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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115612
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】輪止め装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 3/00 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
B60T3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017931
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 朝
(57)【要約】
【課題】作業の負担を軽減させつつ、車輪に対して正しく設置することのできる輪止め装置を提供する。
【解決手段】輪止め装置70は、可撓性を有する長尺帯状のバンド80と、バンド80の長手方向の両端部に設けられた一対の輪止め部材71とを備え、車両に設けられたタイヤ車輪5の外周方向に沿ってバンド80を当該タイヤ車輪5の外周面5tに掛けることで、バンド80の長手方向の両端部に吊り下げられた一対の輪止め部材71が駐車路面上においてタイヤ車輪5の前後に設置可能に構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、
可撓性を有する長尺帯状の帯状体と、
前記帯状体の長手方向の両端部に設けられた一対の輪止め部材とを備え、
前記車両に設けられた車輪の外周方向に沿って前記帯状体を当該車輪の外周面に掛けることで、前記帯状体の長手方向の両端部に吊り下げられた前記一対の輪止め部材が駐車路面上において前記車輪の前後に設置可能に構成されることを特徴とする輪止め装置。
【請求項2】
前記帯状体の長手方向の中間部には、当該長手方向に所定間隔を空けて配置されて使用者が把持可能な一対の取手が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の輪止め装置。
【請求項3】
前記帯状体には、当該帯状体の長手方向の中央位置を指し示すための目印部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の輪止め装置。
【請求項4】
前記帯状体は、当該帯状体の長手方向の長さを調整するための長さ調整機構を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の輪止め装置。
【請求項5】
前記輪止め部材は、前記帯状体の長手方向の端部が連結される連結部を有し、
前記輪止め部材の下面と直交する方向から見て、前記連結部は前記輪止め部材の重心位置と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の輪止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車両の逸走を防止する輪止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの車両においては、車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止めを設置することで車両の逸走防止を図っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003‐312455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車輪に対して輪止めが正しく設置されていなければ、輪止めの効果が十分に発揮されず、車両が逸走するリスクが残り、作業の安全性を十分に確保できないという課題があった。また、輪止めを車輪と駐車路面との間に設置するには、作業者は腰を落として屈んだ姿勢で作業を行わなければならず、作業者の負担が大きいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業の負担を軽減させつつ、車輪に対して正しく設置することのできる輪止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る輪止め装置は、駐車中の車両の移動を規制する可搬式の輪止め装置であって、可撓性を有する長尺帯状の帯状体と、前記帯状体の長手方向の両端部に設けられた一対の輪止め部材とを備え、前記車両に設けられた車輪の外周方向に沿って前記帯状体を当該車輪の外周面に掛けることで、前記帯状体の長手方向の両端部に吊り下げられた前記一対の輪止め部材が駐車路面上において前記車輪の前後に設置可能に構成されることを特徴とする。
【0007】
上記構成の輪止め装置において、前記帯状体の長手方向の中間部には、当該長手方向に所定間隔を空けて配置されて使用者が把持可能な一対の取手が設けられていることが好ましい。
【0008】
また、上記構成の輪止め装置において、前記帯状体には、当該帯状体の長手方向の中央位置を指し示すための目印部材が設けられていることが好ましい。
【0009】
