(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115651
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】浮遊物回収装置
(51)【国際特許分類】
E02B 15/00 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
E02B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017998
(22)【出願日】2022-02-08
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 典人
(72)【発明者】
【氏名】生野 満
(72)【発明者】
【氏名】梅津 順一
【テーマコード(参考)】
2D025
【Fターム(参考)】
2D025AA00
(57)【要約】
【課題】水面上の浮遊物を、人力に依存することなく効率良く、所望量回収することができる浮遊物回収装置を提供する。
【解決手段】浮遊物回収装置1は、浮遊物を取り込むための開口端部8の上端を水面から上方に浮かせた状態で配置される内側網状袋体4と、該内側網状袋体4の底部に設けられ、曳航時には開口され、停止時には閉じる開閉部10と、内側網状袋体4の開閉部10を覆うように配置される外側網状袋体5と、を備えている。これにより、水面上の浮遊物を、人力に依存することなく効率良く、所望量回収することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶により曳航されることで、水面に浮遊する浮遊物を回収する浮遊物回収装置であって、
前記浮遊物を取り込むための開口端部の上端を水面より上方に浮かせた状態で配置される内側網状袋体と、
該内側網状袋体の底部に設けられ、曳航時には開口され、停止時には閉じる開閉部と、
前記内側網状袋体の開閉部を覆うように配置される外側網状袋体と、
を備えることを特徴とする浮遊物回収装置。
【請求項2】
前記外側網状袋体の底部は開放され、該底部を折り返して、該底部の開放を閉塞可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の浮遊物回収装置。
【請求項3】
前記外側網状袋体の底部が下方を向くように吊り上げ可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の浮遊物回収装置。
【請求項4】
前記内側網状袋体は、複数並んで配置され、
前記全ての内側網状袋体の開閉部を覆うように前記外側網状袋体が配置されることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の浮遊物回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶により曳航されることで、水面に浮遊する浮遊物を回収する浮遊物回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽石や、ペットボトルなどの廃棄プラスチック製品が海面に浮遊する状況が発生している。特に、軽石にあっては、漁業や観光業等に影響が出ており深刻化している。また、近年では、廃棄プラスチック製品が地球規模で多量に海洋を漂流しており、廃棄プラスチック製品が引き起こす環境問題が深刻化している。このような問題に鑑み、これら海面上の浮遊物を回収する必要がある。そこで、特に、軽石の回収にあたっては、網を使用して人力で回収する方法や、オイルフェンス等を船舶にて牽引して、大量の浮遊物を岸壁付近に集めておき、スケルトンバケットの内側に目の細かいシートを取り付け、バックホウ等にて、岸壁付近の大量の浮遊物を回収する方法が採用されている。
【0003】
しかしながら、上述した従来の回収方法では、次のような問題が発生する。すなわち、従来の回収方法では、作業員に対して相当な負担を強いる労力が必要であり、長い期間作業を実施することができなかった。要するに、網等を使用して人力により回収する方法では、作業者の体、特に腰への負担が大きく、長い期間作業を継続することが困難であった。また、従来の回収方法であると、作業者の労力に対する浮遊物の回収量が少ないことも大きな問題であった。さらに、従来の、特に、オイルフェンスを用いた回収方法であると、特に、軽石がオイルフェンスの上端を乗り越えてしまい、軽石を効率良く回収することができなかった。さらに、従来の、バックホウ等を使用して回収する方法であると、何らかの手段にて岸壁付近に浮遊物を一旦集めて回収しなければならず、回収効率が非常に悪く問題であった。
【0004】
なお、特許文献1には、捕捉材の上下方向の中程に所定間隔に浮力体を配置し、さらに、縦方向に所定の間隔に剛性体製の支持材を取り付け、湾曲状に撓むことが可能な長尺材による弓張り材を下部に取り付けた網状体による抵抗体を捕捉材にロープ状の懸垂材によって所定間隔に連結して一体にした海洋浮遊物回収フェンスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の海洋浮遊物回収フェンスは、フェンス型であるので、捕捉材によって所望量を回収することができない虞がある。また、特許文献1に記載の海洋浮遊物回収フェンスにおいても、従来方法と同様に、最終的に、浮遊物回収フェンスを岸壁付近の回収基地まで曳航した後、浮遊物回収フェンスの捕捉材に捕捉された多数の浮遊物をバックホウ等で回収する必要があり、回収効率を向上させることはできない。
