IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特開2023-115670製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム
<>
  • 特開-製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム 図1
  • 特開-製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム 図2
  • 特開-製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム 図3
  • 特開-製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム 図4
  • 特開-製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115670
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0226 20230101AFI20230814BHJP
【FI】
G06Q30/02 354
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018025
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB07
(57)【要約】
【課題】 比較的簡単な手段で当該製造機械の利用促進を図ることができるか、または比較的簡単な手段でユーザと製造装置メーカの連携促進を図ることのできる製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラムのいずれかを提供する。
【解決手段】 ユーザUが使用する製造装置12と管理装置21を接続し、製造装置12の情報を管理装置21に送信可能な製造装置12の管理方法において、製造装置12から管理装置21に送信される製造装置12の作動情報に応じて、管理装置21がユーザUに付与する利得Pを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理方法において、
製造装置から管理装置に送信される製造装置の作動情報に応じて、管理装置がユーザに付与する利得を生成する、製造装置の管理方法。
【請求項2】
前記製造装置の作動情報は、作動時間、作動回数、生産数、省エネ状況の指数、成形情報提供の指数の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の製造装置の管理方法。
【請求項3】
ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理システムにおいて、
製造装置から管理装置に送信される製造装置の作動情報に応じて、管理装置がユーザに付与する利得を生成する、ことを特徴とする製造装置の管理システム。
【請求項4】
前記利得は、製造装置のユーザが、製造装置購入または製造装置の部品購入に使用できるポイントとして付与される、請求項3に記載の製造装置の管理システム。
【請求項5】
ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理プログラムにおいて、
製造装置から管理装置に送信される製造装置の作動情報に応じて、管理装置がユーザに付与する利得を生成する、製造装置の管理プログラム。
【請求項6】
製造装置と外部の管理装置は通信により接続され、前記管理装置の管理プログラムにより生成された利得の情報は、移動可能な端末装置を含む外部の管理装置から確認可能である、請求項5に記載の管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理システムとしては特許文献1に記載されるようなシステムがいくつか知られている。これらの管理システムでは工作機械等の製造装置を使用状態に係る情報を管理装置に送信し、管理装置は、使用監視装置から受信した当該工作機械の使用状態に応じた費用を使用量として算出した後、算出した使用量を該当するユーザに課金する処理を行っている。
【0003】
またユーザが使用する製造機械である鍛圧装置に対するメンテナンスにおいて部品が交換されたことをユーザかサービスマンが通知したことに基づき前記ユーザに対してポイントを付与するサーバ装置として特許文献2に記載されるものがある。そして前記ユーザは付与されたポイントを使用してポイントに応じた金額を差し引いた金額で交換部品を購入できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-81399号公報
