IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーシーシー上島珈琲株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人近畿大学の特許一覧

特開2023-115666コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法
<>
  • 特開-コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法 図1
  • 特開-コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法 図2
  • 特開-コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法 図3
  • 特開-コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法 図4
  • 特開-コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115666
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/04 20060101AFI20230814BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230814BHJP
   A23N 12/08 20060101ALI20230814BHJP
   G06N 3/02 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
A23F5/04
G01N21/27 A
A23N12/08 A
G06N3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018017
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】390006600
【氏名又は名称】ユーシーシー上島珈琲株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 史章
(72)【発明者】
【氏名】菅野 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 朋宏
【テーマコード(参考)】
2G059
4B027
4B061
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB11
2G059EE02
2G059EE13
2G059HH02
2G059JJ02
2G059KK04
2G059MM02
2G059MM05
2G059MM20
4B027FB21
4B027FC10
4B027FQ02
4B027FR17
4B027FR18
4B027FR20
4B061AA01
4B061AB04
4B061BA09
4B061BB20
4B061CD30
(57)【要約】
【課題】コーヒー煎豆の焙煎度合を高精度に推定できる、コーヒー炒豆の焙煎度機能を備える焙煎度検査システムを提供する。
【解決手段】コーヒー炒豆の焙煎度推定システム10は、コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値を教師データとして用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルを記憶する記憶装置11と、コーヒー炒豆の画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値が入力されると、前記学習モデルを用いて前記コーヒー炒豆の焙煎度合を示す焙煎度分類結果を出力する推定実行部154とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値を教師データとして用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルを記憶する記憶装置と、
コーヒー炒豆の画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値が入力されると、前記学習モデルを用いて前記コーヒー炒豆の焙煎度合を示す焙煎度分類結果を出力する推定実行部とを備える、
コーヒー炒豆の焙煎度推定システム。
【請求項2】
前記撮像手段で撮像された画像データあるいは前処理した画像データからRGBそれぞれの濃度ヒストグラムを求める濃度ヒストグラム算出部と、
前記濃度ヒストグラム算出部で得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムから濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する入力データ作成部と、を備える、
請求項1に記載のコーヒー炒豆の焙煎度推定システム。
【請求項3】
前記焙煎度分類結果から焙煎度分類を判定する分類判定部を備える、
請求項1または2に記載のコーヒー炒豆の焙煎度推定システム。
【請求項4】
コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムであって、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコーヒー炒豆の焙煎度推定システムと、
搬送装置と
ドーム型照明装置と、
前記ドーム型照明装置のドーム型頂点に設けられる、検査対象物を撮像する撮像手段と、備える、
焙煎度検査システム。
【請求項5】
コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値を教師データとして用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルに、コーヒー炒豆の画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値を入力し、前記コーヒー炒豆の焙煎度合を示す焙煎部分類結果を出力するステップを含む、
コーヒー炒豆の焙煎度検査方法。
【請求項6】
検査対象物を搬送装置で搬送しながら、撮像手段で撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで得られた画像データを所定サイズに分割し、各分割されたブロックを加算平均する前処理ステップと、
前記前処理ステップで前処理された画像データからRGBそれぞれの濃度ヒストグラムを求める濃度ヒストグラム算出ステップと、
前記濃度ヒストグラム算出ステップで得られたRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する入力データ作成ステップと、
前記入力データ作成ステップで作成された入力データを、前記学習モデルに入力して焙煎度分類結果を出力する推定実行ステップと、請求項5に記載のコーヒー炒豆の焙煎度検査方法。
【請求項7】
コーヒー炒豆の焙煎度検査プログラムであって、
少なくとも1つのプロセッサーにより、請求項5または6に記載のコーヒー炒豆の焙煎度検査方法を実現するプログラム。
【請求項8】
コンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合の画素数に対応する濃度値で構成される教師データを用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルを記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサーと、
前記プロセッサーで実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
前記プロセッサーは、実行可能な命令を実行することにより請求項5または6に記載のコーヒー炒豆の焙煎度検査方法を実現する、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆の焙煎工程において、その焙煎度合は目視検査で判定されている。また、色差計で炒豆の焙煎度を計測しL値で評価することが行われている。焙煎度は、浅煎り焙煎、中煎り焙煎、深煎り焙煎に分類される。浅煎り焙煎は、ライトロースト(例えばL値27.0以上)、シナモンロースト(例えばL値25.0から27.0未満)に細分化される。中煎り焙煎は、ミディアムロースト(例えばL値22.5から25.0未満)、ハイロースト(例えばL値20.5から22.5未満)、シティロースト(例えばL値18.5から20.5未満)に細分化される。深煎り焙煎は、フルシティロースト(例えばL値16.5から18.5未満)、フレンチロースト(例えばL値15.0から16.5未満)、イタリアンロースト(例えばL値15.0未満)に細分化されている。
【0003】
目視検査では、個人差、経験値によるばらつきがある。また、浅煎り焙煎と深煎り焙煎の差は大きく目視検査も簡単であるが、中煎り焙煎、深煎り焙煎の細分化した違いを判断することも容易ではない。また、目視検査の結果と、色差計のL値の結果とを比較すると、再現性が低いことが問題であった。
色差計による測定を焙煎機に実装し、リアルタイムでL値を測定することも容易ではない。焙煎温度と焙煎時間を設定し、焙煎度測定するタイミングで焙煎機を停止し、焙煎機から炒豆を抜き取り、静置した状態の炒豆を色差計で測定する必要があった。
【0004】
特許文献1は、コーヒー豆の初期焙煎度を測定する方法として、炒豆の表面温度から判断することを開示している。特許文献2は、コーヒー焙煎豆の選別方法であって、コーヒー焙煎豆中の3-メチルインドールの含有量を近赤外線により測定し、含有量が0.00035mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程を開示している。特許文献3は、焙煎室内のコーヒー豆の表面色を検出する色差計からの信号と、あらかじめ設定された浅煎り、中煎り、深煎り等の焙煎度合の換算値とを比較し、表面色が設定値に達すると加熱装置を停止することが記載されている。
【0005】
また、検査対象物を撮像した画像を学習させたニューラルネットワークを用いた検査方法が多く提案され実用化されている。特許文献4は、食肉、例えば鶏肉の血合いや異物を検出するためにニューラルネットワークを利用している。特許文献5は、複数種類のいりこなどが混在した検査対象物から選別したい物とそれ以外を識別するためにニューラルネットワークを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016-536989号公報
