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特開2023-115719搬送装置、搬送システム及び搬送制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115719
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送システム及び搬送制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/30 20060101AFI20230814BHJP
   B65G 47/24 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B65G47/30 B
B65G47/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018087
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潔人
【テーマコード(参考)】
3F081
【Fターム(参考)】
3F081AA01
3F081BC01
3F081BD14
3F081DA02
3F081EA03
(57)【要約】
【課題】搬送装置の簡易な構成と高精度な認識とを両立させて、被搬送物の搬送状況を認識する。
【解決手段】搬送装置は、被搬送物を搬送する搬送面を有し、搬送面を有する他の搬送装置と並置されて搬送面によって被搬送物の搬送路を形成する。搬送装置は、被搬送物が搬送面へ進入したことを検知する第1のセンサと、被搬送物が搬送面上に存在することを検知する第2のセンサと、被搬送物が搬送面上を搬送される搬送速度を検知する速度センサと、第1のセンサ、第2のセンサ、及び速度センサの検知によって得られたセンサ情報に基づいて、搬送面上における被搬送物の位置及び姿勢を判定する判定部と、を有する。第2のセンサは、搬送面上における被搬送物の搬送方向と平行でない検出軸を以って被搬送物の存在を検知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送する搬送面を有し、搬送面を有する他の搬送装置と並置されて前記搬送面によって前記被搬送物の搬送路を形成する搬送装置であって、
前記被搬送物が前記搬送面へ進入したことを検知する第1のセンサと、
前記被搬送物が前記搬送面上に存在することを検知する第2のセンサと、
前記被搬送物が前記搬送面上を搬送される搬送速度を検知する速度センサと、
前記第1のセンサ、前記第2のセンサ、及び前記速度センサの検知によって得られたセンサ情報に基づいて、前記搬送面上における前記被搬送物の位置及び姿勢を判定する判定部と、を有し、
前記第2のセンサは、
前記搬送面上における前記被搬送物の搬送方向と平行でない検出軸を以って前記被搬送物の存在を検知する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置が複数並置され、前記搬送面によって前記被搬送物の搬送路が形成されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記姿勢は、前記搬送方向に対する前記被搬送物の向きがなす角度である
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記判定部は、
前記第1のセンサによって前記被搬送物が前記搬送面へ進入したことが検知された後に、
前記第2のセンサによって前記被搬送物が前記搬送面上に存在することが検知された場合、前記センサ情報に基づいて前記搬送面上における前記被搬送物の位置及び姿勢を判定し、
所定時間が経過しても前記第2のセンサによって前記被搬送物が前記搬送面上に存在することが検知されない場合、エラー発生の通知を出力する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項5】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
他の前記搬送装置との間で前記センサ情報を送受信する通信部を有し、
前記判定部は、
自身の前記搬送装置の前記センサ情報と、隣接する他の前記搬送装置の前記センサ情報とに基づいて、前記搬送面上における前記被搬送物の位置及び姿勢を判定する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項6】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、前記搬送方向へ向かって前記搬送面の両側の少なくとも一方に、前記被搬送物の姿勢を制御する姿勢制御部材を有し、
前記判定部は、
前記姿勢が許容範囲を超えているか否かを判定し、許容範囲を超えている場合に、前記搬送面を制御して前記被搬送物を前記姿勢制御部材へ移動させて押圧し、前記姿勢を許容範囲内へと補正する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、前記搬送方向へ向かって前記搬送面の両側に前記姿勢制御部材を有し、
前記判定部は、
前記姿勢に応じて、前記搬送面を制御して前記被搬送物を何れか一方の前記姿勢制御部材へ移動させて押圧し、前記姿勢を許容範囲内へと補正する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項8】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記判定部は、
前記位置の誤差が許容範囲を超えているか否かを判定し、許容範囲を超えている場合に、前記搬送面を制御して、前記搬送速度を変化させ、又は、前記被搬送物を前記搬送方向に対する直交方向へ移動させて、前記位置の誤差を許容範囲内へと補正する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送システムであって、
前記位置は、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサによって得られたセンサ情報に基づき求められる前記被搬送物の中心が実際に位置する座標情報であり、
前記判定部は、
前記位置と、前記速度センサによって得られたセンサ情報に基づき求められる前記被搬送物が位置すると想定される座標情報との差分が閾値を超える場合に、前記位置の誤差が許容範囲を超えると判定する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項10】
請求項2に記載の搬送システムであって、
前記搬送装置は、
他の前記搬送装置との間で前記センサ情報を送受信する通信部を有し、
少なくとも一つの前記搬送装置は、
前記被搬送物の形状を計測する第3のセンサをさらに有し、
前記第3のセンサによって得られたセンサ情報を前記通信部を介して他の前記搬送装置へ送信し、
他の前記搬送装置の前記判定部は、