【特許文献2】国際公開第2017/073214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1は、ユーザは工作機械の使用量に応じて課金されるのみであるので課金対象の機械の利用促進に繋がるものではなかった。また特許文献2はユーザかサービスマンが通知したことに基づき前記ユーザに対してポイントを付与されるものであり、自動的にポイント計算がされるものではなく人による手入力を伴うので作業負担が大きいものであった。また特許文献2は当該機械の利用促進に繋がるものではなかった。
【0006】
そこで本発明は、比較的簡単な手段で当該製造機械の利用促進を図ることができるか、または比較的簡単な手段でユーザと製造装置メーカの連携促進を図ることのできる製造装置の管理方法、製造装置の管理システム、および製造装置の管理プログラムのいずれかを提供することを目的とする。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の製造装置の管理方法は、ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理方法において、製造装置から管理装置に送信される製造装置の作動情報に応じて、管理装置がユーザに付与する利得を生成する、ものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造装置の管理方法は、ユーザが使用する製造装置と管理装置を接続し、製造装置の情報を管理装置に送信可能な製造装置の管理方法において、製造装置から管理装置に送信される製造装置の作動情報に応じて、管理装置がユーザに付与する利得を生成するので、当該機械の利用促進を図ることができるか、またはユーザと製造装置メーカの連携促進を図ることができる。また本発明の製造装置の管理システム、製造装置の管理プログラムも同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の製造装置の管理システムの概要図である。
図2】本実施形態の製造装置の制御装置を示すブロック図である。
図3】本実施形態の管理装置のブロック図である。
図4】本実施形態の製造装置の表示画面または移動可能な端末の表示画面を示す図である。
図5】本実施形態の製造装置の別の表示画面または移動可能な端末の別の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<製造装置の構成>
本実施形態の製造装置の管理システム11について図1の概要図を参照して説明する。本実施形態において製造装置を構成するのは、樹脂等の成形品を成形する射出成形機12である。射出成形機12は、ベッド13上に設けられた射出装置14と金型を含む型締装置15等から構成される。また射出成形機12には制御装置16が設けられ、制御装置16は設定表示部17と接続されている。
【0012】
なお本発明の製造装置は、射出成形機に限定されずその他のプラスチック製造装置、ダイカスト成形機、各種のプレス装置、積層成形装置、真空成形装置、押出機、半導体製造装置、電子部品製造装置、電気機器製造装置、輸送機器製造装置、汎用加工機を含む工作機械、溶接装置、化学製品製造装置、木材製品機、食品製造装置、繊維製品製造装置、紙製品製造装置や、前記製造装置に付設される搬送装置などが含まれ、限定されない。これらは原則としてユーザUが使用する工場18内に設置されるものである。従って下記の説明において射出成形機12と記載されている部分は上記の装置の少なくとも一つに置き換え可能なものとする。
【0013】
本発明においてユーザUとは主として上記製造装置を作動させることにより製品を製造する主体を指している。ユーザUは会社法人、会社組織の意思決定体、株主、公共機関、大学等の教育機関の場合もあるが、工場単位またはその装置単位における意思決定権者の場合や、単に装置の作業員の場合(作業員が何か利得を受け取る場合)もある。またユーザUは上記製造装置の所有権を有する場合もあるが、リースやその他の契約形態により製造装置の所有権を有さない場合もある。更に製造装置を作動させる作業員は、ユーザUの従業員である場合が一般的であるが、その他の契約形態の作業員や学生が製造装置を作動させる場合も含まれる。
【0014】
ユーザUの射出成形機12の制御装置16には送受信部19が備えられ、インターネット回線20等の通信手段を介して外部の製造装置メーカMの管理装置21と接続されている。通信手段についてはインターネット回線20の他、別の公共通信回線を用いてもよいし、無線或いは有線の専用回線を用いてもよい。製造装置である射出成形機12と管理装置21の間で送受信されるデータは射出成形機12の機体識別が可能であり、暗号化され改変不可能となっていることが望ましい。管理装置21の側から見ると、管理装置21は多数のユーザUの多数の射出成形機12と接続されている。
【0015】
