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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115656
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】産業用ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20230814BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018005
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】福岡 貴史
(72)【発明者】
【氏名】菊池 健司
(72)【発明者】
【氏名】桝山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】古川 宏美
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB09
3C269CC09
3C269EF81
3C269QC01
3C269QC02
3C269QD02
3C269QE02
3C269QE22
3C269QE26
3C269SA04
3C269SA15
3C707AS06
3C707BS12
3C707BS13
3C707BS15
3C707JS07
3C707JU02
3C707JU13
3C707LS04
3C707MS16
3C707MT08
(57)【要約】
【課題】安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境を維持することができる産業用ロボットシステムを提供する。
【解決手段】産業用ロボットシステム1は、産業用ロボット2を制御する制御装置3と、制御装置3と通信可能に接続され、制御装置3を介して産業用ロボット2を操作可能な操作装置4とを備えている。制御装置3には、制御用ソフトウェア6および操作用ソフトウェア7が記憶されており、操作装置4には、基盤ソフトウェア9およびバージョンが異なる複数の操作用ソフトウェア7が記憶されている。そして、維持部46により、産業用ロボット2を操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットを制御する制御装置と、
前記制御装置と通信可能に接続され、前記制御装置を介して前記産業用ロボットを操作可能な操作装置と、を備える産業用ロボットシステムであって、
前記制御装置は、前記産業用ロボットを制御するための制御用ソフトウェア、および前記操作装置で実行されるソフトウェアであって、当該制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアに対応したバージョンの操作用ソフトウェアを記憶している記憶部を有しており、
前記操作装置は、前記制御装置との間で通信を行うための基盤ソフトウェア、およびバージョンが異なる複数の操作用ソフトウェアを記憶可能な記憶容量を有する操作側記憶部と、前記産業用ロボットを操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する維持部と、を有しており、
前記維持部は、接続された前記制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアに対応したバージョンの操作用ソフトウェアが前記操作側記憶部に記憶されている場合、対応するバージョンの操作用ソフトウェアを実行対象として選択する一方、接続された前記制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアに対応したバージョンの操作用ソフトウェアが前記操作側記憶部に記憶されていない場合、前記制御装置に記憶されている操作用ソフトウェアを取得して実行対象として選択することにより、安定動作を実現できた状態の操作用ソフトウェアのバージョンと制御用ソフトウェアの組み合わせを再現して、前記産業用ロボットを操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する産業用ロボットシステム。
【請求項2】
前記維持部は、前記制御装置から操作用ソフトウェアを取得した場合、取得した操作用ソフトウェアを前記操作側記憶部に記憶する請求項1記載の産業用ロボットシステム。
【請求項3】
