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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115869
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】粘着加工済み縫製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/05 20060101AFI20230814BHJP
   B68G 15/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
B68G7/05 C
B68G15/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018333
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】521129369
【氏名又は名称】日本サンダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 政信
(57)【要約】
【課題】複雑な非矩形状の縫製品であっても円滑に製造可能な粘着加工済み縫製品の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の表皮材11が縫製されてなる縫製品10に粘着加工を施す方法であって、転写式の粘着剤21が施され長手方向に連続して流される離型紙20の上面に、縫製品10を順に配置する縫製品配置工程100と、縫製品10が配置された離型紙20の上面にフィルム30を配置して粘着剤21を覆うフィルム配置工程200と、フィルム30で覆った縫製品付き離型紙20を、上部ローラー及び下部ローラーを有する圧着ローラーのローラー間に通す圧着工程300と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表皮材が縫製されてなる縫製品に粘着加工を施す方法であって、
転写式の粘着剤が施され長手方向に連続して流される離型紙の上面に、前記縫製品を順に配置する縫製品配置工程と、
前記縫製品が配置された離型紙の上面にフィルムを配置して前記粘着剤を覆うフィルム配置工程と、
前記フィルムで覆った縫製品付き離型紙を、上部ローラー及び下部ローラーを有する圧着ローラーのローラー間に通す圧着工程と、を備えることを特徴とする粘着加工済み縫製品の製造方法。
【請求項2】
前記縫製品配置工程において、前記縫製品に生じた縫い目を前記長手方向に平行に配置することを特徴とする請求項1に記載の粘着加工済み縫製品の製造方法。
【請求項3】
前記縫製品配置工程において、前記縫製品の幅が狭い部分を下流側へ配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着加工済み縫製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表皮材が縫製されてなる縫製品に粘着加工を施し、粘着加工済み縫製品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の表皮材が縫製されてなる縫製品で、自動車の内装部品の表面を被覆する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この縫製品は、接着剤や粘着剤を有する離型紙に表皮材が貼り合わされ、そのような表皮材同士を縫い合わせることで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-89536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表皮材に粘着層を形成した後に縫製加工を行うと、縫製加工時にミシン針で表皮材に刺すことでミシン針に粘着剤が付着してしまうので、連続した製造が難しいという問題がある。
【0006】
一方、ミシン針に粘着剤が付着しないように縫製加工の後に粘着加工をすることも考えられるが、縫製品は単純な矩形状ではないことが多い。
つまり、縫製品に粘着剤付き離型紙を貼るために粘着剤付き離型紙を縫製品の形状に合わせて事前にカットしておくことが難しく、それに伴い粘着加工済み縫製品の製造を円滑に行い難いという問題もある。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、複雑な非矩形状の縫製品であっても円滑に製造可能な粘着加工済み縫製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の粘着加工済み縫製品(10)の製造方法は、
複数の表皮材(11)が縫製されてなる縫製品(10)に粘着加工を施す方法であって、
