向かって支持溝20が切り込まれている(
図7参照)。支持溝20は、側壁13の上端から中央よりも若干上側までの間に形成されている。つまり、支持溝20は、分離溝18よりも若干短く形成されている。支持溝20は、嵌合溝部21と、調整溝部22と、を有している(
図7参照)。嵌合溝部21は支持溝20の上側を構成し、調整溝部22は支持溝20の下側を構成する。嵌合溝部21(支持溝20)は、後述するフック部4の軸部32を着脱可能、且つ回転可能に支持(嵌合)するように形成されている。調整溝部22は、嵌合溝部21を延長するように、嵌合溝部21の底面後端から下方に向かって切り込まれている。調整溝部22は、嵌合溝部21よりも幅狭く、スリット状に形成されている。
【0042】
(正面挟持片、背面挟持片)
側壁13には、支持溝20を挟んで前後方向に対向する正面挟持片23と背面挟持片24とが形成されている(
図4および
図7参照)。換言すれば、正面挟持片23と背面挟持片24とは、ベース部3において支持溝20を構成する部位である。正面挟持片23の下部(根本部分)は、側面から見て、背面挟持片24の下部よりも幅広く形成されている(
図7参照)。背面挟持片24は、分離溝18によって背壁10と分断されている(
図6参照)。背面挟持片24の背面には僅かな凹部が形成されており、背面挟持片24の上部には相対的に後方に突出した当接部24Aが形成されている(
図7参照)。正面挟持片23と背面挟持片24とは、下部を支点に前後方向に弾性変形可能に形成されている。なお、背面挟持片24の下部は正面挟持片23の下部よりも細いため、背面挟持片24は正面挟持片23よりも弾性変形し易くなっている。また、正面挟持片23および背面挟持片24は、側壁13の下側よりも左右方向の厚みが肉厚に形成されている。
【0043】
図7に示すように、正面挟持片23と背面挟持片24との対向する内面は、支持溝20の輪郭(内面)を構成している。嵌合溝部21を構成する正面挟持片23の上側には、正面挟持片23の上端から中央付近に向かって後方に傾斜した呼込み面20Aと、呼込み面20A下端から調整溝部22の上端にかけて軸部32の円周面32Cに合わせて湾曲した湾曲面20Bと、が形成されている。背面挟持片24の内面は、略垂直な内側平面20Cとされ、支持溝20全体の内面を構成している。呼込み面20Aと湾曲面20Bとの境界部は、後方に突出して内側平面20Cに最も接近しており、支持溝20に差し込まれるフック部4の軸部32に干渉するようになっている。なお、調整溝部22を構成する正面挟持片23の下側内面も略垂直な面とされている。
【0044】
<フック部>
図4ないし
図7に示すように、フック部4は、一対のアーム部30と、連結部31と、一対の軸部32と、回動規制部33と、を有している。なお、以下、説明の便宜上、一対のアーム部30を略水平にした姿勢を基準に説明する。また、一対のアーム部30および一対の軸部32は、左右対称となる形状であるため、本明細書では、主に、1つのアーム部30および1つの軸部32について説明する。
【0045】
(アーム部、連結部)
一対のアーム部30は、長溝34を挟んで左右方向に離間し、前後方向に略平行に延設されている。一対のアーム部30全体の左右幅は、ベース部3の一対の側壁13の間に進入可能に設定されている。長溝34は、先端(前端)を開放され、先端から基端(後端)に向かってスパウト部41を進入させるために形成されている(
図2も参照)。連結部31は、一対のアーム部30の基端部(後端部)の間に架設されている。連結部31は、長溝34の終端となっている。
【0046】
(アーム部の詳細)
アーム部30は、掛合板35と、側板36と、を有している(
図4参照)。一対の掛合板35は長溝34を挟んで左右方向に対向し、一対の掛合板35の上面にはスパウト部41の下部(フランジ状部分)が引っ掛けられる。掛合板35の先端側(前部)には、略扇状(1/4円形状)の掛合案内部35Aが形成されている(
図4参照)。一対の掛合案内部35Aは、長溝34の幅を狭めるように内側に突出しており、基端側から先端に向かって上り勾配となっている(
図5参照)。一対の側板36は、一対の掛合板35の左右方向の両外端部に略垂直に立設されている。なお、一対の側板36の基端部(後部)は互いに接近するように屈曲し、一対の側板36の間隔が狭くなっている(
図4参照)。
【0047】
(軸部)