外部の管理装置21については、一般的には製造装置メーカMの内部に設置される。しかし製造装置メーカMから委託を受けた販売代理店やメンテナンスサービス会社や、クラウドサービスを行う管理会社に設置されたものでもよい。または管理装置21は、ポイントP等のデータが改変不可能な形でユーザUの工場内に設置されたものでもよい。その場合射出成形機12の制御装置16内に管理プログラムを内蔵した管理装置が設けられ、射出成形機12と管理装置が接続されるものでもよい。
【0016】
または複数の射出成形機12と接続され、複数の射出成形機12を統括する図示しない統括用コンピュータに管理プログラムを内蔵した管理装置を設けてもよい。この場合、管理装置は管理プログラムをユーザUの統括用コンピュータにインストールしてもよいし、管理プログラムを内蔵した専用の管理装置を統括用コンピュータに接続されてもよい。ユーザUによっては工場の射出成形機12または統括用コンピュータが、セキュリティまたはその他の理由によって、インターネット回線20と非接続状態にしている場合がある。或いはユーザUによっては、工場の射出成形機12または統括用コンピュータが製造装置Mの管理装置21等のコンピュータとインターネット回線20等を通じて接続されることを積極的に望まない場合もある。そのようなケースではユーザUの側にポイントP等の利得を付与するための管理装置を設けることが望ましい。
【0017】
製造装置メーカM(販売代理店等やメンテナンスサービス会社を含む)に置かれる管理装置21は演算処理を行うコンピュータ22(パーソナルコンピュータ)と、個々の射出成形機12または個々のユーザUのポイントP等の利得を保存するサーバ装置23を備えている。管理装置21のコンピュータ22には、本発明のユーザUに付与する利得を生成するための製造装置の管理プログラムがインストールされている。また管理装置21は、全社分の総合計のポイント数を把握し、引当金として負債計上できるように、製造装置メーカMの他の管理部門のコンピュータと接続されていることが望ましい。
【0018】
ただし上記したようにユーザU側の統括用コンピュータ等に管理装置の機能の全部または一部がある場合、製造装置メーカMの管理装置21は、ユーザU側から送られてきたポイント数を個々のユーザUごとに紐づけされた情報として受信し、サーバ装置23に個々のユーザUのポイントPを保存するとともに総合計ポイントPを保存する機能だけを有するものでもよい。
【0019】
また管理装置21は製造装置メーカMの営業担当員やサービス担当員が持ち運びする移動可能な端末装置24にも接続されている。本実施形態において端末装置24は、管理装置21により生成されユーザUに付与する利得を表示する機能を主に有する。本実施形態では端末装置24は利得を生成する機能を有していないが、端末装置24にも管理プログラムの一部の機能、または利得を生成する機能も含めて全部の機能がインストールされたものでもよい。特にユーザUと製造装置メーカMがインターネット回線20で接続されていない場合、端末装置24は、情報伝達機能も果たすことになる。また端末装置24は、他のサービス情報やプレゼン情報も表示可能なものでもよい。
【0020】
次に図2のブロック図を参照して射出成形機12の制御装置16について説明する。制御装置16の制御部25には射出成形機12を作動させるシーケンス制御部26と、シーケンス制御以外の制御を行う作動制御部27が備えられている。また制御装置16の制御部25には、タイマ28が備えられ、電源投入時間、装置全体の作動時間(主には全自動成形時間)、各部の作動時間を検出可能となっている。また制御部25にはカウンタ29が備えられ、主には全自動成形(シーケンス制御)における成形サイクル数をカウントしている。なおカウンタ29は、特定部分の作動回数のカウントや成形品の成形個数のカウントなどを行うものでもよい。更に制御装置は積算計30を備えている。積算計30は時間と回数以外のセンサにより計測される値を積算するものを指し、主には電力消費量を積算する。しかしモータやヒータ等各部の消費電力やトルク、電力回生値などを積算するものでもよい。これらは管理装置21において利得を生成するための作動情報となるが、前記作動情報提供用の機能部としては、タイマ28、カウンタ29、積算計30の少なくとも一つが備えられたものでもよい。
【0021】
制御部25には前記タイマ28、カウンタ29、積算計30等により検出された射出成形機12の作動状況を送信するための送信指令部43が設けられている。本実施形態では射出成形機12の作動状況は、1日に1回予め定められた時間をタイマ28が計時すると、送信指令部43が指令を発することにより管理装置21に送信される。ただし作動状況は射出成形機の作動中に随時、管理装置21に送信されるものでもよく、1週間に一度や1ケ月に一度などもっと長い期間を区切って、前記期間ごとのデータをまとめて管理装置21に送信するものでもよい。
【0022】
