(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115819
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】移動体、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 15/00 20060101AFI20230814BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230814BHJP
B60B 19/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B62D15/00
G05D1/02 X
B60B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018240
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】土方 優明
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 功一
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB11
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301HH19
(57)【要約】
【課題】移動体において、通常、複数の全方向移動車輪は回転軸が1点で交わるように、円周上に配置されるため、複数の全方向移動車輪をそれぞれ駆動する各モータが干渉しないように配置するためには、移動体が大型化するという問題があった。
【解決手段】移動体1は、少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置された3個以上の全方向移動車輪と、制御装置2とを有する。制御装置2は、移動体1の目標速度及び目標角速度から、任意に配置された各全方向移動車輪の目標角速度を算出する第1の算出部21を備える。このように、複数の全方向移動車輪を任意に配置できることによって、複数のモータ12が干渉しないように複数の全方向移動車輪を配置した場合でも、移動体1が大型化しないようにすることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置された3個以上の全方向移動車輪を有する移動体における各全方向移動車輪を制御する制御装置であって、
前記移動体の目標速度及び目標角速度から、各全方向移動車輪の目標角速度を算出する第1の算出部を備えた制御装置。
【請求項2】
各全方向移動車輪の実角速度から、前記移動体の実速度及び実角速度を算出する第2の算出部をさらに備えた、請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置されたN個(Nは3以上の整数である)の全方向移動車輪を有する移動体。
【請求項4】
Nは4であり、
4個の全方向移動車輪は、回転面が矩形形状の各辺にそれぞれ沿うように各辺の一端側に配置されている、請求項3記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の全方向移動車輪を有する移動体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全方向に移動できる移動体として、複数の全方向移動車輪(例えば、オムニホイールなど)を有する移動体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、全方向に移動できる移動体では、
図5で示されるように複数の全方向移動車輪101が配置される。すなわち、複数の全方向移動車輪101は、回転面104が円103に接するように円周上に等間隔に配置され、各全方向移動車輪101の回転軸を延長した直線102は、円103の中心で交わる。
【0005】
この場合には、各全方向移動車輪101を回転させるモータを、円103の中心付近に配置することになるが、各モータが干渉しないように配置するためには、円103が大きくなり、結果として移動体が大型化するという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1では、
図5とは異なるように全方向移動車輪が配置される例が示されているが、その例においても、モータ等が移動体の中心に寄って配置されることになり、同様の問題が存在する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、複数の全方向移動車輪を任意の位置に配置することができる移動体、及び移動体の目標速度から、任意に配置された各全方向移動車輪の角速度を算出できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による制御装置は、少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置された3個以上の全方向移動車輪を有する移動体における各全方向移動車輪を制御する制御装置であって、移動体の目標速度及び目標角速度から、各全方向移動車輪の目標角速度を算出する第1の算出部を備えたものである。
【0009】
また、本発明の一態様による移動体は、少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置されたN個(Nは3以上の整数である)の全方向移動車輪を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様による移動体によれば、3個以上の全方向移動車輪を、少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置することができるため、例えば、移動体が大型化しないようにすることができる。また、本発明の一態様による制御装置によれば、移動体の目標速度、目標角速度から、少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置された3個以上の全方向移動車輪の目標角速度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態による移動体を示す平面図