【特許文献2】特開2016-167993号公報
【特許文献3】特開平4-311349号公報
【特許文献4】国際公開第2019/151393号
【特許文献5】特許第4812083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1から3では、温度、色差計、近赤外線などから焙煎度合を判定することを記載しているにすぎず、ニューラルネットワークを用いた焙煎度合の高精度判定ではない。特許文献4および5は、ニューラルネットワークを用いて良品・不良品あるいは種別の分類を行っているに過ぎず、焙煎度合の高精度判定ではない。
【0008】
本発明の目的は、コーヒー炒豆の焙煎度合(例えば、3分類以上、4分類以上、5分類以上、6分類以上)を高精度に推定できる、コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムおよび焙煎度検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
コーヒー炒豆の焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(例えば、10%から50%)の画素数に対応する濃度値(輝度値)を教師データ(「訓練データ」ともいう。)として用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデル(「識別器」ともいう。)を記憶する記憶装置と、
コーヒー炒豆の画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(例えば、10%から50%)の画素数に対応する濃度値(輝度値)が入力されると、前記学習モデルを用いて前記コーヒー炒豆の焙煎度合を示す焙煎度分類結果を出力する推定実行部とを備える。
「焙煎度分類結果」は、例えば、少なくとも3以上に分類された焙煎度ごとの確信度(「信頼度」ともいう。)を含んでいてもよい。
分類したい焙煎度の教師データを細分化するほど、得られる分類数も増加できる。例えば、L値の1桁あるいは小数点1位の桁での分類も可能である。
【0010】
上記構成によれば、画像データを学習モデルに入力するだけで簡単に検査できる。
【0011】
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
撮像された画像データを前処理する前処理部を有していてもよい。
前記前処理部は、撮像された画像データ(例えば、1辺が30cmから30cmの正方形サイズ)からその中央領域の画像を所定サイズ(例えば、1辺が4cmから20cm)に切り出す処理であってもよい。
前記前処理部は、切り出された画像データから背景(検査対象物以外の画像)を切り抜く背景除去処理を行ってもよい。
【0012】
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
前処理された画像データあるいは撮像された画像データそのものから、RGBそれぞれの濃度ヒストグラムを求める濃度ヒストグラム算出部を有していてもよい。
【0013】
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
前記焙煎度分類結果から焙煎度分類を判定する分類判定部を有していてもよい。分類判定部は、焙煎度分類結果の確信度のうち最高値となる分類を選択してもよい。
【0014】
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
前記濃度ヒストグラム算出部で得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムから濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(例えば、10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される教師データを作成する教師データ作成部を有していてもよい。教師データ作成部は、ニューラルネットワークの入力層に入力できるように、前記所定割合のR濃度ヒストグラムの濃度値、前記所定割合のG濃度ヒストグラムの濃度値、前記所定割合のB濃度ヒストグラムの濃度値の順に並び替えてもよい。ニューラルネットワークの入力層の数は、前記所定割合で設定される画素数に対応する数である。
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
前記濃度ヒストグラム算出部で得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムから濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(例えば、10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する入力データ作成部を有していてもよい。入力データ作成部は、ニューラルネットワークの入力層に入力できるように、前記所定割合のR濃度ヒストグラムの濃度値、前記所定割合のG濃度ヒストグラムの濃度値、前記所定割合のB濃度ヒストグラムの濃度値の順に並び替えてもよい。
