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特開2023-115804制御システム、制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115804
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】制御システム、制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
G01S7/484
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018217
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213702
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 芳則
(72)【発明者】
【氏名】高田 聡
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA12
5J084BA52
5J084BB14
5J084BB20
5J084BB31
5J084CA03
5J084CA11
5J084CA21
5J084DA09
5J084EA33
(57)【要約】
【課題】パルス強度単体を高精度に安定化させる制御システム、制御装置及び制御方法を提供すること。
【解決手段】制御システムは、光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、第一パルス光を増幅する光増幅部と、第一パルス光を変数とするN次元方程式(Nは1以上の整数)で表されたパルス帯域光と、DC成分光と、を含む第二パルス光を検出する第二検出部と、N+1以上の複数のタイミングにおける第一パルス光及び二パルス光からN次元方程式の係数及びDC成分光を求めて第一パルス光に対するパルス帯域光の利得を求め、パルス帯域光の強度が一定となるように利得及び第一パルス光の一方又は両方を調整する制御部と、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、
前記第一パルス光を増幅する光増幅部と、
前記第一パルス光を変数とするN次元方程式(Nは1以上の整数)で表されたパルス帯域光と、DC成分光と、を含む第二パルス光を検出する第二検出部と、
N+1以上の複数のタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記N次元方程式の係数及び前記DC成分光を求めて前記第一パルス光に対する前記パルス帯域光の利得を求め、前記パルス帯域光の強度が一定となるように前記利得及び前記第一パルス光の一方又は両方を調整する制御部と、
を備える制御システム。
【請求項2】
前記N次元方程式は3次元以上の非線形方程式であり、
前記制御部は、N+1以上の異なるタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記N次元方程式の係数及び前記DC成分光を求める、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、直近の複数のタイミングに検出した前記第一パルス光及び前記第二パルス光を用いて前記係数及び前記DC成分光を求める、請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記N次元方程式は1次元の線形方程式であり、
前記制御部は、2回の異なるタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記N次元方程式の係数及び前記DC成分光を求める、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記DC成分光は、自然放射光である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記パルス帯域光の強度は、下記の式で求められる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御システム。
[但し、Ps n(t)は前記第一パルス光の強度、Ppulseは前記パルス帯域光の強度、αnはPs(t)のn次項の前記係数、ASEは前記DC成分光である自然放射光である。]
【請求項7】
光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、
前記第一パルス光を増幅する光増幅部と、
前記第一パルス光を変数とする非線形方程式で表されたパルス帯域光とDC成分光とを含む第二パルス光を検出する第二検出部と、
N+1以上の複数のタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記非線形方程式の係数及び前記DC成分光を求めて前記第一パルス光に対する前記パルス帯域光の利得を求め、前記パルス帯域光の強度が一定となるように前記利得及び前記第一パルス光の一方又は両方を調整する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項8】