【
図2】同実施の形態による移動体の構成を示す機能ブロック図
【
図3】同実施の形態における全方向移動車輪の配置を示す図
【
図4】同実施の形態による移動体における全方向移動車輪の配置の一例を示す図
【
図5】従来の移動体における全方向移動車輪の配置の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による移動体、及び制御装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本発明の実施の形態による移動体は、3個以上の全方向移動車輪を、少なくとも2個の全方向移動車輪の推力方向が異なるように任意に配置できるものである。
【0013】
図1は、本実施の形態による移動体1の構成を示す平面図であり、
図2は、移動体1の構成を示す機能ブロック図である。なお、移動体1は、全方向移動車輪11a~11dを用いて移動するものであれば、どのようなものであってもよい。移動体1は、例えば、台車であってもよく、ロボットであってもよい。ロボットは、例えば、エンターテイメントロボットであってもよく、監視ロボットであってもよく、搬送ロボットであってもよく、掃除ロボットであってもよく、その他のロボットであってもよい。
【0014】
本実施の形態による移動体1は、基台5と、基台5の底面側に配置された4個の全方向移動車輪11a~11dと、全方向移動車輪11a~11dの回転軸13a~13dをそれぞれ駆動する4個のモータ12a~12dと、移動体1における各全方向移動車輪11a~11dを制御する制御装置2とを備える。制御装置2は、第1の算出部21と、第2の算出部22と、移動制御部23とを備える。なお、全方向移動車輪11a~11dを制御するとは、全方向移動車輪11を回転駆動する各モータ12a~12dを制御することであってもよい。基台5は、全方向移動車輪11a~11dが取り付けられる部材であり、例えば、荷台であってもよい。4個の全方向移動車輪11a~11dは、それぞれ同じ構造及び同じサイズであることが好適である。また、4個のモータ12a~12dについても同様である。また、全方向移動車輪11a~11d、モータ12a~12d、回転軸13a~13dのそれぞれを特に区別しない場合には、全方向移動車輪11、モータ12、回転軸13と呼ぶこともある。なお、モータ12は、減速機を介して全方向移動車輪11を駆動してもよい。
【0015】
4個の全方向移動車輪11は、任意に配置することができる。全方向移動車輪11を任意に配置できるとは、全方向移動車輪11を任意の位置及び任意の角度で配置できることであってもよい。ただし、少なくとも2個の全方向移動車輪11は、推力方向が異なるように配置されるものとする。推力方向とは、全方向移動車輪11が回転することによって推進力が生じる方向のことである。なお、複数の全方向移動車輪11の推力方向が異なるとは、その複数の全方向移動車輪11の推力方向が平行でないことである。全方向移動車輪11は、例えば、オムニホイールであってもよく、メカナムホイールであってもよく、その他の全方向移動車輪であってもよい。本実施の形態では、全方向移動車輪11がオムニホイールである場合について主に説明する。オムニホイールである全方向移動車輪11の推力方向は、回転面方向となる。したがって、全方向移動車輪11がオムニホイールである場合には、少なくとも2個の全方向移動車輪11が、回転面方向が異なるように配置されてもよい。言い換えれば、少なくとも2個の全方向移動車輪11の回転軸の方向が異なるように配置されてもよい。また、メカナムホイールである全方向移動車輪11の推力方向は、回転面方向と所定の角度を有する方向となる。全方向移動車輪11の回転面は、回転する車輪によって形成される面であり、回転軸に垂直な面である。また、各全方向移動車輪11の回転軸13は、移動体1が走行する面に平行になるように設けられることが好適である。
【0016】
オムニホイールである全方向移動車輪11は、通常、複数の樽型のフリーローラが外周上に均等に配置された1以上の車輪を有している。全方向移動車輪11がその車輪を2以上有する場合には、その2以上の車輪は、フリーローラの位置が互い違いになり、回転軸が同一になるように重ねられていてもよい。
図1では、全方向移動車輪11を簡略化して表示しているが、全方向移動車輪11は、例えば、
図5で示される全方向移動車輪101と同様の構成であってもよい。
図5で示される全方向移動車輪101では、4個の樽型のフリーローラの配置された2個の車輪が重ねられている。オムニホイールでは、通常、2以上の車輪が重ねられているが、そうでなくてもよい。例えば、特開2001-191704号公報で示されるもののように、オムニホイールは、複数のフリーローラの配置された1個の車輪を有するものであってもよい。なお、全方向移動車輪11の回転面とは、例えば、全方向移動車輪11が有する1以上の車輪のモータ12による回転面(車輪の中心点を通り、車輪の回転軸に直交する面である)であると考えてもよく、その面に平行な全方向移動車輪11内の任意の面であると考えてもよい。
【0017】
モータ12は、全方向移動車輪11を駆動する。なお、
図2で示されるように、モータ12は制御装置2によって制御されるものとする。また、各モータ12は、例えば、エンコーダを有していてもよい。モータ12がエンコーダを有していない場合には、モータ12または全方向移動車輪11の角度や回転数を取得するためのエンコーダが設けられていてもよい。
