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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115881
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079371
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2022017821
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 明輝
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS01
5H730BB26
5H730BB66
5H730BB70
5H730BB82
5H730BB89
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE06
5H730EE07
5H730EE13
5H730ZZ15
(57)【要約】
【課題】LLCコンバータの総数を増やし、各LLCコンバータ間の電流バランスを取って大電力化を実現できるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置は、n個(nは2以上の自然数)の共振コンデンサCr1~共振コンデンサCrnを含む共振回路を有するハーフブリッジLLCコンバータを回路要素10として複数個備える。回路要素10の共振コンデンサCrk(kは1~nの自然数)は、一端が、コンデンサを介して直流電源Vinの負極に接続されることなく、共振リアクトル、トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端が、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素10により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10の共振コンデンサCrkに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極と負極との間に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振リアクトル、トランスの1次巻線、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ~第n次共振コンデンサ、を含む振回路と、を有するハーフブリッジLLCコンバータを回路要素として複数個備え、
各回路要素の第k次共振コンデンサ(kは1~nの自然数)は、一端が、コンデンサを介して前記負極に接続されることなく、前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端が、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素の第k次共振コンデンサに接続されているスイッチング電源装置。
【請求項2】
回路要素の総数は、各次元に含まれる相数の積である請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
1~n次元それぞれの相数は、同一に設定されている請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
回路要素の動作/停止を次元単位で選択する次元選択回路と、
前記次元選択回路を制御する次元選択信号を生成する選択信号生成回路と、を備える請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
n個の前記共振コンデンサを含んでモジュール化された回路要素が、複数個、多次元に接続されて構成される請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
n個の前記共振コンデンサを接続可能な次元拡張用の共振コンデンサ追加端子が設けられてモジュール化された回路要素が、複数個、多次元に接続されて構成される請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
Pk個の前記回路要素を含んでモジュール化されたPk相LLCコンバータが、複数個、多次元に接続されて構成される請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された複数のLLCコンバータを用いて入力電圧を出力電圧に変換するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、出力負荷の増大に伴って大電流化や低リップル化を実現するために、動作フェーズ数(相数)を複数にし、位相をずらして各動作フェーズを駆動するマルチフェーズ型のスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6696617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、相数が増えるほど、用意する相補スイッチの相補ゲートドライブ信号も増加する。従って、相数の増加に伴う制御も複雑となり、制御に関わる回路が大規模化するなど、多相化による電力拡張は容易にできなかった。
【0005】
特許文献1では、一端が共振リアクトル、トランスの1次巻線に直列に接続され、他端がグランド(直流電源の負極)に接続された共振コンデンサを備えることで、フェーズ間の電流バランスを取っている。複数のLLCコンバータの距離が離れていると、グランドの電位が異なる場合がある。このような場合、グランドに接続された共振コンデンサの接続点電圧が異なるため、電流バランスを取りにくくなる。
