(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115589
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
H01R13/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017890
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大熊 健允
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087GG14
5E087GG26
5E087JJ07
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】簡単な金型の構造で端子金具を良好に抜止め状態にするコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、キャビティ16Aを有するハウジング16と、ハウジング16に設けられ、キャビティ16Aに挿入された端子金具15を抜止めするランス16Fと、ハウジング16とは別体の部品であって、ハウジング16に取り付けられ、ランス16Fが端子金具15の抜止めを解除する位置へ撓むことを許容し、且つ、ランス16Fがランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する撓み防止部材17と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記端子収容室に挿入された端子金具を抜止めするランスと、
前記ハウジングとは別体の部品であって、前記ハウジングに取り付けられ、前記ランスが前記端子金具の抜止めを解除する位置へ撓むことを許容し、且つ、前記ランスが前記ランスの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する撓み防止部材と、
を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記撓み防止部材は、前記端子金具を抜止めする抜止め部を有している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子金具には、前記ランスが係止する凹部が形成されており、
前記抜止め部は、前記凹部に係止する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記抜止め部は、前記ランスと同じ方向から前記端子金具に接近して前記凹部に係止する請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記抜止め部は、前記撓み防止部材に一対設けられており、
一対の前記抜止め部は、前記端子金具の挿入方向に直交し、且つ、前記端子金具の外面に沿う方向に並んで配置され、
一対の前記抜止め部の間には、前記ランスが配置されている請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記撓み防止部材は、前記ハウジングに係止する一対の係止部を有し、
一対の前記係止部は、一対の前記抜止め部を挟みつつ、前記端子金具の挿入方向に直交し、且つ、前記端子金具の外面に沿う方向に並んで配置されている請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記撓み防止部材は、
前記ランスの撓みを許容する撓み許容位置と、撓みを規制する撓み規制位置と、に前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられ、
前記撓み許容位置にある前記撓み防止部材は、前記ランスが弾性変形して前記端子金具に対する抜止めを解除することを許容しつつ、前記ランスが前記ランスの前記弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止し、
前記撓み規制位置にある前記撓み防止部材は、前記ランスの撓みを規制して、前記ランスによる前記端子金具の抜止め状態を保持する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のジョイントコネクタが開示されている。このものは、コネクタハウジングに形成された挿入溝に治具の先端を差し込み、ロック片を弾性変形させることによって、抜止めされていた端子金具の抜止めが解除される。このコネクタハウジングには、ロック片が治具によって過剰に弾性変形することを防止するストッパが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7-14577号公報
