(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115599
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】運転支援装置および運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017907
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 寛鳳
(72)【発明者】
【氏名】山口 高央
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰生
(72)【発明者】
【氏名】大木 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 真司
(72)【発明者】
【氏名】古川 顕吾
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF27
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両の運転の安全性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】姿勢検出部52は、車両10の運転者の姿勢を検出する。車両挙動情報取得部54は、運転者の操作または車両10の挙動に関する情報を取得する。報知制御部56は、姿勢検出部52により運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、車両挙動情報取得部54により(1)運転者の足がアクセルペダル18付近にあることを示す情報、(2)運転者の足がブレーキペダル22付近にないことを示す情報、(3)車両10の走行速度が上昇していることを示す情報のうち少なくとも1つが取得された場合、運転者の注意を喚起する内容を報知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記運転者の操作または前記車両の挙動に関する情報を取得する車両挙動情報取得部と、
前記姿勢検出部により前記運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、前記車両挙動情報取得部により(1)前記運転者の足が前記車両のアクセルペダル付近にあることを示す情報、(2)前記運転者の足が前記車両のブレーキペダル付近にないことを示す情報、(3)前記車両の走行速度が上昇していることを示す情報のうち少なくとも1つが取得された場合、前記運転者の注意を喚起する内容を報知する報知制御部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記報知制御部は、前記車両挙動情報取得部により前記車両が後退モードであることを示す情報が取得されたことを更なる条件として、前記運転者の注意を喚起する内容を報知する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記姿勢検出部は、前記車両に設置されたカメラにより撮像された画像、または、前記車両に設置されたセンサの検出値に基づいて、前記運転者の上半身の向きまたは体重移動の程度を推定し、その推定結果に基づいて、前記運転者が後方を向いた姿勢であることを検出する、
請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
コンピュータが、
車両の運転者の姿勢を検出し、
前記運転者の操作または前記車両の挙動に関する情報を取得し、
前記運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、(1)前記運転者の足が前記車両のアクセルペダル付近にあることを示す情報、(2)前記運転者の足が前記車両のブレーキペダル付近にないことを示す情報、(3)前記車両の走行速度が上昇していることを示す情報のうち少なくとも1つが取得された場合、前記運転者の注意を喚起する内容を報知する、
運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理技術に関し、特に運転支援装置および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が車両を制動可能な姿勢でないときに自動運転の駐車動作を停止させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を後ろ向き駐車する場合、運転者は、車両の後方を目視確認するために、体を捻るなど、通常の運転姿勢とは異なる姿勢をとることがある。このとき、ブレーキペダルやアクセルペダル等を踏む足の感覚が通常運転時とは異なるものになるため、踏み間違いが発生しやすい。
【0005】