制御システムにおける制御方法であって、
前記制御システムは、
光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、
前記第一パルス光を増幅する光増幅部と、
前記第一パルス光を変数とする非線形方程式で表されたパルス帯域光とDC成分光とを含む第二パルス光を検出する第二検出部と、
を備え、
N+1以上の複数のタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記非線形方程式の係数及び前記DC成分光を求めて前記第一パルス光に対する前記パルス帯域光の利得を求め、前記パルス帯域光の強度が一定となるように前記利得及び前記第一パルス光の一方又は両方を調整する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特定の波長の光を増幅させることを可能とした技術が提案されている。例えば、スキャナーを用いた距離計測技術では、パルス光源を用いたToF(Time Of Flight)方式が用いられている。スキャナーは高速に点群データを取得するため、パルス光の往復時間から距離を求める単発測距方式が用いられている。単発測距方式により出射するパルス光は、短いパルス幅、高ピークパワー、高繰り返し性(高安定性)が要求され、これを満たす光源として例えばファイバーレーザが使用されている。例として、特許文献1には、光検出及び測距システムにおいて、入力されたパルス光を利得ファイバーによって増幅させて出力させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6852085号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出力パルス光として出射されるレーザ光は、種火の光源であるレーザ光源から発生した短パルス光をファイバーアンプ(ファイバー増幅器、光ファイバ-アンプ又は利得ファイバー)でピーク強度を増幅させて高出力化している。一方で、このファイバーレーザを用いたスキャナーでは、定点測定の際にドリフトと呼ばれる、時間に依存した距離誤差が発生することが知られている。これは、スキャナーが単発測距であり、各パルス光の強度が変化することが原因の一つであることが知られている。そのため、出力される各パルス光のピーク強度を安定化させる必要がある。
【0005】
パルス光のピーク強度の安定化には、ファイバーアンプのポンプ光源を含むレーザシステム全体に対して温度調整機能を持たせた温調化が有効な手段の一つである。しかし、温調化行うための構成を設けるには、サイズ、コスト、消費電力等に関する課題がある。そこでオートパワーコントロール(APC)により出力されるパルス光の安定化を行うことが考えられるが、従来のAPCでは、パルス光とファイバーアンプで発生する自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)を含んだ平均出力のコントロールはできても、パルス単体の強度を制御することが困難であった。
【0006】
以上により、本開示は、パルス単体の強度を高精度に安定化させる制御システム、制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態に係る制御システムは、光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、前記第一パルス光を増幅する光増幅部と、前記第一パルス光を変数とするN次元方程式(Nは1以上の整数)で表されたパルス帯域光と、DC成分光と、を含む第二パルス光を検出する第二検出部と、N+1以上の複数のタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記N次元方程式の係数及び前記DC成分光を求めて前記第一パルス光に対する前記パルス帯域光の利得を求め、前記パルス帯域光の強度が一定となるように前記利得及び前記第一パルス光の一方又は両方を調整する制御部と、を備える。
【0008】
本開示の実施形態に係る制御装置は、光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、前記第一パルス光を増幅する光増幅部と、前記第一パルス光を変数とする非線形方程式で表されたパルス帯域光とDC成分光とを含む第二パルス光を検出する第二検出部と、N+1以上の複数のタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記非線形方程式の係数及び前記DC成分光を求めて前記第一パルス光に対する前記パルス帯域光の利得を求め、前記パルス帯域光の強度が一定となるように前記利得及び前記第一パルス光の一方又は両方を調整する制御部と、を備える。
【0009】
