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特開2023-115679車両用の電源システム及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115679
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】車両用の電源システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230814BHJP
   H02J 7/16 20060101ALI20230814BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H02J7/00 302D
H02J7/16 Y
B60R16/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018037
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
【テーマコード(参考)】
5G060
5G503
【Fターム(参考)】
5G060AA05
5G060CA02
5G503AA07
5G503BA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA08
5G503CB16
5G503DA07
5G503DA08
5G503DA13
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両減速時の回生エネルギーを効率よく回収することにより省エネルギー化を図りつつ、駐車開始時のSOCを高くすることで、蓄電装置の過放電を抑制する車両用の電源システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】車両用の電源システムSは、蓄電装置50と、電力装置30と、制御装置41と、を含む。制御装置41は、車両走行開始から目的地に到達するまでの車両走行期間のうち、車両が目的地に到達する直前の第2期間を除く、少なくとも一部の第1期間、蓄電装置50の目標SOCを第1目標値SOC1として、蓄電装置50の充放電量を電力装置30により制御し、第2期間、蓄電装置50の目標SOCを第2目標値SOC2として、蓄電装置50の充放電量を電力装置30により制御する。第1目標値SOC1は、満充電未満の所定値であり、第2目標値SOC2は、第1目標値SOC1よりも高い値である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電源システムであって、
車両に搭載された蓄電装置と、
車両に搭載された電力装置と、
車両に搭載された制御装置と、を含み、
前記蓄電装置は、
外部端子と、
セルと、
前記外部端子から前記セルまでの電流経路に位置する開閉器と、
前記セルの状態を監視する監視基板と、を含み、
前記セルは、車両駐車中、車両に搭載された負荷に対して放電し、
前記制御装置は、
車両走行開始から目的地に到達するまでの車両走行期間のうち、車両が目的地に到達する直前の第2期間を除く、少なくとも一部の第1期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第1目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御し、
前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第2目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御し、
前記第1目標値は、満充電未満の所定値であり、
前記第2目標値は、前記第1目標値よりも高い値である、車両用の電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用の電源システムであって、
前記セルは、リチウムイオン二次電池セルである、車両用の電源システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用の電源システムであって、
前記蓄電装置は、
前記セルを電源として動作し、前記セルの状態を管理する管理装置を備え、
前記管理装置は、
車両走行中、第1モードで動作し、
車両駐車中、前記第1モードよりも消費電力の低い第2モードで動作する、車両用の電源システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両用の電源システムであって、
前記制御装置は、目的地までの距離が閾値以下になった場合、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を前記第1目標値から前記第2目標値に変更する、車両用の電源システム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両用の電源システムであって、
前記制御装置は、目的地までの残り時間が閾値以下になった場合、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を前記第1目標値から前記第2目標値に変更する、車両用の電源システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の車両用の電源システムであって、
前記制御装置は、
前記車両が所定条件を満たさない場合、
前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を前記第1目標値又は前記第2目標値に制御し、
前記車両が所定条件を満たす場合、
前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を前記第2目標値よりも高い第3目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御する、車両用の電源システム。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の車両用の電源システムであって、