濃度ヒストグラムの高い部分を選択することで、豆位置ずれ、豆の重なる部分の影響を無視できる。
【0015】
前記炒豆の焙煎度合は、浅煎り焙煎、中煎り焙煎、深煎り焙煎に分類される。浅煎り焙煎は、ライトロースト(例えばL値27.0以上)、シナモンロースト(例えばL値25.0から27.0未満)に細分化される。中煎り焙煎は、ミディアムロースト(例えばL値22.5から25.0未満)、ハイロースト(例えばL値20.5から22.5未満)、シティロースト(例えばL値18.5から20.5未満)に細分化される。深煎り焙煎は、フルシティロースト(例えばL値16.5から18.5未満)、フレンチロースト(例えばL値15.0から16.5未満)、イタリアンロースト(例えばL値15.0未満)に細分化されている。
焙煎度分類結果は、上記L値に対応した3以上の分類を含んでいてもよい。
【0016】
前記ニューラルネットワークは、例えば、単層型あるいは多層階層型ニューラルネットワークなどが挙げられる。前記学習モデルは、ソフトウエアプログラムである。前記ニューラルネットワークは、6分類の焙煎度である場合に、例えば、入力層(前記所定割合に対応するノード数で設定される)、中間層、出力層(6ノード)であってもよい。中間層(「隠れ層」ともいう。)が多層であってもよい。
【0017】
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
教師データをニューラルネットワーク(学習モデル)に入力し学習を実行する学習実行部を有していてもよい。
前記学習実行部は、別の教師データを用いて再学習も実行する構成であってもよい。
【0018】
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
前記学習モデルから得られる結果から正解率(「正答率」ともいう。)、適合率、および/または再現率の精度結果を演算する精度評価部をさらに有していてもよい。精度評価部は、学習実行部による学習処理において実行されてもよく、推定実行部による推定処理において実行されてもよい。
前記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)は、
前記推定実行部で出力された焙煎度分類結果(各分類の確信度)、および/または前記精度評価部で演算された精度結果を出力する結果情報出力部をさらに有していてもよい。
前記推定実行部による出力および前記結果情報出力部による出力は、例えば、表示装置に表示する、別装置へ送信する、印刷する、音声を発する、記憶装置へ記憶するなどの各種手段で構成されていてもよい。
【0019】
コーヒー炒豆の焙煎度推定機能を備える焙煎度検査システムは、
上記焙煎度推定システム(焙煎度推定機能)と、
搬送装置と
ドーム型照明装置と、
前記ドーム型照明装置のドーム型頂点に設けられる、検査対象物を撮像する撮像手段と、を備えていてもよい。
前記撮像手段で撮像された画像データは、前記学習モデルの入力データおよび/または前記教師データに用いてもよい。
ドーム型照明装置を採用することで、影や乱反射を低減した画像を取得できる。
【0020】
前記搬送装置は、
駆動プーリおよび受動プーリ(「駆動ローラおよび受動ローラ」でもよい。)に掛け渡される無端ベルトと、
駆動プーリを回転駆動させるモータと、
無端ベルトに振動を与える振動発生器と、を有していてもよい。
振動発生器による振動で、背景が見えないように隙間なく、かつ大きな起伏もなく一定高さになるようにする。
【0021】
コーヒー炒豆の焙煎度検査方法は、
コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値を教師データとして用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルに、コーヒー炒豆の画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値を入力し、前記コーヒー炒豆の焙煎度合を示す焙煎部分類結果を出力するステップを含む。
前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法は、
検査対象物を搬送装置で搬送しながら、(ドーム型照明装置のドーム型頂点に設けられる)撮像手段で撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで得られた画像データを所定サイズに分割して切り出す前処理ステップと、
前記前処理ステップで前処理された画像データからRGBそれぞれの濃度ヒストグラムを求める濃度ヒストグラム算出ステップと、
前記濃度ヒストグラム算出ステップで得られたRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する入力データ作成ステップと、
前記入力データ作成ステップで作成された入力データを、前記学習モデルに入力して焙煎度分類結果を出力する推定実行ステップと、
を含んでいてもよい。
前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法は、
