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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115592
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/00 20060101AFI20230814BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20230814BHJP
   B24B 47/14 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B24B27/00 Z
B24B55/06
B24B47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017893
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村尾 大樹
(72)【発明者】
【氏名】川澄 誠
(72)【発明者】
【氏名】志水 秀行
(72)【発明者】
【氏名】星屋 瑛祐
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB23
3C047FF09
3C047HH13
3C158AA03
3C158AA16
3C158AC05
3C158CA01
3C158CB06
3C158DA15
(57)【要約】
【課題】砥石車33の回転を火気器具に該当しない構成により実現させ、もって研削加工を行うことができる研削装置1を提供すること。
【解決手段】被研削材2に取り付け可能なフレーム10と、被研削材2にフレーム10が取り付けられた取付状態において、被研削材2を研削する加工ユニット30と、加工ユニット30にエアーを給排気するロータリージョイント20と、を備え、加工ユニット30は、自転することで被研削材2の表面を研削する砥石車33と、ロータリージョイント20からのエアーの供給を受けて砥石車33を自転させるエアーモーター32と、を有する研削装置1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研削材に取り付け可能なフレームと、
前記被研削材に前記フレームが取り付けられた取付状態において、前記被研削材を研削する加工ユニットと、
前記加工ユニットにエアーを給排気するロータリージョイントと、
を備え、
前記加工ユニットは、自転することで前記被研削材の表面を研削する砥石車と、前記ロータリージョイントからのエアーの供給を受けて前記砥石車を自転させるエアーモーターと、を有する、
研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の研削装置であって、
前記ロータリージョイントは、外部との間でエアーを給排気する固定部と、前記固定部から前記エアーモーターに連通する可変部と、を有し、
前記フレームは、前記可変部を回転させることが可能な動力伝達部材と、前記動力伝達部材を動かすことが可能な原動機と、を付設し、
前記固定部は、前記加工ユニットの研削範囲となる加工面の幾何中心を加工中心とし、前記加工中心から前記被研削材の外方となる離れた位置において、前記フレームに固定され、
前記可変部は、前記加工中心において前記被研削材の外方に延び出す仮想直線を回転軸として、前記固定部に対して回転可能に位置され、
前記原動機は、前記加工ユニットから離れた位置に位置するとともに、前記動力伝達部材を動かし、もって前記固定部に対して前記可変部を回転させ、
前記加工ユニットは、前記可変部の回転に追従して、前記回転軸の周りを前記可変部が回転する方向に公転する、
研削装置。
【請求項3】
請求項2に記載の研削装置であって、
前記加工ユニットには、前記加工ユニットを前記公転の円の径方向にスライドさせる径方向リニアガイドが取り付けられ、
前記径方向リニアガイドは、前記加工ユニットが前記径方向にスライドする径方向送りねじと、前記径方向送りねじに併設されて、この前記径方向送りねじに対する前記加工ユニットの回動を制限する径方向ガイドレールと、を有し、
前記径方向送りねじには、前記径方向送りねじを収容する中空のカバーと、前記可変部から前記カバーに連通するカバー与圧ノズルと、が取り付けられ、
前記カバー与圧ノズルが、前記カバーの内側にエアーを供給し、
さらに、前記径方向を基準とした仰俯角方向に前記加工ユニットを揺動させることで、当該加工ユニットにおける前記仰俯角方向の傾きを調整する揺動フレームを備えている、
研削装置。
【請求項4】
請求項3に記載の研削装置であって、
前記径方向リニアガイドには、エアーが流れることで互いに反対方向に回転する、径方向送りインデックスおよび径方向戻りインデックス、ならびに、前記径方向送りインデックスおよび前記径方向戻りインデックスが伝達する回転を切り替え可能な径方向クラッチが取り付けられ、
前記径方向クラッチは、前記径方向送りインデックスまたは前記径方向戻りインデックスの、いずれか一方を前記径方向送りねじから離間状態にし、他方を前記径方向送りねじに近接状態にして、他方の回転を前記径方向送りねじに伝達し、もって前記加工ユニットの送り状態および前記加工ユニットの戻り状態を切替える、
研削装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の研削装置であって、
前記加工ユニットは、前記被研削材の表面に対して包囲空間を形成する囲みを有し、
前記加工ユニットには、前記ロータリージョイントからのエアーの流れを受け、前記包囲空間内の粉体をエアーとともに吸引する集塵機構が付設されている、
研削装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の研削装置であって、
前記加工ユニットには、前記ロータリージョイントからのエアーの供給を受け、このエアーを前記砥石車にブローして前記砥石車を冷却するドライノズルが付設されている、
研削装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の研削装置に用いられる制御装置であって、
前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量と、前記記憶流量に対応する前記砥石車の自転速度となる記憶自転速度と、の対応関係を記憶する記憶部、
前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量を計測する計測部、および、
前記対応関係から、前記実測流量に対応する前記砥石車の自転速度となる算定自転速度を算定する算定部、を備えている、
制御装置。
【請求項8】
請求項2から請求項4のうちのいずれか一項に記載の研削装置に用いられる制御装置であって、
前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量と、前記記憶流量に対応する前記加工ユニットにおける公転角速度となる記憶公転角速度と、の対応関係を記憶する記憶部、
前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量を計測する計測部、および、
前記対応関係から、前記実測流量に対応する前記加工ユニットの公転角速度となる算定公転角速度を算定する算定部、を備えている、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被研削材を研削する加工ユニットを備えた研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機の製造分野では、軽量で高強度な炭素繊維複合材のシート(以下、「CFRPシート」という。)が盛んに使用されてきている。例えば、航空機の胴体や翼の外表面を形成する外板は、CFRPシートなどが用いられている。
【0003】
一方で、CFRPシートが用いられた箇所が衝撃等を受けて損傷すると、修復・補修が必要となる。例えば、メンテナンス時において、衝撃等により損傷した部位(欠陥部位)があることが見つかると、その欠陥部位を除去し、さらにスカーフサンディング加工を経て、修理・補修が行われることとなる。ここで、スカーフサンディング加工は、特許文献1にあるように、欠陥部位を除去した凹部への応力集中を避けるために、その周囲を一層毎に剥がし、すり鉢状に削り取る研削工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-159406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、研削材として砥石車たるダイヤモンドホイールが用いられ、このダイヤモンドホイールが外周面で被研削材を研削するよう、円板が垂直に立てられた状態で装置に取り付けられている。そうすると、この装置は、ダイヤモンドホイールを自転させて被研削材を研削することとなる。ここで、ダイヤモンドホイールを自転させる動力源としてモーターが想定されるが、この動力源については火気器具に該当しない構成が望まれていた。
【0006】
そのため、本開示は、砥石車の自転を火気器具に該当しない構成により実現させ、もって研削加工を行うことができる研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る研削装置は次の手段をとる。
【0008】
まず、第1の開示は、被研削材に取り付け可能なフレームと、前記被研削材に前記フレームが取り付けられた取付状態において、前記被研削材を研削する加工ユニットと、前記加工ユニットにエアーを給排気するロータリージョイントと、を備え、前記加工ユニットは、自転することで前記被研削材の表面を研削する砥石車と、前記ロータリージョイントからのエアーの供給を受けて前記砥石車を自転させるエアーモーターと、を有する、研削装置である。
【0009】
第1の開示に係る研削装置によれば、本装置に係る加工ユニットは、取付状態において、エアーモーターにより砥石車を自転させ、その自転により被研削材の表面を研削する。ここで、加工ユニットは、ロータリージョイントからエアーモーターにエアーを給排気することで駆動する。これにより、本装置は、砥石車の回転を火気器具に該当しない構成により実現させ、もって研削加工を行うことができる研削装置を提供することができる。
【0010】
ここで、第1の開示に係る研削装置は、後述する第2の開示に係る研削装置であっても良い。この第2の開示に係る研削装置においては、前記ロータリージョイントは、外部との間でエアーを給排気する固定部と、前記固定部から前記エアーモーターに連通する可変部と、を有し、前記フレームは、前記可変部を回転させることが可能な動力伝達部材と、前記動力伝達部材を動かすことが可能な原動機と、を付設し、前記固定部は、前記加工ユニットの研削範囲となる加工面の幾何中心を加工中心とし、前記加工中心から前記被研削材の外方となる離れた位置において、前記フレームに固定され、前記可変部は、前記加工中心において前記被研削材の外方に延び出す仮想直線を回転軸として、前記固定部に対して回転可能に位置され、前記原動機は、前記加工ユニットから離れた位置に位置するとともに、前記動力伝達部材を動かし、もって前記固定部に対して前記可変部を回転させ、前記加工ユニットは、前記可変部の回転に追従して、前記回転軸の周りを前記可変部が回転する方向に公転する、ものである。
【0011】
第2の開示に係る研削装置によれば、本装置に係る原動機は、加工ユニットから離れて位置するとともに、動力伝達部材を動かし、もって固定部に対して可変部を回転させることとなる。これにより、本装置は、加工ユニットの周囲から火気器具に該当する構成を離間させることができる。
【0012】
また、本装置は、ロータリージョイントと、加工ユニットと、の間で配管・配線のねじれを生じさせずに被研削材の研削加工を行うことができる。
【0013】
ここで、第2の開示に係る研削装置は、後述する第3の開示に係る研削装置であっても良い。この第3の開示に係る研削装置においては、前記加工ユニットには、前記加工ユニットを前記公転の円の径方向にスライドさせる径方向リニアガイドが取り付けられ、前記径方向リニアガイドは、前記加工ユニットが前記径方向にスライドする径方向送りねじと、前記径方向送りねじに併設されて、この前記径方向送りねじに対する前記加工ユニットの回動を制限する径方向ガイドレールと、を有し、前記径方向送りねじには、前記径方向送りねじを収容する中空のカバーと、前記可変部から前記カバーに連通するカバー与圧ノズルと、が取り付けられ、前記カバー与圧ノズルが、前記カバーの内側にエアーを供給し、さらに、前記径方向を基準とした仰俯角方向に前記加工ユニットを揺動させることで、当該加工ユニットにおける前記仰俯角方向の傾きを調整する揺動フレームを備えている、ものである。
【0014】
なお、ここでいう「径方向を基準とした仰俯角方向」とは、径方向およびこの径方向に対応する周方向の両方向に広がる仮想的な平面に対して傾く方向のことをいう。
【0015】
第3の開示に係る研削装置によれば、本装置に係る径方向リニアガイドは、径方向送りねじを回動させることで、回動が制限された加工ユニットを、加工ユニットが公転する円の径方向にスライドさせている。これにより、加工ユニットをスライドさせた後の研削による軌跡であるスライド後軌跡は、加工ユニットをスライドさせる前の研削による軌跡であるスライド前軌跡の中心である加工中心に対して同心状に併設させることができる。
【0016】
また、本装置に係るカバー与圧ノズルが、カバーの内側にエアーを供給している。そうすると、カバーの内側はカバーの外側より気圧が高くなり、加工面から生じた粉体はカバーの内側に入りにくくなる。これにより、カバーの内側に収容された径方向送りねじが、粉体にさらされるおそれを低減することができる。
【0017】
ところで、スカーフサンディング加工においては、被研削材に対して研削の角度を一定にすることが肝要とされている。ここで、本装置に係る揺動フレームは、加工ユニットにおける上記仰俯角方向の傾きを一定の角度となるように調整することができる。これにより、加工ユニットにおける砥石車は、被研削材を一定の研削角度で研削することができる。
【0018】
ここで、第3の開示に係る研削装置は、後述する第4の開示に係る研削装置であっても良い。この第4の開示に係る研削装置においては、前記径方向リニアガイドには、エアーが流れることで互いに反対方向に回転する、径方向送りインデックスおよび径方向戻りインデックス、ならびに、前記径方向送りインデックスおよび前記径方向戻りインデックスが伝達する回転を切り替え可能な径方向クラッチが取り付けられ、前記径方向クラッチは、前記径方向送りインデックスまたは前記径方向戻りインデックスの、いずれか一方を前記径方向送りねじから離間状態にし、他方を前記径方向送りねじに近接状態にして、他方の回転を前記径方向送りねじに伝達し、もって前記加工ユニットの送り状態および前記加工ユニットの戻り状態を切替える、ものである。
【0019】
ここで、径方向送りインデックスおよび径方向戻りインデックスは、エアーが流れることで、所定の回転数のみ回転するものである。
【0020】
第4の開示に係る研削装置によれば、本装置に係る径方向送りインデックスおよび径方向戻りインデックスは、エアーが流れることで互いに反対方向に回転する。そして、径方向送りインデックスまたは径方向戻りインデックスの、いずれか一方は、径方向クラッチにより、径方向送りねじから離間状態とされ、他方は、径方向送りねじに近接状態とされる。そうすると、径方向クラッチが働いていないときは、径方向送りインデックスの回転および径方向戻りインデックスの回転を径方向送りねじが受けることなく、加工ユニットの位置が留められることとなる。一方、径方向クラッチが働いているときは、径方向送りインデックスの回転または径方向戻りインデックスの回転の、いずれか一方を径方向送りねじが受け、加工ユニットが、規定のピッチで送られたり、戻されたりすることとなる。これにより、加工ユニットを加工面の研削幅毎に送ったり、戻したりすることができる。
【0021】
ここで、第1の開示から第4の開示のうちのいずれか一つに係る研削装置は、後述する第5の開示に係る研削装置であっても良い。この第5の開示に係る研削装置においては、前記加工ユニットは、粉体をエアーとともに吸引する集塵機構が付設され、前記集塵機構は、前記被研削材の表面に対して包囲空間を形成する囲みと、前記ロータリージョイントからのエアーの流れを受けて前記包囲空間内の粉体をエアーとともに吸引する集塵ユニットと、を備えている、ものである。
【0022】
第5の開示に係る研削装置によれば、本装置に係る集塵機構は、被研削材の表面における粉体を集塵するものである。粉体は、囲みによって形成された包囲空間の内側で生じ、包囲空間の外側に飛散することが抑えられることとなる。そして、ロータリージョイントからのエアーの流れを受ける集塵ユニットは、包囲空間の内側の粉体をエアーとともに吸引することとなる。これにより、粉体を加工ユニットの周囲に飛散させることを抑制して、集塵することができる。
【0023】
ここで、第1の開示から第5の開示のうちのいずれか一つに係る研削装置は、後述する第6の開示に係る研削装置であっても良い。この第6の開示に係る研削装置においては、前記加工ユニットには、前記ロータリージョイントからのエアーの供給を受け、このエアーを前記砥石車にブローして前記砥石車を冷却するドライノズルが付設されている、ものである。
【0024】
第6の開示に係る研削装置によれば、本装置に係るドライノズルは、砥石車にエアーをブローすることで、砥石車を冷却しつつ、ドライ加工を可能としている。さらに、砥石車の研削面の目詰まりが抑制され、研削力の低下を抑えることができる。
【0025】
ここで、第1の開示から第6の開示のうちのいずれか一つに係る研削装置に用いられる制御装置は、後述する第7の開示に係る制御装置であっても良い。この第7の開示に係る制御装置においては、前記エアーモーターは、エアーの供給を制御する制御装置を有し、前記制御装置は、前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量と、前記記憶流量に対応する前記砥石車の自転速度となる記憶自転速度と、の対応関係を記憶する記憶部、前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量を計測する計測部、および、前記対応関係から、前記実測流量に対応する前記砥石車の自転速度となる算定自転速度を算定する算定部、を備えている、ものである。
【0026】
第7の開示に係る制御装置によれば、本制御装置は、エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量および記憶流量に対応する砥石車の自転速度となる記憶自転速度について、記憶部で記憶している。そして、エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量を計測部で計測し、実測流量および対応関係から、砥石車の自転速度となる算定自転速度を算定部で算定している。これにより、加工ユニットが被研削材を研削する際に、砥石車の算定自転速度を算定することができる。