【特許文献2】特開2001-185271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、ストッパがコネクタハウジングに一体に設けられることによって、コネクタハウジングの金型構造が複雑になりがちである。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジングの金型の構造をシンプルにしつつ、ランスが過度に撓むことを防止することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記端子収容室に挿入された端子金具を抜止めするランスと、
前記ハウジングとは別体の部品であって、前記ハウジングに取り付けられ、前記ランスが前記端子金具の抜止めを解除する位置へ撓むことを許容し、且つ、前記ランスが前記ランスの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する撓み防止部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡単な金型の構造で端子金具を良好に抜止め状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示のコネクタを分解して示した分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示のコネクタの側断面図である。
【
図5】
図5は、本開示のコネクタを後方から見た背面図である。
【
図10】
図10は、
図2におけるB-B断面図に相当し、撓み防止部材が仮係止位置に保持された状態を示す。
【
図13】
図13は、本開示のコネクタの側断面図であって、治具を用いて撓み防止部材を本係止位置から仮係止位置に移動させる様子を示す。
【
図14】
図14は、
図5におけるC-C断面図に相当し、撓み防止部材が仮係止位置に保持された状態を示す。
【
図15】
図15は、本開示のコネクタの側断面図であって、治具を用いてランスを弾性変形させる様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)端子収容室を有するハウジングと、ハウジングに設けられ、前記端子収容室に挿入された端子金具を抜止めするランスと、ハウジングとは別体の部品であって、ハウジングに取り付けられ、ランスが端子金具の抜止めを解除する位置へ撓むことを許容し、且つ、ランスがランスの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する撓み防止部材と、を備える。
【0010】
この構成によれば、ハウジングの金型の構造をシンプルにしつつ、ランスがランスの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止することができる。
【0011】
(2)撓み防止部材は、端子金具を抜止めする抜止め部を有していることが好ましい。この構成によれば、撓み防止部材は、端子金具を抜止めする機能(すなわち、リテーナとしての機能)も有しているので、リテーナを別に設けずに済み、部品点数を増やさずに済む。
【0012】
(3)(2)において端子金具には、ランスが係止する凹部が形成されており、抜止め部は、凹部に係止することが好ましい。この構成によれば、端子金具において、凹部を複数設けずに済み、端子金具の形状をシンプルにし易い。
【0013】
(4)(3)において、抜止め部は、ランスと同じ方向から端子金具に接近して凹部に係止することが好ましい。この構成によれば、撓み防止部材は、端子金具との間にランスを挟むように配置されることになるので、ランスが端子金具から遠ざかる方向に過剰に撓むことを良好に防止することができる。また、撓み防止部材が撓み規制位置に保持された場合には、ランスが撓むことを規制するので、ランスが端子金具を抜止めした状態を保持することができる。
【0014】
(5)(2)から(4)のいずれかにおいて、抜止め部は、撓み防止部材に一対設けられており、一対の抜止め部は、端子金具の挿入方向に直交し、且つ、端子金具の外面に沿う方向に並んで配置され、一対の抜止め部の間には、ランスが配置されていることが好ましい。この構成によれば、端子金具からの荷重が各抜止め部に同様にかかるようにしつつ、端子金具からの荷重によってランスが変形することを抑制することができる。
【0015】
(6)(2)から(5)のいずれかにおいて、撓み防止部材は、ハウジングに係止する一対の係止部を有し、一対の係止部は、一対の抜止め部を挟みつつ、端子金具の挿入方向に直交し、且つ、端子金具の外面に沿う方向に並んで配置されていることが好ましい。この構成によれば、一対の係止部が抜止め部を挟みつつ、端子金具の挿入方向に直交し、且つ、端子金具の外面に沿う方向に並んで配置されているので、一対の抜止め部が端子金具に対して係止した状態を安定して保持し易い。
【0016】
