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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115868
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】締結具締結状態のモニタリング構造
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
G01L5/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018332
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞司
(72)【発明者】
【氏名】石綿 宏行
(72)【発明者】
【氏名】西山 輝
(72)【発明者】
【氏名】松下 真一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 透
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB09
(57)【要約】
【課題】作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。
【解決手段】構造物50に取り付けられた締結具60の締結状態をモニタリングする締結具締結状態のモニタリング構造であり、締結具60で締め付けられる子機30と、子機30と通信する親機20と、子機30と親機20との通信を中継する中継機40と、子機30とは離れた隔地に配置されると共に親機20と通信する締結状態管理装置10を備え、子機30に、締結具60の締結状態で応力が負荷される歪センサ33と、子機30の識別情報を記憶する子機記憶部32と、応力相当値と子機30の識別情報を通信部を介して送信する子機制御部31を設け、親機20が、中継機40を介する通信により、子機30の識別情報と応力相当値を子機30から受信して締結状態管理装置10に転送する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に取り付けられている締結具の締結状態をモニタリングする締結具締結状態のモニタリング構造であって、
構造物に取り付けられている締結具で締め付けられる子機と、
前記子機と通信する親機と、
前記子機と前記親機との通信を中継する中継機と、
前記子機とは離れた隔地に配置されると共に前記親機と通信する締結状態管理装置とを備え、
前記子機に、締結具の締結状態で負荷されている応力の応力相当値若しくは応力相当値を算出可能な所定値を検出可能なセンサと、前記子機の識別情報を記憶する子機記憶部と、前記応力相当値と前記子機の識別情報を通信部を介して送信する子機制御部とを設け、
前記親機が、前記中継機を介する通信により、前記子機の識別情報と前記子機で発生している応力相当値を前記子機から受信し、受信した前記子機の識別情報と前記応力相当値を前記締結状態管理装置に送信することを特徴とする締結具締結状態のモニタリング構造。
【請求項2】
構造物に取り付けられている締結具の締結状態をモニタリングする締結具締結状態のモニタリング構造であって、
構造物に取り付けられている締結具で締め付けられる子機と、
前記子機と通信する親機と、
前記子機と前記親機との通信を中継する中継機と、
前記子機とは離れた隔地に配置されると共に前記親機と通信する締結状態管理装置とを備え、
前記子機に、締結具の締結状態で負荷されている応力の応力相当値若しくは応力相当値を算出可能な所定値を検出可能なセンサと、前記子機の識別情報を記憶する子機記憶部と、前記応力相当値の異常信号と前記子機の識別情報を通信部を介して送信する子機制御部とを設け、
前記親機が、前記中継機を介する通信により、前記子機の識別情報と前記子機の前記応力相当値の異常信号を前記子機から受信し、受信した前記子機の識別情報と前記応力相当値の異常信号を前記締結状態管理装置に送信することを特徴とする締結具締結状態のモニタリング構造。
【請求項3】
前記子機が、応力が負荷される起歪体と、前記起歪体に固着された前記センサに相当する歪センサとを有するセンシングワッシャーであり、
前記子機制御部が、前記起歪体の変形に対応して前記歪センサが検知する抵抗値を前記応力相当値として取得することを特徴とする請求項1又は2記載の締結具締結状態のモニタリング構造。
【請求項4】
前記起歪体が、通常鋼材と、前記通常鋼材よりも硬度が高い高硬度鋼材とを積層して構成され、
前記歪センサが前記通常鋼材に固着されていることを特徴とする請求項3記載の締結具締結状態のモニタリング構造。
【請求項5】
前記歪センサが前記通常鋼材の側面に固着されていることを特徴とする請求項4記載の締結具締結状態のモニタリング構造。
【請求項6】
前記子機がバッテリーを内蔵していることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の締結具締結状態のモニタリング構造。
【請求項7】