【0027】
ここで、第2の開示から第4の開示のうちのいずれか一つに係る研削装置に用いられる制御装置は、後述する第8の開示に係る制御装置であっても良い。この第8の開示に係る制御装置においては、前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量と、前記記憶流量に対応する前記加工ユニットにおける公転角速度となる記憶公転角速度と、の対応関係を記憶する記憶部、前記エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量を計測する計測部、および、前記対応関係から、前記実測流量に対応する前記加工ユニットの公転角速度となる算定公転角速度を算定する算定部、を備えている、ものである。
【0028】
第8の開示に係る制御装置によれば、本制御装置は、エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量および記憶流量に対応する前記加工ユニットにおける公転角速度となる記憶公転角速度について、記憶部で記憶している。そして、エアーモーターに流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量を計測部で計測し、実測流量および対応関係から、加工ユニットの公転角速度となる算定公転角速度を算定部で算定している。これにより、加工ユニットが被研削材を研削する際に、加工ユニットの算定公転角速度を算定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本開示は、上記の構成をもつことにより、砥石車の回転を火気器具に該当しない構成により実現させ、もって研削加工を行うことができる研削装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態に係る研削装置1の正面図である。
図2図1のII-II線断面矢視図である。
図3図1の研削装置1の右側面図である。
図4図2のロータリージョイント20の正面図である。
図5】回転軸5を中心に加工ユニット30が公転6することを説明する説明図である。
図6図2のVI-VI線断面における主要部分を表した図である。
図7図2の径方向リニアガイド40を説明する説明図である。
図8図7の径方向リニアガイド40の斜視図である。
図9図8の径方向クラッチ47を説明する説明図である。
図10図2の深さ方向リニアガイド50を説明する説明図である。
図11図10の砥石車33を説明する説明図である。
図12図11の砥石車33および囲み61の斜視図である。
図13図6の集塵ユニット62の説明図である。
図14図1の情報の流れを説明する説明図である。
図15図1の研削装置1の使用方法を説明する説明図である。
図16図14の第1制御プログラム110により実行される一連のステップを表したフローチャートである。
図17図16のサブルーチン1を表したフローチャートである。
図18図16のサブルーチン2を表したフローチャートである。
図19図16のサブルーチン3を表したフローチャートである。
図20図16のサブルーチン4を表したフローチャートである。
図21図20のサブルーチン5を表したフローチャートである。
図22図16のサブルーチン6を表したフローチャートである。
図23図22のサブルーチン7を表したフローチャートである。
図24図5の下穴8の削り広げを説明する説明図である。
図25図2に仮想線で表した加工面3の模式図である。
図26図14の第2制御プログラム210により実行される一連のステップを表したフローチャートである。
図27図26のステップK40で用いられるテーブル231の説明図である。
図28図14の表示部280の表示内容を表した画像図である。
図29図14の第3制御プログラム310により実行される一連のステップを表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1の実施形態>
以下、図面を用いて本開示の第1の実施形態に係る研削装置1を説明する。この研削装置1は、図2に示すように、被研削材2に取り付けられた取付状態を実現可能なフレーム10と、該取付状態にて被研削材2を研削する加工ユニット30とを有する。
【0032】
<被研削材の構成>
本実施形態では、被研削材2は、構造物や輸送機械等の外板用素材たるCFRPシートである。被研削材2には、直円筒形状をなす下穴8が予め形成されている。この下穴8は、被研削材2における損傷部位(欠陥部位)を削り取った跡である。また、被研削材2は、加工ユニット30により下穴8の周縁8F(図5参照)が削り広げられて、下穴8の底面8Aに対して傾きαとなるすり鉢状の穴8C(図25参照)を有する形状に加工される。
【0033】
この加工の過程において、下穴8の周縁8Fには、図25に仮想線で示すように、下穴8の穴側面8Bを加工ユニット30が公転6しながら研削した跡である円環穴9が形成される。すなわち、円環穴9は下穴8の周縁8Fを包含する。
【0034】
円環穴9は、図24に示すように、被研削材2の削り広げにおける「削り始めの基準」(scratch)として形成される。また、円環穴9は、図25に仮想線で示すように、後述する回転軸5を中心とした径方向でみて、この回転軸5からの距離が一定の距離範囲に収まる円環状の領域に形成される。この領域は、研削装置1から見て所定の位置公差の範囲内で位置ずれが生じうる下穴8に対し、この下穴8の穴側面8Bを上記位置ずれのいかんによらず完全包含するように設定される。
【0035】
すなわち、円環穴9の外径9Dは、下穴8の外径8Dよりも大きく設定され、円環穴9の内径9Cは、下穴8の外径8Dよりも小さく設定される。そして、円環穴9の外周9Fは、上記位置ずれのいかんによらず、上記径方向の外方から下穴8の穴側面8Bを取り巻く状態に位置される。また、円環穴9の内周9Eは、上記位置ずれのいかんによらず、下穴8の穴側面8Bにより上記径方向の外方から取り巻かれた状態に位置される。これによれば、研削装置1から見た下穴8の位置ずれの誤差が、被研削材2の削り広げにおける「削り始めの基準」(scratch)に伝播されることを抑えて、加工ユニット30が研削するすり鉢状の穴8Cの加工精度を向上させることができる。
【0036】
<第1の実施形態に係る研削装置>
研削装置1は、図2に示すように、上記取付状態において、研削装置1に備えられたロータリージョイント20から給気を受けた加工ユニット30により被研削材2を研削するものである。この加工ユニット30は、ロータリージョイント20からの給気によりローター軸32B(図10参照)を回転させるエアーモーター32を有し、もって該ローター軸32Bに固定された砥石車33を自転させる(すなわち、ローター軸32Bを中心に回転させる)。
【0037】
<研削装置の構成>
研削装置1は、フレーム10と、加工ユニット30と、加工ユニット30にエアーを給排気するロータリージョイント20と、を備える。以下にフレーム10と、ロータリージョイント20と、ロータリージョイント20から給排気を受ける構成(加工ユニット30を含む)と、上記給排気を制御する制御装置(後述するコンピューター100。図1参照)とを説明する。
【0038】
<フレームの構成>
フレーム10は、ロータリージョイント20を介してメインフレーム18を旋回可能に支持する円板状のベースフレーム11と、ベースフレーム11の縁部から、その板面の片側に延び出す吸着アッセンブリ12とを有する。これら吸着アッセンブリ12は、それぞれ、上記片側に延び出す部分に、被研削材2に吸着する吸着脚80を備える。この吸着は、ロータリージョイント20に係るエアー系統とは別のエアー系統から吸着脚80への給気によって実現される。この給気は、後述する制御電磁弁(図示せず)および研削電磁弁(図示せず)とは別の開閉弁にて制御される。
【0039】
<フレームの詳細>
ここで、ベースフレーム11には、ロータリージョイント20が備える固定部21を固定する固定フレーム13(図3参照)が付設されている。この固定フレーム13は、固定部21を、加工中心4(本実施形態では例えば加工ユニット30の研削範囲たる加工面3の幾何中心。図5参照)から被研削材2の外方となる離れた位置(すなわち上記片側とは反対側となる位置)に固定する。また、ベースフレーム11には、ロータリージョイント20が備える可変部22を旋回させる旋回用リングギア14と、旋回用リングギア14を旋回させる旋回用サーボモーター16と、が付設されている。ここで、固定フレーム13は、図1に示すように、旋回用リングギア14の旋回に際し、これと干渉しないように位置される。ここで、旋回用リングギア14は本開示における「動力伝達部材」に相当し、旋回用サーボモーター16は本開示における「原動機」に相当する。
【0040】
<旋回用リングギアの構成>
旋回用リングギア14は、図2に示すように、旋回用サーボモーター16が回転させるローラピニオン17とかみ合う伝達用歯14A(図1参照)を有して、上記可変部22と一体に旋回するように構成されている。
【0041】
<旋回用リングギアの詳細>
旋回用リングギア14は、ベースフレーム11に対し、旋回用ベアリング15を介して付設される。これにより、旋回用リングギア14は、その旋回が容易とされる。また、旋回用リングギア14には、加工ユニット30が後述する減速位置または原点位置に位置したときに、これを旋回用サーボモーター16に検知させる複数のドグ(図示せず)が設けられている。
【0042】
<旋回用サーボモーターの構成>
旋回用サーボモーター16は、加工ユニット30およびロータリージョイント20から離れて位置される。
【0043】
<旋回用サーボモーターの詳細>
旋回用サーボモーター16は、上記取付状態においてベースフレーム11における被研削材2と向き合う側の反対側の面(すなわち上記片側の面)に位置している。この構成は、旋回用サーボモーター16が被研削材2から生じた粉体(図示省略)にさらされることを抑える。また、旋回用サーボモーター16は、上記ドグを検知する検知部(図示せず)を備え、加工ユニット30が減速位置に位置すること、および加工ユニット30が原点位置に位置することを検知する。この検知の検知結果は、加工ユニット30からコンピューター100(図1参照)に送られる。このコンピューター100は、上記検知結果から、算定公転角速度(すなわち加工ユニット30が公転6(図5参照)する公転角速度)を算定する。なお、公転6とは、メインフレーム18に支持される各構成(図5では砥石車33で代表して表す。)が、メインフレーム18(図2参照)の旋回に追従して、その回転軸5の周りを回ることをいう。
【0044】
<ロータリージョイントの構成>
ロータリージョイント20は、図4に示すように、外からエアーを給排気する筒をなす固定部21を有する。また、ロータリージョイント20は、固定部21と該固定部21の給排気の対象たる各構成を連通する可変部22を有する。ここで、固定部21と可変部22との連通は、連通路23を介して実現される。また、可変部22に連通される各構成は、図2に示すように、いずれもメインフレーム18に取り付けられる。これら各構成には、揺動シリンダー19、加工ユニット30、径方向リニアガイド40、深さ方向リニアガイド50、集塵機構60、ドライノズル70(図8参照)および残圧排気弁(図示せず)が含まれる。また、連通路23は、図4に示すように、固定部21と可変部22との間にて可変部22の旋回の周方向に延びる隙間23Aを含む。
【0045】
<ロータリージョイントの詳細>
固定部21は、図3に示すように、ベースフレーム11に付設する固定フレーム13に固定される。また、可変部22は、ベースフレーム11の旋回用リングギア14およびメインフレーム18に固定される。これにより、ロータリージョイント20は、ロータリージョイント20が給排気するエアーを固定部21と可変部22との間で流通させながら、可変部22を固定部21に対して旋回させる。このとき、可変部22は、この可変部22に固定されているメインフレーム18と一体に旋回するため、メインフレーム18に取り付けられている上記各構成も同様に公転6(図5参照)する。
【0046】
可変部22は、図2に示すように、加工中心4(図5参照)において被研削材2の外方に延び出す仮想直線を回転軸5として、固定部21に対して回転可能に位置される。これにより、メインフレーム18およびメインフレーム18に取り付けられる各構成は、ベースフレーム11に対する旋回が可能とされる。
【0047】
固定部21の外周面には、図4に示すように、外部(図示せず)との間で給排気する外エアーチューブ24(図1参照)が取り付けられた外周固定ポート21Aが付設されている。また、固定部21の軸方向における外側の面には、外エアーチューブ24が取り付けられた中央固定ポート21Mが付設されている。ここで、外周固定ポート21Aおよび中央固定ポート21Mは、外部との間で給排気する外エアーチューブ24と繋がっている。このため、外周固定ポート21Aおよび中央固定ポート21Mは、ロータリージョイント20から給排気を受ける各構成にそれぞれ対応するエアーを流し、これら各構成から排出されるエアーを残圧排気弁(図示せず)に流す。また、可変部22の外周面には、図1に示すように、内エアーチューブ25が取り付けられた外周可変ポート22Aが付設されている。ここで、外周可変ポート22Aに取り付けられる内エアーチューブ25は、図2に示す揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50、ならびに、図8に示すドライノズル70に給排気するものである。また、可変部22の軸方向における外側の面には、図2に示すように、内エアーチューブ25が取り付けられた中央可変ポート22Mが付設されている。ここで、中央可変ポート22Mに取り付けられる内エアーチューブ25は、加工ユニット30および集塵機構60に給排気する。また、外周可変ポート22Aおよび中央可変ポート22Mは、図4に示すように、連通路23に繋がっている。このため、外周可変ポート22Aおよび中央可変ポート22Mは、加工ユニット30(図10参照)を含むロータリージョイント20から給排気を受ける各構成にエアーを流し、これら各構成から排出されるエアーを残圧排気弁(図示せず)に流す。
【0048】
<メインフレームの構成>
メインフレーム18は、図2に示すように、板状の平行フレーム18Aと、間隔フレーム18Bと、第1揺動フレーム18Dと、伸縮自在な揺動シリンダー19と、で構成される。ここで、平行フレーム18Aは、図6に示すように、回転軸5に対して垂直に広がる面に沿う板面を有する。また、間隔フレーム18Bは、2つが対をなし、これらが平行フレーム18Aの板面における面内方向の一方側の端から、該板面に対して垂直に延び出す。これら延び出しの先端部分には、それぞれ、ピボットヒンジをなす第1揺動軸中心18Cが取り付けられている。これら第1揺動軸中心18Cには、U字形状に形成された第1揺動フレーム18Dの各端部が接続される。これにより、第1揺動フレーム18Dは、各間隔フレーム18Bに対し第1揺動軸中心18Cのまわりに揺動可能とされる。この揺動においては、第1揺動フレーム18DのU字形状における変曲部18Eは、被研削材2(図2参照)に近づいたり離れたりするように移動する。また、揺動シリンダー19は、2つが対をなして第1揺動フレーム18Dの変曲部18Eを挟み込み、これら変曲部18Eおよび平行フレーム18Aにおいて上記一方側とは反対となる他方側の端を連結する。なお、第1揺動フレーム18Dは、径方向リニアガイド40を付設させることが可能な大きさである。
【0049】
<メインフレームの詳細>
揺動シリンダー19は、図2に示すように、この揺動シリンダー19に供給されるロータリージョイント20からのエアーによって伸縮され、もって第1揺動フレーム18Dの揺動を実現させる。この揺動は、コンピューター100による上記エアーのコントロールによって実現される。ここで、第1揺動フレーム18Dには、その変曲部18Eと両端(第1揺動軸中心18Cに取り付けられる部分)との間に、径方向リニアガイド40が付設されている。この径方向リニアガイド40には、後述する第2揺動フレーム31がスライド可能に取り付けられている。この第2揺動フレーム31には、加工ユニット30および後述する基準ユニット34が取り付けられている。このため、第1揺動フレーム18Dが揺動すると、径方向リニアガイド40、第2揺動フレーム31、加工ユニット30および基準ユニット34は、被研削材2に対し近づいたり離れたりする。
【0050】
本実施形態においては、揺動シリンダー19は、その両端に、エアーの流量を調整する揺動調整バルブ19Aを備えている。また、基準ユニット34は、その一端に2つ1組の倣い玉35を備えて、この一端が被研削材2側を向いた状態となるように、第2揺動フレーム31に取り付けられる。2つの倣い玉35は、基準ユニット34が第1揺動フレーム18Dの揺動に伴って被研削材2に近づけられたときに、これら倣い玉35が被研削材2の表面に押し当てられた押し当て状態を実現させる。
【0051】
平行フレーム18Aは、図6に示すように、集塵ユニット62を支持し、これと一体に公転6(図5参照)を行う。ここで、集塵ユニット62は、図3に示すように、メインフレーム18に対して上記片側となる側(図3では下側)に位置される。また、旋回用サーボモーター16は、図2に示すように、メインフレーム18に対して上記片側とは反対側なる側(図2では上側)に位置される。
【0052】
<径方向リニアガイドの構成>
径方向リニアガイド40は、図8に示すように、第2揺動フレーム31の公転6の軌道における径方向(図5参照)にスライドする径方向送りねじ41を有する。この径方向送りねじ41には、径方向送りねじ41に対する加工ユニット30の回動を制限する径方向ガイドレール42が付設されている。この径方向ガイドレール42は、径方向送りねじ41が回動するとき、径方向送りねじ41に対する第2揺動フレーム31の回動を制限する。この際、径方向送りねじ41は、第2揺動フレーム31に固定される加工ユニット30を上記径方向にスライドさせる。
【0053】
<径方向送りねじの構成>
径方向送りねじ41は、第2揺動フレーム31が嵌合される径方向軸部41Aと、径方向軸部41Aの軸方向における端に固定される径方向プーリー41Bとを有する。また、径方向送りねじ41は、径方向軸部41Aにおける軸方向の動きが制限されている。この径方向軸部41Aは、径方向プーリー41Bの回動に追従して回動することで、第2揺動フレーム31に固定される加工ユニット30を上記径方向にスライドさせる。
【0054】
<径方向送りねじの詳細>
ここで、径方向軸部41Aにおける、ねじピッチ(図示省略)は、第2揺動フレーム31が精度良くスライドするように、設定されている。