【0018】
制御装置2の第1の算出部21は、移動体1の目標速度及び目標角速度から、各全方向移動車輪11の目標角速度を算出する。移動体1の目標速度や目標角速度は、例えば、移動体1の指令速度や指令角速度であってもよい。また、移動体1の角速度とは、移動体1の旋回の角速度であってもよい。この算出の詳細については後述する。この算出によって、移動体1の所望の移動を行うために必要な各全方向移動車輪11の角速度や回転速度を知ることができる。
【0019】
第2の算出部22は、各全方向移動車輪11の実角速度から、移動体1の実速度及び実角速度を算出する。この算出の詳細については後述する。この算出によって、各全方向移動車輪11の角速度や回転速度から、移動体1の現在速度や現在角速度を知ることができる。
【0020】
移動制御部23は、各全方向移動車輪11の回転を制御することによって、すなわち各モータ12を制御することによって、移動体1の移動を制御する。移動の制御は、例えば、移動体1の移動の向きや移動の開始・停止、移動体1の速度、移動体1の旋回時の角速度などの制御であってもよい。例えば、移動経路が設定されている場合には、移動制御部23は、移動体1がその移動経路に沿って移動するように、モータ12を制御してもよい。移動制御部23は、図示しない現在位置取得部によって取得された移動体1の現在位置を用いて移動体1の移動を制御してもよい。より具体的には、移動制御部23は、現在位置取得部によって取得される現在位置が、移動経路に沿ったものになるように、各モータ12を制御してもよい。現在位置取得部は、例えば、第2の算出部22の算出結果を用いて、移動体1の現在位置を取得してもよく、GPSやSLAMなどの手法によって移動体1の現在位置を取得してもよく、その他の方法によって移動体1の現在位置を取得してもよい。また、移動制御部23は、例えば、地図を用いて移動の制御を行ってもよい。移動制御部23による移動の制御は公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0021】
移動制御部23は、移動体1の移動の制御において、第1の算出部21によって算出された全方向移動車輪11の目標角速度を用いてもよい。例えば、移動制御部23は、移動体1をある目標速度で移動させると共に、ある目標角速度で旋回させたい場合に、その目標速度及び目標角速度を第1の算出部21に渡し、その目標速度及び目標角速度に対応する各全方向移動車輪11の目標角速度を第1の算出部21から受け取って、その目標角速度で回転するように各全方向移動車輪11を駆動するモータ12をそれぞれ制御してもよい。
【0022】
また、移動制御部23は、移動体1の移動の制御において、各全方向移動車輪11の実角速度をエンコーダの値から取得して第2の算出部22に渡し、その実角速度に対応する移動体1の実速度及び旋回の実角速度を受け取ってもよい。なお、そのエンコーダは、例えば、モータ12が有するエンコーダであってもよく、それ以外のエンコーダであってもよい。移動制御部23は、例えば、移動体1の実速度及び実角速度と、目標速度及び目標角速度とを用いて、移動体1の移動に関するフィードバック制御を行ってもよい。また、上記したように、第2の算出部22で算出された実速度及び実角速度は、移動体1の現在位置の算出に用いられてもよい。
【0023】
次に、第1の算出部21による算出について説明する。ここで、4個の全方向移動車輪11は、
図3で示されるように配置されているものとする。xy直交座標系は、移動体1に設けられた座標系である。xy座標系の原点は、例えば、移動体1の重心であってもよい。また、x軸の正の方向は、例えば、移動体1の前進の方向であってもよい。また、
図3で示されるように、x軸の正の方向の移動体1の速度の成分をV
xとし、y軸の正の方向の移動体1の速度の成分をV
yとする。また、xy座標系の原点を中心とする旋回の角速度をΩとする。角速度Ωは、
図3で示されるように、反時計回りが正となるようにとられている。また、
図3で示されるように、各全方向移動車輪11の半径をrとする。また、n番目(n=1,2,3,4)の全方向移動車輪11について、角速度をω
nとし、回転面方向の速度成分をV
nとし、代表点の位置の座標を(x
n,y
n)とし、x軸と回転面方向とのなす角度をθ
nとする。なお、全方向移動車輪11の代表点は、全方向移動車輪11の中心や重心であってもよい。例えば、(x
n,y
n)がn番目の全方向移動車輪11の配置位置であり、θ
nがn番目の全方向移動車輪11の回転面の方向を示す配置角度であると考えてもよい。したがって、θ
1~θ
4のうち、少なくとも2個は異なる値であるとする。また、V
n=r×ω
nとなる。この場合には、次式のように、移動体1の目標速度及び目標角速度(V
x,V
y,Ω)から、各全方向移動車輪11の目標角速度(ω
1,ω
2,ω
3,ω
4)を算出することができる。したがって、第1の算出部21は、次式を用いて各全方向移動車輪11の角速度を算出してもよい。なお、移動体1の目標速度等から、全方向移動車輪11の目標角速度を算出するための以下の行列を、演算行列と呼ぶことにする。
【数1】
【0024】
また、第2の算出部22は、次式を用いて、各全方向移動車輪11の実角速度から、移動体1の実速度及び実角速度を算出してもよい。このように、全方向移動車輪11の実角速度から、移動体1の実速度及び実角速度を算出する際には、演算行列の逆行列が用いられてもよい。なお、この場合には、演算行列が正方行列ではないため、次式の右辺における演算行列の逆行列は、演算行列の疑似逆行列である。
【数2】
【0025】
