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  • 特開-リヨセル繊維の叩解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115781
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】リヨセル繊維の叩解方法
(51)【国際特許分類】
   D21B 1/14 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
D21B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018182
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真
(72)【発明者】
【氏名】笠井 誉子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 篤弥
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF10
4L055BA14
4L055BB03
4L055EA03
4L055EA16
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、幹繊維から脱落して生じた微細な繊維の含有量が従来法よりも少なく、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得るための方法を提供することにある。
【解決手段】リヨセル繊維の分散液をリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法であって、分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%であることを特徴とするリヨセル繊維の叩解方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヨセル繊維の分散液をリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法であって、分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%であることを特徴とするリヨセル繊維の叩解方法。
【請求項2】
分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が5.0~5.5質量%である請求項1記載のリヨセル繊維の叩解方法。
【請求項3】
請求項1又は2の叩解方法で得られたリヨセル繊維の分散液を、リヨセル繊維の濃度が0.1~1.0質量%となるように希釈した後にリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヨセル繊維の叩解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解キャパシタ(コンデンサ)、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)、リチウムイオン電池等の各種電気化学デバイスには、正極と負極の電気的接触を防ぎつつ、正極と負極との間でのイオンの移動を妨げないために、細孔を有するセパレータが用いられている。従来、これら電気化学デバイスのセパレータとしては、マニラ麻、エスパルト等の草本類植物に由来する天然セルロース繊維を主成分とする紙が広く用いられてきた。
【0003】
近年の電子機器小型化への要求に対応するため、これら電気化学デバイスには一層の小型化が求められている。しかし、天然セルロース繊維を主成分として、薄いセパレータを製造した場合、セパレータの緻密性が不足する問題があった。この問題に対し、薄いセパレータで高い緻密性を得るために、叩解されたリヨセル繊維を主成分とする不織布をセパレータとして用いることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
叩解されたリヨセル繊維を主成分とする不織布のセパレータにおいて、緻密で高い強度を有するセパレータを得るためには、リヨセル繊維を高度にフィブリル化する必要がある。しかし、従来公知の方法でリヨセル繊維をフィブリル化した場合、フィブリルが幹繊維から脱落して生じた繊維長0.2mm以下の微細な繊維(以下、「フィブリルが幹繊維から脱落して生じた繊維長0.2mm以下の微細な繊維」を「ファイン繊維」と記す場合がある)が大量に生成する問題があった。ファイン繊維が大量に含まれるリヨセル繊維を湿式抄造法によりシート化した場合、乾燥前の湿潤シートの強度が不十分となり、抄紙機上で湿潤シートが断裂して生産が中断したり、湿潤シートに変形が生じてセパレータにシワが生じたりと言う問題が生じ、好ましくない。これらの問題は、セパレータの坪量が低い程より顕著となるため、薄いセパレータを実現する上で重大な課題の一つとなっている。
【0005】
叩解初期の濃度を5~15質量%とし、叩解途中に希釈して叩解中期から末期の濃度を2~8質量%とすることで、繊維長を維持しつつ、フィブリル化を促進し、またフィブリルの脱落を抑制できることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この技術により、幹繊維の平均繊維長を維持しつつ、フィブリル化を進行させることは可能になるものの、ファイン繊維の生成を抑制するという点では未だ十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-123279号公報