一対の軸部32は、フック部4の基端部(一対の側板36の内側にずれた部分)の左右方向の両側から突設されている。軸部32は、概ね円柱状に形成された突起であって、ベース部3に形成された一対の支持溝20(嵌合溝部21)に嵌合可能に形成されている。詳細は後述するが、一対の軸部32が一対の嵌合溝部21に嵌め込まれることで、フック部4はベース部3に対して回動可能に支持される。つまり、嵌合溝部21に嵌合した軸部32はフック部4の回動中心となる。
【0048】
軸部32の外周面は、使用平面32Aと、収納平面32Bと、円周面32Cと、に区分されている。使用平面32Aおよび収納平面32Bは、軸部32の一部をカットしてできる平らな面である。使用平面32Aは軸部32の後側に形成され、収納平面32Bは軸部32の上側に形成され、使用平面32Aと収納平面32Bとは互いに隣接している。収納平面32Bは掛合板35(側板36)の上面と平行に形成され、使用平面32Aは収納平面32Bの後端から後方に向かって下方に傾斜している(
図7参照)。使用平面32Aと収納平面32Bとが成す内角αは、鈍角(例えば、約105度)に設定されている(
図7参照)。円周面32Cは、使用平面32Aの前端と収納平面32Bの下端との間に形成されている。円周面32Cは、回動中心からの半径を一定とする湾曲した面である。
【0049】
(回動規制部)
回動規制部33は、連結部31の下端(フック部4の基端側の回動中心付近)から下方(径方向の外側)に向かって延設されている。回動規制部33の背面は、連結部31の後端から後方に向かって下方に傾斜し、使用平面32Aと平行に形成されている(
図7参照)。
【0050】
[展示用フックの組立]
次に、
図8ないし
図10を参照して、展示用フック2の組立手順について説明する。
図8は展示用フック2の各姿勢を説明する側面図である。
図9および
図10は展示用フック2を示す斜視図である。
【0051】
通常、展示用フック2の組み立ては、ベース部3をボード5に取り付ける前に行われる。作業者は、フック部4の一対の軸部32をベース部3の一対の支持溝20(嵌合溝部21)に押し込む。軸部32は、正面挟持片23の呼込み面20Aに沿って下方に移動しながら正面挟持片23と背面挟持片24とを互いに離れるように弾性変形させる。上記したように、背面挟持片24が正面挟持片23よりも弾性変形し易く形成されているため、背面挟持片24が支持溝20(嵌合溝部21)を広げるように積極的に弾性変形する。
【0052】
軸部32の押し込みが進むと、軸部32は、呼込み面20Aと湾曲面20Bとの境界部を越えて嵌合溝部21の下部に嵌り込む(
図8の上段参照)。すると、正面挟持片23と背面挟持片24とは自身の復元力によって互いに接近するように弾性変形する(元に戻る)。軸部32は、着脱可能、且つ回動可能な状態で嵌合溝部21に嵌合する。
【0053】
以上によって、フック部4がベース部3に回動可能に連結され、展示用フック2が完成する。なお、ベース部3からフック部4を取り外したい場合、作業者は、ベース部3に対してフック部4を引き上げればよい。軸部32は、上記した嵌合溝部21への押し込みとは逆の順序で、嵌合溝部21から引き抜かれる。
【0054】
[フック部の姿勢]
ここで、
図8ないし
図11を参照して、フック部4の姿勢について説明する。
図11は展示用フック2(収納姿勢P2)を示す斜視図である。
【0055】
フック部4は、ベース部3から前方(正面側)に向かって延設された使用姿勢P1(
図8の上段、
図9および
図10参照)と、ベース部3から上方に向かって延設された収納姿勢P2(
図8の下段および
図11参照)と、の間で回動する。
【0056】
<使用姿勢>
図8の上段、
図9および
図10に示すように、フック部4を使用姿勢P1にした状態では、軸部32の使用平面32Aは支持溝20(背面挟持片24)の内側平面20Cに面接触し、収納平面32Bは上方に向けられている(どこにも接触していない)。また、使用姿勢P1では、回動規制部33(の背面)は、一対の支持壁部14(ベース部3)の正面に当接(面接触)する(
図8の上段参照)。内側平面20Cおよび支持壁部14の正面は略垂直な面であり、使用平面32Aおよび回動規制部33の背面は水平面に対して傾斜しているため、使用平面32A等が内側平面20C等に面接触した状態では、フック部4(アーム部30)は基端(後部)から先端(前部)に向かって上方に傾斜した姿勢になる。本実施形態では、一例として、水平面に対するフック部4の傾斜角度βは約15度とされている。なお、本明細書において、「面接触」とは、接触している面が互いに平行で一定の面積をもって接触している状態を指す。
