(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115903
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】ロスバスタチンアリルエステルの結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 239/42 20060101AFI20230814BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20230814BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230814BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
C07D239/42
A61K31/505
A61P9/10
A61P3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014659
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2022017777の分割
【原出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】522052141
【氏名又は名称】モヒット・マニクラオ・サワント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラン・ガブルスチェク
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA15
4C086ZA45
4C086ZC33
(57)【要約】
【課題】ロスバスタチンアリルエステルの結晶形態を提供する。
【解決手段】本発明は、結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、それを製造するためのプロセス、それを含む医薬組成物、及び結晶質の(1)の医療における使用にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質のロスバスタチンアリルエステル(1):
【化1】
【請求項2】
無水及び/又は非溶媒和及び/又は非吸湿性であることを特徴とする、請求項1に記載のロスバスタチンアリルエステル(1)の結晶形態。
【請求項3】
次に示す特徴(i)~(xi)の少なくとも1つを示すことを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載のロスバスタチンアリルエステル(1)の結晶形態:
(i)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、16.14°(±0.20°(2θ))及び21.13°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(ii)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、及び21.13°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(iii)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、8.41°(±0.20°(2θ))、14.99°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、21.13°(±0.20°(2θ))、及び22.24°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(iv)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、8.41°(±0.20°(2θ))、14.99°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、16.87°(±0.20°(2θ))、18.44°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、21.13°(±0.20°(2θ))、22.24°(±0.20°(2θ))、及び24.74°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(v)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、8.41°(±0.20°(2θ))、12.63°(±0.20°(2θ))、14.99°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、16.87°(±0.20°(2θ))、17.96°(±0.20°(2θ))、18.44°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、21.13°(±0.20°(2θ))、22.24°(±0.20°(2θ))、24.74°(±0.20°(2θ))、及び28.55°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(vi)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、本質的に
図1に示すものである;並びに/又は
(vii)昇温速度10K/minで測定した場合のDSC曲線が、(93±5)℃、好ましくは(93±3)℃、より好ましくは(93±2)℃、更に好ましくは(93±1)℃に開始温度を示す吸熱ピークを含む;並びに/又は
(viii)昇温速度10K/minで測定した場合のDSC曲線が、本質的に