前記維持部は、前記操作側記憶部に記憶されている操作用ソフトウェアの実行回数をそれぞれ記憶しており、前記制御装置から取得した操作用ソフトウェアを記憶するための記憶容量が不足する場合、実行回数が最も少ない操作用ソフトウェアを削除するとともに、取得した操作用ソフトウェアを前記操作側記憶部に記憶する請求項1または2記載の産業用ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットを制御する制御装置と、制御装置を介して産業用ロボットを操作可能な操作装置とを備える産業用ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは、一般的に制御装置によって動作が制御されている。そして、例えば産業用ロボットに対して教示作業などを行う場合には、制御装置に操作装置を接続し、制御装置を介して産業用ロボットを操作する。このとき、操作装置側のソフトウェアと制御装置側のソフトウェアとの整合性が取れていないと産業用ロボットを正しく操作できないおそれがある。そのため、例えば特許文献1では、各装置のソフトウェアを更新可能にすることによってソフトウェアの整合性を取ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-292949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用ロボットシステムは、複数台の産業用ロボットによって構築されることがある。このような、産業用ロボットシステムは、主に管理上の観点から例えば製造ラインごとに動作環境が統一されていると考えられる。その一方で、異なる製造ラインや異なる導入時期のものについては、動作環境が異なっていることも想定される。
【0005】
また、実際の生産現場では、1つあるいは少数の操作装置を用意しておき、作業が必要になった場合には操作装置をその都度接続することにより、コストを低減しつつ設備を運用することがある。なお、ここで言う少数とは、産業用ロボットの設置台数よりも少ない数を意味している。つまり、実際の生産現場では、1つあるいは少数の操作装置の作業対象となる産業用ロボットシステムに、異なる動作環境が混在していることがある。
【0006】
しかしながら、産業用ロボットは、安定稼働している場合には動作環境をあまり変更することなく長期的なスパンで使用されることが多く、動作の再現性が重要視されることから、稼動中の産業用ロボットに対して新たな教示作業や調整作業などを行う場合には、以前から使用している動作環境、つまりは、安定動作が実現できていた動作環境を利用して作業を行いたいという要望がある。
【0007】
そして、この動作環境には、制御装置がロボットを制御するために実行する制御用ソフトウェア、その制御用ソフトウェアを使うために操作装置で実行される操作用ソフトウェア、および、制御用ソフトウェアと操作用ソフトウェアとの組み合わせといったソフトウェアの動作環境も含まれている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境を維持することができる産業用ロボットシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明では、産業用ロボットシステムは、産業用ロボットを制御する制御装置と、制御装置と通信可能に接続され、制御装置を介して産業用ロボットを操作可能な操作装置と、を備えている。制御装置は、産業用ロボットを制御するための制御用ソフトウェア、および操作装置で実行されるソフトウェアであって、当該制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアに対応したバージョンの操作用ソフトウェアを記憶している記憶部を有している。また、操作装置は、制御装置との間で通信を行うための基盤ソフトウェア、およびバージョンが異なる複数の操作用ソフトウェアを記憶可能な記憶容量を有する操作側記憶部と、産業用ロボットを操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する維持部と、を有している。
【0010】
つまり、産業用ロボットシステムは、維持部を設けることにより、稼動中の産業用ロボットに対して新たな教示作業や調整作業などを行う場合において、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境を継続して利用することを可能にしている。
【0011】
具体的には、維持部は、接続された制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアに対応したバージョンの操作用ソフトウェアが操作側記憶部に記憶されている場合、対応するバージョンの操作用ソフトウェアを実行対象として選択する。
