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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115817
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20230814BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018238
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 光政
(72)【発明者】
【氏名】石田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健治
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA02
5H621BB07
5H621GA04
5H621GB10
5H621HH01
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】コギングトルクを低減すること。
【解決手段】ブラシレスモータ1は、回転軸2と、回転軸2を保持するロータコア71と、ロータコア71に保持された複数の永久磁石72と、ロータコア71の周囲に配置されたステータコア4と、を備える。ロータコア71は、回転軸2の軸方向に沿って積層された第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bを含む。第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bは、外周面において、少なくとも1つの第1近接部PA及び少なくとも1つの第2近接部PBを有する。少なくとも1つの第1近接部PAは、一方向から見たときに、ステータコア4との間隔が周辺部分と比較して狭い。少なくとも1つの第2近接部PBは、一方向から見たときに、ステータコア4との間隔が周辺部分と比較して狭い。少なくとも1つの第1近接部PAの位置と、少なくとも1つの第2近接部PBの位置とは、一方向から見たときに互いに異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を保持するロータコアと、
前記ロータコアに保持された複数の永久磁石と、
前記ロータコアの周囲に配置されたステータコアと、を備え、
前記ロータコアは、前記回転軸の軸方向に沿って並ぶ第1コアブロック及び第2コアブロックを含み、
前記第1コアブロック及び前記第2コアブロックは、前記回転軸の軸方向に沿った一方向から見たときに互いに形状が異なり、
前記第1コアブロックは、外周面において、少なくとも1つの第1近接部を有し、
前記少なくとも1つの第1近接部は、前記一方向から見たときに、前記第1コアブロックの外周面における前記少なくとも1つの第1近接部以外の周辺部分と比較して、前記ステータコアとの間隔が狭く、
前記第2コアブロックは、外周面において、少なくとも1つの第2近接部を有し、
前記少なくとも1つの第2近接部は、前記一方向から見たときに、前記第2コアブロックの外周面における前記少なくとも1つの第2近接部以外の周辺部分と比較して、前記ステータコアとの間隔が狭く、
前記少なくとも1つの第1近接部の位置と、前記少なくとも1つの第2近接部の位置とは、前記一方向から見たときに互いに異なる
ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記複数の永久磁石は、前記回転軸の周囲において前記回転軸の周方向に並んだ状態で前記ロータコアに保持され、
前記複数の永久磁石の各々の長手方向は、前記一方向から見て、前記回転軸の径方向に沿っており、前記複数の永久磁石の各々の短手方向は、前記長手方向と交差する方向に沿っており、
前記複数の永久磁石は、前記短手方向に着磁されている
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記第1コアブロック及び前記第2コアブロックは、前記一方向から見た形状が、前記回転軸の中心軸を通る対称面に対して互いに対称である
請求項1又は2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記第1コアブロックは、前記軸方向に沿って複数の第1電磁鋼板を積層することによって形成され、
前記第2コアブロックは、前記軸方向に沿って複数の第2電磁鋼板を積層することによって形成される
請求項1~3のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