また制御装置16は記憶部31を備えており記憶部31は制御部25と接続されている。そして記憶部31にはシーケンス制御用のデータや成形された実績データを保存可能となっている。更に制御装置16は送受信部19を備えており、送受信部19は制御部25と接続されている。送受信部19は上記したようにインターネット回線20と接続されている。そして製造番号等、射出成形機12の個体を識別する情報とともに作動情報がインターネット回線20等を介して管理装置21に送信可能となっている。また送受信部19を介して端末装置24とも通信が可能となっている。なお上記では制御装置16を本発明に関連する機能ごとに説明したら制御装置16は他の機能も備えており、上記に限定されない。
【0023】
なお図1等では射出成形機12の制御装置16がインターネット回線20を介して管理装置21と直接接続されるように記載されているが、途中にユーザUの保有する統括用コンピュータ(図示せず)を仲介するものでもよい。統括用コンピュータがある場合は、後述する管理装置21において生成され送信されてくるポイントP等の利得の情報は、統括用コンピュータに表示可能とすることが望ましい。いずれにしてもポイントPを算定するためのデータ、またはポイントPのデータは改変不可能なように暗号化処理され、送信されることが望ましい。
【0024】
次に図3のブロック図を参照して製造装置の管理システム11の管理装置21について説明する。管理装置21は送受信部32を備えており、インターネット回線20等を介して暗号化処理されて送られてきた国内外のユーザUの射出成形機12の作動情報が読み取り可能となっている。管理装置21の制御部33には作動時間換算部34、成形サイクル数換算部35、省エネ指数換算部36、情報提供指数換算部37などが備えられている。作動時間換算部34は、製造装置である射出成形機12から送られてきた作動時間に関する情報に予めユーザUとの間で取り決めした係数を乗算等してポイントPに換算する部分である。また成形サイクル数換算部35は、射出成形機12から送られてきた成形サイクルに関する情報に予めユーザUとの間で取り決めした係数を乗算等してポイントPに換算する部分である。ここにおいて成形サイクル数に代えて、製造装置の作動回数、生産数をポイントPに換算するものでもよい。例えば1回の成形サイクルで4個の成形品が成形される場合は、生産数4個×回数の合計が送信されてくるものでもよい。
【0025】
また省エネ指数換算部36は、射出成形機12から送られてきた省エネに関する指数に予めユーザUとの間で取り決めした係数を乗算等してポイントPに換算する部分である。更に情報提供指数換算部37は、射出成形機12から送られてきた情報提供に関する指数に予めユーザUとの間で取り決めした係数を乗算等してポイントPに換算する部分である。演算部38は、これら換算部34,35,36,37でポイントPに換算されたものを加算して射出成形機12のトータルのポイントP等の利得を生成する部分である。これら換算部34,35,36,37と演算部38において生成されたポイントPは、サーバ装置23に各射出成形機12ごとのデータとして保存される。または2次処理して複数の射出成形機12を保有するユーザUごとのデータとして保存するようにしてもよい。
【0026】
また管理装置21は、データ解析部39を備えている。データ解析部39は、個別の射出成形機12から送られてきた作動時間、成形サイクル数、省エネ指数や、成形条件等の情報提供されたデータを用いて解析を行う部分である。データ解析部39で解析されたデータは、ユーザUの成形を改善するために用いられる。管理装置21から送られる改善データがユーザUに提供される利得の一部または全部となる場合もある。
【0027】
なおデータ解析部39に機械学習装置を備え、個別の射出成形機12から送られてきたデータを解析してユーザUに対して解析結果を示すものでもよい。この場合の機械学習装置は、作業者が教師あり学習等に介在するものよりも自動的に行えるものが望ましい。一例としては、教師なし学習によりラベルデータをクラスタリングすることにより同系列のデータを比較可能な状態で提供するものでもよい。または成形条件や実績値を基にして機械学習装置が自動的に部分的に数値を変更した上で作動や成形のシミュレーションを行い、結果が良ければ報酬を加算し、結果が悪ければマイナスの報酬を加算する。そして最終的に報酬が最も高くなり結果がよくなった状態を提供情報とするなどの強化学習を実施してもよい。
【0028】
また管理装置21は記憶部であるサーバ装置23を備えている。また記憶部にはコンピュータが内蔵する記憶装置も含まれる。更に管理装置21は、設定表示部44を備えている。なお上記では管理装置21を本発明に関連する機能ごとに説明したら管理装置21がコンピュータである場合、他の機能も備えており、上記に限定されない。
【0029】