高架構造物に取り付けられている複数の前記締結具のそれぞれに対応して前記子機が設けられると共に、前記中継機が地上付近に配置されることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の締結具締結状態のモニタリング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に取り付けられている締結具の締結状態をモニタリングする締結具締結状態のモニタリング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物に取り付けられているボルトとナットの締結状態をモニタリングするための機器として特許文献1の検出体がある。この検出体は、ボルトとナットの締結状態においてボルトが挿通される貫通孔を有する起歪体と、起歪体の歪みを検知する歪検知センサと、通信アンテナを備え、検出した歪みを外部の装置へ出力するものである。特許文献1の検出体を用いることにより、検出体から歪みを取得した外部装置では、ナットの締付状態を判断することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2021/187542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の検出体を用いることにより、ボルトとナットの締結箇所に近づいて検出体と外部のリーダー装置との通信を行い、外部のリーダー装置で取得した検出体の歪からナットの締結状態を判断することが可能となり、作業員が通信可能な距離に近づける締結箇所であれば、目視点検に依らずに適正に締結状態を判断することができる。しかしながら、例えば高架構造物の下側のようなボルトとナットの締結箇所では、足場を組まないと作業員が近づけないため、作業員が容易に近づくことができない隔地でのボルトとナットの締結状態のモニタリングに用いることは困難である。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる締結具締結状態のモニタリング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、構造物に取り付けられている締結具の締結状態をモニタリングする締結具締結状態のモニタリング構造であって、構造物に取り付けられている締結具で締め付けられる子機と、前記子機と通信する親機と、前記子機と前記親機との通信を中継する中継機と、前記子機とは離れた隔地に配置されると共に前記親機と通信する締結状態管理装置とを備え、前記子機に、締結具の締結状態で負荷されている応力の応力相当値若しくは応力相当値を算出可能な所定値を検出可能なセンサと、前記子機の識別情報を記憶する子機記憶部と、前記応力相当値と前記子機の識別情報を通信部を介して送信する子機制御部とを設け、前記親機が、前記中継機を介する通信により、前記子機の識別情報と前記子機で発生している応力相当値を前記子機から受信し、受信した前記子機の識別情報と前記応力相当値を前記締結状態管理装置に送信することを特徴とする。
これによれば、締結状態管理装置が、締結具の締結状態で負荷されている応力の応力相当値を子機から中継機、親機を介して受信することにより、締結状態管理装置において締結具の締結状態が適正か不適正かを正確にモニタリングすることができる。そして、締結状態管理装置が応力相当値を子機から中継機、親機を介して受信する構造により、作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。
【0007】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、構造物に取り付けられている締結具の締結状態をモニタリングする締結具締結状態のモニタリング構造であって、構造物に取り付けられている締結具で締め付けられる子機と、前記子機と通信する親機と、前記子機と前記親機との通信を中継する中継機と、前記子機とは離れた隔地に配置されると共に前記親機と通信する締結状態管理装置とを備え、前記子機に、締結具の締結状態で負荷されている応力の応力相当値若しくは応力相当値を算出可能な所定値を検出可能なセンサと、前記子機の識別情報を記憶する子機記憶部と、前記応力相当値の異常信号と前記子機の識別情報を通信部を介して送信する子機制御部とを設け、前記親機が、前記中継機を介する通信により、前記子機の識別情報と前記子機の前記応力相当値の異常信号を前記子機から受信し、受信した前記子機の識別情報と前記応力相当値の異常信号を前記締結状態管理装置に送信することを特徴とする。
これによれば、締結状態管理装置が、締結具の締結状態で負荷されている応力の応力相当値の異常信号を子機から中継機、親機を介して受信することにより、締結状態管理装置において異常な締結具の締結状態を正確にモニタリングすることができる。そして、締結状態管理装置が締結状態に関する異常信号を子機から中継機、親機を介して受信する構造により、作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。
【0008】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、前記子機が、応力が負荷される起歪体と、前記起歪体に固着された前記センサに相当する歪センサとを有するセンシングワッシャーであり、前記子機制御部が、前記起歪体の変形に対応して前記歪センサが検知する抵抗値を前記応力相当値として取得することを特徴とする。
これによれば、子機を締結具で締め付けられるセンシングワッシャーとすることにより、センシングワッシャーの応力相当値として抵抗値を簡単に取得することができる。
【0009】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、前記起歪体が、通常鋼材と、前記通常鋼材よりも硬度が高い高硬度鋼材とを積層して構成され、前記歪センサが前記通常鋼材に固着されていることを特徴とする。