【特許文献2】特開2018-82132号公報
【特許文献3】国際公開第2017/057335号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、幹繊維から脱落して生じた微細な繊維の含有量が従来法よりも少なく、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得るための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記手段によって解決することができる。
【0009】
(1)リヨセル繊維の分散液をリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法であって、分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%であることを特徴とするリヨセル繊維の叩解方法。
【0010】
(2)分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が5.0~5.5質量%である上記(1)記載のリヨセル繊維の叩解方法。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の叩解方法で得られたリヨセル繊維の分散液を、リヨセル繊維の濃度が0.1~1.0質量%となるように希釈した後にリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、高度にフィブリル化しており、かつ幹繊維から脱落して生じた微細な繊維の含有量が従来法よりも少ないリヨセル繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例及び比較例によって得られたリヨセル繊維におけるろ水度とファイン率の関係である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、リヨセル繊維の分散液をリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法であって、分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%であることを技術的特徴とする。この技術的特徴により、高度にフィブリル化しており、かつファイン繊維の含有量が従来法よりも少ないリヨセル繊維が得られるという優れた効果が得られる。分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%という極めて狭い特定の濃度領域にあることによって、繊維間において適切な摩擦力が発生し、ファイン繊維の発生量を抑制しつつ、高度なフィブリル化が可能になるものと考えられる。
【0015】
本発明において、高度なフィブリル化の「高度」とは、リヨセル繊維について、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012(カナダ標準ろ水度法)に準じて測定したろ水度(ml)が200ml以下であることを言う。この方法で測定されたリヨセル繊維のろ水度は、リヨセル繊維のフィブリル化度合いを示す良好な指標であり、ろ水度が小さい程、リヨセル繊維のフィブリル化が進んでいることを示す。
【0016】
なお、本発明の叩解方法によって得られる高度にフィブリル化したリヨセル繊維のろ水度を、JIS P8121-2:2012に規定されたふるい板、試料濃度で測定した場合、ふるい板の開口が大きすぎるため、分散液に含まれるリヨセル繊維の相当量がふるい板を通過してしまう問題がある。また、試料濃度が高過ぎるために、分散液の粘度が高いという問題もある。これら2つの問題のため、JIS P8121-2:2012に規定されたふるい板、試料濃度によって測定されたろ水度がフィブリル化度合いの指標にならないという問題があり、本発明におけるろ水度の測定には前記の方法を用いる。
【0017】
分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5質量%未満である場合は、フィブリル化が十分に進行しない。これは、リファイナー内における繊維間の摩擦力が不十分であるためと考えられる。分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が6.0質量%を超える場合は、ファイン繊維が増えてしまう。これは、リファイナー内における繊維間の摩擦力が過剰となり、フィブリルが幹繊維から脱落するためと考えられる。本発明において、ファイン繊維の生成を抑制しつつ、高度なフィブリル化を達成することができる、より好ましい分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度は、5.0~5.5質量%である。
【0018】