上記の特許文献1では、乗員によるブレーキペダルへの操作入力を検知すると、運転可能な姿勢であると判定している。しかし、ブレーキペダルへの操作入力を検知したこと、言い換えれば、ブレーキペダルを操作可能であることが、踏み間違いを防止するとは言えず、また、安全な運転を保証するとも言えない。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の運転の安全性を向上させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の運転支援装置は、車両の運転者の姿勢を検出する姿勢検出部と、運転者の操作または車両の挙動に関する情報を取得する車両挙動情報取得部と、姿勢検出部により運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、車両挙動情報取得部により(1)運転者の足が車両のアクセルペダル付近にあることを示す情報、(2)運転者の足が車両のブレーキペダル付近にないことを示す情報、(3)車両の走行速度が上昇していることを示す情報のうち少なくとも1つが取得された場合、運転者の注意を喚起する内容を報知する報知制御部とを備える。
【0008】
本発明の別の態様は、運転支援方法である。この方法は、コンピュータが、車両の運転者の姿勢を検出し、運転者の操作または車両の挙動に関する情報を取得し、運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、(1)運転者の足が車両のアクセルペダル付近にあることを示す情報、(2)運転者の足が車両のブレーキペダル付近にないことを示す情報、(3)車両の走行速度が上昇していることを示す情報のうち少なくとも1つが取得された場合、運転者の注意を喚起する内容を報知する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体、運転支援装置を搭載した車両などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の運転の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例の車両の運転者周辺の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施例の車両の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図3】実施例の運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】運転者の姿勢変化に伴う注意喚起の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施例の概要を説明する。後ろ向き駐車をする際の事故発生原因の1つとして、運転者が、右後方を目視確認するため体を捻ったところ、右足が意図せずアクセルにかかり、ブレーキを踏むつもりが誤ってアクセルを踏んでしまったケースがあることが報告されている。そこで実施例の運転支援装置は、車両の後進時に、運転者の体が捻られており、かつ、アクセルペダルに足がかかっている場合、踏み間違いを起こさないように注意を喚起する内容を運転者に報知する。
【0013】
図1は、実施例の車両10の運転者周辺の構成を模式的に示す。運転者は、運転席12に座り、ステアリング14、シフトレバー16、アクセルペダル18、ブレーキペダル22を操作することにより車両10を運転する。アクセルペダル18には、アクセル踏み込みセンサ20が設置され、ブレーキペダル22には、ブレーキ踏み込みセンサ24が設置される。
【0014】
カメラ26は、運転者を撮像するカメラを含む。カメラ26は、複数台のカメラを含んでもよい。複数台のカメラは、例えば、運転者の上半身を撮像する第1のカメラと、運転者の足下(すなわちアクセルペダル18の付近およびブレーキペダル22の付近)を撮像する第2のカメラを含んでもよい。
【0015】
報知部28は、注意を喚起する内容を運転者に報知する機器である。報知部28は、例えば、画像表示装置、ランプ、音声出力装置(スピーカ)または振動発生器であってもよい。
【0016】
運転支援装置30は、情報処理装置とも言え、カメラ26による撮像画像等に基づいて報知条件が満たされた場合、注意を喚起する内容を運転者に報知するよう報知部28を制御する。運転支援装置30は、CPUやメモリを含むECU(Electronic Control Unit)により実現されてもよい。
【0017】
図2は、実施例の車両10の機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
図2は、車両10が備える複数の機能のうち運転支援機能に関連する装置や機能を描いたものである。車両10は、アクセルペダル18、ブレーキペダル22、カメラ26、報知部28、運転支援装置30、加速度センサ32、荷重センサ34、走行状態管理部36を備える。アクセルペダル18は、アクセル踏み込みセンサ20を含み、ブレーキペダル22は、ブレーキ踏み込みセンサ24を含む。
【0019】
アクセル踏み込みセンサ20、ブレーキ踏み込みセンサ24、カメラ26、報知部28、加速度センサ32、荷重センサ34、走行状態管理部36は、CAN(Controller Area Network)やMOST(Media Oriented Systems Transport)(登録商標)、イーサネット(登録商標)等、公知の車載ネットワークを介してまたは直接、運転支援装置30と接続される。運転支援装置30は、アクセル踏み込みセンサ20、ブレーキ踏み込みセンサ24、カメラ26、加速度センサ32、荷重センサ34、走行状態管理部36から出力されたデータを、車載ネットワークを介してまたは直接取得する。