前記複数の第1電磁鋼板と、前記複数の第2電磁鋼板とは、前記一方向から見た形状が、前記回転軸の中心軸を通る対称面に対して互いに対称である
請求項4に記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
先端工具を保持する出力軸と、
前記出力軸を回転させる、請求項1~5のいずれか1項に記載のブラシレスモータと、を備える
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にブラシレスモータ及び電動工具に関する。より詳細には、本開示は、ロータコア及び複数の永久磁石を備えるブラシレスモータ及びこのブラシレスモータを備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、回転軸と、回転軸を保持するロータコアと、ロータコアに保持された複数の永久磁石と、ロータの周囲に配置されたステータコアと、ステータコアに巻かれた複数のコイルと、を有するモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-132501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようなモータにおいて、ロータコア及び複数の永久磁石とステータコアとの間の磁気吸着力によってコギングトルクが発生する問題があった。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、コギングトルクを低減することができるブラシレスモータ及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るブラシレスモータは、回転軸と、前記回転軸を保持するロータコアと、前記ロータコアに保持された複数の永久磁石と、前記ロータコアの周囲に配置されたステータコアと、を備える。前記ロータコアは、前記回転軸の軸方向に沿って並ぶ第1コアブロック及び第2コアブロックを含む。前記第1コアブロック及び前記第2コアブロックは、前記回転軸の軸方向に沿った一方向から見たときに互いに形状が異なる。前記第1コアブロックは、外周面において、少なくとも1つの第1近接部を有する。前記少なくとも1つの第1近接部は、前記一方向から見たときに、前記第1コアブロックの外周面における前記少なくとも1つの第1近接部以外の周辺部分と比較して、前記ステータコアとの間隔が狭い。前記第2コアブロックは、外周面において、少なくとも1つの第2近接部を有する。前記少なくとも1つの第2近接部は、前記一方向から見たときに、前記第2コアブロックの外周面における前記少なくとも1つの第2近接部以外の周辺部分と比較して、前記ステータコアとの間隔が狭い。前記少なくとも1つの第1近接部の位置と、前記少なくとも1つの第2近接部の位置とは、前記一方向から見たときに互いに異なる。
【0007】
本開示の一態様に係る電動工具は、先端工具を保持する出力軸と、前記出力軸を回転させる前記ブラシレスモータを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コギングトルクを低減することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係るブラシレスモータの平面図である。
図2図2は、同上のブラシレスモータが備える回転軸及びロータの斜視図である。
図3図3は、同上のブラシレスモータが備える回転軸及びロータの分解斜視図である。
図4図4は、図1の領域A1の拡大図である。
図5図5は、図1のX1-X1線断面図である。
図6図6は、同上のブラシレスモータを備える電動工具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態に係るブラシレスモータ1について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、下記の実施形態(変形例を含む)は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0011】
(1)概要
まず、本実施形態のブラシレスモータ1の概要を、図1図4を参照して説明する。
【0012】
ブラシレスモータ1は、一例として、8極12スロットの3相ブラシレスモータである。ブラシレスモータ1は、図1に示すように、回転軸2と、回転軸2を保持するロータコア71と、ロータコア71に保持された複数の永久磁石72と、ロータコア71の周囲に配置されたステータコア4と、を備える。
【0013】