【0012】
これにより、制御用ソフトウェアのバージョンに対応した操作用ソフトウェアが操作装置で実行されることになり、産業用ロボットを操作する際における制御用ソフトウェアと操作用ソフトウェアとの組み合わせを、安定動作が実現できていたときと同じ状態にすることができる。すなわち、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境を維持することができる。
【0013】
また、維持部は、接続された制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアに対応したバージョンの操作用ソフトウェアが操作側記憶部に記憶されていない場合、制御装置に記憶されている操作用ソフトウェアを取得して実行対象として選択する。
【0014】
これにより、操作装置に記憶されている操作用ソフトウェアのバージョンが、制御装置に記憶されている制御用ソフトウェアのバージョンに対応しないものであった場合において、つまりは、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境とは異なる場合において、制御装置から対応するバージョンの操作用ソフトウェアを取得することで、産業用ロボットを操作する際における制御用ソフトウェアと操作用ソフトウェアとの組み合わせを、安定動作が実現できていたときと同じ状態にすることができる。すなわち、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境を維持することができる。
【0015】
また、このような構成の産業用ロボットシステムの場合、産業用ロボットおよび制御装置については、ハードウェアおよびソフトウェアの双方を変更することなく、安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境を維持することができる。そのため、産業用ロボットや制御装置のソフトウェアを更新することによる万が一の不具合の発生などのリスクを回避することができ、安定動作が実現できていた動作環境を利用して作業を行いたいという実際の生産現場からの要望に確実に応えることができる。
【0016】
請求項2に記載した発明では、維持部は、制御装置から操作用ソフトウェアを取得した場合、取得した操作用ソフトウェアを操作側記憶部に記憶する。これにより、例えば複数の産業用ロボットの操作を1つあるいは少数の操作装置で行う運用をしている場合などにおいて、操作装置を接続した後に迅速に作業を開始することができ、作業効率を向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載した発明では、維持部は、操作側記憶部に記憶されている操作用ソフトウェアの実行回数をそれぞれ記憶しており、制御装置から取得した操作用ソフトウェアを記憶するための記憶容量が不足する場合、実行回数が最も少ない操作用ソフトウェアを削除するとともに、取得した操作用ソフトウェアを操作側記憶部に記憶する。これにより、操作装置に過度に大きな記憶容量を設ける必要なく、次に同じ制御装置に接続された場合には、操作用ソフトウェアのダウンロードを行うことなく迅速に作業を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態による産業用ロボットシステムの構成例を模式的に示す図
図2】操作装置のユーザインターフェース例を模式的に示す図
図3】産業用ロボットシステムの設置態様の一例を模式的に示す図
図4】操作装置で実行される処理の流れを示す図
図5】制御装置で実行される処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の産業用ロボットシステム1は、産業用ロボット2を制御する制御装置3と、制御装置3と通信可能に接続され、制御装置3を介して産業用ロボット2を操作可能な操作装置4とを備えている。
【0020】
産業用ロボット2は、本実施形態では垂直多関節型のいわゆる6軸ロボットを想定している。ただし、産業用ロボット2としては、いわゆる7軸ロボットや水平多関節型のいわゆる4軸ロボットを採用することもできる。この産業用ロボット2は、設置面に設置されるベース2a、ベース2aに対して相対回転可能に設けられているショルダ2b、ショルダ2bに対して相対回転可能に設けられている下アーム2c、下アーム2cに対して相対回転可能に設けられている第1上アーム2d、第1上アーム2dに対して同軸で相対回転可能に設けられている第2上アーム2e、第2上アーム2eの先端に設けられている手首2fを有している。そして、産業用ロボット2は、手釘2fの先端に取り付けられているフランジ2gに図示しないハンドやツールが取り付けられ、教示された動作を繰り返し実行することで作業を行う。