前記第1のセンサ、前記第2のセンサ、前記速度センサ、及び前記第3のセンサによって得られたセンサ情報に基づいて、前記搬送面上における前記被搬送物の位置及び姿勢を判定する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項11】
請求項2に記載の搬送システムであって、
複数の前記搬送装置を制御する統合判定部と、前記統合判定部が前記搬送装置と通信するための通信部と、を有し、
各前記搬送装置は、
他の前記搬送装置及び前記統合判定部との間で前記センサ情報を送受信する通信部を有し、
前記判定部は、前記姿勢及び前記位置を前記統合判定部へ送信し、
前記統合判定部は、
各前記搬送装置から受信した前記姿勢及び前記位置を記憶部へ蓄積し、
前記記憶部へ蓄積した前記姿勢及び前記位置に基づいて、前記搬送システム内で異常が発生している前記搬送装置を推定する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送システムであって、
前記統合判定部は、
前記記憶部へ蓄積した前記姿勢及び前記位置を統計的に解析した結果の外れ値に該当する前記搬送装置を異常と推定する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項13】
被搬送物を搬送する搬送面を有し、搬送面を有する他の搬送装置と並置され前記搬送面によって前記被搬送物の搬送路を形成する搬送装置が複数並置され、前記搬送面によって前記被搬送物の搬送路が形成されている搬送システムが行う搬送制御方法であって、
前記搬送装置のそれぞれが、
第1のセンサによって前記被搬送物が前記搬送面へ進入したことを検知し、
第2のセンサによって前記被搬送物が前記搬送面上に存在することを検知し、
速度センサによって前記被搬送物が前記搬送面上を搬送される搬送速度を検知し、
前記第1のセンサ、前記第2のセンサ、及び前記速度センサによって得られたセンサ情報に基づいて、前記搬送面上における前記被搬送物の位置及び姿勢を判定する
各処理を有し、
前記第2のセンサが、
前記搬送面上における前記被搬送物の搬送方向と平行でない検出軸を以って前記被搬送物の存在を検知する
ことを特徴とする搬送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、搬送システム及び搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば物流倉庫において、被搬送物を目的の場所まで搬送路を介して搬送する搬送システムがある。かかる搬送システムでは、被搬送物の搬送状況を把握するために、搬送路への被搬送物の進入や被搬送物の存在を検知したり、被搬送物の画像を撮影したりする。搬送システムは、これらの検知結果に基づいて、被搬送物のサイズや、搬送路上を搬送される被搬送物間の距離等を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2013-237562号公報
【特許文献2】特表2010-517148号公報
【特許文献3】特開2000-171215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の従来技術では、被搬送物の位置を検知することはできるが、その姿勢を検知するものではなく、簡易な構成ではあるものの被搬送物の搬送状況を精度よく認識することができないという問題があった。また、カメラを用いて搬送中の被搬送物を撮影する場合には、被搬送物の搬送状況を精度よく認識できるが、構成が大がかりとなりコストアップにつながるという問題があった。このように、上述の従来技術では、搬送装置の簡易構成と認識精度を両立させて、被搬送物の搬送状況を認識することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、搬送装置の簡易構成と認識精度を両立させて、被搬送物の搬送状況を認識することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様では、被搬送物を搬送する搬送面を有し、搬送面を有する他の搬送装置と並置されて前記搬送面によって前記被搬送物の搬送路を形成する搬送装置であって、前記被搬送物が前記搬送面へ進入したことを検知する第1のセンサと、前記被搬送物が前記搬送面上に存在することを検知する第2のセンサと、前記被搬送物が前記搬送面上を搬送される搬送速度を検知する速度センサと、前記第1のセンサ、前記第2のセンサ、及び前記速度センサの検知によって得られたセンサ情報に基づいて、前記搬送面上における前記被搬送物の位置及び姿勢を判定する判定部と、を有し、前記第2のセンサは、前記搬送面上における前記被搬送物の搬送方向と平行でない検出軸を以って前記被搬送物の存在を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、例えば、搬送装置の簡易構成と認識精度を両立させて、被搬送物の搬送状況を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る搬送システムの構成例を示す平面図。
図2】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置例を示す平面図。
図3A】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の姿勢算出の例を説明するための平面図。
図3B】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の姿勢の符号算出の例を説明するための平面図。
図4】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例1を説明するための平面図。
図5】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例2を説明するための平面図。
図6】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例3を説明するための平面図。
図7】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例4を説明するための平面図。
図8】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例5を説明するための平面図。
図9】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例6を説明するための平面図。
図10】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例7を説明するための平面図。
図11】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニット上を搬送される被搬送物の位置算出の例8を説明するための平面図。
図12】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置の変形例1を示す平面図。