ロータコア71は、図1図3に示すように、回転軸2の軸方向に沿って並ぶ第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bを含む。ここで、第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bは、回転軸2の軸方向に沿った一方向(第1方向)から見たときに互いに形状が異なる。
【0014】
第1コアブロック7Aは、図1及び図4に示すように、外周面において、少なくとも1つの第1近接部PAを有する。少なくとも1つの第1近接部PAは、第1方向から見たときに、第1コアブロック7Aの外周面における少なくとも1つの第1近接部PA以外の周辺部分と比較して、ステータコア4との間隔が狭い。第2コアブロック7Bは、外周面において、少なくとも1つの第2近接部PBを有する。少なくとも1つの第2近接部PBは、第1方向から見たときに、第2コアブロック7Bの外周面における少なくとも1つの第2近接部PB以外の周辺部分と比較して、ステータコア4との間隔が狭い。
【0015】
少なくとも1つの第1近接部PAの位置と、少なくとも1つの第2近接部PBの位置とは、第1方向から見たときに互いに異なる。換言すると、少なくとも1つの第1近接部PA及び少なくとも1つの第2近接部PBは、第1方向から見たときに互いに重ならないように設けられている。
【0016】
本実施形態のブラシレスモータ1では、複数の永久磁石72から発生する磁束は、磁性体であるロータコア71を介して、少なくとも1つの第1近接部PA及び少なくとも1つの第2近接部PBから磁性体であるステータコア4に流入する。これにより、複数の永久磁石72及び複数の永久磁石72を保持するロータコア71と、ステータコア4との間には磁気吸着力が生ずる。このとき、ステータコア4との間隔が周辺部分よりも近い少なくとも1つの第1近接部PA及び少なくとも1つの第2近接部PBにおいて特に強い磁気吸着力が生じるため、ロータコア71を回転させたときに、コギングトルクが発生する。ここで、上記の構成によれば、回転軸2の周方向において、第1コアブロック7Aに発生する磁気吸着力が最大になる位置と、第2コアブロック7Bに発生する磁気吸着力が最大になる位置とをずらすことができる。これにより、ブラシレスモータ1において、ロータ7をステータ3に対して回転させたときに発生するコギングトルクを低減することができる。
【0017】
(2)詳細
以下、本実施形態に係るブラシレスモータ1及びブラシレスモータ1を備える電動工具10について、図1図6を参照して詳しく説明する。なお、本開示でいう「垂直」とは、完全な垂直だけでなく、2つの平面又は2つの直線がなす角度が90°から数度程度(例えば±5°)ずれている実質的な垂直も含む。
【0018】
(2.1)ブラシレスモータ
ブラシレスモータ1は、図1に示すように、回転軸2と、ステータ3と、ステータ3に対して回転するロータ7を備える。ステータ3は、ステータコア4と、インシュレータ5と、例えば12個のコイル6と、を有している。ステータコア4は、環状の外筒部42、環状の内筒部43及び内筒部43から外側へ突出した例えば12本のティース44を有する。各コイル6は、各ティース44にインシュレータ5を介して設置される。ロータ7は、回転軸2を保持するロータコア71と、例えば8つの永久磁石72と、を有する。8つの永久磁石72はロータコア71に保持されている。ロータ7は、ステータ3の内側に空隙を介して配置され、ステータ3に対して回転軸2の中心軸Ax1を中心として回転する。詳細には、コイル6に電流が流れたときに発生する磁束と、永久磁石72によって発生する磁束とが相互作用することにより、ロータ7をステータ3に対して回転させる力が発生する。ロータ7の回転力(駆動力)は、回転軸2から外部に伝達される。
【0019】
(2.1.1)ロータ
ロータ7は、図1に示すように、回転軸2を保持するロータコア71と、8個の永久磁石72と、を有している。
【0020】
ロータコア71は、図2及び図3に示すように、回転軸2の軸方向に沿って並ぶように回転軸2に取り付けられる2個のコアブロック(第1コアブロック7A及び第2コアブロック7B)を有する。なお本実施形態では、第1コアブロック7A側をブラシレスモータ1の上側、第2コアブロック7B側をブラシレスモータ1の下側として説明を行うことがあるが、これらの方向は一例であり、ブラシレスモータ1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。
【0021】