【0021】
制御装置3は、本実施形態では産業用ロボット2に対して専用ケーブル5で接続されており、制御部31、記憶部32、および通信部33などを備えている。つまり、本実施形態の場合、制御装置3は、産業用ロボット2に対して1対1で設けられている。制御部31は、図示しないコンピュータにより構成されており、記憶部32に記憶されているソフトウェアを実行することにより制御装置3全体を制御する。
【0022】
具体的には、制御部31は、産業用ロボット2の制御と操作装置4からの操作の受け付けとを行う制御用ソフトウェア6を実行することにより、稼動中には産業用ロボット2を制御するとともに、教示作業中などにおいては操作装置4からの操作を受け付け、受け付けた操作に応じて産業用ロボット2を制御する。
【0023】
記憶部32は、例えば半導体メモリやHDDなどで構成されており、制御用ソフトウェア6と、操作装置4で実行されるソフトウェアであって、操作装置4から産業用ロボット2を操作する際のユーザインターフェースを提供するものであり、制御用ソフトウェア6に対応したバージョンの操作用ソフトウェア7が記憶されている。なお、詳細は後述するが、図1において操作用ソフトウェア7にカッコ書きで付しているA、B、Cは操作用ソフトウェア7のバージョンを模式的に示しており、図2において制御装置3にカッコ書きで付しているA、B、Cはその制御装置3に記憶されている操作用ソフトウェア7のバージョンを模式的に示している。
【0024】
通信部33は、操作装置4との間で通信を行うものであり、本実施形態では操作装置4との間を接続する有線ケーブル8を用いて有線通信を行っている。ただし、通信部33は、操作装置4との間を無線通信により通信可能にする構成とすることができるし、有線通信と無線通信の双方を可能にする構成とすることもできる。
【0025】
操作装置4は、本実施形態では産業用ロボット2に対して教示作業を行う教示装置を想定している。そのため、操作装置4は、異なる制御装置3と通信可能な構成となっている。ただし、操作装置4は、制御装置3と通信可能に接続されて産業用ロボット2を操作できるものであれば、例えばノート型パソコンやスマートフォンあるいはタブレットパソコンなどで操作用のソフトウェアを実行する構成などとすることができる。
【0026】
操作装置4は、操作側制御部41、操作側記憶部42、操作側通信部43、表示部44、および入力部45などを備えている。操作側制御部41は、図示しないコンピュータにより構成されており、操作側記憶部42に記憶されているソフトウェアを実行することにより、操作装置4全体を制御する。また、操作側制御部41には、維持部46が設けられている。
【0027】
維持部46は、制御装置3を介して産業用ロボット2を操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する機能部であり、本実施形態では操作側制御部41で実行されるプログラムによってソフトウェアで構成されている。この維持部46は、詳細は後述するが、安定動作を実現できた状態の操作用ソフトウェア7のバージョンと制御用ソフトウェア6の組み合わせを再現し、産業用ロボット2を操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する。
【0028】
操作側記憶部42は、例えば半導体メモリやHDDなどで構成されており、制御装置3との間で通信を行うための基盤ソフトウェア9と、バージョンが異なる複数の操作用ソフトウェア7とを記憶可能な記憶容量を有している。この記憶部32には、例えば図1の場合にはバージョンA、バージョンBおよびバージョンCの操作用ソフトウェア7が記憶されており、さらに他の操作用ソフトウェア7を記憶可能か記憶容量の空きを有している。なお、記憶容量の上限や記憶する操作用ソフトウェア7の数については特に制限は無く、製造コストなどに鑑みて適宜選択することができる。
【0029】
操作側通信部43は、制御装置3との間で通信を行うものであり、本実施形態では制御装置3との間が有線ケーブル8により接続されている。ただし、操作側通信部43は、制御装置3との間を無線通信により通信可能にする構成とすることができるし、有線通信と無線通信の双方を可能にする構成とすることもできる。
【0030】
表示部44は、例えば液晶パネルや有機ELパネルなどにより構成されており、産業用ロボット2を操作する際のユーザインターフェースを表示する。また、入力部45は、イネーブルスイッチやデッドマンスイッチ、ボタンやスイッチあるいは表示部44に対応して設けられているタッチパネルなどによって構成されている。以下、ユーザインターフェースをUI(User Interface)とも称する。