【0007】
そして、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水面上の浮遊物を、人力に依存することなく効率良く、所望量回収することができる浮遊物回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の浮遊物回収装置に係る発明は、船舶により曳航されることで、水面に浮遊する浮遊物を回収する浮遊物回収装置であって、前記浮遊物を取り込むための開口端部の上端を水面より上方に浮かせた状態で配置される内側網状袋体と、該内側網状袋体の底部に設けられ、曳航時には開口され、停止時には閉じる開閉部と、前記内側網状袋体の開閉部を覆うように配置される外側網状袋体と、を備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、曳航時には、内側網状袋体の開閉部は開いた状態であり、水面上の浮遊物は、内側網状袋体の開口端部から取り込まれ、開いた開閉部を経由して、外側網状袋体の底部に蓄積される。一方、船舶が停止すると、内側網状袋体及び外側網状袋体は水底に向かって垂れ下がった状態となり、内側網状袋体の開閉部は自然と閉じた状態となる。その結果、外側網状袋体の底部に蓄積した浮遊物は、開閉部を経由して内側網状袋体内に再び浮上することなく、外側網状袋体内に蓄積された状態が保持される。このように、請求項1の発明では、内側網状袋体及び外側網状袋体の二重構造を用いて、水面上の浮遊物を回収しているので、所望量の浮遊物を効率良く回収することができる。
【0009】
請求項2の浮遊物回収装置に係る発明は、請求項1の発明において、前記外側網状袋体の底部は開放され、該底部を折り返して、該底部の開放を閉塞可能に構成されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、船舶により曳航され、水面上の浮遊物を回収する際には、外側網状袋体の底部を折り返すことで、当該底部の開放を閉塞した状態にして、浮遊物を外側網状袋体内に蓄積させることができる。
【0010】
請求項3の浮遊物回収装置に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記外側網状袋体の底部が下方を向くように吊り上げ可能に構成されることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、船舶により曳航され、水面上の浮遊物を浮遊物回収装置の外側網状袋体内に蓄積させた後は、当該浮遊物回収装置を、例えば岸壁上のクレーン等により、外側網状袋体の折り返した部位が下方を向くように吊り上げ、また外側網状袋体の折り返しを解除することで、外側網状袋体内の大量の浮遊物が、外側網状袋体の開放された底部から岸壁上の所定箇所に一気に落下して回収される。
【0011】
請求項4の浮遊物回収装置に係る発明は、請求項1~3いずれかの発明において、前記内側網状袋体は、複数並んで配置され、前記全ての内側網状袋体の開閉部を覆うように前記外側網状袋体が配置されることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、一回の曳航により、水面に浮かぶ大量の浮遊物を回収することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る浮遊物回収装置では、水面上の浮遊物を、人力に依存することなく効率良く、所望量回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置に採用した被曳航用金具及び吊上用金具を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置に採用した主フロートを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置が各船舶により曳航され、本浮遊物回収装置により水面に浮遊する浮遊物としての軽石を回収している様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置をクレーンにより吊り上げた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置から浮遊物(軽石)を岸壁上に落下させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図6に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る浮遊物回収装置1は、複数、例えば2台の船舶51、51(