図2に示すものである;並びに/又は
(ix)30から180℃まで昇温速度10K/minで加熱した場合のTGA曲線が示す質量損失が、結晶質の(1)の重量を基準として、0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下である;並びに/又は
(x)昇温速度10K/minで加熱した場合のTGA曲線が、本質的に
図3に示すものである;並びに/又は
(xi)(i)~(x)の任意の2つ以上の組合せ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)の、医薬組成物を調製するための使用。
【請求項5】
有効成分として、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)と、少なくとも1種の医薬的に許容される医薬品添加物と、を含む、医薬組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の医薬的に許容される医薬品添加物は、充填剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは:
a)ロスバスタチンアリルエステル(1)を、混合物が得られるように、少なくとも1種の液体媒体と接触させることと;
b)ステップa)で得られた前記混合物を、ロスバスタチンアリルエステル(1)の前記液体媒体中の溶液が得られるように、撹拌下に維持することと;
c)任意選択的に、ステップb)を25℃以上の温度で実施した場合に、ステップb)で得られた前記溶液を、ロスバスタチンアリルエステル(1)の少なくとも一部を結晶形態で析出させるように、冷却することと;
d)それを単離し、任意選択的に乾燥させることと;
を含む、プロセス。
【請求項8】
ステップa)で使用される前記少なくとも1種の液体媒体は、無極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、極性プロトン性溶媒、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップa)で使用される前記少なくとも1種の液体媒体は、ジエチルエーテルである、請求項7及び8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)又は請求項5及び6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶質のロスバスタチンアリルエステル(1)、並びにその医療における使用、特に、例えば、高脂血症、高コレステロール血症、及びアテローム性動脈硬化症、並びにHMG CoAレダクターゼが関与する他の疾患又は状態の治療に有用な医薬品であるロスバスタチンのプロドラッグとしての使用に関する。本発明はまた、結晶質の(1):
【化1】
を製造するためのプロセス、それを含む医薬組成物、及び前記医薬組成物の医療における使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分は、一般に知られているように、非晶質形態又は様々な結晶形態(多形)で、純粋な化合物として、又は結晶構造内に水の分子(水和物)若しくは他の溶媒の分子(溶媒和物)が存在する形態のいずれかで存在し得る。更に、水和物又は溶媒和物の場合は、有効成分の分子と水又は溶媒分子との比が変化すると異なる固体形態の化合物が生成する可能性もある。
【0003】
医薬品有効成分は、異なる塩及び異なる固体状態で異なる特性を示すものがあり、これを固体医薬品有効成分の特性及び特徴の修正に利用できる可能性がある。
【0004】
固体形態の物理化学的特性の違いは、医薬組成物の改良に重要な役割を果たすことができる。例えば、医薬品有効成分の固体状態を改良することにより、改良された溶出プロファイル又は向上した安定性若しくは有効期間を有する医薬製剤を得ることができる。製剤化プロセスにおける医薬品有効成分の加工性又は取扱い性も改良することができる。つまり、医薬品有効成分の新規な固体状態が望ましい加工性を有している可能性がある。これらは、取扱いがより容易であり、保存により適しており、及び/又はより精製しやすいものとなり得る。
【0005】
更に、医薬品原薬が環境中の水分を吸収しやすい場合、医薬品原薬の薬学的挙動及び品質に悪影響が及ぼされる可能性がある。例えば、吸水は、物理的形態の化学的劣化(例えば、水和物の形成を介して)を招き、溶出挙動を変化させ、及び流動性、圧縮成形性、打錠挙動、圧縮挙動等の粉体の特性に影響を与える可能性がある。更に、準安定多形が突然出現又は消失することが、プロセスの開発において問題となる可能性がある。同様に、剤形内で固相変態が起こると深刻な薬学的結果(pharmaceutical consequences)を招く。
【0006】
こうした理由から、医薬品分野においては、製造性、保存性、及び/又は取扱い性を揃って向上させ、その結果として患者への投与が改善される物理的形態を求めて、有用な化合物が体系的にスクリーニングされている。
【0007】
国際特許出願である(特許文献1)には、酢酸エチルに溶解させ、水で洗浄し、有機層を減圧下に濃縮することにより調製される(1)が開示されているが、形態は明示されていない。
【0008】
国際特許出願である(特許文献2)には、カラムクロマトグラフィーで精製した後に淡黄色油状物形態で得られる(1)の調製が開示されている。
【0009】
(非特許文献1)には、一連の溶媒に対する(1)の溶解度の予測が提供されている。
【0010】
しかしながら、これらのどの文書にも、結果として得られた(1)の製剤の製造における易取扱い性に関しても、(1)をこれらの形態の1種として調製した場合の安定性に関しても、医薬品産業の観点から見た有用な特性に関する情報は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2011/160974号