(7)撓み防止部材は、ランスの撓みを許容する撓み許容位置と、撓みを規制する撓み規制位置と、にハウジングに対して移動可能に取り付けられる。撓み許容位置にある撓み防止部材は、ランスが弾性変形して端子金具に対する抜止めを解除することを許容しつつ、ランスがランスの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する。撓み規制位置にある撓み防止部材は、ランスの撓みを規制して、ランスによる端子金具の抜止め状態を保持することが好ましい。この構成によれば、撓み許容位置にある撓み防止部材は、ランスが弾性変形して端子金具に対する抜止めを解除することを許容しつつ、ランスがランスの弾性限度を超えて過剰に撓むことを規制するので、ランスを繰り返し弾性変形させることができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
本明細書に開示された技術の実施形態1を
図1から
図15を参照しつつ説明する。以下の説明において、前後の方向については、
図2における左方を前方、右方を後方と定義する。上下の方向については、
図2における上側をそのまま上方とし、下側をそのまま下方と定義する。左右の方向については、
図2における奥側を右方とし、手前側を左方と定義する。
【0018】
[コネクタの構成]
図1に示すように、コネクタ10は、端子金具15、ハウジング16、及び撓み防止部材17を備えている。
図2に示すように、コネクタ10は、シールド電線Wの端部に取り付けられる。端子金具15は、スリーブ11、内導体13、誘電体14、第1外導体15A、第2外導体15Bを有している。スリーブ11、第1外導体15A、第2外導体15B、及び内導体13は、金属で形成されている。誘電体14、ハウジング16、及び撓み防止部材17は、合成樹脂製である。
【0019】
シールド電線Wは、いわゆる同軸線である。シールド電線Wは、複数の素線を撚り合わせた導電性の芯線51と、芯線51の外周を包囲する絶縁性の被覆52と、被覆52の外周を包囲し、素線を網状に編成してなる導電性の編組線53と、編組線53の外周を包囲する絶縁性のシース54と、を有している。芯線51は高周波信号を伝送する機能を有している。編組線53は、電磁波をシールドする機能を有している。シールド電線Wは、シース54と被覆52とを皮剥ぎすることによって、先端側から順に芯線51と、編組線53と、が露出する形態になっている。
【0020】
スリーブ11は、環状をなしている。スリーブ11は、編組線53の外周を包囲して配置され、折り返された編組線53の先端部によって外面が覆われている。スリーブ11は、圧着荷重を受ける機能を有している。
【0021】
内導体13は、金属板を曲げ加工等して成形されている。内導体13は、前側から後側にかけて順に、相手接続部13A、筒状部13B、及び中心導体圧着部13Cを連なって構成される。
【0022】
筒状部13Bは、前後方向に細長い円筒状をなしている。相手接続部13Aは、筒状部13Bから前方へ突出する一対の弾性片13Dによって構成される。各弾性片13Dは、筒状部13Bの軸線を挟んで対向して配置されている。各弾性片13Dの間に前方から相手側内導体のタブ(図示せず)が挿入されると、各弾性片13Dは、拡開してタブを誘い込むとともに、タブを挟み込む。中心導体圧着部13Cは、オープンバレル状をなしており、筒状部13Bの後端に連なっている。中心導体圧着部13Cには、シールド電線Wの露出した芯線51が挿通される。中心導体圧着部13Cは、芯線51に加締め付けられ、これによって内導体13と、芯線51とが連結される。
【0023】
誘電体14は、筒状をなし、前後方向に貫通する断面円形の内導体挿入孔14Aが形成されている。誘電体14の内導体挿入孔14Aには、後方から内導体13が挿入される。
【0024】
第1外導体15Aは、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。第1外導体15Aは、第1筒部15C、第2筒部15Dを有している。第1筒部15C、及び第2筒部15Dは、同軸状に配置されている。第1筒部15Cの外径は、第2筒部15Dの外径よりも大きい。第1筒部15C、及び第2筒部15Dの間には、縮径部15Eが形成されている。縮径部15Eの外径は、第1筒部15C、及び第2筒部15Dの外径よりも小さい。第1筒部15Cは、折り返された編組線53の先端部によって覆われたスリーブ11を包囲している。第2筒部15Dは、第1筒部15Cよりも前方であって、シールド電線Wの被覆52の端部に配置される。第1外導体15Aは、シールド電線Wの前端部に加締め付けられることによって、シールド電線Wに連結される。第2筒部15Dの先端には、誘電体14の後端が隣合って配置されている。
【0025】
第2外導体15Bは、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。第2外導体15Bは、第3筒部15F、及び第4筒部15Gを有している。第3筒部15F、及び第4筒部15Gは、同軸状に配置されている。第3筒部15Fの外径は、第4筒部15Gの外径よりも大きい。
図3に示すように、第3筒部15Fには、外向きに突出する外向き突出部15Uが複数設けられている。第3筒部15Fには、第1外導体15Aの第2筒部15Dが嵌め込まれる(