【0057】
<収納姿勢>
一方、
図8の下段および
図11に示すように、フック部4を収納姿勢P2にした状態では、軸部32の収納平面32Bは支持溝20(背面挟持片24)の内側平面20Cに面接触し、使用平面32Aは下方に向けられ湾曲面20Bに対向している(湾曲面20Bには接触していない)。また、収納姿勢P2では、回動規制部33は、一対の支持壁部14(ベース部3)から上方に離間している。収納姿勢P2とされたフック部4は、ベース部3と略平行となるように略垂直に起立し、一対のアーム部30の側壁13の基端側の上端面が、一対の支持壁部14の正面に僅かな隙間を挟んで対向している。
【0058】
なお、軸部32は、使用平面32Aおよび収納平面32Bを有しているため、嵌合溝部21に嵌合した状態で、一般的な円柱状の軸よりも回動し難くなっている。詳細には、軸部32を回動させる際、軸部32は、使用平面32Aと収納平面32Bとの境界部(角部)を嵌合溝部21(背面挟持片24)の内側平面20Cに押し当て、正面挟持片23と背面挟持片24とを僅かに離間させながら回動する。したがって、フック部4を回動させる作業者には僅かな負荷(抵抗力)が与えられる。また、使用姿勢P1において軸部32は使用平面32Aを内側平面20Cに面接触させた角度(姿勢)を維持しようとし、収納姿勢P2において軸部32は収納平面32Bを内側平面20Cに面接触させた角度(姿勢)を維持しようとする。なお、使用平面32Aまたは収納平面32Bが収納平面32Bに接触した状態では、正面挟持片23と背面挟持片24は、弾性変形していない状態であり、軸部32に挟み込む力を与えていないが、軸部32を僅かに挟み込んでいてもよい。
【0059】
[展示具の組立]
次に、
図12ないし
図14を参照して、展示用フック2をボード5に取り付ける手順、つまり、展示具1の組立手順について説明する。
図12は展示用フック2をボード5に取り付ける過程を示す斜視図である。
図13は展示用フック2を使用姿勢P1にした状態を示す側面図である。
図14は展示用フック2を収納姿勢P2にした状態を示す側面図である。なお、引き続き、1つの展示用フック2(1つの取付穴55)に着目して説明する。また、展示用フック2をボード5に取り付ける際には、フック部4は使用姿勢P1とすることが好ましい。
【0060】
ベース部3(展示用フック2)は、その上下方向の両側に設けられた上方係合部11と下方係合部12とを介してボード5の取付穴55に取り付けられる(
図13参照)。
【0061】
図12に示すように、作業者は、展示用フック2(ベース部3)を上部を後方に倒した姿勢とし、上方係合部11をボード5の正面側から取付穴55に差し込む。上方係合部11は、取付穴55の上縁部に係合する。詳細には、ベース部3(背壁10)の嵌合部17の上端面が、取付穴55の上側内端面に接触(または僅かな隙間をあけて対向)し、上方係合部11が取付穴55の上縁部の背面に接触する。
【0062】
次に、作業者は、上方係合部11を係合させた状態で、上方係合部11の係合部分を支点として展示用フック2(ベース部3)の下部を後方に回動させる(
図12の矢印参照)。下方係合部12の先端側はボード5の正面側から取付穴55に差し込まれ、爪部12Aは取付穴55の下側内端面に接触して下方係合部12の先端側を上方に弾性変形させる。爪部12Aは、下方係合部12の先端側を弾性変形させながら取付穴55を通過すると、取付穴55の下縁部の背面に接触(係合)する(
図13参照)。下方係合部12の先端側は、取付穴55の下側内端面に接触する。
【0063】
以上によって、展示用フック2がボード5に取り付けられ(
図13参照)、展示具1が完成する(
図1および
図2参照)。ベース部3の嵌合部17は取付穴55に対して僅かな遊びを有した状態で嵌合している。ベース部3(展示用フック2)をボード5に取り付けた状態で、背壁10の一対の支持壁部14の背面は、取付穴55の周囲においてボード5(取付板50)の正面に当接している。また、背面挟持片24の当接部24A(の背面)も、ボード5の正面(取付板50)に当接している(
図13参照)。背面挟持片24は、当接部24Aをボード5に突き当てることで、支持溝20を広げるような弾性変形を抑制されている。
【0064】
[展示具の使用方法]
図1、
図2および