図13】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置の変形例2を示す平面図。
図14】実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニットの構成例を示す平面図。
図15】実施形態1に係る搬送制御処理の例を示すフローチャート。
図16】実施形態1に係る姿勢誤差検出処理の例を示すフローチャート。
図17】実施形態1に係る位置誤差検出処理の例を示すフローチャート。
図18】実施形態2に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置例を示す平面図。
図19】実施形態2に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置の変形例を示す平面図。
図20】実施形態2に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、図面を含めて例示に過ぎず、本願の開示技術を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組合せの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、発明の構成に必須だが周知である構成については、図示及び説明を省略する場合がある。また、各図に示す各要素の数は一例であって、図示に限られるものではない。
【0010】
また、以下の説明において、「判定部」といった処理機能部は、プロセッサによるプログラムの実行によって実現される。プロセッサは、例えば1又は複数のCPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサは、CPUに代表されるマイクロプロセッサに限らず、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。また、CPUは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。また、CPUは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでも代替できる。
【0011】
また、以下の説明において、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号のうちの共通符号を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、共通符号に枝番を付与した参照符号を使用する。
【0012】
[実施形態1]
(実施形態1に係る搬送システム1の構成)
図1は、実施形態1に係る搬送システム1の構成例を示す平面図である。搬送システム1は、被搬送物3を可動棚2へ搬入したり、可動棚2から搬出したりする搬出入機構4を有する。搬出入機構4によって可動棚2から搬出された被搬送物3は、連接するように並置された複数の搬送ユニット5a、5bによって形成される搬送路R上を目的の場所まで搬送される。搬送システム1は、被搬送物3を、例えばロボットアーム6の設置箇所を目的の場所として、搬送ユニット5a、5bによって形成される搬送路Rに沿って搬送する。被搬送物3は、搬送システム1が搬送対象とする物品や、物品が箱詰めされた箱である。
【0013】
搬送ユニット5aは、隣接する一方の搬送ユニット5から搬送されてきた被搬送物3を、両方向のコンベアの回転によって、その向きを変えずに、隣接する他方の搬送ユニット5へ搬送する。また、搬送ユニット5bは、隣接する一方の搬送ユニット5から搬送されてきた被搬送物3を、十字の両方向のコンベアの回転によって、その向きを変えずに、あるいは90°だけ向きを変えて、隣接する他方の搬送ユニット5へ搬送する。
【0014】
ロボットアーム6の周辺の搬送ユニット5へ到着した被搬送物3は、ロボットアーム6によってピッキング処理される。
【0015】
(搬送ユニット5のセンサの配置)
図2は、実施形態1に係る搬送システム1を構成する各搬送ユニット5のセンサの配置例を示す平面図である。各搬送ユニット5は、搬送路Rを構成する方形の搬送領域R2と、進入センサ211及び受光部221と、在荷センサ212及び受光部222とを有する。搬送領域R2における搬送方向d1,d2をX軸方向とし、搬送領域R2の幅手方向をY軸方向とする。X軸を、搬送領域R2の搬送方向d1,d2の紙面に向かって下側の辺上に取る。Y軸を、搬送領域R2の搬送方向d1,d2に対する垂直方向の紙面に向かって左側の辺上に取る。X軸及びY軸で構成される座標系の原点を、進入センサ211及び在荷センサ212の位置とする。
【0016】
進入センサ211及び受光部221は、その検知軸が搬送方向d1,d2に平行な搬送領域R2の二辺を差し渡すように、搬送領域R2の搬送方向d1,d2の上流側に設けられている。在荷センサ212及び受光部222は、搬送方向d1,d2に平行な搬送領域R2の二辺を差し渡すように、その検知軸を進入センサ211及び受光部221の検知軸に対して時計回りに+α°だけ回転させて設けられている。在荷センサ212及び受光部222の検出軸は、搬送領域R2の搬送方向d2,d2と平行ではない。すなわち0°<α<90°である。以下では計算簡素化のため、α=45°とした時の実施例を示す。
【0017】
なお、進入センサ211及び受光部221に代えて、カメラ等の他の手段によって、被搬送物3の進入を検知する手段を採用してもよい。
【0018】
判定部11は、搬送ユニット5毎に備えられる。判定部11は、進入センサ211によって受光部221に向けて出射された出射光が被搬送物3によって遮られ受光部221によって受光されない場合に、被搬送物3が搬送領域R2へ進入したと検知する。また、判定部11は、在荷センサ212によって受光部222に向けて出射された出射光が被搬送物3によって遮られ受光部222に受光されない場合に、被搬送物3が搬送領域R2に在荷していることを検知する。判定部11は、進入センサ211及び在荷センサ212の検知結果を、記憶部12に時系列で保存する。進入センサ211及び在荷センサ212の検知結果とは、進入センサ211及び在荷センサ212が被搬送物3の検知を開始した時刻及び検知を終了した時刻である。
【0019】
また、判定部11は、搬送ユニット5のコンベアの駆動によって搬送領域R2上を搬送される被搬送物3の搬送速度として、コンベアの駆動速度を速度センサ23によって検出する。
【0020】
図2に示すように、被搬送物3の中心をOとし、時刻tにおいて搬送領域R2上の被搬送物3を平面視した場合の4つの頂点の座標位置をA(t)、B(t)、C(t)、D(t)とする。また、被搬送物3の姿勢として、中心Oを回転中心とする被搬送物3の搬送方向d2,d2に対する時計回りのθ[°]の回転を+θで表し、反時計回りのθの回転を-θで表す。
【0021】