次に図4図5を参照して製造装置の管理システム11の端末装置24とその設定表示部40への表示方法について説明する。端末装置24は、設定表示部40と送受信部41と制御部42とを備えている。そして管理装置21の送受信部32と送受信部41は通信手段を介して接続され、設定表示部40に当該射出成形機12またはユーザUのポイントP等の利得情報が表示可能となっている。より具体的には設定表示部40はタッチパネル画面からなり階層的に画面変更が可能となっている。図4は各ユーザUごとに設けられた初期画面40であり、ユーザ名表示部46にユーザ名が表示されるようになっている。またその下にはユーザ別合計ポイント表示部47にはユーザUの累積された合計ポイント数が表示されるようになっている。なおユーザUは、会社単位以外に工場単位であってもよい。
【0030】
また設定表示部44に示される初期画面45には、機械ごとまたは要素ごとに合計ポイント数が一覧表示されるようになっている。一覧表の左欄には機械番号を表示する機械番号表示部48が設けられている。また一覧表の上欄には要素表示部が設けられている。本実施形態では、作動時間ポイント表示部49、成形サイクル数ポイント表示部50、省エネポイント指数表示部51、情報提供指数ポイント表示部52を備えている。また右欄には各機械番号ごとの合計ポイント表示部53が設けられている。更に下欄には前記作動時間ポイントなどの要素ごとの合計ポイント表示部54が設けられている。そして右下隅部にはユーザUの総合計ポイントを表示する合計ポイント表示部55が設けられている。なお図4では一覧表は画面1ページで機械番号と要素の種類が収まっているが、複数の画面やスクロールされる画面からなるものでもよい。
【0031】
また機械番号表示部48をタッチすると、図5に示される機械ごとに設けられたポイント数表示画面58に遷移し、作動時間ポイント表示部49の部分をタッチすると作動時間に応じて付与される成形時間ポイント表示画面(図示せず)に遷移されるようになっている。他の成形サイクル数などの要素もそれぞれの表示部をタッチすると対応する画面に遷移されるようになっている。更に初期画面の右欄には過去のポイント獲得履歴の画面(図示せず)に遷移するためのポイント獲得履歴アイコン56と、過去のポイント使用履歴の画面(図示せず)に遷移するためのポイント使用履歴アイコン57が設けられている。
【0032】
図5に示されるのは機械別のポイント数表示画面58であって、ユーザ名表示部59と機械番号を表示する機械番号表示部60が設けられている。更にその下にはその機械別の各要素ごとのポイント数を表示する部分が設けられている。具体的には上の欄から順に作動時間に基づくポイントPの数値を表示する作動時間ポイント表示部61が設けられている。またその下の欄には成形サイクル数に基づくポイントPの数値を表示する成形サイクルポイント表示部62が設けられている。ここにおいて成形サイクル数の代わりに作動数、生産数などでもよい。
【0033】
更にその下の欄には省エネ指数に基づくポイントPの数値を表示する省エネ指数ポイント表示部63が設けられている。更にその下の欄には情報提供指数に基づくポイント数Pを表示する情報提供指数ポイント表示部64が設けられている。なおこれらのポイント表示部61,62,63,64は、ポイントPの対象となるものだけが表示される。図5ではこれらポイント表示部61,62,63,64は、棒グラフと数字で示されているが、円グラフなど別のグラフを用いたり、数字のみとするなど別の表示方法でもよい。
【0034】
次に具体的なポイントPの演算方法について、一例として作動時間のポイントPについて説明する。作動時間1分につき0.5ポイント付与との取り決めがある場合、1日に射出成形機12を8時間連続成形した場合に付与されるポイント数は240ポイントである。そして1年で250日、射出成形機12を稼働させた場合は、240×250=60,000がポイント数となる。ポイント数は図5に基づいて説明したように他の成形サイクル数などでも付与されるようにしてもよく、作動時間のみに対して付与されるようにしてもよい。
【0035】
更に前記ポイント表示部61,62,63,64の下方には当該射出成形機12の合計したポイントPの数値を表示する機械別の合計ポイント数を表示する合計ポイント表示部65が設けられている。そしてその右側の部分には、その機械の1日平均の獲得ポイント数を表示する1日平均ポイント表示部66と1月平均の獲得ポイント数を表示する1月平均ポイント表示部67が設けられている。
【0036】
また図示は省略するが、ポイント数獲得履歴画面では、ユーザUごとのポイント数の獲得状況が表やグラフで表示可能となっている。更にポイント数使用履歴画面では、ユーザUがいつどのような内容でポイントを使用したかが、時系列的に一覧表に表示されるようになっている。なお図4および図5等の端末装置24の設定表示部40のポイント表示は、射出成形機12の設定表示部17や図示しない統括用コンピュータの画面に、自動的に表示、または操作者によって表示されるものでもよい。また上記とは別に、端末装置24に管理装置21の機能を備えた管理プログラムの一部または全部を保有させるものでもよい。