【特許文献2】国際公開第2019/139919号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】R&D Disclosure RD689019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、固体状態のロスバスタチンアリルエステル(1)を含む安全且つ有効な医薬品を高い信頼性で製造することを可能にする物理化学的特性を有する、固体状態のロスバスタチンアリルエステル(1)を提供することが求められている。特に、ジアステレオマー的及び/若しくはエナンチオマー的に純粋であり、並びに/又は医薬品有効成分(API)の保管時、製剤化時、及びそれを含む医薬品の全有効期間に亘り安定性を示す、固体状態の(1)が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、経口用固体剤形に使用することが意図された、医薬品原薬に好ましい物理化学的特性を有する、結晶形態にあるロスバスタチンアリルエステル(1)を提供することにより、上述の1つ又は複数の問題を解決するものである。前記特性は、例えば、化学的安定性、物理的安定性、吸湿性、溶解性、溶出、形態(morphology)、結晶化度、流動性、圧縮成形性、及び湿潤性に関連するものである。
【0015】
本発明による(1)の結晶形態は、安全且つ有効な医薬品、例えば、ロスバスタチンアリルエステル(1)を含むカプセル剤や錠剤等の固体剤形を高い信頼性で製造することを可能にする物理化学的特性を有している。特に、本発明の結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)は、安定な多形体であり、それを含む固体剤形の製造中及び保管中もその結晶構造を保持する。例えば、本発明の結晶形態は、温度ストレスに対し熱的に安定であり、例えば、10K/minの昇温速度で測定されたDSC曲線において、約90℃の温度まで熱的挙動を示さない。更に、無水及び/又は非溶媒和の結晶質の(1)は、温度及び湿度ストレスに対し安定である。更に、これは非吸湿性であり、環境の相対湿度に関わらずその結晶構造を保持する。
【0016】
定義
本出願に使用される全ての用語は、別段の指定がない限り、当該技術分野において知られている通常の意味で理解すべきである。本出願に使用されている特定の用語に関する他のより具体的な定義を以下に記載するが、特に断りのない限り、これらは本出願全体を通して等しく適用されることが意図されている。
【0017】
「20~35℃の範囲の温度で測定」という用語は、標準条件下での測定を意味する。典型的には、標準条件とは、室温、即ち、20℃~35℃の範囲の温度を意味する。好ましくは、標準条件とは、22℃~30℃の温度、より好ましくは、25℃~28℃の温度を意味する。更に好ましくは、標準条件とは、相対湿度が20~70%、例えば、30~60%であることを意味している。
【0018】
記号:
【化2】
(破線の結合)が本明細書及び/又は特許請求の範囲の式の一部に存在する場合、これは、置換基が紙面の奥側に向いていることを表している。
【0019】
記号:
【化3】
(くさび型の結合)が本明細書及び/又は特許請求の範囲の式の一部に存在する場合、これは、置換基が紙面の手前側に向いていることを示している。
【0020】
本明細書において粉末X線回折に関し使用する「反射」という用語は、固体物質内において、長距離位置秩序で秩序のある繰り返しパターンを持って配置されている原子の平行面で散乱したX線が、特定の回折角(ブラッグ角)で強め合いの干渉をすることにより生成する、X線回折図形上のピークを意味する。そのような固体物質は結晶質物質に分類される。一方、非晶質物質は、長距離秩序を持たず、短距離秩序のみを持ち、それによりブロードな散乱を示す固体物質と定義される。一般知識によれば、長距離秩序は、通常、原子約100~1000個分の範囲に亘り存在するが、短距離秩序は、原子数個分の範囲に存在するのみである。
【0021】
X線粉末回折に関する「本質的に同一」という用語は、反射の位置及び反射の相対強度のばらつきを考慮に入れるべきであることを意味する。例えば、2シータ(2θ)値の典型的な精度は、±0.2°(2θ)の範囲、好ましくは±0.1°(2θ)の範囲、より好ましくは±0.05°(2θ)の範囲である。したがって、15.3°(2θ)に現れる反射は、大部分のX線回折装置を標準条件で使用した場合に、15.1°~15.5°(2θ)、好ましくは15.2°~15.4°(2θ)、より好ましくは15.25°~15.35°(2θ)に現れる可能性がある。更に、当業者は、相対的反射強度には、装置間のばらつきのみならず、結晶化度、選択配向現象、試料調製、及び当業者に知られている他の因子に起因するばらつきも現れるであろうことを理解するであろう。
【0022】
本明細書において使用される「固体状態(solid-state form)」という用語は、化合物の任意の結晶質相及び/又は非晶質相を指す。結晶質相には、所与の化合物の無水、水和、溶媒和、又は非溶媒和形態、その塩及び共晶に加えて、これらの任意の1種のあらゆる多形体が含まれる。
【0023】
本明細書において使用される「無水」という用語は、水が結晶構造と協同(cooperate)していない又は結晶構造に収容(accommodate)されていない結晶質固体を指す。無水形態は、結晶構造の一部ではないが、結晶表面に吸着されているか又は結晶の秩序が乱れた領域に吸収されている可能性がある残存水を依然として含み得る。典型的には、無水形態は、結晶形態の重量を基準として、水を1.0重量%を超えて、好ましくは0.5重量%を超えて含まない。水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法により、及び/又は熱重量分析(TGA)により、例えば、昇温速度を10K/minとして30~180℃の範囲で質量損失を測定することにより決定することができる。