第1コアブロック7Aは、軸方向に沿って複数の第1電磁鋼板S1Aを積層することによって形成される。第2コアブロック7Bは、軸方向に沿って複数の第2電磁鋼板S1Bを積層することによって形成される。換言すると、第1コアブロック7Aは複数の電磁鋼板S1Aを、各電磁鋼板S1Aの厚み方向が回転軸2の軸方向となるように積層して形成されている。また、第2コアブロック7Bは複数の電磁鋼板S1Bを、各電磁鋼板S1Bの厚み方向が回転軸2の軸方向となるように積層して形成されている。
【0022】
各電磁鋼板S1A及び各電磁鋼板S1Bの表面には、絶縁被膜が形成されている。複数の電磁鋼板S1Aは、厚み方向に互いに隣り合う電磁鋼板S1A同士で例えば溶接により接合されている。複数の電磁鋼板S1Bは、厚み方向に互いに隣り合う電磁鋼板S1B同士で例えば溶接により接合されている。各電磁鋼板S1A及び各電磁鋼板S1Bは、例えば、ケイ素鋼板である。
【0023】
第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bは、図1に示すように、上側から見た形状が、回転軸2の中心軸Ax1を通る対称面F1に対して互いに対称である。つまり、複数の第1電磁鋼板S1Aと、複数の第2電磁鋼板S1Bとは、上側から見た形状が、回転軸2の中心軸Ax1を通る対称面F1に対して互いに対称である。ここで、対称面F1は、対称面F1を隔てて回転軸2の周方向において隣り合う永久磁石72の各々から、対称面F1までの距離が等しくなるような面である。なお、対称面F1は仮想的な面であり、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。この構成によれば、第1コアブロック7Aを上側から見た形状と、第2コアブロック7Bを下側から見た形状とは、中心軸Ax1を中心として回転対称となる。これにより、第1コアブロック7Aを回転軸2の軸方向に垂直な面に対して反転させたものを、第2コアブロック7Bとして使用することができ、パーツの種類を削減することができる。つまり、第1電磁鋼板S1Aを回転軸2の軸方向に垂直な面に対して反転させたものを、第2電磁鋼板S1Bとして使用することができ、パーツの種類を削減することができる。
【0024】
第1コアブロック7Aは、図1図4に示すように、外周面において複数(本実施形態では8つ)の第1外周部8Aを有する。8つの第1外周部8Aは、第1コアブロック7Aの外周面において、例えば等間隔に設けられる。また、第2コアブロック7Bは、外周面において複数(本実施形態では8つ)の第2外周部8Bを有する。8つの第2外周部8Bは、第2コアブロック7Bの外周面において、例えば等間隔に設けられる。なお、本実施形態では、複数の第1外周部8Aは例えば互いに同一の形状であるが、複数の第1外周部8Aが互いに異なる形状の外周部を含んでもよい。同様に、本実施形態では、複数の第2外周部8Bは例えば互いに同一の形状であるが、複数の第2外周部8Bが互いに異なる形状の外周部を含んでもよい。
【0025】
各第1外周部8Aの形状は、回転軸2に沿った第1方向(例えば上側)から見たときに、第1コアブロック7Aからステータコア4に対して突出している円弧形状である。各第1外周部8Aは、ステータコア4との間隔がもっとも狭い第1近接部PAを有する。換言すると、第1コアブロック7Aは8つの第1近接部PAを有し、各第1近接部PAは、上側から見たときに、各第1外周部8Aにおいて各第1近接部PAの周辺部分と比較してステータコア4との間隔が狭くなるように形成されている。同様に、各第2外周部8Bの形状は、上側から見たときに、第2コアブロック7Bからステータコア4に対して突出している円弧形状である。各第2外周部8Bは、ステータコア4との間隔がもっとも狭い第2近接部PBを有する。換言すると、第2コアブロック7Bは8つの第2近接部PBを有し、各第2近接部PBは、上側から見たときに、各第2外周部8Bにおいて各第2近接部PBの周辺部分と比較してステータコア4との間隔が狭くなるように形成されている。なお、第1外周部8A及び第2外周部8Bは円弧形状に限定されず、曲率の変化する曲線を含んでもよいし、直線を含んでもよい。
【0026】
8つの第1近接部PA及び8つの第2近接部PBの位置は、上側から見たときに互いに異なる。具体的には、図1及び図3に示すように、上側から見たときに8つの第1近接部PAの位置と、8つの第2近接部PBの位置とは、回転軸2の周方向においてずれている。
【0027】
ロータコア71は、図1に示すように、ロータコア71の中心に設けられた軸孔H1によって、回転軸2を保持する。回転軸2は例えば金属製の長尺のシャフトであり、ロータコア71と回転軸2とは一体に回転する。
【0028】