本発明では、繊維間に高い摩擦力が生じる条件で叩解を行うことから、副作用として、絡み合いによる繊維の凝集が生じる場合がある。繊維が凝集すると、叩解されたリヨセル繊維を主成分とする不織布に欠陥が生じる場合があるので好ましくない。リヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%であるリヨセル繊維の分散液をリファイナーで処理して、リヨセル繊維を叩解した後、リヨセル繊維の濃度が0.1~1.0質量%になるように希釈した後、再度リファイナーで処理することによって、絡み合いによる繊維の凝集を解消することができるので好ましい。リヨセル繊維の濃度が1.0質量%を超える分散液をリファイナーで処理しても、繊維の凝集を解消することができない場合がある。リヨセル繊維の濃度がより低い分散液をリファイナーで処理することで、繊維の凝集が解消され易く好ましいが、リヨセル繊維の濃度を0.1質量%未満とした場合、繊維の凝集を解消する効果がリヨセル繊維の濃度が0.1質量%の場合と同等に留まる一方で、処理すべき分散液量が増大することによって設備が大型化する問題や、凝集の解消に必要なエネルギー量が増大する問題が生じるから好ましくない。
【0019】
本発明においてリヨセル繊維とは、有機溶剤紡糸法により得られるセルロース繊維である(日本産業規格JIS L0204-2:2020)。具体的には、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ等の化学木材パルプ、コットンパルプ、リンターパルプ等の非木材パルプを、N-メチルモルホリンオキシド等のアミンオキシド、1-エチル-3-メチルイミダゾリニウムアセテート等のイオン液体等を主体とする溶媒に溶解したセルロース溶液を、細孔を有する口金から水等の液体中に噴射し糸状に析出させる、液中紡糸法によって繊維化したものである。市販されているリヨセル繊維としては、レンチングアクチエンゲゼルシャフト製のテンセル(登録商標)が挙げられるが、本発明に用いられるリヨセル繊維は、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、叩解とは、リヨセル繊維の分散液に外力を作用させることでリヨセル繊維の切断やフィブリル化等の改質を行う操作を言う。本発明においてリファイナーとは、円盤状、円筒状、円錐状の回転刃と、狭い間隙を介してこれらに対向する静止刃との間に繊維分散液を通過させ、刃と繊維の衝突、刃と繊維間に生じる摩擦、繊維間に生じる摩擦等の作用を利用して、リヨセル繊維の叩解を行うための装置である。リファイナーの例としては、コニカルリファイナー、デラックスファイナー、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナーが例示される。コロイドミル、ディスクミル等の、叩解以外の用途向けに製作された類似構造の装置も、本発明におけるリファイナーとして用いることができる。本発明に用いるリファイナーの回転刃、静止刃は、金属からなり、その表面には溝掘り加工により刃形状が形成されていることが一般的であるが、金属以外の素材からなる回転刃、静止刃や、その表面が溝掘り加工されていない回転刃、静止刃、例えば岩石を成形した粗い表面を有する回転刃、静止刃を用いることも可能である。
【0021】
リヨセル繊維には、製造される製品の白色度向上、光沢感の抑制等を目的に、酸化チタン等の無機粒子が添加されている場合がある。本発明の方法で叩解されるリヨセル繊維には、無機粒子が添加されていても良いし、添加されていなくても良い。リヨセル繊維の原綿には、単繊維間で融着が発生して取り扱いが困難になることを防止する目的で、油剤と呼ばれる油脂又は界面活性剤を主成分とする薬剤を付着させていることが多い。本発明の方法で叩解されるリヨセル繊維の原綿に付着している油剤の量や種類には、特に制限はない。
【0022】
本発明により叩解されたリヨセル繊維は、主として湿式抄造法によりシート化されて不織布や紙となる。より具体的には、本発明により叩解されたリヨセル繊維の分散液と、必要に応じて他の材料、例えば木材パルプ、非木材パルプ等の天然セルロース繊維;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生セルロース繊維;ポリエチレンテレフタレート系繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、全芳香族ポリアミド繊維等の合成繊維;ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の無機繊維、シリカ、アルミナ、ベーマイト、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、カオリン等の各種無機粒子、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メラミンホルマリン樹脂等の各種有機粒子等を混合し、適宜水で希釈し、ワイヤー上に展開し、ワイヤーの反対面より吸引するか又は重力落下を用いて脱水し、エアドライヤー、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー等の乾燥器を用いて水を乾燥除去することでシート化される。シート化された製品は、必要に応じカレンダーを用いて処理される。
【0023】
本発明により叩解されたリヨセル繊維を湿式抄造法によりシート化するのに用いる抄紙機の形式としては、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜網抄紙機、円網抄紙機等の抄紙機を用いることができる。これらの抄紙機のうちでも傾斜網抄紙機及び円網抄紙機が、固形分濃度の低い分散液を用いることができ、よって均一性に優れたシートを得ることができる点で好ましい。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において特に明示しない場合、%は質量%を指し、濃度は分散液に対するリヨセルの濃度を指す。