【0031】
このような構成の操作装置4は、実行する操作用ソフトウェア7のバージョンによっては、例えば図2に各バージョンの操作用ソフトウェア7のUI例として示すように、同一機器であってもユーザに提供するユーザインターフェースが異なることがある。例えば、バージョンAの操作用ソフトウェア7では、アームを移動させる際に操作する操作領域(R1)が、上向きの三角形にて示すタッチボタンと、現在位置を数値で示す表示枠と、下向きの三角形にて示すタッチボタンとでそれぞれ構成されている。一方、バージョンAを改修した後発のバージョンBでは、同じくアームを移動させる際に操作する操作領域(R2)が、現在位置を数値で示す表示枠と、図示左右方向にタッチ操作で移動可能なスライダーとによってそれぞれ構成されている。
【0032】
また、例えばバージョンBの操作用ソフトウェア7では、バージョンAの操作用ソフトウェア7には無かった表示部44の下側に設けられている機械式の操作スイッチ群(M1)に対応するタッチアイコン群(M2)が追加されていることもある。また、図示は省略するが、例えばバージョンBの後発のバージョンCの操作用ソフトウェア7では、ユーザから見た範囲ではユーザインターフェース自体の変更が無くても、例えばアルゴリズムの改修や不具合の修正などの内部的な変更が行われていることも想定される。
【0033】
このように、操作用ソフトウェア7のバージョンによって、視覚的に判別できるユーザインターフェースの違いや操作態様の違いなどが存在することがある。なお、図2に例示した操作用ソフトウェア7のバージョンの違いによるユーザインターフェースの違いや操作態様の違いはあくまでも一例である。
【0034】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、産業用ロボットシステム1は、複数台の産業用ロボット2によって構築されることがある。その場合、主に管理上の観点から例えば製造ラインごとに動作環境が統一されていると考えられる。その一方で、異なる製造ラインや異なる導入時期のものについては、動作環境が異なっていることも想定される。
【0035】
そして、この動作環境には、制御装置3がロボットを制御するために実行する制御用ソフトウェア6、その制御用ソフトウェア6を使うために操作装置4で実行される操作用ソフトウェア7、および、制御用ソフトウェア6と操作用ソフトウェア7との組み合わせといったソフトウェアの動作環境も含まれている。
【0036】
例えば図3に示すように、第1製造ライン(L1)には3台の産業用ロボット2が導入されている。このとき、各産業用ロボット2は、ワーク10に対してそれぞれ異なるパーツ11a、パーツ11bおよびパーツ11cを順次取り付ける作業を担っているものとする。そして、各産業用ロボット2は、バージョンAの操作用ソフトウェア7を記憶している制御装置3によってそれぞれ制御されているものとする。換言すると、第1製造ライン(L1)の各産業用ロボット2は、バージョンAの操作用ソフトウェア7との組み合わせで安定動作が実現できている。
【0037】
また、第2製造ライン(L2)には、第1製造ライン(L1)とは異なるワーク10bにパーツ11dを取り付ける作業を担う1台の作業用ロボットが設置されており、バージョンBの操作用ソフトウェア7を記憶している制御装置3によって制御されているものとする。換言すると、第2製造ライン(L2)の産業用ロボット2は、バージョンBの操作用ソフトウェア7との組み合わせで安定動作が実現できている。
【0038】
また、第3製造ライン(L3)には、第1製造ライン(L1)と同じ作業をするために3台の産業用ロボット2が導入されているものの、例えば設備増強などの理由によって第1製造ライン(L1)とは異なる時期に導入されたなどの理由により、各産業用ロボット2は、第1製造ライン(L1)とは異なるバージョンCの操作用ソフトウェア7を記憶している各制御装置3によって制御されているものとする。換言すると、第3製造ライン(L3)の各産業用ロボット2は、バージョンCの操作用ソフトウェア7との組み合わせで安定動作が実現できている。
【0039】
また、実際の生産現場では、1つあるいは少数の操作装置4を用意し、作業が必要になった場合には操作装置4をその都度接続することにより、コストを低減しつつ設備を運用することがある。例えば、図3の場合であれば、破線の矢印にて模式的に示すように、1台の操作装置4によって各製造ラインに設置されている全ての産業用ロボット2に対する作業が行われる。
【0040】