また、被搬送物3が平面視で長方形状であるとし、長方形の向かい合う2組の辺のそれぞれの長さをLh、Lvとする。長さLhは、被搬送物3の姿勢θが0のときの搬送方向d1,d2に対して垂直な辺の長さである。長さLvは、被搬送物3の姿勢θが0のときの搬送方向d2,d2に平行な辺の長さである。また、搬送領域R2の搬送方向d1,d2(X軸正方向)の長さをL0xとし、搬送領域R2の搬送路の幅方向(Y軸正方向)の長さをL0yとする。
【0022】
(被搬送物3の姿勢θの算出)
図3Aは、実施形態1に係る搬送システム1を構成する搬送ユニット5上を搬送される被搬送物3の姿勢算出の例を説明するための平面図である。以下に、姿勢θの算出方法を説明する。
【0023】
例えば図3Aは、被搬送物3が搬送領域R2を搬送方向d1へ搬送される例を示す。この例では、被搬送物3の4つの頂点A(t)、B(t)、C(t)、D(t)のうち、最も早い時刻t=t1に進入センサ211によって搬送領域R2への進入が検知される被搬送物3の頂点は、頂点B(t)である。また、時刻t=t2に進入センサ211による搬送領域R2への被搬送物3の進入の検知は、頂点D(t)で終了する。
【0024】
時刻t=t1における頂点B(t1)と、時刻t=t2における頂点D(t2)との間における搬送領域R2上の被搬送物3の搬送距離dは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度Vを用いて式(1)のように近似される。
d=(t1-t2)V・・・(1)
但し、dは被搬送物3の搬送距離、式(1)のVは時刻t=t1における搬送ユニット5のコンベアの駆動速度である。
【0025】
また、搬送領域R2上を搬送される被搬送物3の時刻tにおける中心OのX座標X(t)は、時刻t=t1と時刻t=t2の中点に該当する時刻(t1+t2)/2においてX=0となることから、式(2)のようになる。式(2)のVは時刻t=t1における搬送ユニット5のコンベアの駆動速度である。
X(t)={t-(t1+t2)/2}V・・・(2)
【0026】
また、時刻t=t1と時刻t=t2との間に被搬送物3が搬送領域R2上を搬送方向d1,d2へ搬送される搬送距離dは、図3Aに示すようにa=Lv・cosθ、b=Lh・|sinθ|であることを用いて、式(3)のようにも表される。
D=a+b=Lv・cosθ+Lh・|sinθ|・・・(3)
【0027】
式(1)及び式(3)から、式(4)となる。
Lv・cosθ+Lh・|sinθ|=(t1-t2)V・・・(4)
【0028】
図3Bは、被搬送物3の回転角θが負の時(図3B(a))、0の時(図3B(b))と正の時(図3B(c))のそれぞれの時において、在荷センサ212および受光部222を通過する位置を示している。被搬送物3の回転角θ=0°の時、在荷センサ212及び受光部222を通過するのに要する進行方向の移動距離はD=Lh+Lvである。一方、図4-2(a)に示す被搬送物3の回転角θが負の時、移動距離D<Dとなり、図3B(c)に示す被搬送物3の回転角θが正の時、移動距離D>Dとなる。従って、被搬送物3が在荷センサ212および受光部222を通過する時間D/Vは被搬送物3の回転角θによって変化し、回転角θの正負は以下の式(4-2)から判断可能となる。
t3-t1≧(Lh+Lv)/Vの時、θ≧0
t3-t1<(Lh+Lv)/Vの時、θ<0・・・(4-2)
【0029】
式(4)は、進入センサ211及び受光部221、及び、在荷センサ212及び受光部222の位置関係が何れであっても成り立つ。Lv及びLhが既知であるとすると、式(4)と式(4-2)から被搬送物3の姿勢θが求まる。
【0030】
(被搬送物3の位置(X(t),Δh)の算出)
図4図11は、実施形態1に係る搬送システム1を構成する搬送ユニット5上を搬送される被搬送物3の位置算出の例を説明するための平面図である。被搬送物3の位置(X(t),Δh)は、被搬送物3の中心Oの座標情報である。Xは、被搬送物3の中心OのX座標である。Δhは、被搬送物3の中心OのY座標が搬送領域R2の搬送方向d1,d2の中心Y=L0y/2からの偏差である。
【0031】
Δh>0の場合は、被搬送物3の中心OのY座標が搬送領域R2の搬送方向d1,d2と平行な搬送路中心Y=L0y/2からY軸正方向にΔhだけ変位している。Δh=0の場合は、被搬送物3の中心OのY座標が搬送路中心Y=L0y/2から変位していないことを表す。Δh<0の場合は、被搬送物3の中心OのY座標が搬送路中心Y=L0y/2からY軸負方向にΔhだけ変位していることを表す。
【0032】
図4は、搬送方向d1に搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に在荷センサ212によってある頂点とは異なる頂点から検出が開始される例を示す。図4に示すように、最も早い時刻t=t1に進入センサ211によって頂点B(t1)が検知され、時刻t=t3に在荷センサ212によって頂点C(t3)が検知され、姿勢θ≧0であることから、式(5)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(5)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
b+x’=Lh・|sinθ|+Δh+(L0y/2-Lh/2)-{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}
=(t1-t3)V・・・(5)
【0033】
図5は、搬送方向d1に搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に在荷センサ212によって同一のある頂点から検出が開始される例を示す。図5に示すように、最も早い時刻t=t1に進入センサ211によって頂点C(t1)が検知され、時刻t=t3に在荷センサ212によって頂点C(t3)が検知され、姿勢θ<0であることから、式(6)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(6)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’’=Δh+(L0y/2-Lh/2)-{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}=(t1-t3)V・・・(6)
【0034】
図6及び図7は、図4及び図5とは逆の搬送方向d2へ被搬送物3が搬送される例を示す。
【0035】
図3AのD(t2)をD(t1)に読み替え、B(t1)をB(t2)に読み替える。この場合、進入センサ211によって、時刻t=t1に頂点D(t1)が、時刻t=t2に頂点B(t2)が検知される。搬送領域R2上を搬送される被搬送物3の時刻tにおける中心OのX座標は、時刻t=t1と時刻t=t2の中点に該当する時刻(t1+t2)/2においてX=0となる。これから求まる距離{t-(t1+t2)/2}Vを、被搬送物3の搬送方向d2の1つ前に隣接する搬送ユニット5の進入センサ211の検出軸からの距離に直すと、式(7)のようになる。但し、式(7)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
