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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115737
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】レンズ成型物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20230814BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20230814BHJP
   B29C 39/36 20060101ALI20230814BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C33/44
B29C39/36
B29C39/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018126
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓起
(72)【発明者】
【氏名】本間 大海
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AH74
4F202AM02
4F202AM32
4F202AP19
4F202CA09
4F202CA30
4F202CB01
4F202CM14
4F202CM90
4F204AH74
4F204AM32
4F204EA03
4F204EB01
4F204EF27
4F204EK25
(57)【要約】
【課題】レンズ成型物を成型する場合に、レンズ成型物が上型と下型の何れに残った場合にも、同じ姿勢でレンズ成型物を次工程に提供可能な技術を提供する。
【解決手段】レンズ成型物の製造方法であって、レンズ成型物の成型後に、成型されたレンズ成型物が上型に残っている第一状態か、下型に残っている第二状態かを判定する状態判定工程と、状態判定工程における判定結果に応じて、上型または下型に残るレンズ成型物の露出面を、成型物移動装置のアームの先端に設けられた吸着装置で吸着する吸着工程と、状態判定工程における判定結果が、第一状態または第二状態のいずれか一方の場合に、吸着装置で吸着した面を露出面と反対側の面に変更する、吸着面変更工程と、吸着装置で吸着したレンズ成型物をトレイに載置する載置工程と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型を有する成型型による、レンズ成型物の製造方法であって、
前記レンズ成型物の成型後に、前記上型と前記下型とが離間した状態で、成型された前記レンズ成型物が前記上型に残っている第一状態か、前記下型に残っている第二状態かを判定する状態判定工程と、
前記状態判定工程における判定結果に応じて、前記上型または前記下型に残る前記レンズ成型物の露出面を、成型物移動装置のアームの先端に設けられた吸着装置で吸着する吸着工程と、
前記状態判定工程における判定結果が、前記第一状態または前記第二状態のいずれか一方の場合に、前記吸着装置で吸着した面を前記露出面と反対側の面に変更する、吸着面変更工程と、
前記吸着装置で吸着した前記レンズ成型物に対し、前記吸着装置による吸着を解除することで、トレイに載置する載置工程と、
を有する、レンズ成型物の製造方法。
【請求項2】
前記吸着面変更工程においては、前記吸着装置で吸着した前記レンズ成型物に対し、前記吸着装置による吸着を解除することで、前記レンズ成型物を仮置きトレイに一旦載置し、
前記吸着装置が、前記露出面と反対側の面を再吸着する、請求項1に記載のレンズ成型物の製造方法。
【請求項3】
前記状態判定工程において、前記第一状態と判定された場合にのみ、前記吸着面変更工程が実施される、請求項2に記載のレンズ成型物の製造方法。
【請求項4】
前記吸着装置の上側と下側の両側に、前記レンズ成型物の表面を吸着する吸着部を備え、
前記吸着工程において、
前記状態判定工程の判定結果が前記第一状態の場合には、前記吸着装置の上側に備えられた吸着部で前記レンズ成型物の前記露出面を吸着し、前記第二状態の場合には、前記吸着装置の下側に備えられた吸着部で前記レンズ成型物の前記露出面を吸着する、請求項3に記載のレンズ成型物の製造方法。
【請求項5】
前記吸着面変更工程において、
前記吸着装置の上側に備えられた前記吸着部で前記レンズ成型物の前記露出面を吸着した状態で、前記レンズ成型物を前記仮置きトレイに下側から一旦載置し、