このように、産業用ロボットシステム1は、複数台の産業用ロボット2に1対1で接続されている複数の制御装置3と、各制御装置3に個別に接続可能な1つの操作装置4とによって構成されることがある。つまり、実際の生産現場では、1つあるいは少数の操作装置4で異なる動作環境のものに対して作業することがある。そして、動作環境を維持するために各制御装置3に専用の操作装置4を設けることは、主にコストの面から実現できないことがある。
【0041】
その一方で、産業用ロボット2は、安定稼働している場合には動作環境をあまり変更することなく長期的なスパンで使用されることが多い。また、実際の生産現場では産業用ロボット2の動作の再現性を重要視していることから、新たに教示作業や調整作業などを行う場合には、以前から使用している動作環境、つまりは、安定動作が実現できていた動作環境を利用して作業を行いたいという要望がある。
【0042】
そこで、産業用ロボットシステム1では、図4に示す処理を操作装置4で実行し、図5に示す処理を制御装置3で実行し、これら制御装置3と操作装置4とを協働させることにより、安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境を維持することを可能にしている。ただし、図4および図5は、操作装置4を接続してロボットを操作する際の処理の流れを説明するものである。また、図4に示す処理は主として維持部46によって実行されるものであり、図5に示す処理は主として制御部31によって実行されるものであるが、以下では、説明を理解し易くするために操作装置4と制御装置3を主体にして説明する。
【0043】
図4に示すように、操作装置4は、処理を開始すると、制御装置3に接続したか否かを判定し(S1)、接続していない場合には(S1:NO)、接続されるまで待機する。そして、制御装置3は、接続されると(S1:YES)、制御装置3と通信を行い、制御装置3に搭載されている制御用ソフトウェア6のバージョンを取得する(S2)。
【0044】
このとき、制御装置3は、図5に示すように、処理を開始すると操作装置4が接続されたか否かを判定し(T1)、接続されていない場合には(T1:NO)、操作装置4の接続を待機する。なお、上記したように図5は操作装置4が接続されることを想定した処理の流れであるため、制御装置3は、操作装置4が接続されていない場合には、操作装置4の接続を待機する処理の流れとなっている。そして、制御装置3は、操作装置4と接続されると(T1:YES)、操作装置4に対して、自身が記憶している制御用ソフトウェア6のバージョンを送信する(T2)。これにより、操作装置4側で制御用ソフトウェア6のバージョンを取得することができる。
【0045】
操作装置4は、制御用ソフトウェア6のバージョンを取得すると、対応する操作用ソフトウェア7を自身が記憶しているか否かを判定し(S3)、記憶している場合には(S3:YES)、対応する操作用ソフトウェア7を実行対象として選択する(S4)。これにより、接続された制御装置3において安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境、つまりは、制御用ソフトウェア6のバージョンと操作用送付とウェアのバージョンとの組み合わせが維持される。
【0046】
一方、操作装置4は、対応する操作用ソフトウェア7を自身が記憶していない場合には(S3:NO)、制御装置3に対して操作用ソフトウェア7の送信を要求するダウンロード要求を送信することにより、制御装置3から操作用ソフトウェア7を取得する(S8)。このとき、制御装置3は、図5に示すように、操作装置4からのダウンロード要求を受信すると(T3:YES)、自身が記憶している操作用ソフトウェア7を操作装置4に送信する(T5)。
【0047】
そして、操作装置4は、図4に示すように、制御装置3から操作用ソフトウェア7を取得すると、取得した操作用ソフトウェア7を実行対象として選択する(S9)。これにより、接続された制御装置3において安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境、つまりは、制御用ソフトウェア6のバージョンと操作用送付とウェアのバージョンとの組み合わせが維持される。また、制御装置3に操作装置4を接続した後、迅速に作業を開始することができる。
【0048】
続いて、操作装置4は、取得した操作用ソフトウェア7を記憶できるだけの記憶容量の空きが操作側記憶部42にあるか否かを判定し(S10)、空きがある場合には(S10:YES)、取得した操作用ソフトウェア7を記憶するとともに(S11)、取得したソフトウェアの実行回数をリセットする(S12)。これにより、次に同じ制御装置3に接続された場合には、操作用ソフトウェア7のダウンロードを行うことなく、迅速に作業を開始することができる。