さらに、上記構成の輪止め装置において、前記帯状体は、当該帯状体の長手方向の長さを調整するための長さ調整機構を備えていることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の輪止め装置において、前記輪止め部材は、前記帯状体の長手方向の端部が連結される連結部を有し、前記輪止め部材の下面と直交する方向から見て、前記連結部は前記輪止め部材の重心位置と重なる位置に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る輪止め装置によれば、長尺帯状の帯状体を車輪の外周面に沿って掛けると
いう簡単な作業で、帯状体の長手方向の両端に吊り下げられた一対の輪止め部材を車輪に正しく設置することができるため、作業者の負担を軽減させることができる(作業者は腰を落として屈むことなく立位姿勢を維持した状態で輪止め部材の設置作業を行うことができる)とともに、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る高所作業車の側面図である。
図2】本実施形態に係る安全装置の機能ブロック図である。
図3】本実施形態の輪止め装置をタイヤ車輪に設置した状態の斜視図である。
図4】上記輪止め装置の斜視図である。
図5】上記輪止め装置の正面図である。
図6】上記輪止め装置の輪止め部材とバンドとの連結部分を示す斜視図である。
図7】上記輪止め部材の斜視図である。
図8】上記輪止め部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0014】
高所作業車1は、図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0015】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0016】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0017】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0018】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベ
リングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0019】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0020】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、ジャッキ装置10及び高所作業装置等を作動させる動力源となる架装部バッテリ59とを備えて構成される。
【0021】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0022】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動するポンプ駆動モータ52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。ポンプ駆動モータ52は、架装部バッテリ59からインバータ54を介して供給される電力により回転駆動される。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0023】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面Gとタイヤ車輪5の外周面(トレッド面、踏み面)5tとの間に楔形状の輪止め部材71を設置して(図5を参照)、車両の逸走防止を図るようになっている。
【0024】
次に、本実施形態の輪止め装置70の構造について図3図7を参照して説明する。以下では、説明の便宜上、輪止め部材71の長さ方向を「前後方向」、輪止め部材71の幅
方向を「左右方向」、輪止め部材71の高さ方向を「上下方向」と定めるが、輪止め装置70(輪止め部材71)の配置方向を特定するものではない。
【0025】
輪止め装置70は、タイヤ車輪5の外周面5tと駐車路面G(図5を参照)との間に差し込まれる一対の輪止め部材71と、一対の輪止め部材71を連結する帯状のバンド80とを主体に構成される。なお、一対の輪止め部材71は、実質的に同一の構成であり、同一の部位には同一の符号を付して説明する。
【0026】
輪止め部材71は、例えば合成樹脂材料(プラスチック材料)を用いて楔形状に形成されている。この輪止め部材71は、駐車路面Gに接地される底部をなす接地部73と、タイヤ車輪5の外周面5tと対向して配置される車輪ストッパ部74と、最上部を形成する頂部75と、接地部73と頂部75とを繋ぐ背面部76と、左右一対の側面部77とを有している。
【0027】
接地部73には、前後方向に沿って山部と谷部が連続的に形成されることで地面に対する滑り止めをなす滑り止め部73aが形成されている。車輪ストッパ部74は、輪止め部材71の先端側(タイヤ車輪5と駐車路面Gとの間に差し込まれる側)から基端側に向けて高くなるとともに斜め上方に向けて凹となる湾曲面として形成されており、タイヤ車輪5の外周面5tに当接可能に構成されている。なお、この車輪ストッパ部74は、一部もしくは全てが傾斜面により形成されていてもよい。
【0028】