【0055】
また、径方向送りねじ41には、図7に示すように、径方向送りねじ41を収容する中空のカバー43と、可変部22(図4参照)からカバー43の内側にエアーを流すカバー与圧ノズル44とが取り付けられている。このため、径方向送りねじ41を収容するカバー43の内側の気圧は、同じく外側の気圧よりも高くなる。この構成によれば、粉体(図示省略)等の異物が、カバー43の外側から内側に入りにくくなる。
【0056】
<径方向リニアガイドの詳細>
径方向リニアガイド40は、図8に示すように、後述する径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46、ならびに、径方向クラッチ47を有している。径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46は、ロータリージョイント20(図2参照)からの給気に対して互いに反対方向に回転する。径方向クラッチ47は、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46の一方を径方向送りねじ41から離間させ、他方を径方向送りねじ41に接触させる。これにより、径方向クラッチ47は、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46が伝達する回転を切り替え、もって加工ユニット30における送り状態と戻り状態との切り替えを実現させる。
【0057】
<径方向送りインデックスおよび径方向戻りインデックスの構成>
径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46は、その回転の方向が反対であることに対応して形状が反転している点を除いて、全く同じ構成を有している。このため、以下においては、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46について、その詳細な説明を径方向送りインデックス45の説明により代表させて行う。そして、径方向戻りインデックス46の各構成については、径方向送りインデックス45の各構成の符号における「45」を「46」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0058】
<径方向送りインデックスの構成>
径方向送りインデックス45は、図7に示すように、直円筒をなす径方向送りシリンダー45Aと、径方向送り回転軸45Bと、径方向送りピストン45Cと、径方向送り伸縮スリーブ45Eとを備える。径方向送りシリンダー45Aは、その軸方向の両端でロータリージョイント20(図2参照)からのエアーの流れを受ける。径方向送りピストン45Cは、径方向送りシリンダー45Aの内周面をスライドする。径方向送り回転軸45Bは、径方向送りピストン45Cにおける軸方向の端面から延び出る。径方向送りシリンダー45Aにおける筒の内側の両端部分には、被押当部45Dが設けられている。径方向送りピストン45Cの両端部分には、その表面上に押当部45Xが設けられている。この押当部45Xは、径方向送りピストン45Cのスライドによって被押当部45Dに押し当てられたときに、径方向送りピストン45Cを特定の周方向に回転させる。本実施形態においては、押当部45Xは、被押当部45Dに押し当てられたときにこの被押当部45Dと互いにかみ合うかみ合い状態を実現させる。
【0059】
<径方向送りインデックスの詳細>
径方向送り伸縮スリーブ45Eは、径方向送りシリンダー45Aの外側で径方向送り回転軸45Bに固定される。径方向送り伸縮スリーブ45Eは、径方向送り回転軸45Bの軸方向(図8参照)に伸縮する径方向送り伸縮バネ45Fを有する。また、径方向送り伸縮スリーブ45Eは、径方向送り伸縮バネ45Fが自然状態であるとき、図8に示す径方向回転伝達機構48の径方向送りプーリー45Hに、その回転を伝達する。径方向送り回転軸45Bは、径方向送りインデックス45にエアーが流れたときに所定の回転角度(本実施形態では例えば90°)だけ回転する。
【0060】
径方向送りピストン45Cおよび径方向送り伸縮スリーブ45Eは、上記かみ合い状態が実現されるまでの間その回転状態を継続し、かみ合い状態が実現されるとその回転を停止させる。このため、径方向プーリー41Bが固定される径方向軸部41Aは、所定の回転角度のみ回転し、もって第2揺動フレーム31(図2参照)を径方向軸部41Aの回転角度に対応する対応距離(すなわち一定値)だけスライドさせる。本実施形態においては、上記対応距離は、CFRPシートの積層方向と交差する方向にて、このシートを研削可能となるように設定される。また、上記スライドは、径方向移動距離開閉総回数分だけ行われることで、第2揺動フレーム31を径方向移動距離P20だけ移動させる。そして、この径方向移動距離P20(図24参照)の移動が予備径方向移動総回数分、円環径方向移動総回数分、および、深さ方向移動総回数に1を足した回数分行われることで、第2揺動フレーム31を後述する径方向移動総距離(図示せず)だけ移動させる。なお、径方向送りシリンダー45Aの両端には、それぞれ、給気されるエアーの流量を調整する径方向送り調整バルブ45Gが取り付けられている。
【0061】
ところで、径方向リニアガイド40に給排気する内エアーチューブ25は、図6に示すように、二股エアージョイント26Aを備えるチューブ25Aと、二股エアージョイント26Bを備えるチューブ25Bとからなる。二股エアージョイント26Aは、径方向リニアガイド40において2つずつ存在する径方向送り調整バルブ45Gおよび径方向戻り調整バルブ46Gのうち、上記一方側にある径方向送り調整バルブ45Gおよび径方向戻り調整バルブ46Gに接続される。二股エアージョイント26Bは、径方向リニアガイド40において2つずつ存在する径方向送り調整バルブ45Gおよび径方向戻り調整バルブ46Gのうち、上記他方側にある径方向送り調整バルブ45Gおよび径方向戻り調整バルブ46Gに接続される。この構成によれば、径方向リニアガイド40に給排気する内エアーチューブ25に割かれる、外周可変ポート22Aのポート数を節約することができる。
【0062】
ここで、コンピューター100(図14参照)は、その制御電磁弁(後述)により、チューブ25Aにて給気が行われ、チューブ25Bにて排気が行われる順方向状態と、チューブ25Bにて給気が行われ、チューブ25Aにて排気が行われる逆方向状態とを切り替える。これにより、コンピューター100は、径方向送りピストン45Cが、径方向送りシリンダー45Aにおける軸方向の両端にスライドすることを実現させる。
【0063】
径方向回転伝達機構48は、図8に示すように、径方向送りプーリー45Hと、径方向送り回転ベルト45Iとを備える。径方向送りプーリー45Hは、径方向送り伸縮バネ45F(図7参照)が自然状態のときには径方向送り伸縮スリーブ45E(図7参照)の回転を受け、径方向送り伸縮バネ45Fが圧縮状態のときには径方向送り伸縮スリーブ45Eの回転を受けないように構成される。径方向送り回転ベルト45Iは、径方向送りプーリー45Hと径方向プーリー41Bとの間にかけ渡される。
【0064】
また、径方向回転伝達機構48は、径方向戻りプーリー46Hと、径方向戻り回転ベルト46Iとを備えている。径方向戻りプーリー46Hは、径方向戻り伸縮バネ46F(図7参照)が自然状態のときには径方向戻り伸縮スリーブ46Eの回転を受け、径方向戻り伸縮バネ46F(図7参照)が圧縮状態のときには径方向送り伸縮スリーブ45E(図7参照)の回転を受けないように構成されている。径方向戻り回転ベルト46Iは、径方向戻りプーリー46Hと径方向プーリー41Bとの間にかけ渡される。
【0065】
<径方向クラッチの構成>
また、径方向回転伝達機構48には、径方向クラッチ47が付設されている。この径方向クラッチ47は、径方向送り伸縮バネ45F(図9参照)および径方向戻り伸縮バネ46F(図7参照)のいずれか一方を圧縮状態にし、他方を自然状態にする。これにより、径方向クラッチ47は、該一方に対応するスリーブ(径方向送り伸縮スリーブ45E(図7参照)または径方向戻り伸縮スリーブ46E)からの回転の伝達を遮断し、同じく他方に対応するスリーブからの回転を伝達する。ここで、上記回転の伝達先は、径方向送りプーリー45Hまたは径方向戻りプーリー46Hである。言い換えると、径方向クラッチ47は、径方向送りインデックス45または径方向戻りインデックス46の、いずれか一方を径方向送りねじ41から離間状態にし、他方を径方向送りねじ41に近接状態にして、他方の回転を径方向送りねじ41に伝達し、もって加工ユニット30の送り状態および加工ユニット30の戻り状態を切替える。
【0066】
ここで、「径方向送りねじ41から離間状態」とは、径方向送りインデックス45または径方向戻りインデックス46が径方向回転伝達機構48から離間していることをいう。また、「径方向送りねじ41に近接状態」とは、径方向送りインデックス45または径方向戻りインデックス46が径方向回転伝達機構48に接触していることをいう。
【0067】
<径方向クラッチの詳細>
径方向クラッチ47は、径方向送り遮断シリンダー45Jおよび径方向戻り遮断シリンダー46Jを有している。これら径方向送り遮断シリンダー45Jおよび径方向戻り遮断シリンダー46Jは、それぞれ、ロータリージョイント20(図2参照)からのエアーの供給を受けて、対応するスリーブ(径方向送り伸縮スリーブ45E(図7参照)または径方向戻り伸縮スリーブ46E)を伸縮方向に移動させる。これにより、径方向クラッチ47は、径方向送りプーリー45Hに対する径方向送り伸縮スリーブ45Eの回転の伝達を遮断したり、径方向戻りプーリー46Hに対する径方向戻り伸縮スリーブ46Eの回転の伝達を遮断したりする。なお、径方向送り遮断シリンダー45Jおよび径方向戻り遮断シリンダー46Jには、エアーにより所定の一方向に直線運動する直線往復運動機構(本実施形態では、例えば、単動式のエアーシリンダー)が用いられる。この直線往復運動機構には、エアーの流量を調整する径方向送り遮断調整バルブ(図示せず)および径方向戻り遮断調整バルブ(図示せず)が取り付けられている。
【0068】
ところで、径方向クラッチ47は、径方向送り遮断シリンダー45Jおよび径方向戻り遮断シリンダー46Jのいずれにもエアーが流れないときに、径方向送り伸縮スリーブ45E(図7参照)および径方向戻り伸縮スリーブ46Eの両方を上記近接状態とする。このとき、径方向送り伸縮スリーブ45Eおよび径方向戻り伸縮スリーブ46Eの各回転は互いに相殺し、径方向送りねじ41が回転しない停止状態を実現させる。なお、上記エアーの流れは、コンピューター100(図14参照)が径方向送り遮断シリンダー45Jおよび径方向戻り遮断シリンダー46Jに対応する制御電磁弁(図示せず)を開閉させることで発生する。
【0069】
径方向送りインデックス45、径方向戻りインデックス46および径方向クラッチ47は、コンピューター100(図14参照)の制御により起動する。すなわち、コンピューター100は、径方向送りインデックス45、径方向戻りインデックス46および径方向クラッチ47のそれぞれに対応する制御電磁弁(図示せず)を開閉する。この開閉は、径方向リニアガイド40に付設される第2揺動フレーム31のスライド移動を生じさせる。
【0070】
<第2揺動フレームの構成>
第2揺動フレーム31は、ピッチ送り部31Aと、間隔部31Bと、第2揺動部31Dとを有する。ピッチ送り部31Aは、径方向リニアガイド40にスライド可能に取り付けられる板をなす。間隔部31Bは、ピッチ送り部31Aの板面からこの板面の法線方向に延び出す。第2揺動部31Dは、間隔部31Bの延び出しにおける先端部分に取り付けられる。この先端部分には、第2揺動部31Dを間隔部31Bに対して揺動可能にする第2揺動軸中心31Cが設定される。そして、第2揺動部31Dには、加工ユニット30、基準ユニット34(図10参照)およびドライノズル70が付設されている。
【0071】
<第2揺動フレームの詳細>
径方向リニアガイド40は、図2に示すように、第1揺動フレーム18Dに付設されている。第1揺動フレーム18Dは、第1揺動軸中心18Cを中心に揺動し、第1揺動軸中心18Cは、平行フレーム18Aの板面に平行に位置される。基準ユニット34は、第2揺動部31D(図8参照)にスライド可能に取り付けられる。この基準ユニット34には、被研削材2の表面を転がる2つの倣い玉35が、図2で見て、第1揺動フレーム18Dが延びる方向に並列して取り付けられる。このため、第1揺動フレーム18Dが被研削材2側に揺動するとき、基準ユニット34の2つの倣い玉35は、被研削材2の表面に当たって第1揺動フレーム18Dの押圧に抗する。これにより、基準ユニット34は、加工ユニット30が公転6(図5参照)する円の径方向において、被研削材2の表面に対して垂直に立つ。この場合、基準ユニット34は、第2揺動軸中心31C(図8参照)に対して垂直となる。すなわち、基準ユニット34は、加工ユニット30が公転6する円の周方向に沿い、かつ平行フレーム18Aの板面に対して垂直な方向に延びる。言い換えると、基準ユニット34は、被研削材2の表面が平行フレーム18Aの板面と平行となる部分において、法線方向に立つ。
【0072】
ここで、基準ユニット34の内側には、図10に示すように、深さ方向軸部51Aが内蔵されている。この深さ方向軸部51Aは、被研削材2(図2参照)に対して加工ユニット30の研削深さを調節する深さ方向リニアガイド50が有する構成の1つである。この深さ方向リニアガイド50は、基準ユニット34が第2揺動部31Dに対してスライドする際に、このスライドをガイドする。
【0073】
<深さ方向リニアガイドの構成>
深さ方向リニアガイド50は、基準ユニット34を深さ方向において第2揺動部31Dに対してスライドさせる深さ方向送りねじ51を有する。この深さ方向送りねじ51には、深さ方向送りねじ51に対する基準ユニット34の回動を制限する深さ方向ガイドレール52が付設されている。この深さ方向ガイドレール52は、深さ方向送りねじ51が回動するとき、深さ方向送りねじ51に対する基準ユニット34の回動を制限する。この際、深さ方向送りねじ51は、第2揺動部31Dを被研削材2(図2参照)の表面に押し当てられた基準ユニット34に対して上記深さ方向にスライドさせる。
【0074】
<深さ方向送りねじの構成>
深さ方向送りねじ51は、基準ユニット34が嵌合される深さ方向軸部51Aと、深さ方向軸部51Aの軸方向における端に固定される深さ方向プーリー51Bとを有する。また、深さ方向送りねじ51は、深さ方向軸部51Aにおける軸方向の動きが制限されている。この深さ方向軸部51Aは、深さ方向プーリー51Bの回動に追従して回動することで、基準ユニット34を上記深さ方向にスライドさせる。
【0075】
<深さ方向送りねじの詳細>
ここで、深さ方向軸部51Aにおける、ねじピッチ(図示省略)は、基準ユニット34が精度良くスライドするように、設定されている。
【0076】
また、深さ方向送りねじ51には、深さ方向送りねじ51を収容する中空のハウジング53と、可変部22(図2参照)からハウジング53の内側にエアーを流すハウジング与圧ノズル54とが取り付けられている。このため、深さ方向送りねじ51を収容するハウジング53の内側の気圧は、同じく外側の気圧よりも高くなる。この構成によれば、粉体(図示省略)等の異物が、ハウジング53の外側から内側に入りにくくなる。
【0077】
<深さ方向リニアガイドの詳細>
深さ方向リニアガイド50は、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56、ならびに、深さ方向クラッチ57を有している。深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56は、ロータリージョイント20(図2参照)からの給気に対して互いに反対方向に回転する。深さ方向クラッチ57は、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56の一方を深さ方向送りねじ51から離間させ、他方を深さ方向送りねじ51に接触させる。これにより、深さ方向クラッチ57は、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56が伝達する回転を切り替え、もって基準ユニット34における送り状態と戻り状態との切り替えを実現させる。
【0078】
<深さ方向送りインデックスおよび深さ方向戻りインデックスの構成>
深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56は、その回転の方向が反対であることに対応して形状が反転している点を除いて、全く同じ構成を有している。このため、以下においては、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56について、その詳細な説明を深さ方向送りインデックス55の説明により代表させて行う。そして、深さ方向戻りインデックス56の各構成については、深さ方向送りインデックス55の各構成の符号における「55」を「56」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0079】
<深さ方向送りインデックスの構成>
深さ方向送りインデックス55は、直円筒をなす深さ方向送りシリンダー55Aと、深さ方向送り回転軸55Bと、深さ方向送りピストン55Cと、深さ方向送り伸縮スリーブ55Eとを備える。深さ方向送りシリンダー55Aは、その軸方向の両端でロータリージョイント20(図2参照)からのエアーの流れを受ける。深さ方向送りピストン55Cは、深さ方向送りシリンダー55Aの内周面をスライドする。深さ方向送り回転軸55Bは、深さ方向送りピストン55Cにおける軸方向の端面から延び出る。深さ方向送りシリンダー55Aにおける筒の内側の両端部分には、被押当部55Dが設けられている。深さ方向送りピストン55Cの両端部分には、その表面上に押当部55Xが設けられている。この押当部55Xは、深さ方向送りピストン55Cのスライドによって被押当部55Dに押し当てられたときに、深さ方向送りピストン55Cを特定の周方向に回転させる。本実施形態においては、押当部55Xは、被押当部55Dに押し当てられたときにこの被押当部55Dと互いにかみ合うかみ合い状態を実現させる。
【0080】
<深さ方向送りインデックスの詳細>
深さ方向送り伸縮スリーブ55Eは、深さ方向送りシリンダー55Aの外側で深さ方向送り回転軸55Bに固定される。深さ方向送り伸縮スリーブ55Eは、深さ方向に伸縮する深さ方向送り伸縮バネ55Fを有する。また、深さ方向送り伸縮スリーブ55Eは、深さ方向送り伸縮バネ55Fが自然状態であるとき、深さ方向回転伝達機構58の深さ方向送りプーリー55Hに、その回転を伝達する。深さ方向送り回転軸55Bは、深さ方向送りインデックス55にエアーが流れたときに所定の回転角度(本実施形態では例えば90°)だけ回転する。
