(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115825
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ふろ装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20230814BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20230814BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20230814BHJP
G08B 21/08 20060101ALI20230814BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20230814BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20230814BHJP
F24H 15/254 20220101ALI20230814BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20230814BHJP
F24H 15/421 20220101ALI20230814BHJP
F24H 15/45 20220101ALI20230814BHJP
F24H 15/486 20220101ALI20230814BHJP
【FI】
F24H15/196 301X
A47K3/00 Z
A61B5/01 100
G08B21/08
F24H15/212
F24H15/265
F24H15/254
F24H15/395
F24H15/421
F24H15/45 101
F24H15/486
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018249
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勲
(72)【発明者】
【氏名】藤川 尚也
(72)【発明者】
【氏名】古賀 弘子
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆
【テーマコード(参考)】
2D005
3L024
4C117
5C086
【Fターム(参考)】
2D005FA00
3L024CC10
3L024CC30
3L024EE03
3L024EE14
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3L024HH60
4C117XB02
4C117XC05
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4C117XP12
5C086AA06
5C086AA22
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5C086CB01
5C086EA13
5C086EA41
5C086FA06
5C086FA17
(57)【要約】
【課題】入浴中の入浴者の深部体温を精度良く推定でき、深部体温の上昇による体調不良症状の発症の予防が良好に行え得るふろ装置を提供する。
【解決手段】給湯装置は、温度センサからの湯温データに基づいて、人体熱モデルHMにより推定された入浴者の深部体温が、浴槽2内への入浴開始から体調不良症状が懸念される所定の温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、所定の報知をスピーカに行わせる報知処理部を備える。人体熱モデルHMは、人体を、皮膚層SKと、皮膚層SKよりも人体の中心側となるコア層CRと、皮膚層SKとコア層CRとの間の中間層MDと、に分割し、少なくとも、浴槽2内の湯水と皮膚層SKとの間の熱移動、皮膚層SKと中間層MDとの間の熱移動、および、中間層MDとコア層CRとの間の熱移動を含む。人体熱モデルHMにより得られる計算式に基づいて、コア層CRの温度が深部体温として算出される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内に溜められた湯水の温度を示す湯温データを出力する湯温データ出力部と、
浴室内に設置される報知部と、
前記浴槽内への入浴を検知する入浴検知部と、
前記湯温データに基づいて、人体熱モデルにより推定された入浴者の深部体温が、前記浴槽内への入浴開始から体調不良症状が懸念される所定の温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、または、体調不良症状が懸念される所定の温度閾値以上となったと判定した場合に、所定の報知を前記報知部に行わせる報知処理部と、を備え、
前記人体熱モデルは、
人体を、皮膚層と、前記皮膚層よりも人体の中心側となるコア層と、前記皮膚層と前記コア層との間の中間層と、に分割し、
少なくとも、前記浴槽内の湯水と前記皮膚層との間の熱移動、前記皮膚層と前記中間層との間の熱移動、および、前記中間層と前記コア層との間の熱移動を含み、
前記人体熱モデルにより得られる計算式に基づいて、前記コア層の温度が前記深部体温として算出される、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のふろ装置において、
前記報知処理部は、
前記浴槽内での入浴中、定期的に、前記湯温データを用いて、前記計算式に基づいて前記深部体温を算出し、
算出した前記深部体温が、前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、または、前記温度閾値以上となったと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のふろ装置において、
前記報知処理部は、
前記浴槽内への入浴開始時に、前記湯温データを用いて、前記計算式に基づいて入浴開始から所定時間経過毎の前記深部体温を算出し、前記湯温データが示す前記湯水の温度のときに前記深部体温が前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇するまたは前記温度閾値以上となる入浴時間を決定し、
前記浴槽内への入浴開始から前記入浴時間が経過したと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のふろ装置において、
前記浴槽内の前記湯水の温度に対応付けて、当該湯水の温度のときに前記深部体温が前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇するまたは前記温度閾値以上となる入浴時間を記憶する記憶部を、さらに備え、
前記報知処理部は、
前記湯温データが示す前記湯水の温度に対応付けられた前記入浴時間を前記記憶部から読み出し、
前記浴槽内への入浴開始から前記入浴時間が経過したと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のふろ装置において、
前記浴室内の気温を示す気温データを出力する気温データ出力部を、さらに備え、
前記人体熱モデルは、
前記皮膚層が、前記浴室内の空気に接する第1皮膚層と前記浴槽内の湯水に接する第2皮膚層とに分割されるとともに、前記中間層が、前記第1皮膚層に接する第1中間層と前記第2皮膚層に接する第2中間層とに分割され、
前記浴室内の空気と前記第1皮膚層との間の熱移動、前記浴槽内の湯水と前記第2皮膚層との間の熱移動、前記第1皮膚層と前記第1中間層との間の熱移動、および、前記第2皮膚層と前記第2中間層との間の熱移動を含み、
前記報知処理部は、前記湯温データおよび前記気温データに基づいて、前記人体熱モデルにより推定された入浴者の前記深部体温が、前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、または、前記温度閾値以上となったと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のふろ装置において、
前記人体熱モデルは、前記皮膚層と前記コア層との間の熱移動を含む、
ことを特徴とするふろ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のふろ装置において、
入力部により入力された、前記計算式による前記深部体温の算出結果に影響する、入浴者に係るパラメータの値を受け付けるパラメータ受付部を、さらに備える、
ことを特徴とするふろ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のふろ機能を実行するふろ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入浴中に発生する事故の一要因とされる熱中症は、入浴者の深部体温の過度の上昇が、その原因の一つとされている。以下の特許文献1には、浴槽内の湯水の温度を検出し、湯水の温度データと入浴時間とに基づいて入浴者の深部体温を推定することにより、深部体温の上昇に応じて所定の警告を出力する入浴安全システムが記載されている。
【0003】
上記の入浴安全システムでは、深部体温を推定する方法として、空気中の人体の深部体温を推定するための人体温生理モデル(Two-node モデル)を発展させた入浴時の体温予測モデルが用いられ得る。
【0004】