これによれば、通常鋼材に固着されている歪センサによって締結状態のモニタリングで必要とされる応力相当値を得ることができると共に、通常鋼材に積層される高硬度鋼材によって締結具の締め付けの際の摩擦熱で起歪体が変形することを防止することができる。
【0010】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、前記歪センサが前記通常鋼材の側面に固着されていることを特徴とする。
これによれば、通常鋼材に側面に固着されている歪センサにより、より正確な応力相当値を得ることができる。
【0011】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、前記子機がバッテリーを内蔵していることを特徴とする。
これによれば、バッテリーを内蔵する子機とすることにより、子機からある程度離れた場所に配置され中継機を介して通信を行う親機或いは中継機から、通信時に子機に駆動電力を供給する必要を無くすことができる。また、例えばより長距離の無線通信が可能となり、締結具の締結状態をモニタリングする作業員が容易に近づくことができない隔地の範囲を広げることができる。
【0012】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造は、高架構造物に取り付けられている複数の前記締結具のそれぞれに対応して前記子機が設けられると共に、前記中継機が地上付近に配置されることを特徴とする。
これによれば、特殊な設備を使用しなければ作業員が近づくことができない高架構造物の締結具について締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の締結具締結状態のモニタリング構造によれば、作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造の全体構成を示す説明図。
図2】複数の子機を有する実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造の全体構成を示す説明図。
図3】実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造の全体構成を示すブロック図。
図4】子機が設置されたボルトとナットの締結構造の拡大図。
図5】(a)~(d)は子機の第1例~第4例を示す斜視図。
図6】(a)~(d)は起歪体の平面形状の第1例~第4例を示す平面図。
図7】(a)、(b)は起歪体の断面形状の第1例と第2例を示す断面図。
図8】(a)、(b)は実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造が適用される高架構造物の第1例を示す斜視説明図。
図9】(a)、(b)は実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造が適用される高架構造物の第2例を示す斜視説明図。
図10図9(a)の部分拡大模式図。
図11】実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造によるモニタリング処理の第1例を示すフローチャート。
図12】実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造によるモニタリング処理の第2例を示すフローチャート。
図13】変形例の締結具締結状態のモニタリング構造の全体構成を示すブロック図。
図14】変形例の締結具締結状態のモニタリング構造によるモニタリング処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造〕
本発明による実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造は、例えば高速道路の構造体や橋梁のような構造物に取り付けられているボルトとナットの締結状態をモニタリングする構造であり、図1図3に示すように、締結状態管理装置10と、親機20と、子機30と、中継機40を備える。
【0016】
子機30は、構造物50に取り付けられている締結具60で締め付けられるように設けられ、例えば締結具60を構成するボルト61とナット62に介在するように設けられる。親機20は子機30と通信し、中継機40は子機30と親機20との通信を中継するように配置される。締結状態管理装置10は、子機30とは離れた隔地に配置されると共に、親機20と通信するように設けられる。尚、締結状態管理装置10と親機20との通信、親機20と中継機40との通信、子機30と中継機40との通信は、それぞれ無線通信又は有線通信とすることが可能である。
【0017】
締結状態管理装置10は、子機30から取り込んだ情報に基づき構造物50に取り付けられている締結具60の締結状態を点検し、管理する装置であり、例えば専用サーバ或いはパーソナルコンピュータ等で構成される。締結状態管理装置10は、MPU、CPU等の制御部11と、HDD、SSD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、RAM等で構成される記憶部12と、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力部13と、ディスプレイ、プリンター等の出力部14と、締結状態管理装置10を無線或いは有線の通信回線に接続する通信インターフェイス15を備える。締結状態管理装置10は通信インターフェイス15により通信回線を介して親機20と通信接続される。
【0018】