図2参照)。第4筒部15Gは、第3筒部15Fよりも前方に位置している。
【0026】
第2外導体15Bには、後方から誘電体14が挿入される。
図4に示すように、第2外導体15Bの第3筒部15Fには、内向きに突出した内向き突出部15Rが設けられている。この内向き突出部15Rが、誘電体14の外面に形成された窪み部14Dの後端に前方から当接することによって、誘電体14は、第2外導体15Bに対して前止まり状態にされる。
【0027】
第2外導体15Bの第3筒部15Fには、第1外導体15Aの第2筒部15Dが嵌め込まれ、第2筒部15Dの外面と、第3筒部15Fの内面とが接触した状態にされる(
図2参照)。第1外導体15Aの第2筒部15Dと、第2外導体15Bの第3筒部15Fとは、例えば、スポット溶接を施すことによって連結される。このように、第2外導体15Bと第1外導体15Aとが連結した端子金具15は、第1筒部15Cと第3筒部15Fとの間に縮径部15Eが配置されている。第3筒部15Fの後端は、軸線に対して直交する向きに形成された直交面15Xとして形成されている。直交面15Xは、縮径部15Eの前端の前方に配置されている。端子金具15は、第1筒部15Cと、第3筒部15Fと、縮径部15Eと、によって、周方向の全周にわたって凹んだ形態の凹部15Hが形成されている。
【0028】
図2に示すように、ハウジング16は、前後方向に貫通する端子収容室であるキャビティ16Aを有し、前後方向に長く延びたブロック状をなしている。ハウジング16は、図示しない相手ハウジングに嵌合可能とされている。ハウジング16の上面には、ロックアーム16Bが弾性変形可能に設けられている。ロックアーム16Bは、図示しない相手ハウジングのロック部に弾性的に係止し、ハウジング16と相手ハウジングとを嵌合状態に保持する機能を有している。
【0029】
図5に示すように、ハウジング16には、キャビティ16Aと連通しつつ前後方向に延びる複数の溝16Dが形成されている。
図5における前後方向は、奥側を前方とし、手前側を後方である。これら溝16Dは、キャビティ16Aの軸線から離れる方向に凹んで形成されている。これら溝16Dの前端は、ハウジング16の前後方向中央で閉塞されている(
図6参照)。これら溝16Dの後端は、ハウジング16の後面に開口している。
【0030】
図2に示すように、ハウジング16のキャビティ16Aの下壁には、前向きに片持ち状に突出した形態とされたランス16Fが設けられている。ランス16Fは、キャビティ16Aに挿入された端子金具15を抜止めする機能を有している。ランス16Fの先端部の上側には、前方下向きに傾斜した傾斜面16Pが形成されている。ランス16Fの上側であって、傾斜面16Pよりも後方には、キャビティ16A内に突出する係止突起16Gを有している。係止突起16Gの前端は、上下方向に切り立つ係止面16Hとされている。係止突起16Gは、ランス16Fの先端よりも後方に配置されている。
【0031】
ハウジング16の下壁であってランス16Fの基端部よりも後方の部分には、下向きに突出するように厚肉に形成された厚肉部16Mが設けられている。厚肉部16Mの前端部の下側には、上向き前方に傾斜した傾斜面16Nが形成されている。ハウジング16の下壁であってランス16Fの周囲には、キャビティ16Aの軸線と交差(直交)する方向に開口する挿入孔16Jが貫通して形成されている。挿入孔16Jには、下方から撓み防止部材17が挿入される。
【0032】
図1に示すように、ハウジング16の左右両側の外面の各々には、本保持部16K及び仮保持部16Lが設けられている。本保持部16K及び仮保持部16Lは、前後方向にリブ状をなして延びており、左右方向外向きに突出している。本保持部16K、及び仮保持部16Lは、上下方向に所定の寸法離隔しており、上下方向に並んで配置されている。
【0033】
図7、8に示すように、撓み防止部材17は、矩形平板状の撓み防止本体部17Aと、撓み防止本体部17Aの左右方向の両端から立ち上がる係止部である一対の矩形平板状の側板部17Bと、一対の側板部17Bの間に配置された一対の抜止め部17Dと、を有している。撓み防止部材17は、ハウジング16とは別体の部品であって、ハウジング16に対して移動可能に取り付けられる。撓み防止本体部17Aの後端部の左右方向中央部には、前向きに矩形状に切り欠かれた切欠き部17Hが形成されている(
図8参照)。撓み防止部材17がハウジング16に組み付けられると、撓み防止本体部17Aは、挿入孔16Jの下端開口を閉塞するように配置される(
図9参照)。そして、一対の側板部17Bは、ハウジング16の左右側壁を覆うように配置されてハウジング16の本保持部16K又は仮保持部16Lに係止して、撓み防止部材17をハウジング16に保持する(
図9、10参照)。
【0034】