転写式の粘着剤(21)が施され長手方向に連続して流される離型紙(20)の上面に、前記縫製品(10)を順に配置する縫製品配置工程(100)と、
前記縫製品(10)が配置された離型紙(20)の上面にフィルム(30)を配置して前記粘着剤(21)を覆うフィルム配置工程(200)と、
前記フィルム(30)で覆った縫製品(10)付き離型紙(20)を、上部ローラー及び下部ローラーを有する圧着ローラーのローラー間に通す圧着工程(300)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の粘着加工済み縫製品(10)の製造方法は、
前記縫製品配置工程(100)において、前記縫製品(10)に生じた縫い目(12)を前記長手方向に平行に配置することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の粘着加工済み縫製品(10)の製造方法は、
前記縫製品配置工程(100)において、前記縫製品(10)の幅が狭い部分を下流側へ配置することを特徴とする。
【0011】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写式の粘着剤が施され長手方向に連続して流される離型紙の上面に、縫製品を順に配置し、縫製品が配置された離型紙の上面にフィルムを配置して粘着剤を覆い、フィルムで覆った縫製品付き離型紙を、上部ローラー及び下部ローラーを有する圧着ローラーのローラー間に通すので、非矩形状の複雑な形状である縫製品であっても、円滑に粘着加工済み縫製品をすることができる。
特に、フィルムで覆った後に圧着ローラーで粘着剤を圧着し転写するので、粘着剤が他の場所に付着して加工を妨げるということが無い。
【0013】
また、本発明によれば、縫製品に生じた縫い目を長手方向に並行に配置するので、縫製品を圧着ローラーに通す際に引っ掛かり難く、円滑に圧着可能である。
【0014】
また、本発明によれば、縫製品の幅が狭い部分を下流側へ配置するので、空気を噛み込み難い。
【0015】
なお、本発明の粘着加工済み縫製品の製造方法のように、縫製品に対して粘着加工を施す点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】縫製品を示す平面図である。
図2】縫製品を示す拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る粘着加工済み縫製品の製造方法を示す工程図である。
図4】本発明の実施形態に係る粘着加工済み縫製品の製造方法における縫製品配置工程を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る粘着加工済み縫製品の製造方法におけるフィルム配置工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図5を参照して、本発明の実施形態に係る粘着加工済み縫製品10の製造方法を説明する。
【0018】
まず、図1及び図2を参照して、粘着加工を施す対象である縫製品10について説明する。
この縫製品10は自動車のドアトリムに貼着されるものであり、合皮である三枚の表皮材11が左右に並べられ、隣り合った表皮材11同士が縫製されてなる。
【0019】
図2は、隣り合った表皮材11の縫製方法を示している。また、図1及び図2における破線は縫い目12を示す。
隣り合う表皮材11の端部は下方に折り返され、表皮材11の下面側で二つの表皮材11同士が縫製され結合される。
また、折り返した端部が前後方向(図1における紙面上下方向)へ縫い付けられ、折り返した端部が固定されている。
よって、縫製品10はその結合部分が二重になっているので、その他の部分に比べて厚さが二倍となっている。また、縫い目12は端から端まで直線状に延びている。
【0020】
図1に示すように、三枚の表皮材11を縫製してなる縫製品10は貼着対象である自動車のドアトリムの形状に合わせているため、全体として平面視において非矩形状の複雑な形状をしている。
【0021】
次に、図3から図5を参照してこの縫製品10を使用した、粘着加工済み縫製品10の製造方法について説明する。
粘着加工済み縫製品10の製造方法は、縫製品配置工程100と、フィルム配置工程200と、圧着工程300と、裁断工程400と、を備える。
【0022】
縫製品配置工程100では、転写式の粘着剤21が上面に施された離型紙に対し、その上面に縫製品10を順に配置する。
図4において、離型紙20及び縫製品10は左から右に向かって連続してベルトコンベアの上を流されている。
図4の紙面左右方向を長手方向と呼び、紙面左側が上流、紙面右側が下流である。
【0023】
また、ここでは縫製品10に生じた縫い目12を長手方向に平行に(縫い目12が長手方向に延びるように)配置する。
つまり、後工程である圧着工程300において圧着ローラーに縫製品10を通す際に、基本厚さの箇所と二重の厚さの箇所が同時に通るようにしている。