輪止め部材71の上部には、バンド80との連結部をなすバンド係止具78が取り付けられている。バンド係止具78は、金属又は合成樹脂等により形成されており、コ字状に屈曲形成された係止部78aと、係止部78aの両端に設けられた一対の固定部78bとを備え、一対の固定部78bが輪止め部材71の側面部77に複数本のネジ79を用いて締結されるようになっている。このバンド係止具78と車輪ストッパ部74との間には、バンド80を上下方向に挿通するためのバンド挿通口78cが形成されている。このバンド係止具78には、バンド80の長手方向の各端部に形成される後述のループ部81bが係止されている。
【0029】
なお、輪止め部材71とバンド80との連結位置(係止部78aの配設位置)は、平面視において、輪止め部材71の重心位置と一致又は略一致する位置関係に設定されており、輪止め部材71がバンド80に吊り下げられたとき、輪止め部材71の接地部73が水平となるように構成されている。
【0030】
バンド80は、長尺帯状に形成されたバンド本体81と、バンド本体81の長手方向の中央位置を指し示すための目印部材82と、作業者が把持する一対の取手83と、バンド本体81の有効長(バンド本体81の長手方向における一方の輪止め部材71から他方の輪止め部材71までの実質距離)を調整するための一対の長さ調整バックル84とを備えて構成される。
【0031】
バンド本体81は、可撓性を有して長尺帯状に形成されている。このバンド本体81は、タイヤ車輪5の外周面5tに沿って撓み変形可能な柔軟性をもたせるために、例えば軟質塩化ビニル等の軟質な材料を用いて形成されている。なお、バンド本体81は、例えば合成繊維などの布地を用いて形成されていてもよい。このバンド本体81には、目印部材82、取手83および長さ調整バックル84が取り付けられている。また、バンド本体81の各端部81aは、図6に示すように、長さ調整バックル84に挿通された後、折り返されてループ部81bを形成して、再び長さ調整バックル84に挿通されている。このバンド本体81のループ部81bには、輪止め部材71のバンド係止具78が挿通されて取り付けられている。なお、このループ部81bは、バンド80又はバンド本体81の長手
方向の実質的な端部(バンド端部)を構成している。
【0032】
目印部材82は、金属又は合成樹脂等により形成されており、バンド80の長手方向の中央位置を指し示す目印となる部材である。この目印部材82は、二つの長孔(図示せず)を有した矩形環状に形成されており、各長孔にバンド本体81が挿通された状態で取り付けられている。なお、バンド80全体の長さ(バンド本体81の有効長)は、一対の長さ調整バックル84により調整可能であるが、タイヤ車輪5の直径に応じてバンド80の有効長を調整する場合には、基本的には長さ調整バックル84ごとの調整量は均等になるはずであるため、バンド80の長手方向の中央位置(つまり、目印部材82が指し示す位置)は常にほぼ一定となる。
【0033】
取手83は、金属又は合成樹脂等により形成されており、輪止め装置70の運搬時、設置時および撤去時などに作業者が把持する部分である。取手83は、中央に開口を有する矩形環状に形成されており、バンド本体81の表面側に固着されている。一対の取手83は、バンド本体81の長手方向に沿って目印部材82から略等距離の位置に取り付けられている。
【0034】
長さ調整バックル84は、金属又は合成樹脂等により形成されており、横長の矩形環状に形成されたフレーム部84aと、このフレーム部84aの中間部に架設された掛軸部84bとを備えている。この長さ調整バックル84には、フレーム部84aと掛軸部84bとの間に二つのバンド通孔84cが表裏に貫通形成されている。この長さ調整バックル84は、バンド本体81を二つのバンド通孔84cに交互に挿通した後、ループ状に折り返して輪止め部材71のバンド挿通口78cに通し、再びバンド本体81を二つのバンド通孔84cに交互に挿通することで取り付けられる。また、この長さ調整バックル84は、バンド本体81の長手方向に沿って移動自在(スライド自在)に取り付けられており、当該長さ調整バックル84をバンド本体81の長手方向に沿って移動させることで、ループ部81bの折り返し長さ(折り返された部分の長さ)を変化させて、バンド本体81の有効長を調節することができるようになっている。具体的には、長さ調整バックル84を下方に移動させてループ部81bの長さを短くすると、バンド本体81の有効長が長くなり、長さ調整バックル84を上方に移動させてループ部81bの長さを長くすると、バンド本体81の有効長が短くなる。それにより、バンド本体81の有効長をタイヤ車輪5の直径に応じて適宜に調節して、あらゆるサイズのタイヤ車輪5に対して輪止め装置70を設置することが可能となる。
【0035】
次に、本実施形態の輪止め装置70を設置する手順について説明する。なお、この輪止め装置70の設置作業は、目的の作業現場に停車した車両に対して、運転キャビン7内から駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて、左右の後輪5rを制動状態に保持してから行う。この高所作業車1の駐車路面Gが平坦地である場合には、少なくとも後輪5rに対して輪止め装置70を設置し、駐車路面Gが傾斜地である場合には、全ての車輪5(前輪5fおよび後輪5r)に対して輪止め装置70を設置する。
【0036】