前記吸着装置が、前記吸着装置の下側に備えられた吸着部で、前記露出面と反対側の面を上側から再吸着する、請求項4に記載のレンズ成型物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ成型物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、モバイルコンピュータ、パーソナル携帯情報端末、デジタルスチルカメラ等に代表される電子機器に関して、小型化、軽量化及び高性能化が飛躍的に進んでいる。これらの市場動向に伴い、電子機器に搭載されるカメラのレンズに対しても、小型化、薄肉化、及び軽量化が要求され、ウェハーレベルレンズが使用されるようになっている。
【0003】
このウェハーレベルレンズの製造方法として、例えば、液体の熱硬化性樹脂をロードセルが取付けられた下金型へ供給する第1の工程と、第1の工程後に上金型を降下させて、上金型と下金型の隙間を規定値にしておき、ヒータを用いて上金型および下金型を加熱する第2の工程と、第2の工程後に下金型の膨張および熱硬化性樹脂のゲル化に伴い発生する下金型が受ける圧縮方向の荷重をロードセルにより測定する第3の工程と、第3の工程後に前記圧縮方向の荷重が所定値に達した時に上金型を更に降下することによって隙間を狭める第4の工程と、を有することを特徴とするインプリント方法等が公知になっている(特許文献1を参照)。
【0004】
上記のように成型工程によってウェハーレベルレンズを製造する場合には、成型が終わり上型と下型を離間させた後、ウェハーレベルレンズを吸着装置で吸着し、成型型から取り出す必要がある。そして、取り出したウェハーレベルレンズをロボットアーム等の移動装置にて運搬し、次工程に供給するためのトレイに載置することが多い。しかしながら、成型が終わり上型と下型を離間させた際に、成型品が上型に残る場合と下型に残る場合があり、これらの場合によって、吸着装置で吸着するウェハーレベルレンズの面が異なり、トレイ上に載置される際の上下が逆になってしまう場合があった。その結果、ウェハーレベルレンズの上下を揃える工程が増加したり、次工程以降における誤作業の原因になる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5724156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の技術は上記の事情に鑑みて発明されたもので、その目的は、上型と下型を用いてレンズ成型物を成型する場合に、レンズ成型物が上型と下型の何れの方に残った場合にも、同じ姿勢でレンズ成型物を次工程に提供することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本開示に係るレンズ成型物の製造方法は、上型と下型を有する成型型による、レンズ成型物の製造方法であって、
前記レンズ成型物の成型後に、前記上型と前記下型とが離間した状態で、成型された前記レンズ成型物が前記上型に残っている第一状態か、前記下型に残っている第二状態かを判定する状態判定工程と、
前記状態判定工程における判定結果に応じて、前記上型または前記下型に残る前記レン
ズ成型物の露出面を、成型物移動装置のアームの先端に設けられた吸着装置で吸着する吸着工程と、
前記状態判定工程における判定結果が、前記第一状態または前記第二状態のいずれか一方の場合に、前記吸着装置で吸着した面を前記露出面と反対側の面に変更する、吸着面変更工程と、
前記吸着装置で吸着した前記レンズ成型物に対し、前記吸着装置による吸着を解除することで、トレイに載置する載置工程と、
を有する。
【0008】
ここで、成型されたレンズ成型物が成型型の上型に残っている第一状態か、下型に残っている第二状態かによって、吸着装置で吸着する露出面が変わり、そのまま、吸着したレンズ成型物をトレイに載置した場合には、第一状態の場合と第二状態の場合で、トレイに載置されるレンズ成型物の姿勢が異なることとなる。これに対し、本開示においては、第一状態と第二状態のいずれか一方の場合に、吸着装置で吸着したレンズ成型品の面を、トレイまで移動させる途中で変更するので、第一状態の場合と第二状態の場合で、吸着装置で吸着するレンズ成型物の面を揃えることができる。これにより、トレイに載置されるレンズ成型物の姿勢を揃えることができ、製造工程におけるミスの発生を防止することが可能である。
【0009】