【0006】
本発明の一態様は、相補ゲートドライブ信号を増やすことなく、LLCコンバータの総数を増やし、各LLCコンバータ間の電流バランスを取って大電力化を実現できるスイッチング電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るスイッチング電源装置は、直流電源の正極と負極との間に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振リアクトル、トランスの1次巻線、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ~第n次共振コンデンサを含む、共振回路と、を有するハーフブリッジLLCコンバータを回路要素として複数個備える。スイッチング電源装置において、各回路要素の第k次共振コンデンサ(kは1~nの自然数)は、一端が、コンデンサを介して前記負極(電源ライン)に接続されることなく、前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端が、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素の第k次共振コンデンサに接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、相補ゲートドライブ信号を回路要素の総数よりも少なくでき、相補ゲートドライブ信号を増やすことがない。本発明の一態様によれば、直流電源の負極に接続された共振コンデンサが省略されているため、各LLCコンバータ間の電流バランスを取りやすい。本発明の一態様は、LLCコンバータの総数を増やし、各LLCコンバータ間の電流バランスを取って大電力化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スイッチング電源装置の実施の形態の回路構成を示す図である。
図2図1に示すスイッチング電源装置の動作を制御する回路を説明する図である。
図3】スイッチング電源装置の多次元化(1~3次元)を説明する図である。
図4】スイッチング電源装置の多次元化(4~6次元)を説明する図である。
図5】スイッチング電源装置のさらなる多次元化を説明する図である。
図6】4次元に拡張することを想定してモジュール化された回路要素の構成を示す図である。
図7】n次元に拡張することを想定してモジュール化された回路要素の構成を示す図である。
図8】1次元でモジュール化された回路要素の構成を示す図である。
図9】6つの回路要素を有する多相多重コンバータの例を示す図である。
図10図9に示す多相多重コンバータの動作を説明する効率グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0011】
本実施の形態のスイッチング電源装置1は、図1を参照すると、複数(Σ)個のハーフブリッジLLCコンバータ(以下、回路要素10と称す)を備える。スイッチング電源装置1は、1~n次元のそれぞれがマルチフェーズLLCコンバータとして構成されている。すなわち、スイッチング電源装置1は、多相多重LLCコンバータである。ここで、nは、2以上の自然数であり、2次元以上のマルチフェーズLLCコンバータから構成されるスイッチング電源装置1を以下説明する。
【0012】
回路要素10は、直流電源Vinの正極に接続される高電位入力端子Tinと、直流電源Vinの負極に接続される低電位入力端子Tinとの間に直列に接続された第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLを備える。
回路要素10は、第1スイッチ素子QHと第2スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振リアクトルLr、トランスTの1次巻線N1、及び、n個の共振コンデンサCr1~Crnを含む、共振回路を備える。
回路要素10は、トランスTの2次巻線N2の電圧を整流平滑する同期整流素子SR1、SR2、及び、出力コンデンサCoutを含む、整流平滑回路を備える。
図1では、実線枠内(モジュールに相当)に、回路要素10の主回路のみを記している。整流平滑回路は、センタータップ整流、ブリッジ整流、倍電圧整流、コックウォルトン整流などの整流方式を採用できる。
【0013】
高電位入力端子Tinと低電位入力端子Tinとの間には、入力コンデンサCinが接続され、出力コンデンサCoutの両端が高電位出力端子Voutと低電位出力端子Voutに接続されている。
【0014】
共振コンデンサCr1~Crnは、一端がいずれも共振リアクトルLr、トランスTの1次巻線N1に直列に接続され、他端がそれぞれバイパス端子T1~Tnに接続されている。k番目(kは1~nの自然数)の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)は、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素10により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10のk番目の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)に接続されている。本明細書では、次元の直交性は問わずに、バイパス端子T1~Tnのn個の相互接続点をそれぞれk次元と称している。
【0015】