入浴時の体温予測モデルでは、人体が、浴室内の空気に接する第1皮膚層(頭)と浴槽内の湯水に接する第2皮膚層(体)と、これら皮膚層よりも人体の中心側の深部層とに分割される。そして、空気と第1皮膚層との間の熱移動と、湯水と第2皮膚層との間の熱移動と、第1および第2皮膚層と深部層との間の熱移動と、深部層から生じる代謝熱との熱収支の関係に基づいて、深部体温の時間的変化が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人間の体内の温度分布は季節、即ち温度環境によって変化し、冬季、即ち寒冷環境では、温度が一定に調節されている深部体温の範囲が狭くなり、体表面に近いほど温度が低下すると言われている。さらに、入浴による身体の温まりに、入浴前に滞在していた居室の温度が影響を与えるとされており、温暖な居室に滞在した後の入浴に比べて、寒冷な居室に滞在した後の入浴では、深部への熱の伝わりが遅くなり、深部体温が遅れて上昇する傾向が見られる。
【0007】
上記の入浴時の体温予測モデルでは、人体が、体の中心に向かう方向に皮膚層と深部層の2つの層のみに分割され、それら層の間の熱移動が考慮されているだけであるため、季節による入浴直前の体内の温度分布の違いや入浴時に体表面に近い皮膚から深部に向かって徐々に熱が伝わることを再現することが難しい。よって、入浴中の入浴者の深部体温を、より精度良く推定することが求められる。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、入浴中の入浴者の深部体温を精度良く推定でき得るふろ装置を提供することを目的とする。また、深部体温の上昇による体調不良症状の発症の予防が良好に行え得るふろ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様は、ふろ装置に関する。この態様に係るふろ装置は、浴槽内に溜められた湯水の温度を示す湯温データを出力する湯温データ出力部と、浴室内に設置される報知部と、前記浴槽内への入浴を検知する入浴検知部と、前記湯温データに基づいて、人体熱モデルにより推定された入浴者の深部体温が、前記浴槽内への入浴開始から体調不良症状が懸念される所定の温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、または、体調不良症状が懸念される所定の温度閾値以上となったと判定した場合に、所定の報知を前記報知部に行わせる報知処理部と、を備える。ここで、前記人体熱モデルは、人体を、皮膚層と、前記皮膚層よりも人体の中心側となるコア層と、前記皮膚層と前記コア層との間の中間層と、に分割し、少なくとも、前記浴槽内の湯水と前記皮膚層との間の熱移動、前記皮膚層と前記中間層との間の熱移動、および、前記中間層と前記コア層との間の熱移動を含む。前記人体熱モデルにより得られる計算式に基づいて、前記コア層の温度が前記深部体温として算出される。
【0010】
たとえば、前記報知処理部は、前記浴槽内での入浴中、定期的に、前記湯温データを用いて、前記計算式に基づいて前記深部体温を算出する。そして、前記報知処理部は、算出した前記深部体温が、前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、または、前記温度閾値以上となったと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる。
【0011】
あるいは、たとえば、前記報知処理部は、前記浴槽内への入浴開始時に、前記湯温データを用いて、前記計算式に基づいて入浴開始から所定時間経過毎の前記深部体温を算出し、前記湯温データが示す前記湯水の温度のときに前記深部体温が前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇するまたは前記温度閾値以上となる入浴時間を決定する。そして、前記報知処理部は、前記浴槽内への入浴開始から前記入浴時間が経過したと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる。
【0012】
あるいは、たとえば、前記浴槽内の前記湯水の温度に対応付けて、当該湯水の温度のときに前記深部体温が前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇するまたは前記温度閾値以上となる入浴時間を記憶する記憶部が備えられる。この場合、前記報知処理部は、前記湯温データが示す前記湯水の温度に対応付けられた前記入浴時間を前記記憶部から読み出す。そして、前記報知処理部は、前記浴槽内への入浴開始から前記入浴時間が経過したと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせる。
【0013】
本態様に係るふろ装置によれば、人体熱モデルは、皮膚層、中間層およびコア層の3つの層の間の熱収支を考慮できるので、季節による入浴直前の体内の温度分布の違いや入浴時に体表面に近い皮膚から深部に向かって徐々に熱が伝わることを、人体熱モデルにより再現することが可能となる。これにより、入浴中の入浴者の深部体温を精度良く推定することが可能となる、よって、推定された深部体温に基づいて、適正なタイミングでの入浴者への報知が可能となり、深部体温の上昇による体調不良症状の発症の予防を良好に行うことが可能となる。
【0014】
本態様に係るふろ装置において、前記浴室内の気温を示す気温データを出力する気温データ出力部を、さらに備えるような構成が採られ得る。この場合、前記人体熱モデルは、前記皮膚層が、前記浴室内の空気に接する第1皮膚層と前記浴槽内の湯水に接する第2皮膚層とに分割されるとともに、前記中間層が、前記第1皮膚層に接する第1中間層と前記第2皮膚層に接する第2中間層とに分割され、前記浴室内の空気と前記第1皮膚層との間の熱移動、前記浴槽内の湯水と前記第2皮膚層との間の熱移動、前記第1皮膚層と前記第1中間層との間の熱移動、および、前記第2皮膚層と前記第2中間層との間の熱移動を含み得る。そして、前記報知処理部は、前記湯温データおよび前記気温データに基づいて、前記人体熱モデルにより推定された入浴者の前記深部体温が、前記浴槽内への入浴開始から前記温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、または、前記温度閾値以上となったと判定した場合に、前記所定の報知を前記報知部に行わせるような構成とされ得る。
【0015】
上記の構成によれば、入浴者の湯水から露出した部分での浴室内の空気との間の熱移動を加味して、入浴中の入浴者の深部体温を推定できる。よって、入浴者の深部体温を、一層、精度良く推定することが可能となり、体調不良症状の発症の予防を、一層、良好に行うことが可能となる。
【0016】
本態様に係るふろ装置において、前記人体熱モデルは、前記皮膚層と前記コア層との間の熱移動を含み得る。
【0017】
上記の構成によれば、中間層の介在により隔たれた皮膚層とコア層との間の熱移動が考慮されることにより、入浴者の深部体温を、一層、精度良く推定することが可能となる。よって、入浴者の体調不良症状の発症の予防を、一層、良好に行うことが可能となる。
【0018】
本態様に係るふろ装置において、入力部により入力された、前記計算式による前記深部体温の算出結果に影響する、入浴者に係るパラメータの値を受け付けるパラメータ受付部を、さらに備えるような構成が採られ得る。
【0019】
上記の構成によれば、受け付けられたパラメータの値が用いられることにより、人体熱モデルを用いた入浴者の深部体温の推定が、一層、精度良く行え、その結果、深部体温の上昇に基づいて、所定の報知を、一層、精度良く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、入浴中の入浴者の深部体温を精度良く推定でき得るふろ装置を提供できる。また、深部体温の上昇による体調不良症状の発症の予防が良好に行え得るふろ装置を提供できる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る、給湯装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る、給湯装置を構成する各機器の回路ブロックを示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る、給湯器の燃焼系および配管の構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る、人体熱モデルについて説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る、人体熱モデルについて説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る、浴室リモコンにおいて行われる、入浴タイマー機能に関する処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7(a)は、実施形態1の人体熱モデルにより深部体温を推測したときの深部体温上昇量推測結果を示す図であり、
図7(b)は、比較例の人体熱モデルにより深部体温を推測したときの深部体温上昇量推測結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る、浴室リモコンにおいて行われる、入浴タイマー機能に関する処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態3に係る、入浴時間決定テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係る、浴室リモコンにおいて行われる、入浴タイマー機能に関する処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(a)は、変更例1に係る、浴室リモコンの制御部を示すブロック図である。