【0081】
深さ方向送りピストン55Cおよび深さ方向送り伸縮スリーブ55Eは、上記かみ合い状態が実現されるまでの間その回転状態を継続し、かみ合い状態が実現されるとその回転を停止させる。このため、深さ方向プーリー51Bが固定される深さ方向軸部51Aは、所定の回転角度のみ回転し、もって基準ユニット34を深さ方向軸部51Aの回転角度に対応する対応距離(すなわち一定値)だけ第2揺動部31Dに対してスライドさせる。本実施形態においては、上記対応距離はCFRPシートを構成する一層の厚みよりも短い距離に設定される。また、深さ方向送りシリンダー55Aの両端には、それぞれ、給気されるエアーの流量を調整する深さ方向送り調整バルブ55Gが取り付けられている。
【0082】
上記スライドは、深さ方向移動距離開閉総回数分(本実施形態では1回分)だけ行われることで、基準ユニット34を深さ方向に深さ方向移動距離P10(図24参照)だけ移動させる。この移動は、深さ方向移動総回数を下回らない最小の整数回分だけ繰り返し行われる。この繰り返しによって、基準ユニット34は、この基準ユニット34が深さ方向に移動されるべき距離に比して微小距離だけ短い距離を、深さ方向に向かって移動する。本明細書においては、上記「基準ユニット34が深さ方向に移動されるべき距離」のことを「深さ方向移動総距離P12」とも称し、上記「微小距離」のことを「深さ方向補正距離P11」とも称する(いずれも図24を参照)。
【0083】
ここで、深さ方向軸部51Aは、上記繰り返しによる基準ユニット34の移動の後、基準ユニット34を第2揺動部31Dに対して上記対応距離よりも短い所定距離だけ移動させる。この移動は、深さ方向補正開閉総回数(後述)分を1セットとして、所定のセット回数(本実施形態では6セット)だけ繰り返し行われることで、基準ユニット34を深さ方向に深さ方向補正距離P11だけ進行させる。この進行と、上記繰り返しによる基準ユニット34の移動とにより、基準ユニット34は深さ方向に深さ方向移動総距離P12だけ移動される。
【0084】
ところで、深さ方向リニアガイド50に給排気する内エアーチューブ25は、二股エアージョイント26Cを備えるチューブ25Cと、二股エアージョイント26Dを備えるチューブ25Dとからなる。二股エアージョイント26Cは、深さ方向リニアガイド50において2つずつ存在する深さ方向送り調整バルブ55Gおよび深さ方向戻り調整バルブ56Gのうち、上記片側にある深さ方向送り調整バルブ55Gおよび深さ方向戻り調整バルブ56Gに接続される。二股エアージョイント26Dは、深さ方向リニアガイド50において2つずつ存在する深さ方向送り調整バルブ55Gおよび深さ方向戻り調整バルブ56Gのうち、上記片側の反対側にある深さ方向送り調整バルブ55Gおよび深さ方向戻り調整バルブ56Gに接続される。この構成によれば、深さ方向リニアガイド50に給排気する内エアーチューブ25に割かれる、外周可変ポート22Aのポート数を節約することができる。
【0085】
ここで、コンピューター100(図14参照)は、その制御電磁弁(後述)により、チューブ25Cにて給気が行われ、チューブ25Dにて排気が行われる順方向状態と、チューブ25Dにて給気が行われ、チューブ25Cにて排気が行われる逆方向状態とを切り替える。これにより、コンピューター100は、深さ方向送りピストン55Cが、深さ方向送りシリンダー55Aにおける軸方向の両端にスライドすることを実現させる。
【0086】
深さ方向回転伝達機構58は、深さ方向送りプーリー55Hと、深さ方向送り回転ベルト55Iとを備える。深さ方向送りプーリー55Hは、深さ方向送り伸縮バネ55F(図10参照)が自然状態のときには深さ方向送り伸縮スリーブ55Eの回転を受け、深さ方向送り伸縮バネ55Fが圧縮状態のときには深さ方向送り伸縮スリーブ55Eの回転を受けないように構成される。深さ方向送り回転ベルト55Iは、深さ方向送りプーリー55Hと深さ方向プーリー51Bとの間にかけ渡される。
【0087】
また、深さ方向回転伝達機構58は、深さ方向戻りプーリー56Hと、深さ方向戻り回転ベルト56Iとを備えている。深さ方向戻りプーリー56Hは、深さ方向戻り伸縮バネ56Fが自然状態のときには深さ方向戻り伸縮スリーブ56Eの回転を受け、深さ方向戻り伸縮バネ56Fが圧縮状態のときには深さ方向送り伸縮スリーブ55Eの回転を受けないように構成されている。深さ方向戻り回転ベルト56Iは、深さ方向戻りプーリー56Hと深さ方向プーリー51Bとの間にかけ渡される。
【0088】
<深さ方向クラッチの構成>
また、深さ方向回転伝達機構58には、深さ方向クラッチ57が付設されている。この深さ方向クラッチ57は、深さ方向送り伸縮バネ55Fおよび深さ方向戻り伸縮バネ56Fのいずれか一方を圧縮状態にし、他方を自然状態にする。これにより、深さ方向クラッチ57は、該一方に対応するスリーブ(深さ方向送り伸縮スリーブ55Eまたは深さ方向戻り伸縮スリーブ56E)からの回転の伝達を遮断し、同じく他方に対応するスリーブからの回転を伝達する。ここで、上記回転の伝達先は、深さ方向送りプーリー55Hまたは深さ方向戻りプーリー56Hである。言い換えると、深さ方向クラッチ57は、深さ方向送りインデックス55または深さ方向戻りインデックス56の、いずれか一方を深さ方向送りねじ51から離間状態にし、他方を深さ方向送りねじ51に近接状態にして、他方の回転を深さ方向送りねじ51に伝達し、もって基準ユニット34の送り状態および基準ユニット34の戻り状態を切替える。
【0089】
ここで、「深さ方向送りねじ51から離間状態」とは、深さ方向送りインデックス55または深さ方向戻りインデックス56が深さ方向回転伝達機構58から離間していることをいう。また、「深さ方向送りねじ51に近接状態」とは、深さ方向送りインデックス55または深さ方向戻りインデックス56が深さ方向回転伝達機構58に接触していることをいう。
【0090】
<深さ方向クラッチの詳細>
深さ方向クラッチ57は、深さ方向送り遮断シリンダー55Jおよび深さ方向戻り遮断シリンダー56Jを有している。これら深さ方向送り遮断シリンダー55Jおよび深さ方向戻り遮断シリンダー56Jは、それぞれ、ロータリージョイント20(図2参照)からのエアーの供給を受けて、対応するスリーブ(深さ方向送り伸縮スリーブ55Eまたは深さ方向戻り伸縮スリーブ56E)を伸縮方向に移動させる。これにより、深さ方向クラッチ57は、深さ方向送りプーリー55Hに対する深さ方向送り伸縮スリーブ55Eの回転の伝達を遮断したり、深さ方向戻りプーリー56Hに対する深さ方向戻り伸縮スリーブ56Eの回転の伝達を遮断したりする。なお、深さ方向送り遮断シリンダー55Jおよび深さ方向戻り遮断シリンダー56Jには、エアーにより所定の一方向に直線運動する直線往復運動機構(本実施形態では、例えば、単動式のエアーシリンダー)が用いられる。この直線往復運動機構には、エアーの流量を調整する深さ方向送り遮断調整バルブ(図示せず)および深さ方向戻り遮断調整バルブ(図示せず)が取り付けられている。
【0091】
ところで、深さ方向クラッチ57は、深さ方向送り遮断シリンダー55Jおよび深さ方向戻り遮断シリンダー56Jのいずれにもエアーが流れないときに、深さ方向送り伸縮スリーブ55Eおよび深さ方向戻り伸縮スリーブ56Eの両方を上記近接状態とする。このとき、深さ方向送り伸縮スリーブ55Eおよび深さ方向戻り伸縮スリーブ56Eの各回転は互いに相殺し、深さ方向送りねじ51が回転しない停止状態を実現させる。なお、上記エアーの流れは、コンピューター100(図14参照)が深さ方向送り遮断シリンダー55Jおよび深さ方向戻り遮断シリンダー56Jに対応する制御電磁弁(図示せず)を開閉させることで発生する。
【0092】
深さ方向送りインデックス55、深さ方向戻りインデックス56および深さ方向クラッチ57は、コンピューター100の制御により起動する。すなわち、コンピューター100は、深さ方向送りインデックス55、深さ方向戻りインデックス56および深さ方向クラッチ57のそれぞれに対応する制御電磁弁(図示せず)を開閉する。この開閉は、深さ方向リニアガイド50に付設される基準ユニット34のスライド移動(すなわち、加工ユニット30を固設する第2揺動部31Dに対する基準ユニット34のスライド移動)を生じさせる。
【0093】
<加工ユニットの構成>
加工ユニット30は、図2に示すように、自転により外周面33B(図10参照)で被研削材2を研削する砥石車33と、ロータリージョイント20からの給気を受けて砥石車33を自転させるエアーモーター32とを有する。このため、加工ユニット30は、取付状態において、ロータリージョイント20からの給気を受けて被研削材2の表面を研削する。
【0094】
<加工ユニットの詳細>
加工ユニット30は、第2揺動フレーム31に固定されている。この固定は、取付状態において、砥石車33の外周面33B(図10参照)が、基準ユニット34が接する被研削材2の表面に対して垂直となる方向へ傾きα(図10参照。本実施形態では例えばα=2°)で傾くように行われる。また、第2揺動フレーム31は、図3に示すように、第2揺動軸中心31Cにて第1揺動フレーム18Dに揺動可能に取り付けられ、第1揺動フレーム18Dは第1揺動軸中心18Cにて間隔部31Bに揺動可能に取り付けられる。これにより、第1揺動フレーム18Dおよび第2揺動フレーム31は、径方向(図2参照)を基準とした仰俯角方向(図2図3および図10参照)に加工ユニット30の傾きを調整することができる。そして、砥石車33の外周面33Bは、押し付け状態において、径方向を基準とした仰俯角方向に傾きαで傾くことが可能となる。これにより、加工ユニット30が研削した後の加工面3は、上記底面8Aに対して傾きαとなるすり鉢状の穴8C(図25参照)を呈する。
【0095】
なお、ここでいう「径方向を基準とした仰俯角方向」とは、図10に示すように、径方向およびこの径方向に対応する周方向(図5参照)の両方向に広がる仮想的な平面に対して傾く方向のことをいう。
【0096】
砥石車33には、図12に示すように、被研削材2(図2参照)の表面に対して包囲空間7を形成する囲み61が付設されている。このため、被研削材2で生ずる粉体(図示省略)は、囲み61が形成する包囲空間7の外に飛散しにくくなる。
【0097】
<エアーモーターの構成>
エアーモーター32は、図10に示すように、ロータリージョイント20(図2参照)からのエアーの流れを受けて、ローター軸32Bおよびローター軸32Bに固定される砥石車33を、所定の回転方向に自転させるものである。なお、エアーモーター32には、筐体32Aとローター軸32Bとの潤滑を担うオイル(図示省略)が使用されている。また、エアーモーター32には、上記オイル由来のオイルミストがエアーモーター32の排気するエアー中に混入することを抑える、オイルフィルター36(図6参照)が付設されている。
【0098】
<エアーモーターの詳細>
ここで、エアーモーター32に流れるエアーは、その単位時間当たりの流量が、コンピューター100(図14参照)に付設されるセンサー(図示省略)によって計測される。このセンサーの計測値は、コンピューター100(図14参照)において実測流量252(図28参照)として扱われる。この実測流量252は、砥石車33の自転を制御する用に供される。
【0099】
<砥石車の構成>
砥石車33は、図10に示すように、円板状の部分である円板部33Aを有し、その外周面33Bおよび両側の軸面33Cに被研削材2(図2参照)を研削するダイヤモンドの砥粒(図示省略)が設けられた電着ダイヤモンドホイールである。円板部33Aは、その中心33D(図11参照)に固定されたローター軸32Bの自転に追従して自転する。この状態は、以下においては、「砥石車33の自転状態」とも称する。また、円板部33Aには、図11に示すように、その中心33Dから放射状に延びる溝33Xが複数設けられている。この溝33Xは、軸面33Cが被研削材2を研削したことで生じる粉体(図示省略)が通るものであり、本実施形態では、例えば、その深さが砥石車33の厚みの1/3となるように設定されている。
【0100】
<砥石車の詳細>
ここで、砥石車33の自転速度は、コンピューター100(図14参照)が算定する算定自転速度243(図28参照)になる。すなわち、加工ユニット30が被研削材2を研削する研削時間は、算定自転速度243を含めて考慮される。
【0101】
<集塵機構の構成>
集塵機構60は、図12に示すように、包囲空間7を形成する囲み61と、ロータリージョイント20(図2参照)からの給気を受けて包囲空間7の内側の粉体(図示省略)をエアーとともに吸引する集塵ユニット62とを有する。ここで、集塵ユニット62がエアーを吸引する吸引口63は、囲み61において上記公転6(図5参照)の進行側とは反対側に設けられる。また、吸引口63は、被研削材2(図5参照)の表面を向くように構成されている。
【0102】
<囲みの構成>
囲み61は、砥石車33をくるむ筒型のブラシ61Aによって構成されている。このブラシ61Aは、砥石車33を囲んで配設される柄61Cと、この柄61Cから上記片側(図11で見て下側)に延び出す多数の毛の束である穂61Bとを備える。これにより、被研削材2の研削により生じる粉体(図示省略)の包囲空間7外への飛散が抑えられる。
【0103】
<囲みの詳細>
本実施形態においては、穂61Bは、取付状態において被研削材2の表面に当たることで、この表面上にある粉体(図示省略)等の異物を掃き寄せることが可能とされている。
【0104】
<集塵ユニットの構成>
集塵ユニット62は、図13に示すように、サイクロンユニット64と、エジェクター65と、排気フィルター66とを有する。エジェクター65は、ロータリージョイント20(図2参照)からのエアーの流れを受けて、このエアーをサイクロンユニット64の内部のエアーと一緒に排気フィルター66に移送する。サイクロンユニット64は、エジェクター65によるエアーの移送を利用して、吸引口63を介したエアーの吸引と、吸引されたエアーから粉体(図示省略)等の異物を遠心分離させることとを実現させる。排気フィルター66は、エジェクター65から移送されるエアーが通ることで、このエアーに含まれる異物をこしとる。この構成によれば、集塵ユニット62は、その排気フィルター66に通されるべきエアーに含まれる異物を、予めサイクロンユニット64で遠心分離する。これにより、集塵ユニット62は、排気フィルター66が異物によって目詰まりするおそれを減らすことができる。
【0105】
<ドライノズルの構成>
ドライノズル70は、図12に示すように、包囲空間7と内エアーチューブ25とを連通し、この内エアーチューブ25から流れるエアーを砥石車33にブローして砥石車33を冷却する。
【0106】
<ドライノズルの詳細>
ドライノズル70は、図11に示すように、砥石車33における軸面33Cにエアーをブローする2つの軸方向ノズル71A,71Bと、砥石車33における外周面33Bにエアーをブローする周方向ノズル72と、を備える。軸方向ノズル71Aは砥石車33の軸面33Cにおける被研削材2から離れる側(図11では上側)にエアーをブローする。軸方向ノズル71Bは砥石車33の軸面33Cにおける被研削材2側(図11では下側)にエアーをブローする。周方向ノズル72は、砥石車33に対して吸引口63とは反対側から砥石車33の外周面33Bにエアーをブローする。これにより、砥石車33は、軸面33Cが受ける軸方向ノズル71(すなわち2つの軸方向ノズル71A,71B)のエアーと、外周面33Bが受ける周方向ノズル72のエアーの両方より冷却される。
【0107】
<残圧排気弁の構成>
残圧排気弁(図示せず)は、研削装置1の使用後に、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50の残存エアーを排気するものである。この排気は、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50を常圧の状態とし、研削装置1をより安全に管理するために行われる。
【0108】
<コンピューターの構成>
コンピューター100は、図14に示すように、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50に流れるエアーを制御する第1制御プログラム110を実行する。また、コンピューター100は、加工ユニット30(図2参照)における、エアーモーター32(図2参照)に流れる単位時間当たりのエアーの流量を計測する第2制御プログラム210を実行する。また、コンピューター100は、エアーモーター32に流れる単位時間当たりのエアーの流量に対応して、旋回用サーボモーター16の駆動速度を制御する第3制御プログラム310を実行する。これにより、コンピューター100は、研削装置1に被研削材2のスカーフサンディング加工を行う機能を実現させる。なお、コンピューター100には、研削装置1を制御する制御プログラムが入力可能なコンピューター(本実施形態では、例えば、ティーチングペンダント)が用いられる。
【0109】
<コンピューターの詳細>
第1制御プログラム110、第2制御プログラム210および第3制御プログラム310は、それぞれ、コンピューター100が有する記録媒体であるストレージ(図示せず)に、コンピューター読み取り可能に記録されている。このストレージには、複数の制御プログラムを互いに独立して動作させる機能をコンピューター100に実現させるプログラムであるオペレーティングシステム(図示せず)が、コンピューター読み取り可能に記録されている。このオペレーティングシステムは、コンピューター100の起動に伴って自動的に実行され、第1制御プログラム110、第2制御プログラム210および第3制御プログラム310を協働させる用に供される。
【0110】
<第1制御プログラムの構成>
第1制御プログラム110は、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50に供給するエアーを制御する機能を、コンピューター100に実現させる。具体的には、第1制御プログラム110は、コンピューター100を、第1入力部120、第1記憶部130、第1算定部140、第1制御部160および第1送受信部170として機能させる。第1入力部120は、欠陥部位を除去することで形成される下穴8(図2参照)の深さ121(図2参照)、下穴8の外径8D(図5参照)、後述する第2揺動フレーム31(図2参照)の径方向移動距離P20(図24参照)、および後述する基準ユニット34(図2参照)の深さ方向移動距離P10(図24参照)を入力可能なものである。また、第1記憶部130は、下穴8の深さ121、下穴8の外径8D、第2揺動フレーム31の径方向移動距離および基準ユニット34の深さ方向移動距離を記憶する。また、第1算定部140は、径方向リニアガイド40における第2揺動フレーム31の径方向移動距離P20(図24参照)、および深さ方向リニアガイド50における基準ユニット34の深さ方向移動総回数を算定する。また、第1制御部160は、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40、および深さ方向リニアガイド50に対応する、制御電磁弁(図示せず)の開閉を指令する。また、第1送受信部170は、旋回用サーボモーター16における、駆動開始の信号(図示省略)および駆動終了の信号(図示省略)を第3送受信部370との間で送受する。また、第1送受信部170は、第2揺動フレーム31の径方向距離を送信するとともに、基準ユニット34の、深さ方向距離についても第3送受信部370に送信する。