X(t)=L0x-{t-(t1+t2)/2}V・・・(7)
【0036】
図6は、搬送方向d2に搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず在荷センサ212によってある頂点から検出が開始され、次に進入センサ211によってある頂点とは異なる頂点から検出が開始される例を示す。
【0037】
図6に示すように、時刻t=t1に在荷センサ212によって頂点A(t1)が検知され、時刻t=t3に進入センサ211によって頂点D(t3)が検知され、姿勢θ≧0であることから、式(8)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(8)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’-b=Δh+(L0y/2-Lh/2)+{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}-Lh・|sinθ|
=(t1-t3)V・・・(8)
【0038】
図7は、搬送方向d2に搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に在荷センサ212によって同一のある頂点から検出が開始される例を示す。図7に示すように、最も早い時刻t=t1に在荷センサ212によって頂点A(t1)が検知され、時刻t=t3に進入センサ211によって頂点A(t3)が検知され、姿勢θ<0であることから、式(9)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(9)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’’=Δh+(L0y/2-Lh/2)+{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}=(t1-t3)V・・・(9)
【0039】
図8及び図9は、隣接する搬送ユニット5へ、その搬送ユニット5の横方向から被搬送物3が進入する例を示す。
【0040】
図3AのD(t2)をD(t1)に読み替え、B(t1)をB(t2)に読み替える。先ず1つ前の搬送ユニット5の進入センサ211によって、時刻t=t1に頂点D(t1)が、時刻t=t2に頂点B(t2)が検知される。搬送領域R2上を搬送される被搬送物3の時刻tにおける中心OのX座標は、時刻t=t1と時刻t=t2の中点に該当する時刻(t1+t2)/2においてX=0となる。これから求まる距離{t-(t3+t3)/2}Vを、1つ前に隣接する搬送ユニット5の進入センサ211の検出軸からの距離に直すと、式(7)のようになる。
【0041】
図8は、当該の搬送ユニット5の搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず1つ前の搬送ユニット5の進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に当該の搬送ユニット5の在荷センサ212によってある頂点から検出が開始される例を示す。
【0042】
図8に示すように、時刻t=t1に在荷センサ212によって頂点D(t1)が検知され、時刻t=t3に進入センサ211によって頂点D(t3)が検知され、姿勢θ≧0であることから、式(10)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(10)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’’=-Δh+(L0y/2-Lh/2)+{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}=(t1-t3)V・・・(10)
【0043】
図9は、当該の搬送ユニット5の搬送方向d2に搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず1つ前の搬送ユニット5の進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に当該の搬送ユニット5の在荷センサ212によって同一のある頂点から検出が開始される例を示す。図9に示すように、最も早い時刻t=t1に侵入センサ211によって頂点A(t1)が検知され、時刻t=t3に在荷センサ212によって頂点D(t3)が検知され、姿勢θ≧0であることから、式(11)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(11)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’+b=-Δh+(L0y/2-Lh/2)-{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}+Lh・cosθ
=(t1-t3)V・・・(11)
【0044】
図10及び図11は、隣接する搬送ユニット5へ、その搬送ユニット5の横方向から被搬送物3が進入する別例を示す。
【0045】
図10は、当該の搬送ユニット5の搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず1つ前の搬送ユニット5の進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に当該の搬送ユニット5の在荷センサ212によってある頂点から検出が開始される例を示す。
【0046】
図10に示すように、時刻t=t1に在荷センサ212によって頂点B(t1)が検知され、時刻t=t3に進入センサ211によって頂点B(t3)が検知され、姿勢θ≧0であることから、式(12)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(12)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’=Δh+(L0y/2-Lh/2)+{(Lv/2)・sinθ-(Lh/2)・(1-cosθ)}=(t1-t3)V・・・(12)
【0047】
図11は、当該の搬送ユニット5の搬送方向d2に搬送領域R2へ進入する被搬送物3が、先ず1つ前の搬送ユニット5の進入センサ211によってある頂点から検出が開始され、次に当該の搬送ユニット5の在荷センサ212によって同一のある頂点から検出が開始される例を示す。図11に示すように、最も早い時刻t=t1に侵入センサ211によって頂点C(t1)が検知され、時刻t=t3に在荷センサ212によって頂点B(t3)が検知され、姿勢θ≧0であることから、式(13)から中心Oの偏差Δhが求まる。但し、式(13)のVは、時刻t=t1におけるコンベアの駆動速度である。
x’+b=Δh+(L0y/2-Lh/2)-{(Lv/2)・sinθ+(Lh/2)・(1-cosθ)}+Lh・cosθ