また、前記吸着面変更工程においては、前記吸着装置で吸着した前記レンズ成型物に対し、前記吸着装置による吸着を解除することで、前記レンズ成型物を仮置きトレイに一旦載置し、
前記吸着装置が、前記露出面と反対側の面を再吸着してもよい。これによれば、より確実に、吸着装置で吸着したレンズ成型品の面を、トレイまで移動させる途中で変更することが可能である。
【0010】
また、前記状態判定工程において、前記第一状態と判定された場合にのみ、前記吸着面変更工程が実施されてもよい。ここで、第二状態の場合には、下型に残ったレンズ成型物の露出面を、吸着装置で上側から吸着することになるので、成型物移動装置は、この姿勢を維持したまま、トレイまでレンズ成型物を移動して載置することが可能である。一方、第一状態の場合は、吸着装置は下側からレンズ成型物の露出面を吸着するので、トレイまでレンズ成型物を移動して載置する途中で、レンズ成型物の姿勢を上下反転させる必要がある。従って、第一状態の場合にのみ、吸着面変更工程を実施することで、レンズ成型に係る工程全体の効率化を図ることが可能となる。
【0011】
また、前記吸着装置の上側と下側の両側に、前記レンズ成型物の表面を吸着する吸着部を備え、
前記吸着工程において、
前記状態判定工程の判定結果が前記第一状態の場合には、前記吸着装置の上側に備えられた吸着部で前記レンズ成型物の前記露出面を吸着し、前記第二状態の場合には、前記吸着装置の下側に備えられた吸着部で前記レンズ成型物の前記露出面を吸着してもよい。このように、吸着装置の上下両側に設けられた吸着部でレンズ整形物の露出面を吸着することで、吸着工程や吸着面変更工程において、吸着装置の上下を反転させる必要がなくなる。よって、レンズ成型に係る工程全体の効率化を図ることが可能となる。
【0012】
また、前記吸着面変更工程において、
前記吸着装置の上側に備えられた前記吸着部で前記レンズ成型物の前記露出面を吸着した状態で、前記レンズ成型物を前記仮置きトレイに下側から一旦載置し、
前記吸着装置が、前記吸着装置の下側に備えられた吸着部で、前記露出面と反対側の面を上側から再吸着してもよい。これによれば、吸着装置の上側と下側の両側に備えられた
吸着部を用いて、吸着面変更工程において、吸着装置の上下を反転させずに、より確実に吸着装置で吸着した面を露出面と反対側の面に変更することができる。よって、レンズ成型に係る工程全体のさらなる効率化を図ることが可能となる。
【0013】
なお、本発明においては、可能な限り、上記の課題を解決するための手段を組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、上型と下型を用いてレンズ成型物を成型する場合に、レンズ成型物が上型と下型の何れの方に残った場合にも、同じ姿勢でレンズ成型物を次工程に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態の製造方法に係るレンズ製造装置の概略図である。
図2図2は、反転トレイを用いたウェハーの反転動作について説明する第一の図である。
図3図3は、反転トレイを用いたウェハーの反転動作について説明する第二の図である。
図4図4は、反転トレイを用いたウェハーの反転動作について説明する第三の図である。
図5図5は、反転トレイの異なる形状を有する例について説明する図である。
図6図6は、反転トレイのさらに異なる形状を有する例について説明する図である。
図7図7は、従来の製造方法に係るレンズ製造装置の概略図である。
図8図8は、吸着装置の詳細について示す図である。
図9図9は、成型後のウェハーが上型に残った場合の、ピックアップロボットの従来の動作を示す図である。
図10図10は、成型後のウェハーが下型に残った場合の、ピックアップロボットの従来の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態〕
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るレンズ成型物の製造方法について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0017】
図7には、本実施形態における製造方法を適用する以前の、従前のレンズ製造装置101の概略図を示す。レンズ製造装置101では、複数のレンズを含む成型物、例えば複数の微細レンズ構造物を含むウェハーレベルレンズ(以下、単にウェハーWともいう)を製造する。レンズ製造装置101には、ウェハーWを成型する成型機2が備えられる。この成型機2の内部には、ウェハーWを成型するための成型型3を有する。