各側板部17Bの対向する内面の上端部には、係止片17Cが設けられている。これら係止片17Cは、前後方向に延び、互いに近づくように内向きに突出している。各側板部17Bは、撓み防止本体部17Aに連結する部分(基端部)を支点として左右方向外向き(互いに離隔する向き)に弾性変形可能とされている。
【0035】
一対の抜止め部17Dは、一対の側板部17Bよりも左右方向内側の撓み防止本体部17Aに設けられている。これら抜止め部17Dは、前後方向に長く延びつつ左右方向に並び、撓み防止本体部17Aの上面から上向きに突出している。これら抜止め部17Dの前端部は、撓み防止本体部17Aの前端よりも前方に突出している。一対の抜止め部17Dの左右方向の外面と、一対の撓み防止本体部17Aの左右方向の内面との間は、所定の寸法離隔している(
図9参照)。
【0036】
各抜止め部17Dの前後方向中央部には、前後方向両端部よりも上向きに突出して形成された抜止め本体部17Eが一つずつ設けられている。各抜止め本体部17Eの前端は、前後方向に直交する係止面17Fとして形成されている。各抜止め部17Dの左右方向内側の上部には、左右方向中央に向けて下向きに傾斜する傾斜面17Gが形成されている。これら傾斜面17Gは、下向きに凹む曲面として形成されている。
【0037】
撓み防止部材17は、ハウジング16に下方から組み付けられる。このとき、係止片17Cが仮保持部16Lを上向きに乗り越える際に、一対の側板部17Bは、左右方向外向きに弾性変形する。そして、係止片17Cがハウジング16の本保持部16Kと仮保持部16Lとの間に進入すると、一対の側板部17Bは、元の姿勢に復帰する。こうして、撓み防止部材17は、ハウジング16に対して仮係止位置に保持される(
図10参照)。
【0038】
仮係止位置に保持された撓み防止部材17をさらに上向きに押し込む。すると、係止片17Cが本保持部16Kを上向きに乗り越える際に、一対の側板部17Bは、外向きに弾性変形する。そして、係止片17Cがハウジング16の本保持部16Kよりも上方に到達すると、一対の側板部17Bは、元の姿勢に復帰する。すると、係止片17Cは、本保持部16Kによって下方から支持される(
図9参照)。こうして、撓み防止部材17は、ハウジング16に対して本係止位置に保持される(
図9参照)。このとき、一対の抜止め部17Dは、間にランス16Fを挟みつつ挿入孔16Jに挿入される(
図9参照)。
【0039】
[コネクタの組付けについて]
次に、コネクタ10の組み付けについて説明する。先ず、撓み防止部材17がハウジング16に対して仮係止位置に保持された状態にされる(
図10参照)。このとき、ランス16Fは、一対の抜止め部17Dによって、左右方向から挟み込まれた状態になる(
図10参照)。
【0040】
そして、端子金具15が、ハウジング16のキャビティ16Aに後方から挿入される。キャビティ16Aへの端子金具15の挿入過程では、第3筒部15Fの外向き突出部15Uが溝16D内を前向きに移動して、端子金具15の挿入動作が案内される(
図6参照)。撓み防止部材17が仮係止位置にあるときには、各抜止め部17Dがキャビティ16Aから退避して配置される(
図10参照)。このため、キャビティ16Aへの端子金具15の挿入過程において、抜止め部17Dが端子金具15に干渉することが回避される。キャビティ16Aへの端子金具15の挿入過程において、ランス16Fの係止突起16Gに後方から第3筒部15Fの前端が接触すると、ランス16Fは、第3筒部15Fによって下向きに押しのけられて弾性変形する。
【0041】
そして、溝16Dの前端に外向き突出部15Uが当接して、外向き突出部15Uが溝16Dによって前止まり状態にされる(
図6参照)。こうして、端子金具15は、キャビティ16Aに対して正規挿入位置に配置される(
図6参照)。具体的には、
図2に示すように、係止突起16Gの係止面16Hの前方に第3筒部15Fの後端が配置されると、弾性変形したランス16Fが元の姿勢に復帰する。そして、ランス16Fの係止突起16Gが凹部15Hに進入し、係止突起16Gの係止面16Hが第2外導体15Bの直交面15Xに後方から対向して係止可能に配置される。つまり、ランス16Fの係止突起16Gが凹部15Hに係止する。
【0042】
次に、撓み防止部材17が上向きに押し込まれる。すると、撓み防止部材17が本係止位置に至るとともに、抜止め本体部17Eが凹部15Hに進入し、抜止め本体部17Eの係止面17Fは、第2外導体15Bの直交面15Xに後方から対向して係止可能に配置される(
図11参照)。このとき、抜止め部17Dの抜止め本体部17Eは、ランス16Fと同じ方向から端子金具15に接近して凹部15Hに係止する(
図12参照)。そして、抜止め本体部17Eの傾斜面17Gは、第1外導体15Aの縮径部15Eの外面に沿うように配置される(
図12参照)。ランス16Fの下面には、一対の抜止め部17Dの左右方向内側に位置する撓み防止本体部17Aの上面が対向して隣合って配置される(
図12参照)。
【0043】