前記蓄電装置は、
前記セルの状態を管理する管理装置を備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置の管理装置である、車両用の電源システム。
【請求項8】
車両用の電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、
車両に搭載された蓄電装置と、
車両に搭載された電力装置と、を含み、
車両走行開始から目的地に到達するまでの車両走行期間のうち、車両が目的地に到達する直前の第2期間を除く、少なくとも一部の第1期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第1目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御し、
前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第2目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御し、
前記第1目標値は、満充電未満の所定値であり、
前記第2目標値は、前記第1目標値よりも高い値である、車両用の電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置のSOC制御に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される始動用や補機用のバッテリは、保護装置の1つとして、リレー等の開閉装置を有する場合がある。SOCが所定値以下になった場合、開閉装置をオープンして電流を遮断することで、バッテリが過放電になることを抑制することが出来る。特許文献1は、開閉装置(電流遮断装置)を有するバッテリを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-5985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
省エネルギー化の観点から、車両減速時に発生する回生エネルギーを蓄電装置に充電して回収することが求められている。走行中、蓄電装置の目標SOCを、例えば70%にして、容量の空きを作ることで、回生充電を効率よく行うことが出来る。
【0005】
一方で、例えば、始動用や補機用の蓄電装置は、駆動用と異なり、駐車中も車両に搭載された負荷に対して放電する場合がある。そのため、SOCが70%に制御されている状態で、駐車すると、駐車中に放電可能な電気量が少なくなり、過放電になりやすい。
【0006】
蓄電装置が過放電すると、開閉器が動作して、蓄電装置の使用が禁止される。過放電後の蓄電装置を使用するには、開閉器を閉じて充電する必要があり、手間がかかる。蓄電装置のSOCを管理する場合に限らず、蓄電量を管理する場合も、同じ課題がある。
本発明の課題は、車両減速時の回生エネルギーを効率よく回収することにより省エネルギー化を図りつつ、駐車開始時のSOCや蓄電量を高くして蓄電装置の過放電を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両用の電源システムは、車両に搭載された蓄電装置と、車両に搭載された電力装置と、車両に搭載された制御装置と、を含む。
【0008】
前記蓄電装置は、外部端子と、セルと、前記外部端子から前記セルまでの電流経路に位置する開閉器と、前記セルの状態を監視する監視基板と、を含む。前記セルは、車両駐車中、車両に搭載された負荷に対して放電する。
【0009】
前記制御装置は、車両走行開始から目的地に到達するまでの車両走行期間のうち、車両が目的地に到達する直前の第2期間を除く、少なくとも一部の第1期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第1目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御し、前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第2目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御する。
【0010】
前記第1目標値は、満充電未満の所定値であり、前記第2目標値は、前記第1目標値よりも高い値である。
【0011】
本技術は、車両用電源システムの制御方法や、制御プログラムに適用することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本技術は、車両減速時の回生エネルギーを効率よく回収することにより省エネルギー化を図りつつ、駐車開始時のSOCや蓄電量を高くすることで、蓄電装置の過放電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自動車の側面図
図2】バッテリの分解斜視図
図3】セルの平面図
図4図3のA-A線断面図
図5】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図6】目的地までの距離と残り時間を示す図
図7】目標SOCを示す図
図8】バッテリの充放電制御フローチャート
図9】バッテリのSOC推移を示すグラフ
図10】管理装置の動作モードを示す図
図11】バッテリの充放電制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
車両用の電源システムの概要を説明する。車両用の電源システムは、車両に搭載された蓄電装置と、車両に搭載された電力装置と、車両に搭載された制御装置と、を含む。
【0015】
前記蓄電装置は、外部端子と、セルと、前記外部端子から前記セルまでの電流経路に位置する開閉器と、前記セルの状態を監視する監視基板と、を含む。前記セルは、車両駐車中、車両に搭載された負荷に対して放電する。