【0025】
実施例1
乾燥質量0.45kgのリヨセル繊維(繊度1.7dtex、繊維長4mm)に水を加え総量を10kgとし、パルパーを用いて分散させ、濃度4.5%のリヨセル繊維の分散液を得た。この分散液を、回転刃と固定刃間の間隙1.0mm、回転数毎分3000回転のシングルディスクリファイナー中に通じて叩解した。分散液の略全量がシングルディスクリファイナーから吐出されたところで、吐出された分散液を再度分散液投入口に戻し、更なる叩解を行った。分散液をシングルディスクリファイナーに通ずる回数(以下、「分散液をシングルディスクリファイナーに通ずる回数)を「パス」と記す)を変更することで、叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、18パスまで叩解処理をして、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得た。
【0026】
実施例2
リヨセル繊維の乾燥質量を0.50kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の濃度を5.0%とした以外は、実施例1と同様にして叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、13パスまで叩解処理をして、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得た。
【0027】
実施例3
リヨセル繊維の乾燥質量を0.55kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の濃度を5.5%とした以外は、実施例1と同様にして叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、18パスまで叩解処理をして、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得た。
【0028】
実施例4
リヨセル繊維の乾燥質量を0.60kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の濃度を6.0%とした以外は、実施例1と同様にして叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、13パスまで叩解処理をして、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得た。
【0029】
実施例5
実施例4の8パスで得たリヨセル繊維の分散液を、リヨセル繊維の分散液の濃度を1.5%となるように水で希釈し、回転刃と固定刃間の間隙0.5mm、回転数毎分3000回転のシングルディスクリファイナー中に1回通じて処理し、リヨセル繊維の分散液を得た。
【0030】
実施例6
希釈後のリヨセル繊維の分散液の濃度を1.0%とした以外は、実施例5と同様にしてリヨセル繊維の分散液を得た。
【0031】
実施例7
希釈後のリヨセル繊維の分散液の固形分濃度を0.1%とした以外は、実施例5と同様にしてリヨセル繊維の分散液を得た。
【0032】
比較例1
リヨセル繊維の乾燥質量を0.20kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の濃度を2.0%とした以外は、実施例1と同様にして、18パスまで叩解処理を実施し、分散液を得た。
【0033】
比較例2
リヨセル繊維の乾燥質量を0.40kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の濃度を4.0%とした以外は、実施例1と同様にして叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、実施例1と同様に、18パスまで叩解処理を実施した。
【0034】
比較例3
リヨセル繊維の乾燥質量を0.65kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の固形分濃度を6.5%とした以外は、実施例1と同様にして叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、8パスまで叩解処理をして、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得た。
【0035】
比較例4
リヨセル繊維の乾燥質量を0.80kgとすることで、リヨセル繊維の分散液の固形分濃度を8.0%とした以外は、実施例1と同様にして叩解処理の度合いが異なる分散液を得た。また、5パスまで叩解処理をして、高度にフィブリル化したリヨセル繊維を得た。
【0036】
比較例5
比較例4の2パスの分散液に水10kgを追加して固形分濃度を4.0%とした後、回転刃と固定刃間の間隙0.5mm、回転数毎分3000回転のシングルディスクリファイナー中に4回通じて処理し、リヨセル繊維の分散液を得た(計6パス)。
【0037】
ファイン率の測定