図11(b)は、変更例1に係る、浴室リモコンの制御部により実行されるパラメータ入力に関する処理を示すフローチャートである。
図11(c)は、変更例1に係る、入力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る、給湯装置10の構成を示す図である。
【0025】
給湯装置10は、ふろ装置として、ふろ自動機能、追い焚き機能、足し湯機能、足し水機能などのふろ機能を実行する。
【0026】
図1に示すように、給湯装置10は、給湯器11と、リモートコントローラ12、13とを備えている。給湯器11は、ガスを燃料として湯水を供給するガス給湯器である。給湯器11により生成された湯水は、給湯口11aにそれぞれ接続された配管を介して、台所の蛇口や、浴槽、カラン等に供給される。給湯器11が、床暖房機能や、浴室暖房機能およびパネルヒータによる暖房機能を備える場合、これら機能を実現する機器に対して、給湯器11から湯水が供給される。
【0027】
リモートコントローラ12、13は、給湯器11に接続され、給湯装置10の各機能について種々の設定を行うために用いられる。リモートコントローラ12は、表示部121と、入力部122とを備え、リモートコントローラ13は、タッチパネルからなる表示入力部131と、運転ボタン132とを備える。操作者は、表示部121に表示された画面に従って入力部122を操作することにより、湯張りや給湯温度調節等について、任意の設定を行うことができる。また、操作者は、表示入力部131を操作することによっても、湯張り等の設定を行える。
【0028】
リモートコントローラ12は、浴室に設置され、リモートコントローラ13は、キッチン等に設置される。リモートコントローラ12、13には、音声を入出力するための音声窓12a、13aが設けられている。
【0029】
以下、浴室に設置されるリモートコントローラ12を、「浴室リモコン12」と称し、キッチン等に設置されるリモートコントローラ13を、「台所リモコン13」と称する。
【0030】
浴室リモコン12の入力部122には、運転ボタン122aが含まれている。運転ボタン122a、132は、給湯器11を運転オン状態と運転オフ状態とに切り替えるためのボタンである。
【0031】
浴室リモコン12および台所リモコン13が運転オフ状態(カラン等の給湯栓が開かれて基準流量以上の通水が発生したとしても給湯器11が給湯運転を行わない状態)にあるとき、表示部121および表示入力部131は消灯状態にあり、運転ボタン122a、132以外の操作ボタンの操作は受け付けられない。運転ボタン122a、132が操作され、運転オン状態(カラン等の給湯栓が開かれて基準流量以上の通水が発生したときに給湯器11が給湯運転を行える状態)になると、表示部121および表示入力部131が点灯して設定内容が表示されるとともに、運転ボタン122a、132以外の操作ボタンの操作が受け付け可能となる。
【0032】
さらに、入力部122および表示入力部131には、給湯温度を変更するためのボタンが含まれている。操作者は、このボタンを操作することにより、給湯の設定温度を変更することができる。この他、入力部122および表示入力部131には、ふろ自動機能や、追い焚き機能、足し湯機能、足し水機能等を実行するためのボタン等、給湯器11の動作を制御するためのボタンが含まれている。
【0033】
図2は、給湯装置10を構成する各機器の回路ブロックを示す図である。
【0034】
給湯器11は、制御部111と、記憶部112と、通信部113と、検出部114と、を備える。制御部111は、マイクロコンピュータを備え、記憶部112に記憶されたプログラムに従って、給湯器11内の各部の制御を行う。記憶部112は、メモリを備え、所定の制御プログラムを記憶する。
【0035】
通信部113は、制御部111からの制御に従って、浴室リモコン12および台所リモコン13と通信を行う。通信部113は、2芯通信線L1、L2を介して、浴室リモコン12の通信部125および台所リモコン13の通信部135と接続されている。また、2芯通信線L1、L2は、通信部113の内部において、互いに接続されている。したがって、浴室リモコン12の通信部125と台所リモコン13の通信部135は、2芯通信線L1、L2によって互いに接続されている。このため、通信部113、125、135の何れかから送信された信号は、他の通信部に同時に送信される。
【0036】
検出部114は、給湯器11に配置された各種センサを含んでいる。たとえば、検出部114は、湯水の温度を検出するための温度センサ、湯水の供給を検出するための流量センサ等を含んでいる。
【0037】
図3は、給湯器11の燃焼系および配管の構成を模式的に示す図である。
【0038】
図3に示すように、給湯器11は、
図2に示した構成の他、給湯部210と、追い焚き部220と、バイパス部230とを備える。給湯器11は、浴槽2が設けられた浴室1の外に設置される。
【0039】
給湯部210は、給水管路211と、給湯熱交換器212と、給湯管路213と、給湯燃焼器214と、給気ファン215とを含む。給水管路211は、水道管と給湯熱交換器212とに繋がり、給湯管路213は、給湯熱交換器212と浴室水栓3および外部水栓4とに繋がる。給湯燃焼器214には、比例弁216の開度に応じた量のガス(燃料ガス)が給湯ガス管路217を通じて供給される。図示しないガス電磁弁が開放されると、給湯ガス管路217にガスが供給される。給湯燃焼器214は、ガスを燃料として、ガスの供給量に応じた強さで燃焼する。給気ファン215は、給湯燃焼器214に燃焼用の空気を供給する。
【0040】
追い焚き部220は、戻り管路221と、ふろ熱交換器222と、往き管路223と、ふろ燃焼器224と、循環ポンプ225とを含む。戻り管路221は、浴槽2の循環アダプタ2aとふろ熱交換器222とに繋がり、往き管路223は、ふろ熱交換器222と循環アダプタ2aとに繋がる。
【0041】
ふろ燃焼器224には、比例弁226の開度に応じた量のガス(燃料ガス)がふろガス管路227を通じて供給される。図示しないガス電磁弁が開放されると、ふろガス管路227にガスが供給される。ふろ燃焼器224は、ガスを燃料として、ガスの供給量に応じた強さで燃焼する。給気ファン215が給湯部210と追い焚き部220との間で共用され、給気ファン215からふろ燃焼器224に燃焼用の空気が供給される。戻り管路221に、循環ポンプ225および水位センサS1が配置される。水位センサS1は、戻り管路221内の水圧に基づいて浴槽2内の水位を検出する。
【0042】
バイパス部230は、バイパス管路231と、給湯電磁弁232とを含む。バイパス管路231は、給湯管路213と戻り管路221とに繋がる。給湯電磁弁232は、バイパス管路231を開閉する。
【0043】
給湯器11は、水位センサS1の他に、給水管路211の流量を検出するための流量センサS2と、給水管路211に導入された水の温度を検出するための温度センサS3と、給湯熱交換器212で加温された後の湯水の温度を検出するための温度センサS4とを備えている。また、給湯器11は、戻り管路221内の湯水の温度を検出することにより、浴槽2内に溜められた湯水の温度を検出する温度センサS5を備えている。これらセンサS1~S5は、
図2の検出部114に含まれる。
【0044】
制御部111は、給湯部210の給湯燃焼器214、給気ファン215および比例弁216、追い焚き部220のふろ燃焼器224、循環ポンプ225および比例弁226、バイパス部230の給湯電磁弁232などを制御する。
【0045】
浴室水栓3または外部水栓4が開かれると、給湯機能が実行される。水道管からの水が給水管路211を通じて給湯熱交換器212に導入されるとともに、給湯燃焼器214が燃焼して給湯熱交換器212が加熱される。給湯熱交換器212に導入された水が加熱されて湯となり、湯が給湯管路213を通じて浴室水栓3または外部水栓4に供給される。浴室水栓3または外部水栓4が閉じられると、水道管から給水管路211への給水が停止するとともに給湯燃焼器214の燃焼が停止する。
【0046】
また、制御部111は、給湯部210を制御して、湯張り機能(ふろ自動機能)を実行する。この場合、給湯電磁弁232が開放されるとともに、水道管からの水が給水管路211を通じて給湯熱交換器212に導入され、給湯熱交換器212で加熱される。そして、給湯熱交換器212からの湯が給湯管路213およびバイパス管路231を通じて戻り管路221に導入される。
【0047】
戻り管路221に導入された湯の一部は、戻り管路221を循環アダプタ2a側へと流れ、循環アダプタ2aから浴槽2内に注がれる。戻り管路221に導入された湯の残りは、戻り管路221をふろ熱交換器222側へと流れ、さらにふろ熱交換器222および往き管路223を流れて循環アダプタ2aから浴槽2内に注がれる。
【0048】
給湯が行われて浴槽2内に湯水が溜められると、戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223が湯水で満たされた状態となる。これにより、水位センサS1での浴槽2内の水位検出が可能となる。浴槽2内の水位が予め設定された水位に到達したことが水位センサS1により検出されると、給湯電磁弁232が閉じられ、水道管から給水管路211への給水が停止するとともに給湯燃焼器214の燃焼が停止する。