前記学習モデルから得られる焙煎度分類結果から正解率、適合率、および/または再現率を演算する精度評価ステップを含んでいてもよい。
前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法は、
前記推定実行ステップで出力された前記焙煎度分類結果、および/または前記精度評価ステップで演算された精度結果を出力する結果情報出力ステップを含んでいてもよい。
【0022】
情報処理装置は、
少なくとも1つのプロセッサーと、
前記プロセッサーで実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、
前記プロセッサーは、実行可能な命令を実行することにより前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法の各ステップを実現する、情報処理装置である。
【0023】
コーヒー炒豆の焙煎度検査プログラムは、
少なくとも1つのプロセッサーにより、前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法の各ステップを実現するプログラムである。
【0024】
コンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される教師データを用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルを記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0025】
前記焙煎度推定システムの各構成部は、メモリ、プロセッサー、ソフトウエアプログラムを有する情報処理装置(例えば、コンピュータ、サーバ)や、専用回路、ファームウエアなどで構成してもよい。情報処理装置は、オンプレミスまたはクラウドのいずか一方、あるいは両方の組み合わせであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1のコーヒー炒豆の焙煎度合の検査システムの一例を示す図である。
図2】推定処理の動作フローの一例を示す図である。
図3】表示画面の一例を示す図である。
図4】実施例の正答率の結果を示す図である。
図5】実施例の正答率の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のコーヒー炒豆の焙煎度検査システム1の一例を示す。本実施形態1の焙煎度検査システム1は、焙煎度推定システム10、搬送装置2、ドーム型照明装置27、撮像手段28を備える。
【0028】
搬送装置2は、駆動プーリ23と受動プーリ22に掛け渡される無端ベルト21と、駆動プーリ23を回転駆動させるモータ(不図示)と、無端ベルト21に振動を与える振動発生器26と、投入ホッパ24と、排出容器25を備える。無端ベルト21の上方にドーム型照明装置27が設置され、撮像手段28がドーム型照明装置27のドーム型頂点に設けられる。
ドーム型照明装置27は、内部に、蛍光灯、LED光、ハロゲン光から選択されるバー状、面上あるいはリング状光源と、ドーム型内壁面に反射材を有して構成されていてもよい。照明色は、RGBの階調値のそれぞれを変更できる。撮像手段28として、例えば、カラーカメラが挙げられる。
振動発生部26は、複数の突起が凹凸を形成するように設けられた回転ロールおよびその回転駆動モータで構成される。投入ホッパ24とドーム型照明装置27との間に、無端ベルト21の裏側(コーヒー豆搬送面の裏側)に配置され、無端ベルト21の裏面に、凹凸の突起が回転しながら接触させることで、無端ベルト21に振動を与えることができる。
【0029】
(撮影動作フロー)
投入ホッパ24から検査対象物(炒豆)を投入し、無端ベルト21を回転駆動する。振動発生器26で振動が与えられた状態で無端ベルト21が回転し、検査対象物を均一な厚みを持たせた状態で、排出容器25まで搬送する。搬送途中にドーム型照明装置27が配置されており、その天頂から垂直下方に向かって撮像手段28が搬送されている状態の検査対象物を撮影する。撮像手段28で撮像された画像データは、動画あるいは静止画として後述する焙煎度推定システム10へ送られる。画像データは焙煎度推定システム10の通信手段14で受信され、記憶装置11あるいは不図示のメモリに保存される。
【0030】
焙煎度推定システム10は、記憶装置11、表示装置13、通信手段14、前処理部151、濃度ヒストグラム算出部152、入力データ作成部1521、学習実行部153、推定実行部154、分類判定部155、精度評価部156、結果情報出力部157を備える。
【0031】
記憶装置11は、学習済みの学習モデル12を記憶している。学習モデルは、コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数を取得し、その画素数に対応する濃度値を教師データとして用いたニューラルネットワークによって構成されている。記憶装置11は、例えば、揮発性或いは不揮発性のメモリで構成されていてもよい。記憶装置11は、1種の学習モデルでもよく、2種以上の学習モデルを記憶していてもよい。
【0032】