記憶部12は、締結具60の締結状態の適性を判定する適正判定プログラムを含む所定の制御プログラムが格納されているプログラム格納部121を有し、制御部11は、所定の制御プログラムに従って所定の処理を実行し、適正判定プログラムと協働して例えばボルト61とナット62の締結状態の適性を判定する適正判定部111として所定の処理を実行する。
【0019】
記憶部12は、締結具60の締結状態の適性と不適正を判定するための基準として、子機30に締結状態で負荷される荷重で発生する応力値の基準値を基準値格納部122に格納している。この基準値には、適正な締結状態で発生する応力値と不適正な締結状態で発生する応力値の境界の閾値が設定されており、適正判定部111は、この設定された基準値を用いて、特定の子機30から取り込んだ応力値と基準値を対比し、特定の子機30が介在する締結具60の締結状態の適正と不適正を判定する処理を実行する。
【0020】
また、記憶部12には点検記録格納部123が設けられ、点検記録格納部123には、定期点検時或いは所要時における各識別情報の子機30に発生している応力値が子機30の識別情報と対応して格納される。点検記録格納部123には、適正判定部111の処理や所要情報の入力に応じて、例えば特定の子機30の識別情報、特定の識別情報の子機30に対してモニタリングが実施された日付、特定の識別情報の子機30にモニタリング時に発生している応力値、特定の識別情報の子機30が介在するボルト61とナット62が締結されている構造物50の識別情報等が対応して格納され、これらの情報が各識別情報の子機30に対して格納されると共に、これらの情報が各点検実施時毎に格納され、経時的に蓄積される。
【0021】
親機20は、中継機40を介して子機30と通信を実行し、子機30から通信で子機30の識別情報と当該通信時に子機30に発生している応力相当値を取得する機器である。親機20は、CPU等の制御部21と、ROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成される記憶部22と、操作キーや操作パネル等で構成される操作部23と、親機20を無線或いは有線の通信回線に接続する通信インターフェイス24を備え、記憶部22のプログラム格納部221には、制御部21に所定処理を実行させるための所定の制御プログラムが格納されている。
【0022】
更に、親機20は、子機30のセンシングユニット38との通信制御を担うセンサ通信用制御回路25及び送受信を行うコイルアンテナ等のセンサ通信用通信部26を有する。センサ通信用制御回路25は、センサ通信用通信部26の電波が到達する範囲内の中継機40を介して子機30から応力相当値を取得する処理を行う。
【0023】
更に、親機20は、子機30のRFタグ37との通信制御を担うRFID通信用制御回路27及び送受信を行うコイルアンテナ等のRFID通信用通信部28を有する。RFID通信用制御回路27は、RFID通信用通信部28の電波が到達する範囲内の中継機40を介して子機30から当該子機30の識別情報を取得する処理を行う。
【0024】
親機20は、所定の制御プログラムと協働する制御部21の制御により、RFID通信用制御回路27とセンサ通信用制御回路25が所定の動作を実行して、交信範囲内の中継機40を介して、中継機40の交信範囲内の子機30から、この子機30の識別情報と通信時の応力相当値を通信で取得し、取得した子機30の識別情報とその応力相当値を対応する形式で通信インターフェイス24を介して締結状態管理装置10に送信する。尚、子機30が親機20からワイヤレス給電される方式とすることも可能であり、この場合にはセンサ通信用制御回路25とRFID通信用制御回路27がワイヤレス給電を担う。
【0025】
子機30は、センシングワッシャーで構成されており、図5(a)に示すように、センサモジュールを構成するRFタグ37とセンシングユニット38を有し、例えば合成樹脂等の非金属製のケーシングなど絶縁性のケーシング36にRFタグ37とセンシングユニット38が収容されている。
【0026】
RFタグ37は、送受信を行う内蔵アンテナで構成されるRFID通信部371と、RFID通信制御回路372と、フラッシュメモリ、EEPROM等のRFID記憶部373とから構成され、RFID通信制御回路372の動作に必要な電力は内蔵バッテリー36から供給される。RFID記憶部373には、RFタグ37を収容している子機30の識別情報が格納されており、RFID通信制御回路372は、中継機40を介する親機20との通信において、RFID記憶部373から子機30の識別情報を読み出し、RFID通信部371から中継機40を介して親機20に子機30の識別情報を送信する。
【0027】
センシングユニット38は、送受信を行う内蔵アンテナで構成されるセンサ通信部381と、センサ通信制御回路382と、フラッシュメモリ、EEPROM等のセンサ記憶部383とから構成され、センサ通信制御回路382の動作に必要な電力は内蔵バッテリー36から供給される。センサ記憶部383には、センサ通信制御回路382を制御する所定の制御プログラムが格納されており、所定の制御プログラムと協働するセンサ通信制御回路382は、中継機40を介する親機20との通信において、子機30に負荷されている応力の応力相当値を検出可能なセンサに相当する歪センサ33から、応力相当値として起歪体34の変形に対応して歪センサ33が検知する抵抗値を取得し、センサ通信部381から中継機40を介して親機20に応力相当値に相当する抵抗値を送信する。
【0028】