【0018】
また、レンズ製造装置101には、成型機2で成型されたウェハーWを、成型型3から取り出すピックアップロボット4を有する。ピックアップロボット4にはアーム4aが備えられており、成型型3に成型後に残っているウェハーWをアーム4aの先端に設けられた吸着装置6で吸着して取り出し、次工程にウェハーWを供給するためのトレイ5の上に並べて載置する。
【0019】
次に、図8を用いて、吸着装置6の詳細について説明する。図8(a)は、吸着装置6がウェハーWを吸着して取り出す際の状態の一例を示す図である。また、図8(b)には吸着装置6の平面図を示す。図8(a)に示すように、吸着装置6は、ピックアップロボット4のアーム4aの先端部4bに結合されている。吸着装置6は、板状のベース6cを有する。ベース6cの先端側の上下には、ウェハーWに吸着可能な吸着部6aと6bが各4本ずつ設けられている。各4本の吸着部6a、6bは、ウェハーWを安定して保持可能なように、縦横2本×2本が、長方形の四隅に位置するような形で配置されている。
【0020】
この吸着部6a、6bは管状の部分であり、その先端はゴム等の可撓性の素材からなるとともに吸盤状の形状を有している。この吸着部6a、6bは、ベース6cの内部または表面に配置された吸気管(不図示)を介して、ピックアップロボット4の外部に配置され真空装置(不図示)と連通され、真空装置によって吸気動作を行うことにより、ウェハーWの表面に密着することが可能になっている。なお、通常、吸着部6a、6bは、ウェハーWにおけるレンズ面以外の平面に吸着するような位置に配置されている。
【0021】
なお、図8(a)に示すように、本実施形態における成型型3は、上型3aと下型3bを有する。そして、上型3aと下型3bとが結合した状態でウェハーWが成型された後、下型3bに対して上型3aが離間する。その際、ウェハーWが下型3bに残る場合と上型3aに残る場合とがあり、この両方の場合に、吸着装置6は、ウェハーWに吸着して上型3aまたは下型3bから取り出す必要がある。吸着装置6におけるベース6cの先端には、上下方向に張り出し、ウェハーWが上型3a、下型3bのいずれに残っているかを検出する物検センサ6dが備えられている。この物検センサ6dは、光学的にウェハーWを検出するセンサであってもよいし、静電容量など、別の原理によってウェハーWを検出するセンサであってもよい。
【0022】
次に、図9及び図10を用いて、成型後のウェハーWが上型3aに残った場合と、ウェハーWが下型3bに残った場合の、ピックアップロボット4の動作の相違について説明する。図9及び図10においては、ウェハーWにおける第一面(例えばレンズが形成された面としてもよい。)と、第一面の反対型の第二面が識別可能なように、ウェハーWを2層で描いている。
【0023】
以下、ウェハーWにおいて色の濃い側を第一面として説明する。図9には、ウェハーWが下型3bに残った場合について記載されている。この場合、吸着装置6は、図9(a)に示すように、上型3aと下型3bの間に配置された状態から下方に移動し、吸着部6bがウェハーWの第一面側に吸着する。この工程は本開示における吸着工程に相当する。また、この場合のウェハーWの第一面は、本開示における露出面に相当する。
【0024】
そして、アーム4aの移動により、図9(b)に示すように、ウェハーWは、トレイ5の上部まで運搬される。このトレイ5は、次工程にウェハーWを提供するために一時的にウェハーWが載置される場所である。そして、吸着装置6は、トレイ5の上部から下降してウェハーWをトレイ5の上面に載置するとともに吸着を解除する。この場合には、ウェハーWの第一面が上側となった状態で、ウェハーWがトレイ上に載置される。
【0025】
次に、図10は、ウェハーWが上型3aに残った場合について示す。この場合には、図10(a)に示すように、ウェハーWを取り出す際に、吸着装置6は、上型3aと下型3bの間に配置された状態から上側に移動し、吸着部6aがウェハーWの第二面に吸着する。この工程も、本開示における吸着工程に相当する。また、この場合のウェハーWの第二面は、本開示における露出面に相当する。そして、アーム4aの移動により、ウェハーWは、トレイ5の上部まで運搬される。さらに吸着装置6の上下が反転された上で下降し吸着を解除することで、図10(b)に示すように、第二面が上側となった状態で、ウェハ
ーWがトレイ5上に載置される。
【0026】