こうして、係止突起16G、及び抜止め部17Dの抜止め本体部17Eがハウジング16のキャビティ16Aに正規に挿入された端子金具15に係止可能に配置されることによって、端子金具15がキャビティ16Aに抜止め状態に保持される。撓み防止部材17がハウジング16に取り付けられた状態において、一対の抜止め部17Dは、端子金具15のキャビティ16Aへの挿入方向(前後方向)に直交し、且つ、端子金具15の外面に沿う方向に並んで配置される(
図9、12参照)。撓み防止部材17がハウジング16に取り付けられた状態において、一対の抜止め部17Dの間には、ランス16Fが配置されている(
図9、12参照)。撓み防止部材17がハウジング16に取り付けられた状態において、一対の側板部17Bは、一対の抜止め部17Dを挟みつつ、端子金具15のキャビティ16Aへの挿入方向に直交し、且つ、端子金具15の外面に沿う方向に並んでいる(
図9参照)。
【0044】
この状態において、撓み防止部材17の撓み防止本体部17Aは、端子金具15との間にランス16Fを挟みつつ、挿入孔16Jの下端開口を閉塞するように配置される(
図9、12参照)。この状態において、ランス16Fに下向きに外力が付与されたとしても、撓み防止本体部17Aによって、ランス16Fが下向きに撓むことを規制し、ランス16Fが凹部15Hから退避することが防止される。撓み防止部材17がハウジング16に対して本係止位置に保持された状態において、撓み防止部材17の撓み防止本体部17Aは、ハウジング16に対してランス16Fの撓みを規制する撓み規制位置に保持される。撓み規制位置にある撓み防止部材17は、ランス16Fの撓みを規制して、ランス16Fによる端子金具15の抜止め状態を保持する。
【0045】
[ハウジングからの端子金具の抜き取る手順について]
次に、ハウジング16からの端子金具15の抜き取る手順について説明する。
図13に示すように、先ず、ハウジング16に対して本係止位置に保持された撓み防止部材17の下方から切欠き部17Hと厚肉部16Mとの間に治具Tの先端部を挿入する。治具Tには、マイナスドライバー等の先端部が細長く形成されたものを用い得る。そして、厚肉部16Mの前端部(傾斜面16N)を支点として治具Tの角度を変え、てこ作用によって撓み防止部材17を本係止位置から仮係止位置に移動させる。これによって、一対の抜止め部17Dがキャビティ16Aから退避し、抜止め本体部17Eの係止面17Fは、第2外導体15Bの直交面15Xに対向した状態から退避した状態に変化する(
図14参照)。
【0046】
図15に示すように、仮係止位置に保持された撓み防止部材17の撓み防止本体部17Aの上面は、ランス16Fの下面から下方に離隔した状態になる。この状態において、ランス16Fは、撓むことを許容された状態になる。つまり、撓み防止部材17がハウジング16に対して仮係止位置に保持された状態において、撓み防止部材17の撓み防止本体部17Aは、ハウジング16に対してランス16Fの撓みを許容する撓み許容位置に保持される。
【0047】
この状態で、ランス16Fの先端よりも前方に位置する挿入孔16Jに治具Tの先端部を挿入する。そして、挿入孔16Jの前方に隣接するハウジング16の下壁の後端を支点として治具Tの角度を変え、てこ作用によってランス16Fを下向きに弾性変形させる。これによって、ランス16Fの係止突起16Gがキャビティ16Aから退避し、係止突起16Gの係止面16Hは、第2外導体15Bの直交面15Xに対向した状態から退避した状態になる。これによって、ハウジング16から端子金具15を抜き取ることが可能となる。このとき、治具Tの先端部は、ランス16Fの傾斜面16Pに面接触する。このため、ランス16Fの先端部は、治具Tによる変形が抑えられる。
【0048】
治具Tによって下向きに弾性変形したランス16Fの先端部は、撓み許容位置に保持された撓み防止本体部17Aの上面に接触する。これによって、ランス16Fは、ランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことが防止される。つまり、撓み許容位置にある撓み防止部材17は、ランス16Fが弾性変形して端子金具15に対する抜止めを解除するように撓むことを許容しつつ、ランス16Fがランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する。そして、治具Tによってランス16Fを弾性変形させた状態に保持し、ハウジング16から端子金具15を抜き取る。
【0049】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
【0050】
本開示のコネクタ10は、キャビティ16Aを有するハウジング16と、ランス16Fと、撓み防止部材17と、を備える。ランス16Fは、ハウジング16に設けられ、キャビティ16Aに挿入された端子金具15を抜止めする。撓み防止部材17は、ハウジング16とは別体の部品であって、ハウジング16に取り付けられ、ランス16Fが端子金具15の抜止めを解除する位置へ撓むことを許容し、且つ、ランス16Fがランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する。この構成によれば、ハウジング16の金型の構造をシンプルにしつつ、ランス16Fがランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止することができる。