【0111】
<第1入力部の構成>
第1入力部120は、少なくとも下穴8(図2参照)がなす円の外径8D(図5参照)、下穴8の深さ121(図2参照)、後述する基準ユニット34(図2参照)の深さ方向移動距離を第1記憶部130に入力可能なヒューマン・インターフェース・デバイス(本実施形態では、例えばタッチパネル)である。
【0112】
<第1記憶部の構成>
第1記憶部130は、少なくとも第1入力部120が入力する外径8D(図5参照)および深さ121(図2参照)を記憶することが可能な記憶媒体(本実施形態では、例えば、メモリおよびHDD)である。この第1記憶部130は、後述する基準ユニット34(図2参照)の深さ方向移動距離を記憶することが可能なものである。
【0113】
<第1記憶部の詳細>
第1記憶部130には、予め、傾きα(図10参照)、径方向補正値および深さ方向補正距離P11(本実施形態では、例えば、CFRPシートを構成する一層の厚みの1/3)の各データが、それぞれ所定値として記憶されている。また、第1記憶部130には、径方向リニアガイド40における第2揺動フレーム31(図2参照)の径方向移動距離開閉総回数を算定する式と、同じく径方向移動距離P20を算定する式と、同じく予備径方向移動総回数を算定する式と、同じく円環径方向移動総回数を算定する式と、同じく径方向復帰開閉総回数を算定する式とが記憶されている。また、第1記憶部130には、深さ方向リニアガイド50における基準ユニット34(図2参照)の深さ方向移動距離開閉総回数を算定する式と、同じく非接触深さ方向移動総回数を算定する式と、同じく深さ方向移動総回数を算定する式と、同じく深さ方向補正開閉総回数を算定する式と、が記憶されている。
【0114】
<第1算定部の構成>
第1算定部140は、第1記憶部130が記憶する各データおよび各式に基づいて、研削装置1の制御に必要となる種々の制御量を算定することが可能な演算装置(本実施形態では、例えばCPU)である。
【0115】
<第1制御部の構成>
第1制御部160は、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50の動作の切り替えを実現させる各種の制御電磁弁(図示せず。本実施形態では、例えば外エアーチューブ24(図1参照)に付設されたサイレンサ付き電磁弁)の開閉を指令するスイッチング素子である。これら制御電磁弁は、プログラム制御が可能なものであり、第1制御部160の指令を受けて、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50を動かす。これにより、第2揺動フレーム31(図2参照)が径方向移動総距離(図示せず)(本実施形態では、すり鉢状の穴8C(図25参照)における縁の半径)まで動くことができる。また、基準ユニット34(図2参照)が深さ方向移動総距離P12(図24参照)(本実施形態では、押し当て状態における基準ユニット34(図15参照)と被研削材2(図15参照)との接触部から穴底面9A(図25参照)までの深さ方向で見た距離)まで動くことができる。また、第1制御部160は、加工ユニット30(図2参照)に対応する研削電磁弁(図示せず。本実施形態では、例えば、制御電磁弁と同一のもの)の開閉を指令することも可能とされている。
【0116】
<第1送受信部の構成>
第1制御部160は、旋回用サーボモーター16における駆動の開始および終了の各信号を、第3制御部360との間で送受する。この送受は、第1算定部140および第1送受信部170、ならびに、第3算定部340および第3送受信部370を経由して行われる。第1算定部140は、第1送受信部170を用いて、第2揺動フレーム31の径方向距離および基準ユニット34の深さ方向距離を第3送受信部370に送信する。第3算定部340は、第3送受信部370を用いて、第1算定部140の送信データを受信し、これを第3制御部360に出力する。第3制御部360は、第3算定部340の出力に従って旋回用サーボモーター16を制御し、もって加工ユニット30(図2参照)の公転6(図5参照)を制御する。
【0117】
ここで、径方向距離とは、上述した押し当て状態における、第2揺動フレーム31(図15参照)から回転軸5(図5参照)までの距離(図示せず)のことをいう。この径方向距離は、厳密には、平行フレーム18A(図15参照)と第1揺動フレーム18D(図15参照)とがなす角度の関数として与えられる。しかるに、本実施形態における各種の処理では、径方向距離を所定の定数とみなす。また、深さ方向距離とは、上記押し当て状態における基準ユニット34(図15参照)と被研削材2(図15参照)との接触部から砥石車33(図15参照)の被研削材2側の端までの深さ方向で見た距離(図示せず)のことをいう。
【0118】
<第2制御プログラムの構成>
第2制御プログラム210は、加工ユニット30(図2参照)に供給するエアーの流量から砥石車33(図2参照)の自転速度を算定する機能を、コンピューター100に実現させる。具体的には、第2制御プログラム210は、コンピューター100を、第2記憶部230、第2算定部240、計測部250および表示部280(図14参照)として機能させる。
【0119】
計測部250は、上述した実測流量252(図28参照)をリアルタイムで計測する。また、計測部250は、計測した実測流量252をリアルタイムで第2算定部240および表示部280に出力する。
【0120】
第2記憶部230には、記憶流量232および記憶自転速度233(図27参照)が、それぞれ所与のデータとして記憶されている。ここで、記憶流量232は、エアーモーター32(図2参照)に流れる単位時間当たりのエアーの流量を、この流量の測定時刻と紐づけてなるデータの集合である。また、記憶自転速度233は、記憶流量232に含まれる各データにつき、その測定時刻と同じ時刻に測定された砥石車33の自転速度を、上記測定時刻と紐づけてなるデータの集合である。
【0121】
第2算定部240は、記憶流量232に含まれる各データと、記憶自転速度233に含まれる各データとを、その測定時刻によって対応付けられたデータ対とする。また、第2算定部240は、各データ対をまとめて解析し、もって記憶流量232を記憶自転速度233の離散関数とした対応関係である第2の対応関係234を導出する。また、第2算定部240は、導出した第2の対応関係234を第2記憶部230に記憶させる。また、第2算定部240は、導出された第2の対応関係234に計測部250が出力する実測流量252を代入し、その代入結果を算定自転速度243として表示部280に出力する。表示部280は、計測部250が出力する実測流量252と、第2算定部240が出力する算定自転速度243とを、セットにして外部に出力する。
【0122】
<計測部の構成>
本実施形態においては、計測部250は、計測した実測流量252を第2記憶部230にも出力するように構成されている。
【0123】
<第2記憶部の構成>
第2記憶部230(図14参照)は、記憶されたデータのコンピューター読み取りおよび該データの書き換えが可能な記憶媒体(本実施形態では、例えばメモリおよびHDD)である。本実施形態においては、第2記憶部230は、第2の対応関係234をテーブル231(図27参照)の形で記憶する。また、第2記憶部230は、計測部250(図14参照)が出力する実測流量252(図28参照)を、算定自転速度243とセットにして記憶する。
【0124】
<第2算定部の構成>
本実施形態においては、第2算定部240は、記憶流量232に含まれる各データのうち、そのエアーの流量が実測流量252に最も近似しているデータを実記憶流量232A(図27参照)として取得する。そして、第2算定部240は、取得した実記憶流量232Aをテーブル231にあてはめて得られる実記憶自転速度233A(図27参照)を算定自転速度243として出力する。
【0125】
<表示部の構成>
本実施形態においては、表示部280は、図28に示すように、出力すべきデータ(実測流量252および算定自転速度243)を視認可能な形でリアルタイム表示するディスプレイである。
【0126】
<第3制御プログラムの構成>
第3制御プログラム310は、図14に示すように、旋回用サーボモーター16を制御する機能を、コンピューター100に実現させる。具体的には、第3制御プログラム310は、コンピューター100を、第3入力部320、第3記憶部330、第3算定部340、第3制御部360および第3送受信部370として機能させる。
【0127】
<第3入力部の構成>
第3入力部320は、加工ユニット30(図2参照)が公転6(図5参照)する公転角速度を切り替える基準となる砥石車33(図2参照)の自転速度(以下、「設定自転速度」とも称する。)を入力可能なヒューマン・インターフェース・デバイスである。本実施形態においては、第3入力部320は、上記公転角速度を予備公転角速度333D(図27参照)から「低速度」333C(図27参照)に切り替える設定自転速度である切替自転速度と、上記公転角速度を「低速度」333Cから「停止」333B(図27参照)に切り替える設定自転速度である下限自転速度および上限自転速度とを入力できるように構成されている。
【0128】
<第3記憶部の構成>
第3記憶部330には、実測流量252(図28参照)、記憶流量232(図27参照)および記憶自転速度233(図27参照)、ならびに第2の対応関係234(図27参照)の各データが、コンピューター読み取りおよび書き換えが可能な形で記憶されている。これら各データは、上述した第2記憶部230および第2算定部240(図14参照)の説明にて説明したものと同じであるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0129】
<第3算定部の構成>
第3算定部340は、第2の対応関係234(図27参照)、上述の実測流量252(図28参照)および単位距離から、加工ユニット30(図2参照)が公転6(図5参照)する公転角速度となる、算定公転角速度を算定する。また、第3算定部340は、上述の実測流量252(図27参照)および第2の対応関係234から算定自転速度243(図27参照)を算定することができるように構成されている。また、第3算定部340は、補正自転速度を、算定自転速度243に単位距離を掛け、さらに径方向距離で割ることで算定することができるように構成されている。
【0130】
<第3記憶部の詳細>
第3算定部340(図14参照)は、加工ユニット30(図2参照)の公転角速度を、「停止」333B、「低速度」333C、「中速度」(図示省略)および「高速度」(図示省略)の中から選択する。第3算定部340は、「停止」333Bの選択により、旋回用リングギア14(図2参照)の旋回を停止させる。また、第3算定部340は、加工ユニット30の公転角速度を、「低速度」333C、「中速度」および「高速度」から適宜に選択することで、すり鉢状の穴8C(図25参照)の加工精度を確保する。
【0131】
<研削装置の使用>
上述した研削装置1で被研削材2(図15参照)を研削する場合、ユーザー(図示せず)は以下の流れで被研削材2を研削する。
【0132】
<第1制御プログラムの制御>
ユーザー(図示せず)は、揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50の駆動をコンピューター100に制御させる。この際、ユーザーは、図16のステップA10を実行する。
【0133】
ステップA10において、ユーザー(図示せず)は、研削装置1および被研削材2についての事前準備を行う。
【0134】
上記事前準備には、被研削材2に直円筒形状の下穴8(図15参照)を形成する処理が含まれる。上記事前準備には、ユーザーが研削装置1のスイッチを入れて、第1制御プログラム110、第2制御プログラム210および第3制御プログラム310の3つのプログラムを起動させる処理が含まれる。
【0135】
ステップA10の事前準備に対し、コンピューター100の第1算定部140は、図16のステップA20を実行する。
【0136】
ステップA20において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップA30に進める。この初期設定には、後述するステップA80に係る繰り返し処理の繰り返し回数を規定する変数(深さ方向移動総回数)を算定する処理が含まれる。
【0137】
ステップA30において、第1算定部140は、研削装置1のプリセットの開始命令である加工準備操作の第1入力部120への入力をユーザーに求める。そして、第1算定部140は、ユーザーによって上記加工準備操作が第1入力部120に入力されると、その処理をステップA40に進める。
【0138】
ステップA40において、第1算定部140は、図17に示すサブルーチン1を呼び出し、研削装置1のプリセットを行う。そして、第1算定部140は、その処理を図16のステップA50に進める。ここで、上記プリセットは、砥石車33(図2参照)を被研削材2の表面に引っ掛かりにくくなる位置に移動させ、もって研削装置1を被研削材2に取り付け易くするために行われる。なお、サブルーチン1における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0139】
ステップA50において、第1算定部140は、研削装置1の被研削材2への装着をユーザーに求める。これに対し、ユーザーは、研削装置1を被研削材2に装着し、もって上述した取付状態を実現させる。この際、ユーザーは、加工ユニット30が公転6する回転軸5の上に下穴8の幾何学的中心(図示せず)を合わせる。また、ユーザーは、上記取付状態を実現させると、その旨を第1入力部120に入力する。第1算定部140は、上記取付状態が実現された旨の入力が第1入力部120にあったときに、その処理をステップA60に進める。
【0140】
ステップA60において、第1算定部140は、円環穴9の研削開始命令である円環穴研削の第1入力部120への入力をユーザーに求める。これに対し、ユーザーは、上記円環穴研削の入力を、第1入力部120に対し、適宜のタイミングで実行する。第1算定部140は、ユーザーによって上記円環穴研削が第1入力部120に入力されると、その処理をステップA70に進める。
【0141】
ステップA70において、第1算定部140は、図20に示すサブルーチン4を呼び出し、下穴8の周縁8Fを加工ユニット30により研削して円環穴9を形成する。そして、第1算定部140は、その処理を図16のステップA80に進める。なお、サブルーチン4における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0142】
上記円環穴9の形成に際しては、上述した砥石車33の自転状態が実現される。このとき、砥石車33の外周面33Bおよび軸面33Cは、これらに接触するものを研削する状態となる。また、基準ユニット34は、深さ方向(図2参照)において被研削材2側に移動される深さ方向移動を繰り返す。このため、砥石車33の外周面33Bは、被研削材2の下穴8の周縁8Fに設定される加工面3を研削し、これを上記深さ方向に向かって削り広げて穴底面9A(図25参照)を形成する。ここで、外周面33Bは、上記径方向外方に向かうにつれて研削深さが浅くなるように傾斜している。このため、加工面3において外周面33Bにより研削された部分は、上記径方向外方に向かって深さが浅くなる傾斜面8X(図25参照)をなす。本実施形態においては、砥石車33の自転状態は、後述する原点復帰(ステップA140)が実行されるタイミングまで継続される。
【0143】
ステップA80において、第1算定部140は、後述するステップA90からステップA120に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、上記深さ方向移動回数が上記深さ方向移動総回数に1を足した回数に達する(すなわち上記深さ方向移動回数が上記深さ方向移動総回数を超える)までの間繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、上記深さ方向移動回数が深さ方向移動総回数に1を足した回数に達すると、ステップA80の繰り返し処理を終了させて、その処理をステップA123に進める。
【0144】
ステップA90において、第1算定部140は、図19に示すサブルーチン3を呼び出し、基準ユニット34を深さ方向において被研削材2から離れる側に移動させる深さ方向移動を実現させる。そして、第1算定部140は、その処理を図16のステップA100に進める。この際、第1算定部140は、ステップA20にて算定された深さ方向移動距離開閉総回数をサブルーチン3に渡すべき引数である開閉総回数とする。なお、サブルーチン3における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0145】
ステップA100において、第1算定部140は、図18に示すサブルーチン2を呼び出し、第2揺動フレーム31を円環穴9における径方向外方に移動させる径方向送り移動を実現させる。この際、第1算定部140は、ステップA20にて算定された径方向移動距離開閉総回数をサブルーチン2に渡すべき引数である開閉総回数とする。そして、第1算定部140は、その処理を図16のステップA110に進める。
【0146】
上記径方向送り移動に際しては、図24に示すように、砥石車33の外周面33Bおよび軸面33Cは、被研削材2の下穴8の周縁8Fに設定される加工面3を研削し、これを上記径方向外方に向かって削り広げる。ここで、外周面33Bは、上記径方向外方に向かうにつれて研削深さが浅くなるように傾斜している。このため、加工面3において外周面33Bにより研削された部分は、上記径方向外方に向かって深さが浅くなる傾斜面8X(図25参照)をなす。
【0147】
ステップA110において、第1算定部140は、第3制御プログラム310の呼び出し処理を実行し、その処理をステップA120に進める。これに対し、旋回用リングギア14を360°旋回させる旋回処理を実行する。なお、上記旋回処理における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0148】
上記旋回処理によれば、砥石車33は、被研削材2における下穴8の縁の全周を、砥石車33の外周面33Bおよび/または軸面33Cが届く範囲において円形に研削する。これにより、直前に実行されたステップA100の径方向送り移動により削り広げられた傾斜面8Xは、さらにすり鉢状の穴8Cの一部となるように削り広げられる。