共振リアクトルLr、トランスTの1次巻線N1に直列に接続された共振コンデンサCr1~Crnの一端は、コンデンサを介して直流電源Vinの負極(低電位入力端子Tin)に接続されてない。換言すると、トランスTの1次巻線N1と直流電源Vinの負極とが共振コンデンサを介して接続されていない。
【0016】
回路要素10の総数Σは、k次元のそれぞれの相数であるPkを用いて、以下の式(1)で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
スイッチング電源装置1は、図2(a)を参照すると、制御回路20と、選択信号生成回路30とを備えている。制御回路20は、Σ個の回路要素10の第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLを、相補ゲートドライブ信号GkPk(k=1~n)によって交互にオンオフさせる。選択信号生成回路30は、次元選択信号Ykによって次元選択回路42を制御して回路要素10の動作/停止を次元毎に選択すると共に、相選択信号XkPk(k=1~n)によって相選択回路41を制御してΣ個の回路要素10の動作/停止を次元毎・相毎に選択する。
【0019】
1~n次元のそれぞれの相数P1~Pnは、異なっていてもよいが、全て同一にすることで、各次元で同じ相補ゲートドライブ信号GPkを使用することができる。同じ相補ゲートドライブ信号GPkの使用により、制御に関わる回路が大規模化することなく、多相化によって電力拡張を容易に行うことができる。相数Pkは、2や他の相数Pkの約数であっても、同様に他の次元の相補ゲートドライブ信号GPk(1~n)を使用できる。
【0020】
例えば、1~n次元のそれぞれの相数P1~Pnを全て3にした場合、図2(b)に示すように、制御回路20が生成する相補ゲートドライブ信号は、G、G、Gの3個、選択信号生成回路30が生成する相選択信号もX、X、Xの3個である。
【0021】
共振コンデンサCr1のみを有する3個の回路要素10で構成する1次元三相LLCコンバータは、各回路要素10において360°/3ずつ位相が異なる。図3(a)は、それら回路要素10を三種類の濃度の異なるキューブ(Cube)で表現し、共振コンデンサCr1の他端(バイパス端子T1)を相互接続する接続点を三つのキューブを貫通する1本の線で表現している。
【0022】
2次元方向への拡張のためには、二つの共振コンデンサCr1、Cr2を有する回路要素10の一つの共振コンデンサCr1を1次元方向に、もう一つの共振コンデンサCr2を2次元方向に、接続点で位相が重ならないようにそれぞれ接続する。これにより、図3(b)に示すように、2次元方向に三つの接続点が加わり、6つの相互接続点を有する9個の回路要素10で、2次元三相三重LLCコンバータが構成される。図3(b)には、2次元方向の接続点のみが示されている。
【0023】
さらに、3次元方向への拡張のためには、三つの共振コンデンサCr1、Cr2、Cr3を持つ回路要素10の二つの共振コンデンサCr1、Cr2をそれぞれ1次元方向、2次元方向に接続し、三つ目の共振コンデンサCr3を3次元方向に、接続点で位相が重ならないように相互接続する。これにより、図3(c)に示すように、3次元方向に9つの相互接続点が加わり、27個の相互接続点を有する27個の回路要素10で、3次元三相九重LLCコンバータが構成される。図3(c)には、3次元方向の接続点のみが示されている。
【0024】
このように、スイッチング電源装置1は、ある一つの接続点では多相LLCコンバータになっており、接続点同志で比較すると、多相LLCコンバータが重なって多重LLCコンバータになっている。従って、本実施の形態のスイッチング電源装置は、多相多重LLCコンバータと称することができる。
【0025】
さらに、図3(b)に示す3次元三相九重LLCコンバータを一つのキューブとして表現すれば、図4(a)に示すように、4次元を1次元同様に認識することができる。4次元方向への拡張のためには、4つの共振コンデンサCr1、Cr2、Cr3、Cr4を有する回路要素10の三つの共振コンデンサCr1、Cr2、Cr3は、前述のように3次元で接続し、四つ目の共振コンデンサCr4は、4次元方向に接続する。これにより、3次元三相九重LLCコンバータを構成するキューブが三つ、合計81個の回路要素10で、4次元三相二十七重LLCコンバータが構成される。4次元三相二十七重LLCコンバータの接続点は、3次元三相九重LLCコンバータのキューブですでに27個の接続点を内包し、三つあるので81個、さらに4次元方向に27個加わり、合計108個の接続点を有する。図4(a)には、4次元方向の接続点の一つが示されている。
【0026】
5次元方向に拡張すると、図4(b)に示すように、405個の相互接続点を有する243個の回路要素10で、5次元三相八十一重LLCコンバータが構成される。図4(b)には、5次元方向の接続点の一つが示されている。
【0027】
さらに、6次元方向に拡張すると、図4(c)に示すように、1458個の相互接続点を有する729個の回路要素10で、6次元三相二百四十三重LLCコンバータが構成される。図4(c)には、6次元方向の接続点の一つが示されている。
【0028】
同様に、6次元に拡張された6次元三相二百四十三重LLCコンバータを一つのキューブで表現して、図5に示すように、7次元、8次元、9次元として回路数を増やしていくことができる。さらなる高次元化は、3N(Nは自然数)次元で構成される多次元多重LLCコンバータを一つのキューブとして次元軸を加えていくことで実現される。従って、三相LLCコンバータをn次元化すると、n次元三相3n-1重LLCコンバータとなる。このように、相補ゲートドライブ信号を3相から増やすことなく、大電力化を実現できる。