【0016】
前記制御装置は、車両走行開始から目的地に到達するまでの車両走行期間のうち、車両が目的地に到達する直前の第2期間を除く、少なくとも一部の第1期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第1目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御し、
前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第2目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御する。
【0017】
前記第1目標値は、満充電未満の所定値であり、前記第2目標値は、前記第1目標値よりも高い値である。
【0018】
この構成は、車両減速時の回生エネルギーを効率よく回収しつつ、駐車開始時のSOC(又は蓄電量)を高くすることができる。そのため、過放電まで余裕があり、長時間の放電、長時間の駐車が可能となる。また、蓄電装置が過放電に到達し難くなるため、開閉器がオープン制御されることを抑制でき、駐車中の車両を始動する際に、余分な手間が掛らず、使い勝手がよい。
【0019】
監視基板はセルを電源として動作する場合があることから、監視基板を備えた蓄電装置は、鉛蓄電池など、監視基板を備えていない蓄電装置に比べて、駐車中の消費電力が多く、過放電に至り易い。監視基板を備えた蓄電装置に、本技術を適用することで、駐車中の消費電力が多く過放電に至り易い、監視基板を備えた蓄電装置が、過放電になることを抑えることが出来る。過放電は、セルを劣化させる要因の一つであり、過放電により劣化が進むと、蓄電装置を交換する必要がある、監視基板を備えた蓄電装置は、通信機能を有している場合が多く、販売元での交換が必要であることから、監視基板を備えていない蓄電装置に比べて、交換が容易でない、という問題がある。本技術を、監視基板を備えた蓄電装置に適用することで、過放電に伴うセルの劣化を抑制し、監視基板を備えた蓄電装置の交換を避けることが可能となる。
【0020】
前記セルは、リチウムイオン二次電池セルでもよい。リチウムイオン二次電池セルは過放電後の充電により銅の析出が発生する可能性がある。この技術をリチウムイオン二次電池セルに適用することで、過放電後の充電による電析発生を抑制することが出来る。
【0021】
前記蓄電装置は、前記セルを電源として動作し、前記セルの状態を管理する管理装置を備えてもよい。前記管理装置は、車両走行中、第1モードで動作し、車両駐車中、前記第1モードよりも消費電力の低い第2モードで動作してもよい。この構成は、モードの切り換えにより、蓄電装置の、駐車中の消費電力を抑えることが出来る。モードの切り換えを、目標SOCの変更制御(又は目標蓄電量の変更制御)と併用することで、車両駐車中、蓄電装置が過放電に一層到達し難くなる。
【0022】
前記制御装置は、目的地までの距離が閾値以下になった場合、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第1目標値から前記第2目標値に変更してもよい。この構成は、車両の走行中、現在地から目的地までの距離が閾値未満になると、目標値が変更され、蓄電装置のSOC(又は蓄電量)は第2目標値に制御されるから、蓄電装置の駐車開始時のSOC(又は蓄電量)を、高くすることが出来る。第2目標値は、第1目標値よりも高く、高SOC(又は高蓄電量)であるため、セルの劣化が進みやすい。この構成は、第2目標値の適用によりセルが高SOC帯(又は高蓄電量帯)に属する区間を、目的値までの距離が閾値以下の区間に、制限できる。そのため、第2目標値の適用を上記区間に制限しない場合に比べて、セルの劣化を抑制することが出来る。
【0023】
前記制御装置は、目的地までの所要時間が閾値以下になった場合、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を第1目標値から第2目標値に変更してもよい。この構成は、車両の走行中、現在地から目的地までの所要時間が閾値未満になると、目標値が変更され、蓄電装置のSOC(又は蓄電量)は第2目標値に制御されるから、蓄電装置の駐車開始時のSOC(又は蓄電量)を、高くすることが出来る。第2目標値は、第1目標値よりも高く、高SOC(又は高蓄電量)であるため、セルの劣化が進みやすい。この構成は、第2目標値の適用によりセルが高SOC帯(又は高蓄電量帯)に属する時間を、目的値までの所要時間が閾値以下の時間帯に、制限できる。そのため、第2目標値の適用を上記時間帯に制限しない場合に比べて、セルの劣化を抑制することが出来る。
【0024】
前記制御装置は、前記車両が所定条件を満たさない場合、前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を前記第1目標値又は前記第2目標値に制御してもよい。前記車両が所定条件を満たす場合、前記第2期間、前記蓄電装置の目標SOC又は目標蓄電量を前記第2目標値よりも高い第3目標値として、前記蓄電装置の充放電量を前記電力装置により制御してもよい。本技術を適用することで、蓄電装置が駐車中に過放電になることを抑制することが出来る。所定条件は、以下でもよい。
【0025】
(A)前回駐車時に蓄電装置から車両に搭載された負荷に放電した暗電流が所定値以上の場合
(B)過去に長期駐車した履歴のある場所が目的地である場合
(C)制御装置のソフトウエアが駐車中にアップデートされる場合
【0026】
<実施形態1>
1.自動車10の構成
図1は自動車の側面図である。自動車10は、駆動装置としてエンジン20を有する。図1は、エンジン20及び車両に搭載されたバッテリ50のみ図示し、自動車10を構成する他の部品は省略している。自動車10は、車両の一例である。
【0027】
車両に搭載されたバッテリ50は、蓄電装置の一例である。自動車10は、エンジン20(内燃機関)に代えて、車両駆動用の駆動モータ及び蓄電装置を搭載してもよい。