【0149】
ステップA120は、上述したステップA80の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記深さ方向移動回数が深さ方向移動総回数に1を足した回数に達する場合はその処理をステップA123に進め、そうでない場合はその処理をステップA90に進める。
【0150】
上述したステップA80の繰り返し処理によれば、砥石車33は、その研削深さを浅くしながら研削範囲を上述した径方向外方に移動させる。このため、被研削材2の加工面3は、すり鉢状の穴8Cをなすように削り広げられる。
【0151】
ステップA123において、第1算定部140は、エアーモーター32の回転を停止させるための命令を発し、もって砥石車33の回転を停止させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップA125に進める。
【0152】
ステップA125において、第1算定部140は、第1揺動フレーム18Dを揺動させるための命令を発し、もって上述した押し当て状態を解除する。そして、第1算定部140は、その処理をステップA130に進める。
【0153】
ステップA130において、第1算定部140は、第2揺動フレーム31および基準ユニット34の位置を上述したステップA40の実行前の位置に戻す原点復帰の開始命令をユーザーに求める。これに対し、ユーザーは、上記原点復帰の開始命令を、第1入力部120に対し、適宜のタイミングで入力する。第1算定部140は、ユーザーによって上記原点復帰の開始命令が第1入力部120に入力されると、その処理をステップA140に進める。
【0154】
ステップA140において、第1算定部140は、図22に示すサブルーチン6を呼び出し、上記原点復帰を実行する。本実施形態の原点復帰に際しては、砥石車33は、その自転状態が解除されて停止される。そして、第1算定部140は、第1制御プログラム110の終了処理を実行する。なお、サブルーチン6における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0155】
上述したサブルーチン1においては、第1算定部140は、まず、図17のステップB10を実行する。
【0156】
ステップB10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップB20に進める。
【0157】
ここで、上記初期設定には、残圧排気弁(図示せず)を閉じた状態で、径方向送りインデックス45、径方向戻りインデックス46、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56にエアーを所定時間(本実施形態では例えば1秒)だけ流し続ける処理が含まれる。また、上記初期設定には、カバー43(図7参照)およびハウジング53(図10参照)の内側にエアーを流して、この内側の空間を与圧状態とする処理が含まれる。なお、以下においては、直近において上記各構成に流されたエアーの向きを「順向き」として、この順向きとは反対となるエアーの向きを「逆向き」とする。
【0158】
ステップB20において、第1算定部140は、後述するステップB30の処理を繰り返し実行する。この繰り返しは、ステップB20の繰り返し処理においてステップB30の処理が実行された回数である径方向移動回数が、予備径方向移動総回数になるまでの間実行される。この予備径方向移動総回数は、円環穴9の内半径における最大許容寸法(以下、単に「内半径」と称する)を径方向移動距離P20(図24参照)で割った商である。円環穴9の内半径(図25の内径9Cの半分)は、ステップA20にて入力された下穴8の外径8Dおよび第1記憶部130に記憶された径方向補正値から算定される。ここで、径方向補正値は、下穴8の外径8Dにおける最大許容寸法と実寸の差である。なお、第1算定部140は、径方向移動回数が予備径方向移動総回数に達したときにステップB20の繰り返し処理を終了させ、その処理をステップB40に進める。
【0159】
ステップB30において、第1算定部140は、図18に示すサブルーチン2を呼び出し、第2揺動フレーム31を円環穴9における径方向外方に径方向移動距離P20(図24参照)だけ移動させる径方向移動を行う。この際、第1算定部140は、ステップA20にて算定された径方向移動距離開閉総回数をサブルーチン2に渡すべき引数である開閉総回数とする。なお、サブルーチン2における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0160】
ステップB40において、第1算定部140は、後述するステップB50の処理を繰り返し実行する。この繰り返しは、ステップB40の繰り返し処理においてステップB50の処理が実行された回数である深さ方向移動回数が、ステップA20(図16参照)にて算定された非接触深さ方向移動総回数になるまでの間実行される。なお、第1算定部140は、深さ方向移動回数が非接触深さ方向移動総回数に達すると、ステップB40の繰り返し処理を終了させる。そして、第1算定部140は、サブルーチン1からの復帰処理を実行する。この復帰処理に際しては、第1算定部140は、現時点における深さ方向移動回数の値を、戻り値として戻す。
【0161】
ステップB50において、第1算定部140は、図19に示すサブルーチン3を呼び出し、基準ユニット34を深さ方向において被研削材2から離れる側に深さ方向移動距離P10(図24参照)だけ移動させる深さ方向移動を行う。この際、第1算定部140は、ステップA20にて算定された深さ方向移動距離開閉総回数をサブルーチン3に渡すべき引数である開閉総回数とする。なお、サブルーチン3における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0162】
上述したサブルーチン2においては、第1算定部140は、まず、図18のステップC10を実行する。
【0163】
ステップC10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップC20に進める。ここで、上記初期設定には、上記開閉総回数を引数として取得する処理が含まれる。
【0164】
ステップC20において、第1算定部140は、後述するステップC30からステップC60に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、ステップC20の繰り返し処理においてステップC30の処理が実行された回数である開閉回数が、上記開閉総回数になるまでの間繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、開閉回数が上記開閉総回数に達したときにステップC20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン2からの復帰処理を実行する。
【0165】
ステップC30において、第1算定部140は、径方向クラッチ47における径方向戻り遮断シリンダー46Jの駆動を開始させる。これにより、第1算定部140は、径方向戻りプーリー46Hに対する径方向戻り伸縮スリーブ46Eの回転の伝達を遮断する。この際、径方向送りねじ41は、径方向送りインデックス45の回転のみが伝達される状態となる。言い換えると、第1算定部140は、径方向戻り遮断シリンダー46Jにより径方向戻りインデックス46の回転を遮断する。なお、ステップC30の処理を実行した第1算定部140は、その処理をステップC40に進める。
【0166】
ステップC40において、第1算定部140は、径方向戻り遮断シリンダー46Jの駆動を維持したまま、外エアーチューブ24に付設された制御電磁弁を動作させる。これにより、第1算定部140は、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46にエアーを所定時間(本実施形態では例えば1秒)だけ逆向きに流し続ける処理を、ロータリージョイント20およびこれに接続される各構成に実行させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップC50に進める。
【0167】
ステップC50において、第1算定部140は、径方向クラッチ47における径方向戻り遮断シリンダー46Jの駆動を停止させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップC60に進める。
【0168】
ステップC50の処理に際しては、径方向送り伸縮スリーブ45Eおよび径方向戻り伸縮スリーブ46Eは、その両方が上記近接状態とされる。このため、径方向送りねじ41においては、上述した停止状態が実現される。すなわち、第1算定部140は、径方向戻り遮断シリンダー46Jにより径方向戻りインデックス46の回転を解放する。
【0169】
ステップC60は、上述したステップC20の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記開閉回数が上記開閉総回数に達しない場合はその処理をステップC30に進め、達している場合はステップC20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン2からの復帰処理を実行する。
【0170】
上述したサブルーチン3においては、第1算定部140は、まず、図19のステップD10を実行する。
【0171】
ステップD10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップD20に進める。ここで、上記初期設定には、上記開閉総回数を引数として取得する処理が含まれる。
【0172】
ステップD20において、第1算定部140は、後述するステップD30からステップD60に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、ステップD20の繰り返し処理においてステップD30の処理が実行された回数である開閉回数が、上記開閉総回数になるまでの間繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、開閉回数が上記開閉総回数に達したときにステップC20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン3からの復帰処理を実行する。
【0173】
ステップD30において、第1算定部140は、深さ方向クラッチ57における深さ方向送り遮断シリンダー55Jの駆動を開始させる。これにより、第1算定部140は、深さ方向送りプーリー55Hに対する深さ方向送り伸縮スリーブ55Eの回転の伝達を遮断する。この際、深さ方向送りねじ51は、深さ方向戻りインデックス56の回転のみが伝達される状態となる。言い換えると、第1算定部140は、深さ方向送り遮断シリンダー55Jにより深さ方向送りインデックス55の回転を遮断する。なお、ステップD30の処理を実行した第1算定部140は、その処理をステップD40に進める。
【0174】
ステップD40において、第1算定部140は、深さ方向送り遮断シリンダー55Jの駆動を維持したまま、外エアーチューブ24に付設された制御電磁弁を動作させる。これにより、第1算定部140は、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56にエアーを所定時間(本実施形態では例えば1秒)だけ逆向きに流し続ける処理を、ロータリージョイント20およびこれに接続される各構成に実行させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップD50に進める。
【0175】
ステップD50において、第1算定部140は、深さ方向クラッチ57における深さ方向送り遮断シリンダー55Jの駆動を停止させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップD60に進める。
【0176】
ステップD50の処理に際しては、深さ方向送り伸縮スリーブ55Eおよび深さ方向戻り伸縮スリーブ56Eは、その両方が上記近接状態とされる。このため、深さ方向送りねじ51においては、上述した停止状態が実現される。すなわち、第1算定部140は、深さ方向送り遮断シリンダー55Jにより深さ方向送りインデックス55の回転を解放する。
【0177】
ステップD60は、上述したステップD20の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記開閉回数が上記開閉総回数に達しない場合はその処理をステップD30に進め、達している場合はステップD20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン3からの復帰処理を実行する。
【0178】
上述したサブルーチン4においては、第1算定部140は、まず、図20のステップE10を実行する。
【0179】
ステップE10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップE20に進める。
【0180】
ここで、上記初期設定には、第1算定部140が第1揺動フレーム18Dを揺動させるための命令を発し、もって上述した押し当て状態を実現させる処理が含まれる。
【0181】
ステップE20において、第1算定部140は、第2制御プログラム210の呼び出し処理を行い、その処理をステップE30に進める。ここで、第2制御プログラム210によって実行される処理については後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0182】
ステップE30において、第1算定部140は、後述するステップE40の処理を繰り返し実行する。この繰り返しは、ステップE30の繰り返し処理においてステップE40の処理が実行された回数である深さ方向移動回数が、ステップA20(図16参照)にて算定された非接触深さ方向移動総回数になるまでの間実行される。なお、第1算定部140は、深さ方向移動回数が非接触深さ方向移動総回数に達すると、ステップE30の繰り返し処理を終了させ、その処理をステップE50に進める。
【0183】
ステップE40において、第1算定部140は、図21に示すサブルーチン5を呼び出し、基準ユニット34を深さ方向において被研削材2側に移動させる深さ方向移動を行う。この際、第1算定部140は、ステップA20にて算定された深さ方向移動距離開閉総回数をサブルーチン5に渡すべき引数である開閉総回数とする。なお、サブルーチン5における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0184】
ステップE50において、第1算定部140は、後述するステップE60からステップE80に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、上記深さ方向移動回数がステップA20で算定された深さ方向移動総回数以上となるまでの間繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、上記深さ方向移動回数が深さ方向移動総回数以上となると、ステップE50の繰り返し処理を終了させ、その処理をステップE85に進める。
【0185】
ステップE60において、第1算定部140は、図21に示すサブルーチン5を呼び出し、基準ユニット34を深さ方向において被研削材2側に移動させる深さ方向移動を行う。この際、第1算定部140は、深さ方向移動距離開閉総回数をサブルーチン5に渡すべき引数である開閉総回数とする。そして、第1算定部140は、その処理を図20のステップE70に進める。なお、サブルーチン5における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0186】
ステップE70において、第1算定部140は、第3制御プログラム310の呼び出し処理を実行する。そして、第1算定部140は、その処理をステップE80に進める。なお、第3制御プログラム310における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0187】
ステップE80は、上述したステップE50の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記深さ方向移動回数が上記深さ方向移動総回数未満の場合はその処理をステップE60に進め、深さ方向移動総回数以上の場合はステップE50の繰り返し処理を終了させ、その処理をステップE85に進める。
【0188】
ステップE85において、第1算定部140は、後述するステップE90からステップE105に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、所定のセット回数(本実施形態では例えば6回)だけ繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、上記一連の処理を所定のセット回数繰り返すと、ステップE85の繰り返し処理を終了させ、その処理をステップE110に進める。
【0189】
ステップE90において、第1算定部140は、図21に示すサブルーチン5を呼び出し、基準ユニット34を深さ方向において被研削材2側に移動させる深さ方向移動を行う。この際、深さ方向補正開閉総回数をサブルーチン5に渡すべき引数の1つである開閉総回数とする。なお、サブルーチン5における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。そして、第1算定部140は、その処理をステップE100に進める。
【0190】
ステップE100において、第1算定部140は、第3制御プログラム310の呼び出し処理を実行する。そして、第1算定部140は、その処理をステップE105に進める。なお、第3制御プログラム310における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0191】
ステップE105は、上述したステップE85の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記一連の処理の繰り返し回数が上記セット回数に達しない場合はその処理をステップE90に進め、達している場合はステップE85の繰り返し処理を終了させ、その処理をステップE110に進める。
【0192】