ここで、軸孔H1は、図2及び図3に示すように、第1コアブロック7Aの中心に設けられた軸孔H1A及び第2コアブロック7Bの中心に設けられた軸孔H1Bによって形成される。以下に詳細を述べる。
【0029】
軸孔H1Aは第1コアブロック7Aを上下方向に貫通しており、軸孔H1Bは第2コアブロック7Bを上下方向に貫通している。軸孔H1A、H1Bは上側から見たとき、重なるように設けられている。つまり、第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bが積層された状態において、軸孔H1A、H1Bは、ロータコア71を上下方向に貫通する1つの軸孔H1を形成する。
【0030】
ロータコア71は、図1に示すように、例えば8つの収容溝C1を有する。8つの収容溝C1は、回転軸2の周囲に、回転軸2の周方向に沿って等間隔で設けられている。各収容溝C1は、回転軸2の径方向に延伸している。つまり8つの収容溝C1は回転軸2の周囲にスポーク状に形成されている。ここで、8つの収容溝C1は、図2及び図3に示すように、第1コアブロック7Aが有する8つの収容溝C1A及び第2コアブロック7Bが有する8つの収容溝C1Bによって形成される。以下に詳細を述べる。
【0031】
各収容溝C1Aは、第1コアブロック7Aを上下方向に貫通している。8つの収容溝C1Aは、回転軸2の周囲に、回転軸2の周方向に沿って等間隔で設けられている。各収容溝C1Aは、回転軸2の径方向に延伸している。つまり8つの収容溝C1Aは回転軸2の周囲にスポーク状に形成されている。同様に、各収容溝C1Bは、第2コアブロック7Bを上下方向に貫通している。8つの収容溝C1Bは、回転軸2の周囲に、回転軸2の周方向に沿って等間隔で設けられている。各収容溝C1Bは、回転軸2の径方向に延伸している。つまり8つの収容溝C1Bは回転軸2の周囲にスポーク状に形成されている。
【0032】
8つの収容溝C1A及び8つの収容溝C1Bは、上側から見たときに、重なるように設けられている。つまり、第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bが回転軸2を保持している状態において、8つの収容溝C1A及び8つの収容溝C1Bは、ロータコア71を上下方向に貫通する8つの収容溝C1を形成する。
【0033】
8つの収容溝C1には、8つの永久磁石72がそれぞれ収容される。つまり、8つの永久磁石72は、回転軸2の周囲において回転軸2の周方向に並んだ状態で、ロータコア71に保持される。ここで、永久磁石72は、例えば板状の直方体であり、上側から見たときの形状が長方形となるように収容溝C1に収容される。詳細には、永久磁石72は、長方形の長手方向が回転軸2の径方向に沿い、長方形の短手方向(厚み方向)が回転軸2の径方向と直交する方向に沿うように収容溝C1に収容される。
【0034】
各永久磁石72は、長方形の短手方向(厚み方向)に着磁されている。各永久磁石72は、隣り合う永久磁石72に対して、同極を対向させた状態で配置されている。図1では、永久磁石72のN極を「N」と図示し、S極を「S」と図示している。ただし、図1における「N」及び「S」はそれぞれ、説明のために付した文字であって、実際に永久磁石72に付されている文字ではない。
【0035】
永久磁石72としては、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石又はプラスチック磁石等を採用することができる。
【0036】
(2.1.2)ステータ
ステータ3は、図1に示すように、ステータコア4と、インシュレータ5と、複数(本実施形態では12個)のコイル6と、を有している。
【0037】
ステータ3のステータコア4は、中央コア41と、外筒部42とを有している。中央コア41と外筒部42とが互いに連結されることで、ステータコア4が形成される。
【0038】
中央コア41は、図5に示すように、複数の電磁鋼板S2を、各電磁鋼板S2の厚み方向が回転軸2の軸方向となるように積層して形成されている。
【0039】
中央コア41は、円筒状の内筒部43と、複数(本実施形態では12本)のティース44と、を有している。内筒部43と12本のティース44とは、例えば一体に形成されている。
【0040】
回転軸2の軸方向から見て、内筒部43は、回転軸2と同心円状である。つまり、内筒部43は中心軸Ax1を中心とする円筒状である。内筒部43の内側には、ロータ7が配置されている。
【0041】
各ティース44は、胴部45と、2つの先端片46と、を含む。胴部45は、内筒部43から回転軸2の径方向において外向きに突出している。胴部45は、回転軸2の周方向において等間隔に設けられている。また、胴部45の先端側(外筒部42側)の部位からは、2つの先端片46が胴部45の突出方向(回転軸2の径方向)と例えば直交する方向に突出している。