まず、輪止め装置70をタイヤ車輪5に設置するには、一対の取手83をそれぞれ把持して、輪止め装置70を持ち上げる。輪止め装置70を持ち上げると、バンド80の長手方向の両端部から一対の輪止め部材71が吊り下げられた状態となる。続いて、バンド80の目印部材82をタイヤ車輪5の前後方向の中心位置(タイヤ車輪5の外周面5tの最上部)に位置合わせして、このバンド80をタイヤ車輪5の外周面5tに沿って被せる(バンド80をタイヤ車輪5の外周面5tに掛ける)。それにより、一対の輪止め部材71がバンド80に吊り下げられた状態でタイヤ車輪5の前後に設置されることになる(外周面5tと駐車路面Gとの間に前後から差し込まれる)。このように一対の取手83を把持してバンド80をタイヤ車輪5の外周面5tに被せるだけで、作業者は腰を落として屈む
ことなく立位姿勢を維持した状態で輪止め部材71の設置作業を行うことができ、その作業性を向上させることができる。そして、このように一対の輪止め部材71がタイヤ車輪5の前後の適正位置に設置されることで、ジャッキ10f,10rの張出作動時における車両の逸走を効果的に防止することが可能となる。
【0037】
輪止め装置70の設置が完了した後は、まず、下部操作装置27を操作して、フロントジャッキ10fを伸長作動させることで、前輪5fを地切りさせる。このとき、後輪(駐車制動輪)5rは接地されているため、駐車路面Gが傾斜地であったとしても、車両が坂下側に逸走することはない。続いて、前輪5fが地切りしたことを確認した後、下部操作装置27を操作して、リアジャッキ10rを伸長作動させることで、後輪5rを地切りさせる。そして、さらに下部操作装置27を操作して、各ジャッキ10f,10rの伸長量を調整することで、車体2を水平に調整する。それにより、全てのタイヤ車輪5を地切りさせて、車両全体を水平状態に持ち上げて支持することができる。なお、このように車両のジャッキアップ時にタイヤ車輪5が持ち上げられると、輪止め装置70全体もタイヤ車輪5と共に駐車路面Gから浮き上がり、バンド80に吊り下げられた各輪止め部材71が駐車路面Gから浮き上がった状態となる。このとき、各輪止め部材71はタイヤ車輪5の前後において略鉛直方向に吊り下げられるため、タイヤ車輪5の外周面5tに対して適正な位置及び向きに保持される。また、バンド本体81が幅広に形成され(且つ或る程度の腰があり)、このバンド本体81の幅方向の全体で輪止め部材71を支持するため、例えばロープ等の紐状体で輪止め部材71を繋いだときのように輪止め部材71が振ら付いて回ってしまうことがなく、タイヤ車輪5に対する輪止め部材71の位置及び向きを安定させることができる。また、このように車両をジャッキアップしたとき(タイヤ車輪5を持ち上げたとき)に、各輪止め部材71はバンド80の両端部から略鉛直に吊り下げられ且つバンド80による拘束を受けることで、輪止め部材71の接地時にタイヤ車輪5に対して輪止め部材71の位置及び向きが多少ずれていたとしても、ジャッキアップした際にタイヤ車輪5に対する輪止め部材71の位置と向きを適度に矯正することができる。なお、前述したように、輪止め部材71とバンド80との連結位置は、平面視において、輪止め部材71の重心位置と一致又は略一致する位置関係に設定されているため、輪止め部材71がバンド80に吊り下げられたとき(駐車路面Gから浮いているとき)、輪止め部材71の接地部73は水平状態に保持される。それにより、車両をジャッキアップしたときに、輪止め部材71の向きが上下に傾くことなく、タイヤ車輪5に対して輪止め部材71を正しい姿勢に保持することができ、車両をジャッキダウンするときに輪止め部材71を駐車路面Gに適切に着地させることができる。
【0038】
そして、所要の高所作業が終了すると、まず、下部操作装置27を操作して、リアジャッキ10rを縮小作動させることで、後輪5rを駐車路面Gに接地させる。このとき、前輪5f(駐車非制動輪)よりも先に後輪(駐車制動輪)5rを接地させることで、駐車路面Gが傾斜地であったとしても、車両が坂下側に移動することはない。続いて、下部操作装置27を操作して、フロントジャッキ10fを縮小作動させることで、前輪5fを駐車路面Gに接地させる。それにより、全てのタイヤ車輪5が駐車路面Gに接地された状態となる。なお、このように各タイヤ車輪5が車両のジャッキダウンにより降下したとき、輪止め装置70全体もタイヤ車輪5と共に降下することになる。このとき、タイヤ車輪5には輪止め装置70のバンド80が掛けられており、ジャッキ10f,10rの格納作動(縮小作動)に応じてタイヤ車輪5が駐車路面Gに接地したときに、このバンド80から吊り下げられた一対の輪止め部材71もタイヤ車輪5との位置関係を維持しながら駐車路面Gに着地し、それによりタイヤ車輪5の前後の適正位置に一対の輪止め部材71を設置させた状態とすることができる。そして、このように一対の輪止め部材71がタイヤ車輪5の前後の適正位置に設置されることで、ジャッキ10f,10rの格納作動時における車両の逸走を効果的に防止することが可能となる。
【0039】