【0028】
バッテリ50は、図2に示すように、組電池60と、監視基板100と、収容体71を備える。バッテリ50は、エンジン始動用又は補機用である。バッテリ50は、定格12V(低圧用)である。
【0029】
収容体71は、本体73と蓋体74とを備えている。本体73と蓋74は、合成樹脂製である。本体73は有底筒状である。本体73は、底面部75と、4つの側面部76とを備える。4つの側面部76によって、本体73の上端に、開口部77が形成される。
【0030】
収容体71は、組電池60と監視基板100を収容する。監視基板100は、プリント基板上に各種部品(開閉器53、電圧検出部110や管理装置120等)を搭載している。監視基板100は、図2に示すように組電池60の、例えば上方に隣接して配置されている。代替的に、監視基板100は、組電池60の側方に隣接して配置されていてもよい。
【0031】
蓋体74は、本体73の開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。監視基板100は、収容体71の本体73に代えて、蓋体74内に(例えば突出部79内に)収容されていてもよい。
【0032】
組電池60は、複数のセル62を有する。図4に示すように、セル62は、直方体形状(プリズマティック)のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。セル62は、例えば、リチウムイオン二次電池セルである。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0033】
電極体83は、詳細は図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極板と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極板との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。
【0034】
これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極板と正極板とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。電極体83は、巻回タイプのものに代えて、積層タイプのものであってもよい。
【0035】
正極板には正極集電体86を介して正極端子87が、負極板には負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とを有する。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極板又は負極板に接続されている。
【0036】
正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらが組み付けられている。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、図3に示すように、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0037】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、安全弁である。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限を超えた場合に、開放して、ケース82の内圧を下げる。
【0038】
図5を参照して、自動車10に搭載された電源システムSを説明する。電源システムSは、車両発電装置30と、車両ECU41と、無線通信部43と、自動車10に搭載されたバッテリ50とを含む。
【0039】
車両発電装置30は、車両発電機31と整流器33と調整部35とを含む。車両発電機31は、エンジン20の動力により発電する交流発電機である。整流器33は、車両発電機31の出力する電力を、整流して交流から直流に変換する。
【0040】
調整部35は、車両発電装置30の出力電力Pc[kW]を調整する。出力調整は、車両発電機31の出力電圧Vcを調整してもよいし、出力電流Icを制御してもよい。車両発電装置30は、電力Pcを出力する電力装置の一例である。
【0041】
車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)41は、通信線45を介して車両発電装置30と通信可能に接続され、通信線46を介してバッテリ50と通信可能に接続されている。図5に示す符号72は、通信線46を接続するためのコネクタである。また、車両ECU41は、無線通信部43を介して、自動車外の外部装置との間で、データを送受信することができる。
【0042】
車両ECU41は、電源マネジメント用であり、自動車10に搭載されたバッテリ50の充放電を制御する。車両ECU41は、電源マネジメントに加え、エンジン等の駆動系も制御してもよい。車両ECU41は1つに限らず、複数でもよい。車両ECU41は、外部制御装置である。外部はバッテリ外部の意味である。車両ECU41は、本発明の「制御装置」の一例である。
【0043】
バッテリ50は、開閉器53と、組電池60と、電流検出部54と、電圧検出部110と、管理装置120と、温度センサ115と、を備える。開閉器53、電圧検出部110や管理装置120は、監視基板100に搭載されている。
【0044】
組電池60のセル62は、例えば12個あり(図2参照)、3並列で4直列に接続されている。図5は、並列に接続された3つのセル62を1つの電池記号で表している。セルは繰り返し充放電可能な蓄電セルである。セルは、プリズマティックセルに限定はされず、円筒型セルであってもよいし、ラミネートフィルムケースを有するパウチセルであってもよい。
【0045】
組電池60の正極は、パワーライン55Pにより、正極の外部端子51と接続されている。組電池60の負極は、パワーライン55Nにより、負極の外部端子52に接続されている。