言い換えると、仮に縫製品10の基本厚さの箇所の後に二重部分が圧着ローラーを通過すると、そのタイミングで縫製品10が圧着ローラーに引っ掛かり易くなるので、それを防止するために縫い目12が長手方向に平行になるように配置している。
【0024】
それに加え、ここでは左右(図4における紙面上下方向)に縫製品10を二つ並べているが、左側の縫製品10の下流側端部と、その下流にある右側の縫製品10の上流側端部と、が左右方向において重なるように配置している。
つまり、後工程である圧着工程300において、上部ローラーが少なくとも左右いずれかの縫製品10に常に接するように縫製品10を互い違いに配置する。
これにより、縫製品10が存在しない箇所があるせいで上部ローラーが空回りすることを抑制可能である。
【0025】
なお、図4において左右に二つの縫製品10を長手方向に二セット並べたように示したが、実際には縫製品10は長手方向に連続して配置されている。
【0026】
フィルム配置工程200では、図5に示すように縫製品10が配置された離型紙20の上面に半透明のフィルム30を配置して、フィルム30で粘着剤21を覆う。
図5においては、フィルム30の上流側端部が図面に表現されているが、これは簡単のためであり、実際にはロール状のフィルム30を用いて連続的に配置されている。
また、このフィルム30には適当な間隔で空気抜き孔(図示しない)が複数設けられている。
【0027】
圧着工程300では、フィルム30で覆った縫製品10付き離型紙20を、上部ローラー及び下部ローラーを有する圧着ローラー(図示しない)のローラー間に通し、縫製品10の下面に粘着剤21を転写させる。上部ローラー及び下部ローラーの回転軸は図4図5の紙面上下方向に延びる。
フィルム30で覆った縫製品10付き離型紙20が触れるこの上部ローラーの周面はゴム製で、一方、下部ローラーの周面は鉄製である。
上部ローラーをゴム製とすることで、フィルム30で覆った縫製品10付き離型紙20がローラー間を通過するときに上部ローラーの周面がその軸側に沈み込むので、縫製品10の厚さが二重になっている部分(結合部分)と粘着剤21との間に空気が噛み込みにくくなる。これにより、空気の噛み込みによる離型紙の破裂を防止することができる。また、上部ローラーをゴム製とすることで縫製品10の結合部分が折れ難い。
【0028】
裁断工程400では、圧着されたフィルム30で覆った縫製品10付き離型紙20を切り分ける。
その切り分けの単位は一つずつでも二つずつでもよい。
裁断方法として、はさみでカットしてもよいし、トムソン抜きをしてもよい。
【0029】
以上のように構成された粘着加工済み縫製品10の製造方法によれば、転写式の粘着剤21が施され長手方向に連続して流される離型紙20の上面に、縫製品10を順に配置し、縫製品10が配置された離型紙20の上面にフィルム30を配置して粘着剤21を覆い、フィルム30で覆った縫製品10付き離型紙20を、上部ローラー及び下部ローラーを有する圧着ローラーのローラー間に通すので、非矩形状の複雑な形状である縫製品10であっても、円滑に粘着加工済み縫製品10をすることができる。
特に、フィルム30で覆った後に圧着ローラーで粘着剤21を圧着し転写するので、粘着剤21が他の場所に付着して加工を妨げるということが無い。
【0030】
また、縫製品10に生じた縫い目12を長手方向に並行に配置するので、縫製品10を圧着ローラーに通す際に引っ掛かり難く、円滑に圧着可能である。
【0031】
なお、実施形態において、縫製品10に生じた縫い目12を長手方向に平行に配置したが、これに限られるものではない。
【0032】
また、表皮材11は、一層の合皮のものを例示したが、これに限られず、例えば皮革とクッション材との二層のものであってもよい。また、表皮材11は布製であってもよい。
【0033】
また、縫製品10の幅が狭い部分がある場合には、縫製品配置工程100においてその幅が狭い部分を下流側へ配置する。
これにより、縫製品10と粘着剤21との間に空気を噛み込み難くなる。
【0034】
また、縫製品10を左右二列並べるようにしたが、この数に限られるものではない。
また、縫製品10は三枚の表皮材11を縫合してなるとしたが、一つの縫製品10につき表皮材11は二枚でもよいし四枚以上であってもよい。
【0035】
縫製品10を貼着する対象を自動車のドアトリムとしたが、これに限られるものではない。
また、圧着ローラーにおける上部ローラーの周面をゴム製、下部ローラーの周面を鉄製としたが、これに限られるものではなく、下部ローラーの周面を金属製とし、上部ローラーの周面をゴム以外の金属よりも軟質な他の素材にしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 縫製品
11 表皮材
12 縫い目
20 離型紙
21 粘着剤
30 フィルム
100 縫製品配置工程
200 フィルム配置工程
300 圧着工程
400 裁断工程
図1
図2
図3
図4
図5