【0024】
本明細書において使用される「非溶媒和」という用語は、結晶構造と協同している又は結晶構造に収容されている有機溶媒が存在しないことを意味する。非溶媒和形態は、結晶構造の一部ではないが、結晶表面に吸着されているか又は結晶の秩序が乱れた領域に吸収されている可能性のある残存有機溶媒を依然として含み得る。典型的には、非溶媒和形態は、結晶形態の重量を基準として、有機溶媒を、1.0重量%を超えて、好ましくは0.5重量%を超えて含まない。有機溶媒含有量は、熱重量分析(TGA)により、例えば、昇温速度を10K/minとして30~180℃の範囲で質量損失を測定することによるか、又は1H-NMRにより決定することができる。
【0025】
ロスバスタチンアリルエステル(1)は、1を超える立体中心を有する。したがってこれは、エナンチオマー的に純粋な形態で又はエナンチオマーが濃縮された混合物として存在するのみならず、ジアステレオマー的に純粋な形態で又はジアステレオマーが濃縮された混合物としても存在することができ、使用又は単離することもできる。本発明のプロセスは、上述の形態又はこれらの混合物若しくは組合せを生じさせることができることを理解されたい。本明細書に記載するプロセスの生成物は、エナンチオマー的及び/若しくはジアステレオマー的に純粋な形態で、又はエナンチオマー及び/若しくはジアステレオマーが濃縮された混合物として単離できることを更に理解されたい。
【0026】
(R,S)体エナンチオマーの混合物は、2種のエナンチオマーを任意の相互比率で含み得る。エナンチオマー純度は、一般に、「エナンチオマー過剰率」又はeeで表され、例えば、(S)体エナンチオマーに関しては、[(S-R)/(R+S)]×100と定義され、ここでS及びRは、それぞれ、(S)体エナンチオマー及び(R)体エナンチオマーの量(例えば、キラル固定相上でのGC若しくはHPLC又は旋光測定により測定)である。
【0027】
「ラセミ」という用語は、(+)異性体及び(-)異性体の両方を等量で含む試料又はキラル化合物を指す。
【0028】
本明細書において使用される「エナンチオマー的に濃縮された(enantiomerically enriched)」という用語は、ロスバスタチンアリルエステル(1)の一方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーと比較して過剰に存在することを意味する。
【0029】
本明細書において使用される「エナンチオマー的に純粋な」という用語は、ロスバスタチンアリルエステル(1)のエナンチオマー純度が、通常は少なくとも約95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、更に好ましくは少なくとも99.5%であることを意味する。
【0030】
本明細書において使用される「ジアステレオマー的に濃縮された(diasteromerically enriched)」という用語は、例えば、ロスバスタチンアリルエステル(1)の(3R,5S)異性体が、他の光学異性体、即ち(3R,5R)異性体(エナンチオマー)並びに/又は(3S,5S)異性体及び(3S、5R)異性体(ジアステレオマー)と比較して過剰に存在することを意味する。
【0031】
本明細書において使用される「ジアステレオマー的に純粋な」という用語は、ロスバスタチンアリルエステル(1)のジアステレオマー純度が、通常は少なくとも約95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、更に好ましくは少なくとも99.5%であることを意味する。
【0032】
(1)の立体的に純粋な組成物、好ましくはロスバスタチンアリルエステル(1)の(3R,5S)異性体は、同化合物の他の光学異性体を実質的に含まないことになる。典型的な立体的に純粋な組成物は、通常、(1)の(3R,5S)異性体を約95重量%超及び同化合物の他の光学異性体を約5重量%未満含み、好ましくは、(1)の(3R,5S)異性体を約98重量%超及び他の光学異性体を約2重量%未満含み、より好ましくは、(1)の(3R,5S)異性体を約99重量%超及び他の光学異性体を約1重量%未満含み、更に好ましくは、(1)の(3R,5S)異性体を約99.5重量%超及び同化合物の他の光学異性体を約0.5重量%未満含む。
【0033】
本明細書において使用される「約」という用語は、ある値の統計的に有意な範囲内であることを意味する。このような範囲は、指定された値又は範囲の1桁以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内、更に典型的には1%以内、最も典型的には0.5%以内となり得る。
【0034】
場合によっては、このような範囲は、所与の値又は範囲の測定及び/又は決定に用いる標準的な方法に典型的な実験誤差の範囲内となることもある。
【0035】
「集合体(mass)」という用語は、物理的又は化学的変換を施す基質、試薬、溶媒、及び生成物の組合せと定義される。
【0036】
「種晶」という用語は、結晶化を誘導することを目的として同一物質の分散液に添加される結晶質物質を指す。特定の結晶形の種晶添加(seeding)は、その種晶と同一の結晶形を有する物質の結晶化を促進する、有用な効果が得られることが多い。
【0037】