【0046】
外部端子51、52は、バッテリ50の、自動車10(一般負荷25や車両発電装置30、車両ECU41)との接続用端子である。バッテリ50を、外部端子51、52を介して、一般負荷25や車両発電装置30、車両ECU41に電気的に接続することが出来る。
【0047】
また、組電池60の両極は、内部電源線101、102を介して、監視基板100に接続されており、監視基板100への電力供給も行う。
【0048】
開閉器53は、組電池60の正極に位置し、正極のパワーライン55Pに設けられている。開閉器53は、リレー等の機械式接点を有するスイッチを用いることが出来る。また、FETなどの半導体スイッチを用いることが出来る。
【0049】
開閉器53は、正常時、CLOSE状態(normally close)に制御される。バッテリ50に異常があった場合、開閉器53をOPENし、電流Iを遮断することで、バッテリ50を保護することが出来る。異常には、過電圧、過電流、過充電、過放電が含まれる。
【0050】
電流検出部54は、組電池60の電流I[A]を検出する。電流検出部54は、シャント抵抗でもよい。抵抗式の電流検出部54は、電流検出部54の両端電圧に基づいて、組電池60の電流Iを計測することができる。抵抗式の電流検出部54は、電圧の極性(正負)から放電と充電を判別できる。代替的に、電流検出部54は、磁気センサでもよい。
【0051】
電圧検出部110は、信号線によって、各セル62の両端にそれぞれ接続され、各セル62のセル電圧Vsを計測する。また、各セル62のセル電圧Vsから組電池60の総電圧Vtを計測する。組電池60の総電圧Vtは、直列に接続された4つのセル62の合計電圧である。温度センサ115は、組電池60に取り付けられており、組電池60あるいはその周囲の温度を検出する。
【0052】
管理装置120は、演算機能を有するCPU121と、記憶部であるメモリ123と、を含む。管理装置120は、電流検出部54、電圧検出部110、温度センサ115の出力に基づいて、バッテリ50の状態を監視する。つまり、組電池60の温度T、電流I、総電圧Vtを監視する。
【0053】
管理装置120は、組電池60の電流Iに基づいて、組電池60のSOC[%]を推定する。
【0054】
SOC(state of charge:充電状態)は、満充電蓄電量[Ah]に対する蓄電量[Ah]の比率であり、下記の(1)式にて表される。
【0055】
SOC=(Cr/Co)×100・・・・・・・・・・(1)
Coは組電池の満充電蓄電量(満充電容量)、Crは組電池の蓄電量(組電池に蓄えられている電気量であり、残存容量とも言う)である。
【0056】
SOCは、下記の(2)式で示すように、電流Iの時間に対する積分値に基づいて推定することが出来る。電流Iの符号を、充電時はプラス、放電はマイナスとする。
【0057】
SOC=SOCo+100×(∫Idt/Co)・・・(2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0058】
メモリ123は、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性の記憶媒体である。メモリ123には、組電池60の状態を監視する監視プログラム及び監視プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。プログラムは、CD-ROM等の記録媒体に記憶して使用、譲渡、貸与等されてもよい。プログラムは、電気通信回線を用いて配信されてもよい。
【0059】
バッテリ50には、配線23を介して、一般負荷25、車両発電装置30、車両ECU41及びカーナビゲーション装置42が接続されている。
【0060】
一般負荷25は、エンジン始動装置や補機類でもよい。エンジン始動装置はエンジンを始動するモータである。補機類は、ヘッドライド、パワーステアリング機構、エアコン、オーディオなどである。
【0061】
カーナビゲーション装置42は、CPU42Aと、データ記憶部42Bと、第1受信部42Cと、第2受信部42Dと、表示パネル42Eとを含む。データ記憶部42Bは、地図情報を記憶する。第1受信部42Cは、GPS衛星より、GPS情報(自動車10の位置情報)を受信する。第2受信部42Dは、情報サービスセンターから、道路情報を受信する。
【0062】
ドライバーは、表示パネル42Eに対するパネル操作により、自動車10の目的地Gを入力できる。カーナビゲーション装置42は、データ記憶部42Bの地図情報を用いて、目的地Gまでのルートを検索し、表示パネル42Eに表示する。カーナビゲーション装置42は、走行中、第1受信部42Cと第2受信部42Dの受信情報に基づいて、自動車10の位置情報や交通情報を取得し、現在地から目的地Gまでの距離Xと、目的地Gまでの所要時間Txをリアルタイムで算出する(図6参照)。算出結果は、表示パネル42Eに表示される。
【0063】
2.車両ECU41によるバッテリ50の充放電制御
車両発電装置30は走行中、エンジン20の動力の一部を電気エネルギーに変換することにより発電する。車両発電装置30の出力電力Pc[kW]が自動車10の電気負荷量(一般負荷25、車両ECU41、カーナビゲーション装置42の負荷量)を上回っている場合、車両発電装置30によりバッテリ50を充電することが出来る。車両発電装置30の出力電力Pc[kW]が自動車10の電気負荷量よりも小さい場合、バッテリ50は放電し、電力の不足を補う。
【0064】
車両ECU41は、車両走行中、車両発電装置30の出力電力Pc[kW]と自動車10の電気負荷量[kW]のバランスをコントロールすることにより、バッテリ50のSOCを制御する。
【0065】
車両ECU41は、車両走行中、バッテリ50の目標SOCを第1目標値SOC1として、バッテリ50の充放電量を制御する。SOC1は、図7に示すように、満充電未満(100%未満)の所定値である。SOC1は、一例として、70%である。
【0066】