【0037】
なお前記ポイントP等が付与されるユーザUの行動としては、射出成形機12等の装置購入時にポイントPが付与され、それも作動状況に応じて付与されるポイントP等と合算されるようにしてもよい。また作動状況に応じて付与されるポイントPとしては、負荷量に応じてポイントPが付くようにしてもよい。即ち金型重量が重い場合などは、省エネが達成できない状況であり、装置損耗も早くなる可能性があるのでポイントP等を付与するようにしてもよい。更には装置に不具合が発生した場合も通信により、不具合の回数または復旧までの時間に応じてポイントP等が付与されるようにしてもよい。
【0038】
上記のポイントPについては、次に射出成形機12の部品や新しい射出成形機12を購入する際にユーザUが支払う現金から減算されるものであり、射出成形機の製造装置メーカMと射出成形機のユーザUとの間のみでは現金と等価なものである。即ちこれに限定はされないが、本実施形態では1ポイントが1円となっている。各射出成形機ごとに集計されるポイントPはその射出成形機12のみの部品交換やメンテナンス品のために使用でき、新たに射出成形機12を購入する際にはユーザUの保有する製造装置メーカMの全ての射出成形機12のポイントPを合算して使用できるようにしてもよい。また経理上においてポイントPは、使用時に装置代金や部品代金から減額処理される。
【0039】
しかし製造装置メーカMからユーザUに付与される利得としては、ポイントPの他、現金(貸与金との相殺を含む)や、射出成形機12等の装置の部品の現物、樹脂、作動油、潤滑剤などの射出成形機12の作動時に発生する消耗品の現物であってもよい。更には製造装置メーカMの作業員によるメンテナンスなど役務の提供であってもよい。また利得は製造装置メーカMからユーザUに提供される特別な情報であってもよい。特別な情報には上記機械学習装置により解析されたデータなどが含まれる。更に利得はユーザUの作業員や作業グループに対するプレゼント(税制面において問題のない)であってもよい。従って利得とは換言すれば報酬と言ってもよい。
【0040】
これらのポイントP等の利得の演算方法については、射出成形機12の購入時またはポイント付与サービスの開始時に、製造装置メーカM(販売代理店等やメンテナンスサービス会社を含む)と、ユーザUの間で書面や端末画面を通じて取り決めが行われるものである。具体的には射出成形機12の作動時間に応じて獲得できるポイントPは、作動時間にどのような係数を乗算等してポイント数となるか、という点である。また他のポイントP等が得られる項目も同様の係数等の説明が行われる。このことによりユーザUは、射出成形機12をどのように作動させればどの程度のポイントPが得られるかのイメージを持つことができる。
【0041】
上記において製造装置の管理システム11の概要について記載してきたが、次にどのようにして該製造装置の管理システム11を利用して製造機械である射出成形機12の利用促進やユーザUと製造装置メーカMの連携促進を図るかについて製造装置の管理方法の説明をする。まず従来技術として記載した特許文献1のような課金方式の場合、複数の類似する装置を保有するユーザUにおいて、課金される装置と課金されない装置の両方がある場合、課金される装置の使用が敬遠されるのは当然である。しかし複数の類似する装置の中で、ユーザUがポイントP等の利得を受け取れる装置と、ポイントP等の利得を受け取れない装置の両方がある場合、ポイントP等の利得を受け取れる装置の使用が優先される可能性が高い。また特に作業者自身や作業グループが何か利得を受け取れる場合はその傾向が強くなると思われる。
【0042】
とりわけ1社のユーザUの中に、製造装置メーカM(A社)の射出成形機12と競合他社(B社)の射出成形機12置の両方がある場合は、ユーザUに製造装置メーカMの射出成形機12を長時間使用してもらうことは、製造装置メーカMにとって次のようなメリットがある。まず1番大きいメリットは、ユーザUの作業員による製造装置メーカMの射出成形機12の使用回数や使用時間が増加することにより、より一層使い方に習熟し、愛着を持ってもらえるという点である。次の射出成形機12等の装置の購入時には実際の装置を作動させる作業員の声も反映される場合が多いから、作業員に製造装置メーカMの射出成形機12の購入を推奨してもらえる可能性が高まる。
【0043】
更に製造装置メーカMの射出成形機12を使用時間が増加することにより、部品交換までの頻度や、装置入替までの期間が短くなる場合があり、そのことが次の部品販売等に繋がる場合がある。更にはユーザUの手元に貯まったポイントPは、製造装置メーカMに対する支払等にしか使用できないので、次の製造装置メーカMの装置やその部品を購入する際の動機付けになる。