【0042】
インシュレータ5は、例えば、合成樹脂を材料として形成されており、電気絶縁性を有している。インシュレータ5は、各ティース44の胴部45の少なくとも一部を含む領域を覆っている。各ティース44には、図1に示すように、インシュレータ5を介してコイル6が巻回されている。すなわち、12個のコイル6は、12本のティース44と一対一で対応して巻回されている。コイル6の巻き方としては、例えば、集中巻が採用される。
【0043】
2つの先端片46は、コイル6が胴部45から脱落することを抑制する抜止めとして設けられている。すなわち、胴部45の先端側にコイル6が移動しようとする場合に、コイル6が2つの先端片46に引っ掛かることで、コイル6の脱落を抑制できる。
【0044】
外筒部42の形状は、筒状である。より詳細には、外筒部42の形状は、円筒状である。回転軸2の軸方向から見て、外筒部42は、回転軸2と同心円状である。つまり、外筒部42は中心軸Ax1を中心とする円筒状である。
【0045】
外筒部42は、図5に示すように、複数の電磁鋼板S3を、各電磁鋼板S3の厚み方向が回転軸2の軸方向となるように積層して形成されている。
【0046】
外筒部42は、ティース44と同数(本実施形態では12個)の嵌合部421を有している。各嵌合部421は、外筒部42の内周面に設けられた窪みである。12個の嵌合部421は、外筒部42の周方向において等間隔に設けられている。12個の嵌合部421は、12本のティース44と一対一で対応している。各嵌合部421は、対応するティース44と嵌まり合う。これにより、外筒部42が中央コア41に連結される。より詳細には、各嵌合部421には、ティース44のうち2つの先端片46を含む部位が嵌め込まれる。
【0047】
(2.2)電動工具
以下、上述したブラシレスモータ1を備える電動工具10について図6を参照して説明する。
【0048】
電動工具10は、先端工具105を保持する出力軸103と、出力軸103を回転させるブラシレスモータ1と、を備える。詳細には、電動工具10は、ブラシレスモータ1と、電動工具本体108と、を備えている。さらに、電動工具10は、電源部101と、駆動伝達部102と、出力軸103と、チャック104と、先端工具105と、トリガボリューム106と、制御部107と、ファン109と、を備えている。
【0049】
電動工具本体108(ハウジング)は、ブラシレスモータ1を収容している。さらに、電動工具本体108は、駆動伝達部102と、出力軸103と、制御部107と、ファン109と、を収容している。
【0050】
チャック104には、先端工具105が取り付けられる。つまり先端工具105はチャック104を介して出力軸103に保持される。ブラシレスモータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。
【0051】
電源部101は、ブラシレスモータ1を駆動する電流を供給する電源(直流電源)である。電源部101は、例えば、電池パックである。電池パックは、例えば、1又は複数の2次電池を含む。ブラシレスモータ1の駆動力(ロータ7の回転)は、回転軸2を介して駆動伝達部102に伝達される。駆動伝達部102は、ブラシレスモータ1の駆動力を調整して出力軸103に出力する。出力軸103は、駆動伝達部102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される。チャック104は、出力軸103に固定されている。チャック104には、先端工具105が着脱自在に取り付けられる。先端工具105(ビットとも言う)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられて用いられる。
【0052】
制御部107は、電源部101からブラシレスモータ1の各コイル6(図1参照)に供給される電流を制御する回路である。制御部107は、電源部101からブラシレスモータ1に流れる電流を制御することによって、ブラシレスモータ1のロータ7の回転速度を制御する。
【0053】