本開示の実施形態に係る制御方法は、制御システムにおける制御方法であって、前記制御システムは、光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、前記第一パルス光を増幅する光増幅部と、前記第一パルス光を変数とする非線形方程式で表されたパルス帯域光とDC成分光とを含む第二パルス光を検出する第二検出部と、を備え、N+1以上の複数のタイミングにおける前記第一パルス光及び前記第二パルス光から前記非線形方程式の係数及び前記DC成分光を求めて前記第一パルス光に対する前記パルス帯域光の利得を求め、前記パルス帯域光の強度が一定となるように前記利得及び前記第一パルス光の一方又は両方を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、パルス単体の強度を高精度に安定化させる制御システム、制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係るスキャナーを用いた測量システムの概略構成を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る制御システムの全体構成を示す図である。
図3図3(A)は増幅後のパルス光を示す図である。
図4】対応テーブルを示す図である。
図5】入力パルス強度と出力パルス強度の測定のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。図1は、スキャナー2を用いた測量システム1の概略構成を示す図である。測量システム1は、スキャナー2からターゲットTgまでの距離DをTOF(Time Of Flight)方式により測距して、例えば、点群データ作成のための測距データを取得することができる。
【0013】
スキャナー2は、内部に光の制御システム3を有する送信部21と、送信部21から出射されたパルス光L10をスキャナー2の外部に出射して、ターゲットTgにより反射されたパルス光L20を受信して受信部23に導光する導光部22と、反射光であるパルス光L20を受信して検出部24に導光する受信部23を備える。また、スキャナー2は、送信するパルス光L10の一部を分光して検出する検出部24と、受信したパルス光L20を検出する検出部25とを有する。スキャナー2は、検出部24によりパルス光L10が検出された出射タイミングT10と、検出部25により反射光であるパルス光L20が検出された入射タイミングT20とからパルス光の往復時間Tを求め、スキャナー2からターゲットTgまでの距離Dを、往復時間Tに光速cを乗じて求めることができる。
【0014】
またスキャナー2は、制御部26、記憶部27を有する。制御部26は、送信部21によるパルス光L10の出射制御、検出部24及び検出部25によるパルス光L10,L20の検出、演算等のその他の制御を行う。制御部26は、記憶部27に記憶されるプログラムに含まれるコード又は命令によって実現する機能及び/又は方法を実行する。スキャナー2は、プログラムを実行させるためのコンピュータを備える。制御部26は、例として、中央処理装置(CPU)、MPU、GPU、マイクロプロセッサ、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC、FPGA等を含み、集積回路等に形成された論理回路や専用回路によって各実施形態に開示される各処理を実現してもよい。また、これらの回路は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、各実施形態に示す複数の処理を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。また、制御部26は、記憶部27から読み出したプログラムを一時的に記憶し、作業領域を提供する主記憶部を備えてもよい。
【0015】
図2は、制御システム3の全体構成を示す図である。制御システム3は、前述したスキャナー2に適用可能であり、例えば、スキャナー2の送信部21が出射するパルス光L10を生成する光制御システムである。制御システム3は、スキャナー2の制御部26により制御される。なお、本実施形態では、制御システム3が制御部26により制御される例について説明するが、制御部26とは別体の制御部(例えば、中央処理装置(CPU)、MPU、GPU、マイクロプロセッサ、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC、FPGA等)により制御されてもよい。制御システム3は、レーザ光源301から出射された種火或いはシード光等とも称されるとされるパルス光L11を、強度の安定したパルス光L13として増幅させる光の増幅制御機能を有する。
【0016】
制御システム3は、レーザ光源301と、レーザ光源301から出射されたパルス光L11(第一パルス光)を検出する第一検出部312と、パルス光L10を増幅する光増幅部320と、増幅されたパルス光L11であるパルス光L13(第二パルス光)を検出する第二検出部342と、出射部306と、を備える。レーザ光源301から出射されたパルス光L11は、光ファイバー等により構成された光路Pによって各種の光学素子を介して導光される。
【0017】