本実施形態におけるRFタグ37のRFID記憶部373とセンサユニット38のセンサ記憶部383は、子機30の識別情報等を記憶する子機記憶部32を構成し、RFタグ37のRFID通信制御回路372とセンサユニット38のセンサ通信制御回路382は、応力相当値と子機30の識別情報をRFID通信部371とセンサ通信部381から構成される通信部を介して送信する子機制御部31を構成しており、いずれもケーシング35に収容されている(図3図5(a)参照)。また、子機30における子機制御部31、通信部、子機記憶部32、換言すればRFタグ37とセンシングユニット38は、後述する起歪体34から離間して配置されている。
【0029】
子機30のセンシングユニット38のセンサ通信制御回路382は、応力が負荷されるリング形状の起歪体34に接着等で固着された歪センサ33に接続されている。リング形状の起歪体34の形状は適用可能な範囲で適宜であり、図5(a)の子機30に内装された起歪体34のように平面視の外周縁が円形で形成されたもの(図6(a)参照)以外にも、例えば平面視の外周縁が略円形で対向する2か所に平面状の側面が形成された形状の起歪体34a(図6(b)参照)、平面視の外周縁が略多角形で平面状の側面で囲まれる形状の起歪体34b(図6(c)参照)、平面視の外周縁が略四角形で4つの平面状の側面で囲まれる形状の起歪体34c(図6(d)参照)としてもよい。
【0030】
歪センサ33は、図5(a)に示すように、起歪体34の側面341に固着して設けると好適である。また、起歪体34は、通常鋼材と、通常鋼材よりも硬度が高い高硬度鋼材とを積層して構成すると好適であり、例えば図7(a)の起歪体34dのように、通常鋼材342と、通常鋼材342よりも硬度が高い高硬度鋼材343とを2層で積層して固着した構成、或いは図7(b)の起歪体34eのように、通常鋼材342と、通常鋼材342よりも硬度が高い高硬度鋼材343とを3層で積層し、高硬度鋼材343と高硬度鋼材343との間に通常鋼材342を挟持するように固着した構成とすると好適である。起歪体34を、通常鋼材342と、通常鋼材342よりも硬度が高い高硬度鋼材343とを積層して構成する場合には、歪センサ33は通常鋼材342に固着して設ける、より好ましくは通常鋼材342の側面341に固着して設けるとよい。また、より正確な応力相当値を取得する観点からは、歪センサ33を固着する側面341を平面状にするとより好ましい。
【0031】
子機30は、ボルト61とナット62で構成される締結具60や、ボルト61で構成される締結具60と組み合わせて用いられる。例えば図1図2図4に示すように、子機30は、頭部611と軸部の雄ねじ部612で構成される六角ボルト等のボルト61と、六角ナット等のナット62と、緩み止めナット63と、ワッシャー64とを組み合わせて用いられ、構造物50と、構造物50に沿うように配置される取付物70と、ワッシャー64と、起歪体34の中心穴とにボルト61の雄ねじ部612を挿通し、雄ねじ部612にナット62と緩み止めナット63を順に締め付け、ボルト61とナット62とを締結状態にする。この締結状態において、子機30はボルト61とナット62との間に介在するようにして設置され、金属製等の起歪体34に応力が負荷される。
【0032】
また、本実施形態における子機30のケーシング35は、図5(a)に示すものは、締結方向に対して横に偏った略レーストラック形状で形成され、起歪体34はケーシング35の一方の弧状部に寄った位置に配置されている。そのため、ボルト61とナット62に子機30を介在させた状態では、ケーシング35はナット62から横に偏って張り出す位置に設けられ、この張り出した部分に、RFタグ37及びセンシングユニット38、或いは子機記憶部32と子機制御部31が収容される(図4図5(a)参照)。
【0033】
尚、子機30の外観形状、或いはケーシング35の形状は適用可能な範囲で適宜であり、例えば側面視の形状が略S字形のケーシング35a(図5(b)参照)、側面視の形状が略L字形のケーシング35b(図5(c)参照)、側面視の形状が略Z字形のケーシング35c(図5(d)参照)としてもよい。ケーシング35、35a、35b、35cを有する各々の子機30を必要に応じて用いることにより、狭い場所や設置しにくい場所への子機30の設置を容易化したり、設置場所の形状に対応した形状の子機30を取り付けて子機30の固定状態を安定化することができる。
【0034】
中継機40は、親機20と子機30との間の通信を中継する装置であり、適宜の中継装置を用いることが可能である。例えばRFIDとRFIDリーダーとの間を中継する既存の中継機等を中継機40として用いることができる。本実施形態における中継機40は、1個の親機20と、複数個の子機30との間の通信を中継するが、1個の親機20と、1個の子機30との間の通信を中継するものとしてもよい。中継機40は、例えば地上付近など、締結状態のモニタリング構造を構成するために必要に応じて適宜の場所に設置される。
【0035】
本実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造は、例えば図8に示す高架構造物である高速道路構造体510に適用される。高速道路構造体510は、道路の延びる方向に所定間隔を開けて設置される支持脚511と、道路の延びる方向に延設されると共に道路幅方向に並列して設置されるH形鋼の支持鋼材512と、支持鋼材512で支持されるコンクリート製の床版513と、床版513の道路幅方向の両側で立設する壁高欄514を備える。
【0036】
壁高欄514の上面には、支柱515が立設され、支柱515は道路の延びる方向に所定間隔を開けて設置されている。支柱515・515の間には遮音壁516が設けられ、遮音壁516の道路の延びる方向の両端部は、それぞれ支柱515と支柱515で保持されている。