【0049】
これに対して、操作装置4は、記憶容量に空きがない場合には(S10:NO)、実行回数が最も少ない操作用ソフトウェア7、つまりは、使用頻度が最も低い操作用ソフトウェア7を操作側記憶部42から削除する(S13)。これにより、操作用ソフトウェア7を新たに記憶するための記憶容量の空きを確保することができる。ただし、実行回数が最も少ない操作用ソフトウェア7を削除しても記憶容量の空きが不足している場合には、削除後において最も実行回数が少なくなった操作用ソフトウェア7をさらに削除することができる。
【0050】
続いて、操作装置4は、取得した操作用ソフトウェア7を記憶し(S11)、実行回数をリセットする(S12)。これにより、記憶容量を過度に大きくする必要なく、次に同じ制御装置3に接続された場合には、操作用ソフトウェア7のダウンロードを行うことなく、迅速に作業を開始することができる。
【0051】
そして、操作装置4は、実行対象として選択した操作用ソフトウェア7を実行すると共に(S5)、操作用ソフトウェア7の実行回数を加算する(S6)。これにより、記憶容量の空きが少なくなった際、上記したように使用頻度に基づいて記憶容量の空きを確保することができるようになる。
【0052】
さて、操作用ソフトウェア7を実行すると、操作装置4の表示部44には例えば図2に示したUIが表示される。そして、ユーザは、UIを利用して産業用ロボット2を操作する。このとき、操作装置4は、操作処理を実行している(S7)。この操作処理では、ユーザの操作に応じて制御装置3に例えばアームの移動先や移動速度などのデータを操作信号として送信する処理や、制御装置3から実際に産業用ロボット2を制御した結果のデータを取得してUIに表示あるいは反映させる処理などが行われる。
【0053】
このとき、制御装置3では、図5に示すように、操作信号を受信すると(T6)、対応する処理、例えば産業ロボットのアームを移動させるといった産業用ロボット2の制御や制御結果のデータを操作装置4に送信するなどの処理を実行する(T7)。
【0054】
そして、操作装置4は、図4に示すように、操作処理において例えばユーザが作業を完了して終了操作が行われると、制御装置3に対して終了信号を送信して処理を終了する。また、制御装置3は、図5に示すように、操作装置4から終了信号を受信すると(T7:YES)、処理を終了する。
【0055】
以上説明した産業用ロボットシステム1では、次のような効果を得ることができる。
産業用ロボットシステム1は、産業用ロボット2を制御する制御装置3と、制御装置3と通信可能に接続され、制御装置3を介して産業用ロボット2を操作可能な操作装置4と、を備えている。制御装置3は、産業用ロボット2を制御するための制御用ソフトウェア6、および操作装置4で実行されるソフトウェアであって、当該制御装置3に記憶されている制御用ソフトウェア6に対応したバージョンの操作用ソフトウェア7を記憶している記憶部32を有している。また、操作装置4は、制御装置3との間で通信を行うための基盤ソフトウェア9、およびバージョンが異なる複数の操作用ソフトウェア7を記憶可能な記憶容量を有する操作側記憶部42と、産業用ロボット2を操作する際のソフトウェアの動作環境を維持する維持部46と、を有している。
【0056】
具体的には、維持部46は、接続された制御装置3に記憶されている制御用ソフトウェア6に対応したバージョンの操作用ソフトウェア7が操作側記憶部42に記憶されている場合、対応するバージョンの操作用ソフトウェア7を実行対象として選択する。
【0057】
これにより、制御用ソフトウェア6のバージョンに対応した操作用ソフトウェア7が操作装置4で実行されることになり、産業用ロボット2を操作する際における制御用ソフトウェア6と操作用ソフトウェア7との組み合わせを、安定動作が実現できていたときと同じ状態にすることができる。すなわち、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境を維持することができる。
【0058】
また、維持部46は、接続された制御装置3に記憶されている制御用ソフトウェア6に対応したバージョンの操作用ソフトウェア7が操作側記憶部42に記憶されていない場合、制御装置3に記憶されている操作用ソフトウェア7を取得して実行対象として選択する。
【0059】