各実施例及び各比較例により作製したリヨセル繊維の分散液について、Tappi Test Method T271(Fiber length of pulp and paper by automated optical analyzer using polarized light)に準拠した光学式繊維長計(OpTest Equipment Inc.社製 Fiber Quality Analyzer-360型)を用いて、繊維長0.2mm以下の繊維の累積長さが全繊維の累積長さに占める割合(%)を計測した。
【0038】
ろ水度の測定
各実施例及び各比較例により作製した繊維分散液について、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012(カナダ標準ろ水度法)に準じてろ水度(ml)を測定した。
【0039】
リヨセル繊維の凝集の評価
実施例4~7により作製したリヨセル繊維の分散液について、濃度を0.1%に希釈した分散液500gを20cm×25cmのバットに入れ、繊維の凝集による塊の個数(凝集個数)を数えた。凝集個数が少ない程、リヨセル繊維が凝集しておらず、良好である。なお、分散液に多数の塊が含まれる場合、凝集個数の計測は困難であることから、凝集個数が30個を超えた場合は、凝集個数を「>30」と示した。
【0040】
実施例1~4、比較例1~5によって得られたリヨセル繊維について、パスを変えた場合のろ水度、ファイン率を表1に示す。また、各実施例、各比較例におけるろ水度とファイン率の関係を図1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例4~7によって得られたリヨセル繊維の分散液について、ろ水度、ファイン率、繊維凝集塊の個数を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
図1から分かる通り、同一又は類似のろ水度を有するリヨセル繊維が得られた場合を比較した場合、リヨセル繊維の分散液をリファイナーで処理するリヨセル繊維の叩解方法であって、分散液に含まれるリヨセル繊維の濃度が4.5~6.0質量%である実施例1~4によって叩解したリヨセル繊維は、比較例1~4によって叩解したリヨセル繊維よりもファイン率が低い。例えば、実施例1の5パス、実施例2の3パス、比較例1の18パス、比較例2の6パス(ろ水度300~320ml)を比較すると、実施例1及び2の方がファイン率が低い。また、実施例4の13パス、実施例3の18パス、比較例3の8パス、比較例4の5パス(ろ水度90~100ml)を比較すると、実施例3及び4の方がファイン率が低い。また、実施例1の18パス、比較例4の2パス(ろ水度180ml)を比較すると、実施例1の方がファイン率が低い。すなわち、実施例1~4によると、リヨセル繊維の濃度が4.5質量%未満である比較例1~2及びリヨセル繊維の濃度が6.0質量%を超える比較例3~4よりも、同程度のろ水度の場合に、ファイン繊維の含有量が少ないリヨセル繊維が得られている。特に、リヨセル繊維の濃度が5.0~5.5質量%である実施例2~3では、リヨセル繊維の濃度が4.5質量%である実施例1や、リヨセル繊維の濃度が6.0質量%である実施例4と比較しても、更にファイン率が低い(実施例1の5パスと実施例2の3パスとの比較、実施例3の8パスと実施例4の5パスとの比較)。また、比較例1及び2では、実施例1と同様に18パスまで叩解処理をしても、ろ水度が200ml以下に達せず、高度にフィブリル化することができなかった。
【0045】
表2から分かる通り、リヨセル繊維の分散液を、リヨセル繊維の濃度が1.5%となるように希釈した後に、リファイナー処理する実施例5においては、凝集個数が30個を超えており、実施例4と同様に、繊維の凝集による塊が多かったのに対し、リヨセル繊維の濃度が1.0%となるように希釈した後、リファイナーで処理した実施例6では8個、リヨセル繊維の濃度が0.1%となるように希釈した後、リファイナーで処理した実施例6では0個と、凝集個数が少ない。また、希釈後のリファイナー処理によっては、ろ水度やファイン率はほとんど変化しないことが確認され、ファイン繊維の含有量の増加は見られなかった。
【0046】
特許文献3に開示されている、叩解初期の濃度を5~15質量%、叩解中期から末期の濃度を2~8質量%とする技術のうち、本発明外の態様である比較例5、すなわち叩解初期の濃度を8質量%、叩解中期から末期の濃度を4質量%とした態様では、叩解初期の段階で既に本発明によるものよりもファイン繊維の含有量が高く、叩解中期~末期において更にファイン繊維の含有量が高くなっており、本発明によるもののような低いファイン率は得られていない。同じく叩解初期の濃度を5~15質量%、叩解中期から末期の濃度を2~8質量%とする技術のうち、本発明外の態様である比較例4、すなわち叩解初期の濃度を8質量%、叩解中期から末期の濃度を8質量%とした態様(希釈しない)でも、本発明によるもののような低いファイン率は得られていない。以上より、叩解初期の濃度が本発明の範囲である6質量%を超える場合は、低いファイン率が得られないことが分かる。この点について、特許文献3は開示しておらず、本発明で得られた新たな知見である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のリヨセル繊維の叩解方法は、電気化学デバイス用のセパレータ、特に厚みの薄いセパレータに使用されるリヨセル繊維の叩解方法として好ましく利用でき、緻密性に優れたセパレータを湿潤シートの断裂やシワの発生を抑制しつつ製造することができる様になる。
図1