【0037】
支柱515は、例えばボルト61で構成される締結具60で壁高欄514の上面に固定され、この締結具60で締め付けられるようにして子機30が設けられる。また、支持鋼材512は、例えばボルト61で構成される締結具60で支持脚511の上面に固定され、この締結具60で締め付けられるようにして子機30が設けられる。そして、複数の子機30と通信する中継機40が地上付近に配置され、所定位置に配置される親機20が中継機40を介して複数の子機30と通信を行うことにより、締結具締結状態のモニタリング構造が構成される。
【0038】
また、本実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造は、例えば図9図10に示す高架構造物である橋梁520に適用される。橋梁520は、橋の延びる方向に所定間隔を開けて設置される支持脚521と、橋の床と側壁を構成する橋構造体522と、支持脚521の上面と橋構造体522の下面とに固定されて橋構造体522を支持する支承523と、矩形枠の内部に上下に延びる複数の支持壁が間隔を開けて設けられていると共に支持脚521の上部側面に固定されている落橋防止部524と、落下防止部524を橋構造体522に連結するために橋構造体522の下面に固定されている取付部525と、落橋防止部524と取付部525を連結する連結チェーン526と、連結チェーン526を落橋防止部524に取り付けるために落橋防止部524の側面に固定されているチェーン取付部527を備える。
【0039】
支承523は、例えばボルト61で構成される締結具60で支持脚521の上面と橋構造体522の下面とに固定され、この締結具60で締め付けられるようにして子機30が設けられる。また、落橋防止部524は、例えばボルト61で構成される締結具60で支持脚521の上部側面に固定され、この締結具60で締め付けられるようにして子機30が設けられる。また、取付部525は、例えばボルト61で構成される締結具60で橋構造体522の下面に固定され、この締結具60で締め付けられるようにして子機30が設けられる。また、チェーン取付部527は、例えばボルト61とナット62で構成される締結具60で落橋防止部524の側面に固定され、この締結具60で締め付けられるようにして子機30が設けられる。
【0040】
そして、複数の子機30と通信する中継機40が地上付近に配置され、所定位置に配置される親機20が中継機40を介して複数の子機30と通信を行うことにより、締結具締結状態のモニタリング構造が構成される。尚、本例で落橋防止部524を支持脚521の上部側面に固定する締結具60に対応配置される子機30には、矩形枠と支持壁との間或いは支持壁相互間の狭い空間に対応して略Z字形のケーシング35cを有する子機30が用いられており、ケーシング35cの屈曲部が支持壁に引っ掛けるようにして設けられ、子機30の設置状態の安定化が図られている(図10参照)。
【0041】
次に、本実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造によるモニタリング処理の第1例について説明する(図11参照)。第1例では、子機記憶部32を構成するセンサ記憶部383に格納される制御プログラムにモニタリングを行う周期が設定されており、各子機30が所定の周期でモニタリングを実行することにより、常時モニタリングする(S11)。
【0042】
各子機30は、所定の周期のモニタリング毎に、子機30を特定する子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に子機30に負荷されている応力の応力相当値を取得して中継機40に送信する(S12)。親機20は中継機40から各子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に各子機30に負荷されている応力の応力相当値を受信する(S13)。
【0043】
親機20は、受信した各子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に各子機30に負荷されている応力の応力相当値を締結状態管理装置10に転送する(S14)。締結状態管理装置10は、各子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に各子機30に負荷されている応力の応力相当値を親機20から受信する。
【0044】
締結状態管理装置10の適正判定部111は、適正判定プログラムに変更可能に設定されている設定乗数を取得した応力相当値に乗算して取得した識別情報の子機30の応力値を取得し、取得した応力値と基準値格納部122から読み出した基準値を対比し、取得した応力値が基準値を超える場合には、取得した識別情報の子機30に対応する締結具締結状態の適正情報を基準値との関係情報として出力部14で提示し、取得した応力値が基準値以下(或いは基準値未満)の場合には、取得した識別情報の子機30に対応する締結具締結状態の不適正情報を基準値との関係情報として提示する(S15)。
【0045】
尚、本実施形態では、子機30が歪センサ33から取得した抵抗値を応力相当値として子機30から送信しているが、応力相当値には子機30の応力に相当する適宜の値を用いることが可能であり、用いる応力相当値の種別に応じたセンサを使用することが可能である。更に、応力値自体を応力相当値とすることも可能である。応力値自体を応力相当値にする場合には、例えばセンサ通信制御回路382が応力値である応力相当値を算出可能な所定値として歪センサ33から抵抗値を取得し、センサ通信制御回路382が、センサ記憶部383の所定の制御プログラムに従い、抵抗値から応力相当値の応力値を取得し、取得した応力値を中継機40を介して親機20に送信する構成等とする。