前処理部151は、撮像手段28で撮像された画像データを前処理する。画像データは、撮像手段28から送られて通信手段14で受信し、記憶装置11で記憶されている。
前処理部151は、撮像して得られた静止画像データ(例えば、1辺が30cmから30cmの正方形サイズ)からその中央領域の画像を所定サイズ(例えば、1辺が4cmから20cm)に切り出す処理を行う。通信手段14は、無線手段、有線手段のいずれであってもよい。
【0033】
濃度ヒストグラム算出部152は、前処理した画像データからRGBそれぞれの濃度ヒストグラムを求める。濃度ヒストグラム算出部152は、例えば、RGBそれぞれ、128階調、256階調あるいは1024階調でのヒストグラムを求めてもよい。
入力データ作成部1521は、濃度ヒストグラム算出部152で得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムから濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(例えば、10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する。入力データ作成部1521は、さらに、ニューラルネットワークの入力層に入力できるように、R濃度ヒストグラムの濃度、G濃度ヒストグラムの濃度、B濃度ヒストグラムの濃度の順に並び替えを行う。本実施形態において、入力データ作成部1521は、教師データ作成部の機能を兼用している。
【0034】
学習実行部153は、教師データをニューラルネットワーク(学習モデル)に入力し学習を実行する。
【0035】
推定実行部154は、入力データ作成部1521で得られた入力データ(所定割合のRGBそれぞれの濃度ヒストグラム濃度)が入力されると、学習モデル12を用いてコーヒー炒豆の焙煎度分類結果(各分類の確信度)を出力する。
分類判定部155は、推定実行部154で出力された焙煎度分類結果から最適の分類を判定する。各分類の確信度が最も高い分類を検査結果として出力する。
【0036】
精度評価部156は、学習モデルから得られた焙煎度分類結果から正解率、適合率、および/または再現率の精度結果を演算する。
【0037】
結果情報出力部157は、焙煎度分類結果、判定結果(分類結果)、精度結果を出力する。本実施形態では、結果情報出力部157による出力は、例えば、表示装置13に表示する。表示装置13は、特に制限されず、液晶モニター、有機ELモニター、CRTモニター、スマートフォン、タブレット、汎用パソコンのモニターなどが例示される。
【0038】
(教師データおよび学習モデルの生成)
まず、教師データおよび学習モデルの生成について説明する。
各焙煎度の炒豆を撮像手段28で撮像し画像データを生成する。各焙煎度の画像データは焙煎度推定システム10へ送られ、記憶装置11に記憶される。焙煎度推定システム10が動画から静止画を生成してもよく、撮像手段28が静止画を生成してもよい。
前処理部151、濃度ヒストグラム算出部152、入力データ作成部1521を実行し、教師データセット(訓練データセット)を作成する。
学習実行部153を実行し、教師データセットをニューラルネットワークに入力し、学習モデルを生成する。精度評価部156により、精度評価を行うことができる。最良結果であった学習モデル12を記憶装置11へ記憶する。
【0039】
(推定処理の動作フロー)
図2に推定処理の動作フローを示す。図2(a)は、撮像手段28で撮像された画像データ(静止画)を示す。画像サイズは縦30cm×横40cmである。中央領域(例えば、縦横8cm×8cm)の画像データを識別判定画像に用いる。図2(b)でRGBそれぞれの256階調の濃度ヒストグラムを作成する。図2(b)ではRのヒストグラムのみを示している。図2(c)で入力データ作成処理が実行される。入力データ作成部1521は、RGBそれぞれの濃度ヒストグラムにおいて、濃度値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(例えば、10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する。入力データ作成部1521は、さらに、ニューラルネットワークの入力層に入力できるように、R濃度ヒストグラムの濃度、G濃度ヒストグラムの濃度、B濃度ヒストグラムの濃度の順に並び替えを行う。図2(c)では所定割合を30%としている。入力データは、RGBでそれぞれ30個であり合計90個の入力データが作成される。
図4(d)の学習モデル実行において、推定実行部154は、R濃度ヒストグラムの濃度、G濃度ヒストグラムの濃度、B濃度ヒストグラムの濃度の順に縦一列にしてそのまま、学習モデル12の入力層(90ノード)に入力する。学習モデル12は入力層(90ノード)、単層の中間層(90以下ノード)、出力層(6ノード)で構成されている。出力層(6ノード)のそれぞれに、焙煎度の確信度(確信値)が出力される。
分類判定部155は、推定実行部154で出力された焙煎度の確信度(確信値)から最良の分類を判定する。確信度の最高い分類が選択される。
【0040】
(表示画面の一例)