【0029】
このようにスイッチング電源装置1は、3次元直交軸を重ねて得られる多次元で、フラクタル構造を持つ。3次元以上に拡張しても、回路要素10の総数Σに応じて、従来のマルチフェーズ方式のように位相差を360°/Σとする必要はない。Σ個の位相差を作る相補ゲートドライブ信号生成回路を用意する必要はないため、制御に関わる回路の大規模化が抑止される。特に、各次元の相数Pkを同一にした場合、ある接続点に対して位相差360°/Pkを持つマルチフェーズLLCコンバータを構成することで、Pk個の相補ゲートドライブ信号を生成する回路を用い、電流バランスを行いつつ回路数を増やして電力を増やすことができる。
本実施の形態のスイッチング電源装置1は、限られたサイズのパッケージに半導体と磁気部品がミックスされた集積回路として(例えば、電源IC、又はシステム・オン・チップ(SoC)として)構成することができる。簡略化された例として、出力電力1kW(キロワット)のスイッチング電源装置1を、100Wの電力を出力する10個の回路要素10をつないで実現できる。Micro Electro Mechanical System(MEMS)に、集積回路で構成された多相多重コンバータを適用してもよい。
【0030】
スイッチング電源装置1の回路要素10は、n個に分割された共振コンデンサCr1~Crnを有する。k番目(1~n)の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)は、Pk個の回路要素10により位相差360°/PkであるマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10のk番目の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)に接続されている。この場合、スイッチング電源装置1を構成する回路要素10の総数Σは、上記の式(1)で表され、共振コンデンサCr1~Crnによる相互接続点の総数Σcは、以下の式(2)で表される。
【0031】
【数2】
【0032】
スイッチング電源装置1のΣ個の回路要素10の全てが動作するとき共振周波数ωrは、以下の
式(3)で表される。
【0033】
【数3】
【0034】
共振コンデンサCr1~Crnの容量が等しい場合の共振周波数ωrは、以下の
式(4)で表される。
【0035】
【数4】
【0036】
回路要素10の総数Σと相互接続点が一致するのは、式(1),(2)より以下の式(5)で示す条件となる。
【0037】
【数5】
【0038】
特に、回路要素10を図1に示すようにモジュール化する際に、回路要素10の総数Σと接続点を1:1に限定できる。
【0039】
図6に示す回路要素10aは、最大4次元に拡張することを想定してモジュール化されたものであり、4個の共振コンデンサCr1~Cr4を備えている。4次元に拡張しない場合、4個の共振コンデンサCr1~Cr4の接続点(バイパス端子T1~T4)は、接続する接続点を共有したり、電源ラインに接続したりしてもよい。図6では、実線枠内(モジュールに相当)に、回路要素10aの主回路のみを記している。平滑コンデンサとして入力コンデンサCin及び出力コンデンサCoutを設けることで、モジュール化された回路要素10a内での入出力リプル電流は補償される。従って、モジュールを多数接続しても平滑コンデンサ(入力コンデンサCin、出力コンデンサCout)の許容リプル電流を超えることはない。
【0040】
図7に示す回路要素10bは、n個の共振コンデンサCr1~Crnを接続可能な次元拡張用の共振コンデンサ追加端子Taddを備えてモジュール化されたものである。すなわち、回路要素10bは、共振コンデンサCr1~Crnを除く構成がモジュール化され、トランスTの1次巻線N1に接続された共振コンデンサ追加端子Taddを備えている。共振コンデンサ追加端子Taddにより、n個の共振コンデンサCr1~Crnは、点線枠で示すマザーボード等の他の基板上で外付け可能になる。図7では、実線枠内(モジュールに相当)に、回路要素10bの主回路のみを記している。
【0041】
図8に示す1次元Pk相LLCコンバータ100は、3個の共振コンデンサCr1~Cr3を備えた回路要素10bが1次元接続されてモジュール化されたものである。各回路要素10bは、2個の共振コンデンサCr2~Cr3の接続点(バイパス端子T2~T3)を持ち、2次元方向、3次元方向に拡張することができる。1次元Pk相LLCコンバータ100には、リプル電流の低減を目的として、入出力に平滑コンデンサ(入力コンデンサCin、出力コンデンサCout)が設けられている。入出力に平滑コンデンサを設けることで、モジュールを直並列に接続したとき、入出力電圧の安定を保証できる。
【0042】
スイッチング電源装置1は、図2に示した相選択回路41及び次元選択回路42を相選択信号XkPk(k=1~n)及び次元選択信号Ykによって制御することで、回路要素10の動作/停止を相単位・次元単位で制御して、動作する回路要素10の数を切り替えることができる。
【0043】
簡略化のため、1次元方向に三相LLCコンバータ、2次元方向に二相LLCコンバータを構成する、図9に示す6個の回路要素10を有する多相多重コンバータを例に回路数の切り替えについて説明する。図9において、各回路要素10に付してある(x,y)は、xが1次元方向のフェーズを、yが2次元方向のフェーズを示す。すなわち、x=1は位相ゼロ、x=2は位相360°/3=120°、x=3は位相2×360°/3=240°であり、y=1は位相ゼロ、y=2は位相360°/2=180°である。