=(t1-t3)V・・・(13)
【0048】
(実施形態1のセンサの配置の変形例)
図12及び図13は、実施形態1に係る搬送システムを構成する搬送ユニットのセンサの配置の変形例を示す平面図である。図12に示すように、在荷センサ212及び受光部222は、その検知軸を進入センサ211及び受光部221の検知軸に対して時計回りに(90+α)°だけ回転させて設けられてもよい。また、図13に示すように、在荷センサ212及び受光部222は、その検知軸を進入センサ211及び受光部221の検知軸に対して時計回りに(360-α)°だけ回転させて設けられてもよい。
【0049】
(実施形態1に搬送ユニット5が姿勢制御壁71a,71bを有する構成)
図14は、実施形態1に係る搬送システム1を構成する搬送ユニット5が姿勢制御壁71a,71bを有する構成例を示す平面図である。複数の搬送ユニット5の一部又は全部が、図14に示すように、搬送方向d1,d2の一側辺又は両側辺に、姿勢制御壁71a,71bを有していてもよい。姿勢制御壁71a,71bを有する搬送ユニット5は、姿勢制御壁71a,71bの方向へコンベアを駆動することができる。
【0050】
判定部11は、上述の姿勢θの正負、偏差Δhの正負、及び姿勢制御壁71a,71bの設置状況に応じて、姿勢制御壁71a,71bの何れかの方向へコンベアを駆動して被搬送物3を姿勢制御壁71a,71bの方向へ移動させる。判定部11は、姿勢制御壁71a,71bの何れかのみが設置されている場合には、この姿勢制御壁を用いて被搬送物3の姿勢θの正負及び偏差Δhを補正する。また、判定部11は、姿勢制御壁71a,71bの両方が設置されている場合には、コンベアの駆動量がより少ない姿勢制御壁側へ被搬送物3を移動させて、被搬送物3の姿勢θの正負及び偏差Δhを補正する。
【0051】
判定部11は、被搬送物3を移動させて姿勢制御壁71a,71bへ押し付けることで、被搬送物3の姿勢θ=0°になるようにする。そして、判定部11は、姿勢θ=0°に姿勢が補正された被搬送物3を、姿勢制御壁71a,71bへ押し付ける方向とは逆の方向へ移動するようにコンベアを駆動し、偏差Δh=0となるように被搬送物3を搬送路Rの幅方向の中央へ移動させる。
【0052】
複数の搬送ユニット5の各判定部11及び記憶部12は、通信部13を介して通信可能に接続されている。判定部11は、必要に応じて、隣接する搬送ユニット5の進入センサ211又は在荷センサ212の当該の被搬送物3の検知結果を、隣接する搬送ユニット5の記憶部12から通信部13を介して取得する。判定部11は、当該の被搬送物3に関して、隣接する搬送ユニット5から取得した検知結果と、自身の搬送ユニット5の進入センサ211又は在荷センサ212の検知結果を用いて、当該の被搬送物3の姿勢θ及び位置(X(t),Δh)を算出する。
【0053】
また、複数の搬送ユニット5の各判定部11及び記憶部12は、これらの判定部11及び記憶部12を統括する統合判定部110及び記憶部120と通信可能に接続されている。統合判定部110は、各搬送ユニット5の各判定部11によって判定され各記憶部12に保存されている被搬送物3の姿勢θ又は位置(X(t),Δh)の時系列データを収集して記憶部120へ保存する。統合判定部110は、記憶部120へ保存している各搬送ユニット5から取得した被搬送物3の姿勢θ又は位置(X(t),Δh)の時系列データを統計分析する。統計分析は、例えば各搬送ユニット5から取得した被搬送物3の姿勢θや位置(X(t),Δh)の平均に対する各個別値の偏差を算出し、偏差が所定以上となる被搬送物3の姿勢θや位置(X(t),Δh)の外れ値を出力した個別の搬送ユニット5における異常の可能性を推定し出力する。異常とは、例えば電圧低下等のコンベアの駆動力低下といった故障や、設置位置における床面の傾き、搬送路Rのレイアウト自体が内包する設計上の問題等がある。搬送システム1の管理者は、統合判定部110による判定結果に基づいて、搬送ユニット5の修理や交換、位置変更、搬送路Rのレイアウト変更等の施策を講じることできる。
【0054】
(実施形態1に係る搬送制御処理)
図15は、実施形態1に係る搬送制御処理の例を示すフローチャートである。図15のフローチャートは、各搬送ユニット5の判定部11毎に実行される。
【0055】
先ず、ステップS11では、判定部11は、進入センサ211又は在荷センサ212による次の被搬送物3の検出信号を受信したかを判定する。判定部11は、進入センサ211又は在荷センサ212による次の被搬送物3の検出信号を受信した場合(ステップS11YES)にステップS12へ処理を移し、受信していない場合(ステップS11NO)にステップS11を繰返す。
【0056】
ステップS12では、判定部11は、ステップS11で受信した検出信号が進入センサ211の検出信号かを判定する。判定部11は、ステップS11で受信した検出信号が進入センサ211の検出信号である場合(ステップS12YES)にステップS13へ処理を移し、在荷センサ212の検出信号である場合(ステップS12NO)にステップS18へ処理を移す。
【0057】
ステップS13では、判定部11は、被搬送物3が進入センサ211を通過するためにかかる時間を計測するためのカウンタをリセットしカウントを開始する。次にステップS14では、判定部11は、在荷センサ212の検出信号を受信したかを判定する。判定部11は、在荷センサ212の検出信号を受信した場合(ステップS14YES)にステップS19へ処理を移し、受信していない場合(ステップS14NO)にステップS15へ処理を移す。
【0058】
ステップS15では、判定部11は、ステップS13でカウントを開始したカウンタ値が規定の通過時間より大であるかを判定する。判定部11は、ステップS13でカウントを開始したカウンタ値が規定の通過時間より大である場合(ステップS15YES)にステップS16へ処理を移し、カウンタ値が規定の通過時間以下である場合(ステップS15NO)にステップS14へ処理を戻す。
【0059】
ステップS16では、判定部11は、被搬送物3が進入センサ211を通過する際の時間が規定の通過時間をオーバーしたために搬送遅延が発生しているとして、出力部からエラー発生の通知を出力する。ステップS16に続いてステップS17では、判定部11は、搬送制御処理を終了するかを判定し、終了する場合(ステップS17YES)に搬送制御処理を終了し、終了しない場合(ステップS17NO)にステップS11へ処理を戻す。
【0060】
一方ステップS18では、判定部11は、進入センサ211よりも在荷センサ212が先に被搬送物3の存在を検知したことから、被搬送物3の搬送方向は後退方向(図2等に示す搬送方向d2)であるとし、後退方向の1つ前に隣接する搬送ユニット5の進入センサ211の検出信号を取得する。
【0061】