図3に表示装置13の表示画面の一例を示す。撮像手段28で撮像された画像データ(撮影動画)は、表示領域131に映される。検査ボタン132をクリックすると検査が実行される。検査対象の静止画像が、表示領域133に表示される。エリア設定1331において、検査静止画像から切り出す中央領域の座標(4角座標)を設定することができる。
焙煎度分類の確信度(値)は、バー表示、数値として表示領域135に表示される。分類判定部155による判定結果(L値)が表示領域136に表示される。
画面左下領域137の学習ボタンは、学習(再学習)を実行させるための指示ボタンである。評価ボタンは、精度評価部による演算を実行させるための指示ボタンである。
【0041】
(実施例1)
L値が24.0、22.5、21.0、19.5、18.0、16.5の6分類の焙煎度の炒豆を準備し、各L値での画像データを40枚(40枚×6)撮像した。各画像データからその中央領域(縦横8cm×8cm)の画像を切り出し、RGBそれぞれの濃度ヒストグラム(256階調)(40枚×6×3)を作成した。濃度ヒストグラムから抽出する所定割合(4パータン)を変えて検証した。濃度値の高い部分からの割合を10%、20%、30%、40%として学習データを作成し、図2のニューラルネットワーク(入力層(90)、中間層(90)、出力層(6))に入力し学習させ、4パターンの学習モデルを生成した。
(結果)
上記学習データとは異なる画像データ(60枚×6)での検証結果を図4に示す。4パターンの学習モデルの正答率を比較し、最良の割合は30%であった。
【0042】
(実施例2)
L値が24.0、21.0、18.0、16.5の4分類の焙煎度の炒豆を準備し、各L値での画像データを40枚(40枚×4)撮像した。各画像データからその中央領域(縦横8cm×8cm)の画像を切り出し、RGBそれぞれの濃度ヒストグラム(40枚×4グレード×3)を作成した。濃度ヒストグラムから抽出する割合30%として検証した。ニューラルネットワーク(入力層(90)、中間層(90)、出力層(4))に入力し学習させ学習モデルを生成した。
(結果)
上記学習データ(40枚)、これと異なる画像データ(60枚)での検証結果を図5に示す。
【0043】
(別実施形態)
(1)実施例では教師データ数が比較的少ないが、これに限定されず、教師データを増やすことで、汎化性を高めることが可能である。
(2)ニューラネットワークは、単層に限定されず、多階層型ニューラルネットワークであってもよい。
(4)RGB濃度ヒストグラムの階調(度数)は、256階調に限定されない。
【0044】
(検査方法)
コーヒー炒豆の焙煎度検査方法は、コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数を取得し、その画素数に対応する濃度値を教師データとして用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルに、コーヒー炒豆の画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値を入力し、前記コーヒー炒豆の焙煎度合を示す焙煎部分類結果を出力するステップを含む。
前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法は、検査対象物を搬送装置で搬送しながら、(ドーム型照明装置のドーム型頂点に設けられる)撮像手段で撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップで得られた画像データを所定サイズに分割して切り出す前処理ステップと、前記前処理ステップで前処理された画像データからRGBそれぞれの濃度ヒストグラムを求める濃度ヒストグラム算出ステップと、前記濃度ヒストグラム算出ステップで得られたRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される入力データを作成する入力データ作成ステップと、前記入力データ作成ステップで作成された入力データを、前記学習モデルに入力して焙煎グレード結果を出力する推定実行ステップと、を含んでいてもよい。
【0045】
(プログラム)
コーヒー炒豆の焙煎度検査プログラムは、少なくとも1つのプロセッサーにより、前記コーヒー炒豆の焙煎度検査方法の各ステップを実現するプログラムである。
コンピュータ命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、コーヒー炒豆の焙煎度合で少なくとも3以上に分類される画像データから得られる教師データであって、画像データから得られるRGBそれぞれの濃度ヒストグラムの画素値の高い部分から全体の画素数に対して所定割合(10%から50%)の画素数に対応する濃度値で構成される教師データを用いてニューラルネットワークによって生成される学習モデルを記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【符号の説明】
【0046】
1 焙煎度検査システム
10 焙煎度推定システム
11 記憶装置
12 学習モデル
13 表示装置
14 通信手段
151 前処理部
152 濃度ヒストグラム算出部
1521 入力データ作成部
153 学習実行部
154 推定実行部
155 分類判定部
156 精度評価部
157 結果情報出力部
2 搬送装置
27 ドーム型照明装置
28 撮像手段
図1
図2
図3
図4
図5