ステップE110において、第1算定部140は、後述するステップE120からステップE140に至る一連の処理を繰り返し実行する。この繰り返しは、ステップE110の繰り返し処理においてステップE120の処理が実行された回数である径方向移動回数が、円環径方向移動総回数になるまでの間実行される。この円環径方向移動総回数は、円環穴9における、外半径の最大許容寸法(以下、単に「外半径」と称する。)から内半径を引いた寸法を径方向移動距離P20(図24参照)で割った商である。円環穴9の外半径(図25の外径9Dの半分)は、ステップA20にて入力された下穴8の外径8Dおよび第1記憶部130に記憶された径方向補正値から算定される。ここで、径方向補正値は、下穴8の外径8Dにおける最大許容寸法と実寸の差である。なお、第1算定部140は、上記径方向移動回数が円環径方向移動総回数となると、ステップE110の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン4からの復帰処理を実行する。
【0193】
ステップE120において、第1算定部140は、図18に示すサブルーチン2を呼び出し、第2揺動フレーム31を円環穴9における径方向外方に径方向補正値だけ移動させる径方向移動を行う。この際、第1算定部140は、径方向移動距離開閉総回数をサブルーチン2に渡すべき引数である開閉総回数とする。そして、第1算定部140は、その処理をステップE130に進める。なお、サブルーチン2における具体的な処理は上述しているため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0194】
ステップE130において、第1算定部140は、第3制御プログラム310の呼び出し処理を実行する。そして、第1算定部140は、その処理をステップE140に進める。なお、第3制御プログラム310における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0195】
ステップE140は、上述したステップE110の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記径方向移動回数が円環径方向移動総回数に達しない場合はその処理をステップE110に進め、達している場合はステップE110の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン4からの復帰処理を実行する。
【0196】
上述したサブルーチン5においては、第1算定部140は、まず、図21のステップF10を実行する。
【0197】
ステップF10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップF20に進める。ここで、上記初期設定には、上記開閉総回数を引数として取得する処理が含まれる。
【0198】
ステップF20において、第1算定部140は、後述するステップF30からステップF60に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、ステップF20の繰り返し処理においてステップF30の処理が実行された回数である開閉回数が、上記開閉総回数になるまでの間繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、開閉回数が上記開閉総回数に達したときにステップF20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン5からの復帰処理を実行する。
【0199】
ステップF30において、第1算定部140は、深さ方向戻り遮断シリンダー56Jの駆動を開始させる。これにより、第1算定部140は、深さ方向送りねじ51に対する深さ方向戻り伸縮スリーブ56Eの回転の伝達を遮断する。この際、深さ方向送りねじ51は、深さ方向送りインデックス55の回転のみが伝達される状態となる。言い換えると、第1算定部140は、深さ方向戻り遮断シリンダー56Jにより深さ方向戻りインデックス56の回転を遮断する。なお、ステップF30の処理を実行した第1算定部140は、その処理をステップF40に進める。
【0200】
ステップF40において、第1算定部140は、深さ方向戻り遮断シリンダー56Jの駆動を維持したまま、外エアーチューブ24に付設された制御電磁弁を動作させる。これにより、第1算定部140は、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56にエアーを所定時間(本実施形態では例えば1秒)だけ逆向きに流し続ける処理を、ロータリージョイント20およびこれに接続される各構成に実行させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップF50に進める。
【0201】
ステップF50において、第1算定部140は、深さ方向戻り遮断シリンダー56Jの駆動を停止させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップF60に進める。
【0202】
ステップF50の処理に際しては、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56は、その両方が上記近接状態とされる。このため、深さ方向送りねじ51においては、上述した停止状態が実現される。すなわち、第1算定部140は、深さ方向戻り遮断シリンダー56Jにより深さ方向戻りインデックス56の回転を解放する。
【0203】
ステップF60は、上述したステップF20の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記開閉回数が上記開閉総回数に達しない場合はその処理をステップF30に進め、達している場合はステップF20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン5からの復帰処理を実行する。
【0204】
上述したサブルーチン6においては、第1算定部140は、まず、図22のステップG10を実行する。
【0205】
ステップG10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップG40に進める。
【0206】
ステップG40において、第1算定部140は、図21に示すサブルーチン5を呼び出し、基準ユニット34を深さ方向において被研削材2側に移動させる深さ方向移動を行う。この際、第1算定部140は、深さ方向補正開閉総回数をサブルーチン5に渡すべき引数である開閉総回数とする。そして、第1算定部140は、その処理を図22のステップG50に進める。なお、サブルーチン5における具体的な処理は上述しているため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0207】
ステップG50において、第1算定部140は、図23に示すサブルーチン7を呼び出し、第2揺動フレーム31を径方向において回転軸5側に移動させる径方向移動を行う。この際、第1算定部140は、径方向復帰開閉総回数をサブルーチン7に渡すべき引数である開閉総回数とする。そして、第1算定部140は、その処理を図22のステップG60に進める。なお、サブルーチン7における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0208】
ステップG60において、第1算定部140は、揺動シリンダー19を停止させるための命令を発し、もってこれを停止させる。第1算定部140は、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50の各構成を停止させるための命令を発し、もってこれら各構成を停止させる。この各構成の中には、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46が含まれる。また、上記各構成の中には、深さ方向送りインデックス55および深さ方向戻りインデックス56が含まれる。そして、第1算定部140は、その処理をステップG70に進める。
【0209】
ステップG70において、第1算定部140は、上述した残圧排気弁を開くための命令を発し、もって揺動シリンダー19、径方向リニアガイド40および深さ方向リニアガイド50の残存エアーを排気する。そして、第1算定部140は、サブルーチン6からの復帰処理を実行する。
【0210】
上述したサブルーチン7においては、第1算定部140は、まず、図23のステップH10を実行する。
【0211】
ステップH10において、第1算定部140は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップH20に進める。ここで、上記初期設定には、上記開閉総回数を引数として取得する処理が含まれる。
【0212】
ステップH20において、第1算定部140は、後述するステップH30からステップH60に至る一連の処理を繰り返し実行する。この一連の処理は、ステップH20の繰り返し処理においてステップH30の処理が実行された回数である開閉回数が、上記開閉総回数になるまでの間繰り返し実行される。なお、第1算定部140は、開閉回数が上記開閉総回数に達したときにステップH20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン7からの復帰処理を実行する。
【0213】
ステップH30において、第1算定部140は、径方向送り遮断シリンダー45Jの駆動を開始させる。これにより、第1算定部140は、径方向送りねじ41に対する径方向送り伸縮スリーブ45Eの回転の伝達を遮断する。この際、径方向送りねじ41は、径方向戻りインデックス46の回転のみが伝達される状態となる。言い換えると、第1算定部140は、径方向送り遮断シリンダー45Jにより径方向送りインデックス45の回転を遮断する。なお、ステップH30の処理を実行した第1算定部140は、その処理をステップH40に進める。
【0214】
ステップH40において、第1算定部140は、径方向送り遮断シリンダー45Jの駆動を維持したまま、外エアーチューブ24に付設された制御電磁弁を動作させる。これにより、第1算定部140は、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46にエアーを所定時間(本実施形態では例えば1秒)だけ逆向きに流し続ける処理を、ロータリージョイント20およびこれに接続される各構成に実行させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップH50に進める。
【0215】
ステップH50において、第1算定部140は、径方向送り遮断シリンダー45Jの駆動を停止させる。そして、第1算定部140は、その処理をステップH60に進める。
【0216】
ステップH50の処理に際しては、径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46は、その両方が上記近接状態とされる。このため、径方向送りねじ41においては、上述した停止状態が実現される。すなわち、第1算定部140は、径方向送り遮断シリンダー45Jにより径方向送りインデックス45の回転を解放する。
【0217】
ステップH60は、上述したステップH20の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、第1算定部140は、上記開閉回数が上記開閉総回数に達しない場合はその処理をステップH30に進め、達している場合はステップH20の繰り返し処理を終了させ、サブルーチン7からの復帰処理を実行する。
【0218】
第2制御プログラム210によって第2算定部240として機能されるコンピューター100(以下、単に「第2算定部240」と称する。)は、まず、図26のステップK10を実行する。
【0219】
ステップK10において、第2算定部240は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップK20に進める。
【0220】
ステップK20において、第2算定部240は、エアーモーター32を回転させるための命令を発し、もって上述した砥石車33の自転状態を実現させる。そして、第2算定部240は、その処理をステップK30に進める。
【0221】
ステップK30において、第2算定部240は、コンピューター100に付設されるセンサー(図示省略)の出力を取得し、もって実測流量252を計測する。そして、第2算定部240は、その処理をステップK40に進める。
【0222】
ステップK40において、第2算定部240は、第2記憶部230にアクセスして、この第2記憶部230にテーブル231(図27参照)の形で記憶された第2の対応関係234を取得する。そして、第2算定部240は、その処理をステップK50に進める。
【0223】
ステップK50において、第2算定部240は、第2記憶部230にアクセスして、この第2記憶部230に記憶された、記憶流量232および記憶自転速度233(図27参照)のデータ対を検索する。これにより、第2算定部240は、記憶流量232に含まれる各データのうち、そのエアーの流量が、直近に実行されたステップK30にて計測された実測流量252に最も近似しているデータを実記憶流量232A(図27参照)として取得する。そして、第2算定部240は、その処理をステップK60に進める。
【0224】
ステップK60において、第2算定部240は、直前に実行されたステップK50にて取得した実記憶流量232Aをテーブル231にあてはめる。これにより、第2算定部240は、実記憶自転速度233A(図27参照)を算定する。そして、第2算定部240は、その処理をステップK70に進める。
【0225】
ステップK70において、第2算定部240は、直前に実行されたステップK50にて算定された実記憶自転速度233Aを算定自転速度243とする。ついで、第2算定部240は、直近に実行されたステップK30にて計測された実測流量252を算定自転速度243と一緒に表示部280に出力する。そして、第2算定部240は、第2制御プログラム210の終了処理を実行する。
【0226】
第3制御プログラム310によって第3算定部340として機能されるコンピューター100(以下、単に「第3算定部340」と称する。)は、まず、図29のステップM10を実行する。
【0227】
ステップM10において、第3算定部340は、後述する各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、その処理をステップM20に進める。
【0228】
ステップM20において、第3算定部340は、後述する各ステップを実行するために必要となる種々のデータの送信を第1算定部140および第2算定部240に要請し、これらから上記種々のデータを受信する。この種々のデータには、径方向距離、深さ方向距離および下穴8の深さ121が含まれる。また、上記種々のデータには、算定自転速度243が含まれる。そして、第3算定部340は、その処理をステップM30に進める。
【0229】
ステップM30において、第3算定部340は、第1送受信部170により取得した深さ方向距離が、所定のしきい値以下の値であるか否かを判定する。この判定の結果が「はい」である(すなわち深さ方向距離≦しきい値である)場合、第3算定部340は、その処理をステップM40に進める。上記判定の結果が「いいえ」である(すなわち深さ方向距離>しきい値である)場合、第3算定部340は、その処理をステップM50に進める。
【0230】
ステップM40において、第3算定部340は、加工ユニット30の公転角速度として設定されるべき角速度を格納する変数である予備公転角速度333Dを「高速度」に設定する。そして、第3算定部340は、その処理をステップM60に進める。
【0231】
ステップM50において、第3算定部340は、予備公転角速度333Dを「中速度」に設定する。そして、第3算定部340は、その処理をステップM60に進める。
【0232】
ステップM60において、第3算定部340は、経過時間を測るためのタイマーをセットし、その処理をステップM70に進める。本実施形態においては、上記タイマーは、上述したオペレーティングシステムがコンピューター100に実現させる機能の1つである。
【0233】
ステップM70において、第3算定部340は、径方向距離および算定自転速度243から算定される補正自転速度が、第3記憶部330に記憶された下限自転速度以上、かつ上限自転速度以下の値であるか否かを判定する。この判定の結果が「はい」である(すなわち下限自転速度≦補正自転速度≦上限自転速度である)場合、第3算定部340は、その処理をステップM90に進める。上記判定の結果が「いいえ」である(すなわち補正自転速度<下限自転速度、または上限自転速度<補正自転速度である)場合、第3算定部340は、その処理をステップM80に進める。
【0234】
ステップM80において、第3算定部340は、上述した算定公転角速度を「停止」333Bに設定する。そして、第3算定部340は、第3制御プログラム310の終了処理を実行する。これに対し、旋回用リングギア14は、その旋回を停止させ、もって加工ユニット30の公転角速度をゼロにする。
【0235】
ステップM90において、第3算定部340は、直近に実行されたステップM60にて設定されたタイマーが示す経過時間を参照し、このタイマーがセットされてから所定の予備時間(本実施形態では例えば10秒)が経過したか否かを判定する。この判定の結果が「はい」である(すなわち予備時間が経過している)場合、第3算定部340は、その処理をステップM110に進める。上記判定の結果が「いいえ」である(すなわち予備時間が経過していない)場合、第3算定部340は、その処理をステップM100に進める。
【0236】
ステップM100において、第3算定部340は、上述した算定公転角速度を「低速度」333Cに設定する。そして、第3算定部340は、その処理をステップM70に進める。これに対し、旋回用リングギア14は、その旋回の角速度を上記算定公転角速度に対応させ、もって加工ユニット30の公転角速度を「低速度」にする。
【0237】
ステップM110において、第3算定部340は、旋回用サーボモーター16にアクセスする。このアクセスは、旋回用サーボモーター16が備える検知部による、旋回用リングギア14のドグの検知結果を取得するために行われる。ついで、第3算定部340は、取得したドグの検知結果を解析し、加工ユニット30の位置についての情報を得る。さらに、第3算定部340は、加工ユニット30の位置による条件判断を行う。この条件判断において、加工ユニット30の位置が、上述した減速位置に到達していない位置であると判断された場合、第3算定部340は、その処理をステップM120に進める。また、上記条件判断において、加工ユニット30の位置が、上記減速位置に到達し、かつ、上述した原点位置に到達していない位置であると判断された場合、第3算定部340は、その処理をステップM100に進める。また、上記条件判断において、加工ユニット30の位置が、上記原点位置に到達した位置であると判断された場合、第3算定部340は、その処理をステップM140に進める。