【0020】
アクセル踏み込みセンサ20は、アクセルペダル18の踏み込み量を検出し、アクセルペダル18の踏み込み量(すなわち検出値)を示すデータを出力する。ブレーキ踏み込みセンサ24は、ブレーキペダル22の踏み込み量を検出し、ブレーキペダル22の踏み込み量(すなわち検出値)を示すデータを出力する。カメラ26は、運転者等を写した撮像画像のデータを出力する。
【0021】
加速度センサ32は、車両10の加速度を検出し、車両10の加速度(すなわち検出値)を示すデータを出力する。荷重センサ34は、運転席の下に設置され、複数の検出点にかかる運転者の重量を検出する。荷重センサ34は、複数の検出点にかかる運転者の重量(すなわち検出値)を示すデータを出力する。
【0022】
走行状態管理部36は、車両10の走行状態を示す複数種類の情報を管理する機器である。走行状態管理部36は、複数のECUを含み得る。例えば、走行状態管理部36は、シフトレバー16の位置(すなわちシフトポジション)、ステアリング14の操作量、アクセルペダル18の操作量、ブレーキペダル22の操作量を示す情報を記憶してもよい。走行状態管理部36は、車両10の走行状態を示す様々な情報を運転支援装置30に提供する。走行状態管理部36は、運転支援装置30に含まれて構成されてもよく、単体で上述した各種センサ類と接続され、車両10の走行状態を示す複数種類の情報を管理して運転支援装置30に提供してもよい。
【0023】
運転支援装置30は、制御部40を備える。制御部40は、アクセル踏み込みセンサ20、ブレーキ踏み込みセンサ24、カメラ26、加速度センサ32、荷重センサ34、走行状態管理部36から出力されたデータを用いて、各種データ処理を実行する。
【0024】
制御部40は、姿勢検出部52、車両挙動情報取得部54、報知制御部56を含む。これら複数の機能ブロックの機能は、コンピュータプログラムに実装されてもよく、そのコンピュータプログラムは、運転支援装置30のストレージにインストールされてもよい。運転支援装置30のCPUは、そのコンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0025】
姿勢検出部52は、車両10の運転者の姿勢を検出し、例えば、運転者が後方を向いた姿勢であることを検出する。具体的には、姿勢検出部52は、車両10に設置されたカメラ26による撮像画像、または、車両10に設置されたセンサ(実施例では荷重センサ34)の検出値に基づいて、運転者の上半身の向きと体重移動の程度の少なくとも一方を推定する。姿勢検出部52は、運転者の上半身の向きと体重移動の程度の少なくとも一方の推定結果に基づいて、運転者が後方を向いた姿勢であることを検出する。なお、体重移動の程度に代えて、重心移動の程度を推定してもよい。
【0026】
姿勢検出部52は、カメラ26による撮像画像に基づいて、運転者の上半身の部位(顔、肩、胸など)の向きを認識し、運転者が後方を向いた姿勢であることを検出してもよい。例えば、姿勢検出部52は、運転者が後方を向いた姿勢であるか否かに関する画像の教師有り学習を行った学習済モデルを備え、カメラ26による撮像画像を学習済モデルに入力し、運転者が後方を向いた姿勢である可能性の尤度を出力とする。この出力が予め定めた値以上であれば、運転者が後方を向いた姿勢であると判断する。この検出には、畳み込みニューラルネットワークの他、SVM(Support Vector Machine)などの公知の技術が用いられてよい。また、姿勢検出部52は、荷重センサ34の複数の検出点での検出値に基づいて、運転者の体重移動や重心移動を推定し、その推定結果に基づいて、運転者が後方を向いた姿勢であることを検出してもよい。さらにまた、姿勢検出部52は、シートベルトにかかる負荷を検知する負荷センサ(不図示)による検出値に基づいて、運転者が後方を向いた姿勢であることを検出してもよい。なお、運転者が後方を向いた姿勢は、運転者が体を捻った姿勢とも言える。
【0027】
実施例では、姿勢検出部52は、カメラ26による撮像画像に基づいて、運転者の顔の向きや視線方向をさらに推定する。姿勢検出部52は、運転者の顔や視線の向きに加えて、肩や腰などの上半身の向きや体重移動の程度に基づいて、運転者が後方を向いた姿勢であるか、言い換えれば、運転者が体を捻った姿勢であるか否かを、運転者の肩や腰などの上半身の向きを学習した学習済モデルを用いて判断する。運転者が後方を向いた姿勢であると判断する上半身の向きや体重移動の程度の閾値は、開発者の知見や車両10を用いた実験により決定されてよい。例えば、上記閾値は、アクセルペダル18やブレーキペダル22を踏む足の感覚が、通常姿勢(例えば前進方向に正対した姿勢)の場合と異なるものとなる値が設定されてもよい。
【0028】
車両挙動情報取得部54は、運転者の操作または車両10の挙動に関する情報を取得する。実施例では、車両挙動情報取得部54は、車両10に設置されたカメラ26による撮像画像に基づいて、運転者の足がアクセルペダル18付近にある場合、そのことを示す情報を取得する。例えば、車両挙動情報取得部54は、撮像画像に写るアクセルペダル18の位置と運転者の足の位置とのずれが予め定められた閾値(例えば10センチメートル)未満である場合、運転者の足がアクセルペダル18付近にあると判定してもよい。
【0029】