本発明による結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)は、図面「に示す(as shown in)」粉末X線回折図形により特徴付けることができる。当業者は、機器の種類による変動、試料の向きによる応答及び変動、試料の濃度、試料の純度、試料の履歴、試料の調製等の因子が、例えば、正確な反射又はピーク位置及び強度の変動につながる可能性があることを理解している。しかしながら、本明細書における図面のチャートデータ(graphical data)と未知の物理的形態に関し得られたチャートデータとの比較、及び2組のチャートデータが同じ結晶形に関連することの確認は、当業者の知識の範囲内に充分に含まれる。
【0038】
「プロドラッグ」は、一般に、薬理学的活性を有しない化合物である。しかしながら、通常はin vivoで、酵素又は加水分解により切断されてプロドラッグから薬物に活性化されると、プロドラッグを個人に投与した場合に、意図された医療効果が得られるであろう。プロドラッグは、通常、生理活性化合物を化学的に修飾することにより形成される。プロドラッグを、例えば経口投与に採用する目的の1つは、腸内吸収又は部位特異的吸収を高めることにある。他の目的は、胃腸刺激等の局所的な副作用を減らすことにある。
【0039】
本明細書において、本発明の結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)と共に使用される「有効量」という用語は、所望の治療又は予防効果をもたらす結晶質の(1)の量を包含する。
【0040】
本明細書において使用される「医薬的に許容される医薬品添加物(excipient)」という用語は、医薬品有効成分以外に、医薬組成物中に任意に含有される、所与の用量では有意な薬理活性を示さない物質を指す。医薬品添加物は、特に、媒体(vehicle)、希釈剤、離型剤、崩壊剤、溶出調整剤(dissolution modifying agent)、吸収促進剤、安定剤、又は製造助剤の機能を果たし得る。医薬品添加物としては、充填剤(希釈剤)、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、及び流動化剤が挙げられる。
【0041】
本明細書において使用される「充填剤」又は「希釈剤」という用語は、医薬品有効成分を送達前に希釈するために使用する物質を指す。希釈剤及び充填剤は安定剤の役割を果たすこともできる。
【0042】
本明細書において使用される「結合剤」という用語は、医薬品有効成分と医薬的に許容される医薬品添加物とを結合させることにより、凝集している部分及び分離されている部分を維持する物質を指す。
【0043】
本明細書において使用される「崩壊剤(disintegrant、disintegrating agent)」という用語は、固形医薬組成物に添加され、投与後のその分解(break-up)又は崩壊(disintegration)を促進し、医薬品有効成分をできる限り効果的に放出させることにより、速やかな溶出を可能にする物質を指す。
【0044】
本明細書において使用される「滑沢剤」という用語は、粉体のブレンド物に添加され、打錠又はカプセル化工程の最中に、圧縮成形された粉体集合体が設備に付着するのを防止する物質を指す。これらは錠剤を金型から抜き出しやすくすると共に、粉体の流動性を向上させることができる。
【0045】
本明細書において使用される「流動化剤」という語は、錠剤を圧縮する際の流動性を向上させるため及び抗ケーキング効果を生じさせるために錠剤及びカプセル剤の製剤に使用される物質を指す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明による結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)の代表的なPXRDを示すものである。x軸は、散乱角(単位:2θ°)を表し、y軸は、散乱X線の強度を検出光子数で表している。
【
図2】本発明による結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)の代表的なDSC曲線を示すものであり、次に示す、2つの領域に対応するデータが含まれる:(1)積分値:-171.71mJ、規格化:-78.77Jg
-1、開始:93.00℃、ピーク:94.16℃(2)積分値:-290.61mJ、規格化:-133.31Jg
-1、開始:229.78℃、ピーク:247.73℃。x軸は摂氏度(℃)単位の温度であり、y軸はワット毎グラム(W/g)単位の熱流量を示し、吸熱ピークは下向きである。
【
図3】本発明による結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)の代表的なTGA曲線を示すものであり、30℃~180℃の領域で0.35%の損失が見られる。x軸は摂氏度(℃)単位の温度であり、y軸は重量パーセント(w%)単位の試料の質量(損失)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
第1の態様において、本発明は、当該技術分野において知られている結晶質物質を特徴付けるための分析法の1つ、例えば、粉末X線回折、DSC、及び/又はTGA等、好ましくは粉末X線回折により結晶質であると決定される、固体状態のロスバスタチンアリルエステル(1)に関する。
【0048】
好ましくは、結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)(簡潔化のため、本明細書の残りの部分及び特許請求の範囲においては形態α(アルファ)と称する)は、無水及び/又は非溶媒和及び/又は非吸湿性である。
【0049】
前記形態αは、次に示す特徴(i)~(xi)のいずれか1つによって更に特徴付けることができる:
(i)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、16.14°(±0.20°(2θ))及び21.13°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(ii)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、及び21.13°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(iii)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、8.41°(±0.20°(2θ))、14.99°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、21.13°(±0.20°(2θ))、及び22.24°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(iv)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、8.41°(±0.20°(2θ))、14.99°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、16.87°(±0.20°(2θ))、18.44°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、21.13°(±0.20°(2θ))、22.24°(±0.20°(2θ))、及び24.74°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(v)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、7.70°(±0.20°(2θ))、8.41°(±0.20°(2θ))、12.63°(±0.20°(2θ))、14.99°(±0.20°(2θ))、16.14°(±0.20°(2θ))、16.87°(±0.20°(2θ))、17.96°(±0.20°(2θ))、18.44°(±0.20°(2θ))、19.53°(±0.20°(2θ))、21.13°(±0.20°(2θ))、22.24°(±0.20°(2θ))、24.74°(±0.20°(2θ))、及び28.55°(±0.20°(2θ))に主要な反射を示す;並びに/又は
(vi)銅のΚα線(λ=1.5419Å)を用いて20~30℃の温度で収集した場合の粉末X線回折パターンが、本質的に
図1に示すものである;並びに/又は
(vii)昇温速度10K/minで測定した場合のDSC曲線が、(93±5)℃、好ましくは(93±3)℃、より好ましくは(93±2)℃、更に好ましくは(93±1)℃に開始温度を示す吸熱ピークを含む;並びに/又は
(viii)昇温速度10K/minで測定した場合のDSC曲線が、本質的に
図2に示すものである;並びに/又は
(ix)昇温速度10K/minで30℃から180℃まで加熱した場合のTGA曲線が示す質量損失が、結晶(1)の重量を基準として、0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下である;並びに/又は
(x)昇温速度10K/minで加熱した場合のTGA曲線が、本質的に
図3に示すものである;並びに/又は
(xi)(i)~(x)の任意の2つ以上の組合せ。
【0050】
更なる態様によれば、本発明は、結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、好ましくは結晶形態αを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは:
a)ロスバスタチンアリルエステル(1)を、混合物が得られるように、少なくとも1種の液体媒体中で接触させることと;
b)ステップa)で得られた混合物を、ロスバスタチンアリルエステル(1)の液体媒体中溶液が得られるように、撹拌下に維持することと;
c)任意選択的に、ステップb)を25℃以上の温度で実施した場合に、ステップb)で得られた溶液を、ロスバスタチンアリルエステル(1)の少なくとも一部を結晶形態で析出させるように、冷却することと;
d)それを単離し、任意選択的に乾燥させることと;
を含む、プロセスに関する。
【0051】
ステップa)は、ロスバスタチンアリルエステル(1)を、少なくとも1種の液体媒体と、好ましくは5℃~30℃、より好ましくは10℃~28℃、更により好ましくは20℃~25℃の温度で接触させることを含む。
【0052】
好適な液体媒体としては、無極性溶媒、非プロトン性溶媒、極性プロトン性溶媒、及びこれらの組合せが挙げられる。好適な無極性溶媒の非限定的な例として、トルエン、tert-ブチルメチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、シクロプロピルメチルエーテル、及びこれらの組合せが挙げられる。好適な非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。目的に適した極性プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、少なくとも1種の液体媒体は、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、又はこれらの混合物である。更に好ましくは、少なくとも1種の液体媒体はジエチルエーテルである。
【0053】