このように、従来のレンズ製造装置101では、成型後にウェハーWが上型3aに残るか下型3bに残るかで、トレイ5に載置される方向が反対になっていた。その結果、次工程にウェハーWを提供する前にトレイ5上でウェハーWの姿勢を揃える工数が増加したり、誤作業によりウェハーWの姿勢が反対になったまま次工程に提供されてしまう等の不都合があった。
【0027】
次に、図1を用いて、本実施形態におけるレンズ製造装置1について説明する。レンズ製造装置1と先述のレンズ製造装置101との相違点は、レンズ製造装置1には、成型型3から取り出されたウェハーWを、ピックアップロボット4がトレイ5まで運搬する途中で、ウェハーWの上下を反転させるための反転トレイ7を備える点である。本実施形態では、ウェハーWの成型後にウェハーWが上型3aに残っていた場合に、ピックアップロボット4は反転トレイ7でウェハーWの上下を反転させる。
【0028】
ウェハーWの成型後にウェハーWが下型3bに残っていた場合には、ピックアップロボット4は反転トレイ7でウェハーWの上下を反転させずに、ウェハーWをトレイ5まで運搬する。なお、本実施形態において、ピックアップロボット4は成型物移動装置に相当する。また、ウェハーWの成型後にウェハーWが上型3aに残っている状態は、本開示の第一状態に相当する。ウェハーWの成型後にウェハーWが下型3bに残っている状態は、本開示の第二状態に想到する。また、反転トレイ7は本開示の仮置きトレイに相当する。
【0029】
次に、図2図4を用いて、反転トレイ7を用いたウェハーWの反転動作について説明する。このウェハーWの反転動作は、本開示における吸着面変更工程に相当する。図2及び図4は、成型後にウェハーWが上型3aに残っていた場合の、ウェハーWの反転動作を水平方向から見た図である。図3は、同じ場合のウェハーWの反転動作を上側から見た図である。先ず、図2(a)に示すように、吸着装置6は、上側の吸着部6aにウェハーWを吸着させた状態で、反転トレイ7の方向に移動する。
【0030】
その際、反転トレイ7の高さが、ベース6cとウェハーWの間に位置するように、吸着装置6の高さが制御される。そして、図2(b)に示すように、ウェハーWが反転トレイ7の上側、ベース6cが反転トレイ7の下側に位置するまで、吸着装置6を水平方向に移動させる。なお、この際、反転トレイ7は、図3(a)に示すように、図2の奥行き方向に関して、奥行き方向に並ぶ2つの吸着部6aの間を通る形となるため、吸着部6aと反転トレイ7が衝突することはない。
【0031】
次に、吸着部6aによる吸着を解除し、且つ、図2(c)に示すように、吸着装置6を下方に移動させる。このことにより、ウェハーWは、第一面を上にして、反転トレイ7の上に残る。そして、吸着装置6は、図4(a)に示すように、反転トレイ7の下から一旦離れるように水平方向に移動する。そして、図4(b)に示すように、今度は、反転トレイ7の上に移動する。さらに、吸着装置6は下降して、下側の吸着部6bでウェハーWの第一面を吸着する。そして、吸着装置6は図4(c)に示すように、ウェハーWを吸着したまま上昇する。次に、ピックアップロボット4は、図9(b)で示した、ウェハーWが成型後に下型3bに残った場合と同様、トレイ5の上側まで、第一面を上側にした状態で、ウェハーWを移動し、トレイ5上に載置する。この工程は本開示における載置工程に相当する。
【0032】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、ウェハーWの成型後において、ウェハーWが上型3aに残っているか下型3bに残っているかを、物検センサ6dで検知し、ウェハーWが下型3bに残っている場合には、ウェハーWの第一面を下側の吸着部6bで吸着
した。一方、ウェハーWが上型3aに残っている場合には、ウェハーWの第二面を上側の吸着部6aで吸着するとともに、反転トレイ7において、下側の吸着部6bで、ウェハーWの第一面を吸着し直すこととした。
【0033】
従って、成型後にウェハーWが下型3bに残っていた場合も、上型3aに残っていた場合も、ウェハーWをトレイ5まで移動する際には、下側の吸着部6bによって第一面を吸着する状態に揃えることが可能となった。その結果、トレイ5に載置されるウェハーWの姿勢を自動的に一方向に揃えることが可能となり、トレイ5上におけるウェハーWの姿勢のバラツキを回避することが可能となる。また、上記の実施形態においては、吸着装置6自体の上下を反転させる必要がないので、ピックアップロボット4の作動を単純化でき、コスト低減や、タクトタイムの低減を実現することが可能である。ここで、ウェハーWが上型3aに残っているか下型3bに残っているかを、物検センサ6dで検知する工程は、本開示における状態判定工程に相当する。