また、実施例では、車両挙動情報取得部54は、車両10が後退モードであることを示す情報を取得し得る。車両挙動情報取得部54は、車両10のシフトポジションがリバースであることを示す情報を走行状態管理部36から取得した場合に、車両10が後退モードであることを示す情報を取得してもよい。また、車両挙動情報取得部54は、後進方向の加速度が生じたことを示す情報が加速度センサ32から出力された場合に、車両10が後退モードであることを示す情報を取得してもよい。
【0030】
なお、車両挙動情報取得部54は、加速度センサ32により検出された車両10の加速度、および/または、カメラ26による撮像画像(例えば車両10の外を写した画像)に基づいて、車両10の後退や速度を検出し、認識してもよい。
【0031】
報知制御部56は、姿勢検出部52により運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、車両挙動情報取得部54により運転者の足がアクセルペダル18付近にあることを示す情報が取得された場合、運転者の注意を喚起する内容(以下「注意喚起コンテンツ」とも呼ぶ。)を報知するよう指示する信号を報知部28へ送信する。
【0032】
実施例では、報知制御部56は、車両挙動情報取得部54により車両10が後退モードであることを示す情報が取得されたことを更なる条件として、注意喚起コンテンツを運転者に報知する。すなわち、実施例の報知制御部56は、車両10が後退モードであり、かつ、運転者が後方を向いた姿勢であり、かつ、運転者の足がアクセルペダル18付近にある場合に、注意喚起コンテンツを運転者に報知する。
【0033】
注意喚起コンテンツは、アクセル付近に足があることを示す画像やテキスト、音声であってもよい。報知制御部56は、注意喚起コンテンツを示す画像やテキストを、報知部28としての表示装置に表示させてもよい。また、報知制御部56は、注意喚起コンテンツを示す音声を、報知部28としてのスピーカから出力させてもよい。なお、MT(Manual Transmission)車の場合や、坂道走行の場合等、アクセル操作が必要な場合もあるため、注意喚起コンテンツは、警告的ではないことが好ましい。
【0034】
変形例として、注意喚起コンテンツは、所定態様の振動であってもよい。報知制御部56は、注意喚起コンテンツである振動を、運転席12のシート裏に設置された報知部28としての振動発生器から発生させてもよい。
【0035】
以上の構成による運転支援装置30の動作を説明する。
図3は、実施例の運転支援装置30の動作を示すフローチャートである。車両挙動情報取得部54は、カメラ26による撮像画像、加速度センサ32による検出値、または走行状態管理部36からの取得情報に基づいて、車両10が後進を開始したことを検知する。車両10が後進を開始した場合(S10のY)、運転支援装置30は、運転者が運転支援対象ユーザとして登録済みか否かを判定する(S12)。運転者が運転支援対象ユーザである場合(S14のY)、姿勢検出部52は、運転者の姿勢を検出する(S16)。車両挙動情報取得部54は、運転者の操作および車両10の挙動を検出する(S18)。
【0036】
運転者の姿勢が後方を向いた姿勢であり(S20のY)、かつ、運転者の足がアクセルペダル18付近にある場合(S22のY)、報知制御部56は、注意喚起コンテンツを報知部28から出力させる(S24)。運転者の姿勢が後方を向いた姿勢でなく(S20のN)、または、運転者の足がアクセルペダル18付近になければ(S22のN)、S24の報知処理をスキップする。
【0037】
車両挙動情報取得部54により車両10の後進が終了したことが検出されると(S26のY)、本図の処理を終了する。車両10の後進が継続していれば(S26のN)、S16に戻る。車両挙動情報取得部54は、車両10のシフトポジションがリバースから別のポジション(例えばパーキング)に変更されたことを検出した場合に、車両10の後進終了を検出してもよい。車両10が後進を開始せず(S10のN)、または、運転者が運転支援対象ユーザでなければ(S14のN)、以降の処理をスキップする。
【0038】
図4は、運転者の姿勢変化に伴う注意喚起の例を示す。姿勢検出部52は、カメラ26による撮像画像に基づいて、運転者の通常運転時の姿勢と現在の姿勢との差異が所定の閾値以上である場合に、運転者が後方を向いた姿勢であると判断してもよい。具体的には、姿勢検出部52は、カメラ26による撮像画像に基づいて、運転者の両肩の向きを学習した学習済モデルを用いて、運転者の現在の両肩のラインを検出してもよい。姿勢検出部52は、前進方向に正対した運転者の両肩のラインと、運転者の現在の両肩のラインとがなす角度60を求め、角度60が所定値(例えば40度)以上の場合に、運転者が後方を向いた姿勢であると判断してもよい。報知制御部56は、前進方向に正対した運転者の両肩のラインと、運転者の現在の両肩のラインとがなす角度60が所定値以上であり、かつ、運転者の足がアクセルペダル18にかかっていれば、注意喚起コンテンツを報知部28から出力させてもよい。
【0039】
実施例の運転支援装置30によると、運転者が後方を向いた姿勢であり、かつ、運転者の足がアクセルペダル18付近にある場合に、注意喚起コンテンツを運転者に報知する。これにより、意図せぬアクセルペダル18の踏み込みを防止しやすくなり、車両10の運転の安全性を向上させることができる。また、運転支援装置30によると、車両10が後退モードであることを更なる条件として、注意喚起コンテンツを運転者に報知する。これにより、車両10の後進時の安全性を向上させることができる。