第1目標値SOC1を、満充電未満(100%未満)にすることで、空き容量Eを確保できる。そのため、自動車10の減速に伴う回生エネルギーを、バッテリ50に充電して効率よく回収することが出来る。回生エネルギーの回収により、自動車10の省エネルギーに貢献することが出来る。
【0067】
車両駐車中、エンジン停止に伴い、車両発電装置30は発電を停止する。車両駐車中、バッテリ50は、充電されない状態となり、車両ECU41等の特定負荷に対して、放電のみ行う状態となる。特定負荷は、車両駐車中に、電力を消費する負荷である。特定負荷は、車両ECU41の他に、セキュリティ機器などがある。
【0068】
車両駐車中、バッテリ50は、自動車10の特定負荷に対して放電するから、SOCは時間経過とともに減少する。バッテリ50の過放電を回避するには、駐車開始時のSOCを高くして、蓄電量を多くしておくことが望ましい。
【0069】
車両ECU41は、目的地Gに到達する直前の第2期間、バッテリ50の目標SOCを第2目標値SOC2として、バッテリ50の充放電量を制御する。第2目標値SOC2は、図7に示すように、第1目標値SOC1よりも高い値である。SOC2は、一例として、100%である。SOC2は、SOC1よりも高い値であれば、100%以外でもよい。
【0070】
バッテリ50の目標SOCを、第1目標値SOC1から第2目標値SOC2に変更することにより、駐車開始時のSOCを高くすることが出来る。
【0071】
駐車開始時のSOCを高くすることで、図7に示すように、放電可能な電気量Qを多くして、過放電閾値Kまで余裕ができることから、長時間の放電、長時間の駐車が可能となる。また、駐車中、バッテリ50が過放電に到達し難くなるため、開閉器53がオープンすることを抑制でき、自動車10を始動する際に、余分な手間が掛らない。
【0072】
目標SOCの変更は段階的でもよい。例えば、SOC1=70%に対して、SOC1.5=85%、SOC2=100%として、SOC1からSOC2まで、SOCを段階的に調整してもよい。目標SOCの変更を段階的にすることで、SOCの調整中、充放電量の変化を小さくすることが出来る。
【0073】
図8は、自動車10に搭載されたバッテリ50の充放電制御フローチャートである。充放電制御フローチャートは、S10~S60の6ステップから構成されている。
【0074】
自動車10の走行中、車両ECU41は、バッテリ50と通信しており、管理装置120から組電池60の管理情報を取得する。組電池60の管理情報は、組電池60のSOC、温度、電流I、総電圧Vtの情報を含む。
【0075】
ドライバーは、走行開始前に、ナビゲーション装置42に目的地Gの情報を入力する。その後、エンジン20の始動により、自動車10は目的地Gに向けて走行を開始する。
【0076】
自動車10の走行開始により、充放電制御処理がスタートすると、車両ECU41は、ナビゲーション装置42にアクセスして、現在地から目的地Gまでの距離Xの情報を取得する(S10)。
【0077】
車両ECU41は、目的地Gまでの距離Xの情報を取得すると、現在地から目的地Gまでの距離Xが10km以上か判定する(S20)。
【0078】
目的地Gまでの距離Xが10km以上の場合(S20:YES)、車両ECU41は、目標SOCを70%にして、バッテリ50の充放電量を制御する(S30)。
【0079】
目的地Gまでの距離Xが10km未満の場合(S20:NO)、車両ECU41は、目的地Gまでの距離Xが5km以上か、判定する(S40)。
【0080】
目的地Gまでの距離Xが5km以上の場合(S40:YES)、車両ECU41は、目標SOCを85%にして、バッテリ50の充放電量を制御する(S50)。
【0081】
目的地Gまでの距離Xが5km未満の場合(S40:NO)、車両ECU41は、目標SOCを100%にして、バッテリ50の充放電量を制御する(S60)。
【0082】
充放電制御フローチャートは、S10~S60を1サイクルとして、自動車10の走行中、所定のサイクルで実行され、自動車10が目的地Gに到達すると、終了する。
【0083】
図9は、バッテリ50のSOC推移を示すグラフである。自動車10の走行開始時点t0において、目的地Gまでの距離Xは、例えば30kmであり、目標SOCは70%に設定されている。
【0084】
この例では、走行開始時点t0において、バッテリ50の目標SOCは70%、実際のSOCは70%以上であることから、走行開始後、車両ECU41は、自動車10の電気負荷量よりも車両発電装置30の出力電力Pcが少なくなるように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、時刻t0以降、バッテリ50は放電し、SOCは低下する。
【0085】
時刻t1にて、バッテリ50のSOCが目標SOCの70%まで低下すると、車両ECU41は、それ以降、自動車10の電気負荷量と車両発電装置30の出力電力Pcがバランスするように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は、放電も充電もしない状態になり、目標SOCの70%を維持する。
【0086】
時刻t2~時刻t3は、自動車10の減速期間であり、車両ECU41は、車両発電装置30の出力電力Pcを最大にする。バッテリ50は、自動車減速時の車両発電機31の発電エネルギー(回生エネルギー)により、充電され、SOCは上昇する。
【0087】
回生エネルギーの回収が終了する時刻t3以降、車両ECU41は、自動車10の電気負荷量よりも車両発電装置30の出力電力Pcが少なくなるように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は放電し、SOCは低下する。
【0088】
時刻t4にて、バッテリ50のSOCが目標SOCの70%まで低下すると、車両ECU41は、それ以降、自動車10の電気負荷量と車両発電装置30の出力電力Pcがバランスするように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は、放電も充電もしない状態になり、目標SOCの70%を維持する。