図4参照)により曳航されるものである。本実施形態に係る浮遊物回収装置1は、各船舶51により曳航されることで、水面に浮遊する浮遊物、例えば軽石を回収するためのものである。なお、本実施形態に係る浮遊物回収装置1は、浮遊物として、廃棄プラスチック製品や木材等も回収することが可能である。
図1を参照して、本実施形態に係る浮遊物回収装置1は、水面上の浮遊物を取り込むための開口端部8、8の上端を水面から上方に浮かせた状態で配置される、複数の内側網状袋体4、4(
図1では斜線部)と、全ての内側網状袋体4、4の開閉部10、10を覆うように配置される外側網状袋体5(
図1では薄黒塗部)と、を備えている。
【0015】
内側網状袋体4は、十分な強度を有する、いわゆる防風ネットと称されるものが採用される。内側網状袋体4は、一辺が1~3mmの略矩形からなる多数の開口を備えた網状に構成される。内側網状袋体4は、水面上の浮遊物を取り込むための開口端部8を有する袋体で構成される。内側網状袋体4の底部には、開閉部10が形成される。開閉部10は、各船舶51による曳航時には開口され、停止されると自然に閉塞するものである。内側網状袋体4、4は、その開口端部8、8が並ぶように複数配置される。本実施形態では、内側網状袋体4は4台備えられる。
【0016】
並んで配置される内側網状袋体4、4の開口端部8、8に沿って、上下一対の横内袋支持フレーム12、12が配置される。上下一対の横内袋支持フレーム12、12は、進行方向前後に一対配置される。前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12間には、長手方向に所定間隔を開けて複数の前側縦内袋支持フレーム14、14が架設される。本実施形態では、前側縦内袋支持フレーム14は5本備えられる。前側縦内袋支持フレーム14は、前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12の長手方向両端に2本配置され、残りの3本は、隣接する内側網状袋体4、4間にそれぞれ配置される。なお、前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12の長手方向両端に配置される各前側縦内袋支持フレーム14、14は、後述する各前側縦連結フレーム27、27にそれぞれ連結される。
【0017】
一方、後側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12間には、1つの内側網状袋体4に対応して2本の後側縦内袋支持フレーム16、16が架設される。本実施形態では、後側縦内袋支持フレーム16は8本配置される。そして、各内側網状袋体4の開口端部8は、4本の横内袋支持フレーム12、12の長手方向に沿う対応する適宜部位と、対応する2本の前側縦内袋支持フレーム14、14と、対応する2本の後側縦内袋支持フレーム16、16とに適宜連結されることにより、その開口端部8が開口状態で支持される。なお、各内側網状袋体4の開口端部8を支持するように、上述した横内袋支持フレーム12、12、前側縦内袋支持フレーム14、14及び後側縦内袋支持フレーム16、16以外に適宜支持フレームを複数追加してもよく、本実施形態でも、特に
図1では細かな多数の支持フレームについては図示を省略している。
【0018】
なお、
図1及び
図2を参照して、前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12には、その長手方向両端部に船舶51、51による曳航のためのシャックル等の被曳航用金具20、20がそれぞれ接続される。また、各被曳航用金具20、20の内側であって、上下一対の上側及び下側補強フレーム23、24の前端に、クレーン等で浮遊物回収装置1を吊り上げるためのシャックル等の吊上用金具21、21がそれぞれ接続される。吊上用金具21、21を、各被曳航用金具20、20の内側で、前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12にそれぞれ接続してもよい。これら各被曳航用金具20、20及び各吊上用金具21、21の接続位置や接続対象フレームについては、特に限定されることはない。なお、
図2においては、解り易くするために内側網状袋体4の図示を省略している。
【0019】
上側の前後一対の横内袋支持フレーム12、12間には、長手方向に沿って所定の間隔を置いて複数の上側補強フレーム23、23が架設される。本実施形態では、上側補強フレーム23は5本備えられる。一方、下側の前後一対の横内袋支持フレーム12、12間にも、上側補強フレーム23と同様の位置に複数の下側補強フレーム24、24が架設される。本実施形態では、下側補強フレーム24は5本備えられる。前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12の長手方向両端には、前側縦連結フレーム27、27がそれぞれ架設される。一方、後側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12の長手方向両端には、後側縦連結フレーム28、28がそれぞれ架設される。これら前側縦連結フレーム27、27及び後側縦連結フレーム28、28に、後述する主フロート30、30がそれぞれ連結される。