ステップS18に続いてステップS19では、判定部11は、図3A及び図3Bを用いて説明した被搬送物3の姿勢θを算出し、その後、姿勢θの符号及び隣接する搬送ユニット5との接続関係に応じて、図3A図11を参照して説明した被搬送物3の位置(X(t),Δh)を算出する。このXは、式(2)によって算出される。なお、搬送ユニット5は、記憶部12に、隣接する搬送ユニット5との接続関係の情報を格納している。接続関係の情報は、例えば、自身の搬送ユニット5の進入センサ211及び在荷センサ212の向きと、隣接する搬送ユニット5の進入センサ211及び在荷センサ212の向きの関係である。
【0062】
ステップS19に続いてステップS20では、判定部11は、姿勢誤差検出処理を実行する。姿勢誤差検出処理の詳細は、図16を参照して後述する。ステップS20に続いてステップS21では、判定部11は、位置誤差検出処理を実行する。位置誤差検出処理の詳細は、図17を参照して後述する。ステップS21が終了すると、判定部11は、ステップS17へ処理を移す。
【0063】
(実施形態1に係る姿勢誤差検出処理の詳細)
図16は、実施形態1に係る姿勢誤差検出処理の例を示すフローチャートである。先ず、ステップS20aでは、判定部11は、|θ|>閾値か、すなわち姿勢θの大きさが許容範囲を超えているかを判定する。判定部11は、|θ|>閾値である場合(ステップS20aYES)にステップS20bへ処理を移し、|θ|≦閾値である場合(ステップS20aNO)に姿勢誤差検出処理を終了しステップS21(図15)へ処理を移す。
【0064】
ステップS20bでは、判定部11は、姿勢制御壁71a,71bの何れか一方又は両方が存在するかを判定する。判定部11は、姿勢制御壁71a,71bの何れか一方又は両方が存在する場合(ステップS20bYES)にステップS20cへ処理を移し、存在しない場合(ステップS20bNO)に姿勢誤差検出処理を終了しステップS21(図15)へ処理を移す。
【0065】
ステップS20cでは、判定部11は、姿勢制御壁71a,71bの何れか一方しか存在しない場合にはその姿勢制御壁71へ、姿勢制御壁71a,71bの両方が存在する場合には何れかの姿勢制御壁71へ被搬送物3を移動させて押圧し、姿勢θを許容範囲内(例えば0°)へ補正する。判定部11は、被搬送物3を押圧する姿勢制御壁71を選択する際、被搬送物3の姿勢θ及び位置(X(t),Δh)に応じて、コンベアの駆動量がより少なくなる姿勢制御壁71を選択する。
【0066】
次にステップS20dでは、判定部11は、ステップS20cの被搬送物3の姿勢θの補正に際して移動させたコンベアを逆方向へ移動させることで、被搬送物3を搬送路中心Y=L0y/2へ移動させる。判定部11は、ステップS20dが終了すると、ステップS21(図15)へ処理を移す。
【0067】
(実施形態1に係る位置誤差検出処理の詳細)
図17は、実施形態1に係る位置誤差検出処理の例を示すフローチャートである。先ず、ステップS21aでは、判定部11は、位置誤差>閾値(位置(X(t),Δh)のうち、搬送方向(X軸方向)のX座標の誤差及びY軸方向の偏差Δhの少なくとも一方が許容範囲を超えている)かを判定する。搬送方向(X軸方向)のX座標の誤差があるとは、被搬送物3の前後に搬送される被搬送物3との距離が想定と乖離していることをいう。すなわち、判定部11は、被搬送物3の位置と、速度センサ23によって得られたセンサ情報に基づき求められる被搬送物3が位置すると想定される座標情報との差分が閾値を超える場合に、位置誤差が許容範囲を超えると判定する。判定部11は、位置誤差>閾値である場合(ステップS21aYES)にステップS21bへ処理を移し、位置誤差≦閾値である場合(ステップS21aNO)に位置誤差検出処理を終了しステップS17(図15)へ処理を移す。
【0068】
次にステップS21bでは、判定部11は、位置誤差がある方向(X軸方向及び/又はY軸方向)にコンベアを駆動制御可能か判定する。判定部11は、位置誤差がある方向にコンベアを駆動制御可能である場合(ステップS21bYES)にステップS21cへ処理を移し、駆動制御不可能である場合(ステップS21bNO)に位置誤差検出処理を終了しステップS17(図15)へ処理を移す。
【0069】
次にステップS21cでは、判定部11は、ステップS21aの判定結果に搬送方向の位置誤差(搬送方向(X軸方向)のX座標の誤差)があるかを判定する。判定部11は、搬送方向の位置誤差がある場合(ステップS21cYES)にステップS21dへ処理を移し、搬送方向の位置誤差がない場合(ステップS21cNO)にステップS21fへ処理を移す。
【0070】
ステップS21dでは、判定部11は、被搬送物3の搬送方向の位置誤差を補正するための搬送速度を、速度センサ23の検出結果に基づいて算出する。被搬送物3の搬送方向の位置誤差を補正するための搬送速度とは、被搬送物3の搬送方向(X軸方向)のX座標の誤差を補正するために変更する搬送速度である。次にステップS21eでは、判定部11は、搬送方向(X軸方向)のX座標が、想定よりも遅れた位置である(被搬送物3が搬送路Rをすべって搬送遅延している)場合には搬送速度を速め、想定よりも進んだ位置である(搬送路Rが搬送方向へ傾き、搬送路Rが被搬送物3でつかえている)場合には搬送速度を遅くする搬送速度の調整を行う。これにより、搬送路R上を搬送される被搬送物3の各位置及び搬送間隔が許容範囲内へと補正される。
【0071】
次にステップS21fでは、判定部11は、ステップS21aの判定結果に搬送路の幅方向の位置誤差(偏差Δh)があるかを判定する。判定部11は、偏差Δhがある場合(ステップS21fYES)にステップS21gへ処理を移し、偏差Δhがない場合(ステップS21fNO)に位置誤差検出処理を終了しステップS17(図15)へ処理を移す。
【0072】
ステップS21gでは、判定部11は、被搬送物3の偏差Δhを補正するための位置誤差補正量を算出する。次にステップS21hでは、判定部11は、搬送ユニット5の搬送を一時停止し、コンベアを駆動して偏差Δhの補正を行う。なお、ステップS20(図15)の姿勢θの補正を行った場合には、既に偏差Δhが補正されているので、ステップS21f~S21hを省略することもできる。判定部11は、ステップS21hが終了すると位置誤差検出処理を終了し、ステップS17(図15)へ処理を移す。
【0073】
上述の実施形態1では、被搬送物が搬送面へ進入したことを検知する進入センサと、搬送面上における被搬送物の搬送方向と平行でない検出軸を以って被搬送物の存在を検知する在荷センサと、搬送ユニットのコンベアの搬送速度とに基づいて、被搬送物の姿勢及び位置を算出する。よって簡易構成で精度よく被搬送物の姿勢及び位置を算出できる。
【0074】
また、上述の実施形態1では、上記の搬送装置が複数並置して、搬送面によって被搬送物の搬送路が形成されている搬送システムを構成することができる。
【0075】
また、上述の実施形態1では、被搬送物の姿勢は、搬送方向に対する被搬送物の向きがなす角度であるので、1つのパラメータで簡易に表現され、被搬送物の姿勢制御の取り扱いが容易になる。
【0076】