【0046】
そして、締結状態管理装置10は、点検記録格納部123に、子機30に対応する締結具60の締結状態のデータとして、例えば特定の子機30の識別情報、特定の識別情報の子機30に対してモニタリングが実行された日付、特定の識別情報の子機30にモニタリング時に発生している応力値、特定の識別情報の子機30が介在する締結具60が締結されている構造物50の識別情報等が対応して格納する。また、締結状態管理装置10の関係情報の提示により、締結具締結状態が不適正な子機30に対応する締結具60の締結箇所がある場合には、その場所を把握した後、締結状態が不適正な場所の締結具60の締結状態の補修作業を行う(S16)。
【0047】
また、別例として、本実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造によるモニタリング処理の第2例について説明する(図12参照)。第2例では、操作入力等に応じて、親機20が中継機40にそれぞれ識別情報で特定される各子機30に対する検知指令を送信し、中継機40は各子機30に対する検知指令を各々の子機30に送信する(S21、S22)。
【0048】
各子機30の所定の制御プログラムと協働して動作するセンサ通信制御回路382は受信した検知指令を認識し、検知指令に従ってモニタリングを実行し、子機30を特定する子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に子機30に負荷されている応力の応力相当値を取得して中継機40に送信する(S23)。親機20は中継機40から各子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に各子機30に負荷されている応力の応力相当値を受信する(S24)。
【0049】
親機20は、受信した各子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に各子機30に負荷されている応力の応力相当値を締結状態管理装置10に転送する(S25)。締結状態管理装置10は、各子機30の識別情報と、モニタリングの実行時に各子機30に負荷されている応力の応力相当値を親機20から受信する。その後、第1例のS15、S16と同様の処理を実行する(S26、S27)。
【0050】
本実施形態の締結具締結状態のモニタリング構造によれば、締結状態管理装置10が、締結具60の締結状態で負荷されている応力の応力相当値を子機30から中継機40、親機20を介して受信することにより、締結状態管理装置10において締結具60の締結状態が適正か不適正かを正確にモニタリングすることができる。そして、締結状態管理装置10が応力相当値を子機30から中継機40、親機20を介して受信する構造により、作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具60の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。従って、特殊な設備を使用しなければ作業員が近づくことができない高速道路構造体510や橋梁520のような高架構造物の締結具60についても締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。
【0051】
また、子機30を、応力が負荷される起歪体34と、起歪体34に固着された歪センサ33とを有するセンシングワッシャーとし、子機制御部31が、起歪体34の変形に対応して歪センサ33が検知する抵抗値を応力相当値として送信する構成とすることにより、子機30の応力相当値として抵抗値を簡単に取得し、子機30から中継機40に送信することができる。
【0052】
また、起歪体34を、通常鋼材342と、通常鋼材342よりも硬度が高い高硬度鋼材343とを積層して構成し、歪センサ33を通常鋼材342に固着することにより、通常鋼材342に固着されている歪センサ33によって締結状態のモニタリングで必要とされる応力相当値を得ることができると共に、通常鋼材342に積層される高硬度鋼材343によって締結具60の締め付けの際の摩擦熱で起歪体34が変形することを防止することができる。また、歪センサ33を通常鋼材342の側面に固着することにより、より正確な応力相当値を得ることができる。
【0053】
また、子機30に内蔵バッテリー36を内蔵することにより、子機30からある程度離れた場所に配置され中継機40を介して通信を行う親機20或いは中継機40から、通信時に子機30に駆動電力を供給する必要を無くすことができる。また、例えばより長距離の無線通信が可能となり、締結具60の締結状態をモニタリングする作業員が容易に近づくことができない隔地の範囲を広げることができる。
【0054】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0055】
例えば締結具締結状態のモニタリング構造は、上記実施形態の変形例として図13に示す構成としてもよい。図13の変形例における締結状態管理装置10では、プログラム格納部121に格納されている所定の制御プログラムに適正判定プログラムが含まれていないと共に記憶部12に基準値格納部122が設けられておらず、制御部11は適正判定部111としての処理は実行しない。点検記録格納部123には、制御部11の処理により、締結具60の締結状態の異常が発生した際に、この締結具60と対応する子機30の識別情報と応力相当値の異常信号のデータが対応して格納される。