【0044】
次に省エネ状況の指数とポイントP等の利得の付与の関係について説明する。昨今では各ユーザUに対するカーボンニュートラルの要請は強まっており、製品製造時の省エネルギー化は急務である。また製品製造時に電気代が削減できれば生産コストが抑制できるという効果もある。そのような状況の中で、同じ成形ができて、省エネルギー効果の大きい射出成形機12とそうでない射出成形機12の両方がユーザUにある場合、ユーザUとしては当然、省エネルギー効果の大きい射出成形機12の使用を選択したい。しかしながらどの射出成形機12の省エネルギー効果が大きいかについて作業者の間で周知されていなかったり、何か省エネルギー効果の大きい射出成形機12を使用することを躊躇する理由がごく僅かでもあると、他の総エネ効果の小さい射出成形機12が使用されてしまうことがある。
【0045】
それに対して省エネルギー効果の大きい射出成形機12を使用すると省エネ状況の指数に関連してポイントP等を受け取れるようにしておけば、省エネルギー効果の大きい装置が選択使用される可能性が高まる。また特に与えられる利得を作業者自身や作業グループへのプレゼントにしておけばその可能性は高まる。そして省エネルギー効果の大きい射出成形機12等の装置の利用が高まれば、ユーザUはポイントPが受領できるともに、CO2の削減量の情報といった利得情報も得られるようにしておけば、複数のメリットを享受できる。省エネ状況の指数と関連するポイントP等の付与については、同じ1台の射出成形機12の中で作動状況を変化させることによりポイントP等の付与を行ってもよい。一例としては、加熱シリンダの昇温のさせ方や計量時のスクリュ回転のさせ方などで従来または一般的な方法よりも、省エネ効果の大きい方法で射出成形機12を作動させた場合はポイントP等が受け取れるようにしてもよい。
【0046】
更には省エネ効果の大きい射出成形機12等の製造装置は、そうでない製造装置よりも相対的に購入価格が高額である場合もあるが、新規に装置購入を検討する場合に、購入後の作動時のポイント付与のことも考慮して省エネ効果の大きい装置を選択してもらえるという場合も考えられる。また古い射出成形機12よりも最新の射出成形機12は省エネ効果が大きい場合が多いが、購入後の作動時のポイント付与のことも考慮して装置買い替え需要に繋がる可能性がある。
【0047】
次に製造装置メーカM(販売代理店等やメンテナンスサービス会社を含む)の射出成形機12等の営業業務や修理業務を行う者の視点での製造装置の管理システム11のメリットを説明する。製造装置メーカMの側の管理装置21のコンピュータ22の設定表示部44には、各ユーザUの各射出成形機12ごとのポイントP、または各ユーザUごとのポイントPが把握可能となっている。そのため営業業務や修正業務を行う者は、前記ポイントPを有効活用する提案ユーザUに対して行うことができる。また特に製造装置メーカMの営業業務や修理業務を行う者は、ポイントP数を表示可能であって移動可能な端末装置24を図1では一点鎖線の円弧と矢印で記載されるようにユーザUに持参することにより、ユーザUの担当者に対して前記端末装置24を示しながら各種の提案を行うことも可能となる。
【0048】
また製造装置メーカMからユーザUへ付与されるポイントPの数は、射出成形機12ごとに異なるようにしてもよい。そのことにより装置購入時や購入後の作動時のポイント数も含めて、どの機種の購入が有利であるかを提案することができる。更に製造装置メーカMからポイントPが付与される製造装置の管理システム11は、全ての製品に適用しないといけない訳ではなく特定の製品や特定の国、地域などのみに適用するようにしてもよい。その場合、製造装置メーカMが自社にとって競合他社よりも弱い製品群や今後強化したい製品群、または弱い国・地域、今後強化したい国、地域のみというような特定のターゲットのみにポイントPを付与する製造装置の管理システム11を実施してもよい。更に経時的な面においても、ポイントPが付与される比率は毎日一律に同じでなくてもよい。一例としてキャンペーンなど時期には同じ作動状況に対して付与されるポイント数が変更されるようにすることも考えられる。
【0049】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや上記の各実施形態の一部部分を個別に組み合わせたものについても適用されることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0050】
11 製造装置の管理システム
12 射出成形機
16 制御装置
21 管理装置
23 サーバ装置
24 移動端末
M 製造装置メーカ
P ポイント
U ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5