【0049】
戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223が湯水で満たされた状態にあるとき、戻り管路221内の湯水の温度は、浴槽2内の湯水の温度とほぼ等しくなる。温度センサS5により、戻り管路221内の湯水の温度を、浴槽2内の湯水の温度として検出できる。温度センサS5が検出した温度の温度データは、浴槽2内の湯水の温度を示す湯温データとなる。温度センサS5は、湯温データ出力部として、湯温データを出力する。湯温データは、制御部111に入力される。
【0050】
この他、制御部111は、追い焚き部220を制御して、追い焚き機能を実行する。この場合、循環ポンプ225が作動するとともにふろ燃焼器224が燃焼する。浴槽2内の湯が、戻り管路221、ふろ熱交換器222および往き管路223からなる循環路と浴槽2との間で循環し、その間にふろ熱交換器222で加熱される。これにより、浴槽2内の湯温が上昇する。
【0051】
また、足し湯機能、足し水機能が、制御部111の制御による給湯部210からの浴槽2への給湯および給水により実行される。足し水機能では、給湯燃焼器214が燃焼しない。
【0052】
なお、ふろ自動機能には、湯張り機能と、湯張りの後に浴槽2内の湯水の温度を所定のふろ設定温度に維持する保温機能とが含まれる。保温機能において、制御部111は、温度センサS5からの湯温データに基づいて、浴槽2内の湯水の温度がふろ設定温度となるように、追い焚き部220による追い焚きを実行する。保温機能により、浴槽2内の湯水の温度は、設定温度とほぼ等しくなる。ふろ設定温度は、浴室リモコン12でのボタン操作により設定できる。
【0053】
図2に戻り、浴室リモコン12は、上述の表示部121および入力部122の他、制御部123と、記憶部124と、通信部125と、スピーカ126と、温度センサ127とを備える。表示部121は、たとえば、液晶パネルにより構成される。入力部122は、温度設定ボタン等の各種操作ボタンを備える。表示部121が、タッチパネルであってもよい。
【0054】
制御部123は、マイクロコンピュータを備え、記憶部124に記憶されたプログラムに従って所定の制御を行う。記憶部124は、メモリを備え、所定の制御プログラムを記憶する。
【0055】
通信部125は、制御部123からの制御に従って、給湯器11および台所リモコン13と通信を行う。スピーカ126は、制御部123により生成された音声信号に基づく音声を出力する。制御部123は、記憶部124に記憶されている音声情報を随時読み出して、音声信号を生成する。スピーカ126から出力された音声は、
図1の音声窓12aから出力される。
【0056】
温度センサ127は、浴室1内の気温を検出する。温度センサ127は、気温データ出力部として、浴室1内の気温を示す気温データを出力する。気温データは、制御部123に入力される。
【0057】
台所リモコン13は、上述の表示入力部131および運転ボタン132の他、制御部133と、記憶部134と、通信部135と、スピーカ136とを備える。制御部133は、マイクロコンピュータを備え、記憶部134に記憶されたプログラムに従って所定の制御を行う。記憶部134は、メモリを備え、所定の制御プログラムを記憶する。
【0058】
通信部135は、制御部133からの制御に従って、給湯器11および浴室リモコン12と通信を行う。スピーカ136は、制御部133により生成された音声信号に基づく音声を出力する。制御部133は、記憶部134に記憶されている音声情報を随時読み出して、音声信号を生成する。スピーカ136から出力された音声は、
図1の音声窓13aから出力される。
【0059】
さて、給湯装置10には、入浴タイマー機能が備えられている。入浴タイマー機能では、浴槽2内に入浴中の入浴者の深部体温が推定され、入浴開始後、深部体温が過度に上昇しないタイミングにおいて、入浴者への報知が行われる。これにより、深部体温の過度な上昇が原因となる熱中症等の体調不良症状の発症を予防できる。
【0060】
以下、入浴タイマー機能について、詳細に説明する。
【0061】
図2に示すように、入浴タイマー機能を実行するため、給湯器11では、記憶部112に記憶された制御プログラムによって、入浴検知部111aの機能が制御部111に付与される。さらに、浴室リモコン12では、記憶部124に記憶された制御プログラムによって、報知処理部123aの機能が制御部123に付与される。
【0062】
湯が張られた浴槽2内に人が入ると浴槽2内の水位が上昇する。この浴槽2内へ人が入ったことに基づく水位変動を、水位センサS1によって検知できる。入浴検知部111aは、入浴検知センサである水位センサS1の検知結果に基づいて、浴槽2に対する人の入浴を検知する。入浴の検知結果は、随時、制御部111から浴室リモコン12に送信される。
【0063】
報知処理部123aは、温度センサS5からの湯温データと温度センサ127からの気温データとに基づいて、人体熱モデルにより推定された入浴者の深部体温が、浴槽2内への入浴開始から体調不良症状が懸念される温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、所定の報知を報知部に行わせる。具体的に、本実施形態では、報知処理部123aは、浴槽2内での入浴中、定期的に、湯温データと気温データとを用いて、人体熱モデルにより得られる計算式に基づいて深部体温を算出する。そして、報知処理部123aは、算出した深部体温が、浴槽2内への入浴開始から温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、所定の報知を報知部に行わせる。本実施形態では、浴室リモコン12のスピーカ126が、報知部として、音声による報知を行う。
【0064】
本実施形態の入浴タイマー機能は、たとえば、高齢者に向けられる。この場合、温度上昇閾値は、高齢者が熱中症等の体調不良症状を発症することを予防できるように、高齢者が体調不良症状を発症し得るような深部体温の上昇値よりも低い値(たとえば、+1.0℃)に設定される。温度上昇閾値は、+0.5~2.0℃の範囲内で設定することができる。
【0065】
なお、本実施形態の入浴タイマー機能が、高齢者よりも若年層の者に向けられてもよい。この場合、当該若年層の者は高齢者よりも深部体温の上昇により体調不良症状を発症しにくいため、その温度上昇閾値が高齢者用の温度上昇閾値よりも大きくされる。
【0066】
入浴者の深部体温の推定に用いられる人体熱モデルは、人体を複数の部位(層)に分割し、各部位における熱収支に基づいて体温を計算する物理モデルである。
【0067】
図4および
図5は、人体熱モデルHMについて説明するための図である。
【0068】
図4に示すように、本実施形態の人体熱モデルHMでは、人体が、皮膚層SKと、皮膚層SKよりも人体の中心側となるコア層CRと、皮膚層SKとコア層CRとの間の中間層MDと、に分割される。さらに、皮膚層SKは、浴室1内の空気に接する第1皮膚層SK1と浴槽2内の湯水に接する第2皮膚層SK2とに分割され、中間層MDは、第1皮膚層SK1に接する第1中間層MD1と第2皮膚層SK2に接する第2中間層MD2とに分割される。
【0069】
図5に示すように、第1皮膚層SK1では、浴室1内の空気と当該第1皮膚層SK1との間の熱移動として、放射・対流による熱移動および蒸発による熱損失が生じる。また、当該第1皮膚層SK1と第1中間層MD1との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。さらに、当該第1皮膚層SK1とコア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。
【0070】
第2皮膚層SK2では、浴槽2内の湯水と当該第2皮膚層SK2との間の熱移動として、対流による熱移動が生じる。また、第2皮膚層SK2と第2中間層MD2との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。さらに、第2皮膚層SK2とコア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。
【0071】
第1中間層MD1では、第1皮膚層SK1と当該第1中間層MD1との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。また、当該第1中間層MD1とコア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。
【0072】
第2中間層MD2では、第2皮膚層SK2と当該第2中間層MD2との間の熱移動として、組織間の熱移動が生じる。また、当該第2中間層MD2とコア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。
【0073】
コア層CRでは、第1中間層MD1と当該コア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。また、第2中間層MD2と当該コア層CRとの間の熱移動として、組織間の熱移動および血流による熱移動が生じる。さらに、第1皮膚層SK1と当該コア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。さらに、第2皮膚層SK2と当該コア層CRとの間の熱移動として、血流による熱移動が生じる。さらに、代謝による熱生産、呼吸による熱損失および外部仕事による熱移動が生じる。