【0020】
図3を参照して、主フロート30は、中空の大径円柱状に形成される。主フロート30は、枠体34にて囲まれるように支持される。枠体34は、内部に主フロート30を収容すべく空間を有し、その外形が略直方体に形成される。枠体34は、多数のフレーム35、35を互いに連結することで構成される。枠体34には、高さ調整用縦フレーム37、37が、前後方向に沿って間隔を置いて一対設けられる。高さ調整用縦フレーム37には、その上部及び下部に、連結孔38が縦方向(長手方向)に沿って間隔を置いて複数形成される。そして、
図1及び
図2も参照して、枠体34に設けた一対の高さ調整用縦フレーム37、37と、前側縦連結フレーム27及び後側縦連結フレーム28とが、その互いの高さ方向の位置を調整しつつ連結孔38を介して連結される。その結果、全ての内側網状袋体4、4全体の幅方向両端部に主フロート30、30がそれぞれ連結される。
【0021】
図1及び
図2を参照して、前側でその下側の横内袋支持フレーム12の下方に副フロート31が連結される。副フロート31は、横内袋支持フレーム12の長手方向に沿って細長い中空の円柱状に形成される。そして、各主フロート30、30及び副フロート31による浮力により、各内側網状袋体4の開口端部8の上端が水面より上方に多少浮いた状態で配置される。なお、各内側網状袋体4の開口端部8(上端)の水面から高さを調整する際には、主フロート30を支持する枠体34に設けた一対の高さ調整用縦フレーム37、37と、前側縦連結フレーム27及び後側縦連結フレーム28とを連結する際に、その互いの高さ方向の位置を調整すればよい。
【0022】
図1を参照して、各内側網状袋体4には、後側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12よりも進行方向後側の適宜部位から底部(開閉部10、10)に亘って、外側網状袋体5が覆うように配置される。外側網状袋体5は、内側網状袋体4と同様に、十分な強度を有する、いわゆる防風ネットと称されるものが採用される。外側網状袋体5は、一辺が1~3mmの略矩形からなる多数の開口を備えた網状に形成される。外側網状袋体5は、前後端部は開放され、前後方向に沿って貫通されて構成される。外側網状袋体5は、前側の開口端部41から全ての内側網状袋体4、4の底部(開閉部10、10)を覆うように配置される。詳しくは、後側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12よりも進行方向後側の適宜位置に、上下一対の横袋体支持フレーム43、43がそれぞれ配置される。なお、
図1において、下側の横袋体支持フレーム43は隠れており図示されていない。上下一対の横袋体支持フレーム43、43間には、1つの内側網状袋体4に対して2本の縦袋体支持フレーム44、44が架設される。本実施形態では、縦袋体支持フレーム44は全8本配置される。
【0023】
そして、外側網状袋体5の前側の開口端部41が、上下一対の横袋体支持フレーム43、43、及び上下一対の横袋体支持フレーム43、43の長手方向両端に位置する各縦袋体支持フレーム44、44により支持される。各内側網状袋体4の開口端部8から後方の部位が、上下一対の横袋体支持フレーム43、43の長手方向に沿う対応する適宜部位、及び対応する2本の縦袋体支持フレーム44、44により支持される。また、水面上の浮遊物を回収する曳航時には、
図1に示すように、外側網状袋体5の底部を前側に折り返して、例えばフック部材(図示略)等により外側網状袋体5の適宜位置に固定してなる折り返し部48を形成することで、底部の開放を閉塞した状態としている。なお、
図1にて図示は省略しているが、外側網状袋体5においても、その開口を保持すべく、外形が略矩形を呈する枠体を前後方向に沿って間隔を置いて配置してもよい。
【0024】
そして、
図4を参照して、本実施形態に係る浮遊物回収装置1により、水面上の浮遊物、例えば軽石を回収する際には、浮遊物回収装置1の、前側の上下一対の横内袋支持フレーム12、12に設けた各被曳航用金具20、20(
図2参照)を使用して、浮遊物回収装置1を複数の船舶51、51により牽引する。本実施形態では、船舶51、51は2隻である。そして、各船舶51により浮遊物回収装置1を曳航する。すると、浮遊物回収装置1の各内側網状袋体4の開口端部8の上端が水面から多少浮いた状態で、外側網状袋体5及び各内側網状袋体4が各船舶51の後方を水面と略平行になる姿勢にて曳航される。このとき、各内側網状袋体4の開閉部10は水流等により開いた状態となる。その結果、水面上の浮遊物は、各内側網状袋体4の開口端部8から取り込まれ、各内側網状袋体4の開いた開閉部10を経由して外側網状袋体5の底部まで到達する。外側網状袋体5の底部は、外側網状袋体5自体が折り返されてなる折り返し部48により閉塞されているために、大量の浮遊物は外側網状袋体5内に蓄積された状態となる。
【0025】