【0034】
なお、本開示においては、ベース6cの上下に上側の吸着部6aと下側の吸着部6bを備える吸着装置6を用いた場合について説明したが、本開示の製造方法は、吸着装置6が、ベース6cの片側にのみ吸着部を備える場合にも適用可能である。この場合には、成型終了後にウェハーWが上型3aに残っているか下型3bに残っているかに応じて、ピックアップロボット4のアーム4aの作動により吸着装置6の上下を反転して、吸着部によってウェハーWの露出面を吸着する。
【0035】
この場合であっても、上記の実施形態と同様、成型終了後にウェハーWが上型3aに残っているか下型3bに残っているかによって吸着部が吸着するウェハーWの面が異なる。したがって、例えば、成型終了後にウェハーWが上型3aに残っている場合には、反転トレイ7において、吸着部が吸着するウェハーの面を反転させることで、トレイ7上におけるウェハーWの姿勢を揃えることが可能となる。
【0036】
なお、上記の実施形態においては、成型物移動装置の例として、ピックアップロボット4を上げて説明したが、成型物移動装置は必ずしもロボットである必要はない。所定のシーケンスに従って作動する如何なる製造機械であってもよい。また、上記の実施形態においては、ウェハーWのレンズが形成された面を第一面、反対面を第二面としたが、第一面と第二面の定義は上記に限られない。また、レンズ成型物の例として、ウェハーレベルレンズを上げて説明したが、レンズ成型物はウェハーレベルレンズに限られない。レンズ機能を有する成型物であればよく、例えばレンズを一つだけ含む成型物であってもよい。また、レンズ成型物の材質は樹脂材料であってもよいし、ガラスなど他の材料であってもよい。成型方法についても、射出成型、インプリント成型、キャスティング成型等の他、如何なる成型方法であってもよい。
【0037】
また、上記の実施形態においては、ウェハーW上において、吸着部6a、6bによって吸着する場所は、上記した箇所に制限されない。例えば、図3(b)において、ウェハーWが、平面視で反転トレイ7と重ならない領域であれば、何れの場所を吸着しても構わない。また、上記の実施形態において吸着部6a、6bは管状の部分であり、その先端は吸盤状の形状を有していたが、吸着部の形状もこれに限定されない。上記の吸着可能な領域の一部を面吸着してもよい。その場合、吸着部の先端は例えば多孔質の素材で形成してもよい。
【0038】
また、上記の実施形態においては、反転トレイ7は平板状の形状を有していたが、反転トレイ7の形状もこれに限られない。図5には、反転トレイ7とは別の形状を有する反転トレイ17の概略構成について示す。図5(a)は平面図、図5(b)は断面A-A´による断面図である。反転トレイ17における、ウェハーWの進行方向に垂直な方向の両側
には、補助トレイ17a、17bが設けられている。なお、ウェハーWの反転動作の際には、吸着部6aは、反転トレイ17と、補助トレイ17a、17bの間の隙間を通過するので、吸着部6aと反転トレイ17または補助トレイ17a、17bが衝突することはない。
【0039】
反転トレイ17及び、補助トレイ17a、17bには、ウェハーWの水平方向の移動を制限する突起部17cが、平面視におけるウェハーWの進行方向及び、進行方向と垂直方向に4カ所設けられている。これにより、より確実に、ウェハーWを反転トレイ17上に保持することが可能となる。
【0040】
次に、図6には、さらに別の形状を有する反転トレイ27の概略構成について示す。図6(a)は平面図、図6(b)は断面B-B´による断面図である。反転トレイ27における、ウェハーWが載置される部分には、平面視でウェハーWの外径より若干大きい径を有する円弧状の段差27bを有する窪み部27aが形成されている。段差27bによって、ウェハーWの水平方向の移動が制限される。この構造よっても、より確実に、ウェハーWを反転トレイ27上に保持することが可能となる。
【0041】
以上、本開示に係るレンズ成型物の製造方法の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・レンズ製造装置
2・・・成型機
3・・・成型型
3a・・・上型
3b・・・下型
4・・・ピックアップロボット
4a・・・アーム
5・・・トレイ
6・・・吸着装置
6a、6b・・・吸着部
6c・・・ベース
6d・・・物検センサ
7、17、27・・・反転トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10