【0074】
本実施形態の人体熱モデルHMにより得られる、第1中間層MD1、第2中間層MD2、コア層CR、第1皮膚層SK1および第2皮膚層SK2における熱収支式(熱収支の関係式)は、それぞれ、以下の式1、式2、式3、式4および式5により表される。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
これらの式中の記号の意味は、以下のとおりである。
cmd:中間層MD(第1中間層MD1、第2中間層MD2)の比熱[J/kg・℃]
ccr:コア層CRの比熱[J/kg・℃]
csk:皮膚層SK(第1皮膚層SK1、第2皮膚層SK2)の比熱[J/kg・℃]
cbl:血流の比熱[[J/kg・℃]
mmd_a:第1中間層MD1の質量[kg]
mmd_b:第2中間層MD2の質量[kg]
msk_a:第1皮膚層SK1の質量[kg]
msk_b:第2皮膚層SK2の質量[kg]
mcr:コア層CRの質量[kg]
Tmd_a:第1中間層MD1の温度[℃]
Tmd_b:第2中間層MD2の温度[℃]
Tsk_a:第1皮膚層SK1の温度[℃]
Tsk_b:第2皮膚層SK2の温度[℃]
Tcr:コア層CRの温度[℃]
α:湯水に接している体表面積率[%]
Kcm:コア層CRと中間層MDとの間の熱コンダクタンス[W/(m2・℃)]
Kms:中間層MDと皮膚層SKとの間の熱コンダクタンス[W/(m2・℃)]
M:代謝による生産性[W/m2]
W:外部仕事量[W/m2]
Eres:呼吸による外部への熱損失[W/m2]
EsK:皮膚表面での蒸発による熱損失[W/m2]
Ra:空気に対する放射による熱伝達[W/m2]
Ca:空気に対する対流による熱伝達[W/m2]
Chw:湯水に対する対流による熱伝達[W/m2]
Vbl:血流量[m2/(m2・S)]
A:体表面積[m2]
【0081】
cmd、ccr、csk、cbl、mmd_a、mmd_b、msk_a、msk_b、mcr、α、Kcm、Kms、M、W、Aの値は、予め決められる。
【0082】
即ち、中間層MD、コア層CRおよび皮膚層SKのそれぞれの比熱には大差はないため、たとえば、cmd、ccr、cskは、同じ値とし、人体の比熱を用いる。たとえば、mmd_a、mmd_b、msk_a、msk_b、mcrは、第1中間層MD1、第2中間層MD2、コア層CR、第1皮膚層SK1および第2皮膚層SK2の質量比率を定めて、日本人の標準的な体重と各層の質量比率とに基づいて決定する。αは、人体の脇より下が湯水に接していると見做し、たとえば、70%とする。
【0083】
また、Kcmは、たとえば、身長と、体重と、コア層CR、中間層MDおよび皮膚層SKの各層の密度、熱伝導率および質量比率と、を用いて、各層の熱抵抗を算出し、これら熱抵抗の逆数として、これら熱抵抗から求めることができる。
【0084】
さらに、Mは、たとえば、日本人の標準的な基礎代謝量を用いる。Wは、入浴中、入浴者はほぼ動かないため、0とする。Aは、たとえば、日本人の標準的な体表面積を用いる。
【0085】
EresおよびEskは、人体温熱生理モデルに関する文献「Gagge, A.P., Stolwijk, J.A.J and Nishi,Y.:An Effective TemperatureScale Based on a Simple Model of Human Physiological Regulatory Response,ASHRAETrans., 77,247-262,1971」に示された計算式により算出できる。即ち、Eresは、浴室1内の気温Taにおける飽和水蒸気圧と、空気中の相対湿度と、代謝による生産性Mとを用いて求めることができる。Eskは、水蒸気の拡散熱Ediffと発汗による蒸発熱Erswの合算により求められる。Ediffは、空気の熱伝達率、皮膚層SKの温度Tskにおける飽和水蒸気圧、浴室1内の気温Taにおける飽和水蒸気圧、空気中の相対湿度などを用いて求めることができる。Erswは、皮膚層SKの温度Tsk、コア層CRの温度Tcrなどを用いて求めることができる。
【0086】
Raは、Tsk_aと浴室1内の気温Taとの差分に放射熱伝達率を乗じることにより算出される。Caは、Tsk_aとTaとの差分に対流熱伝達率を乗じることにより算出される。Chwは、Tsk_bと浴槽2内の湯温Tbとの差分に対流熱伝達率を乗じることにより算出される。
【0087】
Vblの値は、以下の式6により算出される。
【0088】
【0089】
この式中の記号の意味は、以下のとおりである。
Tsk:皮膚層SKの温度[℃]
Tsk_sp:皮膚層SKのセットポイント[℃]
Tcr_sp:コア層CRのセットポイント[℃]
【0090】
Tskは、αに基づいたTsk_aとTsk_bの重み付平均であり、皮膚層SKの平均温度である。Tsk_spは、皮膚層SKの平均温度を基準として定められる。
【0091】
図6は、浴室リモコン12において行われる、入浴タイマー機能に関する処理を示すフローチャートである。この処理は、浴室リモコン12の制御部123が、報知処理部123aの機能により行う。
【0092】
図6を参照して、制御部123(報知処理部123a)は、浴槽2内への入浴が開始されたか否かを監視する(S101)。入浴が開始されると、入浴検知部111aによる入浴検知に基づいて、給湯器11の制御部111から浴室リモコン12に入浴開始の通知が送信される。制御部123は、給湯器11からの通知により、入浴が開始されたと判定すると(S101:YES)、所定時間が経過したか否かを判定する(S102)。所定時間は、入浴中に、入浴者の深部体温を定期的に推定する時間間隔(周期)であり、たとえば、1分間とされる。よって、ステップS102では、最初は、入浴開始からの所定時間の経過が判定され、以降は、前回の深部体温の推定からの所定時間の経過が判定される。
【0093】
制御部123は、所定時間が経過すると(S102:YES)、温度センサS5からの湯温データを給湯器11の制御部111を介して取得するとともに、温度センサ127からの気温データを取得する(S103)。
【0094】
そして、制御部123は、入浴者の現在(今回)の深部体温を推定する処理を実行する(S104)。深部体温を推定に、上述した
図4および
図5の人体熱モデルHM、即ち、人体熱モデルHMにより得られる計算式(熱収支式)が用いられる。
【0095】
まず、制御部123は、上記式3に基づいて、コア層CRの温度勾配dTcr/dtを算出する。
【0096】
このとき、第1中間層MD1の温度Tmd_a、第2中間層MD2の温度Tmd_b、第1皮膚層SK1の温度Tsk_a、第2皮膚層SK2の温度Tsk_b、コア層CRの温度Tcrは、今回が初回であれば、初期値とされる。初期値は、入浴前の温度である。入浴前のTmd_aとTmd_b、即ち、Tmd_aとTmd_bの初期値は同じとされ、入浴前のTsk_aとTsk_b、即ち、Tsk_aとTsk_bの初期値は同じとされる。たとえば、日本人の平均深部体温が、入浴前のTcr、即ち、Tcrの初期値とされ、日本人の平均皮膚温が、入浴前のTsk_a、Tsk_b、即ち、Tsk_a、Tsk_bの初期値とされる。そして、これら平均深部体温と平均皮膚温に基づいて、Tmd_a、Tmd_bの初期値が決められる。Tmd_a、Tmd_b、Tsk_a、Tsk_b、Tcrは、今回が初回でなければ、前回の深部体温の推定時に算出された値とされる。この点は、上記式1、上記式2、上記式4、上記式5に関しても同様である。
【0097】
次に、制御部123は、算出されたdTcr/dtを所定時間で積分して、所定時間における温度上昇値を求める。そして、制御部123は、Tcrの初期値(初回の場合)、または、前回のTcrの値(初回でない場合)に、当該温度上昇値を加算し、今回(現在)のTcrを求め、当該Tcrを、推定した入浴者の深部体温とする。
【0098】
上記の通り、Tcrを算出するためには、上記式3において前回のTmd_a、Tmd_b、Tsk_a、Tsk_bが必要となる。よって、次回のTcrの算出、即ち、深部体温の推定に使用できるように、制御部123は、深部体温を推定する処理において、さらに現在(今回)のTmd_a、Tmd_b、Tsk_a、Tsk_bを算出する。
【0099】
即ち、制御部123は、上記式1に基づいて、第1中間層MD1の温度勾配dTmd_a/dtを算出し、当該dTmd_a/dtを所定時間で積分して温度上昇値を求め、Tmd_aの初期値、または、前回のTmd_aの値に、当該温度上昇値を加算し、今回(現在)のTmd_aを求める。同様に、制御部123は、上記式2に基づいて、第2中間層MD2の温度勾配dTmd_b/dtを算出し、当該dTmd_b/dtを所定時間で積分して温度上昇値を求め、Tmd_bの初期値、または、前回のTmd_bの値に、当該温度上昇値を加算し、今回(現在)のTmd_bを求める。
【0100】
さらに、制御部123は、上記式4に基づいて、第1皮膚層SK1の温度勾配dTsk_a/dtを算出し、当該dTsk_a/dtを所定時間で積分して温度上昇値を求め、Tsk_aの初期値、または、前回のTsk_aの値に、当該温度上昇値を加算し、今回(現在)のTsk_aを求める。同様に、制御部123は、上記式5に基づいて、第2皮膚層SK2の温度勾配dTsk_b/dtを算出し、当該dTsk_b/dtを所定時間で積分して温度上昇値を求め、Tsk_bの初期値、または、前回のTsk_bの値に、当該温度上昇値を加算し、今回(現在)のTsk_bを求める。