【0040】
また、運転支援装置30によると、運転者の肩や腰などの上半身の向きまたは体重移動の程度の推定結果に基づいて、運転者が後方を向いた姿勢、言い換えると運転者が体を捻った姿勢であることを検出する。これにより、運転者の顔や視線の向きだけでは検出が困難な、運転者の運転姿勢が通常の運転時とは異なり、意図しないペダル操作が生じる状況を精度よく検出でき、その状況において車両の運転の安全性を向上させることができる。
【0041】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。実施例に記載の内容は例示であり、実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
変形例を説明する。上記実施例では、車両10が後退モードであることを注意喚起コンテンツの報知条件に含めた。変形例として、注意喚起コンテンツの報知条件は、車両10が後退モードであることを含まなくてもよい。すなわち、報知制御部56は、姿勢検出部52により運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、車両挙動情報取得部54により運転者の足がアクセルペダル18付近にあることを示す情報が取得された場合に、報知部28に注意喚起コンテンツを出力させてもよい。この態様においても、意図せぬアクセルペダル18の踏み込みを防止しやすくなり、車両10の運転の安全性を向上させることができる。また、車両10のシフトポジションをリバースにしたつもりだったが実際のシフトポジションがドライブだった場合に、運転者が後方を向いた姿勢、つまり運転者の運転姿勢が通常の運転時とは異なり、意図しないペダル操作が生じる可能性が高い状態で、車両10が前方に発進する事故を防止できる。
【0043】
別の変形例を説明する。上記実施例では、運転者の足がアクセルペダル18付近にあることを注意喚起コンテンツの報知条件に含めた。変形例では、車両挙動情報取得部54は、カメラ26による撮像画像に基づいて、運転者の足がブレーキペダル22付近にないことを示す情報を取得してもよい。例えば、車両挙動情報取得部54は、撮像画像に写るブレーキペダル22の位置と運転者の足の位置とのずれが予め定められた閾値(例えば10センチメートル)以上である場合、運転者の足がブレーキペダル22付近にないと判定してもよい。
【0044】
この変形例では、運転者の足がアクセルペダル18付近にあることに代えて、運転者の足がブレーキペダル22付近にないことを注意コンテンツの報知条件に含めてもよい。すなわち、報知制御部56は、姿勢検出部52により運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、車両挙動情報取得部54により運転者の足がブレーキペダル22付近にないことを示す情報が取得された場合に、報知部28に注意喚起コンテンツを出力させてもよい。この態様においても、意図せぬアクセルペダル18の踏み込みを防止しやすくなり、車両10の運転の安全性を向上させることができる。
【0045】
さらに別の変形例を説明する。上記実施例では、運転者の足がアクセルペダル18付近にあることを注意喚起コンテンツの報知条件に含めた。変形例では、車両挙動情報取得部54は、カメラ26による撮像画像、加速度センサ32による検出値、または走行状態管理部36からの取得情報に基づいて、車両10の走行速度が上昇していることを示す情報を取得してもよい。なお、車両10の走行速度が上昇していることは、車両10の走行速度が予め定められた閾値より高い値になることでもよい。この閾値は、徐行速度であってもよく、例えば、5~10キロメートル/時程度であってもよい。
【0046】
この変形例では、運転者の足がアクセルペダル18付近にあることに代えて、車両10の走行速度が上昇していることを注意コンテンツの報知条件に含めてもよい。すなわち、報知制御部56は、姿勢検出部52により運転者が後方を向いた姿勢であることが検出され、かつ、車両挙動情報取得部54により車両10の走行速度が上昇していることを示す情報が取得された場合に、報知部28に注意喚起コンテンツを出力させてもよい。この態様では、運転者の体が捻られた状態での意図せぬ車両10の急加速を防止しやすくなり、上記実施例と同様に、車両10の運転の安全性を向上させることができる。
【0047】
さらに別の変形例として、(1)運転者の足がアクセルペダル18付近にあること、(2)運転者の足がブレーキペダル22付近にないこと、(3)車両10の走行速度が上昇していることのうち2つ以上の組み合わせを注意喚起コンテンツの報知条件に含めてもよい。これにより、注意喚起コンテンツの報知タイミングが絞られ、注意喚起コンテンツによる運転者の注意喚起の効果をより高めることができる。
【0048】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0049】
10 車両、 18 アクセルペダル、 22 ブレーキペダル、 26 カメラ、 30 運転支援装置、 52 姿勢検出部、 54 車両挙動情報取得部、 56 報知制御部。