レーザ光源301は、パルス光L11を出射可能な光源であり、例えば、分布帰還型レーザダイオード(DFB-LD:Distributed feedback laser diode)が用いられる。パルス光L11としては、例えば、アイセーフである1.5μm帯の光が用いられる。タップ311は、分光器、光スプリッタタップ又は光分岐タップとも称される光分岐部である。また、第一検出部312は、光を検出する機能を有し、例えば、受信した光を電気信号に変換するフォトダイオードが用いられる。レーザ光源301から出射されたパルス光L11の一部は、タップ311によって取り出されて、第一検出部312により検出される。
【0018】
光増幅部320は、ポンプレーザダイオード321と、FBGフィルタ322(Fiber Bragg Grating Filter)と、合成部323と、ファイバーアンプ324とを有する。ポンプレーザダイオード321は、光増幅媒体であるファイバーアンプ324に対してレーザを発振させるための励起レーザ光を出射する光源素子である。ポンプレーザダイオード321としては、例えば、シングルモード光ファイバー(SMF:single mode optical fiber)カップルレーザダイオードが用いられる。
【0019】
FBGフィルタ322は、励起に有効な所定波長帯域の光を反射し、ポンプレーザダイオード321へ帰還することでポンプレーザダイオード321の発振波長を安定させるためのフィルタである。合成部323は、タップ側から導光されたパルス光L11と、ポンプレーザダイオード321から導光された励起レーザ光とを合成して、各光をファイバーアンプ324へ導光する。合成部323は、例えば、WDM光カプラ(Wavelength Division Multiplexing optical coupler)が用いられる。
【0020】
ファイバーアンプ324は、合成部323から入射したパルス光L11を増幅させる増幅器であり、例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)が用いられる。ファイバーアンプ324は、励起レーザ光を入射させてパルス光L11のパルス帯域光Lp(図3(A)参照)を増幅させる。
【0021】
アイソレータ302は、ファイバーアンプ324により増幅されたパルス光L12をサーキュレータ303側に導光する。一方、アイソレータ302は、サーキュレータ303側から入射された光(例えば、サーキュレータ303側の光路Pにおける散乱戻り光等)を遮光することでファイバーアンプ324(ファイバーレーザ)内のレーザ光の寄生発振を抑制する。サーキュレータ303は、アイソレータ302側から入射したパルス光L12をFBGフィルタ304側へ導光し、FBGフィルタ304側から入射したパルス光L12を光増幅部330側へ導光する。FBGフィルタ304は、サーキュレータ303側から入射したパルス光L12の内、所定波長帯域の光を反射させる。サーキュレータ303とFBGフィルタ304とにより、バンドパスフィルタ350が構成される。
【0022】
光増幅部330は、ポンプレーザダイオード331と、合成部332と、ファイバーアンプ333とを有する。ポンプレーザダイオード331は、光増幅媒体であるファイバーアンプ333に対してレーザを発振させるための励起レーザ光を出射する光源素子である。ポンプレーザダイオード331としては、例えば、マルチモード光ファイバー(MMF:Multi-Mode Optical Fiber)カップルレーザダイオードが用いられる。
【0023】
合成部332は、ポンプレーザダイオード331から出射された励起レーザ光をファイバーアンプ333側へ導光し、ファイバーアンプ333側から出射されたパルス光L13をアイソレータ305側に導光する。ファイバーアンプ333は、サーキュレータ303から導光されたパルス光L11を増幅させる増幅器であり、例えば、エルビウム及びイッテルビウムを添加したダブルクラッドファイバーアンプが用いられる。ファイバーアンプ333は、合成部332から入射された励起レーザ光によりパルス光L12のピーク帯域の光を増幅させる。この増幅されたパルス光L12は、パルス光L13として、ファイバーアンプ333から合成部332を介してアイソレータ305側に導光される。
【0024】
図3(A)は増幅前のパルス光L11を示す図である。また、図3(B)は増幅後のパルス光L13を示す図である。図3(A)及び図3(B)において、縦軸は光の強度を示し、横軸は波長を示している。増幅前のパルス光L11は、パルス光L13のパルス帯域光Lpと略同波長のパルス帯域光Lpを含む。一方、図3(B)に示すように、各光増幅部320,330により増幅された増幅後のパルス光L13は、パルス光L11よりも強度が増幅されたパルス帯域光Lpと、DC成分光である自然放射光ASEとを含んでいる。自然放射光ASEは、前段の光増幅部320と、後段の光増幅部330の光路Pの間に配置されてサーキュレータ303とFBGフィルタ304で構成されたバンドパスフィルタ350により、通過帯域W1に含まれない第一成分光La1が取り除かれている。従って、光増幅部330による増幅前であってバンドパスフィルタ350を通過したパルス光L12には、パルス帯域光Lpと、自然放射光ASEのうちの通過帯域W1に含まれる第二成分光La2とを含まれている。光増幅部330により増幅されたパルス光L13は、パルス光L12よりもピークの強度が増幅されたパルス帯域光Lpと、第二成分光La2(自然放射光ASEの一部)とを含む。