トリガボリューム106は、ブラシレスモータ1のロータ7の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガボリューム106を引き込む操作により、ロータ7の回転と停止とが切替可能である。また、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量を調整することで、ロータ7の回転速度が調整可能である。つまり、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量を調整することで、ロータ7の回転に連動して回転する出力軸103の回転速度が調整可能である。上記引込み量が大きいほど、ロータ7及び出力軸103の回転速度が速くなる。制御部107は、トリガボリューム106に入力された操作に応じて、ロータ7及び出力軸103を回転又は停止させ、また、ロータ7及び出力軸103の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104を介して出力軸103に連結される。そして、トリガボリューム106への操作によってロータ7及び出力軸103の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。
【0054】
なお、本実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0055】
ファン109は、ブラシレスモータ1と駆動伝達部102との間に配置されている。ファン109は、ブラシレスモータ1の回転軸2に連結されている。回転軸2の回転に伴い、ファン109が回転する。すると、ファン109は、出力軸103側へ流れる風(気流)を生成する。これにより、ファン109は、電動工具本体108の内部空間を空冷する。
【0056】
(3)利点
本実施形態のブラシレスモータ1では、8つの永久磁石72から発生する磁束は、磁性体であるロータコア71を介して、少なくとも1つの第1近接部PA及び少なくとも1つの第2近接部PBから磁性体であるステータコア4に流入する。詳細には、8つの永久磁石72のうち隣り合う永久磁石72の対向する同極から発生する磁束の内、第1コアブロック7Aを貫く磁束は、隣り合う永久磁石72の間に設けられた第1近接部PAからステータコア4に流入する。つまり、ロータコア71において、各第1近接部PAには、ロータコア71の外周面の各第1近接部PA以外の部分と比較して強い磁気吸着力がステータコア4との間に生じる。また、8つの永久磁石72のうち隣り合う永久磁石72の対向する同極から発生する磁束の内、第2コアブロック7Bを貫く磁束は、隣り合う永久磁石72の間に設けられた第2近接部PBからステータコア4に流入する。つまり、ロータコア71において、各第2近接部PBには、ロータコア71の外周面の各第2近接部PB以外の部分と比較して強い磁気吸着力がステータコア4との間に生じる。
【0057】
このとき、一例として、上側から見たときに各第1近接部PAと各第2近接部PBとが重なる位置にあった場合、回転軸2の周方向(回転方向)において、第1コアブロック7A及び第2コアブロック7Bに発生する磁気吸着力のピークが重なる。一方、本実施形態では、上述のように、上側から見たときに各第1近接部PAと各第2近接部PBとが互いに重ならないように設けられている。これにより、回転軸2の周方向において、第1コアブロック7Aに発生する磁気吸着力が最大になる位置と、第2コアブロック7Bに発生する磁気吸着力が最大になる位置とをずらすことができる。これにより、ブラシレスモータ1において、ロータ7をステータ3に対して回転させたときに発生するコギングトルクを低減することができる。
【0058】
(4)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。ただし上記実施形態と共通する構成要素については同じ参照符号を付して、適宜その説明を省略する。また、以下に説明する変形例の各構成は、上記実施形態で説明した各構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0059】
上記実施形態で示した永久磁石72、ティース44及びコイル6等の個数は一例であって、これらの個数は適宜変更が可能である。
【0060】
ロータコア71は3つ以上のコアブロックを含んでもよい。つまり、第2コアブロック7Bの数が複数でもよく、第1コアブロック7Aと複数の第2コアブロック7Bとが、回転軸2の軸方向に沿って並ぶように回転軸2を保持していればよい。そして、第1コアブロック7Aが有する少なくとも1つの第1近接部PAの位置と、複数の第2コアブロック7Bの各々が有する少なくとも1つの第2近接部PBの位置とが、回転軸2の軸方向に沿った一方向から見たときにずれていればよい。
【0061】
内筒部43と複数のティース44とは別体に形成されてもよい。
【0062】
外筒部42と複数のティース44とは一体に形成されてもよい。
【0063】
(5)まとめ