【0089】
目的地Gまでの距離Xが10km未満になる時刻t5以降、車両ECU41は、バッテリ50の目標SOCを70%から85%に変更する。
【0090】
時点t5において、バッテリ50のSOCは70%であり、変更後の目標SOC85%より少ない。そのため、車両ECU41は、自動車10の電気負荷量よりも車両発電装置30の出力電力Pcが多くなるように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は、車両発電装置30の出力電力Pcにより充電され、SOCが上昇する。
【0091】
時刻t6にて、バッテリ50のSOCが目標SOCの85%まで上昇すると、車両ECU41は、それ以降、自動車10の電気負荷量と車両発電装置30の出力電力Pcがバランスするように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は、放電も充電もしない状態になり、目標SOCの85%を維持する。
【0092】
目的地Gまでの距離Xが5km未満になる時刻t7以降、車両ECU41は、バッテリの目標SOCを85%から100%に変更する。
【0093】
時点t7において、バッテリ50のSOCは85%であり、変更後の目標SOC100%より少ない。そのため、車両ECU41は、自動車10の電気負荷量よりも車両発電装置30の出力電力Pcが多くなるように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は、車両発電装置30の出力電力Pcにより充電され、SOCが上昇する。
【0094】
時刻t8にて、バッテリ50のSOCが目標SOCの100%まで上昇すると、それ以降、車両ECU41は、自動車10の電気負荷量と車両発電装置30の出力電力Pcがバランスするように、車両発電装置30の出力電力Pcを調整する。これにより、バッテリ50は、放電も充電もしない状態になり、目標SOCの100%を維持する。
【0095】
時刻t9にて、自動車10は、搭載バッテリ50のSOCを100%に維持した状態で、目的地Gに到着し、駐車開始する。
【0096】
図9において、t0~t9は、車両走行開始から自動車10が目的地に到達するまでの車両走行期間Wである。車両走行期間Wのうち、t0~t2及びt3~t5までの期間T1、T3は、目標SOCがSOC1に設定される第1期間である。車両走行期間Wのうち、t5~t9の期間(車両が目的地に到達する直前の期間)T5は、目標SOCがSOC2に設定される第2期間である。
【0097】
3.効果説明
この構成では、車両減速時の回生エネルギーを効率よく、回収することにより省エネルギー化を図ることが出来る。駐車開始時点のSOCを高くすることで、駐車中に、バッテリ50が過放電になることを抑制することができる。
【0098】
監視基板100は組電池100を電源として動作する場合があることから、監視基板100を備えたバッテリ50は、鉛蓄電池など、監視基板100を備えていないバッテリに比べて、駐車中の消費電力が多く、過放電に至り易い。
【0099】
監視基板100を備えたバッテリ50に、本技術を適用することで、駐車中の消費電力が多く、過放電に至り易い、監視基板100を備えたバッテリ50が、過放電になることを抑えることが出来る。
【0100】
過放電は、セル62を劣化させる要因の一つであり、過放電により劣化が進むと、バッテリ50を交換する必要がある、監視基板100を備えたバッテリ50は、通信機能を有している場合が多く、販売元での交換が必要であることから、監視基板100を備えていない蓄電装置に比べて、交換が容易でない、という問題がある。本技術を、監視基板100を備えたバッテリ50に適用することで、過放電に伴うセル62の劣化を抑制し、監視基板100を備えたバッテリ50の交換を避けることが可能となる。
【0101】
第2目標値SOC2は、第1目標値SOC1よりも高く、高SOCであるため、セル62の劣化が進みやすい。この構成は、SOC2の適用によりセルが高SOC帯に属する区間を、第2期間(車両が目的地に到達する直前の期間)T5に制限する。そのため、SOC2の適用を第2期間T5に制限しない場合に比べて、セル62の劣化を抑制することが出来る。
【0102】
<実施形態2>
実施形態1では、目的地Gまでの距離Xを閾値と比較して、目標SOCを変更した。目的地Gまでの所要時間Txを閾値と比較して、目標SOCを変更してもよい。
【0103】
<実施形態3>
管理装置120は、組電池60を電源として動作する。管理装置120には、図10に示すように、第1モードと第2モードの2つの動作モードが設定されている。
【0104】
第1モードは、所定周期Nでバッテリ50の状態を監視するモード、第2モードは、監視機能の一部を停止して、管理装置120の電力消費を抑えるモードである。
【0105】
動作モードは、自動車10の状態変化により、遷移する。例えば、自動車10が走行中、停車中やアイドリングストップ中など駐車以外の第1状態の場合、管理装置120は、第1モードに移行する。自動車10が駐車中の第2状態の場合、管理装置120は第2モードに移行する。
【0106】
自動車10の状態に関する情報は、車両ECU41から通信により取得してもいいし、組電池60の電流値から判断してもよい。
【0107】
この構成は、管理装置120のモードの切り換えにより、バッテリ50の、駐車中の消費電力を抑えることが出来る。管理装置120のモードの切り換えを、目標SOCの変更制御と併用することで、駐車中、バッテリ50が、過放電に一層到達し難くなる。
【0108】
<実施形態4>
図11は、実施形態4の充放電制御フローチャートである。実施形態4の充放電制御フロートは、実施形態1の充放電制御フローチャートに対して、S40、S50を、S45S55に変更した点が相違する。以下、実施形態1との相違点を説明する。
【0109】