図13を参照して、展示具1の使用方法について説明する。完成した展示具1は、フック部4を使用姿勢P1にし、ボード5の上部に取り付けられた紐Sを介して店舗の壁面に吊り下げて使用される。なお、展示具1が店舗の壁面に吊り下げると、ボード5の一対の支柱部56の頂点部(第2折曲線L2)が壁面に突き当たり、取付板50の裏面(背面)と壁面との間には隙間が形成される。したがって、展示用フック2の各係合部11,12等は壁面に接触しない。
【0065】
使用姿勢P1とされたフック部4は、物品40のスパウト部41を長溝34に進入させて掛合可能とされている。作業者は、スパウト部41を一対のアーム部30の掛合案内部35A上に引っ掛けながら長溝34に押し込む。スパウト部41は、一対のアーム部30を左右方向に広げながら一対の掛合案内部35Aの間を通過する。作業者は、スパウト部41を一対の掛合板35の上面に接触させながら長溝34に沿って後方にスライドさせる。スパウト部41が連結部31に突き当たることで、スパウト部41のスライドが規制される。
【0066】
以上によって、物品40がフック部4に吊り下げられた状態で展示される。フック部4には物品40の重さによって下方に回動させようとする力が働くが、使用姿勢P1とされたフック部4では、回動規制部33を一対の支持壁部14(ベース部3)に押し当てることで、物品40の重さ(フック部4を下方に回動させようとする力)に抵抗している。
【0067】
[展示具の梱包方法]
次に、
図14を参照して、展示具1の梱包方法について説明する。完成した展示具1は、フック部4を収納姿勢P2にした状態で、包装箱(図示せず)に収容(梱包)される。なお、展示具1を梱包する場合には、全ての物品40は取り外されている。
【0068】
作業者は、使用姿勢P1とされたフック部4をベース部3に対して上方に回動させて収納姿勢P2にする。軸部32は、使用平面32Aを内側平面20Cに接触させた状態から、収納平面32Bを内側平面20Cに面接触させた状態に回動する。収納姿勢P2とされたフック部4は、ボード5(取付板50)の正面に非接触で沿うように上方に延設される。収納姿勢P2とされたフック部4には、長溝34へのスパウト部41の進入が不能とされている。
【0069】
作業者は、全てのフック部4を収納姿勢P2にした後、包装箱に展示具1を収容する。収納姿勢P2とされたフック部4は、使用姿勢P1とされたフック部4に比べ、ベース部3(またはボード5)からの突出量(寸法)が短くなるため、展示具1を収容するために必要な包装箱のサイズを小さくすることができる。
【0070】
以上説明した本実施形態に係る展示用フック2では、スパウト部41を有する物品40を吊り下げるフック部4がベース部3に対して使用姿勢P1と収納姿勢P2との間で回動可能に支持されていた。また、フック部4を使用姿勢P1としたときに、回動規制部33がベース部3に当接する構成とした(
図13参照)。この構成によれば、物品40の重さは回動規制部33を介してベース部3で受け止められるため、回動規制部33がボード5に食い込んだりボード5を折り曲げたりすることが防止される。これにより、フック部4が使用姿勢P1よりも先端側を下方に回動させた姿勢になることを防止し、フック部4を確りと使用姿勢P1に保持することができる。その結果、ベース部3に対して回動可能なフック部4にスパウト部41を有する物品40を適正に吊り下げることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、収納姿勢P2とされたフック部4がボード5の正面に非接触とされていた(
図14参照)。この構成によれば、例えば、梱包された展示具1を輸送する際の振動等によって、フック部4がボード5の正面を傷つけたり、フック部4がボード5の正面に押し付けられて折れたりすることを予防することができる。仮に、収納姿勢P2とされたフック部4をボード5に押し付ける力が加わったとしても、背壁10や側壁13等が撓んで、一対のアーム部30の側壁13の基端側の上端面が一対の支持壁部14の正面に突き当たる。このため、フック部4がボード5に強く押し付けられることが抑制され、ボード5の損傷等を予防することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、フック部4の軸部32が、ベース部3の支持溝20に着脱可能、且つ回転可能に支持される構成とした。この構成によれば、例えば、吊り下げる物品40の変更に伴い、スパウト部41の大きさや形状等が変わったとしても、変更後のスパウト部41に対応した長溝34を持つフック部4に交換することができる。