少なくとも1種の液体媒体の体積は、非常に広い範囲で変化させることができ、好ましくは、ロスバスタチンアリルエステル(1)1グラム当たり0.5mL~50mLである。好ましくは、液体媒体の体積は、次に示す任意の2つの値の間にあり、任意選択的にこの2つの値を含む:ロスバスタチンアリルエステル(1)1グラム当たり0.6mL、0.7mL、0.8mL、0.9mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mmL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、又は45mL。より好ましくは、前記体積は、ロスバスタチンアリルエステル(1)1グラム当たり5mL~15mLである。
【0054】
ステップa)に使用するのに適したロスバスタチンアリルエステル(1)は、市販されており;或いは、有機合成の標準的な技法に従い、例えば、(特許文献1)又は(特許文献2)に記載されている手順に従い調製することができる。
【0055】
好ましくは、ステップa)は、少なくとも1種の液体媒体を、ロスバスタチンアリルエステル(1)を含む集合体、より好ましくはロスバスタチンアリルエステル(1)からなる集合体に添加することにより実施される。
【0056】
それに続くステップb)は、ステップa)で調製された混合物を、ロスバスタチンアリルエステル(1)の少なくとも1種の液体媒体中の溶液が得られるように、撹拌下に維持することを含む。
【0057】
好ましくは、ステップb)は、30℃から、使用される少なくとも1種の液体媒体の還流温度までの温度で、より好ましくは、32℃~100℃の温度で、更に好ましくは35℃~80℃の温度で実施される。
【0058】
任意選択的なステップc)は、ステップb)を25℃以上の温度で実施した場合に、ロスバスタチンアリルエステル(1)の少なくとも一部を、結晶形態で、好ましくは結晶形態αで析出させるように、溶液を冷却することを含む。このステップは、通常、ステップb)で調製した溶液を、-20℃~20℃(好ましくは-10℃~15℃、より好ましくは0℃~10℃)の温度で、好ましくは、少なくとも2時間(より好ましくは3~50時間、更に好ましくは5~25時間)維持することにより実施される。
【0059】
このことに関し、冷却速度は重要ではないが、約-0.1℃/hr~-10℃/hrの範囲とすることができ、例えば、冷却速度は-0.5℃/hr~-5℃/hrである。一実施形態において、溶液は、自然に室温まで放冷される。
【0060】
ロスバスタチンアリルエステル(1)の結晶形態、好ましくは、結晶形態αは、ステップd)において、濾過や遠心分離等の公知の技術を用いて回収され、任意選択的に、好適な液体媒体、好ましくは、ステップa)で使用したものと同じ液体媒体で洗浄される。
【0061】
次いで、得られた結晶を、任意選択的に乾燥させることができる。乾燥は、20℃~60℃、好ましくは、25℃~40℃の温度で実施することができる。乾燥は、約1~72時間、好ましくは2~48時間、より好ましくは4~24時間、最も好ましくは6~18時間実施することができる。乾燥は、常圧又は減圧下に実施することができる。好ましくは、乾燥は、約100mbar以下、より好ましくは約50mbar以下の減圧下に実施され、例えば、乾燥のために約35mbarの真空が印加される。
【0062】
本発明のこの態様の可能な変形形態において、任意選択的なステップb’)がステップb)及びステップc)の間に実施され、ステップb)で調製した溶液に、ロスバスタチンアリルエステル(1)、好ましくは結晶形態αを、同じ結晶形態の析出を促進するように、種晶添加することを含む。好ましくは、種晶は、ステップa)に使用されるロスバスタチンアリルエステル(1)の量に対し、0.5%~10%(好ましくは1%~5%)の重量比で、ステップb)の操作に用いられる温度より少なくとも10℃低い温度で添加される。
【0063】
ロスバスタチンアリルエステル(1)を生成し、a)に関連して上に述べた少なくとも1種の液体媒体(好ましくは、ジエチルエーテル)を使用して結晶化させることにより、(1)中に存在する関連する不純物(特に、その光学異性体、即ち、(3R,5R)異性体及び/又は(3S,5S)異性体及び/又は(3S,5R)異性体)の含有量を低下させることができ、したがって、結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、好ましくは結晶形態αを、ジアステレオマー的及び/又はエナンチオマー的に純粋な形態で調製することが可能になる。
【0064】
医薬組成物及び医療用途
更なる態様において、本発明は、上述の態様及び実施形態のいずれか1つに定義した結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、好ましくは結晶形態αの、医薬組成物の調製のための使用に関する。
【0065】
更なる態様において、本発明は、好ましくは有効量の、結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、特に、上述の態様及び実施形態のいずれか1つに定義した(1)の結晶形態αと、任意選択的に、少なくとも1種の医薬的に許容される医薬品添加物と、を含む医薬組成物に関する。
【0066】
好ましくは、ロスバスタチンアリルエステル(1)、特に、上述の態様及び実施形態のいずれか1つに定義した結晶形態αの有効量は、1~500mg、例えば、2.5mg~100mgである。
【0067】
目的に適した医薬的に許容される医薬品添加物としては、好ましくは、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、及びセルロース)、希釈剤、結合剤(例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、スクロース、及びデンプン)、崩壊剤(例えば、デンプン、セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルフマル酸ナトリウム、及び流動パラフィン)、流動化剤(シリカ、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、セルロース、及びタルク)、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0068】