以上述べたように、第1の態様に係るブラシレスモータ(1)は、回転軸(2)と、回転軸(2)を保持するロータコア(71)と、ロータコア(71)に保持された複数の永久磁石(72)と、ロータコア(71)の周囲に配置されたステータコア(4)と、を備える。ロータコア(71)は、回転軸(2)の軸方向に沿って並ぶ第1コアブロック(7A)及び第2コアブロック(7B)を含む。第1コアブロック(7A)及び第2コアブロック(7B)は、回転軸(2)の軸方向に沿った一方向から見たときに互いに形状が異なる。第1コアブロック(7A)は、外周面において、少なくとも1つの第1近接部(PA)を有する。少なくとも1つの第1近接部(PA)は、一方向から見たときに、第1コアブロック(7A)の外周面における少なくとも1つの第1近接部(PA)以外の周辺部分と比較して、ステータコア(4)との間隔が狭い。第2コアブロック(7B)は、外周面において、少なくとも1つの第2近接部(PB)を有する。少なくとも1つの第2近接部(PB)は、一方向から見たときに、第2コアブロック(7B)の外周面における少なくとも1つの第2近接部(PB)以外の周辺部分と比較して、ステータコア(4)との間隔が狭い。少なくとも1つの第1近接部(PA)の位置と、少なくとも1つの第2近接部(PB)の位置とは、一方向から見たときに互いに異なる。
【0064】
この態様によれば、ステータ(3)に対してロータ(7)が回転するときに発生するコギングトルクを低減することができる。
【0065】
第2の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1の態様において、複数の永久磁石(72)は、回転軸(2)の周囲において回転軸(2)の周方向に並んだ状態でロータコア(71)に保持される。複数の永久磁石(72)の各々の長手方向は、一方向から見て、回転軸(2)の径方向に沿っている。複数の永久磁石(72)の各々の短手方向は、長手方向と交差する方向に沿っている。複数の永久磁石(72)は、短手方向に着磁されている。
【0066】
この態様によれば、回転軸(2)の軸方向から見た場合のロータ(7)の寸法を小さくしやすい。
【0067】
第3の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1又は第2の態様において、第1コアブロック(7A)及び第2コアブロック(7B)は、一方向から見た形状が、回転軸(2)の中心軸(Ax1)を通る対称面(F1)に対して互いに対称である。
【0068】
この態様によれば、第1コアブロック(7A)を回転軸(2)の軸方向に垂直な面に対して反転させたものを、第2コアブロック(7B)として使用することができ、パーツの種類を削減することができる。
【0069】
第4の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、第1コアブロック(7A)は、軸方向に沿って複数の第1電磁鋼板(S1A)を積層することによって形成される。第2コアブロック(7B)は、軸方向に沿って複数の第2電磁鋼板(S1B)を積層することによって形成される。
【0070】
この態様によれば、ブラシレスモータ(1)の鉄損を低減できる。
【0071】
第5の態様に係るブラシレスモータ(1)では、第4の態様において、複数の第1電磁鋼板(S1A)と、複数の第2電磁鋼板(S1B)とは、一方向から見た形状が、回転軸(2)の中心軸(Ax1)を通る対称面(F1)に対して互いに対称である。
【0072】
この態様によれば、第1電磁鋼板(S1A)を回転軸(2)の軸方向に垂直な面に対して反転させたものを、第2電磁鋼板(S1B)として使用することができ、パーツの種類を削減することができる。
【0073】
第6の態様に係る電動工具(10)は、先端工具(105)を保持する出力軸(103)と、出力軸(103)を回転させる、第1~第5のいずれかの態様のブラシレスモータ(1)と、を備える。
【0074】
この態様によれば、ステータ(3)に対してロータ(7)が回転するときに発生するコギングトルクを低減することができる。
【0075】
なお、第2~第5の態様はブラシレスモータ(1)に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ブラシレスモータ
2 回転軸
3 ステータ
4 ステータコア
7 ロータ
10 電動工具
71 ロータコア
72 永久磁石
103 出力軸
105 先端工具
7A 第1コアブロック
7B 第2コアブロック
Ax1 中心軸
F1 対称面
PA 第1近接部
PB 第2近接部
S1A 第1電磁鋼板
S1B 第2電磁鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6