これにより、操作装置4に記憶されている操作用ソフトウェア7のバージョンが、制御装置3に記憶されている制御用ソフトウェア6のバージョンに対応しないものであった場合において、つまりは、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境とは異なる場合において、制御装置3から対応するバージョンの操作用ソフトウェア7を取得することで、産業用ロボット2を操作する際における制御用ソフトウェア6と操作用ソフトウェア7との組み合わせを、安定動作が実現できていたときと同じ状態にすることができる。すなわち、安定動作が実現できていたソフトウェアの動作環境を維持することができる。
【0060】
また、産業用ロボットシステム1は、産業用ロボット2および制御装置3のハードウェアおよびソフトウェアを変更することなく、安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境を維持することができる。そのため、産業用ロボット2や制御装置3のソフトウェアを更新することによる万が一の不具合の発生などのリスクを回避することができ、安定動作が実現できていた動作環境を利用して作業を行いたいという実際の生産現場からの要望に確実に応えることができる。
【0061】
また、産業用ロボットシステム1では、維持部46は、制御装置3から操作用ソフトウェア7を取得した場合、取得した操作用ソフトウェア7を操作側記憶部42に記憶する。これにより、例えば複数の産業用ロボット2の操作を1つあるいは少数の操作装置4で行う運用をしている場合などにおいて、操作装置4を接続した後に迅速に作業を開始することができ、作業効率を向上させることができる。
【0062】
また、産業用ロボットシステム1では、維持部46は、操作側記憶部42に記憶されている操作用ソフトウェア7の実行回数をそれぞれ記憶しており、制御装置3から取得した操作用ソフトウェア7を記憶するための記憶容量が不足する場合、実行回数が最も少ない操作用ソフトウェア7を削除するとともに、取得した操作用ソフトウェア7を操作側記憶部42に記憶する。これにより、操作装置4に過度に大きな記憶容量を設ける必要なく、次に同じ制御装置3に接続された場合には、操作用ソフトウェア7のダウンロードを行うことなく迅速に作業を開始することができる。
【0063】
実施形態では、制御装置3に記憶されている制御用ソフトウェア6のバージョンを取得し、対応するバージョンの操作用ソフトウェア7が操作側記憶部42に記憶されているか否かを判定する構成を例示したが、制御装置3に記憶されている操作用ソフトウェア7のバージョンを取得し、一致するバージョンの操作用ソフトウェア7が操作装置4側に記憶されているか否かを判定する構成とすることもできる。制御装置3に記憶されている操作用ソフトウェア7はその制御装置3の操作に適したものであると考えられるため、制御装置3側と操作装置4側の操作用ソフトウェア7のバージョンを比較することにより、安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境をより確実に再現することができる。
【0064】
あるいは、初めから制御装置3に記憶されている操作用ソフトウェア7のバージョンを取得し、一致するバージョンの操作用ソフトウェア7が操作側記憶部42に記憶されているか否かを判定することで、ソフトウェアの動作環境を維持する構成とすることができる。この場合も、制御装置3に記憶されている操作用ソフトウェア7はその制御装置3の操作に適したものであると考えられるため、制御装置3側と操作装置4側の操作用ソフトウェア7のバージョンを比較することにより、安定動作を実現できているソフトウェアの動作環境をより確実に再現することができる。
【0065】
実施形態では同一の製造ラインでは動作環境が統一されている例を示したが、本発明は、同一の製造ラインで動作環境が異なる場合に適用することができる。これにより、例えば同一の製造ラインに6軸ロボットと4軸ロボットとが配置されていて動作環境が異なる場合であっても、操作装置4が各ロボットに対応したものであることが前提ではあるが、例えば1つの操作装置4により設備を運用することができる。
【0066】
本発明は、上記した、あるいは、図面に記載した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲での種々の変形、拡張あるいは他の構成との組み合わせは均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
図面中、1は産業用ロボットシステム、2は産業用ロボット、3は制御装置、4は操作装置、6は制御用ソフトウェア、7は操作用ソフトウェア、9は基盤ソフトウェア、32は記憶部、42は操作側記憶部、46は維持部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5