【0238】
ステップM120において、第3算定部340は、直近に実行されたステップM70にて用いた補正自転速度が、第3記憶部330に記憶された切替自転速度以上の値であるか否かを判定する。この判定の結果が「はい」である(すなわち補正自転速度≧切替自転速度である)場合、第3算定部340は、その処理をステップM130に進める。上記判定の結果が「いいえ」である(すなわち補正自転速度<切替自転速度である)場合、第3算定部340は、その処理をステップM100に進める。
【0239】
ステップM130において、第3算定部340は、現時点において設定されている予備公転角速度を算定公転角速度として設定する。そして、第3算定部340は、その処理をステップM70に進める。これに対し、旋回用リングギア14は、その旋回の角速度を上記算定公転角速度に対応させ、もって加工ユニット30の公転角速度を設定する。
【0240】
ステップM140において、第3算定部340は、第1送受信部170に旋回用サーボモーター16の駆動を終了する旨を送信する。そして、第3算定部340は、第3制御プログラム310の終了処理を実行する。
【0241】
<作用・効果>
上述した研削装置1によれば、研削装置1に係る加工ユニット30は、取付状態において、エアーモーター32により砥石車33を自転させ、その自転により被研削材2の表面を研削する。ここで、加工ユニット30は、ロータリージョイント20からエアーモーター32にエアーを給排気することで駆動する。これにより、研削装置1は、砥石車33の回転を火気器具に該当しない構成により実現させ、もって研削加工を行うことができる研削装置1を提供することができる。
【0242】
上述した研削装置1によれば、研削装置1に係る旋回用サーボモーター16は、加工ユニット30から離れた位置に位置するとともに、旋回用リングギア14を動かし、もって固定部21に対して可変部22を回転させることとなる。これにより、研削装置は、加工ユニット30の周囲から火気器具に該当する構成を離間させることができる。
【0243】
また、研削装置1は、ロータリージョイント20と、加工ユニット30と、の間で配管・配線のねじれを生じさせずに被研削材2の研削加工を行うことができる。
【0244】
上述した研削装置1によれば、研削装置1に係る径方向リニアガイド40は、径方向送りねじ41を回動させることで、回動が制限された加工ユニット30を、加工ユニット30が公転6する円の径方向にスライドさせている。これにより、加工ユニット30をスライドさせた後の研削による軌跡であるスライド後軌跡は、加工ユニット30をスライドさせる前の研削による軌跡であるスライド前軌跡の中心である加工中心4に対して同心状に併設させることができる。
【0245】
また、研削装置1に係るカバー与圧ノズル44が、カバー43の内側にエアーを供給している。そうすると、カバー43の内側はカバー43の外側より気圧が高くなり、加工面3から生じた粉体(図示省略)はカバー43の内側に入りにくくなる。これにより、カバー43の内側に収容された径方向送りねじ41が、粉体にさらされるおそれを低減することができる。
【0246】
ところで、スカーフサンディング加工においては、被研削材2に対して研削の角度を一定にすることが肝要とされている。ここで、研削装置1に係る第1揺動フレーム18Dおよび第2揺動フレーム31は、加工ユニット30における上記仰俯角方向の傾きを一定の角度となるように調整することができる。これにより、加工ユニット30における砥石車33は、被研削材2を一定の研削角度で研削することができる。
【0247】
上述した研削装置1によれば、研削装置1に係る径方向送りインデックス45および径方向戻りインデックス46は、エアーが流れることで互いに反対方向に回転する。そして、径方向送りインデックス45または径方向戻りインデックス46の、いずれか一方は、径方向クラッチ47により、径方向送りねじ41から離間状態とされ、他方は、径方向送りねじ41に近接状態とされる。そうすると、径方向クラッチ47が働いていないときは、径方向送りインデックス45の回転および径方向戻りインデックス46の回転を径方向送りねじ41が受けることなく、加工ユニット30の位置が留められることとなる。一方、径方向クラッチ47が働いているときは、径方向送りインデックス45の回転または径方向戻りインデックス46の回転の、いずれか一方を径方向送りねじ41が受け、加工ユニット30が、規定のピッチで送られたり、戻されたりすることとなる。これにより、加工ユニット30を加工面3の研削幅毎に送ったり、戻したりすることができる。
【0248】
上述した研削装置1によれば、研削装置1に係る集塵機構60は、被研削材2の表面における粉体(図示省略)を集塵するものである。粉体は、囲み61によって形成された包囲空間7の内側で生じ、包囲空間7の外側に飛散することが抑えられることとなる。そして、ロータリージョイント20からのエアーの流れを受ける集塵ユニット62は、包囲空間7の内側の粉体をエアーとともに吸引することとなる。これにより、粉体を加工ユニット30の周囲に飛散させることを抑制して、集塵することができる。
【0249】
上述した研削装置1によれば、研削装置1に係るドライノズル70は、砥石車33にエアーをブローすることで、砥石車33を冷却しつつ、ドライ加工を可能としている。さらに、砥石車33の研削面である外周面33Bの目詰まりが抑制され、研削力の低下を抑えることができる。
【0250】
上述した研削装置1によれば、研削装置1は、エアーモーター32に流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量232および記憶流量232に対応する砥石車33の自転速度となる記憶自転速度233について、第2記憶部230で記憶している。そして、エアーモーター32に流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量252を計測部250で計測し、実測流量252および第2の対応関係234から、砥石車33の自転速度となる算定自転速度243を第2算定部240で算定している。これにより、加工ユニット30が被研削材2を研削する際に、砥石車33の算定自転速度243を算定することができる。
【0251】
上述した研削装置1によれば、研削装置1は、エアーモーター32に流れる単位時間当たりのエアーの流量となる記憶流量232および記憶流量232に対応する加工ユニット30における公転角速度となる記憶公転角速度333について、第3記憶部330で記憶している。そして、エアーモーター32に流れる単位時間当たりのエアーの流量となる実測流量252を計測部250で計測し、実測流量252および第2の対応関係234から、加工ユニット30の公転角速度となる算定公転角速度を第3算定部340で算定している。これにより、加工ユニット30が被研削材2を研削する際に、加工ユニット30の算定公転角速度を算定することができる。
【0252】
本開示は、上記の構成をもつことにより、砥石車33の自転を火気器具に該当しない構成により実現させ、もって研削加工を行うことができる研削装置1を提供することができる。
【0253】
<他の実施形態>
以上、本発明を実施するための形態について、上述した実施形態によって説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変更が可能であることは明らかである。すなわち、本発明の目的を実施するための形態は、本明細書に添付した請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更を含みうるものである。例えば、本発明を実施するための形態として、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0254】
上述した研削装置1は、被研削材2の研削にあたり、プリセット、円環穴9の形成、被研削材2側への深さ方向移動の繰り返し、繰り返し処理、原点復帰の各処理をこの順で実行する。ここで、上記繰り返し処理は、被研削材2から離れる側への深さ方向移動、径方向送り移動、旋回処理の各処理をこの順で実行する一連の処理を繰り返すものである。しかるに、本開示に係る研削装置が被研削材を研削する際の処理の流れは、上記のものに限定されない。すなわち、研削装置は、例えば、被研削材の研削に際してプリセット、円環穴の形成、原点復帰の各処理の1つ以上を実行しないものであってもよい。また、被研削材を研削する際に繰り返し処理として繰り返される一連の処理は、その処理内容および処理の実行順を適宜に変更することができる。具体的には、上記一連の処理は、被研削材側への深さ方向移動の繰り返し、旋回処理、被研削材から離れる側への深さ方向移動の繰り返し、径方向送り移動の各処理をこの順で実行するものであっても良い。
【0255】
上述した研削装置1は、径方向軸部41Aおよび深さ方向軸部51Aの回転1回当たりの回転角度は、それぞれ一定値である。このため、径方向軸部41Aの対応距離および深さ方向軸部51Aの対応距離も、それぞれ一定値となる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。すなわち、回転するものを「無段階」タイプ(例えばエアーモーター)としても良い。
【0256】
本開示に係る研削装置は、上述した研削装置1の説明にて説明された構成以外の追加構成を備えるものであっても良い。このような追加構成には、旋回用リングギアを可変部に固定するスプリングワッシャー付きねじが含まれる。また、上記追加構成には、研削装置の各構成を耐油性の素材からなるものとした構成が含まれる。また、上記追加構成には、ユーザーが「円環穴研削」および「原点復帰の開始命令」を第1入力部に入力するタイミングで点灯する報知ランプが含まれる。また、上記追加構成には、メインフレームに取り付けられて、第1揺動フレームと平行フレームとがなす角度を計測してこれを第1記憶部に記憶させる角度計が含まれる。この角度計を追加構成とした場合、第1算定部は径方向移動距離を精度良く算定することができる。
【0257】
本開示に係る研削装置は、第2揺動部に第2揺動フレームがスライドする方向に延びる回動軸となる第3揺動軸中心を設け、この第3揺動軸中心に補助フレームを揺動可能に取り付けたものであっても良い。この場合において、補助フレームには、基準ユニットおよび加工ユニットを固定しても良い。さらに、基準ユニットには被研削材の表面を転がる倣い玉を3つ三角形状に取り付けても良い。係る場合、基準ユニットが、基準ユニットが公転する円の周方向においても垂直に立つこととなり、研削する深さの不確かさを減少させることができる。
【0258】
本開示に係る研削装置において、第1記憶部は、第1揺動フレームおよび基準ユニットのそれぞれが移動する移動履歴をデータとして保存しても良い。また、上記追加構成には、第1送受信部が、このデータを別のコンピューターに送信しても良い。係る場合、ユーザーがこのデータを被研削材の修理に用いられるパッチの設計に利用することができる。また、上記追加構成には、第1記憶部が、砥石車における、外周面および軸面が摩耗する摩耗データを記憶することが含まれる。また、上記追加構成には、第1制御プログラムが、コンピューターを、砥石車の摩耗をユーザーに報知させる表示部として機能させることが含まれる。係る場合、第1算定部がこの履歴に係るデータがそれぞれの摩耗データ以上であると判定するとき、第1算定部は、砥石車の摩耗を表示部に表示させることができる。
【0259】
本開示に係る研削装置において、第2算定部が実測流量に対応する算定自転速度を算定する手法は、上述した手法に限定されない。すなわち、第2算定部は、実測流量より大きい2つの実記憶流量および実測流量より小さい2つの実記憶流量を記憶流量から選択し、これらの実記憶流量と、これらの実記憶流量と対応関係にある実記憶自転速度から定まる3次のラグランジュ補完式により、実測流量に対応する算定自転速度を算定しても良い。また、第2算定部は、記憶流量および記憶流量と対応関係にある記憶自転速度から最小二乗法により求めたフィッティング関数により、実測流量に対応する算定自転速度を算定しても良い。これらの場合、砥石車の算定自転速度をより精度良く算定することができる。
【0260】
本開示に係る研削装置は、第2記憶部がエアーモーターの駆動時間となる記憶時間および記憶時間に対応する砥石車の自転速度となる記憶自転速度と、の対応関係を記憶し、計測部が計測する単位時間当たりのエアーの流量に同期してエアーモーターの駆動時間を積算する積算部を備えているものであっても良い。係る場合、記憶流量および記憶時間を制御因子とした分散分析または実験計画法により、記憶自転速度に対応する記憶時間の、主効果および記憶流量とともに生ずる交互作用効果を記憶させ、もって駆動時間に対応する算定自転速度を算定することができる。なお、記憶時間を測定するタイマーについては、第2算定部に付設させても良い。
【0261】
本開示に係る研削装置は、第3算定部が、加工ユニットが公転する算定公転角速度として「停止」を設定する際に、異常を知らせる警告灯を点滅させたり、異常を知らせる警報機を鳴らしたりしても良い。係る場合、ユーザーは、エアーモーターに流れるエアーの異常を検知することができる。
【0262】
本開示に係る研削装置は、第3算定部が、タイマーに停止時間(加工ユニットが公転する算定公転角速度として「停止」が設定されている間の時間)を計測させても良い。そして、第3算定部が、この停止時間が旋回用サーボモーターの安定駆動に影響を与える時間より短いか否かを判定しても良い。係る場合、第3算定部が、停止時間が旋回用サーボモーターの安定駆動に影響を与える時間未満と判定するとき、算定公転角速度として「低速度」または予備公転角速度を設定することができる。また、第3算定部が、停止時間が旋回用サーボモーターの安定駆動に影響を与える時間以上と判定するとき、第3制御プログラムを終了することができる。
【符号の説明】
【0263】
1 研削装置
2 被研削材
3 加工面
4 加工中心
5 回転軸
6 公転
7 包囲空間
8 下穴
8A 底面
8B 穴側面
8C すり鉢状の穴
8D 外径
8F 周縁
8X 傾斜面
9 円環穴
9A 穴底面
9C 内径
9D 外径
9E 内周
9F 外周
10 フレーム
11 ベースフレーム
12 吸着アッセンブリ
13 固定フレーム
14 旋回用リングギア
14A 伝達用歯
14B スプリングワッシャー付きねじ
15 旋回用ベアリング
16 旋回用サーボモーター
17 ローラピニオン
18 メインフレーム
18A 平行フレーム
18B 間隔フレーム
18C 第1揺動軸中心
18D 第1揺動フレーム
18E 変曲部
19 揺動シリンダー
19A 揺動調整バルブ
20 ロータリージョイント
21 固定部
21A 外周固定ポート
21M 中央固定ポート
22 可変部
22A 外周可変ポート
22M 中央可変ポート
23 連通路
23A 隙間
24 外エアーチューブ
25 内エアーチューブ
25A チューブ
25B チューブ
25C チューブ
25D チューブ
26A 二股エアージョイント
26B 二股エアージョイント
26C 二股エアージョイント
26D 二股エアージョイント
30 加工ユニット
31 第2揺動フレーム
31A ピッチ送り部
31B 間隔部
31C 第2揺動軸中心
31D 第2揺動部
32 エアーモーター
32A 筐体
32B ローター軸
33 砥石車
33A 円板部
33B 外周面
33C 軸面
33D 中心
33X 溝
34 基準ユニット
35 倣い玉
36 オイルフィルター
40 径方向リニアガイド
41 径方向送りねじ
41A 径方向軸部
41B 径方向プーリー
42 径方向ガイドレール
43 カバー
44 カバー与圧ノズル
45 径方向送りインデックス
45A 径方向送りシリンダー
45B 径方向送り回転軸
45C 径方向送りピストン
45D 被押当部
45E 径方向送り伸縮スリーブ
45F 径方向送り伸縮バネ
45G 径方向送り調整バルブ
45H 径方向送りプーリー
45I 径方向送り回転ベルト
45J 径方向送り遮断シリンダー
45X 押当部
46 径方向戻りインデックス
46A 径方向戻りシリンダー
46B 径方向戻り回転軸
46C 径方向戻りピストン
46D 被押当部
46E 径方向戻り伸縮スリーブ
46F 径方向戻り伸縮バネ
46G 径方向戻り調整バルブ
46H 径方向戻りプーリー
46I 径方向戻り回転ベルト
46J 径方向戻り遮断シリンダー
46X 押当部
47 径方向クラッチ
48 径方向回転伝達機構
50 深さ方向リニアガイド
51 深さ方向送りねじ
51A 深さ方向軸部
51B 深さ方向プーリー
52 深さ方向ガイドレール
53 ハウジング
54 ハウジング与圧ノズル
55 深さ方向送りインデックス
55A 深さ方向送りシリンダー
55B 深さ方向送り回転軸
55C 深さ方向送りピストン
55D 被押当部
55E 深さ方向送り伸縮スリーブ
55F 深さ方向送り伸縮バネ
55G 深さ方向送り調整バルブ
55H 深さ方向送りプーリー
55I 深さ方向送り回転ベルト
55J 深さ方向送り遮断シリンダー
55X 押当部
56 深さ方向戻りインデックス
56A 深さ方向戻りシリンダー
56B 深さ方向戻り回転軸
56C 深さ方向戻りピストン
56D 被押当部
56E 深さ方向戻り伸縮スリーブ
56F 深さ方向戻り伸縮バネ
56G 深さ方向戻り調整バルブ
56H 深さ方向戻りプーリー
56I 深さ方向戻り回転ベルト
56J 深さ方向戻り遮断シリンダー
56X 押当部
57 深さ方向クラッチ
58 深さ方向回転伝達機構
60 集塵機構
61 囲み
61A ブラシ
61B 穂
61C 柄
62 集塵ユニット
63 吸引口
64 サイクロンユニット
65 エジェクター
65A 排気口
66 排気フィルター
70 ドライノズル
71 軸方向ノズル
71A 軸方向ノズル
71B 軸方向ノズル
72 周方向ノズル
80 吸着脚
100 コンピューター
110 第1制御プログラム
120 第1入力部
121 深さ
130 第1記憶部
140 第1算定部
160 第1制御部
170 第1送受信部
210 第2制御プログラム
230 第2記憶部
231 テーブル
232 記憶流量
232A 実記憶流量
233 記憶自転速度
233A 実記憶自転速度
233X 補記憶自転速度
234 第2の対応関係
240 第2算定部
243 算定自転速度
250 計測部
252 実測流量
280 表示部
310 第3制御プログラム
320 第3入力部
330 第3記憶部
333 記憶公転角速度
333B 「停止」
333C 「低速度」
333D 予備公転角速度
333X 補記憶公転角速度
340 第3算定部
360 第3制御部
370 第3送受信部
P10 深さ方向移動距離
P11 深さ方向補正距離
P12 深さ方向移動総距離
P20 径方向移動距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図29