【0025】
アイソレータ305は、ファイバーアンプ333により増幅されたパルス光L13をタップ341側に導光する。一方、アイソレータ305は、タップ341側から入射された光(例えば、タップ341側の光路Pにおける戻り光等)を遮光する。具体的に、制御システム3が生成した光を本実施形態のスキャナー2又は図示しないトータルステーション等のパルス光L10として用いる場合、建物、土地又はコーナーキューブプリズム等の物体から反射されたパルス光L10の一部が制御システム3内に戻り光(パルス光L20)として入射することがある。アイソレータ305は、反射されたパルス光L10(パルス光L20)が制御システム3(ファイバーレーザ)内に侵入した場合であっても、内部の機器や部品の損傷を防ぐための対策として機能する。
【0026】
タップ341は、分光器、光スプリッタタップ又は光分岐タップとも称される光分岐部である。また、第二検出部342は、光を検出する機能を有し、例えば、受信した光を電気信号に変換するフォトダイオードが用いられる。アイソレータ305から出射されたパルス光L13の一部は、タップ341によって取り出されて、第二検出部342により検出される。一方、アイソレータ305から出射されたパルス光L13の他の一部は、タップ341を介して出射部306からパルス光L10として出射される。
【0027】
図4は、記憶部27に記憶される対応テーブル4を示す図である。対応テーブル4は、タイミングtに対応して、入力パルス強度Ps(t)及び出力パルス強度Po(t)を記憶する。入力パルス強度Ps(t)は、あるタイミングtにおいて第一検出部312が検出したパルス光L11の強度である。また、出力パルス強度Po(t)は、タイミングtにおいて第二検出部342が検出したパルス光L13の強度である。
【0028】
ここで、制御システム3により生成されるパルス光L10の制御方法の例について説明する。レーザ光源301から出射されたパルス光L11は、一部が第一検出部312により検出される。制御部26は、所定の複数のタイミングtにおいて、第一検出部312によりパルス光L11を検出してパルス光L11の強度である入力パルス強度Ps(t)を取得し、第二検出部342によりパルス光L13を検出してパルス光L13の強度である出力パルス強度Po(t)を取得する。
【0029】
ファイバーアンプ324内を伝播するパルス波形と、スペクトル分布の変化は非線形シュレーディンガー方程式(NLSE:Nonlinear Schr&ouml;dinger equation)を用いて以下の式(1)で算出することができる。
・・・(1)

ここで、A0はパルスの包絡線分布、T0はパルスの群速度で移動する遅延時間、zが伝播距離である。また、αはファイバーの減衰係数、gはファイバーアンプの増幅率、βは線形分散係数、γは非線形係数である。このように、ファイバー増幅器においては、入射光と出射光の間に非線形な関係がある。
【0030】
そこで、より高精度にファイバーアンプの利得を求めるために、利得の非線形性と自然放射光ASEを考慮すると、出力パルス強度Po(t)は次の式(2)に示すような3次元非線形方程式で表される。

o(t)=α1s(t)+α2s 2(t)+α3s 3(t)+ASE ・・・(2)

ここで、α1、α2、α3は、それぞれ入力パルス強度Ps(t)の1次、2次及び3次の係数である。また、ASEは自然放射光である。本実施形態のASEは、利得A等の算出に用いられる入力パルス強度Ps(t)や出力パルス強度Po(t)の測定期間の範囲において、その時間変化は無視できるものとして(即ち、ASEは定数であるものとして)扱う。
【0031】
制御部26は、対応テーブル4を参照して、複数のタイミングtにおける入力パルス強度Ps(t)及び出力パルス強度Po(t)から、式(2)の未知数である係数α1、α2、α3及びASEを求める。例えば、式(2)は、4つの未知数を含むため、図4に示した4つの異なるタイミングt1~t4に対応する入力パルス強度Ps(t)及び出力パルス強度Po(t)を代入した連立方程式により、係数α1、α2、α3及びASEを求めることができる。
【0032】
また、式(2)の出力パルス強度Po(t)のうち、パルス帯域光Lpのパルス強度Ppulseは、以下の式(3)で表される。

pulse=α1s(t)+α2s 2(t)+α3s 3(t) ・・・(3)
【0033】
従って、レーザ光源301から出射されたパルス光L11の入力パルス強度Ps(t)に対する、パルス帯域光のパルス強度Ppulseの利得A(或いは増幅率)は、式(4)で表される。

A=Ppulse/Ps(t) ・・・(4)
【0034】