好ましくは、少なくとも1種の医薬的に許容される医薬品添加物は、ラクトース(より好ましくは、ラクトース一水和物)、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、クロスポビドン、ヒプロメロース、ステアリン酸マグネシウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される。更に好ましくは、これらの医薬的に許容される医薬品添加物は全て、本発明の医薬組成物から構成される。
【0069】
好ましくは、上に述べた本発明の医薬組成物は、経口用固体剤形にある。より好ましくは、上に述べた本発明の医薬組成物は、錠剤又はカプセル剤である。特定の実施形態において、上に述べた本発明の医薬組成物は、錠剤、好ましくはフィルムコート錠剤である。
【0070】
他の特定の実施形態において、上に述べた本発明の医薬組成物は、カプセル剤、好ましくは硬ゼラチンカプセル剤である。更なる実施形態において、カプセル剤のシェルは、ゼラチンシェル又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)シェル、好ましくは、ゼラチンシェルである。
【0071】
上に述べた実施形態のいずれか1つに定義した本発明の医薬組成物は、当業者によく知られている、例えば、ブレンディング、造粒(湿式又は乾式造粒)、錠剤圧縮、フィルムコーティング、又はカプセル充填を含む、標準的な製造プロセスにより製造することができる。
【0072】
本発明はまた、上に述べた実施形態のいずれか1つに定義した医薬組成物を含む包装体であって、好ましくは、高密度ポリエチレンボトルである、包装体にも関する。
【0073】
更なる態様において、本発明は、上に述べた態様及びそれらの対応する実施形態のいずれか1つに定義した結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、特に結晶形態α、又はそれを含む医薬組成物の、医薬としての使用に関する。
【0074】
更なる態様において、本発明は、医療において、特に、脂質低下薬、好ましくはロスバスタチンのプロドラッグとして、例えば、ホモ接合性家族性高コレステロール血症、高脂血症、混合型脂質異常症、原発性異常βリポ蛋白血症、高トリグリセリド血症の治療、及び心血管疾患の予防に使用するための、上に述べた態様及びそれらの対応する実施形態のいずれか1つに定義した結晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)、特に結晶形態α、又はそれを含む医薬組成物に関する。
【実施例0075】
以下に示す非限定的な実施例は本開示を例示するためのものであり、本発明の範囲を何らかの形で限定するものと解釈すべきではない。
【0076】
得られた固体形態の特徴付けを行うために使用した装置及び方法を次に示す:
XRPD:多形形態の(XRD)パターンを、Empyrean回折計でCuΚα線を用いて記録した。試料の相に帰属されることを示す反射にのみ焦点を当てるために、2°から40°までの狭い2θ範囲を選択し、ステップを0.026°、計数時間を50sとした。
DSC:DSC試験は、Mettler Toledo DSC 3+装置(Mettler Toledo,Switzerland)を用いて実施した。試料を窒素雰囲気下に30℃から300℃まで10Kmin-1の昇温速度で加熱した。STAReソフトウェアを用いて転移温度及びピーク積分値を求めた。
TGA:測定は、TGA/DSC 1熱重量分析装置(Mettled Toledo,Switzerland)を用いて、窒素雰囲気下に昇温速度を10Kmin-1として30℃から300℃まで測定した。
【0077】
実施例1:ロスバスタチンアリルエステル(1)の調製
ロスバスタチンカルシウム塩(10.0g、20.8mmol)のDMF(100mL)溶液に、臭化アリル(10.1g、83.1mmol)を加えた。この溶液を25℃で撹拌し、HPLCで監視した。20時間後、反応混合物をH2O(200mL)で希釈し、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。有機層を合一して飽和食塩水(2×100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して減圧下に濃縮した。濃縮物をカラムクロマトグラフィー(Biotage System、SNAP Cartridge シリカ340g、n-ヘプタン:酢酸エチル=1:1 V/V)で精製することにより、化学的、エナンチオマー的、及びジアステレオマー的純度が99.9%を超える非晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)(6.0g、収率57%)を得た。
【0078】
実施例2:ロスバスタチンアリルエステル(1)の結晶形態α
実施例1に従い調製された非晶質ロスバスタチンアリルエステル(1)(1.0g)を、ジエチルエーテル(10mL)に、還流加熱しながら(約35℃)溶解した。得られた透明な溶液を約5℃で15時間冷却した後、同温度で撹拌しながら更に5時間放置した。そして、得られた結晶を真空下に濾過(焼結ガラスディスク(sintered disc)を備えたブフナーガラス漏斗を使用)して回収した後、12時間真空乾燥(40℃及び約35mbar)させた。
【0079】
得られた生成物をXRPDで分析し、
図1に示す回折図形を得た。
【0080】
この生成物についてDSC及びTGA分析も行い、それぞれ
図2及び3に示す曲線を得た。