また、上述の実施形態1では、進入センサによって被搬送物が搬送面へ進入したことが検知された後に、所定時間が経過しても在荷センサによって被搬送物が搬送面上に存在することが検知されない場合、エラー発生の通知を出力する。よって、被搬送物の搬送遅延が迅速に認識できる。
【0077】
また、上述の実施形態1では、他の搬送装置との間でセンサ情報を送受信し、自身の搬送装置のセンサ情報と、隣接する他の搬送装置のセンサ情報とに基づいて、搬送面上における被搬送物の位置及び姿勢を判定する。よって、隣接する搬送装置がセンサ利用に関して連携することで、あらゆる方向の搬送に対応して被搬送物の姿勢及び位置を算出できる。
【0078】
また、上述の実施形態1では、搬送装置は、搬送方向へ向かって搬送面の両側の少なくとも一方に、被搬送物の姿勢を制御する姿勢制御部材を有し、姿勢が許容範囲を超えている場合に、搬送面を制御して被搬送物を姿勢制御部材へ移動させて押圧し、姿勢を許容範囲内へと補正する。よって、簡易構成で被搬送物の姿勢を補正できる。
【0079】
また、上述の実施形態1では、搬送装置は、搬送方向へ向かって搬送面の両側に姿勢制御部材を有し、姿勢θの大きさやその正負の符号に応じて、搬送面を制御して被搬送物を何れか一方の姿勢制御部材へ移動させて押圧し、姿勢を許容範囲内へと補正する。よって、コンベアの移動量がより少ない姿勢制御部材側へ被搬送物を移動させることで、姿勢の補正時間の短縮を図ることができる。
【0080】
また、上述の実施形態1では、被搬送物の位置の誤差が許容範囲を超えている場合に、搬送面を制御して、搬送速度を変化させ、又は、被搬送物を搬送方向に対する直交方向へ移動させて、位置の誤差を許容範囲内へと補正する。よって、被搬送物の搬送方向及び搬送方向の直交方向の位置誤差を補正することができる。
【0081】
また、上述の実施形態1では、被搬送物の位置は、進入センサ及び在荷センサによって得られたセンサ情報に基づき求められる被搬送物の中心が実際に位置する座標情報である。この位置と、速度センサによって得られたセンサ情報に基づき求められる被搬送物が位置すると想定される座標情報との差分が閾値を超える場合に、位置の誤差が許容範囲を超えると判定する。よって、比較する2つの座標情報が異なるセンサ由来のセンサ情報であるので、誤差の許容範囲超過の検出力を担保することができる。
【0082】
また、上述の実施形態1では、複数の搬送装置を制御する統合判定部を有し、統合判定部は、各搬送装置から姿勢及び位置を受信して記憶部へ蓄積し、記憶部へ蓄積した姿勢及び位置に基づいて、搬送システム内で異常が発生している搬送装置を推定する。よって、搬送システムを構成する搬送装置の異常を蓄積データに基づいて高い尤度で推定することができる。
【0083】
また、上述の実施形態1では、統合判定部は、記憶部へ蓄積した姿勢及び位置を統計的に解析した結果の外れ値に該当する搬送装置を異常と推定するので、診断のための個別指標を準備しなくても、異常がある搬送装置を統計的に高い尤度で推定できる。
【0084】
[実施形態2]
上述の実施形態1では、被搬送物3の姿勢θ及び位置(X(t),Δh)を算出する際に用いる被搬送物3の形状(長さをLh、Lv)が既知であるとした。しかし、被搬送物3の形状が既知でない場合や、様々な形状の被搬送物3を混合して搬送する場合には、被搬送物3の形状を計測する必要がある。
【0085】
(実施形態2に係る搬送ユニット5a1のセンサの配置)
図18図20は、実施形態2に係る搬送システム1を構成する搬送ユニット5a1のセンサの配置例を示す平面図である。
【0086】
図18は、搬送ユニット5a1の搬送方向d1側の最下流の搬送領域R2の出口付近に距離センサ231,232を設けた例を示す。判定部11及び距離センサ231,232は、被搬送物3の平面形状を計測する形状計測手段を構成する。判定部11は、距離センサ231,232によってY軸の正負の両方向から計測された被搬送物3までの距離が、被搬送物3が搬送されるに従って変化する態様に基づいて、被搬送物3の形状を算出する。例えば、図18の例では、距離センサ231によって計測される被搬送物3までの距離は、頂点Bでの検出開始から被搬送物3の搬送に従って徐々に短くなり、頂点Cで極小となり、その後徐々に長くなり、頂点Dで検出終了という検出結果が得られる。また、距離センサ232によって計測される被搬送物3までの距離は、頂点Bでの検出開始から被搬送物3の搬送に従って徐々に短くなり、頂点Aで極小となり、その後徐々に長くなり、頂点Dで検出終了という、距離センサ231と同様の検出結果が得られる。判定部11は、このような距離センサ231,232による被搬送物3までの距離の検出結果から、被搬送物3が方形であり、その向かい合う2組の辺の長さLv、Lhを算出することができる。
【0087】
図19は、搬送ユニット5の搬送方向d1側の最上流の搬送領域R2の入口付近に距離センサ231,232を設けた搬送ユニット5a2の例を示す。距離センサ231,232の距離の検出結果は、図18で説明したものと同様になる。
【0088】
図20は、搬送ユニット5a3の上方にカメラ241を設けた例を示す。カメラ241は、搬送領域R2内の何れの位置の被搬送物3でも撮影できる。判定部11は、カメラ241により被搬送物3を撮影した画像距離を用いて、被搬送物3の形状(長さLv、Lh)を計測することができる。
【0089】
被搬送物3の形状を計測する場合には、搬送路Rの最上流の搬送ユニット5ax(図1)の位置に搬送ユニット5a1,5a2,5a3の何れかを設置すればよい。一方、リアルタイムに被搬送物3の姿勢θ及び位置(X(t),Δh)を算出して補正する場合には、何れの搬送ユニットも搬送ユニット5a2,5a3の何れかとする必要がある。
【0090】
上述の実施形態2では、搬送装置は、進入センサ、在荷センサ、速度センサ、及び非搬送物の形状を計測するための距離センサによって得られたセンサ情報に基づいて、搬送面上における被搬送物の位置及び姿勢を判定するので、被搬送物の形状が未知であっても対応して被搬送物の位置及び姿勢を判定できる。
【0091】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換え、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、構成の追加、削除、置換、統合、又は分散をすることが可能である。また、実施形態で示した構成及び処理は、処理効率又は実装効率に基づいて適宜分散、統合、又は入れ替えることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1:搬送システム、R2:搬送領域(搬送面)、3:被搬送物、5,5a,5a1,5a2,5a3,5b:搬送ユニット(搬送装置)、11:判定部、13:通信部、23:速度センサ、71,71a,71b:姿勢制御壁(姿勢制御部材)、110:統合判定部、211:進入センサ(第1のセンサ)、212:在荷センサ(第2のセンサ)、231,232:距離センサ、241:カメラ。
図1
図2
図3A
図3B
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図20