制御部26は、利得A及び入力パルス強度Ps(t)の一方又は両方を調整することで、パルス帯域光Lpのパルス強度Ppulseが一定となるように制御することができる。制御部26は、利得Aを変化させる場合、ポンプレーザダイオード321及びポンプレーザダイオード331の一方又は両方の出力を制御する。また、制御部26は、入力パルス強度Ps(t)を変化させる場合、レーザ光源301の出力を制御する。
【0035】
なお、制御部26は、利得A又は入力パルス強度Ps(t)のうちの増幅感度の低い方(例えば、利得A又は入力パルス強度Ps(t)の変化率に対するパルス強度Ppulseの変化量が小さい方)を調整すると、パルス強度Ppulseが一定となるように高精度に制御することができる。一方、制御部26は、利得A又は入力パルス強度Ps(t)のうちの増幅感度の高い方(例えば、利得A又は入力パルス強度Ps(t)の変化率に対するパルス強度Ppulseの変化量が大きい方)を調整すると、パルス強度Ppulseを高い倍率で制御することができる。
【0036】
パルス強度Ppulseを一定とするには、制御部26は、例えば、直近(直前)の複数(本実施形態では4回以上)のタイミングtに検出したパルス光L11(第一パルス光)の入力パルス強度Ps(t)と、パルス光L13(第二パルス光)の出力パルス強度Po(t)とを用いて係数α1、α2、α3及びASEを求める。
【0037】
図5は、入力パルス強度Ps(t)と出力パルス強度Po(t)の測定のタイミングtを示す図である。範囲Rn、Rn-1及びRn-2は、それぞれ、タイミングtn、tn-1及びtn-2でパルス強度Ppulseを算出する場合に、いずれのタイミングtに取得した入力パルス強度Ps(t)と出力パルス強度Po(t)を用いるのかを示している。例えば、タイミングtにおいてパルス強度Ppulseを算出する場合、範囲Rnのタイミングtn、tn-1、tn-2及びtn-3に取得された入力パルス強度Ps(tn)、Ps(tn-1)、Ps(tn-2)及びPs(tn-3)と、出力パルス強度Po(tn)、Po(tn-1)、Po(tn-2)及びPo(tn-3)とが用いられる。また、タイミングtn-1においてパルス強度Ppulseを算出する場合、範囲Rn-1のタイミングtn-1、tn-2、tn-3及びtn-4に取得された入力パルス強度Ps(tn-1)、Ps(tn-2)、Ps(tn-3)及びPs(tn-4)と、出力パルス強度Po(tn-1)、Po(tn-2)、Po(tn-3)及びPo(tn-4)とが用いられる。
【0038】
このように、過去に取得した検出値を用いることで、パルス強度Ppulseを継続して安定化することができる。なお、制御部26は、入力パルス強度Ps(t)と出力パルス強度Po(t)の古いデータから順に記憶部27から削除して、記憶部27の容量増加を低減することができる。
【0039】
また、制御部26は、パルス強度Ppulseをその平均値を用いて一定に制御する場合、基準となるパルス強度Ppulseの平均値は次の式(5)により求めてもよい。
・・・(5)
【0040】
以上のように、APC制御を適用した場合にパルス強度Ppulseだけではなく自然放射光ASEも含んだ平均パワーによる制御が行われた場合では、安定したパルス強度Ppulseを出力することが難しいが、本実施形態の制御システム3では、DC成分光である自然放射光ASEを考慮するため、安定したパルス強度Ppulseのパルス帯域光Lpを含んだ光を出力制御することができる。
【0041】
なお、本実施形態で説明した制御システム3は、一つ又は複数の機器等による制御装置として構成してもよい。例えば、制御装置は、一つ又は複数の機器に、レーザ光源301、第一検出部312、光増幅部320,330、第二検出部342、制御部26及び記憶部27等を設けた装置として構成することができる。
【0042】
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1について説明する。なお、変形例1において、前述した制御システム3、制御装置、及び制御方法と同様の構成については、説明を省略又は簡略化する。
【0043】
前述した利得Aと、DC成分光である自然放射光ASEを考慮したパルス光L13の出力パルス強度Po(t)は、3次元非線形方程式に限らず、入力パルス強度Ps(t)のN次元方程式(Nは整数)で求めることができ、例えば、式(6)で表すことができる。
・・・(6)

但し、Ps n(t)は増幅前のパルス光L11(第一パルス光)の入力パルス強度、Po n(t)は増幅後のパルス光L13(第二パルス光)の出力パルス強度、αnはPs n(t)のn次項の係数、ASEはDC成分光である自然放射光である。従って、出力のパルス光L13(第二パルス光)は、入力のパルス光L11(第一パルス光)を変数とするN次元方程式(Nは1以上の任意の整数)で表されたパルス帯域光とDC成分光とを含む。
【0044】
式(6)のように出力パルス強度Po(t)を入力パルス強度Ps(t)のN次式で近似すると、パルス帯域光Lpのパルス強度Ppulseは、下記の式(7)で表される。
・・・(7)
【0045】