【0101】
このとき、式4に含まれる、空気に対する放射による熱伝達Raおよび空気に対する対流による熱伝達Caの算出に用いられる気温Taに、ステップS103で取得された気温データが適用される。さらに、式5に含まれる、湯水に対する対流による熱伝達Chwの算出に用いられる湯温Tbに、ステップS103で取得された湯温データが適用される。よって、コア層CRの温度Tcr、即ち深部体温の算出には、湯温データおよび気温データが用いられることになる。
【0102】
このようにして、ステップS104で、現在の入浴者の深部体温が推定されると、次に、制御部123は、推定された深部体温と、予め定められた入浴前、即ち入浴開始時の深部体温との差分を算出することにより、入浴開始からの深部体温の上昇値を推定する(S105)。たとえば、入浴開始時の深部体温は、コア層CRの温度Tcrの初期値とされる。
【0103】
そして、制御部123は、深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上であるか否かを判定する。(S106)。温度上昇閾値は、上述したように、入浴者が体調不良症状を発症し得るような深部体温の上昇値よりも低い値であり、入浴に対する注意喚起、退浴の催促等の報知が望まれる値である。
【0104】
制御部123は、深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上でないと判定した場合(S106:NO)、ステップS102の処理に戻る。こうして、深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上となるまで、ステップS102ないしS106の処理が繰り返される。
【0105】
入浴者の体が浴槽2内の湯水で温められることにより深部体温が上昇していくと、やがて深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上となる。なお、深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上となる入浴時間(入浴開始からの時間)は、浴槽2内の湯温が高いほど短くなり、且つ浴室1内の気温が高いほど短くなる。
【0106】
制御部123は、深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上であると判定した場合(S106:YES)、スピーカ126に、所定の報知として、音声により、“○○分が経過しました。ここからの入浴にはご注意ください”などの入浴の注意を促す報知を行わせる。あるいは、所定の報知として、スピーカ126が、音声による、“○○分が経過しました。そろそろ退浴されてはいかがでしょうか”などの退浴を促す報知を行ってもよい。
【0107】
入浴者は、報知により気づかされることで、熱中症等の体調不良症状に陥る前に退浴する。なお、入浴の注意を促す報知は、入浴者の退浴に繋がるため、広い意味では、退浴を促す報知ということもできる。
【0108】
なお、
図6の入浴タイマー機能に関する処理では、入浴中、所定時間毎に、現在の入浴者の深部体温が推定される。しかしながら、入浴中、所定時間毎に、現在から所定時間後の入浴者の深部体温が推定されてもよい。
【0109】
この場合、
図6の処理のように、入浴開始後、所定時間の経過を待つのではなく、入浴開始直後に、最初の湯温データおよび気温データの取得(S103)、深部体温の推定(S104)および深部体温の上昇値の推定(S105)が実行され、その後、上昇値が温度上昇閾値以上となるまで、所定時間毎にステップS103~S105の処理が繰り返される。このようにステップS103~S105の処理の実行タイミングを所定時間、前にずらした場合、ステップS104で推定された深部体温は、現在から所定時間後の深部体温となり、ステップS105で推定された深部体温の上昇値は、現在から所定時間後の深部体温の上昇値となる。よって、制御部123は、ステップS106で、深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上であると判定した場合、所定時間後に、スピーカ126に所定の報知を行わせる。
【0110】
図7(a)は、実施形態1の人体熱モデルHMにより深部体温を推測したときの深部体温上昇量推測結果を示す図であり、
図7(b)は、比較例の人体熱モデルにより深部体温を推測したときの深部体温上昇量推測結果を示す図である。比較例の人体熱モデルは、特許文献1(特開2021-56791号公報)に記載された入浴時の体温予測モデルである。
【0111】
図7(a)、(b)のグラフは、複数の被験者について、夏、秋、冬を想定したそれぞれの室温において浴槽2内の湯温をそれぞれ40℃、42℃としたときの、入浴10分間の深部体温上昇量を推測および実測した結果である。縦軸は推測値であり、横軸は実測値である。RMSEは、深部体温上昇値の平均二乗誤差の平方根である。
【0112】
比較例の人体熱モデルでは、RMSEの値が0.153℃であるのに対し、実施形態1の人体熱モデルHMでは、RMSEの値が0.105℃であり、比較例よりも推測値と実測値との誤差が小さくなっている。この結果から、実施形態1の人体熱モデルHMでは、比較例の人体熱モデルよりも、深部体温を推測(推定)する精度が高いということができる。
【0113】
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏され得る。
【0114】
図4および
図5に示すように、入浴中の入浴者の深部体温を推定するための人体熱モデルHMは、人体を、皮膚層SKと、中間層MDと、コア層CRと、に分割し、少なくとも、浴槽2内の湯水と皮膚層SKとの間の熱移動、皮膚層SKと中間層MDとの間の熱移動、および、中間層MDとコア層CRとの間の熱移動を含む。これにより、皮膚層SK、中間層MDおよびコア層CRの3つの層の間の熱収支を考慮できるので、季節による入浴直前の体内の温度分布の違いや入浴時に体表面に近い皮膚から深部に向かって徐々に熱が伝わることを再現することが可能となり、入浴中の入浴者の深部体温を精度良く推定することが可能となる。よって、この人体熱モデルHMにより推定された入浴者の深部体温が、浴槽2内への入浴開始から温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、所定の報知を報知部に行わせることにより、適正なタイミングでの入浴者への報知が可能となり、深部体温の上昇による体調不良症状の発症の予防を良好に行うことが可能となる。
【0115】
さらに、人体熱モデルHMは、皮膚層SKが、浴室1内の空気に接する第1皮膚層SK1と浴槽2内の湯水に接する第2皮膚層SK2とに分割されるとともに、中間層MDが、第1皮膚層SK1に接する第1中間層MD1と第2皮膚層SK2に接する第2中間層MD2とに分割され、浴室1内の空気と第1皮膚層SK1との間の熱移動、浴槽2内の湯水と第2皮膚層SK2との間の熱移動、第1皮膚層SK1と第1中間層MD1との間の熱移動、および、第2皮膚層SK2と第2中間層MD2との間の熱移動を含む。これにより、入浴者の湯水から露出した部分での浴室1内の空気との間の熱移動を加味して、入浴中の入浴者の深部体温を推定できる。よって、入浴者の深部体温を、一層、精度良く推定することが可能となり、入浴者の体調不良症状の発症の予防を、一層、良好に行うことが可能となる。
【0116】
さらに、人体熱モデルHMは、皮膚層SK(第1皮膚層SK1、第2皮膚層SK2)とコア層CRとの間の熱移動を含む。このように、中間層MDの介在により隔たれた皮膚層SKとコア層CRとの間の熱移動が考慮されることにより、入浴者の深部体温を、さらに一層、精度良く推定することが可能となり、体調不良症状の発症の予防を、さらに一層、良好に行うことが可能となる。
【0117】
<実施形態2>
上記実施形態1では、入浴タイマー機能において、浴室リモコン12の報知処理部123aは、浴槽2内での入浴中、定期的に、湯温データと気温データとを用いて、人体熱モデルHMにより得られた計算式に基づいて深部体温を算出し、算出した深部体温が、浴槽2内への入浴開始から温度上昇閾値以上上昇したと判定した場合に、所定の報知を報知部に行わせるような構成とされた。
【0118】
これに対して、実施形態2では、入浴タイマー機能において、報知処理部123aは、浴槽2内への入浴開始時に、湯温データと気温データとを用いて、人体熱モデルHMにより得られた計算式に基づいて入浴開始から所定時間経過毎の深部体温を算出し、湯温データが示す湯温および気温データが示す気温のときに深部体温が浴槽2内への入浴開始から温度上昇閾値以上上昇する入浴時間を決定する。そして、報知処理部123aは、浴槽2内への入浴開始から入浴時間が経過したと判定した場合に、所定の報知を、報知部であるスピーカ126に行わせる。
【0119】
即ち、実施形態2では、報知処理部123aは、入浴時間が経過したと判定することにより、人体熱モデルHMにより推定された深部体温が入浴開始から温度上昇閾値以上上昇したと判定することになる。
【0120】
さらに、上記実施形態1では、温度センサS5による検出温度の温度データが、浴槽2内の湯水の温度を示す湯温データとされ、制御部123は、温度センサS5から出力された当該湯温データを取得した。
【0121】
これに対して、実施形態2では、ふろ設定温度の温度データが、浴槽2内の湯水の温度を示す湯温データとされる。ふろ自動機能(保温機能)により、浴槽2内の湯水の温度は、ふろ設定温度とほぼ等しくなるため、ふろ設定温度を浴槽2内の湯温と見做すことができる。