【0051】
撓み防止部材17は、端子金具15を抜止めする抜止め部17Dを有している。この構成によれば、撓み防止部材17は、端子金具15を抜止めする機能(すなわち、リテーナとしての機能)も有しているので、リテーナを別に設けずに済み、部品点数を増やさずに済む。
【0052】
端子金具15には、ランス16Fが係止する凹部15Hが形成されており、抜止め部17Dは、凹部15Hに係止する。この構成によれば、端子金具15において、凹部15Hを複数設けずに済み、端子金具15の形状をシンプルにし易い。
【0053】
抜止め部17Dは、ランス16Fと同じ方向から端子金具15に接近して凹部15Hに係止する。この構成によれば、撓み防止部材17は、端子金具15との間にランス16Fを挟むように配置されることになるので、ランス16Fが端子金具15から遠ざかる方向に過剰に撓むことを良好に防止することができる。また、撓み防止部材17が撓み規制位置に保持された場合には、ランス16Fが撓むことを規制するので、ランス16Fが端子金具15を抜止めした状態を保持することができる。
【0054】
抜止め部17Dは、撓み防止部材17に一対設けられており、一対の抜止め部17Dは、端子金具15の挿入方向に直交し、且つ、端子金具15の外面に沿う方向に並んで配置され、一対の抜止め部17Dの間には、ランス16Fが配置されている。この構成によれば、端子金具15からの荷重が各抜止め部17Dに同様にかかるようにしつつ、端子金具15からの荷重によってランス16Fが変形することを抑制することができる。
【0055】
撓み防止部材17は、ハウジング16に係止する一対の側板部17Bを有し、一対の側板部17Bは、一対の抜止め部17Dを挟みつつ、端子金具15の挿入方向に直交し、且つ、端子金具15の外面に沿う方向に並んで配置されている。この構成によれば、一対の側板部17Bが抜止め部17Dを挟みつつ、端子金具15の挿入方向に直交し、且つ、端子金具15の外面に沿う方向に並んで配置されているので、一対の抜止め部17Dが端子金具15に対して係止した状態を安定して保持し易い。
【0056】
撓み防止部材17は、ランス16Fの撓みを許容する撓み許容位置と、撓みを規制する撓み規制位置と、にハウジング16に対して移動可能に取り付けられる。撓み許容位置にある撓み防止部材17は、ランス16Fが弾性変形して端子金具に対する抜止めを解除することを許容しつつ、ランス16Fがランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことを防止する。撓み規制位置にある撓み防止部材17は、ランス16Fの撓みを規制して、ランス16Fによる端子金具15の抜止め状態を保持する。この構成によれば、撓み許容位置にある撓み防止部材17は、ランス16Fが弾性変形して端子金具15に対する抜止めを解除することを許容しつつ、ランス16Fがランス16Fの弾性限度を超えて過剰に撓むことを規制するので、ランス16Fを繰り返し弾性変形させることができる。
【0057】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0058】
実施形態1とは異なり、抜止め部を一つのみ設けた構成としてもよい。
【0059】
実施形態1とは異なり、第3突出部を一方の係止部に連続して設け、第2突出部を他方の係止部に連続して設ける構成としてもよい。つまり、第2突出部を第3突出部と同様の構成として、第2突出部及び第3突出部の外形をスリットによって形成する構成としてもよい。
【0060】
実施形態1とは異なり、シールド電線に代えてツイストペア線等を用いた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…コネクタ
11…スリーブ
13…内導体
13A…相手接続部
13B…筒状部
13C…中心導体圧着部
13D…弾性片
14…誘電体
14A…内導体挿入孔
14D…窪み部
15…端子金具
15A…第1外導体
15B…第2外導体
15C…第1筒部
15D…第2筒部
15E…縮径部
15F…第3筒部
15G…第4筒部
15H…凹部
15R…内向き突出部
15U…外向き突出部
15X…直交面
16…ハウジング
16A…キャビティ(端子収容室)
16B…ロックアーム
16D…溝
16F…ランス
16G…係止突起
16H…係止面
16J…挿入孔
16K…本保持部
16L…仮保持部
17…撓み防止部材
17A…撓み防止本体部
17B…側板部(係止部)
17C…係止片
17D…抜止め部
17E…抜止め本体部
17F…係止面
17G…傾斜面
51…芯線
52…被覆
53…編組線
54…シース
W…シールド電線