ここで、車両のジャッキアップ及びジャッキダウンを上述の手順(ジャッキアップ時:フロントジャッキ10f→リアジャッキ10r、ジャッキダウン時:リアジャッキ10r→フロントジャッキ10f)で行った場合には、ジャッキダウン後の車両の駐車位置が元の駐車位置から前後にずれる可能性がある(ジャッキダウン後のタイヤ車輪5の接地位置が元の接地位置から前後にずれる可能性がある)。このとき、従来の技術では、ジャッキアップの際に設置した輪止め部材71の設置位置がジャッキダウンの際も変わらないため(ジャッキアップ及びジャッキダウンの前後において輪止め部材71が駐車路面Gに置かれたままの状態となっているため)、車両をジャッキダウンしたときに当該車両の駐車位置(タイヤ車輪5の設置位置)が前後にずれてしまうと、輪止め部材71がタイヤ車輪5に踏まれるおそれがあり、作業の終了時に輪止め装置70を回収することが困難になるという問題が生じる。それに対して、本実施形態では、車両のジャッキアップ及びジャッキダウンの際に、輪止め装置70がタイヤ車輪5と一体的に昇降することで、タイヤ車輪5と輪止め部材71との位置関係が変動することはなく、車両をジャッキダウンした際に輪止め部材71をタイヤ車輪5に対して適度な距離を保った位置に着地させることができ、輪止め部材71がタイヤ車輪5に踏まれる事態を防止することができる(作業の終了時に輪止め装置70を容易に回収することができる)。
【0040】
なお、輪止め装置70をタイヤ車輪5から脱着するには、作業者は立位姿勢のままで一対の取手83を把持して輪止め装置70全体を手前側に持ち上げることで輪止め装置70全体をタイヤ車輪5から引き離せばよい。
【0041】
以上、本実施形態の輪止め装置70によれば、長尺帯状のバンド80をタイヤ車輪5の外周面5tに沿って掛けるという簡単な作業で、バンド80の長手方向の両端に吊り下げられた一対の輪止め部材71をタイヤ車輪5に正しく設置することができるため、作業者の負担を軽減させることができる(作業者は腰を落として屈むことなく立位姿勢を維持した状態で輪止め部材71の設置作業を行うことができる)とともに、輪止め本来の効果を十分に発揮して車両の逸走防止を図ることができ、作業性及び安全性を向上させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の輪止め装置70では、バンド80の長手方向の中間部に所定間隔を空けて一対の取手83が設けられており、この一対の取手83を把持して輪止め装置70を持ち上げることで、バンド80全体が逆U字状に撓んでタイヤ車輪5の外周面5tに容易に掛けることができるため、作業性を一層向上させることが可能となる。
【0043】
さらに、本実施形態の輪止め装置70では、バンド80の長手方向の中央位置を指し示す目印部材82が設けられているため、バンド80の長手方向の中央位置とタイヤ車輪5の前後方向の中央位置との位置合わせが容易となり、輪止め装置70をタイヤ車輪5に対して簡単且つ正確に設置することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の輪止め装置70では、タイヤ車輪5の直径に応じて長さ調整バックル84によりバンド80の長さ(有効長)を調整することができるため、あらゆるサイズのタイヤ車輪5に適応可能となり(タイヤ車輪5のサイズに応じて輪止め装置70を使い分ける必要もなく)、輪止め装置70の設置や管理、保管が容易になる。
【0045】
また、本実施形態の輪止め装置70では、平面視において(輪止め部材71の下面と直交する方向から見て)、輪止め部材71とバンド80との連結部が輪止め部材71の重心位置と重なる位置に設けられていることで、車両をジャッキアップしたときに輪止め部材71の接地部73が水平となり、輪止め部材71の向きが上下に傾くことなくタイヤ車輪5に対して正しい姿勢に保持されるため、車両をジャッキダウンするときに輪止め部材71の接地部73を駐車路面Gに対して適切に着地させることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0047】
上記実施形態では、輪止め部材71とバンド80とを連結させるためのバンド係止具78を設けているが、この構成に限定されるものではなく、輪止め部材71にバンド80との連結部を直接形成してもよい。例えば、図8に示すように、輪止め部材71の上部に、バンド本体81を挿通させるスリット178と、バンド本体81のループ部81bを係止させる係止部179とを形成して、別部品(バンド係止具78)を用いることなく輪止め部材71をバンド80の各端部に直接連結するように構成してもよい。
【0048】
上記実施形態では、本発明に係る車両(作業車両)として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーン車などの他の作業車両や、ダンプトラックなどの運搬車両等に適用してもよい。また、上記実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 高所作業車(車両)
2 車体
5 タイヤ車輪(車輪)
5t 外周面
10 ジャッキ装置
27 下部操作装置
45 上部操作装置
60 コントローラ
70 輪止め装置
71 輪止め部材
73 接地部
74 車輪ストッパ部
78 バンド係止具(連結部)
80 バンド(帯状体)
81 バンド本体
82 目印部材
83 取手
84 長さ調整バックル(長さ調整機構)
178 スリット
179 係止部(連結部)
G 駐車路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8