次に、本実施の形態による移動体1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、移動体1が目的地に向かって移動しているものとする。その移動中に、移動制御部23が、移動体1の目標速度(Vx,Vy)及び旋回の目標角速度Ωを特定したとする。すると、移動制御部23は目標速度(Vx,Vy)及び目標角速度Ωを第1の算出部21渡す。それらを受け取ると、第1の算出部21は、上式の演算行列を用いて各全方向移動車輪11の目標角速度ω1~ω4を算出して移動制御部23に渡す。目標角速度ω1~ω4を受け取ると、移動制御部23は、各全方向移動車輪11が目標角速度ω1~ω4となるように各モータ12を制御する。
【0026】
また、移動制御部23は、モータ12から各全方向移動車輪11のエンコーダ値を受け取り、そのエンコーダ値を用いて各全方向移動車輪11の実角速度を取得して第2の算出部22に渡す。実角速度を受け取ると、第2の算出部22は、上式の演算行列の逆行列を用いて移動体1の実速度及び旋回の実角速度を算出して、図示しない現在位置取得部に渡す。移動体1の実速度及び実角速度を受け取ると、現在位置取得部は、移動体1の実速度及び実角速度を用いて、移動体1の現在位置及び現在角度を算出して移動制御部23に渡す。現在位置及び現在角度を受け取ると、移動制御部23は、その現在位置及び現在角度を用いて、移動体1が所定の経路に沿って目的地に移動するように移動体1の目標速度及び旋回の目標角速度を特定する。このような処理が繰り返されることによって、移動体1は、経路に沿って目的地にまで移動することになる。なお、第2の算出部22の算出結果は、例えば、移動制御部23によるフィードバック制御に用いられてもよい。
【0027】
以上のように、本実施の形態による移動体1では、複数の全方向移動車輪11を、少なくとも2個の全方向移動車輪11の回転面方向が異なるように任意に配置した場合であっても、移動体1が所望の速度で移動すると共に、所望の角速度で旋回するように複数の全方向移動車輪11を制御することができる。したがって、例えば、複数のモータが干渉しないように複数の全方向移動車輪11を配置した場合でも、移動体1が大型化しないようにすることができる。また、複数の全方向移動車輪11の内側の空間を有効利用することができるように、各全方向移動車輪11を配置することができるようになる。また、複数の全方向移動車輪11の実角速度から、移動体1の実速度や旋回の実角速度を算出することができるため、その算出結果を用いて移動のためのフィードバック制御を行ったり、現在位置を算出したりすることができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、全方向移動車輪11の個数が4個である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。移動体1が有する全方向移動車輪11の個数は、3個以上であれば、その個数を問わない。移動体1がn個の全方向移動車輪11を有する場合には、第1の算出部21は、次式によって、各全方向移動車輪11の目標角速度を算出してもよい。なお、nは、3以上の整数である。
【数3】
【0029】
また、第2の算出部22は、次式によって、移動体1の実速度及び旋回の実角速度を算出してもよい。なお、次式の右辺の演算行列の逆行列は、nが4以上のときには演算行列の疑似逆行列である。
【数4】
【0030】
また、第1及び第2の算出部21,22は、上記した式と実質的に等しい他の式を用いて算出を行ってもよい。例えば、xy直交座標系に代えて斜交座標系が用いられる場合には、第1及び第2の算出部21,22は、斜交座標系に応じた式を用いて目標速度や実速度などを算出してもよい。
【0031】
また、上記したように、本実施の形態による移動体1では、少なくとも2個の全方向移動車輪11の推力方向が異なっているのであれば、各全方向移動車輪11を任意の位置に配置することができるが、その場合に、例えば、
図4で示されるように、4個の全方向移動車輪11が、回転面が一点鎖線で示される矩形形状7の各辺にそれぞれ沿うように、各辺の一端側に配置されてもよい。すなわち、矩形形状7の各頂点に、1個の全方向移動車輪11が配置されており、矩形形状7の各辺の両端に配置される2個の全方向移動車輪11の回転面の方向が90度をなすように配置されてもよい。なお、
図4は、移動体1の平面図である。また、
図4では、モータ12等を省略しているが、モータ12は、移動体1の基台5の裏面側に配置されていてもよい。このような全方向移動車輪11の配置により、移動体1の中心付近にモータ12が存在しないようにすることができ、例えば、移動体1の中心付近にまとまった空間を確保できるため、バッテリなどの他の構成要素を配置することもできる。また、移動体1を小型化することも可能になる。
【0032】
なお、
図4では、隣接する2個の全方向移動車輪11、すなわち矩形形状7の各辺の両端に存在する2個の全方向移動車輪11に関して、一方の全方向移動車輪11の回転面方向の一端(例えば、
図4における全方向移動車輪11dの右端)が、他方の全方向移動車輪11の回転軸方向の一端(例えば、
図4における全方向移動車輪11aの右端)と一直線上に揃うように配置しているが、そうでなくてもよい。このように、4個の全方向移動車輪11が、回転面が一点鎖線で示される矩形形状7の各辺にそれぞれ沿うように各辺の一端側に配置される場合には、4個の全方向移動車輪11の回転軸方向の4個の直線は、従来例のように1点で交わるのではなく、その4個の直線によって矩形が形成されることになる。
【0033】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、またはソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0035】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 移動体、2 制御装置、11、11a~11d 全方向移動車輪、21 第1の算出部、22 第2の算出部、23 移動制御部