【0122】
ふろ設定温度の温度データは、浴室リモコン12の記憶部124に記憶されている。よって、記憶部124は、温度データ出力部として、浴槽2内の湯水の温度を示す湯温データを出力する。
【0123】
図8は、浴室リモコン12において行われる、入浴タイマー機能に関する処理を示すフローチャートである。
【0124】
図8を参照して、制御部123(報知処理部123a)は、浴槽2内への入浴が開始されたと判定すると(S201:YES)、記憶部124からの湯温データを取得するとともに、温度センサ127からの気温データを取得する(S202)。そして、制御部123は、入浴開始から所定時間経過毎の入浴者の深部体温を推定して、入浴時間を決定する処理を実行する(S203)。上記実施形態と同様、深部体温の推定には、上述した
図4および
図5の人体熱モデルHM、即ち、人体熱モデルHMにより得られる計算式(熱収支式)が用いられる。計算式による深部体温の算出に、湯温データと気温データとが用いられる。
【0125】
即ち、ステップS203において、制御部123は、入浴開始から所定時間経過毎の深部体温を順番に算出し、所定時間経過毎の深部体温の入浴開始からの上昇値を順番に求めていく。そして、制御部123は、当該上昇値が温度上昇閾値以上となったときの経過時間を入浴時間に決定する。たとえば、所定時間が1分に設定された場合、求められた15分経過時の深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上となったとき、入浴時間が15分に決定される。入浴時間は、浴槽2内の湯温が高いほど、且つ浴室1内の気温が高いほど、短い時間となる。
【0126】
制御部123は、入浴開始から入浴時間が経過したか否かを監視する(S204)。入浴時間の計測は、浴槽2内への入浴が開始されたタイミングで開始される。制御部123は、入浴時間が経過したと判定した場合(S204:YES)、スピーカ126に、所定の報知として、音声による、入浴の注意を促す報知や退浴を促す報知を行わせる(S205)。
【0127】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0128】
<実施形態3>
上記実施形態2では、入浴開始時に、入浴開始から所定時間経過毎の深部体温が推定されて、当該深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上となる入浴時間が決定された。
【0129】
これに対して、実施形態3では、入浴時間を決定するための入浴時間決定テーブル124aが浴室リモコン12の記憶部124に記憶される。そして、制御部123が、入浴時間決定テーブル124aを参照して、入浴時間を決定する。
【0130】
実施形態3では、報知処理部123aは、入浴時間決定テーブル124aにより決定した入浴時間が経過したと判定することにより、人体熱モデルHMにより推定された深部体温が入浴開始から温度上昇閾値以上上昇したと判定することになる。
【0131】
図9は、入浴時間決定テーブル124aの構成の一例を示す図である。
【0132】
入浴時間決定テーブル124aには、浴槽2内の湯温および浴室1内の気温に対応付けて、これら湯温および気温のときに深部体温が浴槽2内への入浴開始から温度上昇閾値以上上昇する入浴時間が登録されている。
【0133】
入浴時間決定テーブル124aは、たとえば、次のようにして作成される。即ち、入浴開始から所定時間毎の深部体温を推定(計算式により算出)して、入浴開始からの時間経過と深部体温との関係を示すデータ(グラフ)を、浴槽2内の湯温と浴室1内の気温とを変えて、複数作成する。作成した各データ(グラフ)から深部体温の上昇値が温度上昇閾値以上となる時間を入浴時間として抽出することにより、入浴時間決定テーブル124aを作成する。入浴時間決定テーブル124aにおいて、入浴時間は、浴槽2内の湯温が高いほど短くなり、且つ、浴室1内の気温が高いほど短くなる。
【0134】
図10は、浴室リモコン12において行われる、入浴タイマー機能に関する処理を示すフローチャートである。
【0135】
図10を参照して、制御部123(報知処理部123a)は、浴槽2内への入浴が開始されたと判定すると(S301:YES)、記憶部124からの湯温データを取得するとともに、温度センサ127からの気温データを取得する(S302)。そして、制御部123は、入浴時間決定テーブル124aを参照し、取得した湯温データと気温データとに基づいて入浴時間を決定する(S303)。即ち、制御部123は、取得した湯温データが示す湯温で且つ取得した気温データが示す気温のときの入浴時間を入浴時間決定テーブル124aから抽出する。
【0136】
制御部123は、入浴開始から入浴時間が経過したか否かを監視し(S304)、入浴時間が経過したと判定した場合に(S304:YES)、スピーカ126に、所定の報知として、音声による、入浴の注意を促す報知や退浴を促す報知を行わせる(S305)。
【0137】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0138】
<変更例1>
図11(a)は、変更例1に係る、浴室リモコン12の制御部123を示すブロック図である。
【0139】
変更例1では、浴室リモコン12において、記憶部124に記憶された制御プログラムによって、パラメータ受付部123bの機能が制御部123に付与される。パラメータ受付部123bは、浴室リモコン12の入力部122により入力された入浴者に係るパラメータの値を受け付ける。入浴者に係るパラメータは、人体熱モデルHMにより得られる計算式で算出された深部体温の値に影響を及ぼす物理量である。本変更例では、入浴者に係るパラメータとして、入浴者の入浴前の体温、即ち平熱体温、身長および体重を入力できる。平熱体温は、腋窩で測定された体温とする。
【0140】
入浴者の平熱体温に基づいて、第1中間層MD1の温度Tmd_a、第2中間層MD2の温度Tmd_b、第1皮膚層SK1の温度Tsk_a、第2皮膚層SK2の温度Tsk_b、コア層CRの温度Tcrの初期値を決定できる。たとえば、平熱温度をTmd_a、Tmd_bの初期値に決定でき、平熱温度よりも所定温度だけ低い温度を、Tsk_a、Tsk_bの初期値に決定でき、平熱温度よりも所定温度だけ高い温度を、温度Tcrの初期値に決定できる。
【0141】
また、第1中間層MD1の質量mmd_a、第2中間層MD2の質量mmd_b、第1皮膚層SK1の質量msk_a、第2皮膚層SK2の質量msk_b、コア層CRの質量mcrを、入浴者の体重を用いて、各層の質量比率に基づいて決定できる。
【0142】
さらに、入浴者の身長および体重を用いて、既存の計算式により基礎代謝量を算出でき、算出された基礎代謝量を、代謝による生産性Mとすることができる。さらに、入浴者の身長および体重を用いて、既存の計算式により体表面積Aを算出できる。
【0143】
人体熱モデルHMによる入浴者の深部体温の推定に、実際の入浴者の体温、身長および体重、即ちパラメータの値が加味されることにより、推定された深部体温が、入浴者の実際の深部体温により近づけられる。
【0144】
図11(b)は、変更例1に係る、浴室リモコン12の制御部123により実行されるパラメータ入力に関する処理を示すフローチャートである。
図11(c)は、変更例1に係る、入力画面300の一例を示す図である。
図11(b)の処理は、制御部123が、パラメータ受付部123bの機能により行う。
【0145】
浴室リモコン12の入力部122において、入浴者に係るパラメータを設定するためボタン操作が行われると、パラメータ入力に関する処理が開始される。
【0146】
図11(b)を参照して、制御部123(パラメータ受付部123b)は、入力画面300を表示部121に表示させる(S401)。
図11(c)に示すように、入力画面300には、入浴者の体温、身長および体重が入力される3つの入力ボックス301、302、303が含まれる。たとえば、各入力ボックス301、302、303には、予めデフォルト値が入力されており、ユーザは、入力部122の所定の操作ボタンを操作することにより、自身の値となるよう、各入力ボックス301、302、303内の値を上下させることができる。
【0147】
体温、身長および体重が入力された後に、入力部122の所定の操作ボタンによる確定操作がなされると、制御部123は、これらパラメータの値の入力が完了したと判定し(S402:YES)、これらパラメータの値、即ち、入力された体温、身長および体重を受け付け、記憶部124に記憶する(S403)。
【0148】
上記実施形態1または上記実施形態2の構成に本変更例が適用される場合、
図6の入浴タイマー機能に関する処理のステップS104または
図8の入浴タイマー機能に関する処理のステップS203の処理において、コア層CRの温度T
cr、即ち深部体温と、第1中間層MD1の温度T
md_a、第2中間層MD2の温度T
md_b、第1皮膚層SK1の温度T
sk_aおよび第2皮膚層SK2の温度T
sk_bとを算出する際に、制御部123は、入力された実際の入浴者の体温、身長および体重を用いて、少なくとも、第1中間層MD1の温度T
md_a、第2中間層MD2の温度T
md_b、第1皮膚層SK1の温度T
sk_a、第2皮膚層SK2の温度T
sk_bおよびコア層CRの温度T
crの初期値、第1中間層MD1の質量m
md_a、第2中間層MD2の質量m
md_b、第1皮膚層SK1の質量m