これにより、スパウト部41(物品40)の変更の度に、展示用フック2全体を交換したり再設計したりする必要が無くなり、フック部4のみを交換すればよいため、スパウト部41(物品40)の変更対応に係るコストを低減することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、フック部4を使用姿勢P1にすると、軸部32の使用平面32Aが支持溝20の内側平面20Cに面接触し、フック部4を収納姿勢P2にすると、軸部32の収納平面32Bが支持溝20の内側平面20Cに面接触していた(
図8参照)。この構成によれば、回動規制部33がベース部3に当接することに加え、使用平面32Aが内側平面20Cに当接することで、使用姿勢P1を確りと保持することができる。また、収納平面32Bが内側平面20Cに当接することで、収納姿勢P2とされたフック部4をボード5の正面に接触しないように保持することができる。さらに、フック部4が使用姿勢P1または収納姿勢P2になる度、フック部4を回動操作する作業者にクリック感を与えることができる。これにより、支持溝20に対する軸部32の回転角度を明確に設定することができ、作業者はフック部4を使用姿勢P1または収納姿勢P2に回動させたことを明確に認識することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、調整溝部22が軸部32を嵌合させる嵌合溝部21の突き当りから延設されていた。この構成によれば、調整溝部22の長さを変更することで、ベース部3の支持溝20を構成する部位(正面挟持片23、背面挟持片24)の長さが変更され、各挟持片23,24の弾性力(軸部32の挟持力)を増減させることができる。例えば、調整溝部22を長く形成することで当該弾性力を弱くすることができ、調整溝部22を短く形成することで当該弾性力を強くすることができる。これにより、嵌合溝部21に変更を加えることなく、嵌合溝部21に対する軸部32の嵌め込み易さ(組立易さ)や軸部32の回動に必要な力を調整することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る展示用フック2によれば、ボード5に取付前のベース部3では、背面挟持片24が撓みやすくなっているため、フック部4の軸部32を支持溝20に容易に嵌め込むことができる。一方、ボード5に取付後のベース部3では(
図13等参照)、背面挟持片24がボード5に突き当たって撓み難くなり、支持溝20(嵌合溝部21)に嵌合した軸部32を抜け難くすることができる。これにより、フック部4(軸部32)がベース部3(支持溝20)に軸支された状態を適正に保持することができる。また、当接部24Aは、背面挟持片24の回動支点となる下端から最も離れた上端部に設けられているため(
図13等参照)、その当接部24Aをボード5の正面に突き当てることで、背面挟持片24の回動(弾性変形)を有効に抑えることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、ベース部3をボード5に取り付ける際、上方係合部11を取付穴55の上縁部に係合させた後、下方係合部12を取付穴55に押し込むことで、下方係合部12が弾性変形しながら取付穴55に差し込まれて下縁部に係合する構成とした(
図12参照)。この構成によれば、上方係合部11と下方係合部12とが取付穴55の上下両縁部に係合するため、ベース部3は取付穴55に対し上下方向に略隙間なく嵌り込む。これにより、ベース部3をボード5(取付穴55)に簡単かつ確りと固定することができる。また、ユーザは下方係合部12を弾性変形させて取付穴55の下縁部から離脱させることで、ベース部3を取付穴55から容易に引き抜くことができる。これにより、例えば、展示具1を廃棄する際、展示用フック2とボード5とを容易に分別することができる。
【0077】
なお、本実施形態に係る展示用フック2では、軸部32に使用平面32Aと収納平面32Bとが形成されていたが、これに限らず、使用平面32Aと収納平面32Bのいずれか一方または両方が省略されてもよい(図示せず)。