制御部26は、N+1回の異なるタイミングtにおける入力パルス強度Ps n(t)(第一パルス光)及び出力パルス強度Po n(t)(第二パルス光)からN次元方程式の係数αn及び自然放射光ASE(DC成分光)を求める。利得Aは、式(4)で求めることができる。制御部26は、利得A及び入力パルス強度Ps(t)の一方又は両方を調整することで、パルス帯域光Lpのパルス強度Ppulseが一定となるように制御することができる。
【0046】
なお、非線形性を考慮する場合、式(6)及び式(7)のNは2以上として計算される。
【0047】
以上、出力パルス強度Po n(t)を入力パルス強度Ps n(t)のN次式で一般化して計算する場合、合計の変数はN+1つとなるため、第一検出部312及び第二検出部342はN+1回の測定により取得される。このため制御システム3は、簡易な構成で、パルス強度Ppulseをより高い精度で制御することができる。なお、N+1回の測定の間においても、自然放射光ASEの値は定数(一定)とみなすことができる。制御システム3は、前回の測定データ(入力パルス強度Ps n(t)、出力パルス強度Po n(t))を記憶部27に保存しておくことで、利得Aや入力パルス強度Ps n(t)の制御値を更新しながらパルス帯域光Lpのパルス強度Ppulseが安定化させることができる。
【0048】
(変形例2)
また、変形例2として、入力パルス強度Ps(t)のN次元方程式はN=1の1次元の線形方程式としてもよい。この場合、入力パルス強度Ps(t)及び出力パルス強度Po(t)は、異なるタイミングtで2回測定を行って、係数α1及び自然放射光ASEを求めることができるため、簡易な方法でDC成分光を考慮して、計算を行うことができる。前述した制御システム3、制御装置、及び制御方法と同様の構成については、説明を省略又は簡略化する。
【0049】
制御部26は、2回の異なるタイミングtにおけるパルス光L11(第一パルス光)及びパルス光L12(第2パルス光)から1次元方程式の係数α1、及び自然放射光ASE(DC成分光)を求めてパルス光L11に対するパルス帯域光の利得Aを求めることができる。
【0050】
以上により、本開示の実施形態に係る制御システム3は、光源から出射された第一パルス光を検出する第一検出部と、第一パルス光を増幅する光増幅部と、増幅された一パルス光であって、第一パルス光を変数とするN次元方程式(Nは1以上の整数)で表されたパルス帯域光とDC成分光とを含む第二パルス光を検出する第二検出部と、複数のタイミングにおける第一パルス光及び前記第二パルス光からN次元方程式の係数及びDC成分光を求めて第一パルス光に対するパルス帯域光の利得を求め、パルス帯域光が一定となるように利得A及び第一パルス光の一方又は両方を調整する制御部と26、を備える構成について説明した。
【0051】
このような構成とすると、光源から出射されるパルス光を増幅させる際にDC成分光が含まれていた場合であっても、DC成分光を考慮してパルス帯域光Lpが一定となるように増幅部(光増幅部320及び光増幅部330の一方又は両方)の利得や光源(例えば、レーザ光源301)の出力を制御することができる。このため、制御システム3、制御装置及び制御方法は、制御システム3の温調のために複雑な構成と採用しなくても簡易な構成でパルス強度単体を高精度に安定化させることができる。
【0052】
以上で、本開示の実施形態の説明を終えるが、本開示の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、ファイバーアンプ324及びファイバーアンプ333は、マルチモードファイバ(MMF)、シングルモードファイバ(SMF)、ダブルクラッドファイバ(DCF)、フォトニック結晶ファイバ(PCF)の任意の構成を適用したり、EDFA、PDFA(Praseodymium Doped Fiber Amplifier)やTDFA(Thulium Doped Fiber Amplifier)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 測量システム
2 スキャナー
3 制御システム
4 対応テーブル
21 送信部
22 導光部
23 受信部
24 検出部
25 検出部
26 制御部
27 記憶部
301 レーザ光源
302 アイソレータ
303 サーキュレータ
304 FBGフィルタ
305 アイソレータ
306 出射部
311 タップ
312 第一検出部
320 光増幅部
321 ポンプレーザダイオード
322 FBGフィルタ
323 合成部
324 ファイバーアンプ
330 光増幅部
331 ポンプレーザダイオード
332 合成部
333 ファイバーアンプ
341 タップ
342 第二検出部
350 バンドパスフィルタ
A 利得
ASE 自然放射光
D 距離
L10,L11~L13,L20 パルス光
La1 第一成分光
La2 第二成分光
Lp パルス帯域光
P 光路
o 出力パルス強度
s 入力パルス強度
n-1,Rn-1,Rn 範囲
T 往復時間
T10 出射タイミング
T20 入射タイミング
Tg ターゲット
W1 通過帯域
c 光速
t(t1,t2,t3,t4・・・tn) タイミング
α1,α2,α3,αn 係数
図1
図2
図3
図4
図5