この曳航時、何等かの事情により各船舶51が停止した状態となると、外側網状袋体5及び各内側網状袋体4は水底に向かって垂れ下がった状態となるが、各内側網状袋体4の開閉部10は自然と閉じた状態となるために、外側網状袋体5内に蓄積された浮遊物が再び各内側網状袋体4の開閉部10を経由して水面に向かって浮上することはない。
【0026】
続いて、外側網状袋体5内に蓄積された浮遊物が所定量に到達すると、浮遊物回収装置1を岸壁付近まで曳航する。続いて、
図5を参照して、浮遊物回収装置1が岸壁付近まで曳航されると、岸壁上の例えばクレーン50により、浮遊物回収装置1の、上側及び下側補強フレーム23、24(
図1参照)に設けた吊上用金具21、21(
図1または2参照)を使用して、各内側網状袋体4の開口端部8が上方を向き、外側網状袋体5の折り返し部48が下方を向くように吊り上げる。そして、
図6を参照して、クレーン50を操作して、浮遊物回収装置1がこの姿勢にて、例えば岸壁上の所定箇所に到達すると、フック部材等を外すことにより、
図5に示す外側網状袋体5の折り返し部48の折り返しを解除する。すると、外側網状袋体5内に蓄積された大量の浮遊物(軽石)が、外側網状袋体5の開放された底部から岸壁上の所定箇所に一気に落下する。このようにして、水面上の大量の浮遊物を、岸壁上の所定箇所に人力に依存することなく、バックホウ等をも使用することもなく、容易に効率良く回収することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、水面上の浮遊物を取り込むための開口端部8の上端を水面から上方に浮かせた状態で配置される内側網状袋体4と、該内側網状袋体4の底部に設けられる、曳航時には開口され、停止時には閉じる開閉部10と、内側網状袋体4の開閉部10を覆うように配置される外側網状袋体5と、を備えている。
これにより、各船舶51による曳航時には、水面上の浮遊物は、内側網状袋体4の開口端部8から取り込まれ、内側網状袋体4の開いた開閉部10を経由して、外側網状袋体5内に蓄積される。
【0028】
一方、各船舶51が停止すると、内側網状袋体4の開閉部10は自然と閉じた状態となり、その結果、外側網状袋体5内に蓄積された浮遊物は、開閉部10を経由して内側網状袋体4内に再び浮上することなく、外側網状袋体5内に蓄積された状態が保持される。このように、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、開閉部10を有する内側網状袋体4及び外側網状袋体5の二重構造を用いて、水面上の浮遊物を回収しているので、人力に依存することなく効率良く、所望量の浮遊物を回収することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、外側網状袋体5の底部は開放され、該底部を折り返して、該底部の開放を閉塞可能に構成される。すなわち、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、曳航時には、外側網状袋体5の開放された底部を前側に折り返してなる折り返し部48を形成するようにしている。
そして、本実施形態に係る浮遊物回収装置1により、水面上の浮遊物を回収する際には、浮遊物は、内側網状袋体4の開いた開閉部10を経由して、外側網状袋体5内に蓄積される。なお、外側網状袋体5内に蓄積された大量の浮遊物を、例えば岸壁上の所定箇所に取り出す際には、外側網状袋体5の折り返し部48を解除することで、外側網状袋体5内の大量の浮遊物を、外側網状袋体5の開放された底部から容易に取り出すことができる。
【0030】
さらに、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、外側網状袋体5の底部が下方を向くように吊り上げ可能に構成される。
これにより、各船舶51により曳航され、水面上の浮遊物を浮遊物回収装置1の外側網状袋体5内に蓄積させた後は、当該浮遊物回収装置1を、例えば岸壁上のクレーン等により、外側網状袋体5の折り返し部48が下方を向くように吊り上げ、また当該折り返し部48の折り返しを解除することで、外側網状袋体5内の大量の浮遊物が、外側網状袋体5の開放された底部から岸壁上の所定箇所に一気に落下して回収される。その結果、水面上の大量の浮遊物を、人力に依存することなく、またバックホウ等をも使用することなく、効率良く、例えば岸壁上の所定箇所に回収することができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、内側網状袋体4は、複数並んで配置され、全ての内側網状袋体4、4の開閉部10、10を覆うように外側網状袋体5が配置される。これにより、1回の曳航にて、水面上の浮遊物を出来る限り多くの量回収することができ、好適である。
【0032】
なお、本実施形態に係る浮遊物回収装置1では、内側網状袋体4が4台備えられているが、数量に限定されることなく、1台、2台または3台であってもよく、5台以上備えられてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 浮遊物回収装置,4 内側網状袋体,5 外側網状袋体,8 開口端部,10 開閉部,48 折り返し部,51 船舶