車両ECU41は、自動車10の走行開始後、目的地Gまでの距離Xが10km以上の場合を、目標SOCを70%として、バッテリ50の充放電量を制御する。目標SOC=70%は、本発明の「第1目標値」に相当する。
【0110】
車両ECU41は、自動車10の走行開始後、目的地Gまでの距離Xが10km未満になると、自動車10が所定の条件に該当しているか、判断する(S45)。
【0111】
所定の条件は、例えば、以下である。
(A)前回駐車時にバッテリ50から負荷に放電した暗電流が所定値以上の場合
(B)過去に長期駐車した履歴のある場所が目的地Gである場合
(C)車両ECU41のソフトウエアが駐車中にアップデートされる予定がある場合
【0112】
(A)は、電流検出部54により駐車中の暗電流を検出し、車両ECU41の内部メモリ41Aに、そのデータを記憶しておくことで、判断可能である。(B)は、自動車10の過去の駐車履歴(駐車場所、駐車時間、駐車日時)のデータを、車両ECU41の内部メモリ41Aに、記憶しておくことで、判断可能である。(C)は、ソフトウエアの管理サーバーから、ソフトウエアのアップデート情報(ソフトウエアの更新予定)の受信があるか否かにより、判断することが出来る。アップデート情報は無線通信部43を利用して受信が可能である。
【0113】
車両ECU41は、(A)~(C)のどれにも該当しない場合、自動車10は所定の条件に該当しないと、判断する(S45:NO)。
【0114】
車両ECU41は、自動車10が所定の条件に該当しないと判断した場合、目標SOCを、70%又は85%として、バッテリ50の充放電量を制御する(S55)。目標SOC=85%は本発明の「第2目標値」に相当する。
【0115】
車両ECU41は、(A)~(C)のうち、少なくともいずれか1つに該当する場合、自動車10は所定の条件に該当すると、判断する(S45:YES)。
【0116】
車両ECU41は、自動車10が所定の条件に該当すると判断した場合、自動車10が所定の条件に該当しない場合よりも、目標SOCを高くして、バッテリ50の充放電量を制御する(S60)。例えば、目標SOCを100%にして、バッテリ50の充放電量を制御する。目標SOC=100%は本発明の「第3目標値」に相当する。
【0117】
自動車10が所定条件を満たす場合、所定条件を満たさない場合に比べて、バッテリ50の駐車中の電力消費が多いことが予想される。自動車10が所定条件を満たす場合、所定条件を満たさない場合よりも目標SOCを高くすることで、所定条件を満たすバッテリ50が、駐車中に過放電になることを抑制することが出来る。
【0118】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0119】
(1)セル62は、リチウムイオン二次電池に限らず、他の非水電解質二次電池でもよい。セル62は、複数を直並列に接続する場合に限らず、直列の接続や、単セルでもよい。セル62は、二次電池に代えて、キャパシタを用いることも出来る。
【0120】
(2)実施形態では、自動車用の電源システムSを示したが、この技術を、自動二輪車など、自動車以外の車両に適用してもよい。
【0121】
(3)目標SOCの変更は、車両ECU41に限らず、バッテリ50の管理装置120にて、行ってもよい。例えば、目的地Gまでの距離Xや所要時間Txの情報を、車両ECU41からバッテリ50に送信し、送信される距離Xや所要時間Txの情報に基づいて、管理装置120にて、目標SOCを変更してもよい。この場合、管理装置120から車両ECU41に目標SOCのデータを送り、管理装置120は、車両ECU41を介して、バッテリ50の充放電量を制御してもよい。
【0122】
(4)第2期間T5の目標値SOCは、第1目標値よりも高い第2目標値に加えて、第2目標値よりも高い第3目標値があってもよい。第2目標値と第3目標値は、目的地Gに応じて、変えてもよい。例えば、駐車時間が短いことが予想される第1目的地の場合、SOCを低めに設定(第2目標値:一例として、80%)し、駐車時間が長いことが予想される第2目的地の場合、SOCを高めに設定(第3目標値一例として、100%)してもよい。駐車場所と駐車時間の過去の履歴から、ユーザの行動を分析して、目標値SOCの設定に反映させてもよい。目的地Gに応じてSOCを変えることで、搭載バッテリ50を過剰に充電することが無くなるので、自動車10の省ネルギー化に貢献できる。
【0123】
(5)実施形態では、充放電制御により、バッテリ50のSOC[%]を制御したが、SOCに代えて、バッテリ50の蓄電量Cr[Ah]を制御してもよい。
【0124】
(6)実施形態では、ナビゲーション装置42による自動車10の位置情報等を利用して、目的地Gまでの距離Xや所要時間Txを特定した。目的地Gまでの所要時間Txは、自動車10の走行パターンなどから判断してもよい。例えば、通勤用の自動車10など、走行時間(運転開始から目的地に到達するまでの時間)がほぼ一定の走行パターンの場合、運転開始からの経過時間で、目的地Gまでの所要時間Txを判断して、目標SOCや目標蓄電量(目標蓄電量)を変更してもよい。
【0125】
(7)実施形態では、電力装置の一例として、車両発電装置30を例示したが、電力装置は、電力の出力機能(バッテリ50の充電機能)を有していれば、別の装置でもよい。例えば、DCDCコンバータ(所定の高電圧をバッテリ用の低電圧に変換して出力する装置)でもよい。
【0126】
(8)実施形態1では、SOC1=70%、SOC2=100%としたが、SOC1、SOC2の数値は、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0127】
10 自動車
30 車両発電装置(車両電力装置)
41 車両ECU(制御部)
42 ナビゲーション装置
43 無線通信部
50 バッテリ(蓄電装置)
53 開閉器
60 組電池
120 管理装置(制御部)
S 電源システム
W 車両走行期間
T1、T3 第1期間
T5 第2期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11