【0078】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、支持溝20(嵌合溝部21、調整溝部22)が、ベース部3の側壁13において略垂直に延設されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持溝20が、側壁13の上部前側から下部後側に向かって斜めに延設されてもよいし、側壁13の正面から後方に向かって略水平に延設されてもよい(いずれも図示せず)。
【0079】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、支持溝20が嵌合溝部21と調整溝部22とで構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、調整溝部22が省略され、支持溝20が嵌合溝部21のみで構成されてもよい(図示せず)。他にも、支持溝20に代えて、側壁13の内側面に凹みや貫通した穴が形成され、この凹みや穴が軸部32を着脱不能、且つ回動可能に支持してもよい(図示せず)。また、他にも、シャフトがベース部3(側壁13)とフック部4とを横方向に貫通し、フック部4がシャフトを介してベース部3に回動可能に支持されてもよい(図示せず)。
【0080】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、軸部32がフック部4に設けられ、支持溝20(上記した凹みや穴も含む。)がベース部3に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。これらとは逆に、支持溝20(正面挟持片23、背面挟持片24)がフック部4に設けられ、軸部32がベース部3に設けられてもよい(図示せず)。
【0081】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、軸部32の使用平面32Aと収納平面32Bとの内角αが約105度とされ、使用姿勢P1のフック部4の傾斜角度βが約15度とされていたが、本発明はこれに限定されない。使用姿勢P1のフック部4は、引っ掛けたスパウト部41が外れ難くなるように、前方に向かって上り勾配とすることが好ましいが、例えば、使用姿勢P1のフック部4は水平であってもよい(傾斜角度β=0度、内角α90度)(図示せず)。その他、当該傾斜角度β(内角α)は自由に変更してもよい(図示せず)。
【0082】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、長溝34に1つのスパウト部41が掛合されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、長溝34は、複数のスパウト部41を掛合可能とする長さに形成されてもよい(図示せず)。
【0083】
また、本実施形態に係る展示用フック2では、上方係合部11が上方に延びた舌片状に形成され、下方係合部12が弾性変形する略U字状の板バネのように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。これらとは逆に、上方係合部11が弾性変形する略U字状の板バネのように形成され、下方係合部12が下方に延びた舌片状に形成されてもよい(図示せず)。この場合、下方係合部12を取付穴55の下縁部に係合させた後、上方係合部11を取付穴55に押し込むことで、上方係合部11が弾性変形しながら取付穴55に差し込まれて上縁部に係合する。
【0084】
なお、本実施形態に係る展示具では、展示用フック2の各係合部11,12を含む嵌合部17が略四角形状に形成され、嵌合部17等を嵌合させるボード5の取付穴55も四角形状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。これらは、四角形以外の多角形状や楕円形状に形成されてもよい(図示せず)
【0085】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る展示用フックおよび展示具における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0086】
1 展示具
2 展示用フック
3 ベース部
4 フック部
5 ボード
10 背壁
11 上方係合部
12 下方係合部
13 側壁
20 支持溝
20C 内側平面
21 嵌合溝部
22 調整溝部
23 正面挟持片
24 背面挟持片
32 軸部
32A 使用平面
32B 収納平面
32C 円周面
33 回動規制部
34 長溝
40 物品
41 スパウト部
55 取付穴
P2 収納姿勢
P1 使用姿勢