sk_a、第2皮膚層SK2の質量m
sk_b、コア層CRの質量m
cr、代謝による生産性M、体表面積Aを決定する。
【0149】
上記実施形態3の構成に本変更例が適用される場合には、体温、身長および体重の3つのパラメータのそれぞれが、複数の範囲に分けられる。3つパラメータの範囲の組み合わせに対応する複数の入浴時間決定テーブル124aが作成される。たとえば、各パラメータが3つの範囲に分けられる場合、27個の入浴時間決定テーブル124aが作成される。各入浴時間決定テーブル124aの入浴時間が決定される際には、たとえば、各パラメータの値として、各範囲内の中心の値が用いられて、人体熱モデルHMの計算式による深部体温の算出が行われる。
【0150】
図10の入浴タイマー機能に関する処理のステップS303の処理において、制御部123は、記憶部124に記憶された体温、身長および体重の値に基づいて、複数の入浴時間決定テーブル124aの中から、それらの値に対応する入浴時間決定テーブル124aを参照し、入浴時間を決定する。
【0151】
なお、入浴者に係るパラメータとして、入浴者の年齢や性別が受け付けられてもよい。年齢や性別は、少なくとも、基礎代謝量の算出に用いることができ、実際の入浴者により即した代謝による生産性Mを決定できる。また、入力可能なパラメータの組み合わせは、適宜、変更できる。さらに、その他の入浴者に係るパラメータが受け付けられてもよい。
【0152】
さらに、入浴者に係るパラメータの値が、浴室リモコン12に替えてあるいは加えて、台所リモコン13の表示入力部131により入力できてもよく、給湯装置10と通信可能に接続された携帯端末装置の入力部(たとえば、タッチパネル)により入力できてもよい。
【0153】
本変更例の構成によれば、人体熱モデルHMを用いた入浴者の深部体温の推定が、一層、精度良く行える結果、深部体温の上昇に基づいて、所定の報知を、一層、精度良く行うことができる。
【0154】
<その他の変更例>
上記実施形態1では、報知処理部123aは、人体熱モデルHMにより得られる計算式に基づいて算出された深部体温が、浴槽2内への入浴開始から温度上昇閾値以上上昇したと判定したと場合に、所定の報知を報知部に行わせる。しかしながら、報知処理部123aは、算出された深部体温が、体調不良症状が懸念される温度閾値以上になったと判定したと場合に、所定の報知を報知部に行わせるようにしてもよい。この場合、温度閾値は、高齢者等、ターゲットとする年齢層の入浴者が体調不良症状を発症し得るような深部体温よりも低い値に設定される。入浴タイマー機能が高齢者に向けられる場合、たとえば、温度閾値は、38℃とされ得る。温度閾値は、37.5~39.0℃の範囲内で設定することができる。
図6に示す入浴タイマー機能に関する処理では、ステップS105の処理が無くされ、ステップS106の処理では、深部体温が温度閾値以上であるか否かの判定が行われる。
【0155】
同様に、上記実施形態2において、報知処理部123aは、湯温データが示す湯温および気温データが示す気温のときに深部体温が温度閾値以上となる入浴時間を決定し、浴槽2内への入浴開始から入浴時間が経過したと判定した場合に、所定の報知を、報知部であるスピーカ126に行わせるようにしてもよい。
【0156】
同様に、上記実施形態3において、深部体温が温度閾値以上となる入浴開始からの時間を入浴時間とし、入浴時間決定テーブル124aが作成されてもよい。
【0157】
さらに、上記実施形態3では、入浴時間決定テーブル124aが記憶部124に記憶され、当該入浴時間決定テーブル124aを参照して、入浴時間が決定される。しかしながら、入浴時間決定テーブル124aを用いて、目的変数を入浴時間、説明変数を浴槽2内の湯温および浴室1内の気温とする回帰式を作成し、当該回帰式を記憶部124に記憶させるようにしてもよい。この場合、湯温データと気温データとを用いた当該回帰式による演算により、入浴時間が決定される。即ち、ステップS303の処理を回帰式による入浴時間の決定とする
図10の処理と同様の入浴タイマー機能に関する処理が、制御部123により実行される。
【0158】
さらに、上記実施形態1では、
図6に示す入浴タイマー機能に関する処理のステップS103において、制御部123は、浴槽2内の湯水の温度を示す湯温データとして、温度センサS5による検出温度の温度データを取得する。しかしながら、制御部123は、湯温データとして、記憶部124に記憶されたふろ設定温度の温度データを取得してもよい。
【0159】
同様に、上記実施形態2および3では、制御部123は、浴槽2内の湯水の温度を示す湯温データとして、記憶部124に記憶されたふろ設定温度の温度データを取得するが、温度センサS5による検出温度の温度データを取得するようにしてもよい。
【0160】
さらに、上記実施形態2および3において、制御部123は、入浴中、湯温データや気温データを定期的に取得し、湯温データや気温データが、入浴開始時に対して許容範囲よりも大きく変化した場合に、これらデータの変化に対応して、決定された入浴時間を補正するようにしてもよい。この場合、湯温や気温が低くなれば、入浴時間が長くされ、湯温や気温が高くなれば、入浴時間が短くされる。
【0161】
さらに、上記実施形態1~3では、所定の報知が、スピーカ126からの音声により行われる。しかしながら、スピーカ126からの音声に替えてあるいは加えて、表示部121での画面表示により、所定の報知が行われてもよい。また、浴室1内において、浴室リモコン12以外に報知部となるスピーカが設置され、そのスピーカにより所定の報知が行われるようにしてもよい。
【0162】
さらに、上記実施形態1~3において、所定の報知が、浴室リモコン12だけでなく、台所リモコン13において、スピーカ136による音声や表示入力部131による画面表示により行われてもよい。あるいは、携帯端末装置が、給湯装置10に通信可能に接続可能である場合、所定の報知が、携帯端末装置において、音声や画面表示により行われてもよい。
【0163】
さらに、上記実施形態1~3では、入浴検知部111aは、水位センサS1が検知した浴槽2内の水位変動に基づいて浴槽2内への人の入浴を検知する。しかしながら、たとえば、浴槽2内に人が存在することを検知する人感センサが、入浴検知センサとして設けられ、人感センサが人を検知したときに、入浴検知部111aが、浴槽2内への入浴があったと検知するようにしてもよい。
【0164】
さらに、上記実施形態1~3において、中間層MD、即ち、第1中間層MD1および第2中間層MD2が、人体熱モデルHMの中心へ向かう方向に、複数の中間層に分割されてもよい。この場合、最も内側の中間層とコア層CRとの間で熱移動が行われ、それに対応する熱収支式が構築される。また、最も外側の中間層と皮膚層SKとの間で熱移動が行われ、それに対応する熱収支式が構築される。また、隣り合う2つの中間層の間で熱移動が行われ、それに対応する熱収支式が構築され得る。
【0165】
さらに、上記実施形態1~3では、入浴検知部111aが給湯器11に設けられ、報知処理部123aが浴室リモコン12に設けられたが、これら各部の配置はこれに限られるものではない。たとえば、入浴検知部111aと報知処理部123aの双方が、浴室リモコン12に設けられてもよいし、給湯器11に設けられてもよい。入浴検知部111aが、浴室リモコン12に設けられる場合、水位センサS1の検知結果が逐次、浴室リモコン12に送信される。報知処理部123aが給湯器11に設けられる場合、制御部123通じてスピーカ126等に所定の報知を行わせるための指令が、浴室リモコン12に送信される。
【0166】
同様に、上記変更例1において、パラメータ受付部123bが浴室リモコン12以外、たとえば給湯器11に設けられてもよい。
【0167】
さらに、上記実施形態1~3および上記変更例1において、入浴検知部111a、報知処理部123aおよびパラメータ受付部123bは、必ずしも、プログラムに基づく機能として実現されなくてもよく、ロジック回路に基づくハードウエアにより実現されてもよい。
【0168】
さらに、給湯器11の構成は、
図2に示した構成に限られるものではなく、他の構成であってもよい。たとえば、給湯器11は、給湯部210に相当する構成のみを有し、浴槽2内に給湯することにより湯張りや足し湯は行えるが、追い焚きは行えないものでもよく、追い焚き部220に相当する構成のみを有し、湯張りの際に、浴槽2に溜められた水を熱交換器に循環させて暖めるものであってもよい。
【0169】
さらに、給湯装置10は、ガス燃料を用いるものに限らず、オイルを燃料とする給湯装置であってもよい。給湯装置10は、貯留タンクを用いた貯留式のものであってもよく、燃料電池等の発電ユニットをさらに備えた構成であってもよい。
【0170】
さらに、給湯装置10は、インターネット等の外部通信網を介してサーバと通信可能に接続でき、サーバに通信可能に接続された携帯端末装置等の端末装置から遠隔管理できる構成とされてもよい。
【0171】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0172】
1 浴室
2 浴槽
10 給湯装置(ふろ装置)
111a 入浴検知部
122 入力部
123a 報知処理部
123b パラメータ受付部
124 記憶部(湯温データ出力部)
126 スピーカ(報知部)
127 温度センサ(気温データ出力部)
S5 温度センサ(湯温データ出力部)
HM 人体熱モデル
SK 皮膚層
SK1 第1皮膚層
SK2 第2皮膚層
MD 中間層
MD1 第1中間層
MD2 第2中間層
CR コア層