【0044】
図10には、軽負荷時(出力電力が小さい時)には要素(1,1)、(1,2)のみで動作させ、負荷の上昇に伴って(1,1),(2,1),(3,1)のみで動作させ、重負荷時には6個の回路要素を動作させたときの効率グラフを示す。
【0045】
各回路要素10の共振コンデンサCr1、Cr2の容量をそれぞれαCr、βCrとし、以下の式(6)のように設定する。
【0046】
【数6】
【0047】
この場合、6個の回路要素10が全て動作しているときの共振周波数ωrは、以下の式(7)で表される。
【0048】
【数7】
【0049】
回路要素(1,1)のように一つのハーフブリッジLLC回路要素のみでは、動作しないが、回路要素(1,1),(1,2)のように、2次元方向に二つのハーフブリッジLLC回路要素のみが動作するときの共振周波数ωr,2φは、以下の式(8)で表される。
【0050】
【数8】
【0051】
同様に、回路要素(1,1),(2,1),(3,1)のように、1次元方向に三つのハーフブリッジLLC回路要素のみが動作するときの共振周波数ωr,3φは、以下の式(9)で表される。
【0052】
【数9】
【0053】
α=β=1/2とすると、6回路動作時の共振周波数に対して、1回路動作時共振周波数は25.8%上昇、2回路動作時には8%上昇、3回路動作時には11.8%上昇となる。実際のスイッチング周波数も、ほぼこれに準ずる。
【0054】
このように、単にマルチフェーズの動作相数を切り替えるのではなく、多次元の回路要素10の動作/停止を切り替えることで、負荷に応じて効率を維持することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電源Vinの正極と負極との間に直列に接続された第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLと、第1スイッチ素子QHと前記第2スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振リアクトルLr、トランスTの1次巻線N1、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ(共振コンデンサCr1)~第n次共振コンデンサ(共振コンデンサCrn)からなる共振回路と、を有するハーフブリッジLLCコンバータを回路要素10として複数個(Σ個)備え、回路要素10の共振コンデンサCrk(kは1~nの自然数)は、一端が、コンデンサを介して直流電源Vinの負極に接続されることなく、前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端が、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素10により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10の共振コンデンサCrkに接続されている。
この構成により、本実施の形態は、相補ゲートドライブ信号を回路要素10の総数Σよりも少なくでき、相補ゲートドライブ信号を増やすことがない。本実施の形態は、直流電源Vinの負極に接続されたコンデンサが省略されているため、電流バランスを取りやすい。本実施の形態は、回路要素10の総数Σを増やし、各回路要素10間の電流バランスを取って大電力化を実現できる。
【0056】
本実施の形態によれば、回路要素10の総数Σは、各次元に含まれる相数の積(Σ=P1×P2×・・・×Pn)である。
この構成により、次元を増加させることで、回路要素10の総数Σを指数的に増加させることができ、大電力化に対応することができる。
【0057】
1~n次元それぞれの相数Pkが同一に設定されていれば、各次元で同じ相補ゲートドライブ信号GPk(1~n)を使用でき、制御に関わる回路が大規模化することなく、多相化によって電力拡張を容易に行うことができる。
【0058】
本実施の形態によれば、回路要素10の動作/停止を次元単位で選択する次元選択回路42と、次元選択回路42を制御する次元選択信号Ykを生成する選択信号生成回路30とを備える。
この構成により、負荷に応じ動作回路数を切り替えて効率を維持することができる。さらに、回路要素10の動作/停止を相単位で選択する相選択回路41を用いることで、1つの回路要素10のみを動作させる軽負荷時から全ての回路要素10を動作させる重負荷時まで幅広く効率を維持できる。
【0059】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
上記実施形態では、各回路要素10に共振リアクトルLrを物理的に設けたが、代替的に共振リアクトルLrは、トランスの漏れインダクタンスを利用したものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 スイッチング電源装置
10、10a、10b 回路要素(ハーフブリッジLLCコンバータ)
20 制御回路
30 選択信号生成回路
41 相選択回路
42 次元選択回路
100 1次元Pk相LLCコンバータ
Cin 入力コンデンサ
Cout 出力コンデンサ
Cr1~Crn 共振コンデンサ
Lr 共振リアクトル
N1 1次巻線
N2 2次巻線
QH 第1スイッチ素子
QL 第2スイッチ素子
SR1、SR2 同期整流素子
T トランス
T1~Tn バイパス端子
Tin 高電位入力端子
Tin 低電位入力端子
Vout 高電位出力端子
Vout 低電位出力端子
Vin 直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10