【0056】
子機30の子機記憶部32を構成するセンサ記憶部383には、センサ通信制御回路382を制御するモニタリングの周期を含む所定の制御プログラムと、締結具60の締結状態の適性と不適正を判定するための基準として、子機30に締結具60の締結状態で負荷される荷重で発生する応力相当値の基準値が格納されている。この応力相当値の基準値には、適正な締結状態で発生する応力相当値と不適正な締結状態で発生する応力相当値の境界の閾値が設定されている。
【0057】
子機30の子機制御部31を構成するセンサ通信制御回路382は、モニタリングを実行する周期毎に、歪センサ33から応力相当値として起歪体34の変形に対応して歪センサ33が検知する抵抗値を取得し、応力相当値(抵抗値)と応力相当値の閾値を対比し、子機30に対応する締結具60の締結状態の適正と不適正(異常)を判定する処理を実行する。子機30のセンサ通信制御回路382は、締結具60の締結状態が不適正(異常)と判定した場合には、センサ通信部381から中継機40を介して親機20に応力相当値の異常信号と子機30の識別情報を送信する。
【0058】
変形例の締結具締結状態のモニタリング構造によるモニタリング処理では、図14に示すように、各子機30が所定の周期でモニタリングを実行することにより、常時モニタリングする(S31)。モニタリング実行時には、子機30は、歪センサ33から応力相当値を取得し、応力相当値と閾値を対比し、子機30に対応する締結具60の締結状態の適正と不適正(異常)を判定する(S32)。
【0059】
締結具60の締結状態の判定処理の結果、応力相当値が閾値以下或いは閾値未満の場合には、子機30は、子機30を特定する子機30の識別情報と、応力相当値の異常信号を中継機40に送信する(S33)。親機20は中継機40から子機30の識別情報と、応力相当値の異常信号を受信して締結状態管理装置10に転送する(S34)。
【0060】
締結状態管理装置10は、子機30の識別情報と応力相当値の異常信号を親機20から受信し、受信した識別情報の子機30に対応する締結具60の締結状態の異常情報を出力部14で提示する(S35)。そして、締結状態管理装置10は、点検記録格納部123に、締結状態の異常が発生した締結具60と対応する子機30の識別情報と応力相当値の異常信号のデータを対応させて、締結状態の管理データとして格納する。また、締結状態管理装置10の異常情報の提示により、締結状態に異常が発生した締結具60或いはこれに対応する子機30の場所を把握し、締結状態に異常が発生している締結具60の締結状態の補修作業を行う(S36)。変形例のその他の構成は上記実施形態のモニタリング構造と同様である。
【0061】
この変形例の締結具締結状態のモニタリング構造によれば、締結状態管理装置10が、締結具60の締結状態で負荷されている応力の応力相当値の異常信号を子機30から中継機40、親機20を介して受信することにより、締結状態管理装置10において異常な締結具60の締結状態を正確にモニタリングすることができる。そして、締結状態管理装置10が締結状態に関する異常信号を子機30から中継機40、親機20を介して受信する構造により、作業員が容易に近づくことができない隔地における締結具60の締結状態のモニタリングを高効率且つ低コストで行うことができる。また、内蔵バッテリー36を子機30に設ける構成では、締結具60の締結状態に異常が発生している場合にのみ、子機30-中継機40-親機30の通信を行うことにより、内蔵バッテリー36の電力消費量を削減することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、構造物に取り付けられた締結具の締結状態をモニタリングする際に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…締結状態管理装置 11…制御部 111…適正判定部 12…記憶部 121…プログラム格納部 122…基準値格納部 123…点検記録格納部 13…入力部 14…出力部 15…通信インターフェイス 20…親機 21…制御部 22…記憶部 221…プログラム格納部 23…操作部 24…通信インターフェイス 25…センサ通信用制御回路 26…センサ通信用通信部 27…RFID通信用制御回路 28…RFID通信用通信部 30…子機 31…子機制御部 32…子機記憶部 33…歪センサ 34、34a、34b、34c、34d、34e…起歪体 341…側面 342…通常鋼材 343…高硬度鋼材 35、35a、35b、35c…ケーシング 36…内蔵バッテリー 37…RFタグ 371…RFID通信部 372…RFID通信制御回路 373…RFID記憶部 38…センシングユニット 381…センサ通信部 382…センサ通信制御回路 383…センサ記憶部 40…中継機 50…構造物 510…高速道路構造体 511…支持脚 512…支持鋼材 513…床版 514…壁高欄 515…支柱 516…遮音壁 520…橋梁 521…支持脚 522…橋構造体 523…支承 524…落橋防止部 525…取付部 526…連結チェーン 527…チェーン取付部 60…締結具 61…ボルト 611…頭部 612…雄ねじ部 62…ナット 63…緩み止めナット 64…ワッシャー 70…取付物
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
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図14